1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:13:12 ID:Copc4sYo
男子「好きです!付き合ってください」
凛「ごめん。興味ないから」
何度目だろう。
人間関係を築くのは苦手。
口下手だし。
学校でヤンキー扱いされても訂正しない私にも問題あるよ。
ダメだね。
なんでこんな私を好きになったんだろう?
告白されるとネガティブになる。
凛「恋愛か……」
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:14:20 ID:Copc4sYo
鏡を見つめると憂鬱そうな顔がこちらを覗いてる。
代わり映えのしない日常。
つまらない。
何かを叫びたくて、何を叫べばいいのかわからない焦燥感。
凛「なにがしたいの……」
鏡の中の私は何も応えない。
街でナンパされたら着いていこうか。
冗談。
軽薄そうな男が近寄ってくる。
他人への関心なんて薄いくせに、一人でいることも許されないのが東京。
「待ち合わせ?時間空いてるなら遊ばない?」
こんな奴、相手にしても何かがかわるとも思えない。
「彼氏と待ち合わせだから」
嘘だ。
男は舌打ちして別の女の子に話しかけている。
結局女なら誰でもいいんだ。
男って最低だよ。
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:16:38 ID:Copc4sYo
私は常にテンションが低い。
いつからってことはないと思う。
物心ついたときから冷めた目で世界を見ていた。
可愛げがないと反省するときもある。
早く大人になりたいな。
自立して、一人で生きていけるような大人に。
それも叶わないかもね。
うちは自営業だし。
実家の花屋は盛況だ。
花屋と言っても雑誌にも載ったことがあるオシャレな店だよ。
結婚式場や葬儀場とも契約してる。
葬儀で使用するお花、あれが結構儲かるってお母さんも言っていた。
不況でも死者が減ることはない。
人の死で収入を得るなんて、因果な商売なのかもしれない。
単純に花を売るだけじゃ、不況のご時世やっていけないからね。
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:18:09 ID:Copc4sYo
「待った?」
目の前に現れたのは同年代の女の子。
派手系なネイルが目につく。
誰?
口には出さない。
「話を合わせて」
彼女は耳元で囁く。
視界には先ほどとは違う男の姿。
そういうことか。
「遅いよ」
彼女の手を引いて歩き出す。
「二人とも可愛いじゃん!今からカラオケいこ!」
腰に手を回そうとする男を睨みつけて牽制する。
「私たち彼氏と待ち合わせしてるから」
目を逸らさない。
「そうそう。行こっ、ハルカ。みんな待ってる」
誰がハルカだ。
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:25:30 ID:Copc4sYo
なし崩し的に二人で移動する。
逃げ込むように喫茶店に入った。
加蓮「ありがと。アイツしつこくてさ。ほんと助かったよ」
凛「気にしないで」
加蓮「アタシ北条加蓮。そっちは?」
凛「渋谷凛だけど」
加蓮「なんかおかしな出会い方だけどさ。せっかくだし友達になってよ」
凛「べつにいいけど……」
友達か。
交友関係は広く浅くしかない私。
たとえ偶然でも、友達が増えることに不都合はない。
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:26:37 ID:Copc4sYo
加蓮「アタシ、このカップル限定のジャンボパフェ一つ」
「はあ……ジャンボパフェお一つでよろしいですか……?」
店員の微妙そうな顔。
私たちがカップルかどうか、気まずくて訊けないってとこかな。
同性愛はマイノリティだもの。
加蓮「ああ、大丈夫。アタシたちカップルだから」
悪ノリしすぎだよ。
こっちを見ながら楽しそうに笑う加蓮。
凛「私はカプチーノ」
店員は再度注文を確認して戻っていった。
加蓮「カップル限定のパフェなんて初めて食べる」
凛「あの人、絶対私たちを同性愛者だと思ってるよね……」
加蓮「あはは。そうかも」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:27:55 ID:Copc4sYo
他愛もない会話で盛り上がり、予想以上に大きなパフェに驚き、二人で笑いながら「美味しい」なんて感想も最初だけで。
後半は無言。二人で懸命に胃に詰め込んだ。
もうしばらく甘いものは食べたくないかな。
店を出て、私は笑った。
こんなこと一人じゃ絶対しないし。
加蓮も笑っていた。
不思議だね。
こんなしょうもないこと一つで、生きてるって実感した。
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:28:51 ID:Copc4sYo
会話は自然と連絡先の交換に移る。
加蓮はスマホを忘れたと言って、「後で連絡する」と私のIDと番号を手帳にメモしていた。
そして、また遊ぶ約束をして別れた。
それから一週間は何事もなく過ぎていった。
その間、電話で会話した程度。
なぜか番号は公衆電話。
それでも、私にとって加蓮は特別な存在だった。
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:30:11 ID:Copc4sYo
「え?」
再会は以外な場所で。
病院には縁のない私が、家族や親戚以外の見舞いに訪れるなんて。
加蓮「……来たんだ」
バツの悪そうな顔で、こちらを一瞥してすぐに窓の外に視線を移す加蓮。
加蓮「こんな姿、見られたくなかった」
連絡は彼女の母親から。
彼女の家で、私は加蓮の境遇を知った。
加蓮は虚弱体質で、すぐに体調を崩してしまうのだと言われた。
「娘は長くは生きられないの」
加蓮のお母さんは、涙を流しながらそう語った。
「娘と仲良くしてくれて、ありがとうございます。加蓮があんなに嬉しそうに笑ったのは久しぶりなんです」
病気についてはわからなかった。
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:33:14 ID:Copc4sYo
加蓮は臓器の働きが普通の人より弱いんだって。
肝臓の機能が弱ると、疲れが取れないとか。
長々と聞かされても、私には専門的なことはわからない。
重い病気とは無縁だったから。
友達が普通の人生を送れないと聞かされて、私は涙した。
同情からじゃない。
毎日がつまらないと嘆いていた私と、毎日を死の恐怖がつきまとう加蓮。
私は自分の境遇がいかに恵まれているかを知った。
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:33:58 ID:Copc4sYo
病室で加蓮と二人きり。
加蓮はこちらを見ようとしない。
凛「りんご……食べる?」
加蓮「……いらない」
凛「何か欲しいものある?」
加蓮「……ハンバーガー」
不貞腐れた様子の加蓮。
加蓮と同じ学校の生徒なら、彼女の境遇を知っていて当然だったのだろう。
入院するほどだ。
彼女にとって偶然出会った私は、対等に向き合える数少ない友達だったのかもしれない。
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:35:08 ID:Copc4sYo
加蓮「私さ。アイドルになりたいって、ずっと思ってたんだ」
凛「うん」
加蓮「小さい頃から入院続きでね。こんな何もないとこじゃん」
加蓮「あの頃はテレビくらいしかなかったから……」
加蓮「毎日ムカついてた。なんで私だけって。世界が憎く見えて仕方なかった」
凛「……そう」
言葉が見つからない。
こんなとき、気の利いたことが言えない自分が嫌い。
加蓮「テレビを見ててね。アイドルが踊ってたんだけど。それが私には凄く輝いて見えたんだぁ」
加蓮「仕事だから嫌々踊ってるだけかも、ってナーバスに思うこともあるけど。小さい頃は憧れたなぁ。今でも憧れてるのかもね……」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:36:09 ID:Copc4sYo
何気ない会話。
なぜ加蓮がそんな話をしたのかはわからない。
無意識にしただけかも。
加蓮「手術すれば普通に生きられるかもしれないって、医者が言ってたの」
凛「うん」
私は相槌を打つことしかできない。
彼女は必死に伝えようとしてる。
加蓮「でも、もし失敗したら……私は死ぬって……」
私は加蓮を抱きしめていた。
加蓮「知ってるんだ。手術しなくても……あと数年しか……私は生きられないって……」
偶然一度会っただけの女の子なのに……。
どうしてこんなに辛いのかな?
私は泣いた。
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:37:37 ID:Copc4sYo
加蓮「こんなに親身になってくれた人……家族以外いなかったよ……」
加蓮「一度……遊んだだけなのにね」
加蓮「ありがとう……私なんかのために泣いてくれて」
凛「……私には手術しろなんて言えない。加蓮には生きてほしいけど……」
加蓮「……それでいいんだよ」
凛「よくない」
加蓮「運命……だね。たった一日だけ許された外出でさ……初めて親友ができたんだ……」
加蓮「凛にだけは知られたくなかったけど……それでも、会えて嬉しいよ」
凛「私も」
加蓮「ごめんね。スマホ、持ってないんだ……。ずっと病院生活だから」
気づいてたよ。
凛「いいよ。親友でしょ?」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:40:42 ID:Copc4sYo
アイドルに憧れる……か。
それが北条加蓮についての唯一の情報。
私に出来ることなんてあるのかな?
それから数日後、私にとっての転機が訪れた。
「アイドルに興味ありませんか?」
第一印象は真面目そうな人。
詐欺じゃないよね?
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:41:39 ID:Copc4sYo
凛「興味な……いこともないかな」
二人で以前の喫茶店に足を運ぶ。
許しをもらって席を外す。
化粧室で貰った名刺から事務所をググる。
詐欺ではないようだ。
凛「大手だね」
大企業と言っていい。
新設された芸能プロダクションはまだ有名とは言えないが。
何食わぬ顔で席に戻り、男の説明を聞く。
私と他二人、事務所の第一号ユニットとして売り出すという話。
ニュージェネ計画だってさ。
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:42:21 ID:Copc4sYo
そのとき、私は別のことを考えてた。
事務所に迷惑をかけるかもしれない計画を。
それでもやるの?
私の中の罪悪感が告げる。
やるよ。
親友を救えるかもしれないんだ。
男のスカウトを快諾する。
この人がプロデュースもしてくれるらしい。
「ふーん、アンタが私のプロデューサー?まあ、悪くないかな……」
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:47:18 ID:Copc4sYo
私は必死だった。
ダンスレッスンにボーカルレッスン。
次々とレッスンを受け続ける。
素人の私が、いきなりアイドルになんてなれるわけがない。
レッスン地獄だ。
それでも弱音は吐けない。
やるべきことは全力でこなした。
前だけを見ていた。
プロデューサーは、そんな私を評価してくれてるようで、よく差し入れをくれた。
彼は私の計画に必要なパートナー。
未央「しぶりんは真面目だなぁ」
卯月「凛ちゃんは努力家ですから」
そして彼女たちは私の相棒。
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:48:23 ID:Copc4sYo
私の姿に感化されたのか、通常よりハードなレッスンにも付き合ってくれている。
血の滲むような努力の結果、私たちのデビューは予想より早く決まったそうだ。
CDデビューは、私が一番だった。
ソロ曲、Never say never
その後も順調に卯月と未央のCDデビューが決まり、私たちは公の場でユニットを結成した。
人気カリスマモデルの城ヶ崎美嘉が、ニュージェネのファンだと雑誌のインタビューで口にしたのを皮切りに、私たちの想像以上のスピードで人気は急上昇。
ニュージェネは一躍話題のアイドルとしてテレビで売り出された。
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:49:15 ID:Copc4sYo
加蓮のお母さんに連絡を取る。
加蓮と一緒に見てほしい番組があります。
凛「加蓮、間に合ったよ」
今、ニュージェネは注目のアイドル。
卯月、未央、巻き込んでごめん。
でも、これが私のアイドルになった理由だから。
国民的音楽番組の生放送がはじまる。
司会がニュージェネの紹介をして、私たちはステージに向かう。
カメラが私たちを映している。
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:50:37 ID:Copc4sYo
凛「歌う前に、聞いてほしいことがあります」
スタジオがざわつく。
予定にはない言葉。
あとで非常識だって言われるよね。
これは渋谷凛のテロだから。
凛「加蓮、見てくれてるかな?」
凛「私には親友がいます。そして彼女は今、病に苦しんでいます」
凛「手術をしなければ助からない。でも、手術をして失敗しても彼女は助からない。その死の恐怖を理解してあげることは、私にはできません」
凛「今、身勝手にもこの場を借りて喋ってます。皆さんに御迷惑をかけていることを承知で、です」
凛「なぜ、今じゃなきゃいけないか」
22: 上条さん 2016/07/14(木) 01:52:42 ID:Copc4sYo
息を吐く。
私はカメラに向かって叫ぶ。
凛「加蓮!!私やったよ!?努力だけで、ここまでこれた!加蓮が憧れた、アイドルに!」
憧れのアイドルなら。
届くかもしれない。
凛「諦めなければ叶うんだ!諦めたら、もうチャンスはないんだよ!?」
凛「選ぶのは確かに加蓮だよ。でも、私は加蓮に生きてほしい!」
凛「手術してほしいなんて、私のワガママだ。あの時は言えなかった。言えるわけない」
凛「私の身勝手な願いのために。病じゃない……私のために死んでくれなんて!」
凛「もし手術が失敗したら、私を恨んでくれていい。呪ったっていい!それでも……ずっと墓参りに行くから……一人にしないから……」
お願いだから
凛「最後まで、生きることを諦めないで」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:57:12 ID:Copc4sYo
誰も言葉を発しない。
場は静寂に包まれていた。
最初に口を開いたのは卯月だ。
卯月「私には何のことだかわかりません。凛ちゃんが何を考えていたのかも」
未央「でも、しぶりんは常に全力だった」
卯月「はい。何か別の思惑があったんだとしても、凛ちゃんの努力は私が保証します。凛ちゃんの……仲間として」
未央「これはあとで説教かなー」
司会「確かに褒められた行動じゃないね。非常識だ。どんな理由があっても、我々はプロなんだからさ」
司会「……それでも、誰かのために本気で行動できる彼女を、私は怒れないな」
司会「友達を助けたい、か。友達の名前は?」
凛「北条……加蓮です」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:58:18 ID:Copc4sYo
司会「北条さん。私もね、長い間司会をしてきましたが、誰かのために生放送でこんなバカやった子、他に知りませんよ」
司会「あーた、愛されてますねぇ」
凛「田森さん……ごめんなさい」
司会「若さって偉大だなぁ。なーに、貴重な経験ですよ」
司会「北条さん。夢を見ることは逃げじゃない。それは生きる力になるんですよ?いつか……」
司会「いつか、北条さんがここに立つ日がくるかもしれない。それが私は楽しみだ」
司会「もちろん、彼女と一緒に」
視線は私に。
司会「では歌っていただきましょう。ニュージェネで…………」
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 01:59:30 ID:Copc4sYo
生放送が終わる。
田モさんの計らいかはわからない。
私が局から責められることはなかった。
プロデューサーには怒られたけどね。
当然だよ。
卯月と未央には土下座した。
最初からそのつもりだったし。
二人は加蓮を勇気づけるために利用していただけだもの。
卯月と未央は笑って許してくれた。
利用する存在から、本当の意味で仲間として認めることになるなんてね。
私はクビを覚悟していた。
プロ意識もなにも、不器用な私が加蓮を勇気づけるには、この方法しか思いつかなかったわけで。
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:01:42 ID:Copc4sYo
私の人生は偶然の連続だ。
加蓮との出会い。
プロデューサーとの出会い。
美嘉のインタビュー。
アイドルになるつもりのなかった私が、今この瞬間本物のアイドルになっていた。
幸い、テレビ局への苦情はなかったらしい。
逆に「視聴率良かったよ!」と言われて複雑な心境だ。
そして、どうしてかはわからないが、ニュージェネの人気が爆発的に上がっているそうだ。
それも、私と、なぜか一般人の加蓮の人気が。
「怪我の功名だな」とプロデューサーは苦笑い。
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:04:20 ID:Copc4sYo
卯月「私も会ってみたいです」
未央「お見舞いに行こうよ、しぶりん」
凛「今度ね」
今はただ、祈るしかない。
あとは加蓮が決めることだから。
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:07:28 ID:Copc4sYo
後日、加蓮のお母さんから連絡があった。
「娘が手術を決断してくれました。本当に感謝の言葉もありません」
「渋谷さんと出会えて良かった。貴女は、私たちと娘の誇りです」
届いたんだ。
愛犬ハナコの頭を撫でながら、私は一筋の涙を流した。
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:09:04 ID:Copc4sYo
あれから3ヶ月。
私はシンデレラガールにも選ばれ、トップアイドルとして忙しい毎日を過ごしている。
卯月と未央とはすっかり打ち解け、互いになくてはならない存在になっていた。
凛「行くよ、卯月」
卯月「はい!凛ちゃん!」
未央「おーっと、未央ちゃんもいるからねー!」
ステージを駆け回る。
客席に見覚えのある少女。
……仕返しかな。
サプライズにもほどがあるよ。
と、次の瞬間
最前列で元気にサイリウムを振る加蓮の姿が!
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:12:02 ID:Copc4sYo
加蓮に向かってウインク。
気づいた加蓮も投げキッスを飛ばしてくる。
未央「おやっ?あれは……」
卯月「加蓮ちゃん!」
卯月の一言で客席は騒然。
ニュージェネのファンで加蓮の名を知らぬ者はいない。
あのときの放送は、ファンの誰かが無断で動画サイトにあげてしまい、ネットの海で永遠となった。
当然、凛による手術報告も。
一斉に会場の視線が加蓮に集中する。
加蓮「あちゃー……」
加蓮は頭を抱えていた。
注目され、恥ずかしそうに周囲に頭を下げる。
加蓮「ど、どうも……」
「北条加蓮だ!」
「本物だ!」
卯月「ある意味既にアイドルですよね」
呑気に微笑む卯月。
いや、卯月のせいだからね。
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:13:57 ID:Copc4sYo
未央「バレちゃあ、しょうがない!特別ゲストの北条加蓮さんだぁ!」
拍手が鳴り止まない。
加蓮「えと、私生きてます。手術は成功しました!凛と、皆さんのおかげです!」
歓声が響く。
私と加蓮は親友だ。
でもファンの間では、二人が百合カップルとして伝説となっていることを知っている。
訂正しても無駄だったし。
「凛ちゃんに彼氏はいない!だって加蓮ちゃんがいるから!」と、ドヤ顔で語るファンの姿を私は忘れないだろう。
どうしてこうなった。
反対に百合営業と貶す人たちもいる。その人たちのコメントを読むと、なぜか安心する。
加蓮「凛!愛してるよ!」
凛「バカやろー!」
卯月が失笑しているのを、私は見逃したりしない。
未央は全力で煽ってる。
「しぶりんの正妻がきたところで」とかドヤ顔で語ってた。
あとで復讐しよう。ふふっ。
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:19:32 ID:Copc4sYo
出会いが偶然で、私の歩む道も偶然で成り立っているのだとしたら
凛「運命、かな」
何か一つ欠けていたら、未来は変わっていたかもしれない。
若気の至りの、あの生放送ジャックも。
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:20:51 ID:Copc4sYo
夢へ続く扉を
勇気と希望で
ぐっとぐっと
開いてみせるよ
あの星に誓おう
LOVE LAIKAの歌声
美波とアーニャがこちらに手を振る。
私はありったけの笑顔を返す。
かけがえのない仲間たち。
ありがとう。
悩んでいるたくさんの人たちに勇気を与えたい。
アイドルってきっとそういう存在なんだ。
加蓮乱入というアクシデントはあったものの、ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:22:23 ID:Copc4sYo
モバP「新しく仲間になった北条加蓮だ」
聞いてないし。
なぜか事務所に親友がやってきた。
モバP「新人だが知名度は凛並みに高いからな」
大人の世界は汚いんだよ?
加蓮「よろしくね、凛センパイ」
封印したい黒歴史は数知れず、それでもまずは、加蓮の生還を喜ぶとしよう。
凛「手加減しないよ、覚悟して」
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:23:28 ID:Copc4sYo
少しだけ時は流れ
奈緒「あたしの存在ってなんだろう」
加蓮「突然どうしたの?」
奈緒「凛と加蓮は伝説コンビだよな?」
凛「恥ずかしいからやめて」
加蓮「照れてる凛かわいー」
凛「照れてないんだけど……」
奈緒「聞いて?まずは聞いて?」
加蓮「うん?」
奈緒「あたしってトライアドプリムスのメンバーだけどさ、二人みたいなエピソードないからさ」
加蓮「羨ましいんだー。奈緒は可愛いなー」
凛「奈緒は可愛いよ」
奈緒「からかうの禁止!」
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:24:30 ID:Copc4sYo
加蓮「いやほら、私と凛はクール属性でしょ?奈緒みたいなキュート属性がいてくれなきゃバランス悪いし」
奈緒「あたしはクール属性だ!」
凛「ということにしたい奈緒であった」
奈緒「え?なにその目……あたしがおかしいのか?」
凛「うん」
加蓮「うん」
奈緒「あたしクール属性だろ?」
加蓮「え?」
凛「は?」
奈緒「いやいやいや!」
凛「ふふっ」
加蓮「奈緒はさ」
「「癒し属性!」」
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:28:06 ID:Copc4sYo
私たちの夢は終わらない。
応援してくれる人がいる限り、私たちアイドルは永遠だ。
夢はカタチを変え、生き続ける。
いつか老いに敗れ、私たちが命落としたとしても、神にだって夢は殺せない。
人がある限り
人から人へ
夢は語り継がれる。
だから私は今日も回し続ける。
ガチャという希望の未来を。
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/14(木) 02:28:42 ID:Copc4sYo
お し ま い
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