1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:49:27.74 ID:qeE8tb/c0
明けましておめでとう、そして誕生日おめでとう
私がお祝いされるときは、いつもこの言葉です。友達にも、家族にだって。
新たな年の始まりという大きな節目、最初の挨拶ですからね。新年のお祝いが先なのは当然です。
実家も忙しくて、ゆっくりお祝いされた記憶もあまりありません。
小さい頃は寂しさもありましたけど、これは仕方ないことなんだって。いつの間にかそう思えるようになりました。
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:50:45.53 ID:qeE8tb/c0
【大晦日の事務所】
モバP(以下P)「……ふぅ」カタカタカタ
ちひろ「まだかかりますか?」
P「えぇ、年越しまでにはまとまりそうですが」
ちひろ「元日もお仕事ですから、無理しないでくださいね」
P「この業界に正月休みはない、もう慣れっこですよ」
ちひろ「特番やニューイヤーイベントも多いですからね」
P「忙しいのはいいことです。ちひろさんは終わりました?」
ちひろ「はい、私の分は。なにかお手伝いできることありますか?」
P「いいですよ。いまからでもゆっくり年越ししてください」
ちひろ「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えますね」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:52:49.93 ID:qeE8tb/c0
P「外まで送りますよ」
ちひろ「あら、優しいですね」
P「座りっぱなしで体動かしたいので」
ちひろ「つまり私はついでですか」
P「あーそういうわけでは……」
ちひろ「正直な所もプロデューサーさんらしいですよ」
P「精一杯エスコートさせていただきます」
ちひろ「お願いします。さ、行きましょうか」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:53:51.65 ID:qeE8tb/c0
P「あれ、レッスンルームに明かりが……予定ないですよね?」
ちひろ「はい。トレーナーの皆さんも、もうお休みですから」
P「じゃあ誰が?」ガチャ
茄子「5,6,7,8……はい止まってください」
歌鈴「はぁはぁ……や、やっぱり最後のステップで遅れちゃいますね」
P「茄子に歌鈴じゃないか」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:55:24.81 ID:qeE8tb/c0
茄子「Pさん、それにちひろさんも」
歌鈴「おつかれ様です!」
ちひろ「自主レッスンですか? 大晦日くらいお休みしてもいいんじゃ」
歌鈴「実家にいたころはお手伝いだったので、ゆっくりしてるのが落ち着かなくて」
茄子「年明けすぐにニューイヤーライブもありますし、せっかくですから私も歌鈴ちゃんと練習しようかなって」
P「自主レッスンは良い事だが、あまり遅くなり過ぎないようにな」
歌鈴「ふぇ……え、もうこんな時間!」
茄子「もう日も落ちてる時間ですね。気が付きませんでした」
P「その様子じゃ結構長い事やってたのか」
ちひろ「私はもう帰るところなので、よければ送っていきますよ?」
茄子「Pさんはまだお帰りにならないのですか?」
P「俺はもう少し仕事してから帰るよ」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:57:29.58 ID:qeE8tb/c0
歌鈴「そうですか……なら私も、もう少しだけ残りますっ」
P「む、そうか。茄子はどうする?」
茄子「やるなら2人の方がいいですから。歌鈴ちゃんがそう言うのでしたら私も頑張っちゃいます♪」
ちひろ「わかりました。3人ともほどほどで切り上げて下さいね」
P「俺も含まれてるんですか」
ちひろ「当然です。なんだかんだで年越しまで残りそうですから」
P「今夜くらいは流石にそこまでするつもりはありません」
ちひろ「言質とりましたよ。茄子ちゃんと歌鈴ちゃんが証人です」
歌鈴「わ、わかりましゅた! ……あうぅ」
茄子「はい、確かに聞きましたよ♪」
P「いつもと立場が逆だなぁ」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:58:42.22 ID:qeE8tb/c0
ちひろ「ふふっ、それじゃあお先に失礼します。みなさん、よいお年を」
3人「おつかれ様でした、よいお年を」
P「さて、帰る時には送ってくから終わったらデスクまで声掛けてくれ」
茄子「了解です。歌鈴ちゃん、通してもう一回やってみましょう」
歌鈴「あ、はい! よろしくお願いします!」
P「あまり根つめすぎないようになー」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/31(土) 23:59:46.02 ID:qeE8tb/c0
………
……
…
P「うっし、こんなもんか」カタカタカタターン
P「何とか年内にケリつけられたなぁ、あぁ腹減った」
P「あいつら来なかったが……まだやってるのか?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:01:24.92 ID:rghbTV3h0
【レッスンスタジオ】
茄子「5,6,7,8……うん、バッチリですね!」
歌鈴「や、やりましたぁ!」
茄子「はい、お水どうぞ」
歌鈴「ありがとうございます。茄子さんに協力してもらえたおかげですっ」
茄子「頑張ったのは歌鈴ちゃんですよ。ところで、ひとついいですか?」
歌鈴「な、なんでしょうか? まだ悪いところありました……?」
茄子「いえ、そうではなく……歌鈴ちゃんは、どうしてこんなに頑張れるんですか?」
茄子「この時期は実家のお手伝いをしていたから。それは本当なんでしょうけど、なんだかそれ以上の気迫のようなものを感じました」
歌鈴「気迫なんて、そんな大層なものじゃないですよ……私は他のみなさんのような個性もないし、歌も踊りも上手くないし、おまけにドジでおっちょこちょいで……だから、人一倍頑張らなきゃって」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:02:49.79 ID:rghbTV3h0
茄子「ふふっ」
歌鈴「うぅ、こんなんじゃ笑われちゃいますよね……」
茄子「いえ違うんです。歌鈴ちゃんは人の良いところを見つけるのが上手なのに、自分のことになると下手になっちゃうんだなって」
歌鈴「そんなことないですよ……」
茄子「うーん、こんなときPさんだったら『歌鈴は歌鈴なりでいいんだぞ!』なんて言うんでしょうね」
歌鈴「プ、プロデューサーさんを出すのはズルいですよぉ!」
茄子「歌鈴ちゃんはPさんのこと大好きですもんね?」
歌鈴「えぇ! と、突然なにを言って……あの、その……」
茄子「ふふ、歌鈴ちゃん可愛い♪」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:04:55.17 ID:rghbTV3h0
茄子「明日は歌鈴ちゃんのお誕生日ですし、初詣に誘ってみてはいかがですか?」
歌鈴「お誕生日なのは同じじゃないですかぁ……茄子さんは自分の誕生日、どう思います?」
茄子「どう、とは?」
歌鈴「1月1日が誕生日だと、特別なお祝いって全然してもらえないですよね」
茄子「あぁ、そういうこと」
歌鈴「おまけに私は実家のことで、忙しくてそんな暇もなくて」
茄子「私は自分の誕生日、好きですよ。特別な日に特別が重なるようで、より幸せな気持ちになれます♪」
歌鈴「茄子さんは強いなぁ……」
茄子「無理にわかろうとしなくていいんです。歌鈴ちゃんはいい子ですから、誕生日くらい我が儘言ってもバチは当りませんよ?」
歌鈴「そうでしょうか……うーん……」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:06:25.00 ID:rghbTV3h0
P「おーい、まだやってるのか」ガチャ
歌鈴「ひゃあ! プ、プププロデューサーしゃん!」
P「あぁ、すまん突然入って驚かせたか」
茄子「Pさんはお仕事終わりました?」
P「あぁ、こっちはどう?」
茄子「ひと段落してお喋りしてたところです」
P「じゃあそろそろ切り上げて。2人とも腹減ってる?」
歌鈴「あ、そういえば晩御飯食べてないですね」
茄子「なんだか意識したら余計に空いてきますー」
P「俺も空腹だから、一緒に年越しそばでも食べよう」
茄子「わぁ、いいですね♪」
歌鈴「すぐに着替えてきま――ってあわわ!」
P「慌てないでいいからなー」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:07:33.55 ID:rghbTV3h0
………
……
P「買い置きのカップそばで悪いな」
歌鈴「いえ、全然気にしませんよ」
茄子「事務所なら落ち着いて食べられますし、私も構いません」
P「そう言ってもらえて助かる。そろそろいいかな……じゃあ、いただきます」
歌鈴・茄子「いただきます」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:09:03.04 ID:rghbTV3h0
歌鈴「おだしが美味しいです~」
茄子「夜の事務所でインスタント食品を食べるなんて、なんだかいけないことしてるみたいですね」
P「本来は褒められたものじゃないが、今日くらいはいいだろう」
歌鈴「何だか合宿みたいで楽しいですっ」
P「非日常感あるよなぁ……大晦日自体、子供のころ夜更かしを許された特別な日だったのを思いだすよ」
茄子「特別な日ですか」
歌鈴「そうですねぇ」
P「あ、歌鈴にとっては年末年始は大忙しか」
歌鈴「はい、落ち着いておそば食べられるなんて夢にも思わなかったです」
P「年始もすぐに仕事だから、休めるときには休んでくれよ?」
歌鈴「わ、わかりま……」
茄子「ほら、歌鈴ちゃん頑張って♪」
歌鈴「茄子さん……は、はい!」
P「ん、どうした?」
茄子「ふふっ、何でもありませんよ」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:10:39.73 ID:rghbTV3h0
P「そばを食べたら2人とも送っていくよ」
歌鈴「あの、プロデューサーさん!」
P「なんだ歌鈴?」
歌鈴「よ、よかったら、これから一緒に初詣に行きませんか?」
P「初詣?」
歌鈴「休めって言ってもらいましたけど、わ、私はプロデューサーさんと初詣に行けたらいいなって……どうでしょうか?」
P「歌鈴がそこまで言うなんて珍しいなぁ」
茄子「そうですよ、ですから行きましょう、Pさん?」
P「……ふむ、新年早々に祈願するのも悪くないか」
歌鈴「やったぁ! ありがとうございますっ!」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:13:42.50 ID:rghbTV3h0
………
……
…
P「事務所閉めるぞー。歌鈴、忘れ物ないか?」
歌鈴「な、なんで私だけなんですかぁ!」
茄子「ぐるっと確認しましたが、大丈夫そうでした」
P「じゃあ行くとするか」
茄子「はい、行ってらっしゃい♪」
歌鈴「へ、茄子さん?」
P「茄子は来ないのか?」
茄子「行きたいところですが、自室の大掃除が終わってないんですよねー」
P「それくらいいいんじゃないか?」
茄子「今年の汚れ、今年のうちにですよ! あと歌鈴ちゃんにはこれをお願いします」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:15:49.01 ID:rghbTV3h0
歌鈴「な、何でしょう? ……これはおみくじ、ですか?」
茄子「今年の年始に引いたものです。私の代わりに神社へ返納していただけますか?」
歌鈴「あ、はい。わかりました! 任せてください!」
茄子「私が1年間持ち歩いていた大吉です。頑張ってくださいね♪」ボソッ
歌鈴「え、ちょっ茄子さん!?」
P「夜遅いがひとりで大丈夫か?」
茄子「すぐにタクシー拾いますんで」
歌鈴「で、でもこの時期は利用する人多くて待つことになるんじゃ……」
茄子「大丈夫です。昔からタクシーに乗ろうと思ったら、すぐに空車が通りかかるので――あ、来ましたね」
P「凄いが妙に納得してしまう」
茄子「それでは、よいお年を」
P「あぁ、来年もよろしく」
歌鈴「茄子さん! あの、ありがとうございました!」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:16:50.11 ID:rghbTV3h0
【神社境内】
P「ほぉ、結構にぎわってるなぁ」
歌鈴「そ、そうでしゅね!」
P「さっきから噛み噛みだな、おまけに顔も赤いぞ。まさか熱か?」
歌鈴「違います! 違わないけど違うんです!」
P「ならレッスン疲れ? 辛くなる前に早めに言ってくれな」
歌鈴「は、はい!」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:18:21.86 ID:rghbTV3h0
ゴォォン…ゴォォン……
P「除夜の鐘が聞こえるな。もうすぐ新年だ」
歌鈴「プロデューサーさんにとって今年1年はどうでしたか?」
P「ん、そうだなぁ……ファンもメディアの露出も増えてきて、歌鈴の努力の成果が着実に出てきてる年だったな」
歌鈴「もう、それじゃあ私の1年じゃないですか」
P「プロデューサーの1年は、担当アイドルの1年だ。だからこれでいいんだよ」
歌鈴「私とプロデューサーさんが同じ、ですか……えへへ」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:20:33.06 ID:rghbTV3h0
歌鈴「あ、周りの人がカウントし始めましたよ!」
P「一緒にカウントするか!」
歌鈴「はい! 4、3、2、1……」
歌鈴「プロデューサーさん、明けましておめで――」
P「誕生日おめでとう歌鈴、今年もよろしくな」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:22:49.56 ID:rghbTV3h0
P「ここでプレゼントを渡せれば良かったんだが、こうなるとは思わなくて自宅に置きっぱなしでなぁ……かっこ悪いが次会う時に渡すから」
歌鈴「う、うぅ……ぐすっ」
P「え、歌鈴……そんなにショックだったか」
歌鈴「そうじゃないですっ……私が一番欲しかったもの、もうプロデューサーさんから頂きました!」
P「いや、俺はまだ何もあげちゃいないぞ?」
歌鈴「気にしないでください。さぁ、参拝しましょう!」
P「おう、人だかりだからゆっくり進もう。今のうちにお賽銭の準備しとけ」
歌鈴「はい。落とさないようにコートのポケットに入れておきます……あれ?」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:24:48.12 ID:rghbTV3h0
ふと、ポケットに入れた指先に折りたたまれた紙が触れました。
その正体は、神様に負けないくらいにご利益がありそうな、そんなおみくじ。
お守り代わりに……ということでしょうか。だとしたら、効果覿面です。
明けましておめでとうよりも先に、誕生日おめでとう、と。
いつの間にか諦めていた、一番に欲しかった言葉を。一番に欲しい人から貰えましたから。
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:26:22.68 ID:rghbTV3h0
P「ん、どうかしたか?」
歌鈴「いえ、えっとその……手、つないでもいいですか?」
P「手を?」
歌鈴「人も多いですし、はぐれちゃうといけないので!」
P「ん、これでいいか?」
歌鈴「えへへ、ありがとうございます! プロデューサーさん、今年も歌鈴をよろしくお願いしますっ!」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/01(日) 00:31:06.16 ID:rghbTV3h0
歌鈴誕生日おめでとう!歌鈴にとって躍進する年と信じて。
ここまで読んでくださった方に、大吉のおみくじを。
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