【艦これ】三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」

1: ◆jz1amSfyfg 2015/03/19(木) 10:45:12.24 ID:pKyOQk7a0


三日月「……」 スタスタ

 果たして今まで、私はどれだけの罵声を浴びてきたのだろうか。

三日月「……」 スタスタ

 役立たず。これは何度言われたか覚えてすらいない。

三日月「……」 スタスタ

 でも、一番頭に来たのはそんなどうでもいい罵声じゃない。

『所詮は睦月型だな。役立たずめ。加えてお前は無個性……やれやれだな』

 これはさすがに……我慢できなかった。私の事はいくらでもバカにしていいけれど、大切な姉妹達まで罵倒されているみたいで、すごく不愉快な気分になった。

 スタスタ ピタ

三日月「……ここが、新しく所属する鎮守府かぁ」 ジー

 ここの司令官は、いったいどんな人なんだろう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【艦これ】電「暁お姉ちゃんが頭を打って変になっちゃったのです」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423697655/
【艦これ】三日月「……バレンタインデーかぁ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424467057/

※以上のSSの過去の話となっております。話のつながりはありますが、読んでいなくても問題はありません。よろしくお願い致します。
※書き溜めはしていないので、スローペースになると思います。ご了承ください。



ブシロードスリーブコレクション HG Vol.839 艦隊これくしょん -艦これ-『三日月』 パック

2: ◆jz1amSfyfg 2015/03/19(木) 11:06:23.96 ID:pKyOQk7a0


三日月(結構大きいなぁ。前に所属してた鎮守府程じゃないけれど) キョロキョロ

 スタスタ

「あ、あの」

三日月「?」 クル

電「も、もしかして……本日着任されるとの連絡を受けていた艦娘の方なのですか?」

三日月「はい! 私は睦月型10番艦の、三日月です。先刻、こちらの鎮守府へ転属命令があり、本日着任いたしました。まだまだ未熟な身ですが、どうぞよろしくお願い致します」 ビシッ

電「は、はいなのです! お、おおお待ちしていましたなのです!」 アセアセ

電「同じく艦娘なのです! 暁型4番艦の電なのでしゅ!」 ビシッ

三日月(か、噛んだ……)

電「……///」

電「うぅ……舌が痛いのです……」

三日月「ぷっ、ふふふ……」

電「……うぅ、は、恥ずかしいよぉ……///」

三日月「!! ご、ごめんなさい! つい……」 オロオロ

電「い、いいのです……悪いのは噛んで失敗しちゃった電なのです」

三日月「いえ、つい笑ってしまった私が悪いですよ……本当にごめんなさい。失礼でした」

電「いや、電が……」

三日月「いや、私が……」

電「電が」
三日月「私が」

電・三日月「……」

電・三日月「「……ふふふ」」

電「これじゃあ埒があかないのです」

三日月「ふふ、そうですね。では、お互いが悪いという事で」

電「この件はおしまい、なのです!」 ニッコリ

三日月「そうですね。そうしましょう」 ニッコリ


3: ◆jz1amSfyfg 2015/03/19(木) 11:27:40.87 ID:pKyOQk7a0


電「では、まずは司令官さんの所へ案内するのです」

三日月「はい! 電さん、よろしくお願いしますっ」 ペコリ

電「はわわ、こちらこそなのです」 ペコリ

電「では、着いてきてくださいなのです」 スタスタ

三日月「はい!」 スタスタ


三日月「それにしても、静かですねー。他の艦娘の方々は何か任務中とかですか?」 スタスタ

電「え? この鎮守府にはまだ電しかいないのですよ?」 スタスタ

三日月「え?」

電「はわわ、失礼しましたのです! 訂正なのです! 三日月ちゃんも今日からこの鎮守府の艦娘なので、電と三日月ちゃんしかいないのです」

三日月「そ、そういうことじゃありません! それ……本当の事ですか!?」

電「は、はい」

三日月「え、えー……」

電「……三日月ちゃん、別の鎮守府からここにやってきたんですよね? 前の司令官さんとかから何も聞かされていないのですか?」

三日月「…………」

三日月「……はい。場所と訪れる日にちだけは聞いていましたけれど、それ以外は何も……」

電「そうだったのですか……」

電「ちなみになのですが」

三日月「?」

電「電がこの鎮守府に着任したのもついさっきなのです。三日月ちゃんを迎えに行くことが初めてのお仕事だったのです。だから少し緊張しちゃって……」

三日月「……もしかして、この鎮守府が鎮守府として活動するようになったのって……」

電「本日からなのです」

三日月「……が、頑張ります」

 なんだか、大変な日々が始まりそうな予感がした。


4: ◆jz1amSfyfg 2015/03/19(木) 12:00:00.56 ID:pKyOQk7a0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


電「こちらが、司令官さんがお仕事をする司令室の入り口なのです。中に司令官さんがお待ちしているのです」

三日月「はい。案内ありがとうございます、電さん」

電「いいのです。お仕事ですし、なにより電は新しいお仲間である三日月ちゃんのお役に立ててうれしいのです」 ニッコリ

三日月(……電さんは優しい子だなぁ)

電「では、中に入りましょう」

 コンコンコン

電「し、司令官さん。電なのです。ただいま戻りましたのです」

 ガチャ

電「司令官さん。三日月ちゃんを……え? し、司令官さん?」

三日月「し、失礼しま……え?」

 目の前にあるのは崩れた段ボール箱の山。中は結構広いけれど、それでもその光景は良く目立った。中に司令官らしき人物は見当たらなかった。

三日月(司令官はこの部屋にいるはずじゃ……)

電「はわわわわ」

三日月「も、もしかして……」


三日月「この崩れた段ボールの山こそ司令官ですか!?」

電「そんなわけないのです! 司令官さーん!!」 パタパタ


5: ◆jz1amSfyfg 2015/03/19(木) 12:10:44.46 ID:pKyOQk7a0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


提督「ははは……いやぁ、電が迎えに行っている間に少しダンボールの整理でもしようかなって思ってたら崩れて埋もれちゃったよ」 ハハハ

電「わ、笑い事じゃないのです……初日から怪我でもしたら大変なのです!」

提督「心配させてすまないね。……電は優しい子だなぁ」 ナデナデ

電「し、司令官さん……はずかしいのです」

提督「あっ、ごめんつい。女の子に対して失礼だったな」

電「……電は別に嫌ではないのです。でも、嫌がる子もいるかもしれないので、気を付けてくださいね?」

提督「ははは、そうだな」


三日月「……」

三日月(この方が、私の新しい司令官)

 電さんと仲良く話す司令官の姿は、“私と私の姉妹達”以外の艦娘と話している前の司令官の様子とよく似ていた。優しい雰囲気だ。違っているのは年齢と見かけだけ。前の司令官より若そうだ。

提督「んで、君が今日から着任……って言ってもここにいるみんなは今日からここに着任か。――まぁ私がここの鎮守府の最高責任者である提督だ。よろしく頼む」

三日月「!!」 ビク

三日月「は、はい! あなたが司令官ですね。三日月です。どうぞお手柔らかにお願いします!」 ビシ

提督「ははは、そんなに固くならなくても大丈夫だよ。こちらこそよろしく。三日月」 スッ

三日月「――!! ひっ」

 パシッ!

提督「え?」

三日月「はぁ……はぁ……――!!」

電「み、三日月ちゃん……?」

三日月「し、失礼しました! 私……わたし、なんてことを……」

 自分のやってしまった行動は、無意識での行動だった。司令官の握手を求める手を、私は気が付けば拒絶していた。

三日月(あ、謝らないと……謝らないと、私また!)

提督「ははは、いやぁごめんな三日月」

三日月「……え?」

提督「いきなりでビックリしちゃったよな。すまなかった」

三日月「し、司令官は何も悪く――」

提督「とりあえず! 電! 三日月! まずはこのダンボールの山の整理だ。手伝ってくれ」

電「は、はいなのです!」

三日月「…………」

 ごめんなさい。その一言が口から出せなかった。


10: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 05:42:07.77 ID:S1Js99+H0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督「よし、とりあえずこんなもんかな。電、三日月。手伝ってくれてありがとう」

電「つ、疲れたのです……。けど、電は頑張るのです」

提督「荷物の整理ってけっこう疲れるからな。本当に助かるよ」

三日月「……」

提督「? 三日月、どうかしたのか?」

三日月「あ、いえ……何でもないです」

提督「おう、そっか。疲れたりしたら正直に言って大丈夫だからな?」

三日月「はい……お気遣い、ありがとうございます」

提督「ひとまず、司令室の形は整った。君たちにはこの後、もう少しだけ仕事をしてもらって、今日の日程は終わりな感じだな。とりあえず一時間休憩してくれ」

電「はいなのです! 司令官さんはどうするのですか?」

提督「私はもうちょっと仕事してから休憩するよ。君達は先に休憩しててくれ」

電「だったら電もお手伝いを」

提督「大丈夫、大丈夫! 今後君達にはうんと働いてもらうから、今は素直に休憩しとくんだ」

電「わ、わかりました。お気遣い、ありがとうございますなのです!」 ペコリ

三日月「……」 ペコリ

提督「おう。ここから出ると、中にいっぱい空き部屋がある。どれでも好きな部屋を使ってもいいからなー」

電「はいなのです!」

電「三日月ちゃん、行きましょうなのです」 スタスタ

三日月「は、はい。三日月、休憩いただきます」 スタスタ

 バタン

提督「……」

提督「……はぁ」



三日月「!!」

電「? 三日月ちゃん、どうかしましたか?」

三日月「い、いえ。何でもないですよ」

 司令室の中から、私の耳には届いた溜息が届いた。やはり、さっきの事だろうか。私は気になって仕方がなかった。


11: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 06:06:49.58 ID:S1Js99+H0


〈空き部屋〉

電「はぁ……疲れたのです……」 グダー

三日月「ですね……」 グダー

電「それにしても、司令官さんがとても優しそうな人で電は安心しているのです。怖い人じゃなくて良かったのです……」

三日月「……ですね。司令官は……優しそうな方ですね」

 司令官もそうだったけれど、電さんも私の先ほどの行動の事は言及してこなかった。まるで何もなかったかのようだ。

電「三日月ちゃんが前にいた鎮守府の司令官さんは、どんな人だったのですか? ……あっ、い、言いたくなかったら言わなくても大丈夫なのですよ?」 オロオロ

三日月(……やっぱり、気を使ってくれているんだ。優しいなぁ)

三日月「ふふ、大丈夫ですよ」 ニコリ

三日月「そうですね。前の司令官は……優しい方……でしたね」

三日月「鎮守府にいた皆さんと、とても仲が良く優しい方でした」

電「そうだったのですか。司令官の人達は、優しい人達が多そうなのです」

三日月「……はい」

三日月(……私たちにも……最初は……)

電「電は、鎮守府に着任するのはここが初めてなのです。……緊張がすごいのです。ちゃんとお仕事できるか心配なのです」

三日月「電さんならきっと大丈夫ですよ」 ニッコリ

電「が、頑張るのです!」


12: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 06:22:42.65 ID:S1Js99+H0


電「三日月ちゃんは、出撃とかはしたことがあるのですか?」

三日月「はい、何回か……ですけど」

電「なら電より先輩なのです!」

電「色々とご迷惑かけてしまうかもしれませんが……あの、その……」

電「よろしくお願いします! なのです」

三日月「あっ、いえ……こちらこそ……出撃したと言っても数回ですし……」

三日月「私は……前の鎮守府で……」

電「な、何かあったのですか?」

三日月「……いえ、何でもありません。ごめんなさい、こんな風に言い留めちゃったら、気になっちゃいますよね」

電「……電なら大丈夫なのです!」

電「……何かあったかは……まぁ気になるけれど……三日月ちゃんが話したくなったときに話してほしいのです」

電「電でよろしければ、いつでもお話を聞くのです」 ニッコリ

三日月「……はい! ありがとうございます」 ニッコリ

電「いえいえ……電達は、仲間ですから」

三日月「……はいっ」

三日月「では、もっと交友を深めましょう!」

電「なのですっ。もっとお話ししましょう!」

三日月「はい!」

 電さんは、本当に優しい人なんだなと改めて分かった瞬間だった。


15: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 08:25:50.24 ID:S1Js99+H0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督「二人とも、ちゃんと休憩はできたか?」

電「はいなのです!」

三日月「は、はい」

提督「そっか、ならよかった」

提督「んじゃ、パパッとやってもらう事を伝えたいと思う。……君達にはこの後、出撃してもらう」

電「も、もうなのですか!?」

提督「まぁ出撃してもらうって言っても、そんなに固くなることじゃないよ。艤装を積んで、鎮守府近海を航海してもらって、警備してもらう」

提督「確か、電はまだ出撃はしたことないんだよな?」

電「はいなのです。電は鎮守府に着任するのはここが初めての事ですので、知らない事ばかりなのです」

提督「うん、分かった。前の鎮守府にいた頃、三日月は出撃したことはあるか?」

三日月「……数回、くらいならあります」

提督「分かった。なら電のこと、よろしく頼むな?」

三日月「はい、わかりました。頑張ります」

電「い、電も頑張るです!」

提督「そんなに緊張しなくても大丈夫だ。リラックスだぞ」 ナデナデ

電「は、はい!」


16: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 09:01:15.40 ID:S1Js99+H0


提督「もし深海棲艦が現れたりなどしたら、無茶はするなよ? いざとなったらすぐに逃げるんだ」

電「りょ、了解なのです!」

提督「電、深海棲艦のことは知っているよな?」

電「はい、大丈夫なのです」

電「深海棲艦は……電達の……敵なのです」

提督「……まぁ、何かあったらすぐに連絡するんだ」

提督「私達人類は、君達艦娘に力を借りなければ“人類の敵”である深海棲艦を倒すことはできない。だからこそ、君達艦娘を支えるのが私達提督のできることだ」

電「……」

三日月「……」

提督「本音を言うと、君達を戦わせることは非常に心苦しいよ。……私達が言っていいことでは無いかもしれないが、怪我だけはしないようにな?」

電「了解、なのです」

三日月「……了解しました」

提督「……よし、とりあえず工廠に行って、君たちの艤装を取りに行こう。付いてきてくれ」

 そう、私達艦娘は、“人類の敵”である深海棲艦を倒すための存在。突如どこからか現れ、何を目的としているのか分からない、人類からなぜか制海権を奪おうとしている存在――深海棲艦。
 そんな私達は、深海棲艦が現れたとほぼ同時に生み出された“艦娘を造り出す技術”により造られた存在だ。艦娘は人類の希望の光であり――兵器である。

三日月「…………」

 私達も、深海棲艦も、謎ばかりです。


17: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 09:30:28.15 ID:S1Js99+H0


 〈工廠〉

電「……」 プルプル

三日月「……」 キラキラ

妖精さん「オウ、ドウシタジョウチャンタチ」

妖精さん2「テートクー、コンナギソウデダイジョウブカ?」

提督「大丈夫だ、問題ない。ありがとうな、妖精さん達」

妖精さん3「ウム、ヨキニハカラエー」

電「…………」 プルプル

電「し、司令官さん!!」

提督「うぉ! びっくりしたぁ……どうした電」

電「こ、この可愛い子達は何なのですか!?」 キラキラ

提督「あー、この子たちは妖精さんだ。軍の上層部から派遣されてくる、お手伝いさん達だよ。仲良くしてやってくれ。ちなみに、技術力はすさまじい」

電「か、可愛いのですぅ……///」 キラキラ

提督(お前もだけどな)
三日月(あなたもですけどね)

電「よ、妖精さん! ギューってしていいですか!? ギューっと!」

妖精さん4「イイヨコイヨ」

電「あ、ありがとうなのです!」 ギュー

電「……はぁ~……可愛いのですぅ~」 キラキラ

妖精さん4「ヘヘ、テレルゼ」

三日月(私も前の鎮守府で見たときは我慢できず抱きしめたのを思い出すなぁ)

提督「……」

電「はっ! しゅ、出撃前なのにごめんなさいなのです!」 バッ

提督「いや、全然大丈夫だよ。むしろ微笑ましくて和む」


20: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 11:49:19.72 ID:S1Js99+H0


提督「よし、それじゃあ装備の確認だ。ひとまず、ここには二つの装備しかない。12.7cm連装砲と、12cm単装砲だ。性能が良いのは、当然12.7cm連装砲だ」

提督「とりあえず、前に出撃がしたことがある三日月に12.7cm連装砲を持たせようと思うが、いいか?」

三日月「はい、私はそれでも構いませんよ」

電「電も、問題ないのです」

提督「では、そうしよう」

提督「編成の確認も、一応しておく。形は大事だからな」

提督「編成は、旗艦を電、その補佐として三日月の二人で出撃してもらう」

電「い、電が旗艦ですか!?」

提督「電は初期艦だし、まだまだ色々と経験が必要だ。旗艦になることで、より多くの経験が得られると私は思ってる」

電「……」

提督「そんなに緊張しなくて大丈夫さ。君ならできると信じてる……って言っても、今日会ったばかりの私にそんなこと言われてもいまいちパッとしないよな」

電「そ、そんなことは」

提督「だから、素直に言うよ。誰だって最初は素人なんだ。三日月もいる。君は一人じゃない。……頑張れ、電」 ナデナデ

電「……は、はい! 頑張ります……電の本気を見るのです!」

提督「おう。まぁ何度も言うけど、そう緊張しすぎないようにな」 ナデナデ

電「はいなのです!」

三日月「…………」


『頑張ってる? そんなの分かっているさ。……でもな』

『君の頑張りなんて他の艦娘達と比べたらまだまだなんだよ』


三日月「……もっと、頑張らないと……ですね」 ギュ


21: ◆jz1amSfyfg 2015/03/20(金) 12:20:10.71 ID:S1Js99+H0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈港〉

提督「よし、艤装も装備も完璧だな。二人とも中々かっこいいぞ」

電「……えへへ」

提督「任務は本当に簡単な、鎮守府近海の警備だ。深海棲艦がいたらすぐに私に連絡してくれ」

電「この通信機を使うのですよね?」 スッ

提督「そうだ。とりあえず、怪我の無いようにな?」

電・三日月「「了解です」」

提督「あと、三日月」

三日月「……なんでしょうか?」

提督「君も、あまり緊張しないようにな? 心配なのは電だけじゃなく、三日月もだからな」

三日月「……はい。お心遣い感謝します」 ビシッ

電「…………」

提督「それじゃあ……諸君らの無事を祈っている」

提督「全艦、抜錨だ」

電「は、はい! 第一艦隊、第一水雷戦隊。出撃です!」


29: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 01:27:55.60 ID:hD5JILxZ0


 〈鎮守府近海〉

 ザー、ザー

電「く、訓練以外で航海するのは初めてなのです」 オロオロ

三日月「電さん、大丈夫ですか?」

電「は、はい。三日月ちゃんの足を引っ張らないように……頑張るのです」

三日月「……電さん」

三日月「そんな気にしなくて大丈夫ですよ」

三日月「何事も経験ですし、助け合い協力し合うのが仲間です」

三日月「足を引っ張らないように頑張るのではなく、一緒に支え合って頑張りましょうっ。私だって、まだまだ未熟者ですから」 ニッコリ

電「み、三日月ちゃん」

三日月「ね?」

電「は、はい。……あ、あの……ありがとう」 ニコリ

三日月「ふふふ、いえいえっ」


30: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 01:36:07.17 ID:hD5JILxZ0


 ザー、ザー

電「深海棲艦は、いなそうですね」

三日月「ですね。けど、用心するに越したことはありませんよ」

電「……」

三日月「電さん? どうかしましたか?」

電「……変な事、聞いても大丈夫ですか?」

三日月「変な事、というと……?」

電「そ、それは……その……」

三日月「ゆっくりで大丈夫ですよ?」

電「はい…………三日月ちゃんは」

電「戦争には勝ちたいけど、命は助けたいって……おかしいと思いますか?」

三日月「……え?」

 彼女からの問いは、私が今まで聞かれたことが無いものだった。


31: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 02:04:55.06 ID:hD5JILxZ0


電「変な事言ってるのは……電が一番分かっていることなのです」

電「けど、電は……あまり戦いたくはないのです。沈んだ船も……できれば助けたいのです」

電「……それが“人類の敵”である、深海棲艦であってもなのです」

三日月「……」

 この時、私は改めて理解した。電さんは、優しすぎるんだって事を。
 どう答えればいいか、すぐには頭に浮かばなかった。聞かれたことが無かったから。そんなこと、誰かから聞かれるとは思っていなかったから。

三日月「私は……電さんの言っていることは……おかしいとは思いません」

 だからこそ、私は素直に伝えた。

三日月「だけど、私達は……深海棲艦を倒すために造られた存在です。私達が戦わなければ、人類は制海権を奪われてしまいます」

電「……はい……」

三日月「私は、個人的に深海棲艦へ恨みは今のところありません。ですが、家族が乗っていた船を深海棲艦に襲撃され、家族を亡くした人だって世の中にはいたりします」

三日月「今もどこかで、深海棲艦が人類を脅かしているかもしれません。私達はそんな人類の、希望の光なんです」

三日月「だから私は、負けたくはありません。……戦いなんですから」

電「……やっぱり、電が言っていることは間違っ――」

三日月「けど、電さんが言っていることを私は間違っているなんて思いません。いや、思いたくありません」

 ギュ

電「み、三日月ちゃん……」


32: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 02:54:47.53 ID:hD5JILxZ0


三日月「深海棲艦も、もしかしたら私達と立場は同じなのかもしれません。本当は戦いたくないのかもしれません」

三日月「でも、私達は……深海棲艦が何なのであるかすら解明できてません」

三日月「それでも、戦っているんです。……戦争をして……いるんです」

三日月「そんな中でその優しい気持ちを持てることを、間違っていることだなんて思いたくありません。例え周りが電さんに何か言ったとしても……私は立派だと思います」 ギュー

電「……そんなこと言われたの、初めてなのです」

三日月「……争いを争いで解決するなんて、本当は良くない事だと思います。けれど、私達は戦わなければいけません」

三日月「私が今握っているこのあなたの手でも、いつかは深海棲艦を撃たなければいけない時が絶対に来ます。その時は、迷わないで……」

三日月「……そうでないと……やられてしまうのは電さんなんです。そんなの、私はいやです」

電「……はい、なのです」

電「三日月ちゃんに言ってみて……良かったのです。……ありがとう」 ギュー

三日月「はいっ」

 ……いつか、戦争が終わる時、平和が訪れる時。その結果が和解で終わるためには、電さんのような優しい心を持った人が絶対に必要だと私は思う。

三日月(何も感じないまま戦うより、全然いいに決まってる……)

 ブクブク

電「? 何の音でしょうか?」

 ブクブクブクブク

三日月「――!! 電さん!! こっちに!!」 グイ

電「――はにゃあ!?」

 バシャーンッ!!

イ級「……」


電「深海……棲艦……?」



33: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 03:33:56.61 ID:hD5JILxZ0


 海から浮上してきたそれは、私達の敵だった。深海棲艦、駆逐艦イ級。

三日月「……嫌な、タイミング……ですね」

電「し、司令官さん! 聞こえますか!?」

 ザザ

提督『こちら、司令室。私だ。電、もしかして深海棲艦が現れたのか?』

電「は、はいなのです! 数は駆逐艦イ級一隻、なのです!」

イ級「ィ――!!」 ギー

電・三日月「「!!」」

バン!

三日月「電さん!」 グイ

ザバーン!!

電「三日月ちゃん! あ、ありがとうなのです!」

三日月「大丈夫です!」

提督『……音からして、発砲してきたな』

提督『やむを得ないな……二人とも、なんとか撃沈させるんだ。無茶はしないようにな』

電「――ッ!」

電「は、はいなのです」

三日月「…………」

 私が握っている電さんの手は、震えていた。

三日月「……私が、やらないと……」

三日月(私が、この子を守るんだ)

イ級「……」 ギー

三日月「!! 電さん、動きますよ!!」 グイ

電「は、はい!」 ザッ

ザー、ザー

バンバン!!――ザバーン!!

三日月「……しつこいです……!!」

電(だ、ダメだ……わたし、三日月ちゃんの足引っ張っちゃってる……)

ザー、ザー

三日月「よし、ここまでくれば……! 電さん、手を放しますよ!」 ピタ

電「へ? あっ、はい!」 バッ

三日月「イ級は……私が倒します」 ザッ

電「み、三日月ちゃん!」

 一旦イ級から離れ距離を置く。そして私は単艦で再びイ級に近づく。こうすれば、ヤツは私を狙ってくる。電さんに攻撃はいかせない。

イ級「……」 ギー

三日月「当たってっ……!」 ガチャ

 バンッ!!


34: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 06:15:28.29 ID:hD5JILxZ0


イ級「!?」

 ドカーン!

三日月「当たった!」

イ級「……ィイイイイ――!!」 バン!

三日月「!?」 シュッ

 バシャーン!!

三日月(あ、危なかった……反応がもう少し遅れてたら、直撃してた)


電「み、三日月ちゃん! ……い、電だって、戦わなきゃ……」 プルプル

電(……あ、足が……動かない……手も震えてる……三日月ちゃんが、戦っているのに)


三日月「えぇい!!」

 バンバン、バン!!

イ級「――!!」

三日月(当たってる。ちゃんと弾は当たってるはずなのに、直撃しているはずなのに!)

三日月「まだ、倒せないの!?」

イ級「イィィィイイ――!!」

三日月「いや、効いては……いる。――それなら!」 カチャ

三日月「魚雷を――ひぃあ!?」

 ドーン!!


電「み、三日月ちゃん!!」


イ級「……イィィィィ」 ギー

三日月「ぁ、ぐぅ……!」

三日月(……直撃……中破……)

三日月「なんてこと、するのよ……服が台無し……」

三日月「……こんなの、痛く……ない!!」

三日月「私が……頑張らないと……!」


35: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 06:46:36.58 ID:hD5JILxZ0



電(お願い! 動いて……電の身体……動かないと、三日月ちゃんが!!)

提督『――づま! 電! 今どうなっているんだ! 状況は!』

電「――!!」

―――――――――――――――――――――


提督『誰だって最初は素人なんだ。三日月もいる。君は一人じゃない。……頑張れ、電』 ナデナデ

電『……は、はい! 頑張ります……電の本気を見るのです!』


―――――――――――――――――――――

電「……電が……電が……頑張らなきゃ……!! あんなこと言ったのに……三日月ちゃんが……必死に戦ってるのに……!!」

電「電が……頑張らないと……!」 プルプル

電「電が……いなづまが!!」 ジワァ

 ザー!!

電「電だって!! 電だってぇ!!」ガチャ

 バン!!


イ級「!?」 

ボカーン!

三日月「……え?」

 ザッ!

電「はぁ、はぁ……」

三日月「い、電さん……」


36: ◆jz1amSfyfg 2015/03/21(土) 07:30:03.31 ID:hD5JILxZ0


電「ひぐ……ひっぐ……!」

イ級「……」 ザバーン

三日月「て、敵艦……撃沈……」

電「み、三日月ちゃん……!!」 バッ

 ギュー

三日月「電さん……あなた……敵を」

電「ごめんなさい!! いなづまの!! 電の、せいで……三日月ちゃんが……三日月ちゃんが……!!」

三日月「……電さん」

三日月「私は、大丈夫ですよ? だから、泣かないで?」 ヨシヨシ

電「でも、でもぉ……!!」

三日月「…………」 ギュー

三日月(……私がすぐにイ級を倒せていたら……電さんは悲しむことはなかったのかもしれない……)

 申し訳ない気持ちになった。それと同時に、12.7cm連装砲を三発も当ててもイ級すら倒せない自分の無力さを改めて感じた。出撃したことがまだ一回もなかった、電さんの12cm単装砲の一発で倒せた敵ですら、私は倒せなかったんだ。恐らく、私はイ級が小破になるくらいしかダメージを与えることができなかっただろう。


『艦娘が使用する装備の性能は、使用者によって大きく変わるんだ。つまり、“使用者の実力が無い”と、例え良い装備を使ってもその性能は発揮されないんだ』


三日月「…………」

 前の司令官に教わった言葉が、頭を過ぎった。

三日月(私は……本当に……弱いんだなぁ……)

電「うっく、うう……!!」 ギュー

三日月「……」 ギュー

 私は、ただただ電さんを抱きしめる事しかできなかった。


45: ◆jz1amSfyfg 2015/03/22(日) 08:00:17.39 ID:tYygIWBm0


 ――ザザザ

提督『電! 三日月! 大丈夫か!? 状況はどうなっている』

電「ぐす、ぐす……」

提督『電……泣いているのか……?』

三日月「電さん、少し通信機借りますね」

三日月「司令官、私です。三日月です」

提督『!! 三日月、大丈夫か!?』

三日月「……私は一発被弾してしまい、中破状態です。でも、安心してください。電さんは無傷ですし、イ級は撃沈しました」

提督『……お前が中破状態でどう安心しろって言うんだ! ふざけるんじゃない!!』

三日月「!?」

電「え?」

提督「――!! ……す、すまん。……とりあえず、状況は分かった。詳しくは戻ってきたときにまた聞く。すぐに帰還するんだ」

三日月「りょ、了解……しました。失礼しました」

 ――ブッ

三日月「…………」

 まさか、怒られるだなんて思ってもいなかった。

三日月(……司令官は、私のことをそんなに知らないからあんなこと言えるんだ。……私の事を詳しく知ったら……絶対に)


46: ◆jz1amSfyfg 2015/03/22(日) 08:34:34.05 ID:tYygIWBm0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「い、電さん……別に大丈夫ですよ?」

電「ダメなのです! 電のせいで……三日月ちゃんは怪我をしまったのです。これくらいさせてください」

三日月「……わかりました。なら、お言葉に甘えます」

 電さんは、私の手をずっと引っ張ってくれた。別に、そんなに気にしなくてもいいのに……電さんは罪悪感を覚えてしまっているのかもしれない。むしろ、申し訳ないのは私なのに。

電「あっ、司令官さんが港にいるのです」

三日月「……」

 ザザン

提督「二人とも、お疲れ様」

電「は、はい……艦隊がお戻りになったのです」

三日月「……艦隊、帰還しました」

 司令官は、戻った私達を見て安心したかのように笑っていた。

提督「初の出撃で、大変だったろう。詳しい報告は入渠が終わってから聞くから、今は休むんだ」

電「……電は……足を引っ張っちゃっただけなのです……」

提督「ほら、そういうのは後だ。君たちが帰ってきただけでも私は安心だよ。とりあえず入渠だ入渠」 ポンポン

提督「それと、三日月」

三日月「……はい、何でしょう」

 スタスタ

三日月(司令官が、私の方にやってくる……やはり先ほどの事で怒られるだろうか……それよりも、失礼の無いようにしなきゃ)

 スタスタ ピタ

提督「……」

三日月「……」 フルフル

 司令官が、私の前でじっと見つめてくる。たったそれだけのことで、私の身体はなぜか震える。……必死に自分語りかける。

三日月(失礼の無いようにしなきゃ……失礼の無いようにしなきゃ、失礼の無いようにしなきゃ失礼の無いようにしなきゃ)

三日月(それに、怯えるな私……震えるな私。この人は、前の司令官じゃない。優しい人だって、会って間もないけど分かる。本当に心配していることだってわかる)

 ――でも、前の司令官だって……“最初”は優しかった。


47: ◆jz1amSfyfg 2015/03/22(日) 09:43:48.72 ID:tYygIWBm0


 ――転属命令が出たのだって、私のせいだ。優しくなくなったのも、私のせいだ。姉妹を馬鹿にされるようになったのも、私のせいだ。

三日月(……全部、私のせいなのは……分かってるんだ……でも、でも……)

 ――それだけは、許せなかったんだ。

提督「三日月」 スッ

 司令官が、手を伸ばしてくる。

三日月(――!! 何もしちゃダメだ、拒絶なんかしちゃダメだ、三日月。大丈夫、この人が私を……“殴る”わけないんだから……!!)

三日月「…………ッ」 フルフル

 スー

提督「……そんなに、怯えなくて大丈夫だ」

 ナデナデ

三日月「……し、しれい……かん?」

提督「……三日月が前の鎮守府でどんな風に過ごしていたとかは、まだ分からない」

提督「でも、何かあったんだなって事は……なんとなくわかるさ」

三日月「……」


53: ◆jz1amSfyfg 2015/03/22(日) 10:35:28.25 ID:tYygIWBm0


提督「別に、話してくれとは言わないさ。俺の最初の仕事は、お前達から信頼してもらえる提督になることだって思ってる。信頼もしていない上官に、打ち明ける事なんてできるはずないしな」

提督「幻滅するかもしれないけど、ぶっちゃける。俺、仕事中はできるだけ威厳がありそうにしゃべってる。……けど、実際は見かけどおり若造だ。まぁ、口調なんか変えても意味ないかもしれないけどさ」

提督「……んで、今は上官とかそういうのは関係なく言う。……お前らは、俺の仲間だ。遠慮なんかいらないし、何かあった時は全力で俺がお前らを支えてやる」

提督「だから三日月……怯えなくていい。震えなくていい。手を振り払ったことだって、気にすんな。……自分を軽く見るな。相談だって、いつでも受ける」 ナデナデ

三日月「……司令官……」

電「……司令官さん……」

 震えは、いつの間にか止まっていた。私の頭を優しくなでる司令官の手は、とても大きく感じた。

提督「……いや、ごめんな。入渠前だってのに長い話しちゃってさ。……とりあえず三日月、これ羽織っとけ」 バサ

三日月「え? だ、大丈夫ですよ! 私、塩水で濡れちゃってますし……これじゃ司令官の上着が」

提督「そんなの関係すんなって。……女の子が素肌晒すもんじゃないしな」 ポンポン

三日月「あっ……///」

 自分の状態を、ついつい忘れてしまっていた。結構痛かったはずなのに、なぜ忘れていたのだろうか。

提督「そんじゃ、入渠するとこまで案内するから付いてきてくれ。行くぞー」 スタスタ

電「……三日月ちゃん、行きましょうなのです」 ギュ

三日月「……はいっ」

 司令官の上着は、とても暖かかった。手を引いてくれる電さんの手も、温かかった。


54: ◆jz1amSfyfg 2015/03/22(日) 11:02:58.61 ID:tYygIWBm0


〈入渠場〉

 カポーン

電「はぅぅ……あったかいのですぅ~」

三日月「ですねぇ~……これは……すごく癒されます~」

 私達艦娘は、入渠するとなぜか身体の痛みとかが消え、傷が癒える。いったいどういう事なのかは、自分でも疑問です。

電「……三日月ちゃん、本当にごめんなさいなのです……」

三日月「ふふ、もう。電さんは優しすぎますよ。もう……大丈夫ですから。私ももう、あんな無茶はしません。それに、私が不甲斐ないばかりに電さんに敵を撃たせてしまって、本当にごめんなさい」

電「み、三日月ちゃんが謝ることなんて何も!」

三日月「電さん! ……もう、この話はおしまいです」

電「……はいなのです」

三日月「そういえば、電さんに聞きたいことがあるんです」

電「? 何ですか?」

三日月「司令官を、どう思いますか?」

電「……え?」

三日月「……私、お二人が察してくれているように……前の鎮守府で色々と問題起こしちゃったし、色々あったんです」

三日月「だから……提督、と人が自然と怖くなってしまって……司令官にもできるだけ干渉しないようにしちゃっていました」

三日月「話しかけてくれても、素っ気無い反応だったり、遅れた反応しちゃってたり……失礼な態度ばかり取っていました」

電「…………」

三日月「でも、司令官は……本当に優しい人です。そんな私の事も心配してくれていて、あんなことも言ってくれました」

電「……電は、ここが初めての鎮守府なので、あの人が初めての司令官さんなのです」

電「でも、あの人が司令官さんで良かったと思っているのです」


67: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 03:45:56.24 ID:LoVp9Ccr0


三日月「…………」

電「電は、さっき三日月ちゃんに伝えたことを、司令官さんにも打ち明けます」

電「あんなこと言っちゃったら、電は解体されてしまう可能性もありますけど……きっと司令官さんなら……」

三日月「……あの人なら、大丈夫だと思いますよ?」

 解体――それをされると、私達は艦娘ではなくなる。つまりそれは、役割の喪失を意味する。深海棲艦と戦うという役割を失った艦娘は、この世から消えてしまう。……微量の資材を残して。

三日月「それに、心配しないでください」

三日月「電さんがどんな答えを出そうとも、私とあなたは仲間ですから」 ニコリ

電「……うん……///」

電「ありがとう、なのです」 ニコリ

三日月「いえいえっ」

電「い、電はもうそろそろ出るのです! 三日月ちゃん、報告などは電がしておくのでゆっくり身体を休めてください」 ザバッ

三日月「はい、お任せしますね」

 怪我をすればするだけ、入渠する時間が長くなる。それでも、私達駆逐艦の入渠時間はかなり短い部類に入る。戦艦クラスの方々になるとものすごく長い。

電「それじゃあ、また後でなのですっ」 フリフリ

三日月「はいっ」 フリフリ


電(……電は、もう迷わないのです)


68: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 04:01:44.76 ID:LoVp9Ccr0


三日月「……報告、かぁ……」

三日月(つまり、三発を当てても倒せなかったという事も、当然報告することになる)

三日月「……司令官は、いったいそれをどう思うんだろ……」

 すっと目を瞑る。
そこに広がるのは、暗い世界。その中に――私と前の司令官が立っている。


『君が、三日月だね? 僕が提督だ。よろしく頼むよ』

三日月『は、はい! よ、よろしくお願いしましゅ!!』

三日月『あっ……///』

『……ぷっ、ははは!』

三日月『うぅ……』

『あっ……ごめん……つい。とりあえず、そう緊張しなくて大丈夫だよ。楽にね?』 ポンポン

三日月『は、はい!』


 懐かしい光景だった。こんな日々もあったんだ。


69: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 04:47:53.44 ID:LoVp9Ccr0


 バン、バン!

三日月『……はぁ……はぁ……』

『三日月? まだ訓練しているのかい?』

三日月『あっ……お疲れ様です、司令官』

『明日は大事な遠征任務があるから休めと指示したはずだよ?』

三日月『ご、ごめんなさい……』

『……ははは、謝ることじゃないさ。努力する子、僕は好きだよ』

三日月『……あ、ありがとう……ございます///』

『僕には、君と同じくらいの大きさの娘がいる。あの子も君と似ていて頑張り屋さんでな』

『だからこそ、余計に心配なんだよ。時には休むことも大事なんだ。今はゆっくり休みなさい』

三日月『は、はい!』

『……まぁ、その娘も僕の妻も明日会いにやってくる。きっと君と娘は仲良くなると思うんだ。明日はよろしく頼むよ?』




『提督! こちら海上護衛隊旗艦、神通です! て、敵が……深海棲艦が現れました!』

『ッくそ! なんで、このタイミングで……いつもはこんなことないはずなのに……ッ!』

『敵のか、数は……4隻っぽい!』

『……神通! 夕立! ――三日月!』

『頼む……何としても、深海棲艦を撃退させてくれ』

『その船には……娘と妻が……乗員しているんだ!!』


三日月「!!」

 バシャーン

三日月「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」

三日月「…………」

三日月「……私は……私は……!!」 ジワァ


 役立たず。



70: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 05:50:55.47 ID:LoVp9Ccr0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「……」 スタスタ

 入渠が終わった後の空気は、少し冷たい。でも私はこの肌を透き通るような空気が嫌いじゃなかった。

三日月「……」 スタスタ ピタ

 〈司令室前〉

三日月(もう、報告終わってるよね。うぅ、やっぱり入るの……少し怖い……)

三日月(……でも、そんなことも言ってられないよね)


「あぅ……司令官さん……そ、そっちは……め、です」

「……ふっふっふ……電は……やすいなぁ……」


三日月「え?」

三日月(な、中で何をしているの?) ササッ

三日月「…………」 ソー


電「ひゃあ! だ、だめなのです! そ、そっちは!」

提督「あっはっはっは! もう遅い! 奪ってやるぞぉ!!」


三日月「ま、まさか……!!」


――――――――――――――――――――――

提督『ふふふ……その事を上層部に公言したら……君はどうなるかなぁ?』

電『そ、それだけは……嫌なのです!』

提督『……なら、分かっているね?』

電『うぅ……はい、なのです……!!』

 提督 夜戦ニ突入ス

――――――――――――――――――――――

三日月「な、ななななななななな///」

三日月「な、何やってるんですか! 司令官ッ!!///」

 バターン!

提督「電、お前もう少しポーカーフェイスにやらないとダメだろ。声出てたし」

電「うう、負けてしまったのです……」


三日月「――え?」

三日月(……と)

三日月「トランプ?」


71: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 06:10:57.76 ID:LoVp9Ccr0


提督「おっ、三日月。入渠終わったのか、お疲れ様」

電「あ、三日月ちゃん。お帰りなさいなのです!」

三日月「…………」

三日月「あ、あの……お二人は何をしていたんですか?」

提督「え? ババ抜きだけど」

電「司令官さん……とっても強いのです……」

提督「いや、電が弱すぎるんだって……」

三日月「…………」

三日月(わ、わわわわわわ……私……なんて想像を……!!)

三日月「~~~~~!!///」 ガンガンガンガン!!

提督「おいいいい!! やめるんだ三日月! 何やってんだ!?」

電「み、三日月ちゃん! 頭怪我しちゃうのです!!」

三日月「……い、電さん……私を……埋める穴を作っていただけますか?……いや、作ってください!」

電「え? 別に良いですけど……どうしてですか?」

三日月「……今、穴に入って埋まっていたい気分なんです……」

電「はわわわ……わ、分かったのです! 司令官さん! スコップどこにありますか!?」

提督「素直に言う事聞くんじゃない! とりあえず二人とも落ち着け!!」


73: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 07:14:34.64 ID:LoVp9Ccr0


提督「……で、落ち着いたか?」

三日月「は、はい……失礼しました」

電「もう、ビックリしたのです」

提督(電が本当に穴を掘ろうとしたことにも驚いたけどな)

提督「まぁ、なんであんなことしたかは詮索しないようにするよ」

三日月「……ありがとうございます……」 ズーン

電「み、三日月ちゃん! 元気出すのです! 電が付いているのです! 何かあったのなら電に頼っていいのです!」 グッ

三日月「……天使がいます」 ギュー

電「はわわ! ……ふふ、三日月ちゃんは甘えん坊さんなのです///」 ギュー

提督(……あれ? 俺ここにいていいのか?)


75: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 08:44:15.87 ID:LoVp9Ccr0


提督「……」

三日月「あっ……ご、ごめんなさい電さん」 バッ

電「全然大丈夫なのです!」

三日月「でも司令官……なんでババ抜きなんてやってたんですか?」

提督(あっ、忘れられてなくて良かった)

提督「あぁ、もう報告は全部聞き終わってな。三日月を待っていたんだ」

三日月「そう……だったんですか。ごめんなさい、お待たせしてしまって」

提督「いいっていいって。それより電から聞いたぞ三日月」

三日月「…………」 ギュ

 来る。私の無力さを知った司令官からの一言が来る。
 自然と手を強く握りしめてしまう。

提督「電を必死に守ってくれたんだろ?」 ナデナデ

三日月「え?」

電「そうなのです! 三日月ちゃんが一人で深海棲艦に立ち向かって行って、電を守ってくれたのです」

三日月「し、司令官!」

提督「ど、どうしたんだよいきなり」

三日月「……聞いてないんですか?」

提督「え? いや……全部聞いたぞ?」

三日月「三発攻撃を当ててもイ級を倒せなかったことも……ですか?」

提督「あぁ、聞いてるけど」

三日月「……ど、どうして……」

提督「え?」

三日月「どうしてその事を責めないんですか……?」


76: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 14:47:23.03 ID:LoVp9Ccr0


提督「責めるって……責める事なんか何もないだろ」

三日月「だって……だって……!」

三日月「私はこんなに弱いんですよ!? 戦力にならないんですよ!?」

三日月「そんな私を……どうしてあなたは責めないんですか!!」

提督「……三日月」

提督「お前は弱くなんかないよ」

三日月「弱いですよ!!」

三日月「……私は……弱いんです……役立たずなんです!!」

提督「弱くなんかない!! 役立たずでもない!!」

三日月「ッ!!」

提督「……それに、戦力にならないなんて言ったら俺が……いや、提督という役職のやつら全員がそうなる」

提督「俺達は……戦う君達を見てる事しかできないんだからな」

三日月「それは……上官なんだから……当然のことです! 戦わなくていい方なんですから!」

提督「上官とかそういうのは関係ないんだよ!!」

三日月「……ッ!!」


77: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 15:18:37.84 ID:LoVp9Ccr0


提督「まだ子供のお前達が戦って……何で俺らは戦わなくていい奴らなんだ。そんなのはおかしいんだよ」

三日月「……子供って言っても!」

三日月「私は人間ではありません!! 兵器で――」

提督「――ッ!! それ以上何も言うんじゃねぇ!!」

三日月「!!」 ビクッ

電「…………」

提督「……その事は、二度と口にすんな。お前達は……そんなんじゃない」

三日月「でも……でも……!!」


『……役に立たない兵器だな、君は。……疫病神め』


提督「……お前達は……少し戦える力があるってだけで……普通の可愛い女の子達だよ」


『役立たずめ』


提督「……もう一回言うぞ? お前は役立たずなんかじゃないし、弱くなんかない」

三日月「……ぅぐ……ッ、ぐ……!!」 ジワァ


『役立たずめ』


提督「仲間を必死で守れる子が……役立たずなはずないだろ」

三日月「……違います……違うよ……司令官……」

三日月「私は……いや、わたしたち……睦月型は……」

 今になって、姉妹達を馬鹿にされたことがなんで我慢できなかったのか、分かってしまった。大切な姉妹が馬鹿にされる悔しさで溢れるのと、“自分と同じ性能”の子達を馬鹿にされることによって理解してしまう現実があるから。

三日月「弱いの……!!」 ポロポロ


80: ◆jz1amSfyfg 2015/03/24(火) 16:03:39.94 ID:LoVp9Ccr0


提督「……俺もさ、一応提督だ。……睦月型ってのがどういう子達か理解してる」

三日月「じゃあ……なん、で……」

提督「それでも、俺はお前を弱いと思わない。役立たずなんて思わない。……兵器だとも思わない」

提督「弱い奴は誰かのために必死に戦えない。役立たずなんてお前達艦娘には誰一人として存在しない。……兵器が、こんなに感情を爆発させて泣けるはずなんてない」 ギュー

三日月「……ぅぐ……ぅ……!! しれいかんは……知らないのよ……」

三日月「わたし、が……どれだけ……無力だって……ことが……!!」

提督「はは……確かに俺はお前の事、あまり知らないよ。今日会ったばかりだしな」

提督「でもな、これだけは断言してやる。俺は何があってもお前を役立たずだなんて思わないし、無力だとも思わない」

提督「……な? 電」

 ギュー

電「はいなのです」 ギュー

三日月「……いなづま、さん……!!」

電「三日月ちゃんは、無力なんかじゃないのです」

電「電は……わたしは、三日月ちゃんに救われたんです」

電「……今まで、いっぱい我慢してきたんですね? 後ろは電が抱きしめてあげます。守ってあげます。だから……もう我慢しないで?」 ギュー

三日月「うぅ……うぅ……!!」

提督「……ほら、今ここには俺と電しかいないし、我慢する必要はないよ。涙は俺が隠してやる」 ギュー

提督「それに……睦月型が弱いんだったら、俺が全員集めて……強くしてやる。睦月型のホントの力ってやつを証明してやる」


提督「そんでお前を、最強にしてやる。誰よりも強い、鎮守府最強にな」


提督「三日月は、弱くないんだから」 ギュー

三日月「…………ッ、!!」 ギュ

三日月「うわああああああああん!! うわあああああああん!!」 ギュー

 我慢が、できなかった。誰かにこう言ってほしかったのかもしれない。思い切り、甘えたかったのかもしれない。誰かに助けてほしかったのかもしれない。

電「……ッ!」 ジワァ

提督「…………」 ギュー

 部屋には、私の叫びにも似た鳴き声でいっぱいになっていた。司令官は私を静かに抱きしめてくれ、電さんは優しく後ろから抱きしめてくれていた。
 時間はゆっくりと、静かに過ぎていく。時間は、止まることはない。私が犯してしまった“過去の過ち”も、変えることはできない。永遠に忘れることもできないだろう。――けど

三日月「うわああああああんッ!!」

 この時だけは、何もかも忘れて、ただただ泣き続けた。


94: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 16:04:52.16 ID:ibnsmBWJ0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電「三日月ちゃん、間宮さんのご飯美味しかったですね」

三日月「はい! あれを毎日食べられると思うとなんだか頑張れる気がしますっ」

電「それにしても、司令官さんの一番好きな食べ物がボルシチだなんて意外だったのです」

三日月「確かに。結構珍しいですよね」

電「ボルシチって聞くと……電のお姉ちゃんを思い出すのです」

三日月「え? 電さんも姉がいるんですか?」

電「なのです! 響お姉ちゃんって言ってですね――」

 時刻はフタマルマルマル。もうすっかり夜だ。
 私達はあの後みんなで間宮食堂という場所でご飯を食べ、一日を終えた。それと、司令官曰く「この鎮守府ではできるだけみんなでご飯を揃って食べる事」が決まりらしい。ちなみに今は艦娘が寝泊まりする寮にいる。電さんとは同じ部屋だ。司令官が気を使ってくれたのかもしれない。

電「――あっ、もうこんな時間なのです」

三日月「あー、本当ですね。明日も早いですし、そろそろ寝ましょうか」

電「はい!」

三日月「……それでこれが……」 ジー

電「……私達のベッドですね」 ジー

三日月・電「「に、二段ベッド……!」」


95: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 16:10:23.48 ID:ibnsmBWJ0


電「二段ベッドなんて、初めて見るのです!」 キラキラ

三日月「私も前の鎮守府では布団でしたので、初めてです!」 キラキラ

三日月(……これは)

電(……是非とも)

三日月・電(上で寝たい!!)

三日月・電「「――はっ」」

電「もしかして三日月ちゃん……」

三日月「……電さんも……なんですね」

電「……はい」

 私達は顔を見合わせ、静かに頷き合う。

電「三日月ちゃんと……戦う日が来るなんて……思っていなかったのです」

三日月「ふふ、私もです。しかし、手加減はいりませんよ?」

電「もちろんなのですっ」

三日月「……では、いきましょう」

電「はい!」


三日月「最初はグー!」

電「じゃんけん!」

三日月・電「「ぽい!」」


98: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 16:43:35.34 ID:ibnsmBWJ0


 チョキ×チョキ

三日月「……やりますね、電さん」

電「ふふ、簡単には負けないのです」

三日月・電「「あいこで」」

三日月・電「「しょ!」」

グー×グー

三日月「」
電「」

三日月「き、気を取り直していきましょうか」

電「な、なのです。……あ、ちょっとパワー込めるのです」 ギュー

三日月(かわいい)

電「お待たせしました。では……いきましょう」

三日月「はい」

電「じゃんけん!」

三日月「ぽいです!」

 パー×パー

電「……」

三日月「……」


100: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 16:57:50.50 ID:ibnsmBWJ0


三日月「あ、あの……」

電「……三日月ちゃん、多分考えてることは電も同じなのです」

三日月「で、ですよね」

電「はい」

三日月「では……一緒に上で寝ましょうっ」

電「はいなのです!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電「三日月ちゃん、狭くないですか?」

三日月「はい、大丈夫ですよ。電さんも大丈夫ですか?」

電「大丈夫なのです」

三日月「なら良かったです」 ニコリ

電「今日は……いろんなことがありましたね」

三日月「……ですねぇ」

三日月(本当に……今日はいろんなことがあったなぁ)

三日月(……そういえば、私あの時思い切り司令官に抱き着いちゃって……)

三日月「……///」

電「あれ? 三日月ちゃんどうかしましたか? 顔がちょっと赤いのです」

三日月「な、なんでもないですよ! なんでも!」

三日月(……食事の時は謝れなかったし、明日会ったら謝ろう)


104: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 17:27:59.81 ID:ibnsmBWJ0


電「そういえば、三日月ちゃんに言いたいことがあったのです」

三日月「ん? なんですか?」

電「電にさん付けしなくても、別に大丈夫ですよ?」

三日月「え?」

電「呼び捨てで大丈夫って事なのです」

三日月「こ、これは癖みたいなもので……」

電「そうだったのですか」

電「でも、わがまま言っちゃうと……さん付けよりも普通に呼んでくれた方が電は嬉しいのです。電はさん付けされたことが無いので、少し落ち着かないのです」

三日月「あー、なるほど……」

三日月(確かに……私もさん付けされたら少し落ち着かなくなるかも)

三日月「分かりました」

三日月「けれど私……姉妹以外を呼び捨てにしたことがなくて、それもそれで落ち着かないのでこう呼ばせていただきます」

電「はいっ」

三日月「電さん!」

電「……三日月ちゃん、変わってないのです……」

三日月「……い、いつもの癖で……」

電「…………」 シュン

三日月「あぁ! そ、そんなに落ち込まないでください!」

三日月「い、電ちゃん!」

三日月「あっ」

電「!!」 パァァ

電「み、三日月ちゃん! もう一回お願いしますっ!」


105: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 17:30:46.82 ID:ibnsmBWJ0

三日月ちゃんって第六駆逐隊の誰とでも仲良くなれそうだよね。
引き続き書いていきます。


106: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 17:37:53.31 ID:ibnsmBWJ0


三日月「い……電ちゃん///」

電「はい! 三日月ちゃん!」

電「も、もう一回お願いします!」

三日月「は、はい。い、電ちゃん」

電「も、もっかいお願いするのです!」

三日月「も、もう! 何回言わせるんですか電ちゃん!」

電「……えへへ」

電「ごめんなさいなのですっ」 ギュー

三日月「……ふふっ」 ニッコリ

三日月「大丈夫ですよ、電ちゃん」 ギュー

電「はにゃ~……三日月ちゃんあったかいのですー」

三日月「電ちゃんもですよ~」


108: ◆jz1amSfyfg 2015/03/28(土) 18:41:58.28 ID:ibnsmBWJ0


三日月「そういえば電ちゃん、入渠している時に司令官にもあの事を伝えるって言ってましたけど、いつ頃伝えるつもりなんですか?」

電「あっ、あれはもう司令官さんに伝えたのです」

三日月「……え? そ、そうだったんですか!?」

電「はいなのです」

三日月(そんな感じ一切しなかったから意外だ……)

三日月「その、司令官はどういう反応でしたか?」

電「ふふ……三日月ちゃんと大体一緒なのです」

三日月「え?」

電「司令官さんは、電の頭を撫でながらこう言ってくれました」

―――――――――――――――――――――


提督『……君は、優しい子だ。私はその事を一切おかしいとは思わない』

提督『しかし、提督としてそれは正しいことだなんて断言はできない。だから、俺個人の意見を伝えるぞ』

提督『俺はお前の言っていることを間違っているだなんて思いたくないよ。お前も三日月も、兵器じゃないんだ。ちゃんとした意思があるんだ。考えることができるんだ』

提督『お前が、お前自身で答えを見つけるんだ。すぐじゃなくてもいいさ。時間はいくらでもかけていい』 ポンポン

提督『んで、答えが見つかったら俺に教えてくれ。支えてやるからさ。それがどんな答えでも、な』

提督『……ほら! そんな顔似合わないぞ? もう出撃の報告は終わってるし、三日月を待とう。トランプでも使って少し遊ぼう』 ニコリ


―――――――――――――――――――――

三日月「…………」

電「電は、もう……迷いません」

電「……私は、戦います」

電「そして、強くなります」

電「仲間も……深海棲艦も……助けられるように」


112: ◆jz1amSfyfg 2015/03/29(日) 14:28:29.46 ID:vI7gBQda0


三日月「それが……電ちゃんの答えなんですね?」

電「はい」

電「私の……答えなの……です」

三日月「……そっか」

三日月「電ちゃんなら、きっと強くなれます」

電「…………」

三日月「…………電ちゃん?」

三日月「私も……強く……なれると思いますか?」

電「……すー……すー……」

三日月「……ふふ、寝ちゃったのか……」

三日月「おやすみなさい。電ちゃん」 ギュー

 電ちゃんなら、きっと強くなれる。
 でも、私はどうなんだろうか。司令官は、私を最強にしてくれると言ってくれた。つまりそれは、鎮守府で一番強い艦娘にするってことだ。果たしてそんなことができるのだろうか。

三日月(……私次第なのかも……しれない)

 司令官に言われたことを、私自身が信じなければ、決して強くはなれない。そんなことは分かってる。――けど、やっぱり不安なんだ。

三日月「…………寝なきゃ」

電「すー、すー」

 今は余計な事は考えないようにしよう。そう思い、私は静かに眠りについた。


113: ◆jz1amSfyfg 2015/03/29(日) 15:00:11.72 ID:vI7gBQda0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



三日月「……あれ、ここはどこだろう」

 目を開けると、そこは白い世界だった。その白い世界はずっと奥まで続いていて、終わりが見えない。
 私はそんな中、一人でポツンと立っている。辺りを見渡しても、誰もいない。ただ一人だ。
 シーンっと辺りは静まっており、まるで時間が止まっているみたいだ。


『……では、行きましょう』


三日月「!?」 クル

三日月(左から……声?)

 静まり返っていた空間だったけれど、突然声が聞こえた。私は自然と左側に視線を移してしまう。

三日月「……私?」

 そこには、私がいた。


三日月『大丈夫です。皆さん私が守りますから! こんな私が旗艦では頼りないかもしれませんが、それだけは信じてくださいっ』


 そこにいる私は、にっこりと笑いながら周りの人達にそう伝えている。周りの人達の顔はぼやけていて見えない。人数はそこにいる私含めて6人だ。


三日月『……では、行きましょう! 皆さん、暁の水平線に勝利を刻みましょうっ!』

『『『了解!!』』』

三日月『では、全艦出撃です!』


三日月「…………」

 そこにいる私は、とても自信に満ち溢れている。多少下出に出ているけれど、私ではあんなことは言えない。
 ……いや、言いたい。だからこそ、ハッキリわかる。

三日月(ここは、夢の中だわ……)

三日月「……そしてあそこにいる私は……」

 自分がなりたいと思っている“理想の自分”だ。


114: ◆jz1amSfyfg 2015/03/29(日) 16:31:24.11 ID:vI7gBQda0



『……ふふふ……』


三日月「!?」 ビク

 今度は、後ろから笑い声が聞こえた。少し身体がビクッと反応してしまう。

三日月「……」 クル

三日月「……え?」

三日月(周りが……暗く……!?)

 先ほどまで白かった世界が、黒く染まり始めていた。辺りを見渡しても、理想の自分はいなくなっており、先ほどまであった白の世界は段々と蝕まれていく。


三日月『……ひどいよね……』


三日月「……わ、わた……し?」

 ここに先ほどまであった白の世界はすでに無くなり、黒の世界へと変わっていた。そして、もう一人の自分が立っている。距離はさっきまでいた理想の自分よりもはるかに近い。


三日月『……私だって、私だって、私だって、私だって、私だって……』 ブツブツ

三日月『……頑張ってるのに……司令官は……司令官は……!』


三日月「……」


三日月『……私は役立たず。私は無個性。私は疫病神』


三日月「…………」


三日月『役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず』


三日月「……やめて」


三日月『私は役立たず』


三日月「やめて」


三日月『私は……』 クル


三日月「!?」 ビク


三日月『……』 ニヤリ

三日月『人殺し』


三日月「――ッ!!」 バッ

 ダッダッダッダ

三日月「やめてッ!!」 ガシ

三日月『…………』


115: ◆jz1amSfyfg 2015/03/29(日) 16:52:31.95 ID:vI7gBQda0


三日月「そんなこと……私が一番分かってる……!!」

三日月「だから……もうやめて!」

三日月『…………』

三日月『……司令官の言ったことが本当だなんてまだ信じてるの?』

三日月「!!」

三日月『睦月型が最強になれるわけ……無いじゃない。役立たずの癖に』 ニヤニヤ

三日月「……そ、そんなこと!! わから――」

三日月『分かるに決まってるじゃない』

三日月『私、あなただもん』

三日月「な……」

三日月『罵声を浴び続け、暴力を振るわれ、姉妹を馬鹿にされた……役立たずのあなただもん』

三日月『任務が失敗となる原因を作ってしまった張本人のあなただもん』

三日月「―――!!」

三日月『……前の司令官の家族が乗った』 ニヤニヤ

三日月「お願い……やめて……!!」


三日月『……船を深海棲艦から守り抜けず』


三日月「やめて……やめてやめてやめて!!」


三日月『轟沈させたあなただもん』


三日月「やめてぇぇぇ!!」


116: ◆jz1amSfyfg 2015/03/29(日) 17:28:30.18 ID:vI7gBQda0


三日月『…………』

三日月「もう……やめて……」 ポロポロ

三日月『……ねぇ、なんで泣いてるの?』

三日月『自分が役立たずだってこと、自分で一番分かっているんでしょ?』

三日月『なのになんで直接言われると泣くの?』

三日月「…………」

 ガシッ

三日月『……あなたが現実を見れていないからよ』

三日月「……!!」

三日月『あなたは……いや、私は役立たず。いくら頑張ったって……最強になんて』

三日月『なれないよ』





三日月「――!!」 バッ

三日月「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……!!」

三日月(夢から……覚めた……?) キョロキョロ

電「……すー……すー……」

三日月「……電ちゃんが起きなくてよかった……」

三日月(……汗、だいぶかいちゃった)

 時間を確認すると、マルゴーマルマルだった。

三日月「…………」 スッ

 私は電ちゃんを起こさないように注意しながら、ベッドから降りた。


117: ◆jz1amSfyfg 2015/03/29(日) 18:17:29.42 ID:vI7gBQda0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「はぁ……はぁ……!」 タッタッタッタ

 朝のランニングは、目を覚ますには最適だ。

三日月(夢の中のあの私は……私の弱い心だ) タッタッタッタ

三日月(……言われたことだって……私が一番分かってる) タッタッタッタ

三日月(現実だってちゃんと見えてる。私が役立たずだなんて知ってる!) タッタッタッタ

三日月「はぁ……はぁ……!!」 タッタッタッタ

三日月(過去の過ちの罪の重さだって知ってる。全部知ってるよ!) タッタッタッタ

三日月「……でも……はぁ……はぁ……だからって……!!」


―――――――――――――――――――――


提督『お前を、最強にしてやる。誰よりも強い、鎮守府最強にな』


―――――――――――――――――――――

三日月(努力しないでいい理由になんて……ならない!)  タッタッタッタ

 ピタ

三日月「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 私は、もっと頑張らないとダメだ。

三日月(現実も受け止める。罪も受け入れる。逃げちゃダメなんだ)

三日月「……私は……自分の弱い心なんかに負けない……」

 夢の中で、なりたい理想の自分と……弱い心の自分を同時に見た。そして、弱い心の自分に対して何も言い返せなかった。
そんなのじゃダメだ。

三日月「私は……強くならなきゃ」

三日月「もっともっと頑張って……理想の自分になるんだ」

三日月「……いつまでも役立たずじゃ……いられないもん」

 朝の陽ざしが顔に当たる。その陽ざしはいつもよりまぶしく感じた。
 寝る前に感じていた不安は、気が付けば消え去っていた。


118: ◆jz1amSfyfg 2015/03/30(月) 02:25:15.27 ID:vmVYByvT0


 スタスタスタスタ

提督「よっ」

三日月「え? 司令官……?」

三日月「あっ、失礼しました! お、おはようございます!」 ペコリ

提督「おう、おはよう三日月」

提督「こんな朝早くからランニングするなんて、えらいな」

三日月「いえ、それほどでもありませんよ」

提督「……謙虚だなぁお前は」

提督「ほら、水飲みな」 スッ

三日月「え!? そ、そんな……申し訳ないですよ!」

提督「何が申し訳ないんだよ。運動したんだからちゃんと水分補給もしなきゃだろ。ほら」

 ペタ

三日月「ひゃあ! つ、冷た!」 ビクゥ

提督「あっはっは! 素直に受け取らなかった罰だ」 ケラケラ

三日月「……も、もう……」

提督「はっはっは。悪かったって」

提督「まぁ、ひとまず飲んどけ。な?」

三日月「……すみません、いただきます」

提督「……三日月。そういう時はすみませんって言うんじゃなくてな」

提督「ありがとうって言えばいいんだ。分かったか?」 ニコ

三日月「……ふふ。はいっ」

三日月「ありがとうございます!」 ニッコリ


119: ◆jz1amSfyfg 2015/03/30(月) 03:23:22.28 ID:vmVYByvT0


 司令官は仕事の時はできるだけ威厳のありそうな喋り方をしていると聞いた。確かに、普段とでは雰囲気が違う気がする。あまり変わらないかもしれないと司令官は仰っていたけれど、そんな事はないと思う。まぁ、結構素が出てしまっていることが多いけれど。
 仕事中は爽やかな人ってイメージで、プライベートでは面倒見の良いお兄さんって感じがするかも。よくよく考えると威厳がありそうな喋り方をしているのに、爽やかだと思えてしまえるのはどうなんだろうかってなる。あまり気にしないようにしよう。

提督「……本当に失礼かもしれないけど、俺三日月が笑ったの初めて見たかもしれない」

三日月「わ、私だって笑いますよ!」

三日月「……けれど……私……確かに司令官の前では笑っていませんでしたね。反応も素っ気無くて、話しかけてくれる司令官に反応するのも遅くなっちゃっていました」

三日月「ごめんなさい」 ペコリ

提督「……三日月」 ナデナデ

提督「そんなこと全く気にしてないよ。だからお前も気にすんな」 ナデナデ

三日月「……はいっ」


三日月「あっ……あと昨日の夜はその……」

提督「ん?」

三日月「え……えっと……そ、その……」 モジモジ

三日月「ご、……ごめんなさい……」 ペコリ

三日月「……///」 カァァ

提督「……みーかーづーきー」 スッ

三日月「へ?」

提督「そい」 ペチン

三日月「いひゃ!」

提督「お仕置きのデコピンだ」

提督「そういう時は謝るんじゃなくて?」

三日月「……えっと、その……」

提督「おう」

三日月「……あ、ありがとう……ございました……」 ニコリ

提督「……おうっ」


121: ◆jz1amSfyfg 2015/03/30(月) 04:34:25.13 ID:vmVYByvT0


三日月「それと司令官。私……もっと頑張りますね」

三日月「昨日あなたが言ってくれた期待に応えられるように」

提督「……だからこんな朝早くからランニングしてたのか」

三日月「はい! 戦う場所は海の上と言っても、体力は必要ですから」

三日月「まぁ……前にいた鎮守府の先輩の受け売りなんですけど」

提督「そっか。でも、無茶だけはするなよ? 体調崩したりしたら元も子もないからな?」

三日月「はいっ。けど、努力は怠りません!」

三日月「……いつまでも弱いままの、役立たずではいられませんから」

提督(……三日月、なんか少し雰囲気が変わったな。まぁだけど……)

提督「三日月。確かに頑張ることは良いことだけど、お前は今も弱くはないし役立たずなんかじゃないぞ。昨日も言ったけどな」

三日月「いや……それは……やはり違いますよ。現実は見ないと」

三日月「今の私はまだ弱いですし、このままではお荷物になってしまいます。そう言ってくれるのは本当にうれしいですけれど」

提督「……じゃあ聞くけど、三日月は強い人ってのはどんな奴の事をいうと思うんだ?」

三日月「え?」

三日月「それは……」 ウーン


122: ◆jz1amSfyfg 2015/03/30(月) 05:53:50.33 ID:vmVYByvT0


三日月「まず、単純に火力がある人だと思います。戦艦の方々などですね」

三日月「あと何があってもくじけない心を持っている人も強い人だと思います」

提督「ほい、ストップ」

三日月「?」

提督「三日月は今、強い人がどんな奴かって聞かれて、力がある奴とくじけない心を持った奴ってすぐに答えた」

三日月「はい」

提督「それは正解だ。確かにそんな奴らは強いって言えるだろうな」

提督「けど、そんなのほんの一部の要素にしか過ぎないよ」

三日月「え?」

提督「いいか三日月? 強さってのは人それぞれによって思い浮かべるものが変わるんだ」

提督「力のある奴とくじけない心を持った奴って答えたけど、もっと思い浮かぶだろ?」

三日月(……防御が固い人。運が良い人は……じゃんけんとかで強いよね。……まだまだ思い浮かぶかも)

三日月「はい。思い浮かびます」 コクン

提督「だろ? つまりな、強いって言葉は意外と曖昧な存在なんだ。たくさんの意味を持つ言葉だし、人のよってすぐに思い浮かべるものも変わる。捉え方も考え方すらも変わる。言葉の面白さってやつだな」

提督「三日月は、自分が火力はないから弱いって思っていないか? 敵を落とすことができないから」

三日月「……一理あります」

 そう、図星だ。私は火力がない。だから深海棲艦を倒すことがなかなかできないんだ。

提督「そうか。でもな三日月」

提督「お前には仲間を必死に守ろうとする強い心がある。電の優しい心だって、俺は強さだと思っているよ」

三日月「……しかし……敵をたおせなくちゃ……」

提督「それよりも、大事なことだと思うぞ? 俺はな」

三日月「…………」


123: ◆jz1amSfyfg 2015/03/30(月) 06:58:42.88 ID:vmVYByvT0


提督「三日月は敵を倒せなかったって落ち込んでるけれど、動くイ級に三発も攻撃を当てられたんだぞ? 砲撃って、当てるのめちゃくちゃ難しいんだろ?」

三日月「それは……まぁ……」

 確かに難しい。相手の動きを読む必要もあるし、弾道の軌道も予測する必要があって、その日の風なんかも関係してくる。それも動きながらだ。こうして考えてみると、かなり難しい。

提督「だろ? それを三発も当てられたんだ。それってすごいことだと思うぞ?」

提督「それに、電の攻撃では一撃で撃沈できたって話だけど、三日月がダメージを与えてくれていたのと、敵の意識が完全に三日月へ向いていたことが関係すると思う」

提督「相手だって命がけなんだ。真正面から直撃をする際、防御はするし致命傷は避けるだろうさ。でも、意識が向いていなかった電からの砲撃をいきなり食らうことになったら、防御なんてできるわけがない。だから一発で撃沈できたんじゃないか?」

提督「全部推測の話だから確信は持てないけど……そう考えるとなんか元気出てこないか? 自分でもいけるって思えてくる気がしないか?」

三日月「……そうかも、しれません」

提督「だろ? 何事も、ポジティブに考えた方が気が楽になるさ」

三日月「……」

提督「もう一回だけ言うけど、お前は弱くなんかないよ。お世辞じゃなくて、純粋に思っていることだ」

 この人は、会ったばかりの私にこう言ってくれる。なんだか……

三日月「……///」

 すごく嬉しくて、顔が熱くなる。

三日月「司令官」

三日月「……私、頑張りますっ」

提督「……無茶はするなよ? 焦んなくても、俺がお前らの道筋を作ってやる。お前達はその道筋を辿って、もっと成長していけばいいんだ」

提督「頼りないかもしれないけれど……信じてくれ」

三日月「……はい」

三日月「……あなたを、信じます」


127: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 00:04:02.22 ID:aOPfZZ100


提督「ありがとう、三日月」 ナデナデ

三日月「はいっ」

提督「そう言えば三日月は頭撫でられてもびっくりしたりしないんだな。つい撫でちゃうけど」

三日月「私は……慣れてますから」

三日月「あっ、でも見境なく撫でるのはダメですよ! 嫌がる子もいますから」

提督「電にも言われたな。分かってはいるんだけど……癖でな」

提督「三日月や電と同じくらいの大きさの弟にいつもやっていたからさ」

三日月「……司令官はご家族と離ればだと、やっぱり寂しいですか?」

提督「ん? まぁそりゃな」

提督「けど、お前達だって姉妹と離ればなれなんだ。俺だけが寂しいって訳じゃない。そうだろ?」

三日月「そ、それは……」

提督「まぁ心配すんな。お前の姉妹はちゃんとこの鎮守府に集めてやるからさ。今は別の鎮守府にいるかもしれないけど……なんとか交渉して着任させる」

三日月「……あんまり焦らなくても大丈夫ですよ?」

提督「あぁ。なるべく急ぐけど、お前達には心配かけさせないようにするよ」 ポンポン

三日月「…………」

 本音を言うと、皆には会いたいという気持ちもあるけれど、“どんな顔をして会えばいいか分からない”と言う気持ちもある。

三日月「……はい」 ニコ

 でも今は、笑っていようと思った。

提督「さて、七時には朝食だ。ひとまず三日月はシャワーでも浴びて、電と一緒に食堂に集合な」

提督「今日も忙しいから、一緒に頑張ろうな」

三日月「はい!」

 今日も一日が始まる。


128: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 00:37:43.09 ID:aOPfZZ100


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「ふぅ……やっぱり朝のシャワーっていいなぁ~」 ホカホカ

 現在はマルロクサンマル。六時半だ。

三日月(電ちゃんはもうさすがに起きてるよね。心配してるかもしれないから早く戻らなきゃ)

 スタスタスタ ガチャ

三日月「ただいまー。電ちゃんごめんなさい。ちょっとランニングに……」

三日月「……あれ?」 キョロキョロ

 部屋の中を見渡しても、電ちゃんの姿は見えなかった。

三日月「……まさか」

 スタスタスタスタ

三日月「い、電ちゃん!」

電「すー、すー」

 電ちゃんはまだぐっすりと眠っていました。

三日月「め、目覚ましはセットしたはずなのに……」 チラ


潰された目覚まし時計「」


三日月「め、目覚まし時計さーーーん!!」

三日月「電ちゃん! もう六時半過ぎてますよ!? ち、遅刻してしまいます!!」 ユサユサ

電「うーん……おさわりは……ダメ……なのですぅ……」 スヤスヤ

三日月「どんな夢見てるんですか!!」


130: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 04:44:01.13 ID:aOPfZZ100


電「……みかづき……ちゃん……」 スヤスヤ

三日月「!?」

電「……えへへぇ……」 スヤスヤ

三日月「……もうっ」

三日月「電ちゃん? 早く起きてくだ」

電「ねぼすけ……さん……ですぅ……」

三日月「早く起きてください! ねぼすけさんはあなたです!!」

電「ふぇ!?」

三日月「もう……朝ですよ? 早く起きましょう。ね?」

電「あぁ……おはようございますぅ~……暁お姉ちゃん~」 ボー

三日月「私三日月ですよ!? ほら、寝ぼけてないで」

電「……」 ボー

三日月「まずは顔を洗いましょ。あと……髪もぼさぼさなので――」

電「暁お姉ちゃ~ん」 ガバッ

三日月「!?」

 ボスン

電「えへへぇ~」 ギュー

三日月「い、いいい電ちゃん!?」

電「会いたかったのですぅ~」 スリスリ

三日月「……電ちゃん」

三日月(……電ちゃん……寂しいのかもしれない)


131: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 05:06:13.65 ID:aOPfZZ100

>>129

嬉しい限りです。三日月ちゃん好きがもっと増えてくれるように完結目指して頑張ります!


132: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 05:13:18.61 ID:aOPfZZ100


三日月「……電ちゃん。私は三日月ですよ?」 ナデナデ

三日月「今日も一日が始まります。早く起きましょ? ね?」 ギュー

電「……ん~?」 スヤスヤ

電「……ん?」

三日月「……」 ギュー

電「!?//////」

電「み、みみみみ三日月ちゃん!?」

三日月「あっ、電ちゃん。起きましたか。おはようございます」 ニッコリ

電「は、はい……おはようございます……って! 三日月ちゃん!? どうして電に抱き着いているのですか!?」

三日月「え? 電ちゃん覚えて……」

電「???」

三日月「……ふふ」

三日月「電ちゃんが可愛かったので、つい。ごめんなさい」 ニコ

電「だ、大丈夫なのです。あっ、でも嫌なのではなく、そ、その……」 ゴニョゴニョ

三日月「今はそれより、急いだ方が良いですよ? もうすぐ朝食の七時になってしまいます。まずは顔を洗いましょうっ。髪は私が梳かしてあげます」

電「は、はい! 起きるの遅くてごめんなさいなのです!」

三日月「さ、スピード勝負です!」

電「は、はいなのですぅ!!」 バッ

三日月(……さっきの電ちゃんの行動は秘密にしておこ)


133: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 10:24:37.51 ID:aOPfZZ100


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈司令室〉

提督「あっはっはっはっは!!」

電「も、もう! 司令官さん! 笑いすぎなのです!!」

提督「はははは、いやぁごめんごめん。なるほど、それで今朝の朝食はギリギリの時間だったんだね」

電「うぅ……三日月ちゃん、ごめんなさいなのです」

三日月「全然大丈夫ですよ! 気にしないでくださいっ」

電「……はい」 シュン

 現在時刻はマルハチマルマル。間宮さんの朝食を食べ終え、今日行う事を聞くために司令室へ集合している。それにしても電ちゃんが朝に弱いことは意外だった。

提督「さて、雑談はここまでにしておこう。本日君達にしてもらう事を説明するよ」

三日月「はい!」

電「頑張るのです!」

 司令官は今朝会った時とは雰囲気が変わっている。所謂お仕事モードだ。

提督「まっ、そんなに緊張することもないさ。出撃はしないからね」

提督「君達には本日、演習訓練をしてもらう。朝から夕方までみっちりな」

 演習訓練は、艦娘同士で戦い戦闘経験を得る訓練だ。私も前の鎮守府では良くやっていた。

電「演習訓練……ですか」

提督「あぁ……っと言っても、ここはまだできたばっかの鎮守府で、私はまだまだ提督になったばっかだ。他の鎮守府に演習訓練を手伝ってもらえるほど世の中甘くない。どこも忙しいからね」

 そう、演習訓練は“基本的”に他の鎮守府の艦娘達と行うものだ。

提督「だから君達にはこの鎮守府内で演習をしてもらうことにする」

でも、別に“自分の鎮守府”の艦娘とすることもできる。あまりやっているところは多くないみたいだけれど。

三日月「てことは……私と電ちゃん同士で演習を行うって事でしょうか?」

提督「……ちゃん?」

三日月「へ?」

提督「え? ……あぁ、なんでもない。そういう事だね」


134: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 10:33:50.74 ID:aOPfZZ100


提督「まぁ、君たち同士で行う演習訓練は砲雷撃戦ではないけどね」

三日月・電「「え?」」

提督「っま、それは後でのお楽しみということで」 ニヤニヤ

電「き、気になるのです」

提督「他の鎮守府ではあまりやってないことをやってもらうって事だけヒントだね。まっ、今は忘れときなって」

三日月(……他の鎮守府ではやってない演習訓練? 砲雷撃戦以外で?)

 何をやるかは検討が付かなかった。

提督「もちろん砲雷撃戦の演習もやるよ。んで、今からその演習相手を着任させる」

電「着任……させる?」

提督「あぁ。工廠に移動するよ」

提督「建造だ」


135: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 10:53:41.34 ID:aOPfZZ100


 〈工廠〉

提督「妖精さん、準備はできてるかい?」

妖精さん「オウ、バッチリダゼ」

電「はわわぁ……妖精さん可愛いのですぅ~」 キラキラ

三日月「……っ」 コクンコクン

提督「ほらほら、ちゃんと新しい仲間の着任する瞬間を見るんだぞ?」

三日月「あっ、はい!」

電「はっ、つい……」

三日月(建造……かぁ)

 建造。それは私達艦娘をこの世に現れさせる方法である。どういう原理かは分からないけど、私達はこの建造によってこの世に君臨するんだ。

電「司令官さん。資材はどれくらい使うのですか?」

 そう、資材を使って。その資材が私達を呼び出すために必要な物だ。本当に、謎が多い。なんでこれで私達艦娘は出てくるのか。艦娘の自分でも分からない。
 そして、疑問はまだある。この建造では誰が出てくるかは分からない。つまりランダムだ。ってことは同じ“駆逐艦 三日月”が出てくることもある? という疑問を自分でも浮かべたことは当然ある。
 でも、それはない。なぜだか分からないけど。“すでにこの世に存在している艦娘は出てくることがない”のである。だから自分と同じ存在が出てくることはない。その辺はちょっと安心だ。
 自分が目の前に現れたら、さすがに怖い。


136: ◆jz1amSfyfg 2015/04/07(火) 11:01:40.86 ID:aOPfZZ100


提督「資材? あぁ、オールマックスだよ」

 なんだかとんでもない一言が聞こえたような気がした。

電「へ?」

提督「だから、オールマックス」

三日月「……し、司令官?」

電「電達……まだまだ資材不足の貧乏鎮守府なのですよ? そんなことしたら」

提督「まぁまぁ、そこら辺は私が頑張って何とかするよ」

提督「こういうので大事なのは勢いだ! 来てほしいのは戦艦の子だけど、例え戦艦の子がやってきやすい資材を使っても出ない事はある。だったら、思い切りオールマックスでな」

三日月「ど、どういう理論ですか!」

提督「まぁまぁ! 記念すべき初建造だから思い切りやってみようぜ!」

電「はわわわわわ」

提督「よっしゃ、妖精さんやっちゃってくれ! 高速建造だ!」

三日月「司令官! 素が出てます!」

妖精さん「オッケー」

妖精さん2「イクゼー、ヤルゼー、チョウヤルゼー!」

妖精さん3「ファイヤー!」

 ボォォォォォ!!

 ピカーン!!

三日月「ま、まぶし!」

提督「さぁ……誰が来るかな」

電「け、建造が終了したのです」

 フシュウウウ

 私達の記念すべき三人目の仲間が着任する瞬間だった。煙を吐き出す建造ドッグからは……



金剛「英国で産まれた帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」 ニコー

 とても綺麗で、にこやかに笑う戦艦の方が現れた。


141: ◆jz1amSfyfg 2015/04/12(日) 19:50:43.03 ID:EbCvRxTi0


電「戦艦……?」

三日月「はい、そうだと思います」

 私達は驚きを隠せなかった。私が前にいた鎮守府ですら、戦艦の方はいなかった。艤装の大きさと立派さを見る限り、私達駆逐艦では絶対に付けられないだろうなと即座に分かってしまう。それにしても……

三日月(き、綺麗な人です……!)

電(か、かっこいい……!)


金剛「ん~? !! オーウ!」 バッ

三日月・電「「え?」」

 ダッダッダッダ

 ギュー

金剛「可愛いネー!! ユー達は駆逐艦デスネー!? ン~、妹にしたいデース!!」 ギュー!!

三日月「うぐっぐぐぅ……!!」

電「ぐ、ぐるじいの……です……!!」

金剛「オウ、ソーリー」 バッ

三日月「し、死んじゃうかと思いました……」

電「なのです……」

金剛「HAHAHAー! ゴメンネー!」

 なんだか少しイメージが崩れた気がしました。

提督「君は……金剛型と聞くと戦艦の子かな?」

金剛「そうデース!! ユーが提督かナー?」

提督「あぁ、私がこの鎮守府の提督だよ。君みたいな子が来てくれてとても嬉しい。よろしく頼む」 スッ

金剛「オーウ! ご丁寧デース! こちらこそヨロシクオネガイシマース!」 ギュ

金剛「駆逐艦ズのプリティーなユー達は誰デース?」 チラ


142: ◆jz1amSfyfg 2015/04/12(日) 20:25:02.96 ID:EbCvRxTi0


三日月「あっ……も、申し遅れました! 私は睦月型10番艦の三日月です! よろしくお願いします」 ビシ

電「あ、暁型4番艦の……い、電です!」 ビシ

金剛「オッケーイ! イナヅマとミカヅキ、デスネー? あんまり固くならないで平気デスヨー? ヨロシクデース!」 ナデナデ

三日月・電「「は、はい!」」

金剛「ウーン、可愛いネ~」 ニコニコ

妖精さん「ネエチャン、オレラハカワイイカイ?」

金剛「ンー? 確かに可愛いけど……この子達には敵わないネー!」

妖精さん2「オウマイゴッド!!」

金剛「それで提督ー? 他の艦娘達はどこデース?」

提督「あぁ、その話なんだが」

電「実は……」

三日月「今はまだ私達しかいないんです。金剛さんが三人目の艦娘です」

金剛「What!? それホントデスカー!?」

電「は、はいなのです」

提督「まぁ、この鎮守府昨日できたばかりだしな」

金剛「……なるほどー」

提督「すまないな……幻滅させてしまったか?」

金剛「いや、そんなことないデスヨー」

金剛「どんなに立派な鎮守府だって、最初というものは必ずありマース。皆さんで協力し合って、この鎮守府も立派な鎮守府になればいいだけデース!」 ニッコリ

金剛「むしろこの鎮守府で初めての戦艦として、ガッカリさせない様に私ガンバルネー!」

提督「あぁ、期待してるよ」 ニコ


143: ◆jz1amSfyfg 2015/04/12(日) 21:48:30.47 ID:EbCvRxTi0


電「三日月ちゃん」 ボソ

三日月「ん?」

電「金剛さん……良い人ですね」 ボソ

三日月「ふふ……ですね」 ニコ

 戦艦と聞くと、どうしても怖いイメージがあったけれど、そんなことはなかったみたい。

金剛「では提督―! 早速だけれど、私はどうすればいいかナー? 出撃デース!?」

提督「いや、実は君を呼ぶのにだいぶ資材を使ってしまってね。しばらく出撃はできないと思う。そのかわりにあまり資材を使わずにやれる演習訓練でこの子達を――」

金剛「し、しばらく出撃できないのデスカー!?」

提督「……あ、あぁ。戦艦は出撃させるのに結構資材を使うからね。海域への出撃は当面電達に任せるつもりだ。だから君にはこの子達を――」

金剛「そ、そんなー! お留守番しかできないなんてつまらないデース!!」

提督「ごめん! 最後まで言わせてくれ!」

金剛「OH、了解デース」

三日月「あはは……」

電「元気な人なのですっ」 ニッコリ


144: ◆jz1amSfyfg 2015/04/13(月) 06:10:13.63 ID:o3UoSJ330


提督「よし、金剛。もう一度聞いていてくれよ?」

金剛「はいデース!」

提督「今はまだ資材が少ない」

金剛「うんうん」

提督「戦艦の君は出撃するのに多くの資材を使ってしまうから、できたばっかウチの貧乏鎮守府ではしばらく出撃させることができない」

電「そんな鎮守府でオールマックス建造したのは司令官さんなのです」

三日月「電ちゃん! しっー」

提督「だから、しばらく出撃はさせるとしてもこの子達駆逐艦に行ってもらう予定だ」

金剛「まぁ……仕方ないですネ……」

提督「そこで、君にはこの子達の演習訓練の先生になってもらいたいんだ。演習なら、使う資材は少なくて済むし、この子達の練度も上げることができる」

電「……練度?」

三日月「私達の強さみたいなものですよ。練度が高ければ高いだけ、私達艦娘は強くなるんです」

電「なるほど。勉強になるのです」

 ちなみにこの練度には1~99までの数があって、それが上がれば上がるだけ強くなるらしい。
 でもそれは私たち自身では確認することができない。私達艦娘の練度を“見ることができる素質を持った特別な人”が提督になれるという噂を聞いたことがある。また、練度にも限界はあるらしく、その限界を迎えた艦娘は自分の練度の高さを実感できるようになるらしい。曖昧な事ばかりだけれど、それくらいしか私にもわからない事だった。
 妹の一人の望月が、昔に『まぁ、ゲームでいうレベルみたいなものかー』っと言っていたことを思い出した。これはどういう意味なんだろうか。今だに分からない。


145: ◆jz1amSfyfg 2015/04/14(火) 03:34:04.56 ID:lrDkpbcc0


金剛「なるほどなるホドー。では、私はこの子達のteacherになればいいんですネー?」

提督「そう言う事だ」

金剛「了解したデース! 二人ともヨロシクデース!」

三日月「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」 ペコリ

電「よ、よろしくお願いします! なのです!」 ペコリ

金剛「HAHA! 礼儀正しい良い子達デス」

金剛「では早速何を教えればいいデース? 砲撃のコツとかデスカー?」

提督「いや、そういうのは大丈夫だ」

金剛「オーウ?」

提督「この子達の演習相手になってほしいんだ。つまりは対決してくれって事だね」

金剛「……提督―、それはつまりは駆逐艦対戦艦の演習訓練をするから、私はその敵役をやればいいってことデース?」

提督「まぁそういう感じかな」

金剛「ほうほうー……まぁ確かにー、その方がコツとかを聞くよりも経験になりますネー」 コクンコクン

三日月(……演習相手を着任させると言っていたから、金剛さんが来た時点でそうなるとは思っていたけれど……やっぱり緊張するわね……)

電(うぅ……こ、怖がっちゃダメよ電! これも強くなるためなのです!)

金剛「そう言う事なら、私がビシバシ二人を鍛えちゃうワ! 二人とも、覚悟してくださいネー!」

三日月「……頑張ります」 グッ

電「い、電もです」 グッ


146: ◆jz1amSfyfg 2015/04/17(金) 14:51:12.61 ID:HtxEqXOs0


 〈演習場〉

電「ひ、広いのです……」

三日月「で、ですね……鎮守府の近海に出るのとあまり気分は変わりませんね」

 私達は早速演習訓練を行うために鎮守府にある演習場に移動した。工廠から出て、すぐ近くにある海が演習場となっているらしい。かなり広く、奥でこちらに手を振ってきている金剛さんがいる位置まで、結構な距離がある。

三日月「でも、ここだったら実戦と似た訓練ができそうですね。電ちゃん、一緒に頑張りましょうっ!」

電「はいなのです! 今度は電が三日月ちゃんを守ってあげるのですっ」

三日月「ふふっ、ありがとうございます。では私も電ちゃんを守りますね」 ニッコリ

提督『――電。三日月。聞こえるか?』 ザザ

電「あ、司令官さん。大丈夫なのです。聞こえます」

三日月「はい、私も聞こえていますよ」

提督『よし、やっぱり演習場だと電波もいいね。君達も金剛もちょうど見える場所があったから、私はそこから見ているよ』

 チラッと陸の方を見ると、司令官が見えた。

提督『演習開始の合図は私が出すから、その前に一旦確認だ。君達は演習の時にどうすれば勝利になるか分かっているな?』

電「確か……相手をよりもダメージを受けず、相手の方にダメージを与えれば勝てると聞いたのです」

三日月「あとは相手の過半数を戦闘不能にさせるか、旗艦を大破にさせると勝利ですね」

提督『その通りだ。相手は戦艦の金剛だし、かなりの経験になると思う。頑張るんだぞ』

三日月・電「「はい!」」


147: ◆jz1amSfyfg 2015/04/17(金) 15:32:15.61 ID:HtxEqXOs0


金剛『HEY! テートクー!! 聞こえてますかーーー!?』 キーン

提督『うおおおお!! み、耳がぁぁぁぁ!!』

三日月「!!」 ビクッ

電「はわわ! び、びっくりしたのです」


金剛『あっ、提督の声聞こえましたー! すごいデース!!』 キーン

提督『こ、金剛! もう少し小さい声でも聞こえるから! ちょっとトーンを下げてくれ!』

金剛『オーウ、了解ネー』

提督『あぁ……そのくらいで大丈夫だ。ありがとう』

三日月「し、司令官……大丈夫ですか?」

提督『あぁ、大丈夫だy――』

金剛『OH! 三日月の声デース!! ヤッホー!!』 キーン

提督『うおわあああああああああ!!』

金剛『あっ』

 通信機と正面から声が届く。結構距離あるはずなのに……。

電「……み、耳が痛いのです」 ズキズキ

三日月「……司令官はもっと痛そうですね……」 ヅキヅキ


149: ◆jz1amSfyfg 2015/04/19(日) 04:39:45.49 ID:SNb1/WpS0


提督『……とりあえず、そろそろ演習を始めたいと思う。金剛、二人の相手、よろしく頼むよ』

金剛『了解デース!』

三日月「金剛さん! よろしくお願いします!」

電「なのです!」

金剛『HAHA! こちらこそよろしくお願いしマース!』

提督『あぁ、そういえば言い忘れてたことがある。三日月、電』

三日月・電「「?」」

提督『この演習は予定通り朝から夕方まで何回も行ってもらうけど、その度に勝利数を数える。金剛は二人の先生だが、勝つつもりで挑むんだぞ』

金剛『その通りデース! 私はあなた達の先生だけど、同時に後輩デース。二人のために頑張るから、ユー達もファイトデース!』

三日月「はい! 演習と言えども、戦いであることには変わりません。負けないように頑張ります!」

電「金剛さん、ありがとうございます!」

提督『よし、みんな気合十分みたいだな。じゃ、そろそろ始めよう。通信機を切るぞ』

 プツン

三日月「え?」



提督「…………」 スーーーー

提督「――これより!! 演習訓練を開始する!!」

提督「全艦!! 抜錨ッ!!」



電「!!」 ガチャ

三日月「は、はい!」 ガチャ


 こうして、演習訓練が始まった。


150: ◆jz1amSfyfg 2015/04/19(日) 05:22:50.39 ID:SNb1/WpS0


 ――その次の瞬間だった。

 ドカーン!!

三日月「!! 電ちゃん、右に!!」 バッ

電「!!」 バッ

 ザバーーーン!!


金剛「ワーオ、初弾を避けましたかー。中々やりますネー!」

金剛(ふふふー、ダメよ二人ともー……演習を始める前から距離の計算はしなくっちゃね。戦場ではいつ攻撃が来るか分からないわよ!)

金剛「そこはもう……私の距離ネー」 ゴゴゴゴゴ


電「こ、この距離から!?」

三日月「さすが戦艦……ですね……」

三日月(戦う前から……戦いは始まってるってこと……ね)

三日月「電ちゃん! この距離では私達の弾は恐らく届きません! 左右に展開して、攻撃を避けながら金剛さんに近づ――」    ドカーーーン!!

三日月「ッ!?」 シュッ    ザバーン!!

電「み、三日月ちゃん!!」

三日月「大丈夫です!! 少し掠めただけです!! 行きましょう!! 電ちゃんは右に!!」 ザッ

電「は、はい!!」 ザッ



金剛(咄嗟に身体をずらして避けたわね。良い動きだわ)

金剛「全砲門! Fireー!!」 ドンドンドーーーンッ!!



 バシャーーン、ザバーン!! ――バシャーーンッ!!

電(え、演習なのに怖いのです!!) ザー、ザー

三日月「電ちゃん! スピードは緩めちゃダメですよ!」 ザー、ザー

電「はっ、はい!!」 ザー、ザー


151: ◆jz1amSfyfg 2015/04/19(日) 06:26:58.70 ID:SNb1/WpS0


 周りのあちこちから水しぶきの上がる音が耳に届く。そして、身体の横を通って行く砲弾の雨。一発でも当たったらおしまいだ。

三日月(少しずつ距離は近づいてきてる……攻撃も避けれてる……)


金剛「Fireー!! Fireー!!」 ドーン!! ドーン!!


三日月(右!!……左!!) シュッ ザッ

 バシャンバシャーン!!

三日月(回避成功! 次!) ジー


三日月「!! 電ちゃん! そっちに攻撃行きます!!」

電「はい!」     ドカーンドカーン   バシャンバシャーン!!

三日月(電ちゃんも回避成功! 良い動きです!)

電「三日月ちゃんありがとうなのです!」

三日月「はい!」

 距離も埋まってきている。攻撃も避けれている。良い調子だった。


金剛「……なら、これでどうデース!?」 ドンドーン!! バッシャーーーーン!!

 ――でも、金剛さんはそう甘くなかった。

三日月「ふぇ!?」

電「じ、自分の周りに!?」

三日月(水しぶきで金剛さんの主砲の向きが見づら――)

 ドンドカーン!!

三日月「――ッ!?」

三日月(これは、右!) シュッ

 ザバーン!!

三日月「あ、あぶなか――」 チラ

電「三日月ちゃん!!」

三日月「へ?」

 私に近づく砲弾が目に映った。――私が避けた砲弾は、フェイクだったんだ。囮からの偏差射撃。私は右に動かされたんだ。


 ボカーン!!


電「み、三日月ちゃーん!!」

 ドンッ!

電「――!?」 ハッ



 ボカーーーン!!


154: ◆jz1amSfyfg 2015/04/20(月) 04:03:25.85 ID:gEFnAW570


提督「さすが、戦艦って事だな」

提督(……あれで練度はまだ1だってのが驚きだ。今の演習で金剛の経験にもなって3になったけど)

提督(艦娘は着任したばかりでも、ある程度の戦闘知識や経験はあるって本当だったんだな。まぁだからこそ先生には適任だと思ったんだけど)

提督(三日月達も大したもんだ。あんだけ金剛の攻撃を避けれてたんだから。あいつらも金剛も、もっと強くなるな)

提督「……俺が導いてやらないとな……」 スッ

 ザザー

提督「あー、聞こえるか? 第一回の演習は終了だ。結果は金剛の完全勝利。とりあえず、一旦こっちまで戻ってきてくれ」

 ザザッ


金剛『了解デース! よいしょ』 ガシ


提督(……三日月と電、気絶してるな。あれが演習弾じゃなく実弾だったらと考えるとすげぇ怖ぇな……)



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 気が付くと、私と電ちゃんは司令官の元にいました。砲弾を直撃して、そのまま気を失っていたらしい。

三日月「…………」 ズーン

電「…………」 ズーン

提督「……結構落ち込んでるなぁ」

三日月「それも……そうですよ」

電「何もできなかったのです……」

電(三日月ちゃんがいなかったら、多分もっと何もできなかった……このままじゃダメなのに)



155: ◆jz1amSfyfg 2015/04/20(月) 04:40:55.13 ID:gEFnAW570


金剛「HEY! 二人ともー? 落ち込むことないデース」

金剛「三日月も電も良い動きでしたヨー! 特に三日月は素晴らしかったデース!」

三日月「……そんなこと……ないです」

金剛「うーん、三日月は謙虚デスネー……私の言葉は信じられませんかー?」

三日月「そ、そんなことないです!」

金剛「では信じてくださーい! Teacherの私が言うんだから、ネ?」 ナデナデ

三日月「……はい」 ニコッ

電「…………」

金剛「ホラホラー、電もそんな顔してちゃダメデース。可愛い顔が台無しデスヨー?」

電「……電は、強くなれるでしょうか?」

金剛「……先ほどの演習で、二人は必死に私に向かってきました」

金剛「私はそれを見て、二人は本当に強くなりたいんだな思いました。その通りデショー?」

電「……はい。電は、強くなりたいです」

三日月「……私も強くなりたいです」

三日月(……皆のために。理想の自分になるために。……そして……) チラ

提督「……」

三日月(……あなたの期待に答えるために) ジー

提督「……ん?」 チラ

三日月「!!」 プイ

三日月「……///」

提督「?」


161: ◆jz1amSfyfg 2015/04/21(火) 03:45:17.98 ID:D/S9G7+00


金剛「良いですか二人ともー。努力に勝る才能無しデス。その強くなりたいと思う気持ちを持って、努力し続ければ必ず強くなれマース!」

三日月「……はい!」

電「なんだかやる気が出てきたのです! 次の演習も頑張るのです!」

金剛「そうデース! その意気デース!」 ナデナデ

提督(……ふふ、頼りになるな金剛は)

三日月「司令官! この後も演習ですよね?」

提督「あぁ、そうだよ」

三日月「……よぉし……頑張ります!」 グッ

提督「はは、気合十分だな。皆、頑張るんだぞ」

提督「まぁ、その前にだ。全員一旦目を瞑ってくれ」

電「へ? 何かあるのですか?」

提督「いいからいいから」

三日月「分かりました」 スッ…

金剛「ン~、変な事はしちゃノーだからネ! 提督ー」 スッ…

提督「変な事なんかしないって。ほら、電も」

電「は、はいなのです」 スッ…

三日月(な、何があるんだろう……)

提督「んしょ、んっしょ」

ガサガサ

電(き、気になる……)

提督「……よし。金剛、ちょっと口開けてくれ」

三日月・電「「!?」」

金剛「Why!? 提督なにする気デース!?」

提督「いいからいいから」

金剛「うぅ、ちょっと恥ずかしいデース……あーん……///」

三日月(大丈夫司令官を信じなさい三日月司令官が変な事するはずがないもの落ち着くのよ三日月) ゴゴゴゴゴゴ……!!

電(三日月ちゃんの方からなんだかすごいオーラを感じる気がするのです)


162: ◆jz1amSfyfg 2015/04/21(火) 05:23:48.78 ID:D/S9G7+00


提督「ほいっとな」 ヒョイ

金剛「ン゛ン゛!?」 パク

金剛「こ、これは……美味しーデース!!」 パァァァ

三日月「え?」 パチ

電「!?」 パチ

提督「あっ、目開けちゃったか」 スプーンキラーン

三日月「……アイス……?」 キョトン

提督「一応サプライズだったんだけどね。ばれちゃったなら仕方ない。ちゃんと二人の分もあるよ」

提督「間宮さんの特製アイスだよ」

電「はわわわぁ……」 キラキラ

提督(電……すっげぇ目輝いてるな)

三日月「でも、特製アイスって作ってもらうのにお金がかかるんじゃ……」 ソワソワ

提督「あぁ、まぁお金はかかるね。けど、それこそお金の使いどころだろ?」

提督「ほら、電。……あーん」

電「!! あ……あーん……なのです」

 パク

提督「美味しいか?」

電「お、美味しいのです!!」 パァァァ

電「……あっ」

提督「ん?」

電(な、流れに身を任せてついあーんしてもらっちゃった……は、恥ずかしいよぉ……!!)

電「な、なのです!///」 シュッ!

 バキッ!

提督「ゲフッ!!」 

提督「な……なんでぇ……」 プルプル

電「はわわわ! ご、ごめんなさいなのです!!」


165: ◆jz1amSfyfg 2015/04/21(火) 12:26:21.57 ID:D/S9G7+00


三日月「!!」 ビクッ

電「し、司令官さん! ごめんなさいなのです!!」 オドオド

提督「あぁ……だいじょぶだいじょぶ……ははは……」

三日月「…………」

提督「ん? 三日月どうかしたのか?」 キョトン

三日月「い、いえ……何でもない……です……」

提督「……そうか? なら良いけれど」

電「うぅ……電はなんてことを……」 ズーン

提督「って電、そんなに落ち込まなくて大丈夫だから。な? ほら、アイス食べて食べて」

電「……はい……本当にごめんなさいなのです」

三日月「…………」

提督「ほら、三日月の分もあるからな・」

三日月「……はい」

提督(三日月、どうしたんだろ。なんかさっきよりも元気がなくなってる気がするんだが。……よし)

提督「……三日月」

三日月「はい、なんですか?」

提督「あーん」 スッ

三日月「ふぇ!?///」

提督「二人にやって三日月にもやらないのはなんかあれだしな。ほら、あーん」 スプーンキラーン

三日月「い、いや……大丈夫です! 自分でたた、食べれられます! それに司令官のお手を煩わせるわけにはいきませんから!!」 アタフタアタフタ

金剛(……食べれられます。そんな日本語があるんだねー。勉強になるわ!) パクパク


166: ◆jz1amSfyfg 2015/04/21(火) 12:56:20.91 ID:D/S9G7+00


三日月「と、とにかく! 私は……その……だ、大丈夫ですか――ん!?」 ヒョイ

 パク

提督「美味しいか?」

三日月「…………///」 コクンコクン

提督「そっか。良かった良かった」 ニコッ

 口の中には甘い味が広がる。ひんやりとしたアイスはとても美味しくて冷たかったけれど、

三日月「……っ///」 カァァァ

 顔はとても熱かった。

金剛「提督はふっとぱらデース! アイスありがとうございマース!」 ニッコリ

提督「全然大丈夫だよ。むしろ喜んでもらえてうれしいよ。あと、太っ腹な?」

提督「金剛には本当に感謝してるし、このくらいして当然さ」

提督「本当にありがとう」 ニコッ

金剛「!!///」 ドキーン

金剛「……て、テートクー?///」

提督「ん?」


167: ◆jz1amSfyfg 2015/04/21(火) 13:18:16.66 ID:D/S9G7+00


金剛「私……優しくて仲間思いな人が好きなのデスが……」

提督「うん」

金剛「一番好きなのは……」

提督「?」 キョトン


金剛「笑顔がステキな人デース!!」


提督「え?」

金剛「バーニング……ラーーーブ!!」 バッ

三日月・電「「!?///」」

提督「は!?」

 ギュー……っ

金剛「えへへぇ……提督大好きデース!」 ニコニコ

提督「こ、金剛!?///」 アセアセ

提督「これはどういう状況なんだ!?」

電「はわわわわ」

三日月「え? ……え?」

 状況を理解するのに、少し時間が必要だった。金剛さんが司令官に抱き着いている。……何でです!?

三日月・電「「こ、金剛さん! 何やってるん(の)ですか!!」」

三日月・電「「……ん?」」

 なぜだか電ちゃんと目が合った。

提督「こ、金剛! 色々とまずいって!! いきなりどうしたんだ!?」

金剛「提督にホの字デース!」 ギュー

提督「ええええええ!?」


168: ◆jz1amSfyfg 2015/04/21(火) 14:19:36.46 ID:D/S9G7+00


 ギュー

提督(あ、あかん……あかんぞこれは!)

電「金剛さん! 司令官さんが困っているのです!」 ガシッ

金剛「……なるほどォ~……電はライバルデスネー。提督のハートを掴むのは私デース!」

電「そ、そういう事ではななな……ないのです!」><

電「こ、金剛さんが司令官さんから離れないならこっちも考えがあるのです! 電の本気を見るのです!」 バッ

 ギュー

電「///」 カァァァ

提督「お前も来るの!?」

金剛「おぉ! 電やるデース!」

電「負けないのです!!」

提督(電完全にテンパってやがる!!)


三日月「えと……うぅ……///」 ソワソワ

三日月(わ、私も……行きたい……? いや、わからない。でも、なんだか胸がチクチクする。二人が羨ま……しい?)

提督「み、三日月! 助けてくれ!」

三日月(司令官は……二人に抱きしめられてて嬉しいのかな? 電ちゃんは可愛いし、金剛さんは綺麗だもの。私なんてこんなに地味だし、二人みたいに可愛くないし……うぅ……)

三日月「…………っ//////」 モジモジ、ソワソワ

提督「聞こえてない!? み、三日月さーん!?」

三日月「――ハッ!! な、何でしょう!? この後はちゃんと歯磨きして虫歯予防しますよ!? はい!!///」 アセアセ

提督「それはいいことだ! でも今はとりあえずこの二人の暴走を止めてくれないか!? お前だけが頼りなんだ!!」

三日月「――!!//////」 ドキッ

 お前だけが頼りなんだ。お前だけが頼りなんだ? ……私が? 頼り? 私“だけ”が?

三日月「~~~~~!!//////」 プシュゥゥゥ!

三日月(わ、私が何とかしなきゃ!!)

三日月「み、三日月! 頑張ります! 司令官の期待に答えるために!! 電ちゃん! 金剛さん!」

提督「おぉ! さすがはみかづk――」

 バッ!

三日月「む、睦月型の本当のチカラです! え、えーい!!」 タッタッタッタ!!

提督「突撃してくるの!? や、やめ――うわああああああ!!」

 どんがらがっしゃーん!!


174: ◆jz1amSfyfg 2015/04/26(日) 17:03:18.36 ID:AspOL2I90


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督「…………」 ゴゴゴゴゴ

金剛「……」 正座中

電「……」 正座中

提督「……まったくお前達は……」 ゴゴゴゴゴ

金剛「……そ、ソーリー。ごめんなさいデース」

電「ご、ごめんなさいなのです」

提督「怪我がなかったから別に良いけど、何かあってからじゃ遅いんだからな! 電もテンパるのは仕方ないけど、もう少し落ち着くんだ」

電「……はいなのです」

提督「それと金剛」

金剛「は、ハイ!」

提督「……男として、そう言ってもらえるのは本当に嬉しかったけど……さすがにあれは恥ずかしかったから……」

提督「時間と場所を弁えるんだ!///」 ガミガミ

金剛「ごめんなさいデス! 肝に免じるデス!」

金剛「……ケド、時間と場所を考えればアピールオーケイってことデース?」

提督「……自分の気持ちに嘘を付けとは言えないしな……。こんな俺のどこがいいかは分からないけどな」

金剛「あ、ありがとうデース! 私、提督のハートを掴めるように頑張るからネー! それと提督はすっごく魅力的デース!」 パァァァ

提督「ありがと。……ほどほどに頼む」

提督「……まっ、何はともあれ三日月がいてくれてなんとかはなった。……けど」 フイ


三日月「……//////」 カァァァァ


提督(俺もまさか突撃してくるとは思わなかった。そしてまさかその自分の行動に後悔して端っこに体育座りして恥ずかしがられるとも思わなかった)


175: ◆jz1amSfyfg 2015/04/26(日) 18:13:37.76 ID:AspOL2I90


提督「み、三日月?」 スタスタ

三日月「!?///」 バッ

提督「いや待て待て待て! 逃げないで!?」 ガシッ

三日月「あっ……」

三日月(て、手……)

三日月「///」 ピタ

提督(あ、あれ……急に止まった。今日の三日月はちょっと不思議だ……)

提督「あ、あのな三日月。俺は別に気にしてないから……な? 元気出せ?」

三日月「で、でも……私……」

提督「いやまぁあの行動には驚いたけど、結果的に助かったし。な?」

三日月「うぅ……」


―――――――――――――――――――――


 どんがらがっしゃーん!!


金剛『オウ!?』

電『はにゃー!?』


提督『っ、いててて……お、二人とも離れてくれ――』

三日月『う、うーん……』

提督『!?』

三日月『へ?』

三日月『――!?』

提督(三日月の顔が目の前に!)

三日月(し、司令官の顔が目の前に!?)

提督『え、えっと……三日月……?』

三日月『えっと……そ、その……あぅ……///』

三日月『ご、ごめんなさーーーい!!』 バッ


―――――――――――――――――――――

三日月(私……なんか変。司令官の顔が近かっただけでこんなに恥ずかしいなんて……)

三日月(でも、今こうして手を握ってもらえてるのは……すごく安心する……どうしたんだろう本当に)

提督「何はともあれ助かったからさ。ありがとな三日月」

提督「んで、切り替えは大事だ。俺も切り替えるからさ、三日月もあまり気にせず切り替えろ?」 ナデナデ

三日月「は、はい。……が、頑張って切り替えます」 グッ

三日月(そ、そうだよね。切り替えなきゃ……心頭滅却心頭滅却……)

提督(実際俺もちょっと恥ずかしかった……切り替えないとな……)


178: ◆jz1amSfyfg 2015/05/01(金) 07:13:49.79 ID:pKwmVchV0


 スタスタ

提督「ゴホン。……よし、そんじゃ良い感じに休憩できたと思うし、そろそろ演習訓練を再開しよう。金剛、またよろしく頼むよ」

金剛「わっかりましター! 提督と二人のために、私頑張るネー!」

電「……三日月ちゃん」

三日月「ん? どうかしましたか? 電ちゃん」

電「一緒に……頑張りましょうね!」 ゴゴゴゴゴ

三日月「は、はい」

三日月(電ちゃん、すごく燃えてる)

電「こ、金剛さん! 電も負けないのです!」 グッ

金剛「フフー、良いですヨーその心意気! 燃えるデース!」

三日月(二人ともすごいやる気……よし)

三日月「……私も、もっともっと頑張らないと、ですね」

三日月「金剛さん、よろしくお願いします!」 ペコリ

金剛「任されましたデース! 私からもヨロシクオネガイシマース!」 ナデナデ

提督(微笑ましい。できる限りこの子達には笑っていてほしいものだな)


三日月『ありがとうございます!』 ニッコリ


提督「!!」 ブンブン

提督(待て待て待て……なんで三日月の今朝の笑顔が頭に思い浮かぶんだ……しかも今!)

提督(いやまぁ確かに三日月には笑っていてほしいけどさ……とにかく早く切り替えろ俺!)

提督「そんじゃ……訓練再開!」

金剛「了解デース!」

三日月・電「「はい!」」


179: ◆jz1amSfyfg 2015/05/01(金) 07:57:41.21 ID:pKwmVchV0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「……」 バタンキュー

電「……」 バタンキュー

提督「おーい……二人とも大丈夫か?」

三日月「は、はい……平気……です……」

電「……なの……です」

提督「……ナイスガッツだな、二人とも」

 時刻はヒトナナマルマル。もうすぐ太陽さんがおやすみをいただくために夕日さんへと変わり始める時間だ。

金剛「ヘーイ! やっぱり二人とも段々動きが良くなってきてるヨー! コングラチュレーション!」 ニコニコ

三日月「えと……その……褒めていただけるのは素直に嬉しいんですが……」 モジモジ

電「……いまだに攻撃を当てられないのです……」 ズーン

 現在は司令官から休憩をいただき、身体を休めている。こんなに休憩が嬉しいと思ったのはすごく久しぶりだった。前の鎮守府にいた頃の、神通さんの訓練もものすごくハードだったけれど、戦艦の金剛さんと演習訓練を続けることも中々ハードだ。

金剛「ふっふー。まぁ、先生としてそう簡単に負けるわけにはいかないからネー! 惜しい場面も結構あったし、次に切り替えデース!」

三日月「……はい!」

電「……頑張るのです」

 ちなみに、演習回数はすでに20回を超えている。けれど、いまだに攻撃を当てることはできない。それに加えて演習訓練をこなせばこなすだけ金剛さんの動きも良くなっていて、金剛さんの強さというモノが実感できてしまう。

三日月(……もっともっと頑張らないと)

電(このままじゃ何も変われてない……頑張らないと!)

 けど、良い経験になる。だから、もっと頑張らないと。


181: ◆jz1amSfyfg 2015/05/05(火) 10:32:12.24 ID:XXh67j6K0


提督「あー、なんか水を差すようで悪いが、金剛との演習はひとまずおしまいだ。三日月と電の二人にはまた別の演習訓練をしてもらうよ」

三日月「もしかして今朝おっしゃっていた」

電「他の鎮守府ではあまりやっていないという演習訓練でしょうか?」

提督「察しが良いな。そういうことさ」

金剛「オーウ、なんだか気になる内容デスねー」

提督「まぁ、すぐにわかるよ。そろそろ妖精さんが頼んでいた物を持ってきてくれるはずさ」

 テクテクテクテク

妖精さん「テートクー」

妖精さん2「タノマレテイタモノ、モッテキタゼー」

提督「おっ、うわさをすれば妖精さん。ありがとう妖精さん」

三日月「これは……?」

電「木刀なのです!」

金剛「おぉ! カッコいいデスねー! ジャパニーズな雰囲気を感じマース!」

三日月「あと、ちっちゃな風船もありますね」

提督「次の演習訓練ではこの木刀と風船を使ってもらうよ。三日月、ちょっとこっちに来てくれ」

三日月「え? あっ、はい!」 スタスタ

提督「ちょっとじっとしててね」

三日月「は、はい」 ピタ

提督「妖精さん、風船を貸してくれ」

妖精さん「オーシェーイ」 スッ

提督「ありがとう」

三日月(司令官が近くても落ち着くのよ……三日月。今は演習訓練前なんだから)

三日月(でも、いったいどんな訓練をするんだろう。木刀と風船を使うだなんて)


182: ◆jz1amSfyfg 2015/05/05(火) 11:04:02.90 ID:XXh67j6K0


提督「よし、三日月動いちゃダメだぞ?」

三日月「わかりました」

提督「この風船を頭に乗っけて……紐で固定……っと」 ササ

提督「よし、おしまいだ。もう動いて大丈夫だよ」

三日月「……えと、司令官? これは?」

電「頭に風船が乗ってるのです」

金剛「なんだかちょっとシュールだネー」

三日月(ちょっと恥ずかしい)

提督「あぁ、ちょっと恥ずかしいだろうけど、ごめんな。三日月と電には互いにこの頭に乗っけた風船をこの木刀で割り合ってもらう。それが次に行う演習訓練の内容さ」

電「え? 電達が木刀を使うのですか?」

提督「そういうこと。もちろん勝敗は決めるからね。先に風船を割られた方が負けだ」

三日月「でも、私木刀なんて使った事ありませんよ?」

提督「だろうな。木刀なんて、君達は普段絶対に使わない武器だろうし」

提督「でも、意外と使っておいて損はないと思うぞ? 今後、何かの役に立つかもしれないしね。ということで電、君にも付けたいからちょっと来てくれ」

電「は、はいなのです!」

提督「電に付けたらすぐに訓練を始めよう。三日月は準備を始めててくれ」

三日月「はい、わかりました」

提督「あっ、主砲と魚雷は外しといてね」

三日月「え?」

 他の鎮守府ではあまりやっていないという演習訓練。あまりやっていないどころではなく、どこでもやっていない訓練なんじゃないかと私は思った。


183: ◆jz1amSfyfg 2015/05/05(火) 11:38:18.42 ID:XXh67j6K0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 今日何度浮いているか分からない訓練場の海の上。先ほどまで前方には金剛さんがいたけれど、今は電ちゃんが目の前にいる。

三日月「……なんだか、さっきまで隣にいたのに、今は目の前にいるから違和感を感じちゃいますね」

電「なのです。金剛さんの時と違って、距離も近いからこうして普通に話せちゃうので、そこも違和感あるのです」

三日月「ふふ、確かにそうですね」

電「それにしても……なんだか不思議な訓練なのです。司令官さんのことですから、何か意味はあると思うのですが」

三日月「そうですね。ちょっと恥ずかしいですけれど……頭に風船が乗っかっているのは」

電「はは……確かに」

三日月「それに、主砲も魚雷もなくて、あるのは海の上に浮かぶために必要な艤装とこの木刀だけですもんね」 ブンブン

電「本当に不思議なのです」

提督『二人とも、聞こえるかい?』

三日月・電「「はい」」

提督『よし。それじゃそろそろ始めよう。もう夕方だし、今日の所はこの一回目のみの訓練だよ。気を引き締めてくれ』

三日月「わかりました」

電「なのです」

提督『良い返事だ。……あっ、あと一言だけ言っておこう』

提督『君達は仲の良い子達だけれど、決して手は抜いちゃダメだぞ? 互いのためにもね』

三日月「その点は、大丈夫ですよ」

電「そんなことしても、強くはなれないのです。この訓練の意味はまだ少し分からないこともありますけれど、何か意味があるって信じているのです」 スッ

三日月「私も電ちゃんと同じです。なので、頑張ります」 スッ

提督『……ごめん、お前た……ゴホン。君達にはいらない心配だったね』

提督『それじゃあ、演習訓練を始めよう。いつも通り、通信機は切るぞ』 プツン


電「三日月ちゃん」

三日月「はい、なんでしょうか」

電「昨日のじゃんけんは引き分けでしたけど……今回は……」

電「ま、負けないのです!」

三日月「私も負けたくはありません。だから、お互いに頑張って」

三日月「一緒に強くなりましょう」 ニコッ

電「……はい! なのです!」



提督「――これより!! 演習訓練を開始する!!」

提督「全艦!! 抜錨ッ!!」



三日月「電ちゃん! 行きますよ!」

電「はい!」


185: ◆jz1amSfyfg 2015/05/08(金) 03:32:44.53 ID:63DnEGEc0


金剛「提督も面白い訓練を考えマスネー」

提督「ん? そうか?」

金剛「イエース! 本来なら私達艦娘は接近戦の訓練なんて必要ないデース」

金剛「ケド、恐らくこの訓練には意味があるんデショー? 提督ー?」

提督「あぁ、意味はあるよ」

金剛「是非教えてほしいデース!」

提督「あぁ、いいよ。……君の言う通り、確かに艦娘には接近戦の訓練なんて必要ないんだ。君達の武器は主砲であって、遠距離から攻撃するからね」

提督「だけど、彼女たちは駆逐艦だ。持てる武器の大きさからして、金剛ほど射程距離は長くない。だから、相手との距離を詰める必要がある。そしてその距離が近ければ近いほど、砲撃は当てやすくなるだろう。……戦う相手共にね」

金剛「確かにそうデスね~」

提督「接近戦の訓練は必要にないって言われてるけど、実戦じゃ何が起こるか分からない。それに、あれだけ近い距離での戦闘はないかもしれないけど、駆逐艦はある程度相手との距離を詰めなきゃいけないからね。極端な話として、あれだけの距離で訓練してもらってるのさ」

金剛「木刀を使わせているのはなぜデス? 木刀は実戦には使えませんヨ?」

提督「まぁ……それにも理由はあるよ。とりあえず、電達の戦いを見てくれ」

金剛「ン~?」 ジー



電「え、えいなのです!!」 ブン!

三日月「っ!」 シュッ バシャン!

電「はにゃ!?」 グラッ

三日月「わわ!?」 グラッ

 バシャーン!!

電「うぅ……び、ビショビショなのです……」

三日月(電ちゃんの攻撃を避けれたけど、普段とは感覚が違うから……ば、バランスが……だけど)

三日月「ちゃ、チャンスです!」

三日月(昔読んだ本では……確かこんな感じだった気が!)

三日月「め、メーーーン!!」 ブン!

電「はわわ!?」 グルングルン バシャン!

三日月「避けられ――あれ!?」 グラッ

 バシャーン!



金剛「……二人ともフラフラで転んでばかりデース」

提督「はっはっはっは! それもそうだ」

提督「彼女たちは木刀なんか振ったことないだろうからね。当然、どんな風に振るのか知らないだろうから、がむしゃらにやるさ。地上でだったらチャンバラごっこみたいに何とかなるだろうけど、君達が戦う場所は海の上だ。バランスが悪いそんな所で、慣れない木刀なんかをがむしゃらに振ってたら、転びまくるだろう」

金剛「確かに、私達普通に移動してても気を抜けば転んじゃいマスからネー。海の上を移動することは中々ハードデース」

提督「だろうね。……そして、その転びまくることも経験になるはずなんだ」


186: ◆jz1amSfyfg 2015/05/08(金) 04:29:01.58 ID:63DnEGEc0


三日月「これは……頑張らないと、ですね……」 ビショビショ

電「……ふふ……お互いビショビショですね、三日月ちゃん」 ポタポタ

三日月「はい。今日は一日中塩水に浸かってばかりで、髪が傷んじゃいそうです」

電「なのです。……でも」

三日月「これも、強くなるためです!」 ザッ

電「なのです!」 ザッ

三日月(さっきは木刀を振ることを意識しすぎてたんだ。今度は転ばないように、いつも通りの事を意識しながら!)

電(こっちから仕掛けても、またさっきの様に転んじゃうよね。だったら、カウンター狙いで……いくのです!)

 ザザー!

電(おそらく三日月ちゃんは、さっきの様に縦に木刀を振ってくる……気がする)

三日月「メーン!」 ブン!

電「ッ、狙い通り! なのです!」 シュッ

三日月「!? よ、避けられた!?」 パシャン!

電「命中させちゃいます!」 ブン!

三日月「ッ! ええーい!」 グルン

電「ま、前回り!?」 バシャーン!

三日月「ふふ、なんとか……避けられました」

電「さすが、三日月ちゃんなのです。……でも、電だって負けないのです!」 ザッ

三日月「私も負けません!」

電(だんだん慣れてきたのです。だったら今度はこっちから!)

三日月(電ちゃん、さっきは木刀を振っても転ばなかった。慣れてきたんだ。でも、避け続ければ、隙は生まれるはず!)

 シュッ、バシャン! ブン、ブン!



金剛「おお! さっきとは別人みたいになってるデース!」

提督「必死にどうすれば転ばないか考えるだろうからね。もしくは早くも感覚が慣れてきたのかもしれないな」

金剛「二人ともカッコよくてカワイイデース!」 キャッキャ

提督「あぁやって転ばないように、なおかつ相手の攻撃を受けないように移動するから、海の上を移動する訓練にもなるはずさ。駆逐艦は一発でも受けたら危険だから、俊敏な動きが要求される。今やってる訓練だったら、その辺も鍛えられるはずさ」

金剛「あっ、確かに二人とも私と戦ってる時より俊敏な動きしてマース」

提督「転ばないようにしながら攻撃して、相手の攻撃を受けないようにしてるからね。相当集中してるはずだよ」

金剛「フフー、明日の二人が楽しみデース!」

提督「あー、ちなみにな」

金剛「ンー?」

提督「戦艦と言っても駆逐艦の接近を許して魚雷をまともに直撃したら、大ダメージだろう。動きが良くなってくる二人に接近を許させない事は、金剛の訓練にもなるはずだ。金剛は二人の先生だけど、彼女達から経験を積むこともできる。頑張るんだぞ?」 ナデナデ

金剛「……了解デース! 提督は色々と考えてくれてるんデスネー」

提督「……俺は……いや、提督はお前達艦娘が成長するための道筋を作らなきゃいけないからな。これくらいしなきゃ、戦ってくれているお前達に申し訳が立たないさ」

金剛「……提督ー、ずっと思ってたけど提督って口調ガバガバダヨネー」

提督「まさか今それを言われるとは思わなかったよ」


187: ◆jz1amSfyfg 2015/05/08(金) 04:41:12.44 ID:63DnEGEc0


三日月「はぁ、はぁ」

電「はぁ、はぁ」

三日月「……電ちゃん」

電「……はい」

三日月「もう、私体力の限界です」

電「三日月ちゃんもですか。電も限界なのです」

三日月「ふふ、だと思いました。朝からずっと一緒に訓練してましたもんね」

電「なのです! ……司令官さんも金剛さんも、意外とスパルタなのです」

三日月「ふふふ、本当ですね」 クスクス

電「……次の一振りが、最後の攻撃なのです」

三日月「私も……腕が限界なので、恐らくそうなります」

電「……では」 スッ

三日月「……はい」 スッ

電・三日月「「決着をつけましょう」」

電「…………」

三日月「…………」

 ザッ

電「えりゃああああああ!!」 ザー

三日月「ええええええい!!」 ザー

 ブン!!


188: ◆jz1amSfyfg 2015/05/08(金) 05:02:28.91 ID:63DnEGEc0



 バキッ!!


三日月「――え?」

 木刀と木刀が重なった瞬間、私が振った木刀の刃先が――空を舞った。

電「ッ!! 電の本気を見るのです!!」 シュッ!!

三日月「――しまっ!?」

 パーン!



提督「……電の勝ちだな」

金剛「デスネー。いい勝負でしたケド、パワーは電の方が上だったみたいデース」

提督(……それでも、新品の木刀を折るなんて……電の力を侮ってはいけないな)

提督「電の良い所が1つ見つかった瞬間だね」



三日月「っ、いたたた……」 ジーン

電「はわわ! ご、ごめんなさいなのです! 思い切り頭を……」

三日月「あはは……だ、大丈夫ですよ」

三日月「……電ちゃん」

電「は、はい」

三日月「……私の負けです」

三日月「次は負けませんよ?」 ニコリ

電「……は、はいなのです!」

 力は、電ちゃんの方が上手だったという事だ。そんなことは分かっていたし、仕方のないことだ。……でも、

三日月(……悔しい……!!) ギュ

仕方ないことでは済ませたくなかった。



提督(……戦艦の金剛にすら負けても悔しいんだ。同じ駆逐艦に負けたのは、相当悔しいだろうな)

提督(でも、その悔しさも成長するためには必要な鍵だ。二人で切磋琢磨しあって、成長していくんだ)

提督「……金剛、二人の迎えに行ってあげてくれ」

金剛「了解デース!」 シュパ

提督(二人とも……頑張れよ)


189: ◆jz1amSfyfg 2015/05/08(金) 05:42:00.99 ID:63DnEGEc0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督「ということで、今日はお疲れ様」

金剛「中々ハードでしたケド、良い一日だったデース!」

提督「金剛には感謝してるよ。明日もよろしく頼むよ」

金剛「了解デース!」 ビシッ

提督「……さて、電と三日月。今日は疲れただろ?」

電「い……いえ……そんなことはないのです……」

三日月「……私も……もっと頑張らないと……」

提督「いや、疲れてんのバレバレだから。三日月も、十分頑張ってたからな? 無理は禁物だ」

三日月「……はい」

提督「とりあえず……みんなこの後は入渠して身体を癒してくれ。その後は皆で美味しい夕食を食べよう」

金剛「オーウ! ディナー楽しみデース!!」

提督「あぁ。とても美味しいから、期待してた方がいいよ」

提督「ちなみに、今日やった訓練は明日もやってもらう。この訓練をしてもらう期間は六日間だ。その後一日はオールフリー。身体をゆっくり休めてくれ」

電「了解なのです!」
金剛「了解デース!」
三日月「了解しました」

三日月(……中々きついけど、頑張らないと) グッ

提督「……三日月?」

三日月「? はい、なんでしょうか?」 キョトン

提督「あまり気張り過ぎないようにな?」

提督「ゆっくりでいいんだ。ゆっくりでな」 ナデナデ

三日月「……は、はい!」

金剛「……むー……意外なところにライバルがいたデース……」 ジー

三日月「へ?」

電「はわわわ……」

金剛「……提督ー!! 私ももっと撫でてほしいデース! ヅッキーばかりズルいデース!」

提督「……はいはい」 ナデナデ

金剛「~♪」 ニッコリ

三日月「づ、ヅッキー?」

金剛「イエース! ミカヅキだから、ヅッキーデース!」

三日月「あはは……なんだか、慣れませんね」

金剛「エー? 嫌デース?」

三日月「……いえ、そんなことはありませんよ? ただあだ名で呼ばれたことはないので少し新鮮です」

金剛「すぐ慣れマース! ということでヅッキー、ヨロシクデース!」

三日月「はいっ」

電「金剛さん、電のあだ名はあったりするのですか?」

金剛「電はデンでどうデース!?」

電「……電でいいのです」

金剛「エー!?」 ガガーン

三日月「……ふふ」 ニコ

提督「……ほら、お前達いつまでも遊んでないで、早く入渠しに行きなー。夕食に遅れるぞー?」

金剛「ハーイ!」


194: ◆jz1amSfyfg 2015/05/09(土) 05:13:49.35 ID:GMmfcPFH0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ――六日後――

 チュンチュン、チュンチュン

三日月「……うーん……」

三日月「……ん……?」 ボケー

三日月「…………」 ガサゴソ

三日月「……ん?……」 キョロキョロ

 身体中が筋肉痛で痛むけど、朝です。今は何時だろうか。

三日月「……電ちゃーん?……あれ?」 キョロキョロ

三日月(電ちゃん、どこだろ。それに、今何時だろうか。時計時計) キョロキョロ

三日月「あ、あったあっ――」

時計『マルハチニーマル』

三日月「!?」

三日月「え!?」 パシッ

三日月「は、8時20分!?」

三日月(お、おかしい! いつも通り5時に目覚ましをセットしたはずなのに!)

三日月「い、急がないと……!!」 バッ

 バターン!

提督「うお!? び、ビックリした!」 ビクッ

三日月「あっ、しし、司令官! えと、おはようございます! ……ってそうではなく! ご、ごめんなさい! 私、寝坊してしまって、その……目覚ましはセットしたんですが……その!」 アタフタアタフタ

提督「え?」 ポカーン

三日月「と、とりあえず……私の努力が足りなくて、ごめんなさい!」 ペコリ

提督「……ぷっ」

提督「あっはっはっはっは!」

三日月「……し、しれいかん?」 キョトン

提督「三日月、大丈夫だぞ?」 ナデナデ

提督「今日君達は全員休みの日だ」

三日月「……あ」


195: ◆jz1amSfyfg 2015/05/09(土) 05:48:50.77 ID:GMmfcPFH0


 そうだった。今日は休みの日だったことをすっかり忘れていた。

提督「電も金剛ももう起きてるぞ。三日月、今日は珍しくぐっすり寝てたみたいだな」

三日月「……いつも通り5時に目覚ましをセットしていたはずなんですが、起きられなかったみたいです」

提督「まぁ、たまにはそういう日も必要じゃないか? 最近毎日ランニングと木刀の素振りしてたしな、三日月は」

三日月「日課となっていたので、やらないとやらないでなんだか少し落ち着きません」

提督「……まっ、今はそんなことよりもさ」

三日月「?」 キョトン

提督「着替えた方が良い。パジャマのまんまだぞ、お前」

三日月「……あっ」

三日月(ほ、本当だ……何もしないで飛び出しちゃったから……)

三日月「え、えと……っ、~~~!!//////」 カァァァァ

三日月「し、失礼しました……///」 ペコリ

 スタスタ、バタン

提督「……可愛すぎない?」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「うぅ……恥ずかしかった……もうっ……私のバカ」 スタスタ

三日月(今日は間宮さんも休みみたいですね。朝ごはんとかどうしよ。それに、電ちゃんはどこに行ったんだろ)


電「――のです。――休みの日だからこそ――――なのです」


三日月「……電ちゃんの声? 外から?」 ピタ

三日月「あっ、電ちゃんと金剛さん」

 二人は外にいた。鎮守府の入り口の所だ。艦娘の寮は入り口のすぐそばに位置している。2階のこの窓からでも二人の姿はしっかりと確認できる。

三日月「……草むしり? とりあえず急がなきゃ」 タッタッタッタ


196: ◆jz1amSfyfg 2015/05/12(火) 04:30:17.09 ID:i1D3A9290


金剛「本当に大丈夫だと思いマスよー?」

電「電は秘書官ですが、あまりそれらしいことはまだやれていないのです。だから、お休みの日こそこういうことはやりたいのです」

金剛「そこは本当に偉いと思いますケド……」

 タッタッタッタ

三日月「はぁ、はぁ……皆さん、おはようございます。ごめんなさい、寝坊してしまいました」

金剛「あっ、ヅッキー。おはようございマース!」

電「三日月ちゃん、おはようなのです」

三日月「はい、おはようございますっ。目覚ましで起きれなくて……今さっき起きてしまいました……」

電「それはよかったのですっ」

三日月「え?」

電「三日月ちゃん、おやすみの日だろうけど多分いつも通り朝の五時に起きて訓練するのだろうなぁって思っていたので、目覚ましを解除しておいたのです」

三日月「え、えええええ!? 何でです!?」

電「三日月ちゃんは普段から頑張り過ぎなのです。休むことも大切なのです」

三日月「で、でも……」

電「余計なことしちゃったなぁとは思うけど……電は三日月ちゃんにあまり無茶をしてほしくないのです……」

電「電からの……お願いなのです」

三日月「…………」

三日月「確かに、無理をしすぎるのもよくありませんね」

三日月「気を使ってくれて、ありがとうございますっ! 電ちゃんっ」 ニコリ

電「……なのですっ!」 ニコッ

金剛(うーん、朝から微笑ましいワ~)



197: ◆jz1amSfyfg 2015/05/13(水) 00:17:36.50 ID:z7U7q1v60


三日月「ところで電ちゃんは何をしてるんですか? 草むしり?」

電「はいなのです」

金剛「何もわざわざこんな休みの日にしなくても大丈夫だと思いマース。何度も言っているんデスが……」

電「いえ、そういうわけにもいかないのです」

電「今朝司令官さんから聞いたところ、もしかしたらお客様が来るかもしれないそうなのです。なので、入り口は綺麗にしておかないとダメなのです」

電「それに、おやすみの日だからこそやっておきたいのです」

三日月「……それもそう、ですね。よいしょ」 スッ

三日月「私もお手伝いしますっ」

電「本当ですか? ありがとうなのです!」

金剛「……も~、仕方ないデース。私も手伝いマース」

金剛「みんなでやれば、早く終わりマスからネー」

電「金剛さん! ……ありがとうございます!」

金剛「ノープログレムデース! では、皆さん、一緒にガンバロー!」

三日月・電「「オー!」」


198: ◆jz1amSfyfg 2015/05/13(水) 01:02:29.53 ID:z7U7q1v60


提督「おぉ、朝から偉いなお前達」 スタスタスタスタ

金剛「あー! HEYテートクー!! オハヨウゴザイマース!!」

提督「あぁ、おはよう金剛」

電「司令官さん、朝一回お会いましたが、おはようございます。なのです」

三日月「私も先ほど会ったばかりですが、おはようございます」

提督「おう、おはよう二人とも。三日月はパジャマからちゃんと着替えたみたいだな」

三日月「……そ、それは忘れてください! もう……」

提督「はっはっは! ごめんごめん」

電「パジャマ? 三日月ちゃん、何かあったのですか?」

三日月「……聞かなかったことにしてください……」 ズーン

電「は、はいなのです」 ヨシヨシ

提督「まぁその話は一旦置いておいて、お前達草むしりしようとしてるんだよな?」

電「はいなのです」

金剛「今日はお客さんが来るって電が言っていましたが、本当デース?」

提督「もう伝わってるのか、早いな。とりあえず、時間は何時頃になるかはまだ未定だけど他の鎮守府の提督がやってくるんだ」

提督「一種の交流のためってことでな、上層部からの指示なんだ。俺もどんな人が来るかはまだ分かってないんだよ」

電「なるほど……では、早めに入り口は綺麗にしなければいけませんね。頑張るのです!」

提督「偉いなぁ電……。というわけで俺も草むしりを手伝うぞ!」

電「え!? 司令官さんもやるのですか? だ、大丈夫ですよ?」

提督「いやいや、金剛がさっき言ってたみたいにみんなでやれば早く終わるさ。ちゃっちゃとやっちゃおう」

三日月(司令官……多分どっかで会話聞いてたんだろうなぁ)

提督「朝ごはんもみんなまだ食べていないだろうから、さっき俺が軽めのものだが作っておいた。これが終わったらみんなで食べような」

金剛「提督の手作りデース!? ワーオ!! 味は心配だけど、楽しみデース!!」

提督「ふふふ、味が心配だなんて言えないくらいビックリするぞ! 楽しみにしとけ!」


199: ◆jz1amSfyfg 2015/05/13(水) 01:38:53.94 ID:z7U7q1v60


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「お、美味しかったです!」

 自然と出てしまった言葉だった。草むしりが終わって、司令官が作った朝ごはんを食べ終わった直後のことだ。

金剛「私もビックリデース……まさかここまで美味しいなんて……」

電「電も、正直あんまり期待はしていなかったのですが、とっても美味しかったのです!」

提督「電さりげなくひどくない?」

提督「まぁ、提督になる前は家で自炊して弟に食べさせていたからな。自然と料理の腕も上達したって事さ」

三日月「この前弟さんがいるっておっしゃっていましたね」

提督「あぁ、少し歳は離れてるんだけどさ」

金剛「提督の弟さん……ということはいずれ私の義弟になるかもしれませんネー!」

提督「おう、そうだね。なれるといいね、うん」

金剛「朝からドライな返答に私ちょっぴりショックデース!!」

提督「ショック受けてる人の声のトーンじゃないな」

電「でも、司令官さんがご飯を作っていたって事は、司令官さんのお母さんかお父さんはあまり料理が得意な方ではなかったのですか?」

提督「いや、二人とも料理はすごく得意な人だったぞ」

提督「俺が自炊を始めたのは、ちょうど一年くらい前からだ」

提督「二人とも、亡くなったんだ。俺が料理を始めたのはそこからだな」

金剛「……Oh……」

電「……ご、ごめんなさいなのです……変な事聞いてしまって……」

提督「あぁ、大丈夫だよ、気にすんな。今は戦争中だ……仕方ない事さ」

三日月(……一年くらい前、か……)

提督「弟もちょくちょく手伝ってくれて、最近では料理できるようになってきたんだ。今は俺が提督になったから離れ離れになったけど、その点はあまり心配はしてないよ。あいつは優秀な奴だからな! 一人でもうまくやっているさ」

 弟さんの話をする司令官は、どこか誇らしそうだった。

三日月「戦いを、早く終わらせないと……ですね」

提督「あぁ、それもそうだ」

提督「けど、今日は休みの日だ。みんなあまり気張らずにゆっくり身体を休めるんだぞ? 特に三日月」

三日月「そ、そんなに私って無理しているように見えますか?」

一同「「「うん」」」 コクリ

三日月「え、えー……」


200: ◆jz1amSfyfg 2015/05/13(水) 03:36:33.30 ID:z7U7q1v60


提督「そこで、羽を伸ばせるようにみんなへ俺からのプレゼントだ」 スッ

提督「じゃじゃーん、外出許可書だ!」

金剛「オーウ、それ本物デース?」

提督「むしろ俺が出したやつが偽物だったら色々とマズいだろ……」

電「ち、鎮守府の外へ遊びに行っていいって事なのですか!?」

提督「そう言う事だ。地図はあとで渡してあげるから、色々と見て回って来い」

電「い、良いのですか!?」 ソワソワ

提督「おう」

電「!! 司令官さん! ありがとうなのです! 一回鎮守府の外にある街に遊びに行ってみたかったのです!」 キラキラ

三日月「で、でもよろしいんですか? お客さんが来るみたいですし、残っていた方が良いのでは……」

提督「その辺は大丈夫だから、安心しなって。ゆっくり羽を伸ばして来い。あまり遅くならないうちに帰ってくるんだぞ?」

金剛「……」 ジー

三日月「……わかりました。お言葉に甘えさせてもらいます」

電「なのです! 早速用意してくるのです!」 バッ

三日月「はや! い、電ちゃん待ってくださいー!」 バッ

 タッタッタッタ

提督「ははは……あぁいうとこはまだまだ子供だな」

提督「金剛も外に行って大丈夫だぞ? だから準備に行って――」

金剛「あのさぁ提督ー」

提督「ん?」

金剛「三日月のことあまり言えないデスヨ?」

提督「え?」

金剛「お客様が来るんですから時間が分からないにしろ多少は準備も必要でしょうし、私達を全員休みにしてくれましたが、まだまだ仕事も残ってマスよネー?」

提督「うっ……それは……」

金剛「その顔は図星みたいデスね」

金剛「……提督も提督で無理しすぎデス」 ジトー


201: ◆jz1amSfyfg 2015/05/13(水) 04:09:22.46 ID:z7U7q1v60


提督「そ、それは……」

金剛「提督はとても優しい人デース。だから駆逐艦のあの子達にあまり負担はかけさせないようにしているって事は分かっていマス」

提督「いや、あの子達だけじゃなく、金剛にも――」

金剛「提督ー? 今は私が話してる時デース」

提督「…………」

金剛「優しくすることは大切ですが、もっと大切なことがありマス」

金剛「信頼することデス」

金剛「私は提督のこと信頼していマス、それは多分電や三日月達も同じダヨー? だから、もっと私達を頼りにしてくだサーイ」

金剛「電なんか今朝、『電は秘書官ですが、あまりそれらしいことはまだやれていないのです』って言ってたヨー? 草むしりすることに必死になっていたのは、多分それも原因デース」

提督「…………」

金剛「……もっとあの子にお仕事をさせてあげるべきデス。あの子は周りのために必死になれる良い子デース。ヅッキーも同じデス」

提督「……そうだったな」

提督「優しくするのと、気を遣い過ぎるのはまた別の話だもんな」

金剛「イエース!」 コクンコクン

金剛「ということで、今日は一日私が秘書官代理デース!」 パァァァ

提督「へ?」

金剛「だからー、私が色々とお仕事手伝ってあげるデース! 二人っきりで、ネ!」 キラーン

提督「えぇぇえ!? いや、それはありがたいけど……」

金剛「あんなに喜んでた電とヅッキーに今さら何かしてくれなんて言えないデショー?」

提督「いや、俺が言いたいのはそうじゃなくて……お前も今日休みの日だろ!? しっかり休むべきだ! だから仕事をさせるわけには……」

金剛「お仕事じゃないデース! ボランティアデース!」

金剛「それに……私は提督と一緒にいることがどんなことよりも心休まりマース!」

提督「……お世辞を言っても何も出せないぞ!」 カァァァ

金剛「お世辞なんかじゃないデース」

金剛「私は提督が大好きデスから!」 ニッコリ

提督「……い、電達の地図を用意してくる!」 バッ タッタッタッタ

金剛「あっ、逃げた……も~」 プンスカ

金剛「……でも、ああいうとこも可愛いワ!」 ニコッ


202: ◆jz1amSfyfg 2015/05/13(水) 04:31:19.63 ID:z7U7q1v60


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈鎮守府入口〉

電「それでは司令官さん、行ってくるのです!」 ニッコリ

提督「あぁ、気を付けて行って来い。あまり遅くなるうちに帰ってくるんだぞ? 道が分からなくなったら地図を見るか、人に聞いてみるんだ。怪しい人にはついて行っちゃダメだぞ?」

電「はいなのです!」

三日月「司令官、色々とありがとうございます。お土産買ってきますね!」

提督「別に大丈夫だから、しっかり遊んで来い」 ナデナデ

三日月「は、はい!」

金剛「お土産は美味しい紅茶セットでいいデスヨー?」

電「あれ、そういえば金剛さんは行かないのですか?」 キョトン

金剛「私はちょっとやることがあるから鎮守府に残りマース。ちゃんと休むから大丈夫だヨー? 楽しんできてネ!」

電「はいなのです!」

三日月「はい! お土産買ってきますね!」 キラキラ

金剛(ヅッキー、かなりウキウキしてるわね。カワイイー) ホッコリ

電「では、行ってくるのです! 第一艦隊、出撃なのです!」 ゴー!

三日月「では、行ってきますっ!」 ペコリ

 スタスタスタスタ

提督「行ってらっしゃーい」 フリフリ

金剛「行ってらっしゃいデース! ドナドナー!」 フリフリ

提督「出荷されるみたいな見送りはやめなさい」

金剛「HAHAHA! 冗談デース!」

金剛「じゃ、お仕事始めまショーか! テートクー」

提督「あぁ、そうだな」

提督「……金剛」

金剛「ンー? 何デース?」

提督「色々とありがとうな。お前がこの鎮守府に来てくれて本当に良かった。心の底からそう思うよ」

金剛「……ふ、不意打ちは卑怯デース……///」

金剛「ケド、嬉しいデース! バーニング、ラーブ!!」 ギュー

提督「こ、こら! 抱きつくんじゃない!」

金剛「フフー、残った者の特権デース! えへへ!」 ニッコリ


215: ◆jz1amSfyfg 2015/05/31(日) 07:12:57.09 ID:v59+jfDm0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ~鎮守府から歩いて15分後~


電「おぉ……中々おっきな街なのです!」

三日月「で、ですね……正直予想よりも大きくて驚きました」

電「三日月ちゃん! まずはどこに行きましょう!」

三日月「そうですね……まずは無難にお洋服とか見に行きましょうかっ」

電「了解なのです!」 ニパァ

三日月(電ちゃん、楽しそうだなぁ……よぉし)

三日月「電ちゃんっ」 スッ

電「?」 キョトン

三日月「結構人が多いですし、お互い道も分からず地図頼りですから、はぐれないように手をつなぎましょう」 ニッコリ

電「……うん!」 ニッコリ

電「三日月ちゃん、ありがとうなのです!」 ギュ

三日月「ふふっ、まだ何もしてませんよ、電ちゃん」

三日月「この三日月が、しっかりエスコートしてあげますねっ」

電「はいなのです!」 ニッコリ

三日月「では、行きましょうか。えーと、地図によるとお洋服屋さんは……」 ジー

三日月「……あっちみたいですっ」

電「はいっ!」


216: ◆jz1amSfyfg 2015/05/31(日) 07:42:14.06 ID:v59+jfDm0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈洋服屋にて〉

電「三日月ちゃん! 次はこのワンピースを着てみましょう!」 キラキラ

三日月「え、えーと……電ちゃん? わ、私どれだけ試着すればいいんですか?」

電「電が満足するまでなのです!」

三日月「は、はぁ……」

三日月(お、おかしいな……私がエスコートしてあげるはずだったのに、いつの間にか主導権を握られてる)

電「~♪」 ニコニコ

三日月(……まぁ、電ちゃんが楽しそうだし、良しとしましょう)

三日月「けど……私がオシャレしたって意味なんてあるのでしょうか?」

電「ありありなのです! 三日月ちゃんは可愛いのですから!」

電「それに、レディーたるものオシャレは誰にだって必要なのですっ。電のお姉ちゃんがいつも言っていたのです」

三日月「わ、私……全然可愛くないですよ? クセっ毛ですし、こんなに地味ですし……」

三日月「……無個性ですし」

電「そんなことないのです!」

電「三日月ちゃん可愛いのです!」 キッパリ

三日月「い、いや……そんなこと……」

電「可愛いのです!」

三日月「え、えと……///」

三日月「はい……///」 カァァァァ

電「ふふっ」 ニコニコ

三日月「し、試着してきます! お時間いただきます!」 バッ

電「はいっ! 行ってらっしゃいなのです!」 フリフリ

電「……やっぱり三日月ちゃんは可愛いのです」 ニッコリ


217: ◆jz1amSfyfg 2015/05/31(日) 09:54:28.24 ID:v59+jfDm0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月(お洋服、色々買っちゃった。今いる雑貨屋さんもかなり広いし、迷わないようにしなきゃ)

三日月(……なんだか、今が戦争中だという事を忘れてしまいそう)

電「三日月ちゃん! 見てください!」

電「このキーホルダー、とっても可愛いのです!」

三日月「!!」 ドキーン

三日月「な、なんですかこれ……か、可愛いです!」

電「なのです!」

電「このヤドカリさんのキーホルダー」

三日月「はい!」

三日月「けど、何だかこのキーホルダーを見てると特別な感情が湧きますね……何でしょう、この気持ち」

電「それ、電も感じていたのです……不思議なのです」

三日月「……とりあえず……」

電「買いましょう! 一緒に!」

三日月「はい!」


220: ◆jz1amSfyfg 2015/06/04(木) 14:36:20.44 ID:Tedqzuxt0


 スタスタスタスタ

三日月「そういえば、司令官たちへのお土産も探さなきゃですね」

電「なのです。金剛さんは美味しい紅茶セットが良いって言っていましたが、司令官さんは何が良いのか分からないのです」

三日月「そんなの気にしなくていいって言われましたけど、そういうわけにもいきませんし……どうしましょうか」

電「無難なのはお菓子の詰め合わせとかだと思うのです」

三日月「そうですね。何か美味しそうなのあったら買っていきましょうか」

電「はいなのです! まだまだ時間はあるのでゆっくり探しましょうっ」

三日月「はい!」

三日月「……あっ」 ピタッ ジー

電「ん? どうしました三日月ちゃん。……おぉ、可愛いのですー!」

三日月「はい、たまたま目に付いちゃいました」

三日月(……白い猫のキーホルダー)

三日月「急に立ち止まっちゃって、ごめんなさい。……私の姉に白い猫が大好きな人がいるんですが、ちょっと思い出してしまいました」

電「白い、猫が……ですか?」

三日月「はい。まぁ白い猫に限らずどんな猫でも好きなんですけどね。普段はそんなことない! って言い張っているんですが、昔白い猫をキラキラした目で頬を緩ませながらギュ~ッとしていたのを見たことあります」

電「猫さんは可愛いから仕方ないのです」

三日月「ふふっ、確かにそうですね」 クスクス

三日月「けど、その人普段はとてもカッコよくて武人の様な人でしたから、ギャップを感じてしまって……その時の光景は今でも覚えています」 ニッコリ

電(三日月ちゃん、楽しそうに話してるのです)

電「……三日月ちゃん! 三日月ちゃんの姉妹の話、もっと詳しく聞きたいのですっ」 ニッコリ

三日月「……はいっ、いいですよ。少し長くなってしまいますが、大丈夫ですか?」

電「大丈夫なのです!」

三日月「では、あそこのベンチにでも座りながら話しましょう。私も電ちゃんの姉妹さんのお話、聞きたいですから」

電「はいなのですっ」

三日月(……菊月、元気かなぁ)


221: ◆jz1amSfyfg 2015/06/15(月) 04:58:01.51 ID:E0Ln31Hh0


 それからしばらく、私は思い出話を語った。自分の姉妹がどんな人達だったのか、話題は尽きなかった。電ちゃんは、すごく聞き上手だった。話していてとっても楽しい。

電「なるほど……三日月ちゃんの姉妹達は個性的な方が多いのですねっ」

三日月「ふふっ、そうなんですよ。本当にみんな……個性的なんです」

三日月「訓練時代はみんな一緒だったんですが、鎮守府に配属されるときにバラバラになってしまって、前の鎮守府で一緒だったのは如月、弥生、菊月の三人でしたけど……また会いたいなぁ……」

電「……大丈夫なのです! きっとまた会えるのです。司令官さんは睦月型を全員集めてくれるって言っていたのです」

三日月「……そう、ですね。またきっと会えますよね」

電「なのです!」

三日月「……ごめんなさい、私の話ばかりしてしまいましたね」

電「ふふふ、大丈夫なのです。三日月ちゃんのお話、とっても聞きやすくて楽しいのです」

三日月「電ちゃんが聞き上手だからお話ししやすいだけですよ」

電「うーん、そんなことない気がするのですが……」

三日月「とりあえず、次は私が聞き手に回りますね! 電ちゃんの姉妹さん達の話を――」

 グゥゥゥ……

三日月「…………」

三日月「ご、ごめんなさい……わ、私です……///」 カァァァァ

電(かわいい)

電「もうそろそろお昼なのです。仕方ないのです!」

三日月「そう、ですね……はい……切り替えます。どこかお店、空いてるかなぁ」

電「この時間だと、人がいっぱいで混んでそうなのです。……あっ!」

三日月「ん? どうかしましたか、電ちゃん?」

電「……三日月ちゃん、ちょっとここで待っていてほしいのです」

三日月「え?」

電「すぐに戻って来るのです!」 ガタッ タッタッタッタ

三日月「ちょ、い、電ちゃーん!?」

三日月「ど……どうしたんだろ……」


222: ◆jz1amSfyfg 2015/06/17(水) 16:14:08.36 ID:dihI2F9X0


 タッタッタッタ

電(ふふふ……実はさっき美味しそうなクレープ屋さんを見つけたのです!)

電(三日月ちゃんは気が付いてなかったみたいだし、サプライズになるかなぁ)

電(喜んでくれたら嬉しいな~) ニコニコ

電「あ、でもどんなクレープにすればいいのでしょうか……」

電「……な、なんとかなるのです! きっと!」

タッタッタッタ

電(確か、次の角を曲がればもうそろそろ見えてく――)

 スッ  スタスタスタスタ

電「――え?」

電(ひ、人!?)

「ん? ――え?」

 ゴチーーーン!!


電「っう、いたたた……!?」

「っ、ぅう……な、なんなのさ……」

電「ご、ごめんなさいなのです! お怪我はないですか!?」 アセアセ

「……あぁ、大丈夫だ。そちらこそ大丈夫か?」

電「い、電は大丈夫なのです。ほ、本当にごめんなさい!」 ペコリ

「いや、そんなに気にするな。こちらの不注意でもある。こちらこそすまなかった」

「……ところで今……自分の事を電と呼んだが……」

電「え?」

「……いや、何でもない。私だったから良かったが、老人や子供も歩いているんだ。ぶつかって怪我をさせてからでは遅い。今後は気を付けるんだぞ」

電「は、はい……本当にごめんなさい」 シュン

「……まぁ、その様子だと反省してるみたいだし、あまり気落ちするな」 ナデナデ

電「!?」

「……あっ……す、すまない。……つい」

電「だ、大丈夫なのです」

「……そろそろ私は行くよ。少し急いでいてな。……ではな」 スタスタ

電「は、はい! 本当にごめんなさい!」 ペコリ

「…………」 フリフリ

電「……反省なのです」 スタスタ


223: ◆jz1amSfyfg 2015/06/17(水) 16:44:51.16 ID:dihI2F9X0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 スタスタスタスタ

「……電、か……」

「……確か暁型の四番艦は『電』と言ったか? もしかして今の奴は艦娘だったのだろうか」

「……制服を着ていたな。という事は艦娘の可能性は無きにしも非ず、だな」


「あー!! やっと見つけたっぽい!!」


 スタスタスタ……ピタ

「……はぁ」

 タッタッタッタ!!

「ぽーい!」 ダキッ

「……後ろから抱き着くなといつも言っているだろう」

「ふふー、勝手にいなくなったのは誰っぽい?」

「……知らんな」 プイ

「ふふふー……」



「菊月ちゃんっぽい!」

菊月「……貴様が私を着せ替え人形みたいにして遊ぶからだろう。バカ立」

夕立「バカ立じゃなくて夕立っぽい!」 プンスカ

夕立「とか言いつつ、試着させた服は買って今も着てるっぽい~」 ニヤニヤ

菊月「……艦娘だと怪しまれないための配慮だ」 プイ

夕立「嘘が下手っぽい~」

菊月「……う、うるさい。気に入ってなどいないからな。貴様から選んでもらっても嬉しくなんかないからな。こんな服気に入ってなどいないからな!」

夕立「……菊月ちゃん、ほんと可愛い~!」 ギュー

菊月「は、離れろ! というか、お前はなおさら配慮しなきゃいけないだろう。お前、今は目が赤いんだぞ?」

夕立(改二)「む~、菊月ちゃん細かすぎぃ~。目の色なんか一々気にしてる人いないっぽい」

菊月「いや、普通にいっぱいいるだろう」

夕立「まぁまぁ、せっかく提督さんが遊んできていいって言ってくれたんだから、細かいことはなしにするっぽい!」

夕立「こんな遠い所、めったに来れないっぽい!」

菊月「まぁ……確かに私達の鎮守府からここまでかなり遠かったが……だからと言って……」 ブツブツ

夕立「相変わらず菊月ちゃんはくそ真面目っぽい~」

菊月「少し黙れ」


224: ◆jz1amSfyfg 2015/06/17(水) 17:12:05.03 ID:dihI2F9X0


菊月「それに、用がある鎮守府まではここからさらに距離があるんだろ? 司令官は大丈夫なのか私達を置いて行って」

夕立「まぁ、神通さんが付いてるし、平気だと思うよ?」

夕立「それに、用がある鎮守府ってここから“15分も歩けば着く”って聞いたっぽい」

菊月「……まぁ、司令官の配慮は無駄にしたくないからな。ちゃんと遊びはするが、ある程度時間が経ったら私達も鎮守府へ向かうぞ。いつまでも遊んではいられんだろう」

夕立「ぽーい」

菊月「返事ははいだろ」

夕立「はーい」

夕立「それじゃあ菊月ちゃん? 次はどこ行くっぽい?」

菊月「……そうだな。そろそろ小腹が空いてきた。どこかでお昼にするか」

菊月「この辺にある美味しそうな定食屋は……」 バッ

夕立「……菊月ちゃん? その今広げた雑誌は何っぽい?」

菊月「ん? あぁ、この街のガイドブックだ。先ほど買った。これでいい店を探しやすくなるぞ!」 キラキラ

夕立(究極に無駄遣いしてるっぽい)

 スタスタスタスタ

菊月「ふむ……ここも良さそうだが……カレー屋も捨てがたいな……」 ブツブツ

夕立「ながら歩きは危険って提督さんが言ってったっぽい」

夕立(ほんと菊月ちゃんはくそ真面目っぽい)

 スタスタスタスタ


 ピタッ


夕立「…………は?」

菊月「ん? どうした夕だ――」

 ガシッ

夕立「…………」 スタスタスタスタ

菊月「お、おい!? い、いきなりどうしたんだ!?」 スタスタスタスタ

夕立「……夕立、さっきこっちの方で美味しそうなクレープ屋さん見かけたの。そこいこ」

菊月「いや、いきなりすぎるだろう! ……そ、そして……て、手!」

 スタスタスタスタ






三日月「…………」

三日月「……電ちゃん、遅いなぁ」


229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/26(金) 03:36:17.74 ID:PvHoD9jd0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 がやがやがやがや

三日月「…………」

三日月(う、うーん……一人だとやっぱり不安になるなぁ……人多いし)

三日月「…………」

三日月「電ちゃん、遅いなぁ」

 スタスタスタスタ

電「三日月ちゃーん!」

三日月「! 電ちゃん!」 パァァァ

電「はぁ……はぁ……ごめんなさいなのです。ちょっと、遅くなってしまいました」

三日月「別に大丈夫ですけど……いきなりだからビックリしましたよ。どこ行ってたんですか?」

電「えーっとですね……説明するよりこれを……じゃじゃーん! なのです!」

三日月「……く、クレープ?」

電「はいなのです。実はさっき、美味しそうなクレープ屋さんを見つけたので、三日月ちゃんと一緒に食べてみたかったのですっ。はい、どーぞ」 ニッコリ

三日月「あ、ありがとうございます。……けど、どうして教えてくれなかったんですか?」

電「えと……電なりのサプライズだったのです」

三日月「……いきなり一人にされたから、ちょっと寂しかったんですよ?」 ジトー

電「あっ……えと、その……ごめんなさいなのです」 ショボン

三日月「けど、ありがとうございます。電ちゃんが私のためにしてくれた行動だって、分かってますから」

三日月「すごく嬉しいですっ」 ニコリ

電「!! う、うん……ありがとう、なのです」 ニコリ

三日月「ふふっ、なんで電ちゃんがお礼を言うんですか。ささ、一緒に座って食べましょうっ」

電「はい! 味はオススメって書かれていたチョコバナナクレープなのです!」 ササ

 キラキラ

三日月「……改めてみると、すごく美味しそうです」 キラキラ

電「……電も運んで来る途中よだれが出そうになったのです」 キラキラ

三日月「あっ、そういえばお金払ってませんね私! おいくらでした?」

電「ふふ、良いのです。電のおごりなのです。そんなに高くなかったですし」

三日月「ええ!? そ、そういうわけには」

電「いーのです! それでは、いただきますなのです!」 パクリ

三日月「え、ちょ、はや……こ、今度は私が奢りますね! いただきます!」 パクリ


231: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 03:39:10.07 ID:PvHoD9jd0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 がやがやがやがや

三日月「…………」

三日月(う、うーん……一人だとやっぱり不安になるなぁ……人多いし)

三日月「…………」

三日月「電ちゃん、遅いなぁ」

 スタスタスタスタ

電「三日月ちゃーん!」

三日月「! 電ちゃん!」 パァァァ

電「はぁ……はぁ……ごめんなさいなのです。ちょっと、遅くなってしまいました」

三日月「別に大丈夫ですけど……いきなりだからビックリしましたよ。どこ行ってたんですか?」

電「えーっとですね……説明するよりこれを……じゃじゃーん! なのです!」

三日月「……く、クレープ?」

電「はいなのです。実はさっき、美味しそうなクレープ屋さんを見つけたので、三日月ちゃんと一緒に食べてみたかったのですっ。はい、どーぞ」 ニッコリ

三日月「あ、ありがとうございます。……けど、どうして教えてくれなかったんですか?」

電「えと……電なりのサプライズだったのです」

三日月「……いきなり一人にされたから、ちょっと寂しかったんですよ?」 ジトー

電「あっ……えと、その……ごめんなさいなのです」 ショボン

三日月「けど、ありがとうございます。電ちゃんが私のためにしてくれた行動だって、分かってますから」

三日月「すごく嬉しいですっ」 ニコリ

電「!! う、うん……ありがとう、なのです」 ニコリ

三日月「ふふっ、なんで電ちゃんがお礼を言うんですか。ささ、一緒に座って食べましょうっ」

電「はい! 味はオススメって書かれていたチョコバナナクレープなのです!」 ササ

 キラキラ

三日月「……改めてみると、すごく美味しそうです」 キラキラ

電「……電も運んで来る途中よだれが出そうになったのです」 キラキラ

三日月「あっ、そういえばお金払ってませんね私! おいくらでした?」

電「ふふ、良いのです。電のおごりなのです。そんなに高くなかったですし」

三日月「ええ!? そ、そういうわけには」

電「いーのです! それでは、いただきますなのです!」 パクリ

三日月「え、ちょ、はや……こ、今度は私が奢りますね! いただきます!」 パクリ


232: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 04:15:52.34 ID:PvHoD9jd0


電「…………」

三日月「…………」

電「……お」
三日月「……お」

電・三日月「「おいしー!!」」

電「こ、このクレープ……間宮さんのアイスにも負けてないのです!」 キラキラ

三日月「薄い、もちもちの生地の中にたっぷりの生クリームとパリパリのチョコレートっ。そこへ完熟した甘いバナナが絡んできて……お口の中を満足させます! それに加えて生クリームがぎっしりと詰まっているのに甘さが少し控えめでミルク感がたっぷりと味わえ、チョコレートの食感がバナナとクリームの味をより一層引き立ててきて……!!」 キラキラ

三日月「最高のチョコバナナクレープです……電ちゃん! ありがとうございます!!」 キラーン

電「……う、うん。よ、喜んでもらえて電も嬉しいのです」 ニコリ

電(三日月ちゃん、すっごいキラキラしてる)

三日月「~♪」 モグモグ

電(けど、こんなに喜んでもらえてうれしいなぁ) ニコニコ

三日月「……はぁ……幸せぇ……」 ウットリ

電(……写真に収めたいのです) プルプル

 ブー、ブー、ブー

電「ん? 通信機に着信……?」 キョトン

三日月「あれ、それ司令官が持たせてくれた物ですよね?」

電「そうなのです。ちょっと、出ますね」

 ピッ

提督『おっ、繋がった繋がった』

電「司令官さん? どうかしたのですか?」

提督『あぁ、遊んでる時にすまないな。特に大変なことが起きたわけじゃないんだけど、伝えることがあってな。三日月も聞こえてるか?』

三日月「はい、聞こえていますよ。司令官」

提督『そっか、じゃあそのまま一緒に聞いててくれ』

提督『二人とも知っているだろうけど、実は今別の鎮守府の提督がウチの鎮守府に来ているんだけどさ』

提督『向こうの提督が是非とも二人に会いたいと仰っているんだ』


233: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 04:43:02.02 ID:PvHoD9jd0


電「い、電達に……?」

提督『そそ。特に三日月に会いたがっていてな』

三日月「え!? わ、私にですか?」

提督『あぁ、理由は教えてくれなかったんだけどさ。それで、本当に申し訳ないんだけど、近々鎮守府に戻って来れるか? そんな大急ぎじゃなくても大丈夫だけどさ』

電「なるほど……分かったのです」

三日月「お客様が私達に会いたいと仰っているんですから、あまりお待たせするわけにもいきませんね。すぐに鎮守府に戻りましょう!」

電「電もそう思うのですっ。司令官さん、急いで鎮守府に戻りますね」

提督『おう、分かった。……いやぁ、本当に申し訳ない。また別の日に休みを作るからな』

電「色々と見て回れましたし、とっても楽しめたので、そんなに謝らなくても大丈夫なのですっ」

三日月「お土産もありますから、楽しみに待っててくださいねっ」

提督『ははは、別に気を遣わなくても良かったのに。けど、ありがとうな。楽しみにしてる』

提督『気を付けて帰って来るんだぞ? そんなに慌てなくても大丈夫だからさ』

三日月・電「はいっ」

提督『そんじゃ、また後でな』

 プツンッ

三日月「……なんか、予想外の事が起こりましたね」

電「なのです」

三日月「特に私に会いたがってるかぁ……」

三日月(珍しい人も……いるんだね)

電「とりあえず……これ食べ終わったら戻りましょうか」

三日月「はいっ」

 ――本当に、心の底から珍しい人もいるんだなと思った。睦月型の、しかも10番艦の私なんかに会いたい人がいるだなんて……。
 いったいどんな人なんだろうか。私は少し緊張しながら、残りのクレープを食べた。



 ――そして、私はこの後身を持って実感することになる。

 運命は時に残酷なんだと。


234: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 05:02:09.59 ID:PvHoD9jd0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 スタスタスタスタ

電「いったい、どんな人なんでしょうか。失礼のないようにしなきゃ」

三日月「電ちゃんならその点は大丈夫だと思いますよ?」

電「いや、電はあがり症ですから……緊張したら何をやってしまうかわからないのです……この前もそれで司令官さんに迷惑をかけちゃったのです」

三日月「うーん、私もあがり症ですから、気持ちは痛いほどわかります。なんであんなことやってしまったんだろうってすっごい後悔しますよね」

電「そうなのです……手だけは出さないようにしなきゃ……この前は司令官さんのお腹にパンチしちゃいましたから……はぁ、本当に何やってるのですかあの時の電……」

三日月「…………」

三日月「そう、ですね……手だけは、出しちゃダメですよ……」

電「……三日月ちゃん?」

三日月「え?」

電「さっきよりちょっと元気ないように見えますけど……大丈夫ですか?」

三日月「……なぜだか分からないんですけど、鎮守府が近づくにつれて、なんだか嫌な予感がしてくるんです。それが原因かもしれません」

電「嫌な予感?」

三日月「はい。よくわからないんですけどね」

電「……三日月ちゃん」 ギュ

電「何かあったらすぐに電に言ってくださいね?」

三日月「……うん」


235: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 05:38:44.55 ID:PvHoD9jd0


 スタスタスタスタ   ピタ

電「ふぅ……ただいまなのです」

三日月「…………」

 私達は、鎮守府に帰ってきた。入り口の門は今朝草むしりをしたからか、とっても綺麗だった。
 この鎮守府の風景は見ていてなんだか安心できるし、来てあまり日は経っていないのに、ここはすでに私にとって大切な場所になっている。

三日月「……っ」

 けど、なぜだろう。

三日月「……っ!」 プルプル

 今は、入りたくなかった。

電「み、三日月ちゃん?」

三日月「――え?」

電「大丈夫……ですか? 手が……」

三日月「……?」 プルプル

 自分の手を見つめる。震えている。理由は分からない。
 汗が頬を伝って流れる。息が苦しい。理由は分からない。

三日月「だ、大丈夫ですよ。あはは……」 ニッコリ

 けど、電ちゃんにはあまり心配をかけたくなかった。

電「……本当に、何かあったら言ってくださいね?」 ギュー

三日月「……はい」

 タッタッタッタ

金剛「オーイ、ヅッキー! 電ー!」 ニコー

電「あっ、金剛さん!」

 タッタッタッタ   スタ!

金剛「ヘーイ! おかえりなさいデース! デートは楽しかったデース!?」

電「で、デート!?/// そ、そんなんじゃないのです!」

電「あっ、け、けど、とっても楽しかったのです! お土産もあるのですっ」

金剛「オーウ! とっても嬉しいデース!」

三日月「……」

金剛「あれれー? ヅッキーどうしたデース?」

三日月「……え? あっ、金剛さん。……ただいまです」

金剛「……何かあったのデスか?」

三日月「い、いえ……大丈夫ですよ?」 ニコリ

金剛「……とてもそうには見え――」

電「こ、金剛さん! 今お見えになっている方はどんな人なのですか!?」

金剛「…………」

金剛「……ふふー、とっても優しい提督さんとその秘書官デース! きっとヅッキー達にも優しくしてくれマース!」 ニッコリ

電「本当ですか!? よ、良かったのです!」 ギュー

 電ちゃんの握る手が、少し強くなった。

三日月(電ちゃん……私に気を使ってくれてる……)

三日月「た、楽しみです!」 ニッコリ

 こんなわけのわからない症状に負けちゃダメだ。そう必死に思い込み、私は謎の苦しみを抑え込んだ。


236: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 06:04:29.98 ID:PvHoD9jd0


 スタスタスタスタ

三日月「…………」

金剛「――デネー、中々話の分かる――」

電「――は楽し――のです」

 二人の会話がまるで耳に入ってこなかった。
 理由の分からない苦しみに耐えるので精一杯だった。

三日月(ホントに、どうしたんだろ……私……)

金剛「――ッキー。ヅッキー!」

三日月「え?」

金剛「ヅッキー、聞いてましたカー?」

三日月「え……その、ごめんなさい……ちょっとボーっとしてて」

金剛「もーう、ではもう一回聞きますヨー?」

金剛「クレープ、そんなに美味しかったデース!?」 キラキラ

電「もう最高だったのです! ね? 三日月ちゃん」

三日月「は……はい! とても美味しかったですよ」

金剛「オーウ……今度は私も連れてってネー」

電「はいなのです! 今度は皆で一緒に行きましょうっ」

金剛「イエース!」

三日月「…………」

電(三日月ちゃん……本当にどうしたんだろう……)

 スタスタスタスタ

金剛「みんな司令室にいますヨー。もうすぐデース」


 ――ドクン、ドクン


三日月「……っ!」 プルプル

 苦しい。気持ちが悪い。震えが止まらない。嫌な予感がする。――嫌な予感しかしない。

三日月「はぁ……はぁ……」

電「み、三日月ちゃん。……部屋に戻りましょう。真っ青なのです……」

 そうしたかった。今すぐにでも、ここから逃げて部屋に行きたかった。
 でも、そういうわけにはいかない。

三日月「……大丈夫です、よ。……私達に会いたいって言っているのに、行かないわけにはいきませんよ」

電「……わかったのです」 ギュー

三日月(……ごめんね……電ちゃん)



237: ◆jz1amSfyfg 2015/06/26(金) 06:44:02.39 ID:PvHoD9jd0


 スタスタスタスタ   ピタ

金剛「さ、司令室の前に着いたデース。二人ともー? 失礼のないようにしなきゃダヨー?」

電「はいなのです」

三日月「……は、はい……」


「――――」

「――ははは!」


 司令室の中から少し声が耳に届く。司令官の笑い声だ。

 ――ドクンドクンドクン

三日月(落ち着け私……落ち着け私)

 必死にそう言い聞かせ、苦しみを抑え込む。――けど、嫌な予感は収まらない。

 嫌な予感とはどういった嫌な予感か。……考えたくないものだった。
 そんなことはあり得ないと必死に思い込むけど、私の勘が嫌な予感を何度も何度も頭に過ぎらせる。

金剛「それじゃ、入るヨー?」

 コンコンコン

金剛「金剛デース! お二人を連れて戻ってきましター!」

提督「お疲れ様。入ってくれ!」

 中から司令官の声がはっきりと聞こえる。

 ――ドクンドクンドクンドクン

 疑問が生まれる。お客様はどんな方なのだろうか。

 ――ドクンドクンドクンドクン

 嫌な予感が頭を過ぎる。


『僕には、君と同じくらいの大きさの娘がいる。あの子も君と似ていて頑張り屋さんでな。いつも無茶をするんだ』

『時には休むことも大事なんだ。今はゆっくり休みなさい。明日は期待しているよ?』

『……役立たずめ』

『頑張ってる? そんなの分かっているさ。……でもな』

『君の頑張りなんて他の艦娘達と比べたらまだまだなんだよ』


『所詮は睦月型だな。役立たずめ。加えてお前は無個性……やれやれだな』


 もしかしたら、この鎮守府に訪れている他の鎮守府の提督は――前の司令官なんじゃないかなって。

 ガチャ

三日月「――……っ……!!」

神通「……」

 運命は時に残酷だ。
 嫌な予感というのは、やたら的中する。

「やぁ、三日月」

三日月「ぁ……っ……!」 ブルブル

前提督「……久しぶりだね」 ニヤリ


243: ◆jz1amSfyfg 2015/06/30(火) 03:04:35.97 ID:3pleY1h/0


 二度と会う事はないんだろうなと思っていた。……“会ってはいけない”んだろうなと思っていた。
 ――身体が震える。
 先ほどから私がこんな状態になっていた理由が、今わかった。――身体は理解していたんだ。司令官にここで会うという事を。

三日月「し……司令、官……」

提督「……え?」 キョトン

提督「大佐、三日月と知り合いなのですか?」

前提督「ははは、知り合いもなにも、ねぇ……」 ジロ

三日月「……っ」 ゾク

前提督「元々彼女は僕の鎮守府にいた子だからね。ちょっと席を立たせてもらうよ」 スタ

 コン、コン、コン、コン

三日月(こっちに向かって、くる)

 コン、コン、コン、コン   ピタ

前提督「…………」

三日月「…………」 ブルブル

前提督「……ふぅ……」 ヤレヤレ

 スッ

前提督「挨拶はどうした」

三日月「!!」 ビクッ

三日月「お、お久しぶりです……司令官!」

三日月「あ、挨拶遅れて、も……申し訳、ありませんでした」

前提督「……あぁ、久しぶりだねぇ、三日月。何日ぶりかな?」

三日月「た、多分……じゅ、12日ぶりだと思います……」

前提督「……へぇ」

前提督「なぁ、三日月」

前提督「その多分ってのは……なんだい?」

三日月「……え?」


244: ◆jz1amSfyfg 2015/06/30(火) 03:49:42.64 ID:3pleY1h/0


前提督「何度も言う通り、私と君が会うのは久しぶりだ。そう、久しぶりなんだ」

前提督「私は君の元上官だ。そんな私と久しぶりに会うのに、君は何日ぶりかという情報を『多分』なんていう曖昧な言葉で伝えるのかい?」

三日月「っっ!!」 ビク

三日月「じゅ、12日ぶりです!」

前提督「……ははは」 ニコニコ

 スッ

前提督「……13日ぶりだ、この無能が」

三日月「……ご、ごめんなさい……」

電「!!」 ピク

金剛「…………」

提督「は?」

前提督「ん? 何だい? “少佐”殿」 ニッコリ

提督「あっ、その……いえ。何でもありません」

前提督「そうか。よし、じゃあさっきの続きの会話でも――」

電「あ、あの!」

前提督「ん? 君は……」

電「……暁型4番艦、電なのです。あなたが会いたいと言っていた」

前提督「!! ――あぁ、君が電か。特型駆逐艦は非常に優秀だと聞いたからね、会いたかったんだよ」

電「……光栄なのです」

前提督「……んで、少し気になってはいたんだが、何で君は三日月の手をずっと握っているんだい?」

電「……それは三日月ちゃんと電が大の仲良しだからなのです」 チラ

電「ね?」 ニッコリ

 ギュー

 電ちゃんの握る手が、また少し強くなる。
 そして、優しく微笑んでくれている。その表情はまるで「大丈夫だよ」と言ってくれているかのような、上手く言い表せられないけど、安心感の様なモノを感じさせる。

 きっと、私の事を心配してくれているんだ。ずっと。私の具合が悪くなった時から、ずっと。

 ねぇ、電ちゃん。――なんでそんなに優しいの?

三日月「…………」

電「み、三日月ちゃん?」

 電ちゃんは、優しい子だ。こんな私に優しくしてくれるし、その優しさは敵であるはずの深海棲艦にまで向けている。
 街にいたときだってそうだ。私に気を使ってくれてた。

 ――そんな子が、私なんかの友達で、いいのかな? こんな“役立たず”で“無能”なんかの私で。


 ――ぱっ……

電「……え!? な、なんで手を……」 アタフタアタフタ

三日月「…………」

電「み、三日月、ちゃん……? ど、どうしたのですか?」

前提督「……ははは」

前提督「電ちゃん、だっけ?」

前提督「友人はちゃんと選んだ方が良いよ? 友人にするべき人にはアタリとハズレがある」

前提督「……そいつは、“ハズレ”だよ」 ニコ


245: ◆jz1amSfyfg 2015/06/30(火) 04:34:01.42 ID:3pleY1h/0


 バァン!!

提督「…………」

前提督「……どうしたんだい? 少佐殿」

提督「……金剛」

金剛「……ヘーイ、何でショー?」

提督「紅茶、淹れて来てくれないか?」 ニコ

金剛「……オーウ! オッケーですヨー!」 ニッコリ

金剛「私がとっても美味しい紅茶を入れて持ってきてあげマース!」

提督「大佐、いきなり机を叩いてしまって失礼しました。少し変な虫がいたんですが、逃がしてしまいました。変な音を立ててしまったから、気分を害してしまったでしょう。気分を変えるために、うちの鎮守府の金剛が美味しい紅茶をお持ちいたします」 ニコリ

前提督「……おぉ、それは楽しみだね。期待して待っているよ?」

金剛「HAHAHA! 期待しててネ! ……頬が落ちないように気を付けてネー?」 スタスタ


電「…………」

電(……司令官さんが、あの大きな音を立てて空気を変えてくれなかったら、危なかったのです)

電(……ぶん殴っちゃいそうだったのです) ギリ

三日月「…………」

電「……三日月ちゃん」

三日月「……ごめんね、電ちゃん……」

電「何が、なのです……?」

三日月「私なんかの友達になっちゃ、ダメだよ……絶対にいつか迷惑かけちゃうし、私は電ちゃんの友達を名乗る資格なんて、ない。電ちゃんは、もっとマシな人と――」

 ガシッ

三日月「え?」

電「み、三日月ちゃん」

電「それ……本気で言っているのですか?」

電「本気で言っているんだったら……電、怒るのです」

三日月「……ほ、本気よ……だ、だって! 私は!」

 ――パシーン!!

三日月「――え?」

電「……み、三日月ちゃんの……ばか!!」 ポロポロ

三日月「……」

 電ちゃんが、泣いている。一瞬何をされたか分からなかった。だけど、右の頬が痛いことに気が付いて、何をされたかもわかった。

三日月「…………」

 ことばが、見つからない。なんて言えばいいのか、わかんなかった。

三日月「い、電ちゃん……」

電「…………」 スタスタ

 私から離れていく電ちゃんに、私は何も言えなかった。

三日月「……」 ジワァ

 そして、ぶたれた頬よりも、胸の方が痛かった。


246: ◆jz1amSfyfg 2015/06/30(火) 05:23:06.36 ID:3pleY1h/0


 スタスタスタスタ

神通「……三日月ちゃん」

三日月「!!」 ゴシゴシ

三日月「じ、神通さん……お久しぶりです。」

神通「はい、お久しぶりです」

神通「会えてうれしかったわ。元気そうで何よりです」 ニッコリ

三日月「……はい。私も、嬉しいです。ごめんなさい、お恥ずかしいとこを見せてしまって。神通さん、前より綺麗になられましたね」

神通(改二)「ふふ、ありがとうございます」

神通「それと、さっきの事は大丈夫ですよ。……良い友人じゃないですか、彼女」

三日月「…………」

神通「……さっきのは、三日月ちゃんが完全に悪いです」

三日月「え?」

神通「何がどう悪かったのか、しっかり考えて、彼女には謝らなきゃいけませんよ? 三日月ちゃんの悪い所が出ていましたよ?」

三日月「……私の悪い所なんて、いっぱいあり過ぎて……分かりません。……神通さんが一番分かっているはずですよ?」

神通「ええ。……ですが、あなたの良い所も同じくらい知っています」

三日月「…………」

神通「答えは言いません。自分で見つけて、自分で答えにたどり着くのよ? 訓練だと思って、頑張ってください」

神通「……あと、ごめんね」 ボソ

三日月「…………」

前提督「神通」 クイクイ

神通「……はい、提督。すぐにそちらへ行きます。……では」 ペコリ

 スタスタスタスタ

三日月「…………」

 神通さんは、相変わらずいい人だった。前の鎮守府でも、神通さんはずっと優しかった。
 ――……私はあんなことをしてしまったのに。


247: ◆jz1amSfyfg 2015/06/30(火) 05:23:54.72 ID:3pleY1h/0


 prrrr

前提督「すまない、私だ。出ていいかい?」

提督「ええ、お構いなく」

前提督「では失礼」 ピッ

前提督「あぁ、私だ。……うん。うん。……随分と早いね。もっと遊んでても良かったんだよ? ……そうか、分かった」 ニッコリ

三日月「……」 ジー

前提督「……なんだい?」

三日月「!! い、いえ……失礼しました」

前提督「あぁ、ごめん、なんでもないよ。……分かった。そこで待っててくれ。……うん、じゃ」 ピッ

提督「どうかなさったんですか?」

前提督「あぁ、実は他の艦娘も二名ほど同行させていたんだけど、あまりぞろぞろとやってくるのもどうかと思って、近場の街で遊ばせていたんだ。……けど、その子たちがここにやってきたらしく、今入口にいるらしい」

提督「あぁ、本当ですか。では案内を……」

電「電が行くのです」

提督「……わかった。では電に任せようかな。お願いする」

電「了解なのです」

前提督「よろしく頼むよ」

電「……はいなのです」

 スタスタスタスタ

三日月「……あっ……」

電「…………」 スタスタ

電「……三日月ちゃんは、休んでてください……」 ボソ

三日月「…………」

 スタスタスタスタ

三日月(どこかで、謝らなきゃ……)


258: ◆jz1amSfyfg 2015/07/01(水) 20:59:00.57 ID:AMfiezTP0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電「…………」 スタスタ

電「……っ……」 スタスタ

電(電は……最低なのです……三日月ちゃんの事を馬鹿にされて怒ったのに、その三日月ちゃんをぶっちゃうなんて……)

電(……でも、なんであんなこと言ったのかな……三日月ちゃん)

 スタスタスタスタ

 ――ガチャリ

 スタスタスタスタ

電「…………」 スタスタ


夕立「あっ、誰か来たっぽい!」

菊月「……お前、こんなとこに来てまでそんな話し方するのか……」

夕立「癖だからしょーがないっぽい!」

電「こんにちはなのです。電は――って、え?」

菊月「…………」

菊月(やはり、艦娘だったか)

電「あ、あなたは……先ほどお会いした……」

菊月「あぁ、この鎮守府の艦娘だったのか。ならば、あの街にいたことも納得ができる。……先ほどぶりだな。暁型4番艦……電」

電「な、何で知って……って、そうじゃなく、あの時は本当にごめんなさいなのです!」 ペコリ

菊月「別に気にしなくていいさ。私の不注意でもあったしな」

夕立「???」 キョトン

夕立「お二人とも、知り合いっぽい?」

電「お知り合いと言うか……その……」

菊月「……お前から逃げてる時にぶつかって、少し会話した程度だ。……なんとなく予想はしていたが、まさかここの艦娘だとは思わなかったけどな」

菊月(……特型駆逐艦も、見かけはあまり私と変わらないのだな)

夕立「え!? って事はあなたもあの街にいたっぽい!? そして菊月ちゃんと会ってたのに再会っぽい? すっごい偶然っぽい!」 キラキラ

夕立「ねぇねぇ、あなたお名前なーに? 私、白露型駆逐艦、夕立よ! よろしくね!」 グイグイ

電「あ、暁型4番艦、い、電なのです……よろしくなのです」

夕立「うん! よろしくっぽい!」 ニコニコ

電(お、お犬さんみたいな子なのです……)

電(……けど……) ジー

夕立「♪」 ニコニコ

電(む、胸の大きさは駆逐艦とは思えないのです!!)

菊月「……見ての通り、やかましい奴だが……悪い奴じゃない」

菊月「私は……菊月だ。よろしく頼む」

電「……え? 菊月、さん? もしかして、睦月型のですか?」

菊月「……そうだが?」

電「も、もしかして、三日月ちゃんの……お姉ちゃんですか?」

菊月「!!」

夕立「……」 ピク


259: ◆jz1amSfyfg 2015/07/01(水) 21:27:42.57 ID:AMfiezTP0


菊月「お前……三日月と知り合いなのか?」

電「は、はい。三日月ちゃんはこの鎮守府はできたばっかで、まだ艦娘は三人しかいないのです。三日月ちゃんは電の次……っといってもほぼ同時ですけれど、二人目の子なのです」

菊月「……そう、か……」

夕立「……やっぱり、あの街で見かけたのは見間違いじゃなかったのね……」

菊月「!! お前、三日月を街で見かけていたのか!?」

夕立「…………」 コクン

菊月「だったらなんで言わ――」

夕立「…………」

菊月「……いや、すまない……。……そう、だったのか」

電「……あ、あの……お聞きしたいことがあるのです」

菊月「……なんだ?」

電「三日月ちゃんと……そちらの司令官さんについ――」

夕立「ねぇ」

夕立「……あの子の話、しないでよ」

電「え?」

夕立「あの子の名前なんて、聞きたくもないっぽい」

夕立「……イライラするっぽい」

菊月「…………」

電「……な、なんですか……それ……!」

電「なんですか!! それ!!」

菊月「……」

夕立「……」

電「そちらの司令官さんも!! 夕立さんも!! なんでそんなひどい態度なんですか!!」

夕立「……」

電「夕立さん、さっきまであんなに笑顔だったのに、なんで三日月ちゃんの名前が出ただけで、そんな風になるんですかッ!!」

電「……み、三日月ちゃんが……可哀想なのです……!!」 ジワァ

夕立「……さいな」

電「……え?」

夕立「――うるっさいなぁ!!」

電「――ッ!?」 ビク


260: ◆jz1amSfyfg 2015/07/01(水) 21:58:41.62 ID:AMfiezTP0


夕立「……あの子の名前を出さないでって言ったでしょ……」

夕立「……けど、怒鳴ってごめん……ぽい」

電「……っ……!」 グッ

電「怒鳴ったことなんて別に大丈夫なのです! けど、あなたの司令官さんは三日月ちゃんになんで――」

夕立「……黙ってッ!!」

電「だ、黙らないのです!!」

電「あなたの司令官さんは!! 三日月ちゃんの事を“無能”って言ったんですよ!? それに、他にもいろいろ言っていましたし、態度だって……あなたの司令官さんは優しくていい人だって聞いていたのです。けどそんな要素どこにも――」

夕立「黙れってッ!! 言ってるでしょッ!!」 ギロ

電「っ――!!」 ビク

夕立「……提督さんのこと、よく知りもしないくせに……!!」 プルプル

菊月「…………」

電「……し、知りませんよ! ……だけど」

 ガシッ

夕立「…………」

夕立「……電ちゃん、だったっけ?」

夕立「……そんなに知りたければ、教えてあげるっぽい。覚悟して聞いてよ」


夕立「あの子は……提督さんの娘とお嫁さんを、殺したのよ……!」


電「――え?」


261: ◆jz1amSfyfg 2015/07/01(水) 22:27:33.91 ID:AMfiezTP0


電「う……うそ……」

電(……み、三日月ちゃんが……?)

夕立「……嘘じゃないよ」

夕立「私とあの子は、ずっと一緒の部隊だった。その時の様子も一緒に見てる」

夕立「それに、あの子が“自分自身で”言ってる。『私は人殺しです。司令官の娘さんとお嫁さんを殺したのは私です』って。……全部本当のことよ」

電「…………」

夕立「……その様子だと、何にも聞いてなかったみたいね。……何にも変わってないのよ……あの子は……いっつも一人で抱え込んでさ……!!」 ギリ

夕立「……ホント、イライラするっぽい……」 パッ

夕立「それに……あの子は提督さんのことを……!!」

菊月「夕立!!」

夕立「――!!」 ハッ

菊月「もう、やめてくれ……聞いてて……つらいんだ……」 フリフリ

夕立「……ごめん……なさい」

電「…………」

夕立「……電ちゃんも……ごめんなさい……」

電「……電も……ごめんなさいなのです……」

電「…………」

夕立「…………」

菊月「…………」

菊月「……電。司令室までの案内を頼む」

電「……はい。こちら……なのです……」 スタスタ

菊月「……感謝する」 スタスタ

夕立「……」 スタスタ


262: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 02:02:58.80 ID:OCzmjaGo0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「…………」

金剛「ヘーイ皆さーん! 紅茶ができたヨー!」

提督「おぉ、ありがとう金剛」

前提督「いい香りだね。ありがとう」

金剛「いえいえー」

金剛「はい! 神通もどーぞデース!」

神通「あっ、ありがとうございます。いい香りですね」 ニコ

金剛「神通とはさっき紅茶トークで盛り上がった仲デース! また話しまショー!」 ニッコリ

神通「ええ、楽しみにしています」

三日月(金剛さん……もう神通さんと仲良くなったんだ。さすがだなぁ)

三日月(それにしても電ちゃん……ちょっと遅い。何かあったのかな)

金剛「へいヅッキー。美味しい紅茶を持ってきたヨー」 スタスタ

三日月「あ、ありがとうございます」

金剛「ノープログレムデース。お隣いいデスカー?」

三日月「……はい」

金剛「オウ、センキュー! では、失礼しマース」 スッ

三日月「…………」 ズズー

金剛「はぁ……幸せデース……紅茶 is god……」 ポワー

三日月「……金剛さん、すっごい幸せそうですね」

金剛「イエース。三度の飯より紅茶が好きデース」 ニッコリ

三日月「ご飯はしっかり食べなきゃですよ?」

金剛「わかってますヨー? 紅茶でお腹は膨れまセーン」

三日月「でも、飲み過ぎると水っぱらになってお腹出ちゃいますよ?」

金剛「え? それマジ?」 ガーン

三日月「ずっとではないから大丈夫ですよ。けど、飲み過ぎは良くないので、控えめが良いかと」

金剛「……1日8杯なら……セーフデスか?」 グヌヌヌヌ

三日月「ふふふ、多すぎですよ、それは」 クスクス

金剛「……やっと笑ってくれたデース」

三日月「え?」

金剛「ヅッキー、ずっと不安そうな顔でしたから、私心配だったデース」

金剛「ヅッキーは悲しそうな表情より、笑っている方がステキデース」 ニッコリ

三日月「……金剛さん……」


263: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 02:55:28.95 ID:OCzmjaGo0


金剛「……ヅッキー」

 ギュ

金剛「……Youは頑張り屋さんデス。毎日の訓練も頑張っていマスし、朝早起きして朝練までしてる努力家デース」 ボソ

金剛「それに、思いやりのある優しい子デス。それは電も同じデス」 ボソ

金剛「電の場合はちょっとお寝坊さんデスけれど」 クスクス

三日月「…………」

 金剛さんは私を抱き締めながら、小さく耳元で囁いてくれた。

金剛「私は……そんなお二人が大好きデース。提督と同じくらい、私はあなた達が……」 ボソ

金剛「……大好きなの」 ギュ

三日月「……金剛さん……」

金剛「だから、あの人に三日月を馬鹿にされた時……すごく……嫌な気持ちになりマシタ。イラっとしマシタ」

金剛「……ケド、最初会った時とかは本当に良い人デシタ。……さっきは人が変わったようでしたけれど、今もさっきみたいな様子は見られません。……だから……何か理由はあるんだと思いマス」

三日月「…………」 ギュ

 理由はもちろんある。だって私は……あの人にとっては……。

金剛「……その理由は、聞きません。三日月が話したくなった時に話してくれればいいデスし、話したくないならいいデス」

金剛「……ケド、これだけは覚えておいてくだサーイ」

三日月「…………」

金剛「私は……何があってもあなたの味方ヨ」 ギュー

金剛「……提督も一緒デース。さっきまであの人との会話はすごく楽しそうでしたけれど……」


前提督「――――」

提督「……ははは」


金剛「今はちょっとぎこちない笑い方してマース。提督も同じ気持ちなんデス」

三日月「……司令官……」

金剛「……ここの鎮守府のみんなは、三日月が大好きデス。だから……何かあったら……」

金剛「……私達に頼って……」 ギュー

三日月「……金剛、さん……」

 不意にも、目頭が熱くなった。ギュッと私を抱き締めてくれている金剛さんは、少しだけ震えてた。
 哀しんでいるのかもしれない。

 ――私が何も打ち明けないから。

三日月「…………金剛さん、実は私――」

 コンコンコン

三日月「!!」 ハッ ――パッ


電「電です。お客様をお連れしたのです」


264: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 03:26:50.96 ID:OCzmjaGo0


提督「あぁ、電か。お疲れ様。入ってくれ」

金剛「……電が戻って来たみたいデスネ」

三日月「……はい」 コクリ

 ガチャリ

 スタスタスタスタ

三日月「――!!」

電「……ただいま、お戻りしました」

提督「あぁ。案内、ありがとうな」

夕立「……」

菊月「……」

三日月「……き、きく……づき……?」

菊月「……久しいな……三日月。……まだそんなに日は経っていないけどな」

三日月「それに……夕立……さん」

夕立「……」 プイ

 ガタッ

前提督「お前達……街で遊んでいても良かったのに……」

夕立「菊月ちゃんがそういうわけにはいかないって、聞かなかったっぽい!」 ニッコリ

菊月「二人がここにいるのに私達だけで遊んでいるわけにもいかないだろう……」

前提督「ははは、本当に菊月は真面目だなぁ」 ナデナデ

菊月「あっ、ちょ……こ、こんなところでやめて、くれ!」


三日月「……え?」 キョトン

三日月(な、なんで司令官が……菊月の事を……?)

前提督「あぁ、すまないね少佐殿。君達、ご挨拶を」

夕立「白露型4番艦、夕立です! 改二です! よろしくお願いします!」 ビシィ

菊月「……菊月だ。睦月型9番艦……」 ビシ

前提督「敬語を遣いなさい」 コツン

菊月「あいた! ……うぅ、なんなのさ。……菊月です」

提督「!! 睦月型9番艦って事は……三日月の」 チラ

三日月「……」 プルプル

菊月「……」

三日月「……な、なん……で……?」 プルプル

三日月(あなたは……司令官は――)

前提督『“所詮”は睦月型だな。役立たずめ』

三日月(睦月型を……私のせいで……!!)


265: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 03:54:17.94 ID:OCzmjaGo0


前提督「……昔、どっかの誰かに僕はこう言ったことがある」

前提督「『所詮は睦月型だな。役立たずめ』って」

前提督「だけど……この子は非常に優秀な子だった。ここ最近の活躍を僕は心の底から評価してる。だからついこの前優秀な神通率いる部隊の“一人”として配属して、僕の護衛をさせているんです」 ナデナデ

菊月「…………」

前提督「僕の考えは間違っていたんだよ。睦月型でも役立たずは……」


前提督「“一隻”だけなんだなぁってね」


三日月「…………あはは……」

 何かが、折れる音がした。何が折れたのかまでは……わからなかった。

三日月「……っ!!」 ジワァ

 なぜだか、涙があふれ出して、止まらなかった。

 ――そして、その時だった。

 バッ

電「…………」

 電ちゃんが私の歪む視界の中で、司令官に殴りかかった。


266: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 04:18:42.53 ID:OCzmjaGo0


提督「!! いなづ――」

 その言葉が、言い終わる前だった。電ちゃんは――

 シュッ   ――バタァン!!

電「ッ!?」

神通「……」

 床に叩き伏せられていた。

前提督「……あれあれ? 電ちゃん。今君、僕に何をしようとしたのかな?」

提督「た、大佐! 電は!」

前提督「君には聞いていない」

提督「っ!!」 グッ

前提督「電ちゃん? 怒らないから正直に言ってごらん?」

電「…………」

提督(電……頼む! 嘘を付いてくれ!!)

三日月「い、いなづま……ちゃん」

電「…………ふふ」


電「あなたをぶん殴ろうとしたに決まっているじゃないですか」


提督「……くっ!!」


前提督「……神通」

神通「はい」

前提督「折れ」

 ――バキッ!!

三日月「――へ?」

 聞いたことが無い音が部屋の中に響き渡った。
 何が起きたのか、一瞬では理解できなかった。――次の瞬間までは。

電「うっ――――ぁぁぁぁぁァァあああッ!!」

 電ちゃんの聞いたことない絶叫が耳に届いた。


267: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 04:55:29.38 ID:OCzmjaGo0


提督「金剛!! 俺を抑えてくれッ!!」

金剛「ッ!!」 ガシッ

提督「はぁ……はぁ……!!」

提督「ごめん、な……!!」

金剛「……提督が謝ることなんて、ないワ……!!」

提督「……向こうの秘書官の神通に感謝だな……あのまま彼女が止めなかったら、電は……あいつを、殴って……!! 解体処分だっただろう……ッ」

金剛「…………」


三日月「いな、づま……ちゃん……?」


電「えぐ……ぃたい……痛い……!!」

前提督「……まったく、ダメだよ電ちゃん。僕を殴ってたらもっとひどい目にあってたよ」

前提督「なんでそんなに怒ってるのか分からないけれど、上官は殴ってはダメなんだよ。……なぁ、三日月?」

三日月「!!」 ビクッ

電「……はぁ、はぁ……ひっぐ……!!」

前提督「……けど、良い教訓になっただろう? 痛い目にあわせてごめんね、電ちゃん」

前提督「何か、言う事はあるかい? あるよね? 悪いことをしてしまったあとに言う言葉」

電「はぁ……はぁ……!!」 ギリ

電「『なんでそんなに怒ってるのか分からないけれど』……? ふざけないでください!!」

電「なんで……三日月ちゃんが……私の大事な大事な友達が!!」

三日月「!!」

電「傷つけられているのに!!」

 ――やめて。

電「怒らないと思ってるんですか!!」

 ――やめて。やめてやめてやめて。

三日月「……いなづまちゃん……やめて……!」

前提督「…………」

電「……上官が……私情を挟んで、部下を……しかも今は他の鎮守府にいる子を……いじめるのは……楽しいですか?」

三日月「い、いなづまちゃん……!!」

電「私が……はぁ……言ってあげるのです……あなたが、みかづきちゃん、に……はぁ……いったように……!!」

三日月「や、やめて……」 フリフリ

電「……ふふ」 ニヤリ


電「この――無能提督」




268: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 05:28:34.84 ID:OCzmjaGo0


前提督「神通……折っていいよ?」

神通「……どこをですか?」

前提督「……優秀な君には似合わない質問だな。左腕だよ。左右ともに一緒にしてあげなさい」

神通「…………」

電「……はは……暁お姉ちゃんが……しれいか……ていと、く……になった方が……まだゆうのう……なのです」

電「……むのう、提督……」

前提督「神通!!」

神通「…………はい」

 ――バキッ!!

電「あっ――がっ、ぐぅぅぅうううううッ!!」

夕立「……ッ」 プイ

菊月「……」


三日月「やめて……やめてやめてやめてやめてやめて……やめて!!」


電「はぁ……はぁ……はぁ……げほ……!!」

電「……なんどでもいって……あげましょうか?」

前提督「……っ!!」 ブチ

前提督「なんなんだ君は!!」

電「……みかづきちゃんの……なかま……なのです……」


三日月「――――――――」



電『同じく艦娘なのです! 暁型4番艦の電なのでしゅ!』 ビシッ

電『……///』

電『うぅ……舌が痛いのです……』


電『電は新しいお仲間である三日月ちゃんのお役に立ててうれしいのです』 ニッコリ

 ――わたし、さっき電ちゃんになんて言った……?

三日月『私なんかの友達になっちゃ、ダメだよ……絶対にいつか迷惑かけちゃうし、私は電ちゃんの友達を名乗る資格なんて、ない。電ちゃんは、もっとマシな人と――』

 ――わたし、あの時、初めての実戦の時、電ちゃんにこう言った。

三日月『電さん、大丈夫ですか?』

電『は、はい。あ、足を引っ張らないように頑張るのです』

三日月『……電さん』

三日月『そんな気にしなくて大丈夫ですよ』

三日月『何事も経験ですし、助け合い協力し合うのが仲間です』

三日月『足を引っ張らないように頑張るのではなく、何があっても一緒に支え合って頑張りましょうっ。私だって、まだまだ未熟者ですから』 ニッコリ

電『み、三日月ちゃん……』

三日月『ね?』

電『……あ、あの……ありがとう』 ニコリ

三日月『ふふふ、いえいえっ』


269: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 05:58:31.81 ID:OCzmjaGo0


 ――そうだ、私はあの時、そう言ったじゃないか。なのに。

三日月『私なんかの友達になっちゃ、ダメだよ……絶対に“いつか迷惑かけちゃう”し、私は電ちゃんの友達を名乗る資格なんて、ない。電ちゃんは、もっとマシな人と――』

 ――いつか迷惑かける? あんなこと言ったくせに? 仲間とはそういうものだって偉そうに語ったくせに? それって……「迷惑すらかけられないあなたは、仲間じゃない」って言ってるようなものなんじゃないかな?


電『戦争には勝ちたいけど、命は助けたいって……おかしいと思いますか?』

 電ちゃんは、本当に、優しすぎる子なんだ。

電『変な事言ってるのは……電が一番分かっていることなのです』

電『けど、電は……あまり戦いたくはないのです。沈んだ船も……できれば助けたいのです』

電『……それが“人類の敵”である、深海棲艦であってもなのです』

 ――そんな彼女が、今……本気で怒っている。私のために。“何にも打ち明けず、一人でずっと抱え込んでいる”私のために!


電『三日月ちゃんは、無力なんかじゃないのです』

電『電は……わたしは、三日月ちゃんに救われたんです』

電『……今まで、いっぱい我慢してきたんですね? 後ろは電が抱きしめてあげます。守ってあげます。だから……もう我慢しないで?』 ギュー


 ――――ッ!!

三日月「やめて……!!」 バッ

夕立「!?」

菊月「…………」

 タッタッタッタ!!

 ガシッ

前提督「な!?」

三日月「司令官……お願いです……!」 ガシ

三日月「電ちゃんを……これ以上苦しめないでください……!!」

電「みかづき……ちゃん……?」

三日月「……私の友達を!! これ以上……傷つけないでください!!」

電「!!」


271: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 06:41:02.85 ID:OCzmjaGo0


前提督「……離れなさい」

三日月「電ちゃんが! 私のせいで傷ついてるのは……わかっています!」

三日月「司令官が……私の事を恨んでいるのも……わかってます!! 私が、一番!!」

夕立「……」

三日月「けど、これ以上……」

三日月「私の“大切な友達”を、傷つけないでッ!!」

電「っ――!!」

電「……えへへ……いうのが……おそい……の……です」 ジワァ

電「……みか、づき……ちゃん……だい……す……」

電「…………」


前提督「……っ、離れろ!」

三日月「うっぐ……!!」 ギュ

前提督「――!!」


 ―――――――――――――――――――――

 ガシッ

『行かないでよ! パパ!』 ギュ

『お願い……!!』

『うっぐ……!!』 ギュ

 ―――――――――――――――――――――

前提督「ッッ――!! くっそ!!」 ドン

三日月「ひゃ!」

 ガシ

神通「……」

三日月「じ、神通……さん」

神通「……提督。電ちゃんが気を失いました」

電「…………」

三日月「え……?」

神通「至急何とかしないと……まずいです」

前提督「……少佐……」

提督「……なん、ですか」

前提督「……今すぐ入渠させた方が良い。30分もすれば……完治するよ……」

提督「……三日月、電を今すぐ入渠場へと運んでくれ……」

三日月「は、は――」


272: ◆jz1amSfyfg 2015/07/02(木) 06:55:13.49 ID:OCzmjaGo0


 スッ

夕立「……」

三日月「ゆ、夕立さん……」

夕立「そっちの提督さん、少し冷静になった方がいいっぽい」

夕立「……この子じゃ急いで運べないと思うっぽい」

提督「……じゃ――」

夕立「――だから、夕立に運ばせてください」

夕立「パワーと……スピードだけなら自信あるっぽい……!」

前提督「……」

提督「……ありがとう……頼んだ」

電「…………」 ガシッ

夕立「任されたっぽい! ……お姫様抱っこなんて、久しぶりっぽい」 フゥ

三日月「……」

夕立「……ねぇ、早く案内してほしいっぽい!!」

三日月「へ!?」

夕立「運ぶのは手伝うけど、場所わからなきゃ意味ないでしょ! 臨機応変に対応してよ!」

夕立「ッ!! あなたは速力だけだったら夕立にも負けなかったでしょ!?」

三日月「――!! は、はい! こっちです!」 バッ

夕立「……ふん!」 バッ

 タッタッタッタ!!

菊月「……夕立……三日月……」

前提督「……」

神通「……」

提督「……」

金剛「……」

提督「……大佐……」

前提督「……なんだい?」

提督「……お話が……あります……!!」 ギロ

金剛「…………」

金剛(提督……拳握り過ぎて……出血してる……)

金剛「…………」 スッ ジー

金剛「あはは……私も……してた」


289: ◆5z7C0EoTrg 2015/07/02(木) 22:21:41.84 ID:epPbHHGnO


< 平和の使者は平和的だろうか >





提督「今日のカクテルはマリブサーフ。
カクテルワードは“ 平和で未来を思う心の持ち主 ”、だ」

天城「…………」

提督「…………」

天城「…………」

提督「…………」

天城「…………」

提督「…………割と強情だよな、天城って」

天城「…………」

提督「…………お前は兵士だよ。天城自身がどうあろうと、どう考えようとね」

天城「…………」

提督「……ま、存在意義なんかで悩めるだけ幸せなのかもしれないぜ?
それこそがただの兵器ではない証拠だもんな」

天城「……………………悩む前に、あなたに出会いたかった」

提督「…………そうだな。でも俺はただの女の子だ、と言える場面でも兵士だと言ってしまうくらいには優柔不断だよ」

天城「…………それでも、です。あなたは天城を天城として見てくださるから。……天城にもできないことを、容易く」


295: ◆jz1amSfyfg 2015/07/03(金) 01:45:56.51 ID:tUCyZLsE0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈入渠場〉

 ――ぽちゃん

三日月「はぁ、はぁ……」

夕立「…………」

電「…………すぅ……すぅ……」

三日月「ま、間に合いました……?」

夕立「…………そうっぽいね」

三日月「……治る……かな……」

夕立「……治るに決まってるじゃん。……艦娘はどんなに傷つけられても入渠すれば治る。……“あなたが一番知ってること”でしょ」

三日月「……そうでした」

三日月「……本当に……良かった……!!」

夕立「…………じゃあ、夕立戻るね」 クル

三日月「あっ、ゆ、夕立さん!」

夕立「…………なに?」

三日月「えと……あの……電ちゃんを運ぶの手伝ってくれて……ありがとうございます」 ペコリ

夕立「……別に、お礼を言われるほどのことじゃないっぽい」

三日月「……それでも……やっぱり感謝してます。ありがとうございます」

夕立「…………」

三日月「あと……夕立さんはそう“思ってない”かもしれませんが……久しぶりに会えて……嬉しかったです」

夕立「っ!!」 クル

 スタスタスタスタ

夕立「なんなの? 嫌味!? 今そんなこと言う必要あるの!?」

三日月「……ごめんなさい」

夕立「……ふん」 プイ

三日月「…………」

夕立「……ホントさ、あなたって昔から変わらないよね」

三日月「え?」


296: ◆jz1amSfyfg 2015/07/03(金) 03:56:10.04 ID:tUCyZLsE0


夕立「全部……全部全部全部! 一人で抱え込む」

夕立「……一人で何でもかんでも決めつけて、勝手に傷ついて……なんなのよ!」

三日月「…………」

夕立「……あなたが過去にやったこと、電ちゃんには何にも打ち明けてなかったんでしょ?」

三日月「……はい。前の鎮守府では色々問題を起こしてしまった……という事しか……」

夕立「……そんなあなたを守って、電ちゃんは傷付いたんだ?」

三日月「……そんなこと、分かってます……」

三日月「……でも……話せるわけ、ないじゃないですか。あんな話したら、電ちゃんは――」

夕立「自分から、離れて行ってしまうかもしれないって?」

三日月「…………」

夕立「……ばっかなんじゃないの?」

夕立「今日初めて会った夕立でも分かるよ。……この子はあの話を聞いてもあなたから離れない」

三日月「……そんなの、わからないじゃないですか!!」

夕立「ッ!! ――わかるに決まってんでしょッ!?」

夕立「この子はあなたのためにこんな状態になれる子なんだよ!?」 ビシ

夕立「何にも打ち明けない!! 心を完璧に開いていないあなたなんかのためにだよ!? ――友達のくせに何でそれが分からないんだッ!!」

三日月「っ……!!」

夕立「……それだよ……あなたの悪いとこ……私の大っ嫌いなとこ」

夕立「自分よりも他人の事を優先させるくせに、肝心なとこは見てないし、勝手に変な風に思い込んで、自分一人で結論を出して……!!」 プルプル

夕立「結局あなたは自分一人の殻に閉じこもってるだけなんだよッ!!」

三日月「…………」

夕立「なんで自分一人だけで抱え込むの!? なんでもっと周りに頼らないの!?」

夕立「……『夕立さんはそう“思ってない”かもしれませんが』……? ふざけんなこのわからず屋!!」

三日月「…………」

夕立「はぁ……はぁ……!!」

三日月「……ごめんなさい……夕立さん」

夕立「…………チッ」 プイ

夕立「……勝手に、一人で抱え込んでればいいっぽい……」 クル スタスタ

三日月「…………」

夕立「…………」 ピタ

夕立「……それでも、あなたの事……昔は大好きだった」

三日月「…………」

夕立「……けど今は、大っ嫌いッ!!」 バッ

 タッタッタッタ

三日月「……夕立さん……」



297: ◆jz1amSfyfg 2015/07/03(金) 04:35:26.20 ID:tUCyZLsE0


電「……みかづき、ちゃん……?」

三日月「!! 電ちゃん! 気が付きましたか!?」

電「……はい。……つい、先ほどから……。ここは……入渠場ですか?」

三日月「はい。……電ちゃん、さっきまでの記憶……ありますか?」

電「……はい、あるのです。……電はあの後、気絶しちゃったんですね」

電「三日月ちゃんがここまで運んでくれたのですか?」

三日月「いえ。夕立さんが……」

電「そう、だったのですか。……後でお礼言わなきゃなのです」

三日月「…………」 グッ

三日月「……電ちゃん……ごめんなさい。私のせいで……」

電「……別に、謝ることなんてありませんよ? 電が勝手にやったことなのです。三日月ちゃんが気を病むことはありません」

三日月「け、けど!」

電「むしろ、心配かけちゃってごめんなさいなのです」

電「……あと、三日月ちゃんが馬鹿にされたのに……何もできなくて……ごめんなさいなのです」

三日月「――――!!」

三日月「な、なんで……なんで……!!」 ジワ

三日月「なんでそんなに……優しいんですか……電ちゃんが謝るんですか……!!」 ポロポロ

電「み、三日月ちゃん……」

三日月「ひっぐ……!! ぐす……うぅ……!!」 ポロポロ

電「…………」 スッ

電(右腕は……もう動くのです)

電「……三日月ちゃん?」

三日月「……?」 ポロポロ

電「えい」

 バシャーーン!

三日月「わっぷ!?」

電「それそれ~!」

 バシャンバシャン!

三日月「あう! ちょ、え!?」 ビショビショ

電「あっはっはっは! 三日月ちゃん、ビショビショなのです!」 ニコニコ

三日月「……?」 ポカーン

電「三日月ちゃん、泣かないでください」

電「三日月ちゃんは……電はもう、大丈夫なのです。だから、泣かないで?」

電「三日月ちゃんが悲しそうだと、電も悲しくなっちゃうのです」


308: ◆jz1amSfyfg 2015/07/25(土) 06:27:57.41 ID:E+6N1SlS0


三日月「……電ちゃんはさ……本当に、優しいですよね」

三日月「……もう一回聞いていいですか?」

電「……はいなのです」 ニコ

三日月「なんで……そんなに……優しいの?」

電「……電は……私は」

電「三日月ちゃんが大好きなのです」

電「三日月ちゃんは私の、大切な――とっても大切な、友達なのです」 ニッコリ

三日月「…………っ」 ジワァ

電「大切な友達に優しくするのって、おかしいと思いますか?」

三日月「……ううん」 フリフリ

電「それに、三日月ちゃんだって優しいのです」

三日月「……わ、わたしは……優しくなんて……ないよ」

電「ううん、三日月ちゃんは優しいですよ」 サバァ

三日月「!! ――い、電ちゃん! まだ出ちゃダメだよ! 怪我が――」

電「ほら、三日月ちゃんは優しいのです」

三日月「え?」

電「電の事を、気遣ってくれています」

三日月「……」

電「三日月ちゃん」

電「三日月ちゃんは優しくて、私のとっても大切な」

電「大好きな友達なのです」

三日月「……電ちゃん……!!」

 本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。私はこんな優しい友達に、私なんかを好きでいてくれる、大切に思ってくれている友達に、何にも教えていない。

三日月「電ちゃん」 スタスタ

 チャポン

三日月「……電ちゃん……!!」

電「……ふふ、三日月ちゃん。お洋服着たままお風呂に入っちゃダメなのです」

三日月「それは、電ちゃんも……一緒です」 スタスタ

電「あはは、そうですね」

三日月「電ちゃん」 スタスタ

 ギュー

電「……はい、なんですか?」

三日月「……ごめんなさい」

電「……三日月ちゃん」

三日月「ごめんなさい……!!」 ポロポロ

電「…………」 ギュー

電「三日月ちゃん、よしよしなのです」 ナデナデ

 電ちゃんに抱き着きながら謝る。謝ることが多すぎて、いったいどのことに対しての謝罪なのか、自分でも分からない。それでも、私は電ちゃんに謝った。
 電ちゃんは私の頭をそっと撫でてくれて、抱きしめ返してくれた。私が落ち着くまで、優しく――


309: ◆jz1amSfyfg 2015/07/25(土) 07:01:34.53 ID:E+6N1SlS0


電「……落ち着きましたか?」

三日月「はいっ。ありがとうございましたっ」

電「これくらい、お安い御用なのです」

電「もう、両腕も動くようになりました。電、完治なのです」

三日月「……ごめんなさい」

電「大丈夫なのです。さっきも言った通り、三日月ちゃんが気を病むことはないのです」

三日月「そ、そんなこと……無理ですよ」

三日月「……電ちゃんは……た、大切な友達ですから! だから……その……ごめんなさい」

 電ちゃんはこう言ってくれているが、やはりそう簡単には罪悪感は消えない。私はめんどくさい性格なのかもしれない。
 なんて言っていいかもわからず、とりあえず謝ってしまう。当然それだけではダメだと思っている。これが私の悪い所の一つなのかもしれない。すぐに謝ってしまう事が。

電「ふふ、大切な友達って言ってくれるだけで、電はもう満足なのです。だから、もう気にしないでください」

三日月「……うん」

電「では、そろそろ……戻りましょうか」

三日月「…………」

三日月「い、電ちゃん!」

電「はい、なんですか?」

三日月「実は……お話があるんです」

三日月「ずっとずっと、内緒にしていた、私の……犯した罪のことです」

電「……やっと、話してくれるんですね。三日月ちゃん」

三日月「はい」

三日月「……もう、私は……迷いません。怖がりません」

三日月「全部、全部話します。その結果が、どんな形になっても、私は後悔しません」

電「……私は、三日月ちゃんが何かを抱えていることは予想していました。以前、問題を起こしてしまったとも聞いていましたし、本当の事を言うと、ほんの少し、夕立さんに聞いてしまいました」

三日月「……」 ギュ

電「でも、待っていました。……あなたが直接、話してくれる時を……」

三日月「……あの話をちょっと知っていたのにも関わらず、電ちゃんは私のために怒ってくれたんですね」

電「……はい」

三日月「……っ」 ギュ

三日月「……電ちゃん。最初に一言……言わせて?」

電「……うん、いいですよ」

三日月「……ありがとう。……大好きです」 ニッコリ

電「……電もなのです」 ニッコリ

 そして私は、語り始めた。
 過去に犯した罪の話を――


310: ◆jz1amSfyfg 2015/07/25(土) 07:14:37.69 ID:E+6N1SlS0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈廊下〉

夕立「…………」 スタスタスタスタ

夕立「…………」 スタスタスタ   ピタ

夕立「……ここ、どこだろう……」

夕立「あはは……迷子っぽい」 ペタッ

夕立「……疲れたから……ちょっと休憩しよ……」

夕立「…………」

 スタスタスタスタ

菊月「そんなところで座り込んで、何してるんだ?」

夕立「!!」 ビクッ

夕立「き、菊月ちゃん!?」

菊月「……なんでそんなに驚いているんだ?」

夕立「だ、だって菊月ちゃん、司令室に残ってたっぽい」

菊月「お前の事だ……入渠場へ行って電を入渠させた後、三日月と一緒にいたくないから一人で帰ってこようとして、迷子になるんじゃないかなぁと思ってな。案の定予想通りだったな。……全く、鎮守府内の構造はそんなに変わらないのに、どうして迷子になるんだ」

夕立「……あはは……さすが菊月ちゃんっぽい」

菊月「……どうした? ひどく落ち込んでるが……三日月と何かあったのか?」

夕立「……ううん。なんでもないっぽい」

菊月「……そうか」

夕立「……菊月ちゃん、ごめんね」

菊月「……どうして謝るんだ?」

夕立「……嫌でしょ? 私、あの子にひどい態度しか取ってないもん。嫌だよね」

夕立「夕立の事……嫌ってもいいっぽい」

菊月「……はぁ」

菊月「夕立」

夕立「?」

 ベシッ

夕立「痛いっぽい!?」

菊月「当たり前だ。チョップだからな」

菊月「んで、一言だけ馬鹿な貴様に言ってやる」

菊月「私は夕立を嫌いになんてならない」

夕立「……菊月ちゃん……」


311: ◆jz1amSfyfg 2015/07/25(土) 07:16:11.29 ID:E+6N1SlS0


菊月「確かに……貴様が三日月に対してひどい態度を取っているのは……正直心苦しいさ」

菊月「でもさ、私は三日月の事と同じくらい、仲間のお前を大切に思っている」

夕立「…………」

菊月「……まぁ、欲を言うならお前らには仲直りをしてもらいたい。昔はあんなに仲良かったんだ。いつか喧嘩が終わって……仲直りしてくれることを……私は願っている」

夕立「……私とあの子は喧嘩なんて、してないよ」

夕立「ううん。喧嘩できてたなら良かったかな」

菊月「……喧嘩できてたなら良かった?」

夕立「うん。だって……私が一方的にあの子を嫌っているだけだもん。だから……仲直りも何もないっぽい」

菊月「……それは、今後もずっとそうなのか?」

夕立「……それは……わかんないっぽい」

夕立「けど、私は……決めたんだ」

夕立「あの子が……“あのままでいる限り”、私はあの子を嫌いで居続けるって……ね」

菊月「……そうか」

夕立「……ごめんね」

菊月「謝らなくていいさ。お前がそう決めているんだったら……私は何も言わん」

夕立「…………」

菊月「……なぁ、夕立。お前に教えてもらいたいことがあるんだ」

夕立「……何っぽい?」

菊月「私は、どうしたらいいと思う?」

夕立「…………」


312: ◆jz1amSfyfg 2015/07/25(土) 07:18:54.84 ID:E+6N1SlS0


菊月「……私はさ、ついこの前お前らの部隊に配属された。駆逐艦のお前とは以前から関わりがあって友人同士だったが、軽巡の神通とはそこまで交流はなかった。優しくて、時には厳しく、司令官の秘書官でありとても強いと言うのは知っていたけどな」

夕立「…………」

菊月「司令官とは、“あの時”以降もそれ以前も当然関わりがあったから知っていた。とても優しくて、作戦も指示も的確で非常に優秀な人だ。尊敬している」

菊月「でも、三日月の前になると、彼はおかしくなる。“あの時”以降、彼はそうなってしまった」

菊月「……あの人の三日月に対する態度といじめは、何度もこの目で見てきた。嫌悪感を抱く時期だってあった。……けど! なぜだか優しいんだ! 私が大破した時、彼は私の事をすごく心配してくれた。入渠が終わった後、謝ってきた。そして、無事だったことがわかると安心してくれた……」

菊月「……本当に、嫌いになれないんだ! 三日月をいじめる人を……嫌いになれないんだ……」

菊月「……今日あんな信じられない事を言ったあの人を……ぅっぐ……わ、わたしは……嫌いになれない……っ!!」 ジワァ

夕立「……菊月ちゃん……」 スタ

  ギュ

菊月「ぐす……ねぇ、夕立……ひっぐ……私は……どうすればいいの?」 ギュー

夕立「……菊月ちゃん」

夕立「その質問、私じゃ答えることはできないっぽい」 ギュー

夕立「……だって、それは菊月ちゃん自身が決めなきゃいけないことだから」

夕立「私がこうすればいいよって答えて、あなたがそうしたって……それは最善の選択じゃないっぽい」

菊月「…………」 ギュー

夕立「……誰にだって迷う時は来るっぽい。私も、必死に迷った。……あの子の事でね」

菊月「……みかづきのこと……?」

夕立「うん」


313: ◆jz1amSfyfg 2015/07/25(土) 07:21:59.17 ID:E+6N1SlS0


――――――――――――――――――――――

夕立『神通さん! ……私……私、どうしたらいいの……? 三日月ちゃんのこと……わたし……!!』

神通『……夕立ちゃん』

夕立『私……あの子の力になりたいのに……!! ……悲しんでいる三日月ちゃんの事、可哀想だと思ってるのに……!』

夕立『……許せないとも思ってるの……!』

夕立『……わたし……どうすればいいの!? 何にも、わかんないの!!』

神通『……夕立ちゃん。その質問に、私は答えることができません』

神通『いいですか、夕立ちゃん――』

――――――――――――――――――――――

夕立「…………」

夕立「私が迷ってる時、あの人は……神通さんはこう言ったの」



神通『自分が選んだ道こそが、最善の選択なんです。周りからしたら、それが間違っていることなのかもしれません。だけど、そんなの関係ありません。だって、どれが正しいかなんて、誰にもわからないんですから』

神通『だから、あなた自身が決めなさい。どうするべきなのか……自分で』



菊月「……自分の選んだ道こそが……最善の……」

夕立「うん」

菊月「……まだまだ決められそうにない……な」 ゴシゴシ

夕立「ゆっくりで、いいんだよ……時間は、たっぷりあるんだから、さ」

菊月「……すまなかった……見苦しい所を見せてしまってな」

夕立「ううん。大丈夫っぽい。気にしないで」

菊月「……なぁ、夕立」

菊月「……“あの時”のこと、詳しく私に教えてくれないか?」

夕立「……いいの?」

菊月「あぁ……」

夕立「……そうだよね。詳しい内容は、あまり知らないもんね。断片的じゃなくて、全部知りたいって事だよね?」

菊月「あぁ。頼む」

夕立「……わかったっぽい。あの時の……あの事件の話、始めるね……――」


316: ◆jz1amSfyfg 2015/07/28(火) 05:17:36.08 ID:S667Hw3E0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 〈司令室〉

前提督「それで……話と言うのはなんだい?」

提督「……あなたは本日、上層部からの指示で、仲間である鎮守府同士での交流のためにここへやって来たはずです」

前提督「あぁ、そうだね。僕達が現在こうして会話を交えているは上層部からの指示があったからだね」

提督「……あなたとの会話、私は結構楽しかったんですよ? いろんな話が聞けて……」

前提督「…………」

提督「けど、三日月の話題を出して、アンタが三日月達と会いたいって言ったからわざわざ遊んでいる二人を呼び戻してまで会わせたのに……」

提督「……なんなんだあれはッ!!」

前提督「……最初三日月がここにいるって聞いた時は驚いたよ。まさかここに配属されているなんて思わなかったからね」

提督「……なんで上官のアンタがそんなこと知らなかったんだ?」

前提督「どうでもよかったからだよ」

提督「……どうでもいい?」

前提督「あぁ」

前提督「……あんな奴がどこに行こうかどうでもよかったんだ」

提督「じゃあなんでわざわざ会いたいなんて言ったんだ」

前提督「……久しぶりに」

前提督「三日月の苦しむ顔が見たかったからだよ」

提督「ッ、てめ……!!」 ギロ

金剛「…………」

神通「…………」


317: ◆jz1amSfyfg 2015/07/28(火) 05:49:59.75 ID:S667Hw3E0


 スタスタスタスタ

前提督「ん? 菊月? どうしたんだい?」

菊月「……ちょっと、夕立を探してくる」

前提督「あぁ、わかったよ。迷子にならないように気を付けるんだよ?」

菊月「……あぁ」

 ガチャリ   スタスタスタスタ

提督「……よく姉がいたのにも関わらず三日月に対してそんなこと言えるな」

前提督「ははは、確かに菊月には申し訳ないと思っているよ。菊月には、ね」

提督「……三日月には?」

前提督「……はは、思っているとでも思うのかい?」

提督「……アンタが今日うちの鎮守府でやったことは、明らかに利敵行為だ。こんなの交流でも何でもねぇぞ?」

提督「今はもう俺の鎮守府の艦娘である三日月に対しての冒涜、そして電への部下を使った暴力指示」

提督「――ふっざけんじゃねぇよッ!!」

前提督「何か間違った事、僕はしたかね?」

提督「は?」

前提督「三日月に対して、僕は本当の事しか言っていない。電ちゃんに対して行ったのはただの罰だよ罰。むしろ、君よりも上官である僕を殴っていたら、もっとキツイ罰があったと思うよ。……解体処分、とかね?」

提督「……それに関してはアンタの秘書官の神通に感謝はしてるよ」

提督「だけど、二本目を折る必要はあったのか?」

前提督「…………」

提督「あれはアンタのただの腹いせにしか見えなかったんだが?」

前提督「……ふふ、なかなか鋭いね、君」

提督「素直に認めんだな」

前提督「嘘は良くないからね」

提督「……クソ野郎が」

前提督「……君は、いつになったらその舐めたような口調を続けるのかな?」

提督「生憎こっちが“素”なモンでね。それに、俺は憎たらしい敵にまで敬語を使えるほどの人格を持ち合わせてはいねぇよ」

前提督「ふふふ、それは立派な反逆精神なことだね」

提督「アンタのやった行動程じゃねぇよ」

前提督「…………」 ギロ

提督「…………」 ギロ


318: ◆jz1amSfyfg 2015/07/28(火) 05:51:29.65 ID:S667Hw3E0


金剛「……ヘーイ、神通ー?」

神通「はい、何でしょうか?」

金剛「……神通はサー、なんでこの人の言う事素直に聞いたノー?」

神通「…………」

金剛「オウ、質問が悪かったデース? ならこうしマース」

金剛「……なんで平然と電の腕を折れたノ?」

神通「……その事に関して、私は心からあなた方に謝罪を申し上げます」

神通「ですが、私の感情なんてどうでもいいんです」

金剛「…………」

神通「私は提督の御心のままに動くだけです。それが間違った事でも、私が嫌な事でも関係ありません。私は提督の命令に従うだけです」

金剛「……友人としてチューコクしマース」

金剛「そんなの、間違ってるワ」

神通「間違ってる間違ってないの話じゃないんですよ、金剛さん」

神通「これが、私の決めた道なの」

神通「他人であるあなたに……とやかく言われてはいそうですねって答えて道を変える程、私の信念は甘くありません」

金剛「……その信念が、間違っていたとしてもデスか?」

神通「はい」

金剛「……っ」


319: ◆jz1amSfyfg 2015/07/28(火) 05:52:56.01 ID:S667Hw3E0


前提督「……いやいや、少佐殿。どうしてこうなってしまったんだろねぇ」

前提督「僕たちは楽しい交流をできていたはずなのに、今じゃこんなにもギスギスし合っている」

提督「……アンタのせ――」

前提督「僕のせい? いや、違うね」

前提督「三日月が原因だ」

提督「は?」

前提督「……あいつさえいなければ、全ては上手くいっていたんだよ。三日月さえいなければな」

提督「はっ、自分の事を棚に上げて責任転嫁か?」

前提督「いや、責任転嫁なんかじゃないよ」

前提督「三日月のせいで僕は妻と娘を亡くしたんだからな」

提督「……え?」

金剛「!?」

神通「…………」

前提督「おや、何も聞いてないのかい?」

前提督「彼女、人殺しなんだよ? 殺した人数は40名程だ」

提督「人殺……し?」

提督(三日月が……!?)

前提督「あぁ。彼女自身が認めていることだ」

金剛「ヅッキーが……人殺し……?」

前提督「あぁ」

前提督「あと、ついでに教えてあげるよ。三日月が僕の鎮守府から転属された理由」

前提督「暴力事件なんだよ」

提督「っ!?」


320: ◆jz1amSfyfg 2015/07/28(火) 05:55:48.27 ID:S667Hw3E0


前提督「……この事も知らなかったのかい? はは、彼女、実は君達の事信頼してないんじゃないかな?」

提督「そんなこと――」

前提督「そんなことない? どうしてそう言い切れる」

前提督「他人から自分が信頼されているなんて、どうやって証明するつもりなんだい?」

前提督「それに、君達は合ってからそんなに月日が経っているわけじゃない。なのにどうしてそう言い切れるんだ」

提督「……そ、それは……」

前提督「……まっ、仮に信頼されていたとしても、心は開いていなかっただろうね。何にも打ち明けられていないんだからさ」

提督「――ッ!!」


―――――――――――――――――――――


三日月『司令官』

三日月『……私、頑張りますっ』

三日月『……あなたを、信じます』


―――――――――――――――――――――

提督「……黙れよ」

前提督「ん?」

提督「あの子はな……一生懸命頑張ってるんだよ……!!」

提督「別に、打ち明けてくれなくたっていいさ。誰にだって秘密はある……打ち明ける打ち明けないはあの子が決めることだ」

提督「……何も知らねぇくせに、俺達の関係を勝手に決めつけて語るんじゃねぇよッ!!」

金剛「……提督」

前提督「ははは、お熱いことだ。やかましいことこの上ないよ」

前提督「……たまには昔話も悪くないね」

提督「昔話だと?」

前提督「あぁ、一年前の事件の話だよ。三日月が僕の家族を殺した話さ」

提督(一年前の、事件……?)

前提督「三日月が打ち明ける前に、僕が全部教えてあげるよ。……アイツの罪の話をね……――」



390: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 03:54:22.27 ID:0GHlf6zV0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 それは遠征任務の時だった。

夕立『うーん、今日もいい天気っぽい~』 ノビー

三日月『ですね~。でも、気は引き締めなきゃですね。今日の遠征任務はとっても大事だと司令官が言っていましたし』

夕立『あはは、分かってるっぽい! 一緒に頑張ろうね、三日月ちゃん!』

三日月『はいっ!』

神通『ふふ、お二人とも本当に仲が良いですね』

夕立『ぽい! 三日月ちゃんとはお互いを助け合う事を約束し合った友達同士だもん! それに三日月ちゃん優しいから、夕立は三日月ちゃんが大好きっぽい!』 ニッコリ

三日月『あはは……て、照れちゃいます』

神通(微笑ましいわねー)

神通『あっ、あちらの船ですね』

 その日の遠征任務は、船の護衛任務だった。軍人ではない一般の人達も乗っていると聞いたので、気を引き締めなきゃと何度も思った。

神通『あなたがこの船の船長ですね? 本日、貴方達を護衛することになりました、第八鎮守府海上護衛隊の旗艦、神通です。本日は命がけで貴方達をお守り致します』 ビシッ

船長『あぁ、話は聞いているよ。今日はよろしく頼む』

船長補佐『あらあら~、随分と可愛らしい娘さん達ですね。本日はよろしくお願いします』

三日月・夕立『『よ、よろしくお願いします!』』 ビシ






三日月「そう、私は命がけで守ろうと誓っていました。――命を懸けてでも、守り抜こうと……思っていました」


391: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 03:56:31.02 ID:0GHlf6zV0


 ザー、ザー、ザー、

三日月『…………』

夕立『三日月ちゃーん、表情硬すぎっぽい~』

三日月『へ?』

夕立『緊張はするのは分かるけど、リラックスすることも大切っぽい!』

三日月『は、はい! 頑張ります!』

夕立『……そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ。三日月ちゃん、真面目で努力家だし、成績だって優秀っぽい。だからこの遠征任務にだって抜擢されたっぽい』

三日月『……うん! が、頑張ります!』

夕立『まぁ、夕立の方が訓練成績は優秀っぽいけどね! エッヘン!』

三日月『むっ……べ、勉強は私の方が上です! あと速力だって同じくらいですし!』

夕立『べ、勉強の話はやめてっぽい~』

三日月『……ふふ』

三日月『夕立さん、ありがとう。緊張、少し解けました』

夕立『えへへ、ならよかったっぽい!』

夕立『……それに、これは遠征任務っぽい。深海棲艦が遠征任務中に出てきたケースはあんまりないっぽい。だからきっと、大丈夫っぽい!』






夕立「そう、あの時はそう思ってたよ。……けど、奴らは現れた」


392: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 04:49:17.66 ID:0GHlf6zV0


 ザザー

 ブクブクブクブク

神通『!? これは……』

神通『……音?』

夕立『え?』

 ブクブクブクブク――バッシャーン!

ロ級『……』

ハ級『……』

ホ級『……』

リ級『…………』

三日月『……し、深海棲艦?』

神通『――提督! こちら海上護衛隊旗艦、神通です! て、敵が……深海棲艦が現れました!』

 ザザー

前提督『な、なんだと!?』

前提督『ッくそ! なんで、このタイミングで……いつもはこんなことないはずなのに……ッ!』

夕立『敵のか、数は……4隻っぽい!』

前提督『……神通! 夕立! ――三日月!』

前提督『頼む……何としても、深海棲艦を撃退させてくれ』

前提督『その船には……娘と妻が……乗員しているんだ!!』

神通『はい!』

夕立『う、うん!』

三日月『ッ……は、はい!!』 ガチャ






前提督「イレギュラーな事態だったよ。遠征任務で深海棲艦が現れるのは珍しいケースだからね。……なんでこのタイミングなんだと、僕は神を恨んだよ」


393: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 04:57:48.34 ID:0GHlf6zV0


神通『夕立ちゃん! 三日月ちゃん! 数は向こうの方が一隻上です!』

夕立『っぽい!』

三日月『はい!』

神通『幸い、まだ敵は遠くにいます。私は奴らを近づけないために接近し迎撃します。二人は船の付近を警戒しつつ、援護をお願いします!』 ザッ

三日月・夕立『『了解です(っぽい)!!』』

神通『……撃ちます』 ドンドン!

 ボカンボカーン!!

ロ級『!!』

神通『中破ですか……撃沈させたかったわね』

三日月『援護します!』 バンバン!

夕立『当たれぇ!』 バンバン!

ハ級『…………』 シュシュ

 バシャンバシャーン!!

夕立『あ、あいつ……めちゃくちゃ速いっぽい!?』

ハ級『……』 ザッ

神通『単艦で接近……させません!』 ズドンズドーン!!

ハ級『……』 シュンシュン

 バシャンバッシャーン!!

神通『こいつ……!』

 バンバン!

神通『二人とも!! そのハ級はエリート艦です!! 気を付けてください!!』 シュ、シュッ   ドン!

ホ級『!!』 ボカーン!

ハ級『…………』 シュンッ ザザッ!

神通『ッ、奥にいた一隻は沈められたけど……抜けられた……!!』

神通『三日月ちゃん! 夕立ちゃん! ごめんなさい……そのハ級は任せました!』

ハ級『…………』 ザー!

三日月『は、はい!!』

夕立『ぽ、ぽい!!』

神通『……任せましたよ、二人とも』

ロ級『……』

神通『……私は』

リ級『…………』 ニヤァ

神通『こいつらをなんとかします』


394: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 05:49:40.50 ID:0GHlf6zV0


夕立『当たれ……当たれ!!』 バンバン

三日月『当たって……っ!!』 バンバン

 バシャーン!! バシャンッ、ジャバン!!

ハ級『……』 ザザー!、ザザー!

三日月『あ、当たらない!!』

夕立『もう距離もだいぶ近いっぽい!』

三日月(どうすれば、どうすれば!)

三日月(相手は動きが速いエリート艦……私なんかよりも数段格上だ。そんな相手に、勝つ方法を……見つけなきゃ!)

夕立『この船は、絶対に守るんだから……当たれぇ!!』 バンバンバン   バン!

ハ級「……」 シュンシュン!

ハ級『!?』

夕立『偏差射撃!!』

 ボカァァァァン!!

三日月『あ、当たった!!』

夕立『ダメージは!?』

ハ級(小破)『…………!!』

夕立『!!』

三日月『う、うそ……直撃のはずなのに……』

ハ級『……』 ザッ!

三日月(勝つ方法を見つけなきゃ、見つけなきゃ、見つけなきゃ!)

三日月『も、もう距離が……』

 勝つ方法が見つからなかった。どうすればいいか分からなかった。
 夕立さんの攻撃を直撃しても小破にしかならないハ級に勝つ方法が、分からなかった。

三日月『……』 チラ

 船を見つめる。
 私より全然大きいのに、それは私よりも脆い。
 そしてそれには、多くの命を抱えられている。――大切な人の家族の命も。

三日月『……!!』

三日月(守らなきゃ。守らなきゃ。守らなきゃ……命がけで、守るんだ!)

三日月『夕立さん! 援護をお願いします!!』 ザッ!!

夕立『……え?』

夕立『み、三日月ちゃん!?』

 私は、ハ級に接近した。


395: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 06:07:44.10 ID:0GHlf6zV0


 勝つ方法は見つからなかった。見つけられなかった。

三日月『……あなたは、絶対に私が……ッ』 ザー

三日月『し、沈めます!!』

三日月『この命に代えても!!』

ハ級『!!』 ドォン!!

 そうだ、私に撃つんだ。船じゃなくて、この三日月に!!

夕立『三日月ちゃん!!』

 迫り来る砲撃。それはギリギリ避けられる砲撃だ。
 ――でも、絶対に避けない。


 ボカーン!!


三日月『ぅ、っあ――ッ!!』

 身体のどこかに砲撃が当たる。

夕立『三日月ちゃんッ!!』

三日月『痛くなんか……ない!! 痛くなんかない!!』 ザー!!

ハ級『……――ッ!!』 ドンドンドォーン!!

三日月『っぐ……!! ――ッ!!』 ザーッ!!

三日月『はぁ、はぁ、はぁ……!!』 ザー!!

 ハ級との距離、あとわずか。

夕立『し、沈んじゃう……み、三日月ちゃんが……』

三日月『――夕立さん!! 援護をお願いしますッ!!』

夕立『!!』

三日月『わたしは、だ……大丈夫です、から!! だから、撃ってくださぁぁぁぁいッ!!』

夕立『…………』

夕立『……っ!!』 バンバンバン!!

ハ級『!!』 シュッ、シュッ、シュッ!   バシャーン!!

三日月『……避けましたね?』

ハ級『!?』

三日月『捉えました……!!』

 あのまま攻撃を受け続けていたら、きっと私は沈んでいたかもしれない。でも、夕立さんが援護してくれたおかげで、ハ級は避ける行動を取った。攻撃の手を止めることができた。
 ――ハ級の目の前に、近づくことができた!!

三日月『この距離なら、避けられないでしょう』

ハ級『!!』 ドォン

三日月『ぅぐッ!!』

三日月『……ははは……もう、遅いです』 ボタボタ

ハ級『――!!』

三日月『沈んでぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!』 ガチャ

 バンバンバンバンバンバンバンッ!!

ハ級『―――――――――――!!』

 ボォォォォォォン!!


396: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 06:19:32.03 ID:0GHlf6zV0

※すみません、少し修正しました。


 勝つ方法は見つからなかった。見つけられなかった。

三日月『……あなたは、絶対に私が……ッ』 ザー

三日月『し、沈めます!!』

三日月『この命に代えても!!』

ハ級『!!』 ドォン!!

 そうだ、私に撃つんだ。船じゃなくて、この三日月に!!

夕立『三日月ちゃん!!』

 迫り来る砲撃。それはギリギリ避けられる砲撃だ。
 ――でも、絶対に避けない。


 ボカーン!!


三日月『ぅ、っあ――ッ!!』

 身体のどこかに砲撃が当たる。でもそんなのは気にしていられない。
 近づくんだ。もっと、近くに!

夕立『三日月ちゃんッ!!』

三日月『痛くなんか……ない!! 痛くなんかない!!』 ザー!!

ハ級『……――ッ!!』 ドンドンドォーン!!

三日月『っぐ……!! ――ッ!!』 ザーッ!!

三日月『はぁ、はぁ、はぁ……!!』 ザー!!

 ハ級との距離、あとわずか。

夕立『し、沈んじゃう……み、三日月ちゃんが……』

三日月『――夕立さん!! 援護をお願いしますッ!!』

夕立『!!』

三日月『わたしは、だ……大丈夫です、から!! だから、撃ってくださぁぁぁぁいッ!!』

夕立『…………』

夕立『……っ!!』 バンバンバン!!

ハ級『!!』 シュッ、シュッ、シュッ!   バシャーン!!

三日月『……避けましたね?』

ハ級『!?』

三日月『捉えました……!!』

 あのまま攻撃を受け続けていたら、きっと私は沈んでいただろう。でも、夕立さんが援護してくれたおかげで、ハ級は避ける行動を取った。攻撃の手を止めることができた。
 ――ハ級の目の前に、近づくことができた!!

三日月『この距離なら、避けられないでしょう』

ハ級『!!』 ドォン!

三日月『ぅぐッ!!』

三日月『……ははは……もう、遅いです』 ボタボタ

ハ級『――!!』

三日月『沈んでぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!』 ガチャ

 バンバンバンバンバンバンバンッ!!

ハ級『―――――――――――!!』

 ボォォォォォォン!!


399: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 04:56:37.97 ID:XiO/gA2B0


ハ級『…………』

三日月『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ』

ハ級『…………』 バシャーン!!

三日月(たお……した?)

三日月『はぁ、はぁ……げほ』 ガク

三日月(血が……止まらない)

ハ級『…………』

三日月『けど……倒せて……よか……っ』 グラ

 ガシ

夕立『…………』

三日月『夕立……さん』

三日月『わたし、勝ちました』 ニコリ

夕立『……バカ』

夕立『無茶し過ぎだよ……三日月ちゃん』 ポロポロ

三日月『えへへ……ごめんなさい』

夕立『とにかく、早く治療しないと……』

三日月『いえ、その前に前線で戦っている神通さんの援護を……』

夕立『……その必要は、ないっぽい』

三日月「え?」

 ボカァァァァン!!

神通『はぁ、はぁ』

ロ級『』

リ級『』

 バシャーン!! ブクブクブク……――

夕立『さすが神通さんっぽい~』

三日月『あはは……さすがです』


400: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:31:12.67 ID:XiO/gA2B0


神通(さすがに重巡はきつかったわね……私もまだまだ精進しなきゃ……)

神通(単艦で戦艦を沈められるくらいに)

神通『ん?』


夕立『じーんーつーうーさーん! さすがっぽい~!!』 フリフリ


神通『あら、あの子達ハ級を倒したのかしら。……あの様子から見るにそうよねきっと』

神通『ふふ、さすがです』 ニコリ

神通『今そちらに戻りまーす』 フリフリ


夕立『おっ、手振り返してくれたっぽい!』

三日月『…………』

夕立『……み、三日月ちゃん?』

三日月『え……? はい、なんでしょうか?』

夕立『……ううん、なんでもないよ。……今は休んでていいから』

三日月『…………うん。……げほッ!』

夕立『――!!』

夕立(ち、血が……!!)

夕立『ちょ、ちょっと護衛艦の船長さんに連絡してみるから!』

 ――ザザッ

夕立『こちら夕立です。聞こえますか!?』

船長『あぁ、聞こえるよ。ありがとう。深海棲艦を――』

夕立『ごめんなさい!! 中に治療室ってある!?』

船長『え?』

夕立『あったら使わせてほしいっぽい!! 三日月ちゃんが!!』

夕立『し――』

 ドォン!!

夕立『――え?』

夕立『……げほ』

三日月『…………え?』 キョトン

三日月『ゆうだち……さん?』

夕立『……あはは……げほ、ごほ! ……あなた……』 クル

ハ級『……』

夕立『しぶとすぎっぽい』

三日月『ゆ、ゆうだちさん……夕立さん!!』

夕立『…………』 バシャーン!!

三日月『あっ』 バシャーン!!

三日月『あ、あぁ……あぁ……!!』

三日月(仕留めきれていなかった!?)

三日月『船長さん……逃げて……逃げてぇぇぇぇぇぇッ!!』


401: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:33:36.87 ID:XiO/gA2B0


神通『沈めていなかったの!? くっ!』 ザッ

神通『ここからじゃ、間に合わない!!』

神通『当たって!!』 ドォンドン!!

 バシャンバシャンッ

神通『くっ、遠くまで来過ぎました……!! 離れすぎてる!』


ハ級『……』 ガチャ

三日月『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!』

三日月(私のせいだ、私のせいだ私のせいだ!!)

三日月(何としてでも起きないと……何としてでも起きないと!!)


船長『ッ! 全速前進だ!! この海域を何としてでも抜けるんだ! ――護衛してくれてる彼女たちのためにも、乗っている人たちのためにも!!』


三日月『はぁ、はぁ……!!』

ハ級『…………』 クル

三日月『え?』

ハ級『……』

三日月(ダメ、ダメだ。そっちを見ないで。狙わないで!!)

三日月『うわあああああああああああッ!!』 バシャ!!

ハ級『!!』

三日月『げほ、げっほ……!!』 ビチャ

三日月『はぁ、はぁ、……立てれた……!!』 ガチャリ

ハ級『!!』

三日月(視界が歪む。今にもたおれそうになる。でも、まもらなきゃいけないんだ)

三日月『沈んで……お願い!!』

 カチャ

三日月『え……?』

 カチャ、カチャ

三日月『弾……切れ……?』

ハ級『……』 ザッ!!

三日月『待って、待って!!』


402: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:40:47.02 ID:XiO/gA2B0



神通『あいつ、船に直接突撃する気!?』


三日月『いかないで……いかないで!!』 グラ

三日月(しかいが……ふらつく)

三日月(けど、まもらなきゃ……ハ級を……しずめなきゃ……)

三日月(そうだ)

三日月(しずめ、しずめ、しずめ、しずめ!!)

三日月『ええーーーーい!!』 ポンポンポン!! ザッー!!


神通『!! 三日月さん!! ダメです!! 魚雷は!!』

神通『その方向に撃ったら!!』

 ザッー!!

ハ級『――――!?』

 ドガァァァァァァン!!

三日月『沈められ……た……?』

ハ級『……』 ブクブクブク……――

三日月『……がは……!! げっほ……!!』

三日月『まもれた……?』


神通『ダメ!! 船長さん!! 逃げてくださいッ!!』

神通『魚雷がそっちに向かってます!!』


三日月『――え?』


船長『ッ!? 舵を右に――』


三日月『――――――――――――』


目の前の光景を疑った。何かの間違えだと思った。まるで時が止まったかのような感覚だった。

神通『ッ!!』

 私の撃った魚雷が――

三日月『』

 護衛艦に直撃した。


 ボカァァァァァァァンッ!!

三日月『う、嘘……わ、わたし、そんなつもりじゃ……!!』

三日月『……うそ、うそうそうそうそうそうそうそうそうそ!! 嘘だ嘘だ嘘だ!!』

三日月『ぁぁぁぁ、あぁ、おぇ……!!』

 当たり所が悪かったのか、一瞬で爆発は起きた。
 乗員が脱出する時間なんかなかった。爆発はどんどん広がり。――船が、沈んだ。


三日月『うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!』


403: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:41:54.15 ID:XiO/gA2B0


三日月「……そう、護衛艦は……」

三日月「私が」







夕立「あの子が」







前提督『三日月が』


 沈めた。


423: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 05:08:52.57 ID:Fjl+YkHv0


 目の前には真っ暗な世界が広がっていた。
 ここはどこだろうか。私は何をしていたのだろうか。全然わからなかった。
 頭がぼーっとしており、真っ暗な世界は消えない。

 けど、声が聞こえた。

夕立『……三日月ちゃん……』

 それは友達の、夕立さんの声だった。

三日月『…………ぁ』

夕立『!? 三日月ちゃん……?』

 ゆっくりと目を開き、真っ暗な世界が消える。

三日月『夕立……さん』

夕立『起きた……三日月ちゃんが、起きた!』 ガバッ

三日月『むぐっ!?』

夕立『もう……起きないんじゃないかと思った……!!』

三日月『んん~~~~~!!』

夕立『あっ……ご、ごめんなさいっぽい!』 バッ

三日月『はぁ、はぁ……だ、大丈夫です』

三日月『……あれ、ここ、どこですか?』

 頭がぼーっとしている。状況が良くわからない。私は何をしていたのだろう。ここはどこなのだろう。
わからない

三日月『私は……何を……』 キョロキョロ

夕立『ここは……鎮守府にある病室だよ。私達のいるとことは別のだけれどね』

三日月『鎮守府……?』

夕立『うん』

夕立『……神通さんと提督さんを呼んで来るっぽい。……ちょっと待ってて』 スタスタ

三日月『…………』


424: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 05:11:44.54 ID:Fjl+YkHv0


三日月『私本当に……何をしていたんだろう……確か……』

三日月『――ッ!?』 ズキッ

三日月(頭が……痛い!? なに、これ?)

 スタスタスタスタ

 ガチャ

三日月『!?』

神通『…………』

夕立『…………』

前提督『……………………』

三日月『神通さん。司令官』 キョトン

神通『……三日月ちゃん。体調は大丈夫ですか?』 スタスタ

三日月『はい……少し、頭が痛いくらいです』

神通『なら良かった。……あの時倒れてあと、ずっと眠っていたんですよ?』

三日月『あの時……? 倒れたあと……?』

三日月『たおれたあと……?』

前提督『……………………』

三日月『……――あっ』

三日月(段々と頭が……冴えてくる。頭が痛くなってくる。そして――思い出す)

三日月『あぁ……あぁぁ……!!』 ガクブルガクブル

三日月『わ、わたし……わたし……!!』

三日月『人が乗った船を……護衛していた船を……!!』 プルプル

前提督『……………………』

 ――沈めた。


425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/29(火) 05:49:09.37 ID:Fjl+YkHv0


三日月『わたしが……私が』 プルプル

前提督『…………僕は咄嗟に君達に支援艦隊を向かわせた。私も小型の船に乗り、一緒に向かった』

三日月『!?』

前提督『君たちのいる海域に近づくにつれ、何かが見えた。燃え盛る何かが』

三日月『』

前提督『辿り着いて理解した。それが民間人の、僕の家族が乗っていた船だと』

三日月『』

前提督『……そして、血だらけの夕立と、珍しく大きな声をあげ、君の名を呼ぶ神通と、満身創痍で気絶している三日月の姿がそこにはあった』

三日月『』

前提督『状況を察した。僕は君達“三人”を船に乗せ、三日月と夕立の応急手当をして、あの海域の近くにあった鎮守府に連絡し、入渠場とこの部屋を借りた』

三日月『』

前提督『……神通。作戦結果を頼む』

神通『…………はい』

三日月『』

神通『……海上護衛遠征任務は失敗。船に乗っていた乗員は民間人含めて』

三日月『』

神通『生き残りは……一人もいません』

三日月『……わたしのせいだ』

三日月『わたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだ!!』

夕立『み、三日月ちゃん!!』 ダキッ

三日月『わたしのせいだ……!! ぁぁぁあああ!! ――うわあああああああああああああああああああッ!!』

夕立『違うよ!! あなたのせいじゃない!!』

三日月『私があそこで!! 私が!! 私が魚雷を撃って!!』

三日月『ふ、ふねを……しずめた!!』

神通『……三日月ちゃん』

三日月『うっぐ……ひぐっ……!!』

神通『……取り乱して泣くことが、今のあなたのするべきことですか?』

三日月『……っ!!』

前提督『……………………』

三日月『司令官……ごめんなさい……!! ごめんなさ――』

 コンコンコン

三日月『!?』


426: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 06:07:37.44 ID:Fjl+YkHv0


前提督『……はい、どうぞ』

元帥『失礼するぞ』 ガチャリ

夕立『!?』 バッ

神通『……』 ビシッ

三日月『…………』

元帥『ふむ。どうやら眠っていた艦娘は目が覚めたようだね?』

前提督『はい、先ほど目が覚めたようです』

元帥『ほほう、それはよかった』

前提督『突然の申し出であったのにも関わらず、入渠場とこの場をお借しいただき本当に感謝しております』 ペコリ

元帥『なぁに、この程度のことお安い御用さ。それより君に大本営から電話が来ておる』 グイ

前提督『あぁ、恐らく先ほど電文で連絡した、遠征任務の結果についてのことかと』

三日月『!?』

元帥『なるほど。それじゃあ、わしは部屋に戻っとる。後で戻しに来てくれい』 スタスタ   ガチャ

前提督『……少し電話に出る。静かにしていてくれ』

神通『はい』

夕立『……ぽい』

三日月『…………』


427: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 06:46:23.38 ID:Fjl+YkHv0


 ポチ

前提督『お電話お替り致しました』

『……君が先ほど送ってきた電文を確認した』

 その電話の主の声は私にも届いた。恐らく神通さんも夕立さんも聞こえているんだろう。

『君は今の状況を理解しているのかね?』

前提督『はい。十分承知しております』

『……“君の判断ミスで船を轟沈させた”……? 全ては君の責任だと言いたいのかね!?』

神通『!?』
夕立『!?』

三日月『……え?』

前提督『その通りです』

『……良いことを教えてあげよう』

『深海棲艦が船を沈めた場合、その罪は護衛していた艦娘が償うことになる』

『そしてこんなことはあり得ないことだが、護衛任務において護衛していた船に誤射し沈めた場合も当然艦娘の罪となる』

三日月『…………』

『……艦娘を庇うなど愚かなことだぞ?』

『……替え等すぐに建造(つく)れるのだからな』

前提督『電文でお伝えした通りです』

前提督『船が沈んだ原因は私です』

三日月『司令官!!』

神通『三日月ちゃん、静かに……!!』

三日月『で、ですが……!!』

『…………』

『……君は馬鹿な男だな。本当に馬鹿な男だ。愚か者だ』

前提督『…………』

『第八鎮守府提督。第二階級降等だ。自ら給料を減らすなど愚かな男だ』

 ――プツ

前提督『……はは、僕は大佐くらいが丁度良いさ』

三日月『司令官ッ!!』

前提督『……なんだい、三日月?』

三日月『何を……言ってるんですか』

三日月『なんで!! あなたの罪になるんですかッ!!』

三日月『なんで……なんで!!』

前提督『……三日月』

前提督『僕は本当の事しか言っていないよ』


428: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 07:08:24.23 ID:Fjl+YkHv0


三日月『な、なにを言って……』

前提督『最初からさ……もっと任務に艦娘を就ければよかったんだ。その時点で、判断ミスがあったんだ』

前提督『遠征任務の万が一のことを考えていなかったんだ……大切な人が乗っていたのに……いつも通り成功するだろうと……慢心しきっていたのさ』

三日月『違います!! あなたは何も!!』

夕立『……三日月ちゃん』

三日月『夕立さん!! あなたも司令官に言ってあげてください!!』

夕立『うん。言うよ』

夕立『提督さん……』

前提督『……なんだい、夕立』

夕立『船が沈んだのはあなたのせいでも三日月ちゃんのせいでもないっぽい』

三日月『ッ!?』

夕立『……私がしっかりハ級を確認しなかったから。あそこで夕立がちゃんと確認して、トドメをさしていたらこんなことにはならなかった』

三日月『夕立さん、あなたまで何を……!!』

神通『……私も……前に出過ぎて……慢心しきっていました。船が沈んだ……私が原因』

三日月『神通さんまで……!!』

前提督『……それぞれが皆……失敗したんだ……』

三日月(……何を言ってるんだ)

前提督『……ははは……本当に、馬鹿だよ……僕は』 ポロポロ

三日月『――――――――――』

三日月(みんなはいったい何を言っているんだ。司令官は泣きながら……何を言っているんだ)







夕立「皆が、罪の意識を抱えていたんだ」

長月「…………」

夕立「でも、あの子は……」

夕立「…………三日月ちゃんは……全部一人で抱えた」

夕立「そして提督さんは…………耐えきれなくなって」







三日月『私のせいなんですッ!! ――全部ッ!! 全部全部全部ッ!!』







夕立「壊れた」


467: ◆8Wn59wFc0I 2015/11/24(火) 08:32:56.03 ID:SFz+dHfp0


夕立「提督さんは、限界だった。でも、必死に必死に耐えていた。堪えていた」

夕立「でも、限界の人を壊すのなんて……簡単な事っぽい」







夕立『三日月ちゃん……?』

三日月『全部……私のせいなんです……全部』

前提督『三日月、それは違う』

三日月『違くなんかありません!!』

三日月『だって! 船は私が直接撃って沈めたんですよ!? 私がこの手で!!』

神通『三日月ちゃん!! 落ち着いてください!!』

三日月『そもそも……あれだけ撃って敵を沈められないなんて……私……!!』

夕立『それは……で、でも! 夕立が確認しなかったから!』

三日月『そんなの!! 関係ない!!』

夕立『……関係ない?』

三日月『そうですよ。だって、だって! 私が完璧に奴を沈めていたら確認なんてしなくても……良かった』

夕立『み、三日月ちゃん。一人で抱え込んじゃダメだよ。私達、仲間でしょ? 友達でしょ?』

夕立『ゆ、夕立達……“お互いを助け合う事を約束し合った友達同士”でしょ?』

夕立『だから、一人で抱え込んじゃ――』

三日月『そんなの今は関係ありませんッ!!』

夕立『…………』

夕立『な、なによ……それ……』

夕立『なによそれッ!!』

夕立『関係ないって……なによ、それ……』 ポロポロ

三日月『…………関係ないです』

三日月『だって全部私が――』


前提督『――そうだ。そうだよ。そうだよなぁ』


神通『え?』

前提督『そうだ、そうだ……そうだそうだそうだ……』 ブツブツ

夕立『提督さん……?』

前提督『三日月』

前提督『全部お前が悪いんだ』

三日月『…………』

前提督『全部お前が悪いんだ』


468: ◆8Wn59wFc0I 2015/11/24(火) 08:37:00.69 ID:SFz+dHfp0


夕立「提督さんは、あの子の言葉を真に受けてしまった。取り乱して、一人で抱え込む……馬鹿の言葉を真に受けてしまった」

夕立「甘えるように……何かに縋り付くように……」







神通『提督!』

前提督『神通、静かにしていてくれ』

前提督『僕は今この兵器と話しているんだ』

三日月『…………』

神通『……え?』

夕立『兵、器?』

前提督『あぁ、兵器だ。僕の家族の命を奪った、危険な兵器だ』

神通『提督ッ!!』

前提督『神通』

前提督『黙っていてくれ』

神通『…………ッ』

前提督『三日月』

三日月『は、はい……』

前提督『……役に立たない兵器だな、君は。……疫病神め』

三日月『ッ』 ギュ

前提督『役立たずめ』

 バキ!!

三日月『ぃッ!』

夕立『!? て、提督さん!!』

神通『ダメです!! 提督!!』 ガシ

前提督『止めるなぁ!!』

前提督『こいつは!! 僕の家族を……僕の家族をッ!!』

三日月『ぁ……う』 ブルブル

前提督『この役立たずめ』

三日月『…………』 ブルブル

前提督『無能。疫病神。……この役立たずが!!』

前提督『お前が僕の家族を殺したんだ!!』

三日月『…………っ!』

三日月『ごめんなさい……ごめんなさい……』


482: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:44:56.84 ID:OplaWypA0


夕立「その後、騒ぎに気が付いた元帥さんとその艦娘達がなんとか止めてくれたの」

夕立「……あのままだったら、どうなってたんだろう。想像するだけで怖い」







前提督『それでは元帥。ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございました。このお礼は後ほど必ず』 バッ

元帥『なぁに、別に構わんよ。同胞のためさ』

元帥『それよりも、君は自分の事を心配した方が良いと思うぞ……?』

前提督『私の事……?』

元帥『……まぁ良い。今の君は、疲弊しきっている。いつか自分で、気が付けるようにな』

前提督『……?』

神通『…………』

夕立『…………』

三日月『…………』

 誰も何も会話をしない。そのまま私達は流れるように自分たちの鎮守府へと帰還しました。

 そして、そこから時間が過ぎるのはあっという間だった。


483: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:49:02.44 ID:OplaWypA0



三日月『…………』 スタスタ

三日月『……あ』

夕立『…………』

夕立『…………ふん』 スタスタ

三日月『…………』

 気が付けば、夕立さんは私と会話しなくなっていた。本当はしたかったけど、夕立さんに嫌われてしまった今では夢のまた夢の話だ。


三日月『…………』 スタスタ

三日月「!!」 チラ


前提督『そうか、では次の作戦の旗艦は引き続き神通にやってもらう』

神通『了解しました。必ず成功させて戻って参ります』


三日月『(司令官と……神通さん)』


前提督『あぁ、期待してるよ』

神通『……あの、提督』

前提督『ん? なんだい?』

神通『その……何でいまだに私を旗艦として使ってくれるのですか?』

前提督『はは、何を言っているんだ。君とは僕が提督になる前からの知り合いだ。誰よりも信頼しているよ』

前提督『あと、自分のことを“使ってくれる”なんて言い方、するんじゃない』

神通『ですが……私はだいぶ前にですが……』

前提督『神通』

前提督『もうその話は……いいから』

前提督『それにあの事件の原因は君ではない』


三日月『…………』


神通『…………』

前提督『ほら、その話はおしまいだ。今日はもう身体をゆっくり休めなさい』

神通『……はい。失礼いたします』 スタスタ


484: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:50:34.39 ID:OplaWypA0


三日月『(し、司令官がこっちに来る)』

前提督『ん?』 ピタ

三日月『あっ……司令官。こ、こんにちは』

前提督『……こんなとこで何をしているんだ?』

三日月『え?』

前提督『プラプラとすることもなく歩き回っていたのか? そんなことしている暇があったら訓練でもしてくるんだな』

三日月『ほ、本日はもう休んでいいと神通さんから今朝言われて……その』

前提督『……はは。そんなんだから強くなれないんだ』

前提督『だったら自主錬でもしてればいいじゃないか。まぁ、君がこれ以上強くなれることはもうないかもしれないけどな』

三日月『……!!』

前提督『はは、冗談だ。まったく、嫌がらせのための嘘すら見抜けないくらい君は無能なんだな』 スタスタ

三日月『…………っ』

三日月『訓練、しなきゃ……』

三日月『もっともっと頑張って……訓練しなきゃ……!!』

 私は無能なんだから。



 いろんなことを言われ続けた。ずっと、ずっと。私が悪いから、仕方がないと思っていたけれど、やっぱり辛かった。
けど、なぜだか解体はされなかった。飛ばされることもなかった。

 あの時が来るまでは。


485: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:51:45.40 ID:OplaWypA0


三日月『え? 私が……秘書官……?』

神通『えぇ。ローテーションですからね、この鎮守府の秘書官は。今朝提督から伝達の指示がありました』

三日月『は、はぁ』

三日月『(なんでだろ……秘書官、しばらくローテーションから外されたと思ってたのに……)』

神通『という事で、朝練はこのくらいで切り上げて、ささっとシャワーを浴びてきて、お仕事に向かってください』 ナデナデ

三日月『りょ、了解しました。けど、どうしてなでなでするんですか……?』

神通『……頑張ってというおまじないです。ほら、時間はありませんよ?』 ニッコリ

三日月『は、はい! 本日もご指導ありがとうございました!』 タッタッタッタ


<司令室、ドア前>

三日月『(緊張する……身体が震える)』

三日月『(……また、色々と言われるんだろうな)』

三日月『(!! って、なんで私怖がってるんだ! そんなのあたり前じゃない。私は司令官から恨まれて、当然なんだ。嫌がっちゃ、ダメだ……!!)』 ブンブン

三日月『し、失礼します』 コンコンコン

 ガチャリ



 そして、この日私はやってしまうんだ。

 とんでもないことを。


486: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:54:03.40 ID:OplaWypA0



三日月『はぁ、はぁ、はぁ』

前提督『…………』 ボタ、ボタ

三日月『!? わ、私……!!』

三日月『(な、なんてことを……!!)』

 気が付いたら私は司令官を殴ってしまっていた。ボタボタと鼻血を流す司令官は笑っていた。

前提督『ははは、“私を馬鹿にするのは構わないけど、大切な姉妹を馬鹿にするのはやめろ”だって? 僕の家族を殺した君がそれを言うのか』

三日月『ご、ごめんなさい……ごめんなさい』

 最初はいつも通りの悪口だけだった。罵倒されていただけだった。いつものことだった。
 でも、その後の言葉は初めて耳にした言葉だった。秘書官の仕事で焦って遅くなっていた私が耳に聞き入れた言葉は。

前提督『所詮は睦月型だな。役立たずめ。加えてお前は無個性……やれやれだな』

 この時の私は――“感情を殺せなかった”。いつもの嫌がらせの言葉として聞き入れればよかったのに。ダメだった。

 殴ってしまった。殴ってしまった。私は、恨まれていて当たり前の私は。司令官を殴ってしまった。

前提督『……』 ヨロ

 スタスタスタスタ

前提督『…………中々、痛かったよ』 スッ

 司令官が、私に手を伸ばした。にこりと笑いながら。
 私は、ただひたすら怯えた。

三日月『ひっ……!!』 ビクッ

 殴られると思ったから。“あの時”みたいに。
 そうされて当たり前なのに、私は怯えてしまった。

三日月『ごめんなさい、ごめんなさい!!』

前提督『…………』

 私は……本当に、ダメな子だ。震えが止まらなかった。

 ダッダッダッダ!!

 バターン!!

神通『大きな音が聞こえましたが何の――え? て、提督!? 大丈夫ですか!? み、三日月ちゃん!?』

 騒ぎに気が付いた神通さんがやって来た。

前提督『三日月』

前提督『君はこの鎮守府から追放だ。上に伝えて、適当な場所へ飛ばしてもらう』

前提督『……僕の前から……消えるんだ』

 そして私は。







三日月「……ここへとやって来たの」


487: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:55:45.56 ID:OplaWypA0


三日月「…………」

電「…………」 グスグス

三日月「電ちゃん……どうして泣いてるの?」

電「……電にも、分からないのです」

電「けど、なぜだか涙が止まらないのです」

三日月「……ごめんなさい」

三日月「けど、全部本当の事だよ。これが私の犯してしまった罪なの」

三日月「あの人の家族を撃ってしまって、挙句の果てあの人を……殴って……暴力事件を起こして……しまった」

三日月「全部、私が悪いはずなのに……!!」 ジワァ

電「三日月ちゃん……!!」 ギュ

三日月「電ちゃんは……この話全部きいて……なんで軽蔑しないんですか? なんでこうやって、抱きしめてくれるの?」

電「電は……電は!!」

電「三日月ちゃんの味方なのです!! 何があっても!!」 ギュ

三日月「……っ、電ちゃんは、お人好しだもんね」

電「けど!! 三日月ちゃんはお馬鹿さんなのです!!」

三日月「え?」

電「大馬鹿さんなのです!! ……抱え込み過ぎなのです……頑張りすぎ……なのです……!!」 ギュー

三日月「……――だって、だって!!」

三日月「私が悪いのは……本当の事じゃない!!」

三日月「抱えるよッ!! 私がやってしまったんだから!!」

三日月「頑張るよッ!! だって、だって!!」

三日月「頑張って頑張って、頑張って……っ!!」


三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は……!!」

電「……三日月ちゃん」


三日月「耐えられない……!!」


505: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 07:57:21.05 ID:alpQ8Sg40


三日月「耐えられないのよ……!!」

電「……でも、その頑張りが、三日月ちゃん自身を傷つけているのです」

三日月「!!」

電「確かに、三日月ちゃんがやってしまったことは……その…………許されない事なのかもしれません」

電「けど、電は……私は!!」

電「三日月ちゃんを責める事なんか、できないのです!」 ギュー

三日月「電ちゃん……」

電「……三日月ちゃんの前の司令官さん達だって、その時は……ううん」

電「今だって多分、三日月ちゃんのせいにしてなんか、いないのです」

三日月「……それは、ありえないよ……」

電「……確かに、今のあの人は、そう思っているかもしれないのです。だけど、そんなのきっと……本当の感情じゃないのです。あの人もきっと、三日月ちゃんと同じなのです」

電「自分だけで抱え込もうとしたのです。だけど三日月ちゃんもそうしようとしたから……あの人は三日月ちゃんに依存してしまっているのかもしれません」

三日月「私に……?」

電「電の予測にしか過ぎないのです。三日月ちゃん、好きの対義語はなんだか知っていますか?」

三日月「……無関心」

電「そうなのです」

三日月(私が解体されたりしなかったのは……そういう事なのかな?)

電「……人の心は、難しいのです……」

三日月「……うん……」

電「でも私は、あの人の事は……許せないのです。絶対に、許すことはできないのです」

電「大事な友達を傷付けたあの人を許すことはできません」

三日月「私があの人の家族を撃ってしまったという過去があっても?」

電「はい」

三日月「……ブレないね、電ちゃんは」

電「よくお姉ちゃん達からも頑固者だって言われてたのです」

三日月「……ふふ、意外な一面だね」

電「でも、私は、あの人よりも許せない人達がいるのです」 ボソ

三日月「え?」

電「……なんでもないのです」


506: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 08:08:47.78 ID:alpQ8Sg40


電「三日月ちゃん、もう一人で抱え込まないでほしいのです。罪を認めて償う事は……大切なことだとは思います。けど、全部自分だけで抱え込むことは良くないのです」

電「三日月ちゃんには、仲間がいます。司令官さんも、金剛さんも、電も、みんなみんな三日月ちゃんの仲間なのです」

三日月「……うん」

電「何があっても、電は三日月ちゃんの仲間なのです」

三日月「うん……!! うん……っ!!」

電「さぁ、もう電は平気なのです。三日月ちゃん、戻りましょう。一緒に、ね?」

三日月「うん……!!」 ギュー

電「…………」 ヨシヨシ

電(……やるべきことが、決まったのです)


508: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 08:48:08.42 ID:alpQ8Sg40



提督「…………」

金剛「…………」

神通「…………」

前提督「さぁ、長い長い昔話は終わったよ。少し疲れたねぇ」

前提督「――で、お二人とも黙り込んでしまったけれど、もしかして少々退屈だったかい? それとも……」

提督「なぁ」

前提督「ん?」

提督「一年前のその事件、船の船長男で、補佐は女性だったか? 大体同じくらいの年齢の」

前提督「さぁ、僕から何とも言えないよ。神通、その辺りはどうだった?」

神通「はい、あなたが言う通りでしたよ。……とても優しい方々でした」

提督「…………そっか」

金剛(……提督? なんかちょっと表情が暗い気が……?)

前提督「まぁ、そういう事で話を戻そうか。この話を聞いてどう思う?」

提督「そうだな。色々と思う所はあるさ。けど……なんでアンタは……」

前提督「……」

提督「そうなっちまったんだよ……アンタだって本当は……わかってるんじゃねぇか……」

前提督「……話が見えないね。いったい何を言っているんだい?」

提督「……アンタは、逃げてるだけだ。自分で分かってるのに、分かっていたはずなのに、なんでアンタはアイツの馬鹿な言葉に真を受けたんだよ!」

提督「何が『全部お前が悪い』だよ。アンタだってそんなはずないって思ってたのに……なんで……真に受けてんだよ……」

金剛「提督……」

前提督「……ふん」

 ガチャリ

夕立「ただいま戻ったっぽい」

菊月「…………」

前提督「あぁ、戻ったのか。おかえり、夕立……と、菊月も一緒だったのか」

夕立「うん」

神通「電さんと……三日月ちゃんは?」

夕立「えと……ごめんなさい。送った後夕立は別行動をしちゃってて……それで途中から菊月ちゃんと一緒にいたっぽい。あと、電ちゃんなら無事入渠できたから安心っぽい」

神通「そうだったんですか。けど、結構戻って来るの遅かったんですね」

夕立「じ、実は道に迷っちゃってたっぽい! それで菊月ちゃんとたまたま合流して戻って来れたっぽい! ね、ね? 菊月ちゃん」

菊月「……あぁ」

前提督「……彼女、無事だったみたいだね。良かったじゃないか、少佐殿」

提督「あぁ、本当に良かった。……とりあえず、この事に関してはちゃんと上に報告するからな」

前提督「……無駄な事だよ。君だって上に言ったところで意味はないってわかってるだろうに」


509: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:03:39.93 ID:alpQ8Sg40


提督「…………」

前提督「……さて、興が醒めてしまったね。彼女達が戻ってきたら僕らはそろそろ帰らせてもら――」

提督「待てよ」

前提督「ん?」

提督「後日でいい。俺達と演習をしてくれ」

前提督「は?」

提督「唐突過ぎるって事は百も承知だ。でも、さ……このままはいさよならだと色々と腑に落ちないんだよ」

提督「だから、演習を組ませてほしい」

前提督「……訳が分からないね。そんな演習、意味を成さないよ。そもそも、君が今いるこの鎮守府はできたばっかじゃないか。とても演習ができるとは思えないさ」

提督「そうでもないさ。アンタ、今連れてきている艦娘は全員合わせて三人だろ? この鎮守府にいるのも三人。ちょうど三対三だ」

前提督「……意味がないし時間の無駄だ。しかもそんなの――」

提督「勝ち負けの結果は見えてるってか? そうでもないさ。アンタだって、提督なんだから分かるんだろ? 練度」

提督「できたばっかのうちの鎮守府にも、練度の高い艦娘はいる。別のところからやって来た、自分に自信が無さ過ぎる真面目な努力家がな」

前提督「ッ!!」

提督「あの子だけじゃない。うちには金剛も電だっている。そいつらでアンタに……勝ってやる。な、金剛?」

金剛「……フフフ……フッフッフ―! 提督は最高デース! 負ける気がしないデース!!」

金剛「それに、演習だったラー……合法的にyou達をボッコボコにできる」

夕立「!!」

神通「……」

金剛「神通―、あなたの言ってる事、私は間違ってると思いマース。でも譲れないことだってことも分かってマース。だから、海の上で決着つけまショウ」

神通「ふふ、面白いですね」

前提督「!! おい、神通。何を勝手に」

神通「別に問題ないと思いますよ。演習はお互いに経験値が積めます。それに、結果は見えてるんですから、経験値はこちらが多く積めますから」 ニッコリ

金剛「ホッホーウ……面白いデース!」 ニコニコ

 バチバチバチバチ

夕立(お互い笑顔なのに火花が見えるっぽい)

菊月「…………」



「電からもその演習、お願いしたいのです」

 ガチャリ



510: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:04:54.08 ID:alpQ8Sg40


電「…………」

提督「電!」

金剛「電!! それに……ヅッキー」

電「はい、ただいま戻ったのです」 ニッコリ

三日月「…………」

前提督「…………」

電「……三日月ちゃん、電がいるのです」

三日月「…………うん」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 スタスタスタスタ

電「三日月ちゃん、落ち着きましたか?」

三日月「……はい。大分落ち着きました」

三日月「なんか、本当に色々とごめ――」

電「三日月ちゃん、謝らなくていいのです。どちらかと言うと、電は謝られるのは好きじゃないのです」

電「電も謝ってばっかですけどね。あはは」

三日月「……電ちゃん、ありがとう」

電「いえいえ、なのです!」 ニッコリ

三日月(……前に、司令官にも似た様な事言われたなぁ)

電「? 三日月ちゃん、どうかしました? ニコニコしてるのです」

三日月「え? 本当ですか? 私ニコニコしてました?」

電「はい。とっても可愛いのです」

三日月「か、かわ……あはは、ありがとう。けど、別になんでもないですよ」

電「ならいいのですけれど」

三日月「……電ちゃん」

電「? なのです?」

三日月「私、電ちゃんに会えてよかった」

電「!?」

三日月「電ちゃんに会えて、本当に良かった。司令官に会えてよかった。金剛ちゃんに会えてよかった……けど、あの人達の事も……私が壊してしまった関係だけど……私はあの日々の楽しさを過去のものにしたくないかな」

三日月「私なんかが言っちゃいけないことだと思うけど……ね」

電「……そんなことないのです」

三日月「……私、この前強くなるって誓ったばっかなの。でも、まだまだ弱いし、精神面でも……未熟者だし……ダメダメな私だけど……」

電「……うん」

三日月「もう、逃げない。犯してしまった罪は帳消しにできないし、私は、今でも“自分が一番悪い”って思ってる。けど、もう逃げないよ」

三日月「――ひとつひとつになっちゃうけど、解決していきたい。この先何があったとしても……私が壊してしまった過去に向き合う」

電「……それが、――それが三日月ちゃんの思いなら、電は喜んで協力するのです!」

三日月「うん。ありがとう、電ちゃん」

三日月(電ちゃんがいたから、私はこう考えれるようになったんだ。全部自分で抱え込むだけじゃ、ダメなんだ)

三日月「……電ちゃん……これからも私の友達でいてくれる……?」

電「……何言ってるのですか。これからもずっと友達なのです!」

三日月「――うん!」


511: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:06:02.64 ID:alpQ8Sg40


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 私はもう逃げない。

三日月「し、司令官!! 金剛さん!!」

三日月「私は、あなた達に話していないことがあります。私は昔、取り返しのつかないことをやってしまったんです」

三日月「許されないことです。絶対に。それほどの事を私はやってしまったんです」

三日月「多くの人達が犠牲になりました。私が、原因です」

三日月「……私は、あなた達にこの事を何も伝えなかった。いいえ、伝えられませんでした」

三日月「怖かったから……伝えられませんでした」

三日月「でも、もう逃げません。何を言われても、私は向き合います。詳しい内容は長くなっちゃうので今は厳しいですけれど、全部伝えます。司令官も金剛さんも……仲間ですから」

提督「…………」

金剛「…………」


三日月「……神通さん!! 夕立さん!! 菊月!! ――司令官!!」

三日月「――ごめんなさい!!」

前提督「…………っ」

夕立「…………」

菊月「…………」

三日月「……あ、あの」

神通「――それは」

三日月「え?」

神通「それは、何に対しての謝罪なんですか?」

三日月「あの……」

神通「ゆっくりでいいです。ちゃんと、全部、思ってることを言葉にしなさい。……もう、逃げないんでしょう?」

三日月「!! は、はい!!」

電「…………」


512: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:07:16.49 ID:alpQ8Sg40


三日月「……私は……っ、わ、私は……あの時の事、今でも“自分が一番悪い”って思っています」

夕立「っ!」

三日月「でも!! 私は、あの時なんにも考えれていなかった。皆さんの言葉に、向き合っていなかった。それが、私がやってしまった“一番悪いこと”です」

夕立「…………」

三日月「夕立さんも、神通さんも……司令官も、向き合っていました……なのに私は、全部自分で抱えました。自分一人で」

三日月「私は、一番悪いことをしました。取り返しのつかないことをしました。司令官に、恨まれて当たり前のことをしました。けど、それ以上の“一番悪いこと”をやってしまったんです」

三日月「それに、菊月にも……大切な姉妹にも何も伝えなかった。いっぱい心配かけちゃったよね?」

菊月「…………」

三日月「こんなこと言っても、意味ないってことは分かってます。ただの自己満足だって言われたら、否定できません。その通りだって思います。けど、もう一度言います」

三日月「神通さん。夕立さん。菊月。司令官」

三日月「ごめんなさい」

夕立「…………」

菊月「…………みか――」

前提督「――それで、僕の家族は戻って来るのか?」

菊月「ぁ……」

三日月「…………」 フリフリ

前提督「お前は、僕の大切な家族を、殺したんだ」

三日月「はい」 コクン

前提督「……お前は僕の大切な家族を殺したんだ!!」

三日月「はい」 コクン

前提督「もう、戻って来ないんだ。お前が撃った魚雷で、跡形もなく……なった」

三日月「はい」 コクン

前提督「……僕がお前に投げかけた言葉は、間違ってたんだ。全部お前が悪いんだ」

三日月「はい」 コクン

前提督「ッ!!」

 バシーンッ!!

三日月「ぃッ!!」

提督「!!」 ガタッ

 バッ

提督「!?」

電「…………」 フリフリ

提督「……電……」


513: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:07:53.31 ID:alpQ8Sg40


前提督「……なんなんだよその目は。いつも通り怯えろよ。苦しめよ!! 嫌がれよ!! ――そんな目で、僕と向き合うな!!」

三日月「……嫌です、司令官。私は、もう逃げないって決めたんです。好きなだけ、殴っていいです。罵っていいです。私は、それだけの事をやってしまったんです。けど、もう、怯えません。逃げません」

前提督「ッ――!!」

三日月「司令官。本当に、ごめんなさい」

前提督「……黙れッ!!」

三日月「ッ」 ビク

前提督「はぁ……はぁ……はぁ……」

前提督「……少佐殿。すまない。僕はもう帰らせていただくよ。気分が悪い」

提督「…………」

前提督「……演習は、一週間後でいいかい?」

提督「ん?」

前提督「一週間後なら、演習は可能だ。連れてくるのは、今いるこの三人だけだ。君の出した条件で受けて立ってやる」

前提督「……そこにいる兵器に、後悔をさせてやる。ボコボコにしてやる。心を折ってやる」

三日月「…………」

提督「演習を組んでくれることに、感謝するよ。……けど」

提督「絶対に負けねぇ」


514: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:09:00.09 ID:alpQ8Sg40


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督「いやー本当に疲れたな~」

金剛「本当デース! もうクタクタデース」

提督「はっはっは! 明日からまた演習の連続になるから、今日はもう思う存分休むがよいぞ?」

金剛「HAHAHA! もう夜じゃないですカー!」

提督「おう、そうだったなー」

三日月「あ、あの……」

提督「そういえば電のやつ、本当にマメだよな。見送りは良いってあっちから言ってんのにわざわざ見送りに行くなんてな」

金剛「この鎮守府の子はみんな真面目でいい子デスからネー」

提督「はっはっは! そうだったな!!」

三日月「あ、あの!!」

提督「ん? どうした三日月?」

金剛「レディーが突然大きな声出すのは良くないデース!!」

三日月「え、えと……そろそろ話してもいいですか? 私の隠していた罪についての話を」

提督「……なぁ、三日月」

三日月「はい」

提督「あのさぁ……別に全部話す必要なんてなくないか?」

三日月「へ?」

提督「誰だって秘密はあるし、隠したいことだってあるに決まってる」

三日月「そ、それは……」

提督「だからさ、三日月。別に話さなくても大丈夫だぞ? その罪ってやつを俺に伝えようが伝えなかろうが、俺は……お前の味方だ。仲間だ」 ニッコリ

三日月「……お気遣い、ありがとうございます。司令官」

三日月「でも、これは……話したいことなんです。伝えたいことなんです。司令官にも、金剛さんにも」

提督「……わかった。それがお前の本当の気持ちなんだな?」

三日月「はい! 私はもう逃げません。ちゃんと、全部、伝えます」

提督「……実はな、俺も金剛もアイツから全部聞かされてるんだ」

金剛「……アハハ……」

三日月「……へ?」

提督「全部、知ってるよ……けど、俺はお前から全てを聞きたい。お前の気持ちに、正面からぶつかりたい」

三日月「……司令官」

金剛「……ワタシも、ヅッキーから聞きたいデス」 ニッコリ

三日月「……金剛さん」

三日月「……っ」 ゴシゴシ

三日月「聞いてください。私の罪の話を――」


515: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:09:57.48 ID:alpQ8Sg40


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電「本日は遠い所からお訪ねいただき、ありがとうございましたなのです」

前提督「……あぁ、お見送りわざわざありがとう。一応お礼は言っておくよ」

電「いえいえ。電も秘書官の建前としてやっているだけなのです」

前提督「……ふん」

電「そう言えば夕立さん」

夕立「……何?」

電「電の事、運んでくれたって聞きました。ありがとうございました」

夕立「……別に、いいっぽい」

電「……けど、言いたいことがあるのです」

夕立「…………」

電「……電は、三日月ちゃんの味方です。彼女が言う事に協力してあげるつもりです。……ですが、私個人として、言いたいことがあるのです。……夕立さんも神通さんも……菊月さんも……あなた方の司令官さんも」

電「電は絶対に許しません」


516: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:11:57.93 ID:alpQ8Sg40


前提督「……ほう?」

電「夕立さん、三日月ちゃんにしたことは、ただの裏切り行為なのです」

夕立「は?」

電「……本当の友達だったら、友達が間違っている事を言っていたら……それを伝えてあげるべきなのです」

電「……夕立さんは、三日月ちゃんから逃げているだけなのです」

夕立「ッ、この……」

電「神通さん。あなたの忠誠の仕方は、間違っているのです。……あなたは三日月ちゃんに優しくしてるみたいですが、それこそ自己満足なのです」

電「――優しくするんだったら、どうしてあの子がその人にいじめられている時に、助けてあげないんですか!! 守ってあげないんですか!!」

電「……あなたが守りたいのはその人なんですか? 三日月ちゃんなんですか?」

神通「…………」

電「菊月さんだって、そうなのです」

菊月「っ」

電「さっきから、黙っているばかり……全部、知ったのでしょう?」

菊月「…………」

電「……三日月ちゃんがあなた達姉妹に何も話していなかったのは、確かに彼女が悪いとは思います。でも、なんで受け身の形なんですか。あの子は、抱え込んでしまう子だって、姉のあなたが一番理解しているはずでしょう!?」

電「……姉妹ってのは、正面からぶつかり合うものなのです! 姉妹の様子がおかしかったら、無理矢理でも聞き出すものなのです……!! 今あなたが良くしてもらってるかもしれませんが、その分三日月ちゃんは苦しんでいたのです!!」

夕立「……黙って聞いてれば……!!」

菊月「夕立!」

夕立「……菊月ちゃん」

菊月「……大丈夫だ」

電「……今のあなた方は、三日月ちゃんに擦り付けているだけなのです。達観している気分になってるのかもしれませんが、それこそ自己満足なのです」

電「……私は、あなた達に絶対負けません」

電「……三日月ちゃんのお馬鹿さに甘えて、いじめるわからず屋なんかに」

前提督「…………」

電「友達の間違いを正さない、被害者気取りのわからず屋なんかに」

夕立「…………」

電「上官のくせにどっちつかずの優柔不断なわからず屋なんかに」

神通「…………」

電「本当の事を知っても、何を言うべきか分からない、姉妹を一番理解をしているはずなのに……迷っているわからず屋なんかに」

菊月「…………」

電「――電は、絶対に負けないのです!!」

電「なにが……そこにいる兵器に、後悔をさせてやる。ボコボコにしてやる。心を折ってやる……ですか! こっちの台詞なのです!!」

電「後悔させてやるのです!! ボコボコにしてやるのです!! 心を折ってやるのです!!」

電「――電の本気を見るのですッ!!」


521: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:26:00.55 ID:nLMgEvvH0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「――以上が……私の罪の話です」

提督「…………」

金剛「…………」

三日月「幻滅……しましたよね? ……でも、私はもうこの事を秘密にしないことにしたんです。私は、もう逃げたくないから」

提督「……」 ガタッ

三日月「ッ」 ビクッ

提督「三日月、お前さ」 スタスタスタスタ

三日月「は、はい!」

 スタスタ、ピタ

提督「……ホント、真面目だよなぁ」

三日月「へ?」 キョトン

提督「いや、真面目すぎるわ。……本当に、さ」 ナデナデ

三日月「? ……?」

提督「……俺の母さんと父さんもさ、本当に真面目な人達だった。いや、むしろ真面目すぎだったな」

提督「息子の俺と弟の世話はちゃんとしてくれてたけど、やっぱり仕事一番の人達だった。仕事柄家にいないことも多かった。久々に帰って来たなぁと思ってたら、仕事で失敗してきたのか、すっげぇ落ち込んでたし、いつまでも反省してた。……息子の俺から見ても、気にしすぎだろって思えたな」

提督「……けど優しかった。俺、本当に二人の事……尊敬してた」

三日月「…………」

金剛「…………」

提督「真面目に何かできて、何事にも真っ直ぐ向き合えるって事はさ、誰にでもできる事じゃない」

三日月「…………」



522: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:30:04.67 ID:nLMgEvvH0


提督「三日月はさ、なんか俺の親に似てるんだ。それが雰囲気で伝わるって来るって言うかさ……えと、な……最初会ったばっかの時からそんな感じがしてた」

提督「……ごめん、ちょっと気持ち悪いよな。こんなこと言われて」

三日月「!! そんなことないです」 フリフリ

提督「ははは、ありがとな。……三日月と会ったばっかの時さ、俺が手を伸ばした時、お前はすごく怯えたし、拒絶したよな」

三日月「……はい。あの時は、本当に失礼しました」

提督「いや、いいんだ。けど、当時はめっちゃ落ち込んだ。溜息も出ちまった」

三日月(……あの時の溜息はそういう事だったんだ)

提督「でも、今俺は三日月の過去の話を聞いて、何で拒絶されたのかって理由も分かったし、好きで拒絶したわけじゃないって事もわかった」

提督「……三日月」 スッ

三日月「え? し、司令官!?」

 ギュー

三日月「え、えええええ!? ぁ、あの!! 司令官!? ……こ、ここここ金剛さんが見てますよ!? そ、それに……は、恥ずかし……ぃ……!!///」 カァァァァ

提督「俺はお前を責めない」

三日月「――え?」

提督「俺はお前を責めない。幻滅もしない」

提督「……お前の頑張りを、知ってるから」

三日月「……司令官」

提督「三日月がやっちまった事は……許されることじゃない。多くの人が……犠牲になった。犠牲になった人の親族も、三日月の事……恨むと思う。俺だって多分、お前と会ってない状態でその事を聞いたら……三日月を許していないと思う。俺は聖人じゃないしな」

三日月「…………」

提督「けど、俺はお前を知ってる」

提督「お前の頑張りを知ってる」

提督「お前が罪を抱えて、一人で頑張ってきたことも今知った」

提督「……そんなお前の姿を知っていて、どうやってお前を責めろって言うんだよ……幻滅しただなんて……言えるんだよ。――無理に決まってんだろ!!」

三日月「…………」

提督「お前、ほんと真面目過ぎだ……全部一人で抱えるなよ……」 ギュー

三日月「……司令官も、電ちゃんと同じことを言うんですね」

金剛「――そんなの当たり前じゃないッ!!」



523: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:31:09.58 ID:nLMgEvvH0


三日月「金剛さん……」

金剛「……ワタシも、同じ気持ち……責めないヨ……失望なんてしない!!」

金剛「……ワタシ、ヅッキーの事……大好きだもン。ヅッキーが頑張ってる事、知ってる」

金剛「ワタシが言っていい事じゃないってことも承知してる。……でも、ワタシは言うワ!」

金剛「ワタシは、ヅッキーの罪を許しマスッ!!」

三日月「こんごう……さん……!!」

 ガチャリ

電「そう言う事なのです」

三日月「……電ちゃん」

電「三日月ちゃん」

金剛「ヅッキー」

提督「三日月」


電「電はあなたを責めないのです」
金剛「ワタシはあなたを責めないワ」
提督「俺はお前を責めない」



524: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:33:16.56 ID:nLMgEvvH0


三日月「……はは……あはは」

三日月「……わたし、さいきん……ほんとに……泣き虫なんです……!!」 ポロ、ポロ

三日月「……皆さん……お人好しすぎますよ」 ポロポロ

三日月「……ひっぐ……ぁう……!!」 ボロボロ

提督「…………」 ナデナデ

 司令官は何も言わず、私の頭を撫でてくれた。優しく抱きしめてくれた。泣いてる私を、静かに、抱きしめてくれた。
 ――優しい。皆、本当に優しい。こんな人達、珍しいと思う。お人好し過ぎる。おかしいとすら思ってしまう。

 ――けど、私はこの人たちが大好き。本当に、大好き。

三日月「……ぅぐっ……ぅう、っ……!!」

提督「…………」 ナデナデ

 トクン――と胸がときめく。ちょっと胸が苦しくなる。泣いているからなのかもしれない。
 トクン、トクン、トクン。胸が苦しいのに、全然気分が悪くない。むしろ、なんだか心地良かった。――この痛みが何なのかは、結局最後まで分からなかった。



525: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:50:40.92 ID:nLMgEvvH0


提督「…………」

 ガチャ

金剛「ヘーイテートクー? 紅茶入れてきたデース」

提督「おぉ、ありがとう。……三日月は大丈夫だったか?」

金剛「ハイ。今はもうぐっすりデスヨー。電が一緒にいてくれてるし、ノープログレムだと思いマース」

提督「そっか。運んでくれてありがとうな、金剛」

金剛「お安い御用デース! ハイ、提督の紅茶だヨー」 ホイ!

提督「おう、ありがとう。いただくよ」

金剛「ふっふー、テートクー……お隣失礼するデース!!」 ポフン

提督「……なぁ、金剛。お前にだけは伝えておくよ」

金剛「ンー?」

提督「……俺は、上層部の人間が……大っ嫌いなんだ」

金剛「……理由、あるんでショー?」

提督「あぁ。……あいつらはな」

提督「艦娘を人間とは思ってない。ただの道具としか思っていないんだ」

金剛「…………」

提督「全員がそういう考えを持っているわけじゃないんだけどな。まぁ、それでも大抵の奴らは、艦娘を道具として扱ってる」

提督「俺は、どうしてもそれが許せないんだ」

金剛「どうしてデース?」

提督「え?」

金剛「提督。ワタシ達は、あなた達とは違うヨ」

金剛「艤装さえあれば海に浮かべる。力もある。……深海棲艦にまともに対抗できるのはワタシ達艦娘だけデス。……人類が、どうすることもできない、“敵”に対抗できる唯一のへい――」

提督「兵器じゃないよ」


526: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:58:46.72 ID:nLMgEvvH0


金剛「……どうして?」

提督「お前らは、俺達と変わらない人間だよ」

提督「泣いて、笑って、怒って、時には苦しみながら、一生懸命……戦ってる。そんなお前達が、兵器なわけない」

金剛「……提督」

提督「感情があるんだ。戦うために、努力だってしてるんだ。……なんで上の奴らはそんなお前らの事を兵器だなんて言えるのか、俺には理解できねぇよ」

金剛「…………」

提督「けど、現実的に考えちまうと、俺みたいな考え方の奴がおかしいってのが今の現状だ。……でも、それでも俺は一つの鎮守府を任せられた、“提督”というものになれた。……お前らの練度を見れるっていう不思議な才能があったからな」

金剛「…………」

提督「こんな変人な俺ですら提督にしなきゃいけないくらい、今は人材不足なのさ。……この才能があったら、子供でも、女でも、老人でも、誰でも“提督”になれる。……当然士官学校には入れられて、色々と勉強させられるけどな」

提督「……俺は、いつか上の奴らにお前らの考え方は間違ってるって言えるくらい、偉くなるつもりだ。その結果が……深海棲艦以外にも敵を増やすことになってもだ。――だから」

金剛「――もちろん、ついて行きマスヨ?」

提督「!!」

金剛「ワタシは、一生あなたについて行きマース」

金剛「……だって、提督の…………――○○さんの笑顔が……守りたいから」 ニッコリ

提督「……金剛……」

提督「本当にありがとう、な」 ニッコリ

金剛「えへへー……ハイデースっ!!」 ニコニコ

提督(……本当に金剛は……頼れる奴だな。アイツらも同じこと……言ってくれるのだろうか?)

金剛「……うふふふふー……でもでもぉ~/// 乙女に恥ずかしいことを言わせたテートクにはー……こうデース!」 ガバ

提督「おぅ!?」

金剛「えへへー、ヅッキー達がいたらこういう英国式スキンシップもできないもんネー! 今はワタシになすがままニ! ギューってされるデース!」 ギュー

提督「い、いや別にいいんだけどさ!! こ、紅茶こぼれる!!」

金剛「ヅッキーばっかり羨ましいからネー……ワタシだって甘えたいんですかラ~」 ギュー ニコニコ

提督「聞いてらっしゃらない!? って、金剛、本当にあぶ……――あっつーッ!!」


527: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:59:57.14 ID:nLMgEvvH0


三日月「すぅー……すぅー……」

電「ふふ、三日月ちゃん可愛いのです」 ニッコリ

電「……今日は疲れたんですよねー? 本当に、お疲れさまなのです」 ナデナデ

三日月「……すぅー……んんー?」 ピクリ

電(はわわ!? 起きちゃったのです!?) ビク

三日月「……いなづまちゃん?」

電「はわわ……三日月ちゃん、ご、ごめんなさいなのです お、起こしちゃ――」

 ギュー

電「……なのです?」

三日月「……いなづまちゃん……ありがとう……ね……」

三日月「……すぅー……すぅー……」

電「ね、寝ちゃった……それとも、寝ぼけて、た? なのです?」

 ギュー

電「……えへへー……まぁ、可愛いから何でもいいのです!」

三日月「……すぅー……すぅー」

電「……ふわぁ~……電も眠くなってきちゃったのです」 ウトウト

電「けど……」 ジー

 ギュー

電「あははー……手、放してくれないのです」

電「――ハッ!! そうなのです! 電も三日月ちゃんと一緒にここで寝ればいいのです!!」 キラーン

電「そうと決まれば早速、お邪魔するのですー」 ヌクヌク

三日月「……すぅー……すぅー」

電「…………」

電(三日月ちゃん……電は、何があっても三日月ちゃんの味方なのです)

電「…………し、司令官さんだって……三日月ちゃんになら…………私はそのくらい、三日月ちゃんの事…………す……」

三日月「……すぅー……すぅー」

電「……三日月ちゃん、おやすみなさいっ、なのです」


528: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 09:58:38.72 ID:nLMgEvvH0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 一週間なんて、すぐに過ぎるんだなって、実感できた。

 ザバーンッ!!

三日月「電ちゃん!! 金剛さんまでだいぶ距離が近づいたから、ここは!――」 ザッ

電「はいなのです! 二手に分かれて左右から攻めた方が良いですよね!」 ザザー

三日月「――うん!! そう! 電ちゃん頼りになります!!」 ザー



金剛「中々やるじゃなーい……けど、負けないデース!! ファイアー!!」 ズドーン!!


 朝から夕方まで。たまに夜戦の演習。それがみっちり続いた。それだけじゃない。強くなるために、色々な事をやった。


提督「三対三で、相手は軽巡一人と駆逐艦二人。こっちは金剛がいるから、状況的にはこっちのが有利だな」

三日月「ですけど、あちらは神通さんがいます」

提督「……あそこの神通、良く育ってたな。相当厄介そうだな」

三日月「はい。……戦うとしたら本当に厄介な方です」

金剛「うーん、まずは神通をなんとかしないとだネー」

提督「そうだな。そのためには彼女に対抗できる火力と射程距離のある金剛が重要となってくるな」

電「なのです! 金剛さん、一緒に頑張ろうなのです!」

金剛「もちろんデース!」

提督「けど、他の二人も油断していい相手じゃないよな。金剛には神通との戦いに集中してもらいたいが、そのためにはあの二人も何とかしなきゃだもんな」

電「……その事に関して、電からの作戦提案があるのです」

提督「おぉ、聞こうか」

電「まず――」

 ――作戦を立てて、連携訓練なんかもやった。
 すごく疲れたし、大変だった。けど、とても楽しかった。



529: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 10:02:17.74 ID:nLMgEvvH0


電「……今日もクタクタなのです……金剛さん、更に強くなった気がするのです」

三日月「あはは……金剛さんも一緒に訓練してるから、強くなってるんだよ。けど、今日は何回か当てれたよね」

電「はい! あれは素直に嬉しかったのです!」

三日月「うん、私も嬉しかった」 ニッコリ

電「……そう言えば三日月ちゃん、電と話す時敬語じゃなくなったのですね」

三日月「へ? あぁ、うん」

三日月「電ちゃんは……私の……一番大事な友達だから。自然体でいこうかなぁって思ったの。……も、もしかして嫌だった?」

電「い、いえいえ! むしろ嬉しいのです!!」

三日月「ふふ……よかった」 ニコニコ

電「……三日月ちゃん」 スッ

三日月「……どうしたの? 電ちゃん」 ギュ

電「……ついに、明日が演習ですね」

三日月「……そう、だね」

電「電、明日は絶対、ぜぇったいに負けたくないのです」

三日月「…………私は……」

電「三日月ちゃんは、勝ちたくないのです?」

三日月「……正直言うと、よくわからない、かな。神通さんにも、夕立さんにも、菊月にも……司令官にも……思いはぶつけたけど……あの後何も言われなかったから……。正直、ちょっと会うのも怖い。会いたいのに、まだ怖いんだ」

電「…………」

三日月「……けどね、電ちゃん」

電「ん?」

三日月「それは、一つの私の気持ちにしか過ぎないよ」

電「……三日月ちゃん」

三日月「勝って、皆さんと喜び合いたい。あの人たちに私の成長を見せてあげたい。もう昔の私じゃないって事を、証明したい。……そして、私が撃ってしまった人たちの分、多くの人達を救ってあげたい」

三日月「……あはは。色々な気持ちがごちゃ混ぜになり過ぎちゃって、よくわからないんだぁ」

電「三日月ちゃんらしくて、なんか良いですね」

三日月「そ、そうかなぁ」

電「はいなのです!」 ニッコリ

電「……けど三日月ちゃん」

三日月「?」

電「難しく考えてもしょうがないのです。だから、ひとまず演習、頑張りましょう! なのです!」 ニッコリ

三日月「……ふふ、そうだね。難しく考えても、しょうがないよね」

三日月「――うん! 電ちゃん! 私、頑張る! 頑張るしか取り柄がない私だから!」

電「そんなことないけど、その意気なのです! 電も頑張るのです! おー!! なのです!!」

三日月「おー!!」


 色々な事があったけど、ここからがスタートだ。私は――三日月は、この演習から変わるんだ。


 ――そしてついに、演習の日がやってきた。


531: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 03:00:53.65 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


菊月『……最近、三日月の様子がおかしい気がするんだ』

如月『……菊月もそう思う? 私も最近そう思うの。何か、暗いわよね』

菊月『…………この前の任務から帰ってきてからだな』

如月『うん……』

菊月『……最近の司令官は、どうにも三日月に対して態度が――』 ボソボソ

如月『あ、司令官』

菊月『!!』

前提督『…………』 スタスタスタスタ

如月『あらあら、どうしたの司令官ぼーっとして?』 ニコニコ

前提督『……うるさい』

如月『へ?』
菊月『へ?』

前提督『君らはさっさと遠征に行ってこい』 スタスタスタスタ

菊月『……司令官……』

如月『き、きっと機嫌が悪かったのね……あんな態度の司令官、見たことないもの』

菊月『……そうだな……あ、三日月』

如月『あら、本当。どうしたの、こんなところでぼーっとしてて』

三日月『ごめんなさい』

菊月『え?』

三日月『先ほどの司令官の態度が悪かったの……きっと、私のせいです……私の……』

如月『み、三日月?』

三日月『私、みんなにまで迷惑かけてるんだ……本当に……ごめんなさい!』 ダッ!

菊月『み、三日月!』

 私たち姉妹と三日月は、それ以降あまり関わらなくなってしまった。部屋も変わり、あの子は日中ずっと訓練をしていたから、中々顔を合わす機会が無くなってしまった。


532: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 03:19:18.06 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ――づき! ――菊月!!

菊月『…………ぇ?』

前提督『き、気が付いた!! よ、良かった……!! 本当に良かった!!』

如月『ごめんなさい……菊月……! 私が敵に気が付かなかったから……菊月は!』

前提督『…………とにかく今は入渠が先だ……僕が連れていく! 如月も一緒に来てくれ!!』

前提督『僕は……またやらかしてしまう所だった……ちゃんとした指示で遠征に出していれば……くっ!!』

 意識が朦朧としていた。けど、司令官の声はしっかりと聞こえていた。
 入渠が終わった後、私はずっと司令官から謝られっぱなしだった。

 ――そして、三日月は気が付けば私達の元から去っていて、私は今の部隊に配属された。


533: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 03:47:17.43 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

夕立『……ぽ、ぽい~……』

 鎮守府に配属が決まった。けど、問題が発生した。司令室がどこだか分からない。

夕立『地図なんて見ても分からないっぽい……』

夕立『ど、どうしよ……このままじゃ夕立、餓死しちゃうっぽい!?』

夕立『そ、そんなの嫌ぽいいいいいいい!!』

『あ、あの……』

夕立『……ぽい?』 クル

三日月『ど、どうしたんですか? もしかして、迷子?』

夕立『お……おぉ~!! あなた、この鎮守府の人っぽい!?』

三日月『え、えぇ』

夕立『お願いします!! 司令室まで連れてってぇ~!!』

 それが彼女との出会いだった。


534: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 04:15:29.23 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

夕立『えへへー、今回も三日月ちゃんのおかげで助かったっぽい!』

三日月『ふふ、ならよかったです』 ニッコリ

夕立『三日月ちゃんには、ここに配属された時からお世話になってばっかだよね。ホントごめんっぽい』

三日月『えっ、いやいや、このくらい大丈夫ですよ。全然』

夕立『ほ、ほんと?』

三日月『ほんとです』

夕立『~~~!! 三日月ちゃん本当に優しいっぽい! 三日月ちゃんと友達になれて、私ほんとに嬉しいっぽい!』

三日月『と、友達?』

夕立『うん! ……嫌っぽい?』

三日月『い、いえ! そんなことないです! むしろ嬉しいですよ?』

夕立『ならよかったっぽい!』 ギュー

三日月『……えへへ』

夕立『けど、夕立はちょっと三日月ちゃんにお世話になってばっかだから……もっと成長しないと!』

三日月『そんなの大丈夫なのに……』

三日月『……と、友達はお互いを助け合うものだと思いますし』

夕立『お互いを助け合う?』

三日月『はいっ。友達ってそういうものな気がします』

夕立『なら、私は三日月ちゃんが何か困っていたら助けてあげるっぽい!』

三日月『……なら、私は夕立さんが何か困っていたら助けてあげますねっ』 ニコ

夕立『ぽい~! 約束っぽい!』 ニコニコ

三日月『はい! 約束です!』 ニコニコ

 ただの口約束だったのかもしれない。けど、私にとっては大切な思い出だったし、初めてできた友達との約束だった。







 だから――


夕立『み、三日月ちゃん。一人で抱え込んじゃダメだよ。私達、仲間でしょ? 友達でしょ?』

夕立『ゆ、夕立達……“お互いを助け合う事を約束し合った友達同士”でしょ?』

夕立『だから、一人で抱え込んじゃ――』

三日月『そんなの今は関係ありませんッ!!』


 その言葉だけは聞きたくなかった。


535: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 04:53:46.96 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 小さい頃に、私はあなたと出会いました。

神通『…………』

 私は何なのだろう。私はそれが分からなかった。

『今から貴様らには!! こいつらの指導係となってもらう!! これも大事な訓練の一つだ!! 手は抜くなよ!!』

 怖い雰囲気の男の人が何か言っている。そして、少し経つと私の前には優しそうな人がやって来た。

『やぁ』

神通『お兄さん……誰?』

前提督『僕は君の……そうだな、先生みたいなものかな? 訓練兵だから、あまり立派な人とはまだ言えないけどひとまずよろしくね』 ニッコリ

 優しい、笑顔だった。







神通『先生?』

前提督『ん? どうしたんだい神通』

神通『問題……解けました』

前提督『もうかい!? 早いねぇ……どれどれ』

前提督『……驚いた、全問正解じゃないか! 偉いぞ!』 ナデナデ

神通『……えへへ』

 私は自分が何なのかは分からない。けど、これだけは分かった。私はこの人の喜ぶ顔が好き。


536: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 04:56:38.98 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

『来たか、訓練生145番よ』

前提督『はい。言われた通りこの子も連れてきました』

神通『…………』 ペコリ

『よろしい』

 あの時の怖い人だ。何かあるんだろうか。

『ではこれから一つだけ指示を出す。彼女の数字を見て、私に教えろ』

前提督『え?』

『時間がないんだ早くしろ』

前提督『数字を見ろって言われましても……』

『よく見てみろ。じぃーっくりとな』

前提督『うーん……』 ジー

神通『…………』

前提督『……』 ジー

神通『……///』 カァァァァ

 ちょっと恥ずかしかった。

前提督『……1、ですね』

『!! 貴様、見えるのか?』

前提督『は、はい……』

『……すばらしい。君には才能がある。おめでとう、晴れて君は訓練兵卒業だ』

前提督『え?』

神通『?』

 それから、ちょっと先生とは離れ離れになった。けれど、私はその間も勉強を頑張り、訓練も頑張った。そして私は次第に、自分が艦娘という存在だという事を知った。
 ――それでも私は何なのか分からなかった。艦娘? 艦娘は人間? 兵器? 分からない。分からなかった。そして、自分が何でありたいかも分からなかった。


537: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 05:03:19.49 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神通『先生……いや、提督。お久しぶりです』

前提督『神通? 神通なのかい!?』

神通『はい、あの時の神通です』

前提督『おぉ……いや、本当に見違えたよ。立派になったね、神通』

神通『ふふ、ありがとうございます。提督も最近は何かいいことがありましたか?』

前提督『はは、そうだねぇ……まず子供が生まれた。今ではもうだいぶおっきくなってきたね。まだまだ甘えん坊さんだけど、これがまた可愛いだよ』

神通『あらあら。おめでとうございます、提督』

 先生が女性とお付き合いしてることはあの時から知っていた。だから子供がいてもおかしくないだろうし、素直に喜ばしいことだった。

前提督『いやでも、正直不安でいっぱいだったこの状況で、初めての艦娘が君で本当に安心できるよ。改めてよろしくね、神通』

神通『はい、こちらこそよろしくお願いします。あと提督』

前提督『ん?』

神通『久しぶりに会えて……本当に嬉しいです』

前提督『……僕もだよ、神通』


538: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 05:04:11.50 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神通『ここも大所帯になりましたね』

前提督『そうだね。嬉しい限りだよ』

 私にも、仲間ができた。部下ができた。時間が経つのはとても早く感じる。

神通『けど、お忙しくなった分提督は中々実家の方に帰省できなくなってしまいましたね。娘さんも奥様も寂しがっているでしょうし……』

前提督『……まぁ、そうだね。けど、彼女は理解のある人だし、娘もこの事は承知している』

神通『…………いい子、ですね』

前提督『あぁ。あの子は本当にいい子なんだ』

前提督『どんなに寂しがっていても、僕が何か言えばちゃんという事を聞くんだ。……自分の感情を殺しているの、バレバレなんだけどね』

神通『ちゃんという事を聞く?』

前提督『あぁ。……この前、行かないでよって泣かれてしまった時も、結局は僕のわがままを言わないでくれって一言で泣き止んでしまってさ……本当にあの子は……いい子過ぎるんだ』

神通『……いい子、ですか』

前提督『ははは……うん』

神通『…………』


541: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 10:44:40.94 ID:7mTxrmSz0


『…………じん、つーさん……』 ヨロヨロ

神通『あら、三日月ちゃん。お疲れさまです』

三日月『はぁ、はぁ……ご、50……しゅうー……お、終わり……まし、た……はぁ、はぁ』 ヨロヨロ

神通『はい、ご苦労様です。他の皆さんは?』

三日月『はぁ、はぁ、はぁ……げほ……えと……みんな、倒れています……』

神通『なるほど……根性がありませんね。あとでペナルティです』

三日月『!! み、みんな限界なんです……そ、それはちょっとかわいそ……』

神通『けど、三日月ちゃんは根性でやり切りましたよね? あなたにできて他の子にできないとは私は思いません』

三日月『けど……』

神通『……なら三日月ちゃんが倒れている子達の残りの分も走り切ってください。そしたらペナルティはなしにしてあげます』

三日月『え?』

神通『この後予定していた訓練ももちろんやってもらいます。それでもやりますか?』

三日月『……っ、や、やります!! やってやります!!』

神通『そうですか。では頑張ってください』

三日月『ッ~~~~~!!』 タッタッタッタ

前提督『……神通、中々厳しいね』

神通『そうですか?』

前提督『あの子、前配属されたばかりの三日月だろ? いくらなんでも代わりに走らせるのは厳しいんじゃ』

神通『えぇ、私もあの子以外にだったら多分やらせないでしょう。問答無用で次の訓練をやらせています』

前提督『え?』

神通『あの子、多分走ってる途中で何回か吐いてますね。拭いてきたんでしょうけど、口元に薄らと跡が残ってました。それでもなお走り終えて、ここまで報告に来ました。私はその根性を買って、あの子ならやり切れると思って追加で走らせることにしました』

前提督『……オーバーワーク過ぎないか?』

神通『私が体験してきたことです。あの子にもきっとできますし、ちゃんと休息も与えます』

前提督『あの子が走り終えたという事が嘘かもしれないと言う可能性は?』

神通『あんなに馬鹿真面目な子がそんなことするとは思えません』

前提督『はははは、確かにな。……あの子、なんだか少し僕の娘に似ている気がするよ』

神通『娘さんに?』

前提督『あぁ。見た目もだけど、性格までちょっと似てるかもね』

神通『はぁ』

 三日月ちゃんは、いい子だ。そして娘さんもいい子みたいだ。
 ……私は、いい子なのだろうか? 分からない。
 そして、私が何なのかも、いまだに分からない。


542: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 11:23:38.95 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 夕立ちゃんが私に泣きながら聞いてくる。彼女は悲しみながら、怒っていた。

夕立『神通さん! ……私……私、どうしたらいいの……? 三日月ちゃんのこと……わたし……!!』

神通『……夕立ちゃん』

夕立『私……あの子の力になりたいのに……!! ……悲しんでいる三日月ちゃんの事、可哀想だと思ってるのに……!』

夕立『……許せないとも思ってるの……!』

夕立『……わたし……どうすればいいの!? 何にも、わかんないの!!』

神通『……夕立ちゃん。その質問に、私は答えることができません』

神通『いいですか、夕立ちゃん――』

 私だって、分かりませんよ。
 私達は、色々と体験し過ぎてしまいました。だけど、今の夕立ちゃんに対してそんな返答はできない。彼女は迷っている。
 ――だから私は、まるで自分に言い聞かせるように、その言葉を吐き出す。

神通『自分が選んだ道こそが、最善の選択なんです。周りからしたら、それが間違っていることなのかもしれません。だけど、そんなの関係ありません。だって、どれが正解だなんて、誰にもわからないんですから』

神通『だから、あなた自身が決めなさい。どうするべきなのか……自分で』

 私のこの言葉が、三日月ちゃんと夕立ちゃんの仲を崩壊させてしまった最大の理由なのかもしれない。




 スタスタスタスタ

神通『…………』

 <司令室前>

神通『…………』

前提督『……んで、なんで……こんなことに……』

神通(……提督の声……)

前提督『……あいつが悪いんだ。あいつが悪いんだ。そうだ、そうだそうだそうだそうだそうだ。……そうに決まっているさ』

 提督は、今精神的に不安定なんだ。

神通『……先生……』

 けど、私にはどうすることもできない。私の言葉では、彼をどうしたって救う事は出来ないんだ。では、私はどうすればいい? そんなのはわからない。自分で決めるしかないんだ。

前提督『……あんないい子が……なんで死ななきゃいけなかったんだ……!!』

神通『…………』

 そうだ。私、少しでもいいから提督の娘さんの様な存在になろう。代わりになろう。

神通『……ふふ』

 私が何なのかなんて、今はもうどうでもいい。人間じゃなくたって、兵器じゃなくたっていい。私は、提督にとってのいい子になろう。彼の言う事をちゃんと聞くいい子になろう。自分の感情なんか関係ない。彼にとってのいい子になろう。

神通『…………』 スタスタスタスタ

 何が正解で、何が間違っているのかだなんて、関係ない。――私はあの人のいい子になるんだ。











「皆、そろそろ起きるんだ」


543: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 11:39:39.73 ID:7mTxrmSz0


神通「へ?」

夕立「ぽい?」

菊月「ん?」

前提督「ははは、三人ともぐっすりだったね。神通まで寝ているなんて珍しいこともあるね」

神通「し、失礼しました」

前提督「いや、いいんだよ。けど、もうそろそろ彼の鎮守府に着くから、準備だけはしておいてくれ」

神通「分かりました」

夕立「車はぐっすり寝れるから電車よりも好きっぽい~」

菊月「…………」

夕立「菊月ちゃん?」

菊月「なんだか、昔の夢を見ていた気がする」

夕立「菊月ちゃんも? なんか夕立もそんな気がする」

神通「……さ、二人とも。準備をしますよ。本日は演習なんですから、気を引き締めていきましょう」

夕立「了解っぽい」

菊月「…………あぁ」

神通「それで菊月ちゃん。作戦は前に菊月ちゃんが決めたもので大丈夫ですか?」

菊月「あぁ。変更はない」

神通「分かりました。では、改めて最後にもう一度確認を行いましょう」

夕立・菊月「了解」

前提督「…………」


546: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:40:22.89 ID:fGAh6fJ70


 <正門前>

提督「さぁ、もうそろそろやってくる時間だな」

金剛「イエース。ちょっと緊張しマスネ……」

電「ちょ、金剛さんがそんな感じでは一番ダメなのです!」

金剛「HAHAHA! 冗談ネー!」

電「もう……三日月ちゃんも、リラックスしなきゃなのです」

三日月「は、はははははい! 落ち着いてますよ!?」

電「はいはい、ゆっくり深呼吸するのです」

三日月「うん。すーはー、すーはー」

電(緊張して固くなるのはどちらかと言うと電がそのポジな気がするのですが……今日はそんなこと言ってられる場合じゃないのですね)

提督「おっ、来たみたいだな」

 スタスタスタスタ

前提督「やぁ、一週間ぶりだね、少佐殿。車は近場の駐車場に止めさせていただいたよ」

提督「えぇ、本日はわざわざお越しいただき本当にありがとうございます」 ビシッ

前提督「猫被らなくていいよ。正直、前の感じの方が慣れてしまったからね」

提督「……そうかよ。とりあえず今日はよろしく頼みます」

前提督「あぁ、よろしく頼むよ」


547: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:41:01.20 ID:fGAh6fJ70


夕立「…………」

菊月「…………」

神通「皆さん、お久しぶりですね。本日はよろしくお願いします」

金剛「オーウ、こちらこそよろしくお願いしマース!」

神通「ほら、お二人もしっかりあいさつしなきゃダメですよ?」

夕立「……よろしくっぽい」

菊月「……よろしくお願いする」

三日月「こ、こちらこそよろしくお願いします」

電(……気まずい、のは当たり前ですね。まぁ、仕方のないことなのです)

電「本日はよろしくお願いします。全力で挑ませていただくのです」

夕立「……ふんだ!」 ベー

電「…………」 ムスー

 バチバチバチバチ

三日月・菊月「二人とも、その辺に……て、あっ」 チラ

三日月・菊月「…………」 フイ

金剛(……気まずい)


548: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:44:28.49 ID:fGAh6fJ70


提督「じゃあ、演習場所は今俺の言った提案でいいか?」

前提督「あぁ、それでいいよ。演習場でやるよりもそのほうが良い経験になりそうだからね」

提督「うし、了解っす」


金剛「おっ、提督たちの打ち合わせ、終わったみたいデース」

 スタスタスタスタ

提督「よし、じゃあ場所移動するぞお前ら」

前提督「神通達も行くよ」

「了解です」

提督「じゃあ、案内するからついて来てくれ」

前提督「…………」 ジー

三日月「……司令官……」

前提督「……ふん」 クル

 スタスタスタスタ

三日月「…………」

三日月「あ、あの! 夕立さん!」 クル

夕立「!!」 ビクッ

夕立「……いきなりなに?」

三日月「え、えと……今日の演習が終わった後……少し時間いただいても良いですか?」

夕立「……何かあるの?」

三日月「……」 コクン

夕立「……了解っぽい」 スタスタ

三日月「…………」

三日月(一つ一つ、解決していかなきゃ)

菊月「…………」


549: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:47:19.84 ID:fGAh6fJ70


提督「うし、じゃあ今回の演習について説明するぞ」

提督「今回行う演習は、ウチにある演習場ではなく、少し外の海に出て行ってもらう。もちろん安全確認として、事前に金剛に辺りの調査はしてもらっているから深海棲艦がいる心配もない」

金剛「ばっちりデース」

神通(確かに演習場でやるよりも外の海の方が広いですからね。私としてもそっちの方が都合が良いですし)

前提督「僕は別に構わないんだけど、君達はどうだい? 意見なんかはある?」

神通「私は特にありません」

夕立「夕立も別に気にしないっぽい」

菊月「私も同意見だ」

前提督「という事だ、ウチの皆は了承してくれたよ」

提督「あぁ、感謝するよ。お前達も構わないよな?」

電「問題ないのです」

三日月「私も、大丈夫です」

提督「おし、ならそれで行こう。――では、各自準備開始だ」


550: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:51:01.88 ID:fGAh6fJ70


三日月「ふぅ……」

 艤装を付け終えた私はそっと息を吐く。演習開始まであともう少しだ。やっぱり、緊張する。

提督「三日月、緊張してるのか?」

三日月「……はい。やっぱり、神通さん達が相手ですし、ちょっと怖い気持ちもあります」

提督「なるほどなぁ」

金剛「…………」

電「…………」

提督「お前ら、ちょっとこっち来てくれ。三人ともだ」

三日月「へ? あ、はい」

金剛「ん~? どうしたの提督~?」

電「なのです?」

提督「……みんな、手を出してくれ」

三日月「???」 スッ

提督「俺からの皆へのプレゼントだ」 スッ

三日月「へ? これは……?」

金剛「お守り、デスネー」

電「なのです」

提督「そう、お守りだ。妖精さんが売ってたから買ったんだ。みんなどっかに入れて持っていてくれ」

提督「そう緊張すんなって。お前らはやれることはやってきたし、それを全力でやるだけさ。緊張することなんて何もない」

提督「頑張って来い、三人とも」

三日月「司令官……」

金剛「……イエース! やる気出てきたデース!!」

電「そうですね、電達は全力でやるだけなのです! そして絶対に勝ってやるのです!」

三日月「……うん! 頑張るだけだもんね! ……全力で行きましょう! 皆さん!」

金剛・電「おー!!」


551: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:54:20.85 ID:fGAh6fJ70


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ザザーン……ザザーン

三日月「やはり演習場と違ってちょっと波が強いですね」

金剛「ケドケドー、見晴らしはいいし戦艦のワタシは遠慮なく撃てそうデース」

電「そうですね、ここなら鎮守府に砲撃が行くこともないのです」

提督『あー、あー、聞こえるか皆』

金剛「おー、久々の通信機デスケド、バッチリデース」

三日月「問題ないですよ、司令官」

提督「オッケー、把握した」




前提督『君達も聞こえているかい?』

神通「はい、聞こえていますよ」

夕立「バッチリっぽい!」

前提督『大丈夫そうだよ、少佐殿』

提督『あぁ、そうみたいだな』

提督『あー、君達の様子はもちろん俺達も妖精さんに中継してもらって見ている。けど、通信はお互いにしないものというルールを付けた。俺達は見ているだけの傍観者になる。お互いに全力を出して、頑張ってくれ』

三日月「私たち自身の戦いになるって事ですね」

前提督『さて、もうそろそろ演習開始の時間だけど、準備は大丈夫かな?』

金剛「ノープログレムデース」


神通「私達も大丈夫です」

提督『……よし、ならそろそろ始めようか』

前提督『了解したよ、少佐殿』


提督『……三日月、電、金剛』
前提督『神通、夕立、菊月』

提督『お前達ならきっと勝てる』
前提督『君達ならきっと勝てる』


夕立・菊月「…………」 カチャ


提督・前提督『ボコボコにしてやれ』


金剛(照準を……今のうちに合わせる) ジー


神通「…………」 ガチャン


提督・前提督『演習――』


三日月「……!!」 カチャ


提督・前提督『開始ッ!!』


554: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:46:50.64 ID:M8Ybetj90


 ドォォォォォンッ!!


電「来たっ!! 金剛さん!!」

金剛「予測通りデス! 電ナイスネー!!」

三日月(開幕からの砲撃、電ちゃんの予想通りだ。あれは、“当たらない”。私達のするべきことは)

 じっと待つこと。



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督『けど、他の二人も油断していい相手じゃないよな。金剛には神通との戦いに集中してもらいたいが、そのためにはあの二人も何とかしなきゃだもんな』

電『……その事に関して、電からの作戦提案があるのです』

提督『おぉ、聞こうか』

電『まず――あの人たちは演習が始まった瞬間何発も砲撃してくると思います。けど、距離的に届きませんので、別の目的を持って撃ってくるはずなのです。そう、水柱を作るために』

金剛『視界を少しでも塞ぐためデスネー』

電『なのです。何度か金剛さんも使ってくる手なのです。相手は軽巡と駆逐艦なのです。戦艦がいるこちらとは攻撃できる範囲が違うのです。だから、接近する必要がある』

電『だから、むしろこちらはそれを迎え撃ってやりましょう。じっと待って、水柱に紛れて近づいてきたあの人たちに、一斉射撃を仕掛けるのです。視界が塞がってるのは、相手も同じなのです。それが成功するかはまだ分かりませんが、最初にやりたいことなのです』

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ドンドンドンドンッ!! ――バシャンバシャンバシャーンッ!!

金剛「水のパワーは恐ろしいデース」

 耳にやって来る砲撃音と、それとリズムを合わせるように飛び出る水柱は神通さん達の姿を紛らわす。

三日月「…………近づいてきました」 ガチャ

金剛「イエース。結構近いデス。この距離だと、そろそろ神通の射程圏内デスネ。電、構えてますカ?」 ガチャ

電「もちろんなのです。一斉射撃の準備を」 ガチャ

 ザバアアアアアンッ!!

 水柱の距離がだいぶ近くなってくる。私達は構える。準備を始め、いつでも撃てる状態にしていた。だけど、次の瞬間、私達は目を疑った。――水面にそびえ立つ水柱の中から、突然夕立さんが飛んで現れる。

夕立「っ~~~~!! 冷たいっぽい!!」

三日月「え?」

電「へ?」

金剛「エ?」

三日月(夕立さん、何で空中に……?)

三日月「――はっ!! 皆さん!! 撃ってくだ――」


神通「反応、遅いですよ?」


三日月「!!」

 ズドオオオオオオオオオン!! ズドンッ!!


555: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:48:17.71 ID:M8Ybetj90


三日月「っ!!」 グル

 バシャーン!!

 意識を削がれた。私達が視線を変えている間に、砲撃をされたんだ。何とか回避には成功したけど、体勢は崩されてしまった。

三日月(みんなは、無事!?) キョロ

金剛「ヅッキー!! こっち見てはダメ!!」

 集中が削がれる。

三日月「――――!!」

夕立「……」 バンバンバン!!

三日月「っー!!」 ヒョイ

 バシャーンバシャン!!!!

 空を舞っている状態の夕立さんは、そのまま砲撃をしてくる。空中からの砲撃なんて、聞いたことなかった。回避はできた。しかし、ずらされた意識の切り替えが難しい。


556: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:50:41.47 ID:M8Ybetj90


 クルクルクルクル――バシャーン!!

夕立「作戦通りだけど、神通さん投げる力強すぎっぽい!! まぁ、けど着地……? 着水? ……と、とりあえず成功っぽい!!」 バァン!!

電「!!」 シュ!! バシャーン!!

電「なのです!!」チャキ

 ドンドンドンドン!!

夕立「へぇ、中々やるっぽい。避けるの結構上手だね」 シュン、ヒョイ

 バシャンバシャン!!

金剛「ファイア――!!」

 ドオオオオオオオオオオオオオンッ!!

夕立「っぽい?」 シュン――バシャーーーン!!

金剛「な!! 避けられた!?」

夕立「……単純すぎ」

三日月「ッ、えーい!!」 バンバンバン!!

夕立「……そんなの当たらないっぽい」 ヒョイ、ヒョイ

 夕立さんは私達の攻撃を簡単に避ける。

 ドォンドン!!

夕立「てか、夕立にだけターゲット絞ってて平気なの?」 ヒョイ、ヒョイ

三日月「はっ!?」

 この時私は気付く。――夕立さんは、囮だったんだと。さっきから神通さん達の砲撃が、一切ない。夕立さんも今は一切攻撃をしてこない。避けにだけ徹している。咄嗟に視線を変える。そこから見える神通さん達の距離は、近い。

菊月「よくやった、夕立。作戦通りだ」 カチャ

神通「だいぶ近づけましたね。この距離なら……」 カチャ


 私達を挟み込むように、神通さんと菊月は接近していた。次の瞬間、撃たれるだろう。距離はだいぶ近い。――今だよね、電ちゃん。


三日月「……電ちゃん!!」

電「はい!! 今です!!」

金剛「了解デースッ!!」

 ザッ!!

 私達は、一斉に動き出す。それぞれの相手に向かって。


557: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:52:46.29 ID:M8Ybetj90


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電『そこからですが、一騎打ちで戦うべきだと電は思うのです』

提督『なるほど……電がそう思う理由を教えてくれ』

電『はいなのです。神通さんとまともにこの中で相手できるのは、悔しいですが恐らく金剛さんだけなのです。先ほど司令官さんが仰っていた通り、金剛には神通との戦いに集中してもらいたいのですが、そのためにはあの二人をどうにかしなければいけません。なので、いっそのこと電と三日月ちゃんで、あの二人のどちらかと一騎打ちをしましょう。神通さんの援護をできないように、真正面から戦うのです』

電『最初の攻撃が失敗するにしろ成功するにしろ、相手が近づいてきたらこっちも近づいてあげましょう。一騎打ちで、勝利を掴むのです』

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ドォン!!

 神通さん達が私達に向かって砲撃してくる。回避するんだ。意地でもです。

三日月「……ッ!!」

 スピードは下げない。このまま全速前進をする。――夕立さんに向かって。当たって、たまるか!!

 身体を上手くずらして、砲撃を避ける。


 バシャアアアアアアアア!!

三日月「よし!!」

 スピードを下げないまま、上手く避けることができた。――そして、夕立さんの前に辿り着く。

三日月「…………」

夕立「…………」

三日月(他の皆さんは、大丈夫かな。色々と心配だけど、気にしてはいられない。――作戦通り、やるんだ)


菊月「……そうきたか」

電「途中、ちょっと予想外のことはありましたが、電達がやるべきことは変わりません」



神通「勝利の鍵であるあなたが真正面に来て、大丈夫なんですか? ……良い的ですよ?」

金剛「HAHAHA! 勝利の鍵だからこそ、私はyouと一騎打ちするんデース」

神通「この距離でしたら、戦艦の射程距離も関係ありませんよ?」

金剛「神通」

神通「…………」

金剛「ワタシ達は、ワタシ達の考えた作戦通りにやっているんデス。それぞれの、思いがあるんデス。……ワタシは、絶対に勝つ。練度なんか、関係ない。――絶対に勝ちマス!!」

神通「……良いでしょう、受けて立ちます」 ガチャ

神通「軽巡洋艦、神通。推して参ります」

金剛「ッ、ファイアー!!」 ドォォォォンッ!!


558: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:54:58.79 ID:M8Ybetj90


三日月「…………」

夕立「……三人で纏まって戦うんじゃなくて、それぞれ一対一で戦う作戦ね。確かに、あなたがここにいたんじゃ他の二人の援護はできないっぽい」

三日月「そうです。一騎打ち作戦です」

夕立「……選ぶ相手、間違えたっぽいね」

三日月「いいえ、間違っていません」

夕立「…………」

三日月「夕立さんは、昔から強かった。私よりも全然強かった……ひっそりと憧れてもいましたし、同じ駆逐艦なのにどうしてこんなに差があるんだろうって思った時期もありました」

三日月「だけど、私は……今の私はもう、決めたんです。強くなるって」

夕立「…………」 カチャ

三日月「夕立さんを超えます。ずっと一緒に過ごしてきた、あなたを超えます。訓練成績ではいつも負けてたけど、今日は、夕立さんに勝ちます」

夕立「……どういう心変わり?」

三日月「へ?」

夕立「以前のあなただったら、絶対にそんなこと言わなかった。あの電ちゃんがあなたを変えたの? ……ねぇ!!」 ギロ

三日月「……そうかも、しれません」

夕立「!! はは……へぇ、そう」

夕立(私じゃ、ダメなの? 私はあなたの心を変えられなかった。やっぱり私は友達じゃなかったの? あの子の言う通り、私は友達の間違いを正さない、被害者気取りのわからず屋なの? 約束を破って裏切ったのはあなたなのに、裏切り者は夕立の方なの?)

三日月「ゆ、夕立さん?」

夕立「なんで、なんで……なんでなんでなんでなんで!!」

夕立(裏切ったのは、三日月ちゃんじゃん!! 大切な約束だったのに……それを破って抱え込んだのは三日月ちゃんじゃん。私は、それが許せなかった。だからあなたを嫌いになった。提督さんが壊れたのも、三日月ちゃんが抱え込んだからだ。なんで一人で抱え込むんだ。……どうせ、覚えてないんでしょ? あの時の約束なんか、覚えてないんでしょ!?)

夕立「……さっさとあなたを倒して、菊月ちゃんの助けに行かなきゃ。神通さんは問題ないだろうけど、菊月ちゃんはちょっと心配」

三日月「……負けません」 カチャ

夕立「……あなたなんか……大っ嫌いッ!!」


559: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:57:36.63 ID:M8Ybetj90


 ドォンドン!!

三日月「!!」 シュ!!

夕立「そう何度も避けられると思うな!!」 バンバンバン!!

三日月(真正面からからの砲撃の嵐。これに当たったら私なんか一発大破だ。絶対に当たっちゃいけない) ザザッ!!

夕立「逃がさないっぽい!」 ザッ

三日月(よし、追いかけてきた! ……いま!!) クル

夕立「!!」

三日月(一瞬逃げるふりをして、すぐに振り向き撃つ。隙を突くんだ)

三日月「えええええええい!!」

 ドォンッ!! ――ボカァァァァァァン!!

三日月「当たった!!」

三日月(真正面から当たったんだ、多少は――)

夕立「……そんなもんなの?」 小破

三日月「!!」 ザッ

三日月(真正面から受けてあれしか与えられないの!? くっ)

 ザザッ!!

三日月「え? はや――」

夕立「つかまえた」 ガシ

三日月(まずい――!!)

夕立「ッぽい!!」 ガッ!!

三日月「ふわ!?」 グルン

 バシャアアアアアアアアン!!

三日月「あ、が……っ!!」

三日月(叩きつけられた。同じ駆逐艦なのに、ここまでパワーに差が――)

夕立「……」 カチャリ

三日月「!!」 クルン、クル   バンバンバン!!

 バシャン!! バシャン!! バシャーンッ!!

夕立「ちっ、避けられた……やっぱそのまま抑えといたまま撃った方がよかったっぽい」

三日月「はぁ、はぁ、はぁ」

 口の中がしょっぱい。身体もびちょびちょになる。それでも、避けられて良かった。私の砲撃でできる水柱とは雲泥の差だ。それくらい、威力に差があるんだろう。


560: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:58:58.17 ID:M8Ybetj90


夕立「……そんな単装砲じゃ、いくら受けたって痛くもないよ。……魚雷だって、こんな一騎打ちで当たる要素もないし」

三日月「……確かに、普通の戦い方をしていても夕立さんには勝てないかもしれませんね」

夕立「……戦い方の問題じゃないっぽい。あなたなんかに夕立は負けない!!」 バンバンバン!!

三日月「……勝ちます!!」 ヒョイ、ヒュン  バンバンバン!!

 ドンドンドンドン!!

 私も、夕立さんも、お互い避ける。撃つ。それを繰り返し続ける。また捕まれないように上手く距離を保ちながら動いているけど、決定打が無さ過ぎる。お互い攻撃は当たらないし、私の攻撃は当たっても対してダメージを当てられない。
 こっちは一発でも被弾したらおしまいだ。

三日月(勝つためには、どうしたらいいのか、考えるんだ)

 ドンドンドンドン!! ――バシャアアアアアアアアン!!

夕立「はぁ、はぁ、はぁ」

三日月「はぁ、はぁ、はぁ……げっほ」

夕立「つ……疲れてきたんじゃない? ……そろそろ、休みなよ」

三日月「ゆ、夕立さんだって……疲れてるじゃないですか」

夕立「は、はああああ!? 疲れてないし!! 全然平気っぽい!! てかあなたどんだけしぶといのよ!! 早く当たってよ!!」 バンバンバン!!

三日月「いやです!! 当たったら一発で負けちゃいます!!」 バンバンバン!!

夕立「~~~~~~!! もう、めんどくさいっぽい!! 魚雷、発射っぽい!!」 ポンポンポン!!

三日月「え!?」 ザザー!!  シュン

三日月(真正面から魚雷撃たれても、簡単に避けられるな……)

夕立「ちっ、やっぱ魚雷は今はダメっぽい。もう!!」 バンバンバン!!

 ザバンザバーンッ!!

三日月(魚雷……魚雷しか、私が勝てる方法はない!! けど、当てるためにはどうしたら――はっ!!)

 バシャンバシャンバシャーン!!

三日月(水柱……!!)

三日月「これしか、ないです!」 クイ、ドンドンドォン!!

夕立「……どっち撃ってるの?」

 バシャアアアアアアアアン!!

 夕立さんにわざと当てないように、左右に砲撃する。

 ドンドンドンドン!! バシャンバシャン!!

 そう、狭叉弾だ。


561: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:00:45.06 ID:M8Ybetj90

 水柱が夕立さんの周りにいくつかできる。

三日月(いまだ!! あれが水面に落ちる前に!!)

 私は、夕立さんに一気に近づく。夕立さんが迎え撃つように砲撃をしてくる。

 バシャン、バシャン!!

三日月(避ける、避ける、全部避ける!!)

 全神経を注ぐんだ。当たってはいけない。当たったら死ぬと思うんだ三日月!!
 全ての視線を砲撃に向ける。迫り来る弾に向ける、身体の神経を研ぎ澄ませる。できることは全てやって、避けるんだ。

三日月(避ける避ける避ける避ける!!)

 バシャアアアアアアアアン!! バシャアアアアアアアアン!!

夕立(は、はや!!)

 まるで時間がゆっくり進んでいるような感覚だ。水柱はゆっくりと落ちていく。全速発進しているはずなのに、遅く感じる。――力を振り絞る。

三日月「この距離なら!!」 キュ!!

 ブレーキをかける、魚雷を――“握りしめる”。水柱はまだ残っている!!

三日月「当たってえええええええええ!!」

 私は魚雷を、放り投げた。――手投げ魚雷。

夕立「え?」

 夕立さんは驚く、周りを見る。水柱が邪魔なのだろう。咄嗟に横へ飛ぶという判断が遅れたのだろう。ゆっくりと、魚雷は夕立さんに近づく。時間がゆっくりと進む感覚は、まだ続いている。でも、その感覚も終わりを迎える。

三日月「わわ!!」 ツル

 体勢のバランスを崩してしまい、私はつい転んでしまう。その瞬間、時間の感覚が戻る。視界の水柱は全て水面に落ちる。

 ボカアアアアアアアアアアアンッ!!

 そして、魚雷の爆発音が耳に届いた。


562: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:02:25.06 ID:M8Ybetj90


三日月「げっほ、げほ……うぅ、海水が口の中に……しょっぱい」

三日月「――はっ!! ぎょ、魚雷は!?」

 爆発と共に生まれた水飛沫の中に、夕立さんはいた。

三日月「あ、ゆ、夕立さん!!」 ザザッ

 私は気が付くと夕立さんに駆け寄っていた。

夕立「…………」 大破

三日月「ゆ、夕立さん!! 大丈夫ですか!?」 アタフタアタフタ

 服はだいぶボロボロになっていた。所々見える肌色に傷はついていないように見える。

夕立「……自分でやっといてなんでそんなに焦ってるのよ」

三日月「ご、ごめんなさい」

夕立「謝らないでよ。べつに、演習弾だから傷物にはなってないしね。……一応、これは大破扱いなんだろうけど」

 呆れ気味に夕立さんは言う。

三日月「良かった……怪我してなくて」

夕立「だからぁ、あなたがやったんでしょ? 魚雷放り投げるとか聞いたことないっぽい」

三日月「えと、普通のことやっても対応されちゃうかなと思って……夕立さんが飛んできた時みたいな感じに意外性を狙って」

夕立「あれは菊月ちゃんの作戦だから……ホント、神通さんに投げられるこっちの身になってほしいっぽい」

三日月「ふふ、ウチの姉が失礼をしました」

夕立「……っぷ、なによ、それ」 クスクス


563: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:03:24.72 ID:M8Ybetj90


三日月「……なんかこの感じ懐かしいですね」

夕立「あっ……ふ、ふんだ!」 プイ

三日月(一瞬笑ったかと思ったら、すぐにそっぽを向かれちゃった……)

三日月「とりあえず、何ともなくて良かったです」

夕立「……なんでよ、別に夕立の身体がどうなろうと知ったこっちゃないでしょあなたには」

三日月「え、そ、そんなことないですよ!」

夕立「はぁあああ? 嘘つかないでよ!!」

三日月「う、嘘じゃないです!!」

夕立「なんでよ!! あなたには関係ないでしょ!!」

三日月「か、関係なくなんかないです!!」

三日月「ゆ、夕立さんは……私の……と、友達だもんッ!!」

夕立「――え」


564: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:05:49.00 ID:M8Ybetj90


三日月「あ、えと……ごめんなさい。夕立さんはそう思ってないかもしれませんけど……私はまだ夕立さんのこと……友達だと思ってます」

夕立「……嘘つくな」

三日月「嘘じゃないです!!」

夕立「嘘つくなぁッ!!」

三日月「!!」 ビク

夕立「じゃあ……じゃあ……なんであの時……あんなこと言ったの……!!」

三日月「あんなこと……」

夕立「はん、どうせ覚えてないんでしょ?」

夕立「あなたはあの時、私達の約束をそんなの今は関係ないって言ったんだ。覚えてる? 私とあなたがした約束」

三日月「…………」

夕立「お互いを助け合うっていう約束。あなたが最初に言ったんじゃない!! 友達はお互いに助け合うものだって!! なのにあなたはあの時一人で抱え込んで、そんなの今は関係ないって言ったんだ!! 何が関係ないよ……関係ないって何よ!! 私達、友達だったんじゃないの!? 関係ないってそんなの……ないよ……!!」 ボロボロ

三日月「…………」

夕立「あなたは……私達の思い出を、約束を関係ないって言ったんだ……なんで、なんで一人で抱え込むのよ……!! あなたは裏切ったんだ!! 夕立を!! 約束だって、覚えてないんでしょ!?」

三日月「夕立さん……」

夕立「裏切り者!! 馬鹿!! アホ!! ドジマヌケクソ真面目わからず屋!!」

夕立「ひっぐ……なんで、なんで一人で抱え込むのよぉ……私に頼ってくれないのよ……!! 関係ないなんて言ったのよ……!! うぁ……ぁぁぁ……うぐ!!」 ボロボロ

夕立「……三日月ちゃんの事……大好きなのに……!! わたし、さびしいよ……!!」 ボロボロ

三日月「ッ、夕立さん!!」 ジワァ

 ギュ

三日月「ごめんなさい……ごめんね、夕立さん……!!」

三日月「全部、全部覚えてるよ。私、その事謝りたかったの。演習終わった後にする話も、その事についてだったの。後悔してた!! 謝りたかった!! ……けど、私……正面から謝る勇気、なかったの。怖かったの」

夕立「うわあああああああん!! 三日月ちゃんの馬鹿ああああああああ!!」

三日月「ごめんね……夕立さん、本当に……ごめんね……!!」




567: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:45:47.24 ID:h60+Pw5w0


<鎮守府 司令室>

前提督「……そんな……馬鹿な……夕立が、負けた?」

前提督「……こんな馬鹿なことがありえるのか!?」

提督「……三日月も努力してるんだよ。あんただって知ってるだろ」

提督(あんなに自信のなかった三日月が、あんな発言するなんてな……よく頑張ったな、三日月)

前提督「うるさい!!」

提督「……なぁ、大佐。アンタ、いつまで現実から逃げているつもりなんだ?」

前提督「……」


金剛『ファイアー!!』 ドォォォンッ!!

神通『ッ、当たりません!!』 ズドンズドン!!


提督「……死んだ人間は、もう戻って来ないんだ……。アンタだってわかってるんだろ」

 ガシ

前提督「……黙れ。君に何が分かるって言うんだ?」

提督「わからねぇよ、アンタの気持ちなんて」


電『やああああああああああ!!』 ドンドン!!

菊月『ッ!!』 バンバンバン!!


前提督「僕は現実から逃げてなんかいない。全部、アイツが悪い。事実しか言っていないよ」

提督「……ッ!!」 シュ

 バキ!!

前提督「ぐはっ……!!」 ヨロ

提督「…………」

前提督「……貴様、今殴ったのか!? 仮にも僕は君よりも階級は――」

提督「今はそんなの関係ない。ここにいるのはアンタと俺だけだ。男同士の会話だ。だから、聞けよ」

提督「……もう、現実から逃げるな!! アンタだって本当は分かってるんだって、知ってるんだ!! アンタ自身が語った過去でその事は分かってるんだよ!!」

前提督「君に何が分かるんだ!! 家族を失ったことがない君なんかに!!」

提督「俺の両親も!! あの船に乗っていたッ!!」

前提督「……え?」

提督「一年前のあの船の船長とその補佐は……俺の両親だ……」

前提督「…………」

提督「…………」


568: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:46:47.61 ID:h60+Pw5w0


前提督「……君、頭おかしいよ」

前提督「じゃあ何で君は……アイツを恨んでいないんだ!! 僕達の家族を殺したアイツを!!」

提督「三日月一人に押し付けられるわけないだろ!!」

前提督「やっぱり君はおかしいよ!! 普通じゃない!!」

提督「……俺だって、最初その話を聞いた時……動揺した……」

提督「だけど、アイツだけが悪いんじゃない……アンタ言ってたじゃねぇか……みんながそれぞれ失敗したって……」

前提督「違う。違う!! 悪いのは全部アイツなんだ!!」

提督「三日月も――アンタも他の奴らも、悪くねぇよ!!」

前提督「っ!!」

提督「悪いのは全部……この戦争だ……」

前提督「違う!! 僕の家族を殺したアイツが全部!!」

提督「――辛い思いをしてるのはアンタや俺達だけじゃねぇんだ!!!!」

提督「今、こうして俺達が話してるこの瞬間にも、きっと誰かが苦しんでる。深海棲艦に、脅かされてる。駆逐イ級にすら勝てない人類だぞ……」

提督「辛い思いをしてるのは……俺達だけじゃねぇんだ……それが、戦争なんだよ……」

前提督「……黙れ!! 黙れ!! 黙れ!!」

前提督「僕の家族は……妻は、娘は!! アイツが!!」

 ガシ

提督「押し付けるな!! 三日月に罪悪感がないとでも思ってんのか!? 自分で撃ってしまったって罪を抱えながら、全部押し付けられてんだぞ!! アンタが三日月の立場だったらどうなる!?」

提督「あの子は……俺の両親と同じで真面目過ぎるんだよ!! 一人で抱え込もうとして、結果的に一人で抱え込んでるんだ!! ――なんで本当は気付いてるアンタが、三日月の馬鹿な発言に耳を傾けて真に受けてるんだ!!」

提督「一人で抱え込むなんてこと、間違ってんだ。部下が間違った方向へ行こうとしてたら、それを正しい方向へと導いてやるのが!! 提督の役目だろうぁ!!」

前提督「黙れえええええええええええええッ!!」

提督「…………」

前提督「……僕は……!!」

提督「!!」

前提督「君ほど……強くないんだ……!!」 ポロポロ


569: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:47:39.15 ID:h60+Pw5w0


提督「…………」 パッ

 ピー!! ピー!! ピー!!

提督「!? 通信機に連絡?」 ピッ

提督「どうした!?」

レーダー妖精さん「テイトク!! チンジュフフキンカイイキニテ、シンカイセイカンガ!! コチラニセッキンチュウデス!!」

提督「!?」

提督「レーダーに反応があったのか!?」

レーダー妖精さん「ハイ!! ネツゲンタスウデス!! ソレニ、ポイント1-2カラモシンカイセイカンガコチラニセッキンチュウデス!!」

提督(な、なんでこのタイミングで!? 金剛に調査してもらった時、鎮守府近海に深海棲艦の反応はなかった……まさか今さっき生まれたのか!?)

提督「鎮守府付近海域の深海棲艦はどのくらいまで近づいてきている!?」

レーダー妖精さん「ジュップンモシナイウチニコチラニトウチャクスルトオモワレマス!! ポイント1-2カラノシンカイセイカンモ、マモナク1-1にトウチャクシマス!!」

提督(1-1……? あの子達がいる海域の近くじゃないか!!)


570: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:48:49.04 ID:h60+Pw5w0


三日月「…………夕立さん、落ち着きました?」

夕立「……うん」

三日月「……夕立さん、ごめんね……本当に」

夕立「…………」 ギュ

三日月「……なんか、本当に懐かしいですね、この感じ」

夕立「…………」 ギュー

三日月(電ちゃん達の援護に行きたいけど、そんなことできる状況じゃなさそう……)

 ピー!! ピー!! ピー!!

三日月「!?」 ビク

三日月「通信!?」

夕立「ゆ、夕立のも鳴ってるっぽい!?」

 ピッ

提督『全員!! 一旦演習は終了するんだ!!』


神通「え?」 小破

金剛「はぁ……はぁ……提督?」 中破


電「はぁ、はぁ……司令官さん、何かあったのですか?」 中破

菊月「…………」 中破


提督『直ちに戻って来るんだ!! 深海棲艦が鎮守府近海に現れこっちに向かっていると連絡が入った』

金剛「深海棲艦デス!?」

神通「まずいですね……今、鎮守府はがら空きです。すぐに戻らないと提督たちが危ないです!」

提督『しかもそれだけじゃない。君達がいる近くの海域、ポイント1-1に深海棲艦が間もなく到着する!! それもこちらに向かっ――、る!!――』 ザー、ザー

神通「!? つ、通信が……切れた」

三日月「な、なんでこのタイミングで……」

神通「皆さん!! こちらに一旦集まってください!!」


571: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:50:29.44 ID:h60+Pw5w0


 ザーザー!!

金剛「電!」

電「少し離れてしまっていたのです。あ、三日月ちゃん!」

 ザザ

三日月「ごめんなさい! 少し遅くなりました」

夕立「ごめん三日月ちゃん、肩貸してくれて……」

三日月「大丈夫です!」

菊月(!? 夕立、大破しているのか? それに三日月と会話を……)

神通「……皆さん、状況は理解していると思います。直ちに鎮守府に戻りましょう」

金剛「ケド、深海棲艦は別の方向からもやってきていマス、そちらは」

三日月「そっちには、私が向かいます!!」

電「み、三日月ちゃん?」

三日月「今は迷ってる時間はありません! 今無傷なのは現状私だけです。皆さんは鎮守府に戻ってください。私は、時間を稼ぎます!!」

電「な!?」

菊月「だ、ダメだ!!!!」

三日月「……菊月」

菊月「お前……いや、私達は今演習弾なんだぞ? その状況でどうやって時間を稼ぐんだ」

三日月「ひたすら逃げます。それに、演習弾でもトドメはさせませんが、ダメージを与えることはできる」

菊月「だ、ダメだ!! そんな危険な事!!」

三日月「今!! こうしている間にも深海棲艦は近づきて来ています!! 鎮守府に!! 迷っている時間はありません!!」

菊月「嫌だ!! だったら私も行く!! お前一人に行かせられない!!」

三日月「だ、ダメ!! 今あなた付いてこれる状態じゃないじゃない!!」

菊月「う、うるさい!! 姉の言う事を聞けぇ!!」

三日月「ッ!!」


572: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:52:01.66 ID:h60+Pw5w0


神通「菊月ちゃん、落ち着いてください」

菊月「ッ!!」

金剛「……ヅッキー……」

三日月「金剛さん……止めないでください」

金剛「……必ず、助けに行くヨ。それまで、絶対に無事でいて!! 無事じゃなかったら……とっても高い紅茶を買ってもらうからネ!!」

三日月「……はい!!」

電「…………三日月ちゃん」

三日月「電ちゃん……電ちゃんも止めないで」

電「うん、止めないのです。三日月ちゃんなら大丈夫だって、信じてますから」 ニッコリ

電「だから、無事でいてください。信じてますから」

三日月「……うん!!」

菊月「……お前ら……!!」

三日月「……菊月。私を信じて? ……私、絶対に沈まないから、安心して? ……だって、久しぶりに菊月とお話ししたいから」

菊月「!!」

三日月「あとで、謝りたいこともあるから……私、絶対に沈まない。妹を信じて?」

菊月「…………ッ、わかった……」

三日月「ありがとう、菊月」 ニコ

菊月「……私は……礼を言われる筋合いなんかない……」 ボソ

三日月「……夕立さんも、ね?」

 ガシー


573: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:53:16.76 ID:h60+Pw5w0


夕立「…………やだ。離したくない」

三日月「……夕立さん、私を信じて?」

夕立「…………」

三日月「……夕立“ちゃん”」

夕立「!!」

三日月「私、大丈夫だから。絶対に生きるから、ね? ……そうだ」 ガサゴソ

三日月「これ、夕立ちゃんに預かっていてほしいの」 スッ

夕立「……お守り?」

三日月「うん。大切な人から頂いた、私の大切な物。それ、預かってて?」

夕立「……なんで?」

三日月「あとで夕立ちゃんと話す時に、受け取りたいから。形見じゃないよ? それを受け取りたいから、私は絶対に無事でいる」

三日月「あとで、失った時間をたっぷり取り戻そう? 私、本当に馬鹿な事をしちゃったから……夕立ちゃんにも、菊月にも、神通さんにも……前の司令官にも……謝りたいから」

夕立「……うん。預かるっぽい」 スッ

三日月「ありがとう、夕立ちゃん」

神通「…………」

電「三日月ちゃん……信じてますからね」

三日月「うん、電ちゃん。ありがとう」

三日月「……それじゃ、行ってきます。鎮守府、お願いします!!」 ザッ!!

金剛「ヅッキー!! 絶対、絶対に無事でいてネー!!」

三日月「はい!!」 ザザー!!

三日月(……必ず、生き残るんだ。絶対に!!)


578: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 07:22:45.60 ID:C5b0hlDv0


ザー、ザー!!


三日月「……見えた!! ポイント1-1、間もなく到着……深海棲艦は……!!」

イ級「……」

イ級「……」

ハ級「……」

三日月(イ級二隻とハ級一隻……あと……あれは、何?)

ル級「…………」

三日月「っ!!」 ゾク

三日月(せ、戦艦……ル級?)

ル級「!!」 ン?  クル

三日月「っ、こっちに気が付いた」 キキ

イ級「…………」

イ級「…………」

ハ級「…………」

ル級「…………」

 四隻から視線を受ける。

三日月「……ハ級……懐かしい相手です……っ」

三日月(怖がるな、三日月……私がここで簡単にやられてここを通してしまったら……鎮守府に……司令官達のところに!!)

三日月「……あなた達は……絶対にここで食い止めます……!!」

 負けたら、私は……殺される、沈むだろう。絶対に嫌だ。私は、生きなきゃダメなんだ。過去の罪と向き合うために。命を奪ってしまったあの人たちの分、多くの人を救わなきゃいけない。

三日月「……負けたくありません」

 私は生き残る。

三日月「戦いなんですから!!」 カチャリ


579: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 07:47:41.16 ID:C5b0hlDv0


三日月「ええええええええい!!」 ズドンズドン!!

イ級「!!」 ドカンドカン!!

イ級「……!!」 小破

三日月(よし、演習弾でも、ダメージは与えられる!!)

ル級「!!」 カチャ

三日月「ッ――!!」 ザザッ

 ドォォォォォンッ!! ドォォォォォンッ!!

 バシャアアアアアアアアン!!

三日月「回避、できる!!」

 ドォンドン!! ドカン!! ズドォォォォォン!!

三日月「っ、っ!!」 ヒョイ、ヒョン

 耳に届く砲撃の音と、目に映る砲弾の嵐。一発も当たってはいけない。当たったら、沈む。


580: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 07:50:14.83 ID:C5b0hlDv0


三日月「えええええええええええええいッ!!!!!」 ガチャ  ズドンズドン!!

ハ級「!!」 ボォォォォォン!!

三日月「……いける。このまま、この感じを維持するんだ」

 避ける、避ける、避ける。

三日月「!! ――っ!!」 スッ!! ヒュン

 私に迫る砲弾は、私の命を刈り取る。当たったら私は死ぬ。沈む。睦月型の装甲は、紙だ。一発でも当たったら、ダメだ。
 
 ――前の私は、所詮睦月型は役立たずだと言われ、姉妹を馬鹿にされ、現実を思い知らされ、怒ってしまった。――怒る権利なんて、ないくせに。
 前の司令官は、心の底からそんなことを思っていたわけじゃない。そんな気がするんだ。昔、司令官が菊月と如月と話す時の冷たい態度を見て、私は皆に迷惑をかけているんだなって思ってしまった。――確認もせず。それが、その時だけのたまたまの光景だったかもしれないのに、私は何も確認をしなかった。その後ずっと訓練場に籠って、部屋を変え、皆と話すことを拒絶していた。

三日月「…………」 ヒョイ、ヒョン

 私は、本当に馬鹿で、弱い。結局、いつも後悔してばかりだ。――もう、後悔なんてしたくない。
 睦月型の性能も関係ない。私自身が強くなればいいんだ。
 睦月型が弱いんじゃない。睦月型は世界一だ、私が弱いんだ。――だから、私は強くなります。

三日月「あなた達は、一歩も通しません!! 睦月型10番艦、三日月が!! この三日月があなた達を食い止めますッ!!」

三日月「全員、かかってこぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!!」 カチャ  バンバンバン!!


581: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 08:07:56.49 ID:C5b0hlDv0


ル級「!!」 ザッ

 ル級が距離を詰めてくる。

三日月「ッ!!」 ドンドンドンドン!!

 私も距離を離しながら反撃をする。でも、他の深海棲艦の攻撃も避けつつだ。

三日月「くっ……!!」

イ級「イィ――――――――――!!」 ドォンドン!!

ハ級「――――!!」 ズドンズドン!!

 ザザー!! スッ

イ級「!!」 ズドンズドン!!

水柱の数々。砲撃の嵐。――全部避けろ、三日月!!

三日月「うあああああああああああああッ!!」 ヒョイ、ヒュン

ル級「……!! ――ッ!?」

 ル級が、私を困惑するような表情で見つめる。

三日月「私は、睦月型の三日月です!!」 バンバンバン!!

ル級「ッ!!!!」

 ズドォォォォォン!!

三日月(砲撃が来た――避け)

 ツルン

三日月「え?」

 視界が揺らぐ。世界が向きを変える。なんで? ――その理由はすぐにわかる。

三日月「ふあっ!!」 バシャーン!!

 私は、転んだんだ。こんな大事な時に。頭上を過ぎる砲弾が、全てを理解させる。私は転んだ。

ル級「……」 ニヤァ

三日月「――――!!」

 ドォンドォンドォンドオオオオオオンッ!!

 ル級の砲撃が、イ級たちの砲撃が、ハ級の砲撃が――私に迫る。時間がゆっくりと進む。

三日月「っ!!」

三日月(皆さん……ごめんなさい……!!)

 ヒュウウウウウウウウウウウ

三日月「っ、司令官……!!」

 バッ

三日月「――え?」

 その時見た景色は、私の目を疑わせる。――何で?

夕立「ッ!!」 スッ

三日月「夕立ちゃ――」


 ドカンドカンドカアアアアアアアアアアアアアアンッ!!


582: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 08:10:17.61 ID:C5b0hlDv0


神通『くっ、なんでル級が突然……!! これでは鎮守府に戻れません……!!』

金剛『こんな深海棲艦が突然現れるケース、初めてデース!!』

菊月『夕立!! 私から離れるんじゃないぞ!!』

夕立『…………』

電『……夕立さん?』

夕立(こ、こんなところにル級が現れるなんて……も、もしかして、三日月ちゃんのところにもル級がいたら……!!)

夕立『み、三日月ちゃん!!』 バッ

菊月『な――!? ゆ、夕立!! 待て!!』

菊月『夕立ッ!!!!』




 ――バッシャアアアアアアアアアン!!

三日月「うっ、げっほ、げほ……!!」

三日月(結構、吹き飛ばれた……頭がクラクラす――はっ!?)

三日月「ゆ、夕立ちゃんッ!!!!」

夕立「…………」

三日月「夕立ちゃん!! なんで……ゆ、夕立ちゃん!!」 バッ

夕立「……あ、あぁ……みかづき……ちゃ、ん……ぶじで……よかっ、た……」

三日月「ゆ、夕立ちゃん……ち、血が……何で大破状態で……こんな……夕立ちゃん!!」

夕立「……あはは……からだ……かってに、うごいて……た……まもれて、よかった、っぽい」

三日月「なんで……なんでぇ……!!」 ガシ

 夕立ちゃんの手を掴む。血だらけだ。全身から血の気が引く。

三日月「やだ……いや……夕立ちゃん!!」

三日月「せ、せっかく……仲直りできたのに!! なんで、なんでですかぁ!!」

夕立「……わたし、さ…………ばかだった……」

三日月「ち、ちがうよ……馬鹿なのは……わた、し……!!」

夕立「……いなづまちゃんの……いうとおり、だった……げほ、ごほ……わからずやだ、ったの……わたし……だ」

三日月「ぁぁ、やだ、やだやだやだ!! 嫌だよ夕立ちゃん!!」

夕立「……ごめんね……みかづきちゃん……!!」 ポロポロ

三日月(何が生き残るだ、何が無事でいるだ!! 肝心な時に、私は……!!)

夕立「にげてごめんね……おしつけ……て、ぇ……ごめん……ね。たすけてあげれなくて……ごめん……ぽ、い」

三日月「ひっぐ……いやだ!! 死なないでよ!! 夕立ちゃあああああん!!」

三日月「これからなのに!! や、やっと仲直りできたのに!! なんで、なんで……嫌だよ!!!!」 ガシ

夕立「……えへへ……みかづきちゃんの、て……ちっちゃくて……かわいい……っぽい……。けど、こんなちいさな……てを……わたしは、つきはなしてたんだ……!!」 ボロ、ボロ

三日月「ぁぁぁ……うぁぁぁ……っ!!」

夕立「……みかづきちゃん」

 カチャ

三日月「――――」

夕立「ごめ――」

 ドカアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!


583: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 08:13:09.07 ID:C5b0hlDv0


 バシャンバシャンバシャーン!!

三日月「が、は……げほ、げっほ!!」

三日月「――ハッ!! ゆ、夕立ちゃん!!」

三日月「――へ?」

 私は、ずっと、夕立さんの手を握っていた。震える彼女の手を、離さなかった。――今私が見ている現実は、直視したくないものだった。

三日月「あぁぁぁ……ぁぁぁぁ……!!」

 私は確かに彼女の手を握っている。確かにここにある。――私の手には、夕立ちゃんの腕だけが残っていた。

三日月「」

 夕立ちゃんの腕が徐々に、静かに、光の粒のように、海の中の藻屑のようになり……消えていく。

三日月「」

 それが、夕立ちゃんの死を現実とさせる。――夕立ちゃんは、沈んだ。

三日月「」


イ級「……」

イ級「……」

ハ級「……」

ル級「……」

三日月「」

 ピー、ピー!!


電『はっ、つ、繋がったのです!! 三日月ちゃん!! そっちに夕立ちゃんが行ったのです!! きっと、三日月ちゃんを助けに行ったのです!!』

菊月『今私達二人はもう間もなく鎮守府に到着する!! 三日月……頼む!! 今の夕立は何をするか分からない!! だから、アイツを――守ってくれ!!』

 ドンドンドンドン!!

菊月『ハッ!? い、いなづ――!! ――』 ザザ、ザー

 ザアアアアアアアアアアアア


三日月「…………」

ル級「……」 ガチャ

 ――ブチッ

三日月「……全員……あなた達……全員」



三日月「沈めてやる」


592: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:31:54.96 ID:M1A2jsa80


金剛『……電、神通、菊月。このル級はワタシに任せてくだサーイ』

電『へ?』

金剛『ル級は戦艦、ワタシも戦艦デース。相手にするのは、ワタシが最適デス』

神通『でもそれじゃ――』

金剛『早くッ!! こうしている間にも深海棲艦は鎮守府に向かっていマスッ!!』

神通『……菊月ちゃん。電さん』

電『は、はい』

菊月『……なんだ』

神通『先に鎮守府へ向かってください』

金剛『なっ!? 神通!! あなたまさか残――』

神通『違います。私は夕立ちゃんを追います』

菊月『神通さん……』

神通『金剛さん。ここはあなたにお任せします。……決着はまだ付いていないんですから、こんなところで沈んだら……許しませんよ?』

金剛『……フフ、ワタシを誰だと思っているんデスカー?』

神通『……お調子者の紅茶好きです』 ニコ

金剛『違いマース!! 金剛型の金剛デス!!』

ル級『…………』 カチャ

金剛『……さっ、ル級はもう我慢の限界の様デース。……皆、早くッ』

電『……金剛さんも信じてますから!!』 ザッ

菊月『……任せた』 ザザッ

神通『金剛さん。……ご武運を』 ザッ

 …………………
 ……………
………


金剛「はぁ、はぁ、はぁ……ゲッホ……!!」 ヨロヨロ

ル級「…………」

金剛「さすがに……演習弾だとキツイ……ワネ……」

ル級「……」 カチャ

金剛(一隻撃退したのに、お替りが来たのは……さすがに厳しい)

金剛「……ケド、負けるわけにはいかないワ……」

金剛「何隻でも……相手してやりマース!!」 ガチャ


593: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:36:48.69 ID:M1A2jsa80


 身体はすぐに動いた。痛む身体に鞭を打ちながら、駆け抜ける。

三日月「…………」 ザー

イ級「イィーーーーーーー!!」 ドォンドォン!!

三日月「…………」 ヒュン

 避ける。そんな攻撃当たってたまるか。――それに、邪魔。

三日月「…………」 ザザッ

 考える。“どうすれば相手を沈めることができるのか”を。演習弾で、どうやって沈めるかを。演習弾は、通常弾と違い普通に当たっても死ぬことはない。ただ、痛みは感じるし、ダメージは受ける。
 なら、何かしらすれば深海棲艦も沈めることはできるはずだ。――そうだ。

三日月「…………」 チラ

 魚雷を確認する。残り、5本だ。
 ――演習弾は普通に当てても意味はない。演習用の魚雷もそうだ。――普通に当てなければいいんだ。

三日月「…………」 ザッ

 接近。回避。準備。全てを淡々と行う。魚雷を手に持つ。避ける。近づく。

 ザザー!!  ドォンドン!!  ――ヒュン  ザバァァァン!!

 ザッ!!

イ級「!?」

三日月「…………」 チャキ

 気が付けばもうイ級の“目の前”だ。――さぁ、弾けてください。

三日月「――っ!!」 シュッ

 グチャ

イ級「――!? ィ――――――――ッ!!!!」

 私は握っていた魚雷を、イ級の目に迷うことなく突き刺す。
 淀んだ色の液体が飛び散る。でも、そんなのは気にしない。すぐさま手を離し、構える。

 カチャ

三日月「…………」

 バンバンッ!!

イ級「ィ――」

 ドカアアアアアアンッ!! バシャンバシャンバシャン

三日月「――ッ!! げっほ、げほ!! ……はぁ、はぁ……ち、近くだったから……ある程度こっちにも被害がでるわね……けど」

イ級「」 ブクブクブクブク

三日月「…………これならいけそうです……」 クル


594: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:37:30.32 ID:M1A2jsa80


イ級「…………?」

ハ級「……!? ……?」

ル級「…………」

三日月「……内側から弾け飛べば、沈めますよ?」 チャキ

ハ級「!!」 ドォンドォン!!

三日月「ッ!!」

 バッ!!


595: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:51:47.82 ID:M1A2jsa80


三日月(また、私は失敗してしまった)

 ドンドンドンドン!!

三日月(あんなこと言った癖に、肝心な時に……やらかしてしまった) シュン、シュッ ヒョイ

 ドオオオオオン!! ドオオオオオン!!

三日月(……夕立ちゃん……ごめんね……) ヒョイ、ヒョイ

ル級「――!? !?」

三日月(ごめんね……夕立ちゃん……ごめんね) スッ

イ級「ィ!?」

 グチャ

イ級「ィィィィィィイィィィィイイィッ!!」

三日月「……うるさいわ」 カチャ

 バァンッ!! ――ドカアアアアンッ!!  バシャンバシャン!!

三日月「ぁ、っぐ……げっほ……はぁ、はぁ……げっほ!! はぁ、はぁ……!!」 ヨロヨロ ポタ、ポタ

三日月「……残り……二隻ぃ……!!」

三日月「……あはは……こんなに早く沈められるのに……なんで……私……あの時……」

ハ級「……」 ブルブル

ハ級「ッ!!」 バッ

ル級「!?」

ル級「!!」 ドォォン!!   ドカァァァァァン!!

ハ級「!!」 バシャーン!!

三日月「……あの時のハ級と違って、根性がないわね……」

三日月「……あの時のハ級も簡単に沈んでくれれば良かったのに」

ル級「……」 ガチャ

三日月(……こんなことはただの八つ当たりだってわかってる)

三日月(けど……今の私は……望んでいる。戦いに勝つことじゃなくて……目の前の深海棲艦を……コロ……)

三日月「…………あなた……」

ル級「…………ッ」

三日月「……楽に沈めると思うなよ?」


596: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 06:15:27.19 ID:M1A2jsa80


ル級「……タカガ駆逐艦ニ!」

三日月(こいつ、話せたの……?)

ル級「貴様ノ様ナ、駆逐艦ゴトキニ!!」

ル級「何ガデキルッテ言ウンダ!!」

三日月「…………」

ル級「貴様モ!! 貴様モサッキノ奴ノ様ニ、バラバラニナルガイイ!!」 ガチャリ

 バァン!!

ル級「――ァ、アアアアアアアアアアアアッ!! 目、目ガ……!! キ、貴様ァ……!!」 中破

三日月「……戦艦だから慢心しましたね? 人型のあなたなら、演習弾でも目に当たれば痛いでしょ? ……この近さなら、私はどこでも狙える」

 バァン!

ル級「ガァ、ッハ!! アァ、……アア、ァァァァアアアア……!! イダイ……!! 目ガァ!!」 大破

三日月「……どれだけ射撃訓練したと思ってるの?」

ル級「ッ!! ……!!」

三日月「……沈めてやる」

ル級「クッ……クッソ……!!」

三日月「沈めてやる……沈めてやる……!!」

ル級「タカガ……駆逐艦ゴトキニイィィィィイイイイイ!!」

三日月「駆逐艦を……馬鹿にするなあああああああああああああッ!!!!」 カチャ

 ガシ

三日月「――へ?」

神通「…………」

三日月「神通……さん? どうしてここに……?」


597: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:51:12.21 ID:M1A2jsa80


神通「……夕立ちゃんを追って……来ました」

三日月「!!」

神通「ゆ、夕立ちゃんは……?」

三日月「…………ごめんなさい」

神通「…………」

三日月「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」

三日月「夕立ちゃん……わ、私を……守って……!!」

神通「……敵、深海棲艦は?」

三日月「……四隻中、二隻は沈めました」

神通「!?」

三日月「一隻は逃亡した際、目の前のル級に処分されました」

ル級「……ゥウ、クッソォ……!!」

神通(もう、満身創痍のル級。これを……三日月ちゃんが)

三日月「…………私のせいなんです」

三日月「夕立ちゃん……私を守って……!!」

神通「…………」

三日月「私、また……失敗しました。前は司令官の家族を……そして今度は、大切な友人」

神通「三日月ちゃん」 ギュ

ル級「ッ!!」 カチャ

神通「そこのル級、動くな」

神通「しばらくそのまま待ってろ」

ル級「ッ」 ビク


598: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:52:39.65 ID:M1A2jsa80


三日月「…………」

神通「三日月ちゃん、頑張ったんですね?」

三日月「!!」

神通「こんなにボロボロになって、血だらけになって……時間を稼いでいてくれていたんですね?」 ナデナデ

三日月「……けど……夕立ちゃんが……私のせいで!! 私のせいで!!」

神通「…………三日月ちゃん」 ギュ

神通「あなたは、私達を恨んでいないのですか?」

三日月「え?」

神通「私も……夕立ちゃんも、三日月ちゃんを……救ってあげなかった。提督があなたをいじめる時も、私は中途半端で、見守るだけで、あなたを救わなかった」

神通「すごく最低な事を聞いちゃうと思います。私は最低な艦娘だから」

神通「……三日月ちゃんはなんで、そんなことをした私達……夕立ちゃんを……恨んでいないの? 悲しむの……?」

三日月「……関係ないですよ!!」

三日月「そんなの、関係ないんです!!」

三日月「恨んでる? そんなわけないじゃないですか!! 私は、神通さんも、夕立ちゃんも……前の司令官も、大好きなんです!!」

三日月「思い出がいっぱいなんです!! けど、それを私が壊した!! だから……だから後悔してるんですよ!!」

三日月「救わなかったとか、そんなの関係……ないんです。恨むわけ……ないじゃないですか」

三日月「思い出をくれたあなた達を……!! 恨む理由なんて、ないんです!!」

神通「……三日月ちゃん……」

三日月「けど……壊しちゃうんです……私……全部、全部……!!」

三日月「嫌だ……もう、夕立ちゃんに会えないの……嫌だ……!!」

三日月「謝りたい……謝りたいよ……神通さん!! 夕立ちゃんに……もういちど……あやまりたいよぉ……!!」

三日月「うわあああああああああああんッ!! ――ああああああああああッ!!」

神通「…………」


599: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:54:24.96 ID:M1A2jsa80


神通『私は提督の御心のままに動くだけです。それが間違った事でも、私が嫌な事でも関係ありません。私は提督の命令に従うだけです』

金剛『……友人としてチューコクしマース』

金剛『そんなの、間違ってるワ』


電『神通さん。あなたの忠誠の仕方は、間違っているのです。……あなたは三日月ちゃんに優しくしてるみたいですが、それこそ自己満足なのです』

電『――優しくするんだったら、どうしてあの子がその人にいじめられている時に、助けてあげないんですか!! 守ってあげないんですか!!』

電『……あなたが守りたいのはその人なんですか? 三日月ちゃんなんですか?』



神通(……何が、提督のいい子になろうだ……)

神通(提督のいい子でもない……全部逃げていただけじゃないか……!! 何がいい子になるだ!! 近くのこんな小さな子に背負わせて……!!)

神通(……本当に、私……最低よ……)


600: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:57:11.67 ID:M1A2jsa80


三日月「ひっぐ……ひっぐ……!!」 ギュ

神通「…………っ!!」

ル級「……ハハ」

神通「……何がおかしいの?」

ル級「……クダラン。本当ニ艦娘トハクダラン存在ダ」

神通「…………」

ル級「余計ナ感情ヲ持チ、人間等ニ利用サレ、青ヲ取リ戻ソウトスル我々ノ邪魔バカリヲスル!!」

神通「…………」

ル級「……消耗品ノ癖ニ……邪魔ヲスルナ!! 愚カ者ドモメ!!」 ガチャ

神通「…………」 カチャ

 バァン!!

神通「え?」

ル級「――!?」

三日月「……え?」

ル級「キ、貴様……ナゼ……生キテ――」

 バァンッ!!

ル級「――」 ドカアアアアアアアアアン!!


三日月「……うそ……」

「嘘じゃないよ」





夕立「夕立、元気いっぱいっぽい!」



601: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 08:00:39.40 ID:M1A2jsa80


 ブクブクブクブク……

夕立(……あれ……ここは……どこ?)  キョロキョロ

夕立(……あぁ……私、沈んだのか……身体の感覚、無いや)

夕立(……海の中は青いのかと思ってたけど……暗いんだね……少し、怖いっぽい)

夕立(そういえば、三日月ちゃんから預かったお守り、持ったままだった)

夕立(…………三日月ちゃん、ごめんね)

「ネェネェ」

夕立(……何、この声?)

「アナタ、ヤリノコシタコトハアル?」

夕立(……あぁ、もしかして神様かな? 声が女の人っぽいから、女神様っぽい?)

「ヤリノコシタコトハアル?」

夕立「……いっぱいあるよ」

「フーン」

「ジャアサ、マダマダ艦娘トシテタタカエル?」

夕立「……よくわかんないっぽい。夕立、お馬鹿だから」

夕立「けど、夕立は戦うよ。皆のために、提督さんのために。……友達のために。守るために」

夕立「ハンモックを張ってでも、戦うよ」

「……アナタノ覚悟、ウケトッタヨ」

「直してあげるわ」

夕立「え?」

応急修理女神「私を持たせた提督は良い人ね。私達、結構高い“お守り”なのよ?」

応急修理女神「武器は12.7cm連装砲B型改二ね? 弾が変なのだったからちゃんとしたのにしておいたわ。さ、行ってらっしゃい」

応急修理女神「もう、極力無茶しちゃダメよ? 痛いのはあなたなんだから、ね?」 スゥゥゥゥ


602: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 08:02:06.08 ID:M1A2jsa80







夕立「……ごめん、三日月ちゃん」

夕立「お守り……無くなっちゃったみたい」 アハハ

三日月「夕立ちゃん……ゆうだち、ちゃん……?」 ヨロヨロ

夕立「っぽい!」

 ダキっ

三日月「ほ、本物だ……本当に、夕立……ちゃんだ」 ジワァ

夕立「えへへ……心配かけてごめんっぽい」

三日月「ひっぐ……!! ごめんね……あああ……うぁぁぁ……!!」

夕立「……大丈夫だよ。私、生きてるから……」 ギュ

三日月「ッ――!! ……あぅ……ぅうぅ……っ!!」 ボロ、ボロ

 ダッダッダッダ!!

 ギュ!!

夕立「っぽい!?」

神通「……夕立ちゃんの、お馬鹿!! 一人で突っ走り過ぎです!! ホントに――お馬鹿ッ!!」

夕立「じ、神通さん……」

神通「ですが……」

神通「無事で……本当に良かった……本当に……良かった……っ!!」 ポロポロ

夕立「……心配かけて、みんな……ごめんなさい」

夕立「ごめんなさい……!!」 ジワァ

 私達は、皆泣いていた。
 一緒に、泣いていた。全員で――三人で抱きしめ合いながら、泣いた。




612: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:42:33.89 ID:Zxl9eCpU0


電「……ん……ぅ……?」

電(あれ……?)

菊月「……あぁ、ようやく起きたか」

電「き、菊月さん……?」

菊月「……鎮守府に向かっていた深海棲艦から奇襲を受けたんだ」 ボタ、ボタ

電「!? き、傷が!!」

電(そうだ、電……菊月さんに助けられたんだ)

電「な、なんで電のこと……」

菊月「……身体は勝手に動くものなんだ。貴様は…………妹の大切な友人だからな」

電「…………」

菊月「……一緒にいたイ級は撃退できたんだが、あれは厳しかった……」

ヲ級「…………」

電「ヲ、ヲ級……?」

菊月「……奇襲を仕掛けて来たのはあれの空爆だ。……無事でよかった」

電「…………あ、ありがとうございました」

菊月「…………」

菊月「恐らくだが、司令官達から通信が途切れたのはこいつが原因だ。……空母だったら、直接乗り込まなくとも攻撃できる。……無事だと信じたいがな」

電「し、司令官さん……!!」

菊月「……鎮守府までもう間もなくだ。こいつを何とかするぞ」

電「……は、はい!!」

菊月「……私と協力するなんて……色々と思う事はあるかもしれない」

電「…………」

菊月「……けど、今は……協力してくれ。……頼む」

電「あ、当たり前なのです!」

菊月「……感謝する」

ヲ級「…………」 スッ

菊月「来るぞ!」

電「……はい!!」


613: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:43:40.91 ID:Zxl9eCpU0


提督「おい!! しっかりしろ!! ……大佐!!」

提督(くっそ!! ……まさか、空爆されるとは思わなかった!! 通信することに夢中になり過ぎていた……くそ!!)

提督「……どうして俺の事を助けた!!」

前提督「…………」

提督(くっそ……血が、止まらねぇ!!)

妖精さん「テ、提督!! 消化作業終ワリマシタ!!」

提督「あぁ、ありがとう!! 天井が空いたおかげで煙が残らなくて幸いだったな……通信機の方は直せそうか!?」

妖精さん「ヤ、ヤッテミマス!!」

提督「頼む!!」

妖精さん2「……コ、コレハ……モウ、厳シソウデスヨ……提督」

提督「諦めんな!! 応急手当だけでもなんとかしなければこいつはこのまま……!!」

妖精さん2「ダ、ダッテモウ……両足ガ……ソレニコノママダトマタ深海棲艦カラ空爆サレル可能性モ!!」

提督「……どこにいたってそんなのは同じだ。やれることはやろう。協力してくれ……頼む!!」

妖精さん2「……了解シマシタ」

提督「……こんなやつでも、慕ってくれている部下はいるんだ。無事を祈っている奴らが、いるんだ!!」

提督「それに、俺はまだアンタとのしたい話がたっぷりあるんだ!! だから……死ぬんじゃねぇ!!」



614: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:46:20.61 ID:Zxl9eCpU0


菊月「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

電「はぁ、はぁ、はぁ」

ヲ級「…………ドウシタノ? モウ、終ワリ?」

電(分かってはいたけれど……まったく攻撃が通らないのです)

菊月(イ級とは比べ物にならない強さだ。こっちの攻撃は通らないのに……!!)

ヲ級「……ソロソロ沈ンダ方ガ楽ダヨ?」 スッ

 ピュンピュン!!

菊月(来る!!)

 バァンバァンバァンッ!!

電(艦載機が多い……!!艦攻と艦爆の両方が来るから常に動き回りながら対空しなければいけないのです。……厳しい)

 ボカァァン!! ボカンッ!!

電(対空が成功しても、こっちの攻撃は効かない。オマケに弾も減っていくし、疲労は溜まっていくばかりなのです!)

菊月「いけぇ!!」 バァンバァン!!

 ドカンドカァァン!!

ヲ級「……避ケルノガメンドクサカッタカラ当タッテアゲテタケド……チョットムカツイテキタ」 ギロ

菊月「……クソッ」

電「…………」

電(どうすれば、どうすればいいのだろう)

菊月「……魚雷しかないだろうな。駆逐艦の必殺技の様なものだ。奴を倒すためには、魚雷しかない」

電「え?」

菊月「どうすれば奴を倒せるか考えていたのだろう? ……私も同じことを考えていた」

電「…………」

菊月「ただ、魚雷はそうそう当たってくれないだろう。だから――」

電「ふふ……!!」 プルプル

菊月「へ?」


615: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:47:09.39 ID:Zxl9eCpU0


電「ひ、必殺技って……き、菊月さんが言うとは思わなかったのです……ふふふふふ……!!」 プルプル

菊月「な!! こ、こんな時にそんなことで笑ってるんじゃない!! い、良いだろ別に!!///」

電「ご、ごめんなさいなのです……けど、ちょっと面白くて」

菊月「……くぅ、な、なんなのさいったい……!!///」

菊月「というか、貴様は私の事嫌っているのだろう!? わざわざこんな事気にして笑うんじゃない!」 プンスカ

電「……嫌ってる?」

菊月「あぁ!」

電「別に、嫌いではないのです」

菊月「は?」 ポカーン

電「菊月さんの事は、確かに許せません。けど別に、嫌いなんかじゃないです」

菊月「…………」

電「菊月さん」

電「迷っていても、何も解決しないのです」

電「……三日月ちゃんと、正面から会話してあげてください。行動するべきなのです。逃げているだけじゃ、何にも解決できないのです」

電「三日月ちゃんはきっと、行動できたから……夕立ちゃんと仲直りできたのです」

菊月「!!」

電「……菊月さんが良い人だって事は、分かりましたから」

菊月「…………」

菊月「電」

電「……はい、何ですか?」

菊月「ありがとう」

菊月「必ず、生き延びるぞ。轟沈は嫌だからな」

菊月「それに……三日月に、謝りたい。あと、一人で抱え込み過ぎだって、怒ってあげないとな。……はは……やりたいこと、たくさんだ」 ニコ

電「!! ――はいなのです!!」


616: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:47:53.15 ID:Zxl9eCpU0


ヲ級「……作戦会議ハオシマイ?」

菊月「わざわざ待ってくれるなんて余裕のある奴だな」

ヲ級「……? タカガ駆逐艦ガ二隻イタトコロデ、ドウトデモナルモノ」

ヲ級「楽ニ、楽シマセテネ?」

電「いえ、楽しませないのです。勝つのは、電達なのですから」 バッ

菊月「……駆逐艦を、甘く見るなよ!!」 バッ


617: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:48:54.97 ID:Zxl9eCpU0


 ザザー!!

三日月「ポイント1-1、そろそろ抜けます!!」

三日月(ダメだ、通信機も繋がらない。電ちゃん、菊月……金剛さんも司令官も無事でいて!!)

夕立「!! 神通さん、三日月ちゃん!! あれ!!」

 ザーザー!!



金剛「はぁ、はぁ、はぁ」

金剛「ごっほ……ごほ!!」 ヨロヨロ

ル級「…………」



三日月「!! 金剛さぁぁぁぁぁん!!」

神通「ル級が一隻……まずいです……!! 金剛さん!!」



ル級「…………」 ガチャリ

金剛(ま、まずい……身体、動かない……。クラクラもする)

金剛「……はは……動け……動きなさい金剛ッ!!」

金剛「――ッ!! ゲッホ!! ゲホ!!」 ボタ、ボタ

金剛「……ファック……」



三日月「ッー!! 神通さん!! 私を思い切り投げてください!! 夕立ちゃんを投げたときみたいに!!」

夕立「ぽい!?」

神通「……分かりました」

神通「本気で投げますから、気を付けてくださいね?」 ガシッ

三日月「はい、お願いします!!」

神通「行きます……でぇええええええええいッ!!!!」 バッ


618: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:50:00.31 ID:Zxl9eCpU0


 ブオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

三日月「――――ッ!!」 ガシ

三日月(魚雷を上手く、ル級の近くに!!)

三日月「っええぇぇぇぇぇいッ!!」 ブンッ!!

 空中で無理やり身体を動かしたからバランスが崩れ始める。感覚が変だ。どっちが上だか下だか分からなくなる。――けど、そんなの関係ない。

三日月(角度計算、着弾時間計算、風向き計算……!!) チャキ

 ――撃ち抜く。

三日月「ッッッ!! 今ッ!!」

 バァァァァンッ!!




 シュルシュルシュルシュル!!

ル級「!?」

 ――カンッ!!   ――ドカアアアアアアアアアアンッ!!

ル級「ッ――――――ァッ!?」

金剛「!?」


619: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:53:00.70 ID:Zxl9eCpU0


 バシャーン!!

三日月「いッたたぁ……ッあ、当たった!!」 バッ

 頭がくらくらする。けど、私はすぐに立ち上がる。

三日月(魚雷は、ル級の近くで爆破させることができたみたいね……目くらましできたこのチャンスに!!)

三日月「金剛さんッ!!」 ザザッ

金剛「ヅ、ヅッキー!!」

三日月「ま、間に合ってよかった、です!!」

金剛「……ごめんネ。逆に助けに来てもらっちゃっタ……」

三日月「何言ってるんですか!! 仲間なんですから、当然です!!」

金剛「ヅッキー……!!」

ル級「……ッ!!」 ギロ

三日月「…………金剛さんを傷つけた分は、しっかりと……仕返しさせていただきますからね」 ギロ

ル級「!?」

 ザッ

神通「えぇ、そうですね」

夕立「数の暴力っぽい!」

金剛「アナタ達……」

神通「……さぁ、三日月ちゃん。夕立ちゃん」

神通「久しぶりのチームプレイですが、相手はたったの一隻です。即座に撃退しますよ。……やれますね、二人とも」

三日月「はい!!」

夕立「っぽい! 今実弾なのは夕立だけだから、トドメは任せてくださいっぽい!!」

神通「えぇ、任せます。……では、行きますッ!!」

三日月・夕立「はいっ!!」


622: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:48:47.75 ID:FeJDxbnI0


電「電の本気を見るのです!!」 ブンッ!!

 キィィィィィンッ!!

ヲ級「ッ、ウッザイナァ……」

菊月「電、一旦離れろ!!」 チャキ

電「っはい!!」 バッ

菊月「全弾、持ってけぇぇぇえええええ!!」 バンバンバン!!

 ポンポンポンッ!!

菊月(イカリを武器にして接近するなんて、考えたな電)

菊月(砲撃と魚雷の同時撃ちだ……!!)

ヲ級「チッ」

電「なのです!!」 バンバン!!

ヲ級「な!?」

 バシャーンバシャーン!!

ヲ級(狭叉弾……!!)

ヲ級「本当ニ、メンドクサイ……」

電・菊月「いっけええええええええええええッ!!」

ヲ級「ッ!! ミンナ!!」

ヲ級「ワタシヲ守ッテ!!」

電「な!?」

 ピュンピュン!! バシャンバシャン!!

菊月(艦載機が海の中に!?)

ボシャンボシャアアアアアアアアアンッ!!

ヲ級「……ハァ……大切ナ艦載機ガ……」

菊月「……ははは……」

電「……めちゃくちゃなのです」

ヲ級「……メチャクチャ?」

ヲ級「アナタ達ノ方ガメチャクチャジャナイ」


623: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:49:51.84 ID:FeJDxbnI0

菊月「は……?」

ヲ級「ナンデ人間ノ味方ヲシテイルノ?」

電「え……?」

ヲ級「人間ハ、悪ダヨ」

電「あ、悪……?」

ヲ級「人間ハ全テヲ荒ラス存在」

ヲ級「人間ハ争ウ。人間ハ全テヲ汚ス」

ヲ級「人間ハ戦イノ原因ニナル」

電「!?」

ヲ級「ワタシ達ハ人間ヲ滅ボスタメニ生キテイル。アナタ達ハ人間ヲ守ルタメニ生キテイル。……私達ガ戦ウノッテ、人間ガ原因ニナッテイルジャナイ」

電「…………」

菊月「…………」

ヲ級「ネェ」

ヲ級「艦娘ハナンデ人間ノ味方ヲシテイルノ?」


624: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:50:52.59 ID:FeJDxbnI0


菊月「じゃあ、逆に聞くがなぜ貴様らは人間を襲うんだ?」

ヲ級「知ラナイ」

菊月「……ふざけ――」

ヲ級「別ニ、フザケテナンカイナイヨ」

ヲ級「本能ガ叫ブンダヨ」

ヲ級「人間ヲ殺セ、滅ボセ、海ヲ取リ返セッテ」

菊月「人類だって、海を貴様らから取り返すために戦っている」

ヲ級「戦ッテイルノハアナタ達ジャナイ」

菊月「ッ!!」

ヲ級「人ノ作ッタ普通ノ軍艦ナンテ、イ級一隻デ潰セル」

ヲ級「ダカラコソ、人類ハアナタ達ヲ生ミ出シタンダ。違ウ?」

電「……分からないのです」

ヲ級「……ホウ?」

電「電達は……艦娘なのです。電は、艦娘が何なのか、いまだによく分かっていないのです。私達は人間? それとも、兵器? ……分からないのです。きっと、それはみんな同じなのです」

菊月「…………」

電「けど、電は人間なのです」

ヲ級「……アナタ達ハ人間ジャナイ」

電「いえ、人間なのです」

ヲ級「ドウシテソンナコトガ言エル」

電「私達艦娘の事を、人間だと言ってくれる方がいるからなのです」

ヲ級「…………」

電「電は……私は、その人の言葉を信じているのです」

電「だから、私は人間なのです」

電「だから……人間として、人類を守りたいのです」


625: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:52:08.25 ID:FeJDxbnI0


菊月「電……」

ヲ級「……ハッ」

ヲ級「守リタイ? 人間ヲ? アナタノソノ今ノ感情ッテヤツモ、人間ガアナタニ刷リ込マセタモノナノカモシレナイノニ?」

電「はい」

ヲ級「……人間ハアナタ達ヲ利用シテイルヨ?」

電「それでも、構わないのです。誰かを守れるのなら、それでも、いいのです」

ヲ級「……ホラ、メチャクチャナノハアナタ達艦娘ジャナイ」

ヲ級「傷付クノハアナタ達ダ!! 人間ハソノ間何ヲシテイル? ノウノウト生キテルダケジャナイ」

ヲ級「ナゼ戦ウ? ナゼ守ル? 全テノ害悪ト化シテイル人間ナンカナゼ守ル!!」

ヲ級「“消耗品”トサレテイルアナタ達ガ、ナゼアノクズ共ヲ守ル必要ガアル!!」

電「人間が全員ひどい人達とは限らないのですッ!!」

電「色々の人がいます。ひどい人だって、たくさんいる……でも、電達が何もしなかったら、優しい人だって……死んでしまいます。電達にしかできないことなのです」

ヲ級「…………」

電「……『本音を言うと、君達を戦わせることは非常に心苦しいよ。……私達が言っていいことでは無いかもしれないが、怪我だけはしないようにな』……」

ヲ級「…………」

電「私の司令官が言ってくれた言葉なのです」

電「この言葉だけで……電は充分なのです」

電「電は、戦うのです。……全てを、守るために」

ヲ級「……メチャクチャ通リ越シテル。馬鹿ダネ、アナタ」

電「……知っているのです」

電「……菊月さん、今から言う事……聞かなかったことにしてください」

菊月「へ?」

電「……ヲ級さん」

電「電は、戦争には勝ちたいけど、命も助けたいのです」


626: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:53:41.95 ID:FeJDxbnI0


ヲ級「……ハ?」

電「電は……あまり戦いたくはないのです。……できれば助けたいのです」

電「……それが“人類の敵”である、あなた達であってもなのです」

ヲ級「……何ヲ言テイルンダアナタハ」

ヲ級「……今コウシテワタシノ邪魔ヲシテイルノニ?」

電「……はい」

ヲ級「……笑ワセルナ」

ヲ級「ドウヤッテ助ケルンダ? コノママワタシニ殺サレルカ?」

電「いえ、そういうわけにはいかないのです」

ヲ級「ッー!! アナタノ言ッテイル事ハ矛盾シテイルンダヨ!!」

電「知っているのです。電は、あなたが言うように馬鹿なのです。助ける明確な方法もいまだに見つけられていないのにこんなことを言う馬鹿なのです」

電「けど、自分の気持ちに嘘は付けないのです」

電「戦わなければ守れない。戦えばあなた達を助けられない。けど、何もしなければ誰も助けられないし、あなた達も助けられない……」

電「何もできないのが……一番つらいのです。だから、電は……強くなることを誓いました。全てを守れるように、助けられるように」

ヲ級「…………本当ニ馬鹿ダネ、アナタ」

電「……知っているのです」

菊月「…………」

ヲ級「…………」

電「……ヲ級さん、退いてください」

電「……多分、もうすぐ電の仲間が助けに来てくれる気がするのです。今は……退いてください」

ヲ級「…………ハハハ」

ヲ級「退クワケナイデショ?」

電「……ですよね。知ってたのです」 カチャ

ヲ級「構エルンダ」

電「退かないのなら……戦うしかありませんから。まだ、電は……あなたも救えるほど強くありませんし、やり方も見つけることができていません。だから今は……」

電「……あなたを倒して、皆を守るのです」

ヲ級「……ソウ」

ヲ級「デモ、モウ遅イヨ」

電「へ?」

ヲ級「タイムリミット」

 ドォォォォォォンッ!!

電「あっ」

――ドカアアアアアアアアアアンッ!!


627: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:54:57.07 ID:FeJDxbnI0


ヲ級「ガッハ……ァッ!!」

電「ッ!!」

菊月「……砲、撃……?」





金剛「……はは、命中デース……」

三日月「電ちゃん!!」

夕立「菊月ちゃんも無事っぽい!」

神通「この距離で当てるなんて、さすが戦艦ですね。……急いで彼女達の元へ向かいましょう」




電「金剛さんに……三日月ちゃん!!」

菊月「……皆、無事だったみたいだな……よかった……」

電「――!! ヲ級さん、あなた……まさか……砲撃が来るって事……」

ヲ級「……ゲホ、ゲホ!! ……サァネ。……馬鹿ナ話シテタラ避ケソビレチャッタヨ」 大破

電「……な、なんで……」

ヲ級「……ナンデアナタガソンナニ困惑シテルノ? 本当ニワケガワカラナイ艦娘ダ」

ヲ級「ゲッホ!! ゲホ!! ……アァ、コレハ助カラナイワ。艦載機モ出セナイシ、終ワッタネ」

菊月「…………」

ヲ級「ネェ、ソコノサッキカラ何モ話サナイ駆逐艦」

ヲ級「アナタハ何デ戦ウ? ナゼ人間ナンカ守ル?」

菊月「……それが私の……艦娘の……使命だからだ」

ヲ級「……マァ、ソレガ普通ノ回答ダヨネ。ヤッパオカシイヨアナタ。今マデ見タコトナイヨ、アナタミタイナ艦娘」

電「…………」

ヲ級「駆逐艦イナヅマ」

電「!!」

ヲ級「アナタノヤロウトシテルコトハ、タダノ自己満足ダヨ。タダノ綺麗事デモアル」

ヲ級「ケド……コノ不毛ナ争イヲ終ワラセルタメニハ、アナタミタイナ馬鹿ガ必要ダ。キット、必要ニナル」

電「…………」

ヲ級「……トドメヲサシテ。サスガニ、苦シクナッテキタ……至近距離デ頭ヲ撃タレタラ、満身創痍ノワタシハ多分沈メルハズ」


628: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:55:48.29 ID:FeJDxbnI0


菊月「……」 チャキ

電「菊月さん、電にやらせてください」

菊月「…………わかった」

ヲ級「……イナヅマ」

電「はい」

ヲ級「…………アナタッテ、本当ニ馬鹿ナンダネ」

電「はい」

ヲ級「…………敵ヲ倒ス時ニ泣ク奴、見タコトナイヨ。感情ガアル艦娘ッテ、メンドクサイネ本当ニ」

電「……それなら、あなただってさっき怒鳴ってたのです……あれも、感情なのです……!!」 ボロ、ボロ

ヲ級「……アァ、ソッカ……」

ヲ級「ワタシ達ニモ感情ッテ……アッタンダ」

電「…………ごめんね……!!」 チャキ

ヲ級「……本当ニ、馬鹿ナ艦娘ダ。戦場ニ出テクルタイプジャナイ……」

ヲ級「……………………今度生まれ変わった時には、あなたみたいな優しい友達がほしいな」 ニコ

電「ッ――――!!」

 バァンッ!!



629: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:57:13.49 ID:FeJDxbnI0


電「…………」

菊月「…………」

電「……菊月さん」

菊月「……なんだ?」

電「…………周りの人にこの事を話しても、別に……構わないのです」

菊月「……話す必要性がないな。それに……私は何も聞いていない」 ガシ

電「…………」

菊月「……泣くな。敵を撃って泣くなんて、相手にも、沈められた仲間たちにも失礼だ」 ナデナデ

電「……はい……」 ボロ、ボロ

菊月「…………けど、まぁ……奴はきっとお前に救われたと思う」

電「…………」

菊月「……最後に見せたヲ級の笑顔は、電にしか作ることはできない。きっと、艦娘の中で、お前にしか作ることができない笑顔だ。私には分からない気持ちだけど、お前のその気持ちは絶対に忘れてはいけないものだ」

電「……はい……」

菊月「……きっと、アイツ……深海棲艦の心を、電は助けることができたはずだ。……きっと、な……」

電「はい……はい……!!」

菊月「……戦いが苦手だろうに……よく頑張ったな……」 ナデナデ

電「……ごめんなさい……!!」 ボロボロ

菊月「……三日月達がここに来るまでに、泣き止むんだぞ」 ナデナデ


630: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:58:22.99 ID:FeJDxbnI0


 ザザー!!

三日月「電ちゃん!! 菊月!!」

金剛「ソーリー……神通。引っ張ってくれてサンキューネ」

神通「いえ、お安い御用です」

夕立「何はともあれ、全員合流できたっぽい!」

電「皆さん……」

菊月「あぁ、……全員無事で、良かった」

三日月「大丈夫!? 怪我は……当然してるよね。来るの遅くなっちゃって……ごめんなさい」

電「……いえ、大丈夫なのです。……三日月ちゃんも、皆さんも無事でよかったのです」

夕立「いやぁ……まぁ……色々あったっぽいけど、ね」 アハハ

菊月「勝手な行動をした挙句……さてはまた無茶したな貴様……」 ゴゴゴゴゴゴ

夕立「ひぃ!! ごめんなさいっぽい!!」

菊月「……まぁ、無事で良かった。説教はあとで当然するけどな」

夕立「はい……」

三日月「……電ちゃん、何かあった?」

電「へ?」

三日月「何か、元気ない……本当に、大丈夫?」

電「……はい、大丈夫なのです」 ニコ

三日月「……なら、良かったです。何かあったら、いつでも話聞くから、ね?」 ニコ

電「うん、ありがとうなのです」

神通「恐らく……先ほどのヲ級が最後の深海棲艦で間違いないでしょう。遠目からだったので、確実ではないですが、かなり接近していたよう見えました。大丈夫でした?」

菊月「……あぁ……援護、感謝する」

電「…………ありがとう、ございました」

三日月「…………」

三日月「電ちゃんっ」 ギュ

電「え?」

三日月「疲れてそうだから、鎮守府まで私がエスコートするね?」 ニコ

電「……あ、ありがとう……///」 カァァァ

金剛(恋人同士かな?)

三日月「さ、皆さん……司令官達が心配です。急いで戻りましょう」

神通「えぇ、そうしましょう」

三日月「はいっ!」

菊月「……三日月」

三日月「!! う、うん……菊月、どうしたの?」

菊月「ありがとう」

三日月「へ?」

菊月「……さ、急ごう。……先に行ってるからな」 ザザ

三日月「う、うん」

電「……ふふ」


631: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:00:33.35 ID:FeJDxbnI0


提督「通信機、直りそうにないか?」

妖精さん「モウ少シカカリソウデス……スミマセン」

提督「いや、大丈夫だよ。作業止めてしまってすまない。ありがとうな」

妖精さん「イエ」

提督(……全員、無事だろうか……)

 タッタッタッタッタッタ

提督「……ん?」

 タッタッタッタッタッタ

提督「まさか」

 タッタッタッタッタッタ!!

 バターン!!

金剛「はぁ、はぁ……て、提督ー!!」

提督「こ、金剛!! 無事だったか!!」

提督「でもお前ボロボロじゃないか!! はや――」

 ッタッタッタ!! ダキ!!

提督「こ、金剛!?」

金剛「…………た」

提督「え?」

金剛「……無事で、よかった……!!」

金剛「鎮守府に着いたら、色々な所に爆撃された跡があって……司令室にも……!!」

提督「……金剛も無事で良かった……心配してくれて、ありがとうな」 ナデナデ

金剛「……うん」

 タッタッタッタッタッタ!!

三日月「はぁ、はぁ……司令官!!」

電「こ、金剛さん……は、早いのです……」

神通「ど、どうして一番怪我しているあなたがそんなに早いんですか……」

夕立「さっきまで神通さんに引っ張られていたはずなのに……」

菊月「……愛だな」

提督「三日月!! 電!! それに皆も……無事で良かった」

神通「えぇ、あなたも無事で良かったです。あ、あの!! 提督は……」

提督「……あそこだ」 スッ

前提督「…………」

夕立「て、提督さんッ!!」 バッ

三日月「え……?」

菊月「し、司令官……」

神通「て、提督……?」 ヨロ、ヨロ

前提督「…………」

電「あ、足が……」

提督「…………俺の事、助けてくれたんだ」

神通「……提督!!」

提督「……応急処置はしたし、生きてはいる。けど、両足は……もう手遅れだった。……切断するしかなかった」


632: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:01:30.49 ID:FeJDxbnI0


夕立「ッ!!」

菊月「…………ッ」

妖精さん2「……提督ヲ責メナイデクダサイ」

夕立「……大丈夫、わかってる……」

提督「……大量の出血は、何とか止まった。だけど、頭部を強く打ったせいか……まだ目が覚めない。眠ったままなんだ」

神通「……い」

提督「…………すまなかった……っ」

前提督「…………」

神通「――先生ッ!!」


633: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:02:25.94 ID:FeJDxbnI0


神通「い、嫌です!! 私を置いてかないでください!!」

金剛「じ、神通!! 落ち着いテ!!」 ガシ

神通「いや……いやです……!! せんせい……ッ!!」

前提督「…………」

提督「……とりあえず、病棟に……移動しよう。手伝ってくれ」

三日月「司令官」

提督「三日月……?」

三日月「……司令官」 スタスタ

提督(あぁ、大佐の事か……)

 スタスタスタスタ

三日月「……司令官……!!」

神通「うっぐ……ぅう……!!」

前提督「…………」

三日月「私……まだあなたに謝り足りないんです……言いたいこと、たくさんあるんです。……お願いです……」

三日月「行かないで……!!」

前提督「…………」


634: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:04:01.20 ID:FeJDxbnI0


前提督(……ここはどこだ)

前提督(綺麗な景色だ。空気も澄んでいる。居心地がいいな)

前提督『あれ……だけど、僕は……さっきまで彼と……』

『あなた』

『パパ』

前提督『へ?』

前提督『お前達……!!』

『久しぶりね、あなた』

『パパ……会いたかった』

前提督『……そうか、僕はさっき……あの男を……くっそ、どうしてあんなことをしてしまったのか……』

『…………』

前提督『……ここは、あの世なのかい?』

『…………』

『…………』

前提督『そうか……けど、またお前達と暮らせるなら』

『ダメ』

前提督『え?』

『まだパパ……お仕事いっぱい残ってるもん。こっちに来ちゃだめー!!』

前提督『……な、なんでそんなこと言うんだよ……ほら、“ミカ”!! 久しぶりに僕と遊ぼう。……ずっと寂しい思いをさせてごめんな』

『…………』

前提督『あ、あれ……そっちに、上手くいけない……くっそ、どうしてだ!!』

『あなたがまだこっちに来ちゃダメよ……』

前提督『ど、どうしてだ!! 僕はもう、死んだのに!!』

『いえ、あなたはまだ生きいます』

前提督『え?』


635: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:05:26.41 ID:FeJDxbnI0


『見て』

神通「先生!!」

前提督『……神通』

菊月「司令官!!」

前提督『……菊月』

夕立「提督さん!!」

前提督『夕立……』

三日月「――司令官!!」

前提督『三日……月……』

『あなたは……まだ、眠ってるだけよ。生きてるの』

前提督『……じゃあ、このまま眠り続ければお前達といれるって事か』

『あ、あなた!!』

前提督『なんでそんなに拒むんだ!! 僕の事が嫌いなのか!?』

『…………』

前提督『……どうしてだよ……やっと会えたんだぞ……?』

『あなたの事は……愛してます』

前提督『じゃあ、どうして……!!』

『あなたの帰りを待っている人たちがいるのに……置いてくるの?』

前提督『!!』

『そんなの……無責任です……』

前提督『……僕は!!』

前提督『ずっと、ずっとお前達に……会いたかった』

『……私もです』

『私もだよ、パパ』

前提督『なら、いいじゃないか!! もう、このままでいいじゃないか!!』

『……ダメよ』

前提督『なんでだよ……!!』

『あの子と和解できてないから』

三日月「司令官……!!」

前提督『……アイツと、和解だって?』


636: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:06:37.71 ID:FeJDxbnI0


前提督『そんなこと、する必要はない。アイツは……お前達の事を!!』

『もう、逃げるのはやめにしましょう』

前提督『逃げてなんかいない!! お前も少佐みたいなこと言うのか!?』

前提督『……俺がアイツを憎む心は本物だ!! 憎いんだよ!! 三日月は……お前達の事を殺したんだぞ!!』

『けど、あの子は悪くないとも本当は思っているんでしょ!? そんなこと皆知っているんです!!』

前提督『……なんなんだ、どいつもこいつも』

前提督『僕は……俺は!!』

『…………』

前提督『お前達に何もしてやれなかった!!』 ボロボロ

前提督『家の事も任せっきりにしてしまったし……中々会う機会もなかった……!! 愛情を伝えることができなかった!!』

前提督『……久しぶりに、お前達に会えると思っていた……本当に、楽しみにしていたんだ……』

前提督『今までにないくらい……ミカと遊んであげようと思った……愛情を伝えようと思った……お前と一緒にいたかった!!』

『…………』

『…………』

前提督『なのに……なのに……!!』

前提督『お前達ともう会えないんだ!! そんなの……嫌だった……!!』

前提督『お前達と……会いたかった!!』

前提督『…………なんで俺は……もっと、護衛を付けなかったんだ……くっそ!!』

『……あなた』

前提督『突然やって来たんだ。恐怖が!! お前達ともう二度と会えない。言葉を交わせない……俺は……怖かったんだ……怖かったんだよ!!』

前提督『そんな時に……あいつが、自分が一番悪いって言ったんだ……そう、その通りなんだ!! あいつがお前達を撃ったんだ!! あいつが!! あいつがぁ!!』

『あなた!!』
『パパッ!!』

前提督『!!』

『私はあなたの事、愛していました』


637: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:07:33.72 ID:FeJDxbnI0


前提督『ッ!!』

『わたしも、パパの事大好きだったよ』

前提督『うっぐ……!!』

『しっかりと愛は伝わっていました』

前提督『お前……』

『一生懸命働くパパが、わたしの自慢だった。寂しかった時もあるけど、そんなのしかたないもん!!』

前提督『ミカ……!!』

『あなたは、まだここに来る人じゃないわ』

前提督『…………』

『パパを待ってる人たちがいっぱいいるんだから』

前提督『…………』


三日月「司令官!!」

三日月「ごめんなさい……!!」


前提督『……またいつか、戻って来る』

『はい、お待ちしています』

『わたしも……ずっと、待ってる』

前提督『……ありがとう、愛してるよ』

『私も、愛しています』

『わたしも!! パパの事大好きだから!!』

前提督『っ……ありがとう……またな……!!』


 スゥゥゥゥゥゥ――



638: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:09:02.01 ID:FeJDxbnI0


前提督「…………い」

三日月「……え?」

前提督「うるさいんだよ……君の声……耳……障り……だ」

三日月「し、司令官!!」 パァァァ

神通「せ、先生!!」

夕立「て、提督さああああああああん!!」 ブワ

菊月「司令官!! よかった……!!」

提督「よ、妖精さん!! 移動させる準備だ!! 病棟へ!!」

妖精さんs「リョ、了解ッ!!」

電「…………電も手伝うのです」 スッ


639: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:09:30.28 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 あれから、三日が経ちました。

 コンコンコン

三日月「司令官、三日月です」

提督「あぁ、三日月か。入っていいよ」

三日月「はい、失礼します」 ガチャ

提督「お疲れさま。時間かい?」

三日月「はい、もうすぐお昼です。“提督”の所へ行きましょう」

提督「うん、了解したよ」

三日月「……お忙しそうですね」

提督「ん、あぁ。今までにないケースで深海棲艦が出現したからね。その報告やら……鎮守府の修理申請やら……たくさんだよ」

三日月「あ、あの……何かあったら手伝いますから!」

提督「あぁ、ありがとう……」

提督「とにかく、大佐の所へ行こうか」

三日月「はいっ」

 鎮守府は、平和だ。


640: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:11:25.12 ID:FeJDxbnI0


〈病棟 病室〉

前提督「だから、味付けが微妙だって言っているんだ。日本語理解できないのかな君は?」

提督「おっ、テメー喧嘩売ってんのか? 俺が愛してやまないボルシチの俺流の味を否定するなんてな」

前提督「あぁ、なら君の味覚がおかしいだけだね。ごめんよ」

提督「本当にアンタムカつくなぁ……怪我人じゃなかったらぶっ飛ばしてたわ」

前提督「……ふん。というか、そもそも何でここで食事しているんだ。ゆっくり休めないんだが」

提督「うっせぇ。俺の鎮守府では食事は皆で一緒に取るって言うルールがあるんだ。我慢してくれ」

前提督「へぇ」

提督「聞いといて全然興味なさそうだなアンタ!?」

三日月「…………」

 司令か……提督は、怪我が治るまで私達の鎮守府にいることになった。当然――

夕立「お、美味しい……ぽい」

菊月「…………」 パクパク

電「き、菊月“ちゃん”!! それ電のおかずなのです!!」

菊月「え? あ、あぁ……すまん」

金剛「ウンウンー、育ち盛りだからもっと食べるべきデース! お替りいるー?」

菊月「…………い、いただこう」

 皆も泊まっています。

神通「……○○さん」

提督「ん? 何だ?」

神通「……こ、これの作り方あとで教えてください」

提督「ああ!! 良いよ!! はっはっはー! どうやら味覚がおかしいのはアンタだけみたいだなー? 大佐ー?」

前提督「……ん、あぁ。多分君が作ってるから微妙だと感じてしまうのかもしれないね。神通、完成したら僕に食べさせてほしい」

神通「元よりそのつもりですよ、提督」

提督「アンタ……全部返せ!! 食ったもの全部!!」

 ギャーギャー!!

三日月「…………」

 司令官と提督は、以前と同じく常に言い争いをしている。けど――

提督「――!!」 ガミガミ

前提督「……あはは」 ニコ

 前みたいなギスギスとした雰囲気はなくなっていた。


641: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:12:34.66 ID:FeJDxbnI0


 私達が抱えていた問題は、意外にも早く解決した。

菊月『三日月』
夕立『三日月ちゃん』
神通『三日月ちゃん』

神通・夕立・菊月『ごめんなさい』

三日月『……へ?』

 神通さん達が、私に謝ってきた。

三日月『あ、謝ることなんてないです!! 私が一番――』

夕立『ううん。そういう事じゃないっぽい』

菊月『……あぁ、私達は、お前から……逃げていた……』

神通『……全部、抱え込ませちゃって……ごめんなさい』

三日月『…………』

 話し合った。正面から、皆で話し合った。
 お互いの思っていた気持ちを、正直に話した。皆が、謝りっぱなしだった。――けど、それだけじゃない。



菊月『――本当に、そういう所あるよなお前は……何で誰にも相談しないんだ!』

三日月『だ、だって仕方ないじゃない!! 私のせいだって思ってたんだから!!』

 ワーワー!!

夕立『ふ、二人とも……もうその辺にしとこ――』

三日月『夕立ちゃんは静かにしてて!!』
菊月『夕立は静かにしていろ!!』

夕立『ぽ、ぽいいいいい!! ごめんなさいっぽい!!』 ビシ

神通『……ふふ』

神通『二人とも……お互いを大切に思っていたんですね』

三日月「へ?」

菊月「え?」

三日月『!!///』 カァァァァァ

菊月『ッ……///』 カァァァァァ

 久しぶりに、姉妹喧嘩ができた気がする。

三日月『菊月……ご、ごめんなさい』

菊月『……私の方こそ、熱くなりすぎてしまった。すまない』

三日月『……ぷっ』

夕立『み、三日月ちゃん?』

三日月『何か……皆謝ってばかりですね……ふふふ』

菊月『……ふふ、そうだな』

 案外全員が、勝手に思い悩んで、自己完結して、お馬鹿やっていたんだなぁって思いました。

三日月『……皆さん』

三日月『ありがとうございます』 ニコ


642: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:13:03.98 ID:FeJDxbnI0


 提督との問題は、私自身よく分かっていない。解決したのか、してないのか、よく分からない。

三日月『司令官……ごめんなさい』

前提督『…………』

前提督『三日月』

三日月『!!』

前提督『…………もう、いいから』

前提督『今は……休ませてくれ』 クル

三日月『……はい』

前提督『それと……もう僕は君の司令官じゃないんだ。呼び方は変えてくれ』

三日月『え?』

前提督『彼も困るだろう。どっちが呼ばれているんだって、混乱すると思う』

三日月『……はい』

三日月『て、提督』

前提督『……あぁ、なんだい?』

三日月『!! お疲れの所、し、失礼しました!!』 バッ

三日月『っ~~~~~!! ッ!!』

 許してもらえたとは思っていない。けど、普通に会話してくれた。
 それだけで、私は泣きそうになっていた。単純な女です、私。


643: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:14:53.10 ID:FeJDxbnI0


 ちなみに、これは私がチラッと見た光景の話です。

神通『……電さん』

電『…………』

神通『あの時は……本当にごめんなさい』

電『電の両腕を折った時のことなのです?』

神通『はい』

電『別に……いいのです』

電『あの時……あなたが止めなかったら腕が折れる以上の事になっていたでしょうし』

神通『…………』

電『菊月さんや神通さん達が三日月ちゃんと話しているところ、見たのです』

神通『……』

電『三日月ちゃん、笑っていたのです。あなた達も、笑っていたのです』

神通『……』

電『仲直りできて、良かったのです』

電『それ見てたら……電の怒りもどっか飛んで行っちゃったのです』

電『だから、この話はおしまいなのです』

神通『で、ですが!!』

電『――って言いたいところなのですが、神通さんはそれじゃあ納得できないと思います』

神通『…………』

電『なので、いくのです』

 ヒュン――バチィィィィィン!!

神通『ッ』

電『この一発で、いいのです』 ニコ

神通『……ふふ、良い平手打ちでした』

電『他の子達への分も力込めましたから、痛いのは当然なのです』

神通『なるほど、それは当然痛いですね』

電『ふふ、なのです!』 ニコ




三日月『…………』

 他の人達の問題も、大丈夫そうだ。


644: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:15:28.36 ID:FeJDxbnI0


~一週間後~


金剛「ウゥ……ウー!!」

三日月「こ、金剛さん……そろそろ機嫌治してください」

金剛「だ、だって……だって悔しいデース!!」

電「あとちょっとだったのです……」

金剛「うううううううう!! 負けたの本当に悔しいデース!!」

 私達は、改めた形という事で、前は中止になった演習を行いました。
 結果は、私達の負けだった。

夕立「神通さんがいなかったら夕立達の負けだったっぽいー」

菊月「あぁ、私達ももっと鍛えないとな」

神通「菊月ちゃんの作戦や、夕立ちゃんの援護が良かったんです。全員の勝利です」

金剛「……ちっきしょうめー!! 今度はギッタンギッタンにしてやるデース!!」

 当然、悔しかった。けど、それ以上に、楽しかった。

電「……夕立ちゃんの手投げ魚雷っていうわけの分からない攻撃さえなければ……どうやったらあんな破天荒な事できるのですか……」

夕立「え? あれ、三日月ちゃんが先に夕立にやって来た技だよ?」

電「え?」


645: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:16:12.79 ID:FeJDxbnI0


前提督「あれ? ボコボコにするんじゃなかったっけ?」

提督「うるっせぇ!! 次は……ま、負けねぇからな!!」

前提督「次……か」

提督「ん?」

前提督「少佐、次は多分……ないよ」

提督「……提督、辞めるのか」

前提督「……あぁ」

提督「やっぱ、その足が原因か……?」

前提督「まぁ、さすがにこれじゃあ不便だからね。仕方ないさ」

提督「……すまなかった」

前提督「いや、僕が勝手にやった事さ。君が気に病む事はないよ」

提督「…………」

前提督「それで、その事関して少し君に頼みたいことがあるんだ」

提督「へ?」


646: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:17:47.43 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

前提督「それじゃあ、短い間だったけど世話になったね」

提督「いや、こちらこそ世話になった。まっ、暇ができたら遊びに来いよ」

前提督「あぁ、暇ができたらね」

 提督達が帰る日がついにやってきました。

夕立「み、三日月ちゃん……」

三日月「ゆ、夕立ちゃん……そんなに悲しまないで? 永遠の分かれってわけじゃないんだから」

夕立「そうだけどやっぱりしばらく会えなくなるのは寂しいっぽい~!!」

電「三日月ちゃんの名前を出すだけで不機嫌になっていた人の発言だとは思えないのです」

菊月「触れてやるな。こいつは犬みたいなもんなんだ」

菊月「……電、三日月、金剛さん。世話になった」

電「こちらこそお世話になったのです」 ペコリ

三日月「お、お手紙書くから!」

夕立「ぽ、ぽい~……」

神通「さぁ、皆さん。そろそろ乗りますよ? 運転手を待たせています」

前提督「ははは、そうだね。それじゃ、そろそろ行くよ」

提督「あぁ」

金剛「じ、神通!! あなた本当に艦娘辞めちゃうデース!?」

神通「はい。提督……先生のお世話をするためには、それが一番手っ取り早いですから、皆とも相談した結果です」

夕立「…………」

菊月「…………」

前提督「……すまないね、神通」

神通「いえ、お気になさらず」

金剛「うぅ……」

神通「もう、戦艦なんですからいつまでもダダをこねないでください」

神通「別に軍から離れるわけじゃないですし、戦闘に出なくなるだけです。だから、いつかきっと会えますから。元気出してください」

金剛「……了解デース」

神通「それじゃあ、そろそろ皆さん乗りますよ」

 菊月、夕立ちゃんが車に乗っていく。本当に、しばらくお別れなんだなっと実感する。


647: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:18:41.63 ID:FeJDxbnI0


前提督「…………」

三日月「あっ」

 提督と目が合う。提督は、目を逸らさずじっと私を見つめていた。

前提督「……三日月」

三日月「はい、何ですか、提督」

前提督「僕は、君を色々と罵倒し続けてきた。ひどい態度を取ってきた」

前提督「僕は、君を憎んでいるから」

三日月「……はい」

電「…………」

前提督「……君が怒って僕を殴ったあの時、僕は君の姉妹まで馬鹿にした……君に最悪の気分を味わってほしかったから。最低な事を言ってしまった。その事に関しては……謝る。すまなかった」

菊月「…………」

三日月「……はい」

前提督「だけど、あの事件の事は……まだ恨んでいる。その気持ちは……変わらない。だから、今までの事は……謝らない」

三日月「いいんです、それで。当然ですから」 ニコ

前提督「……ちょっとこっちに寄ってくれ」

三日月「はい」 スタスタ

前提督「僕は謝らない」

三日月「……はい」

前提督「だけど」 スッ

三日月「え?」


648: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:19:30.70 ID:FeJDxbnI0


 ナデナデ

前提督「……新しいこの鎮守府の“一人”の艦娘として……頑張れ。応援している」 ナデナデ

三日月「…………」

前提督「……」 スッ

前提督「神通、押してくれ」

神通「はい。三日月ちゃん、お元気で」 スタスタ

 バタン!

 頭がうまく働かなかった。神通さん達が車に乗り込む。お別れの時間だ。
 けど、どうしていいか分からなかった。

提督「全員、敬礼ッ!」

 バッ!!

 敬礼することしかできなかった。
 離れていく車。夕立ちゃんが窓から顔を出して何か言っているが、聞き取れなかった。

 車が次第に見えなくなり、お別れは終わりを迎えた。

 ポンッと司令官が私の頭に手を乗せた。電ちゃんが私の手を握ってくれた。金剛さんが後ろから私をギュッと抱きしめてくれた。
 視界が、ぼやけていた。

提督「良かったな……三日月」 ナデナデ

三日月「ひっぐ……ひっぐ……っ……!!」

 しばらく皆そのままの状態でいてくれた。
 幸せな時間が、涙と共に流れていった――


649: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:21:28.07 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 あれからしばらくが経ちました。我が鎮守府も少しずつ艦娘が増えてきています。

三日月「え、えっと……! あの資料はどこだっけ……」

長門「…………」

三日月「あっ、あったわ! もう、誰ですか前の秘書官は……資料が元に戻ってないじゃないのぉ……!! あっ、北上さんって書いてある!! もう……!!」

長門「み、三日月?」

三日月「!! な、長門さん! お疲れさまです!」

長門「あ、あぁ。お疲れさまだ。大丈夫か……? 何か手伝おうか?」

三日月「いえ! 本日の秘書官はこの三日月です! 司令官は今別件で外されていますけど、私自身に任されたお仕事ですから!」

長門「……ふっ、そうか。あまり無理はするなよ」

三日月「はい! ところで長門さん、何かご用件があったのでは」

長門「あぁ、実はな――」

 ガチャ

加賀「艦隊帰投しました」

三日月「あっ、加賀さんお疲れさまです! 他の皆さんは入渠中ですか?」

加賀「えぇ。私は無傷だったので、報告しにきました。作戦は無事終了です。これ、報告書よ」

三日月「わぁ! ありがとうございます!! ……はい、確認できました。わざわざ報告書まで書いていただいて……本当にありがとうございます!!」

加賀「いえ。ついでですから。それでは」 スタスタ

長門「…………」

三日月「あ! ご、ごめんなさい長門さん!! それで、ご用件は」

長門「あぁ、実は資材の件で――」

 タッタッタッタッタッタ!!

 バターン!!

明石「提督ー! 建造終わったので報告……ってあれ?」

三日月「明石さん、お疲れ様です。司令官なら今席を外しておりますよ? 建造終了したんですか?」

明石「あぁ、三日月ちゃん! うん、そうですよー」

三日月「ありがとうございます。とりあえず、司令官が戻って来た時にそちらへ向かいますねっ」

明石「了解です!」 タッタッタ


650: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:22:21.89 ID:FeJDxbnI0


長門「…………」

三日月「ご、ごめんなさい長門さん」

長門「いや、大丈夫だ。……忙しそうだな」

三日月「し、仕方ないことですから」

長門「……えっと、だな。実は資材の計算が少し合わなくてな。それの確認について連絡に来たんだが」

三日月「え? ほ、本当ですか? しょ、少々お待ちを……今資材の確認書を……」 ドタバタ

 タッタッタッタッタッタ!!

電「み、三日月ちゃん!! た、大変なのです!!」

三日月「い、電ちゃん? どうしたの?」

電「じ、実は訓練中だったのですが……天龍さんと龍田さんが大喧嘩を始めてしまって……今必死に金剛さんがなだめているんです……が……み、三日月ちゃん?」

三日月「…………」

 ブチッ

電「!?」

三日月「この忙しい時に……あの二人は……何してるんですか」 ブツブツ

長門「み、三日月……?」

三日月「……すみません、長門さん。ちょっと、止めてきます」

長門「は、はい」

三日月「ごめんね電ちゃん……案内してもらえる?」

電「う、うん。こっちなのです」


651: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:24:03.58 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

天龍「す、ずみまぜんでした……」 ドゲザー

龍田「ごめんね~三日月ちゃん~」

三日月「いえ、今回は確実に天龍さんが原因ですから。龍田さんは次から気を付けて頂ければ結構です」 ニコ

三日月「んで、天龍さん?」

三日月「なぁに訓練中に喧嘩なんかしてるんですか?」

天龍「いや、だ、だってよぉ……」

三日月「だって、何ですか?」

三日月「何か言いたいことでも?」

天龍「……な」

三日月「な?」

天龍「な、ないです!!」

三日月「……私、色々と秘書官の作業してたんです」

天龍「……お、おう」

三日月「けど、あなたが喧嘩してるって電ちゃんが飛んできたから急いで止めに来たんです。……そしたら喧嘩の理由が……くっっっだらないことで? ……龍田さんに喧嘩を吹っ掛け? んで龍田さんもちょっとピキッと来ちゃって大喧嘩? 私それを作業中断して止めに来た?」

三日月「……これ、時間の無駄じゃないですか? ねぇ、どう思います? 天龍さん」

天龍「じ、時間の無駄……だな」

三日月「わかってるんだったら喧嘩なんか吹っ掛けずに訓練してくださいッ!!!!」

天龍「わ、わかった!! 俺が悪かったから!! 本当にごめん!!」

龍田「あらあら~」


金剛「ワーオ……天龍が近接戦闘でボッコボコにされましたネー。さすが我が鎮守府最高練度デース」

北上「駆逐艦って怖いね」

加賀「……いや、あの子が怒ると怖いだけなのでは……」

赤城「真面目でいい子ほど怒らせちゃまずいタイプですからねー」 ポリポリ

加賀「赤城さん、それは?」

赤城「おやつです」 ボーキポリポリ


652: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:24:43.50 ID:FeJDxbnI0


 スタスタスタスタ

提督「なんか騒がしいな……どうしたんだ?」

三日月「し、司令官!? お、おかえりなさいです!!」

提督「あぁ、ただいま。司令室に電話したけど長門が出てびっくりしたよ。何かあったのか?」

三日月「えと、まぁ、色々とありまして……あっ、あと……ごめんなさい。まだ秘書官の作業が途中で……」

提督「ん? あぁ、別に大丈夫だよ」

提督「とりあえず三日月、ちょうど君に用があったんだ。ちょっとついて来てくれ」 ギュ

三日月「ふぇ? あ、あの!! 司令官!?///」

提督「よし、行くぞー」 スタスタ

三日月「は、はい……って、自分で歩けますから!!///」


653: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:25:57.56 ID:FeJDxbnI0


 スタスタスタスタ

三日月「し、司令官? いったい何が……」

提督「……お前には真っ先に会ってほしい艦娘達が来ているんだ」

三日月「え?」

提督「実はな、大佐が引退するという事で、頼まれていたことがあったんだ」

提督「ある艦娘達を俺達の鎮守府に置いてくれってな」

三日月「は、はぁ」

提督「……今日はその子達の迎えに行っていたんだ。ほら、着いたぞ」

三日月「し、執務室?」

提督「開けてみるんだ。きっと、喜んでくれると思う」

三日月「は、はい」

 ガチャ

三日月「え?」

「…………普通、ノックはするものだぞ?」

「まぁ、細かいことは良いじゃない~」

三日月「菊月……? あと、如月!?」

菊月「久しぶりだな」

如月「はぁい、如月ですよ~」

提督「三日月、いつか約束したこと、覚えているか?」

提督「お前の姉妹は皆ウチの鎮守府に集めるって言う約束」

提督「その約束達成に一歩近づいたな」

菊月「…………ふっ」

如月「ふふ、夕立ちゃんダダこねてたわねぇ。夕立も連れていってぇ~って」

三日月「……ふふ、あの子らしいですね」 ニッコリ

三日月(……提督、ありがとうございます)

菊月「これから、よろしく頼む」

如月「如月と菊月、本日着任致しました」 ニッコリ

 姉妹が、ウチの鎮守府にやってきました。


654: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:26:38.39 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 それからまたまたしばらくが経ちました。
 本当に、色々な事がありました。辛いこと、楽しいこと、色々ありました。もう、たくさんありました。

 強くもなりました。練度で言うと99。これ以上はもう強くなれないみたいです。

 そして、仲間が増えました。友達もたくさんできました。

 昨日はバレンタインデーでしたけど、その日も色々とドンチャン騒ぎでした。だけど、また新しい友達ができました。

 本日は月課の私が秘書官の日です。

 司令官は、本当に優しい。昨日、色々と怪我をした私の心配をしてくれる。私は大丈夫だと答えるけれど、心配そうだ。
 本当に……優しい。
 最初から、本当に優しかった。

提督「それにしても昨日は久しぶりに泣いた三日月を見たなぁ~。懐かしい気分になったよ」

三日月「なっ!! お、思い出さないでください……恥ずかしいです」

提督「ははは、何を言ってるんだ……昔あれほど見たんだ。今さら気になんてしないさ」

三日月「……もうっ、司令官はいじわるです!」 プンスカ!

 少しいじわるな所もありますけれど

提督「ははは」 ナデナデ

三日月「……///」

 私は、この人が好き。大好き。

提督「…………ところで三日月」

三日月「はい、なんでしょう」

提督「今、自分の練度がどれだけ高いか知っているよな」

三日月「当たり前じゃないですか。もうこれ以上成長しないくらいですよ」

 でも、私はこの思いを沈める。だって、司令官に比べて私はまだまだ小さい。こんな小さな私と司令官が結ばれることなんてないと思うし、それで構わないと思うしかなかった。仕方のないことだから。
 だけど、司令官は顔を赤面させている。珍しいことだ。

提督「……じ、実はな……そのことで少し話があってな……」

三日月「?」

提督「……渡したいものがあるんだ」


655: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:28:07.24 ID:FeJDxbnI0


三日月「え?」

 司令官が、スッと小さな箱を差し出してきた。

三日月「これは……?」

提督「指輪だ」

三日月「へ!?」

提督「これを付けた艦娘は、最高練度の限界が上がるらしい」

三日月「そ、そんなのいただけませんよ! 他の人が付けた方が」

提督「三日月」

提督「お前に貰ってほしいんだ。この鎮守府で練度99なのは三日月だけだし……俺は……」

提督「お前の事が好きなんだ」

三日月「……うそ……です」

提督「嘘じゃない」

提督「俺はお前の事が……好きなんだ」

三日月「……っ!!」

三日月「嘘ですよ……だって、私、こんなに小さいんですよ? それに、性格もめんどくさいですし、変なクセっ毛です。他の子達と比べたら可愛くも……ない」

提督「お前は可愛いよ」

三日月「!!///////」 カァァァァァァ

三日月「だ、ダメですよ!! こんな小さな私とあなたじゃ、釣り合いが取れません!!」

提督「小さいとか、そんなの関係ない!!」

提督「俺は三日月だから好きなんだ。小さいとかそういうの……関係ないんだ」

三日月「…………司令官は周りから冷たい目をされてもいいんですか?」

提督「いい。世間体なんか関係ない」

三日月「……ロリコンって言われますよ?」

提督「好きなだけ言わせとけばいいよ。実際、お前が好きって時点で……ロリコンなんだろうしな。構わない」

提督「俺は、三日月の全部が好きなんだ。見かけも、性格も、全部大好きなんだ」

三日月「…………」

提督「……受け取ってくれるか? 三日月」

三日月「…………」


656: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:29:02.10 ID:FeJDxbnI0


 こんなに幸せなことがあっていいんだろうか。不安になる。

三日月「司令官、私」

 けど、自分の気持ちに嘘は付けないや。

三日月「もっともっと強くなって、みんなを助けたいんです」

三日月「でも」

三日月「一番助けたいのは……司令官」

提督「……うん」

三日月「っあ、いえなんでもないです……はい……っ……///」

提督「……俺も、お前の事一番に助けたいと思ってるよ」

三日月「!! ……は、はい……」

提督「受け取って、くれるか?」

三日月「……その前に司令官、ちょっといいですか?」

提督「ん?」

三日月「少し、しゃがんでください」

提督「……あぁ」 スッ

三日月「司令官」

三日月「ずっと、お慕いしています」 スッ

 ――――――チュ


657: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:29:52.26 ID:FeJDxbnI0


 白い世界の中に、私はいた。どこまでも続く白い世界に、私はいた。

三日月「……」

三日月『……』

 目の前にいるのは、黒い世界にいた私。景色は、もう黒くならないけど、そこに私はいる。

三日月『ねぇ、あなたはそんなに幸せになっていいの? 多くの人が死んだんだよ? 私が原因で』

三日月「うん。分かっているよ」

三日月「私だって、すごく困惑してる。良いのかなって思っちゃう」

三日月『だったら』

三日月「だけど、色々な人が私を幸せにしてくれる。一緒にいてくれる」

三日月『…………』

三日月「だから私は、幸せを感じるよ。受け取るよ」

三日月『……不幸になった人がいるのに?』

三日月「うん」

三日月「多くの人を不幸な目にあわせてしまった分、私は……色々な人を幸せにしてあげたい。受け取った幸せの分も、しっかりと……」

三日月『……そっか』

三日月『私はもう……一人じゃないんだね』

三日月「……うん」 ニッコリ

三日月「私はもう一人じゃないよ」





 ピピピ――カチ

三日月「……朝、ですね……」

三日月「……新しい朝の始まりですっ」 ノビー


658: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:30:32.74 ID:FeJDxbnI0


三日月「よいしょ……朝練の前にポストの確認っと」 パカ

三日月「あ、夕立ちゃんからだ」 ペラ

夕立『ぽい! 三日月ちゃんげんきっぽい!? 夕立もあいかわらずげんきっぽい! 菊月ちゃん達もげんきしてるかな? ちょっとだけ、さびしいっぽい~』

三日月「…………」 ペラ

夕立『それでね、おどろいてほしいんだけれど、新しい提督さんが来たの! 前の提督さんが辞めた後しばらくは色々な人が来てくれてたんだけど、本格的な提督さんが着任するのはひさしぶりっぽい!』

三日月「!? え、えぇ!?」 ペラ

夕立『前の提督さんが補佐として戻ってきて、新しい提督さんがまさかのじ――』

「――ん!」

三日月「?」

電「三日月ちゃーん!」 ヒラヒラ

三日月「あ、電ちゃん! おはようございます!」

電「はい、おはようなのですっ。電もお久しぶりに朝練付き合うのですっ。お手紙なのですか?」

三日月「うん、夕立ちゃんから」

電「あぁ、夕立ちゃんからですか! 電の事も何か書いてありましたか?」

三日月「うん、書いてあるよ。あと――」 スタスタ

電「――――!?」 スタスタ


 色々な事がある日々だけれど――

 今日も一日、頑張らないと、ですね。


                   ~おしまい~


659: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:33:53.45 ID:FeJDxbnI0

 大量更新失礼しました。最後だったので一気に書きました。
 完結にするのにすさまじい時間がかかったのと、色々と不快に思ってしまう事もあったと思います。矛盾点もありますが、お付き合いいただき本当にありがとうございました。


662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/02(木) 22:05:08.98 ID:8rI66hl80


感動した
できれば後日談を何卒オナシャス!!


663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/03(金) 00:35:08.89 ID:cNClAhy50




664: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/03(金) 06:33:24.54 ID:3rkVE+5J0

長いこと乙
面白かったよ



艦隊これくしょん -艦これ- アンソロジーコミック 横須賀鎮守府編(14) (ファミ通クリアコミックス)
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