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勇太「無い内定でも恋がしたい」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:04:42.30 ID:L4vlshFL0

勇太「ちょっと来るの早すぎたな」

勇太「さすがにまだ会場には入れないか」

勇太「仕方ない、そのへんでちょっと時間潰そう」

一色「あれ、勇太じゃん。こんなとこで何してんだよ」

勇太「ギク」

中二病でも恋がしたい! (6) [Blu-ray]

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:09:15.21 ID:L4vlshFL0

勇太「よ、よう一色、奇遇だな」

一色「スーツ着てるってことはアレか、会社の研修かなんかか?
   いやーお互い大変だよなまだ入社前だってのに」

勇太「いや、違うよ……」

一色「そういやお前、どこに決まったんだ?」

勇太「…………」

一色「ん? 勇太?」

勇太「……まだ、決まってない…………」

一色「えっ、まだ決まってなかったのか!? もう2月だぞ」

勇太「…………」

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:15:05.78 ID:L4vlshFL0

一色「あー、あれか、留年したか」

勇太「…………」

一色「そうだよなー、それならまだ決まってなくて当然か。
   まあこれからだから焦ることないぞ、本格的に採用始まるのは春からだし」

勇太「…………」

一色「俺も周りが内定取りまくってて焦ったけどさ、夏には決まったから」

勇太「…………」

一色「夏の就活は地獄だぞ〜。スーツの暑さは想像を絶するぞ」

勇太「…………」

一色「だから勇太も、長引かせないでさっさと決めちゃえよな」

勇太「…………」

一色「一留くらいならマイナスにはならないはずだし」

勇太「……留年してないんだ」

一色「あん?」

勇太「俺もお前と同じ……今年の3月で大学卒業だよ」

一色「え…………」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:21:29.24 ID:L4vlshFL0

一色「…………」

勇太「…………」

一色「……そ、そうか」

勇太「…………」

一色「あ、で、でもアレだろ? 卒論とかが忙しくて就活の時間が」

勇太「卒論は余裕だったよ。単位もちゃんと取れてた。
   4年生になってからは週1回しか大学行ってなかった」

一色「…………」

勇太「ただ……落とされ続けただけなんだ」

一色「お、おう……」

勇太「ははは、笑っちゃうだろ?
   1年以上も就活続けてどこにも採用されないんだぜ。
   なんなんだろうな俺って」

一色「そ、そんな自分を卑下するな……あと2ヶ月弱あるんだからさ、
   愛しの六花ちゃんのためにも頑張って卒業までに内定ゲットしろよ、な」

勇太「六……花……?」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:30:09.14 ID:L4vlshFL0

勇太「あ、ああ、六花か……最近会ってないから忘れかけてたよ……」

一色「お前ほんとに大丈夫か? 精神病んできてないか?」

勇太「いや、多分大丈夫だ……ははは……」

一色「小鳥遊さんとはまだ付き合ってんだろ?」

勇太「ずっと付き合ってるよ。でもこのままだと振られるかもな」

一色「そ、そんなこと言うなって。小鳥遊さんはお前が就職できなかったり
   ブラック企業に採用されて家に全然帰れなかったり既卒フリーターになったとしても
   お前のことを嫌いになるような人じゃない、そうだろ?」

勇太「励ますフリしてダメージ与えるのやめてくれよ」

一色「と、とにかく頑張れよ。応援してるからな。
   そうだ、お前の就職決まったらお祝いしようぜ、高校の時のメンバー集めてさ」

勇太「お祝いか。お祈りなら何度もされてるんだけどな」

一色「…………」

勇太「じゃあそろそろ合説始まるから行くよ」

一色「お、おう…………」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:40:07.58 ID:L4vlshFL0

勇太(合説の会場は3年生向けと4年生向けに区切られていた)

勇太(3年生向けの入り口前は活気に満ちていた)

勇太(スマホ片手に企業のパンフを見ている黒縁メガネの意識高そうな学生)

勇太(就活を始めたばかりでスーツを着慣れていない感じの初々しい学生)

勇太(まだ危機感も何もなく就活の雰囲気を楽しんでいる女子大生)

勇太(さて俺がいる方はどうだ)

勇太(死んだ魚のような目をした学生たちがゾンビのように会場内をうろついている)

勇太(この一年間、頑張って就活をするも落とされ続けた学生たちだ)

勇太(数多の企業から『いらない奴』という烙印を押された社会不適合者の群れ)

勇太(今日合説に参加している企業は何が楽しくてこんな学生たちを採用しようとするのか)

勇太(社会不適合者だと分かった上でボロ雑巾のように使い潰すために採用するのか)

勇太(それともこんなゴミ溜めの中にもまだ誰にも拾われていない宝石が転がっていると信じているのか)

勇太(しかし仮にそんなものがあったとしてもそれは俺ではないのだ)

係員「本日の参加企業一覧です、どうぞ。あとこちらアンケートご協力下さい」

勇太「あ、どーも」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:49:52.53 ID:L4vlshFL0

勇太(アンケート用紙は志望業種やどんなサイトを使っているかを書くものだ)

勇太(そして今まで企業の選考を何回受けたかを書く欄がある)

勇太(正直に書くと俺のダメさが改めて浮き彫りになってしまいそうで)

勇太(匿名のアンケートではあるが、いつもかなり少なめに書く)

勇太(俺が未だに就活を続けているのは、あんまり選考を受けなかったからだと)

勇太(決して何十社も受けてその全てに落とされたからではないと)

勇太(そんな自分を慰めるだけの言い訳を込めて)


勇太(忌々しいアンケート用紙をカバンに放り込んで俺は参加企業一覧に目を通す)

勇太(介護、福祉、飲食、不動産……そんなのばっかりだ)

勇太(しかし俺達のようなハズレくじには選ぶ権利なんて最初からない)

勇太(一覧の中から一番マシな企業を見繕ってブースに向かう)

勇太(しかし俺と同じことを考える学生は多かったようでブースは既に満席だった)

勇太(ここにいる奴らは全て俺の競争相手になるのだ)

勇太(俺はこいつらに蹴落とされるためだけにこの企業を受けるのだ)

勇太(そう考えるとわずかに残っていた就活に対する気力は一気に萎えていった)


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 22:58:39.78 ID:L4vlshFL0

勇太(結局4社ほど回っただけで会場から抜けだした)

勇太(もうちょっとで卒業なのに進路未定、という危機的状況から考えれば)

勇太(目に付く企業全てに食いついて内定を得るまで縋るべきなのだろうが)

勇太(一年前ならともかく今ではもうそんな気力はなかった)

勇太(ただ就活そのものが嫌で嫌で仕方がなかった)

勇太(活力とは絶望的状況で湧いてくるのではなく希望があってこそ湧くのだ)

勇太(就活を1年以上も続けてきて得たものはそんな格言めいた考えだけだった)


勇太「はーあ……」

森夏「あれ、もしかして富樫くん?」

勇太「に、丹生谷? 丹生谷もここに来てたのか?」

森夏「ええ、久しぶりね。まさかこんなとこで会うなんて」

勇太「丹生谷も、か……そうか、大変だなお互い」

森夏「そうねー」

勇太(合説では知り合いに会いませんようにと祈りながら歩いていたが)

勇太(いざ出会ってみると安心感があった。こいつも俺と同じなのだ)


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 23:06:56.73 ID:L4vlshFL0

勇太「いやあ、大変だよな、ほんとに……」

森夏「まあ、そうね〜。今年はちょっと楽とか聞いたけど」

勇太「丹生谷は今日どこの企業回ったんだ?」

森夏「んー、京兄産業とか、AKASAKIとか。富樫くんは?」

勇太「え、そんな有名企業来てたか?」

森夏「来てたじゃない。結構人気で席とるの大変で」

勇太「…………」

森夏「?」

勇太「…………あ、そうか」

森夏「何?」

勇太「お前、浪人してたんだったな……」

森夏「え、うん。何よ今更」


勇太(俺はやっと理解した。丹生谷は今3年生だったのだ)

勇太(当然である。丹生谷のような人間が1年以上も無い内定なわけがない)

勇太(俺は勝手に仲間意識を感じていた自分が恥ずかしく、情けなく、惨めになった)


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 23:17:08.86 ID:L4vlshFL0

勇太(丹生谷は志望大学に落ちた後、浪人することを選び、一年後合格した)

勇太(全国的にも有名な大学で、その大学の学生だというだけでステイタスになった)

勇太(俺はというと、学力的には丹生谷の大学にも受かれるくらいだった)

勇太(しかし俺は六花と同じ大学に行くことを優先させてしまった)

勇太(結果、平均より少し下がるレベルの大学に進学することになった)

勇太(大学なんて、どこに行っても同じだ)

勇太(大学名より、大学で何をするかが大事なのだ)

勇太(なにより六花と同じキャンパスで勉強できることが幸せだ)

勇太(入学前は、そう思っていた)

勇太(しかし誰かに自分の大学名を言う時、友達が通う大学名を聞いた時)

勇太(そして就職活動を始めて他の学生と比較されるようになった時)

勇太(大学の名前はコンプレックスとなって俺の心を締めあげた)

勇太(丹生谷と同じ大学に行けば何かが変わっていたのか?)

勇太(そもそも恋人と同じ大学を選ぶ必要があったのか?)

勇太(そんな後悔ばかりが4年間俺を責めつづけた)

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 23:26:32.16 ID:L4vlshFL0

勇太(俺の大学生活は無為そのものだった)

勇太(授業には真面目に出ていたし単位もちゃんと取った)

勇太(しかし積極的に勉学に勤しんでいたわけではなく)

勇太(単位を落とさないようにしていた、という程度だったので成績は低空飛行)

勇太(六花と会う時間が減るから、と言い訳してサークルにも入らなかった)

勇太(講義が終わればバイト、暇な日は六花と昼間っからアパートでセックス)

勇太(ただひたすらそんな毎日を繰り返して大学生活を食いつぶした)

勇太(資格も免許も持っていないし、ボランティアなんかもやったことはない)

勇太(学生時代にしかできない貴重な経験、なんてものを俺はひとつもやらなかった)

勇太(大学へのコンプレックスから、大学的なものから目をそむけ続けた)

勇太(その結果が今の俺である)

勇太(もっとレベルの高い大学に行っていれば)

勇太(入学時からもっと将来のことを考えていれば)

勇太(そうすれば今頃はどこかの企業から採用されていたのだろうか)

勇太(俺も他の学生たちと同じように社会から必要とされる人間になれていたのだろうか)


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 23:36:36.04 ID:L4vlshFL0

勇太(たらればの話をしても意味はない。現実だけを見つめるべきだ)

勇太(理屈の上では分かっている。しかし俺の現実は、どうしようもなく惨めなものだ)


森夏「あー……じゃあ富樫くんずっと就活やってるんだ」

勇太「うん、まあそういうことになるな」

森夏「やっぱり今って厳しいのね〜。何社くらい受けたの?」

勇太「…………20社くらいかな」

森夏「結構少ないね?」

勇太「あー、うん、あれだよ、卒論がさ、結構手間取っちゃってさ、就活の時間がね」

森夏「へえー、たしか文学部だったよね。どんなことやったの?」

勇太「じょ、上代から平安期にいたるまでの語彙の変遷……みたいな」

森夏「難しいことやってるんだね。でもやっぱり文学部だと就活厳しいの?」

勇太「そ、そうなんだよ〜。俺も経済学部にすればよかった、ははは」


勇太(俺はただ笑いでごまかすしかなかった。本当の自分を見抜かれたくなかった)

勇太(たとえ丹生谷が、無い内定くらいで人を見下すような狭量な奴ではないと分かってはいても)


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 23:46:43.99 ID:L4vlshFL0

勇太(俺以外のみんなが、就職を決めていく)

勇太(一色は大企業ではないが名前を聞けばそれと分かる企業に就職した)

勇太(ちなみに俺もその企業を受けたが落ちた)

勇太(六花も去年の春頃には早々に中小企業に就職を決めてしまっていた)

勇太(あの頃は、俺も負けてられないな、なんて言って二人で笑っていた)

勇太(しかし今は、未だ無い内定の俺に対する無言の気遣いが痛くて、居た堪れなくて)

勇太(俺は去年の冬頃からずっと六花を避け続けていた)

勇太(ちなみに俺もその企業を受けたが落ちた)

勇太(丹生谷も近いうちに良い会社に採用されるだろう)

勇太(あいつは努力家だ。リーダーの素質もある。人間ができている)

勇太(俺のような自堕落なクズ人間とは、根本的に違う)

勇太(樟葉は薬学部の大学に通っている。将来安泰だ)

勇太(夢葉は音楽で食べていくと言い出していた)

勇太(家族は最初反対していたが、今では結果を出しつつある)

勇太(俺だけが。俺だけが俺の将来を形作れていない。見渡すことができない)

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/04 23:55:34.69 ID:L4vlshFL0

勇太のアパート

ガチャ
勇太「あれ? 開いてる……鍵閉めて出たよな」

六花「おかえり、勇太」

勇太「六花……来てたのか」

六花「うん、最近ずっと会えてなかったから……メールしても返事ないし」

勇太「すまんな、就活で忙しくて」

六花「就活、どう? どっか内定もらえそう?」

勇太「いや、さっぱりだよ。この前選考受けたとこも一次面接で落ちた」

六花「そう……でもまだ時間あるから、焦らずに、ね」

勇太「納得行かないよな、俺より根暗そうで使えない奴が二次に進んでんだぜ。
   あんなやつ採用したってどうせ仕事……」

六花「勇太、人のことそんなふうに言うの良くないよ」

勇太「あ、すまん……」

六花「疲れてるのは分かるけどさ……」

勇太「…………」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:03:20.82 ID:L4vlshFL0

勇太(次に六花と会ったとき、あることを話そうと心に決めていた)

勇太(別れ話である)

勇太(こんなダメ人間と付きあわせておくのは申し訳ない)

勇太(六花のためを考えるなら、違う人と付き合ってもらったほうがいい)

勇太(六花の中二病ももう抜けていた。今では眼帯もカラコンもしていない)

勇太(休みの日に凸守と一緒にコスプレイベントに遊びに行く程度)

勇太(今の六花は優しくておとなしいどこにでもいる普通の少女だ)

勇太(もう俺じゃなくても、六花を愛してくれる人はいる)

勇太(俺よりも優秀で聡明でハンサムな男が六花を幸せにしてくれるはずだ)

勇太(俺なんかもう居なくなってしまっても構わないのである)


勇太「六花……ちょっと大事な話があるんだ」

六花「何、改まって」

勇太「単刀直入に言わせてもらう……俺と別れてくれ」

六花「うん」

勇太「えっ!?」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:11:12.65 ID:MVXIXSL90

六花「えっ、って何」

勇太「いや……も、もしかしてお前も俺と別れたいと思ってたとか……?」

六花「うーん、そう言われると微妙だけど……
   でも今までずっと疎遠になってたから」

勇太「それで気持ちが冷めちゃったってことか?」

六花「冷めたっていうか、勇太に対する私の気持ちが
   自分でもだんだん分からなくなってきた、っていうか」

勇太「そ、そうか……」

六花「だから自分の気持に整理を付ける意味でも、
   もういっそ別れたほうが良いのかなって思って」

勇太「……分かったよ、六花が言うなら……そうしたほうがいいのかもな」

六花「ごめんね、勇太。今までありがとう。合鍵も返す」

勇太「おう……最後に1つだけお願いしてもいいか」

六花「何?」

勇太「ラストに一回だけやらせてくれ……」

六花「ごめん無理」

勇太「頼む、思い出に、思い出に一回だけ……」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:20:39.48 ID:MVXIXSL90

勇太(俺の必死の懇願は部屋に虚しく響くばかりで)

勇太(六花は俺のことをセミの死骸を見るような目で一瞥すると部屋から出て行った)

勇太(おそらく六花もだいぶ前から俺に愛想を尽かしていたのだろう)

勇太(当然だ。いつまでも内定の1つも得られないような男、好きでいられるわけがない)

勇太(子供の頃は、一緒にいて、一緒に遊んでいるだけで愛情を深められた)

勇太(しかし俺達はもう大人だ。仕事をして自力で金を稼いで生きなければならない)

勇太(そういう観点で言えば、俺は大人になることができていない)

勇太(六花は仕事を得て、もう大人になった)

勇太(大人は大人同士で恋愛するのだ。子供には目もくれない)

勇太(俺は六花たちが大人になっていく流れから振り落とされて、藻掻いているだけだ)

勇太(藻掻いているだけで、一歩も進むことはできない)

勇太(俺がそうしている間にも、みんなは大人の道を歩んでいくのだ……)


勇太(六花と別れて、というか六花に振られて、六花という存在が俺の最後の活力源だったと自覚した)

勇太(もはや何もする気は起きなかった。スーツ姿のまま床にへたばった)

勇太(さっきから電話がけたたましく鳴っていたが、ほうっておいた)

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:26:23.44 ID:MVXIXSL90

勇太(電話は留守電に切り替わり、着信音は途絶えた)

勇太(しかしその後すぐにまた鳴り出した)

勇太(いい加減うんざりしたので、俺はだらだらと手を伸ばして携帯のボタンを押した)


勇太「あい、どちらさま?」

『ああ、富樫くんか? 私だが今時間大丈夫か』

勇太「先生? どうしたんですか?」

『いや、どうしたも何も。君こそどうしたんだね?』

勇太「は? 何のことですか?」

『卒論の発表だよ。今日、来なかっただろう』

勇太「えっ!? きょ、今日だったんですか?」

『そうだよ、掲示板にちゃんと名簿と日程が貼ってあっただろう』

勇太「え、いや、その……最近大学行ってなかったもんで」

『ウェブにも掲載してあったはずだが』

勇太「み、見てませんでした……あ、あの、他の日には……」

『他の日なんてないよ。はあ、君はもう一年大学生だな』

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:34:00.76 ID:MVXIXSL90

勇太「えっ、ちょ、ちょっと待って下さい! どうにかならないんですか!?」

『なるわけないよ、確認を怠った君の責任だ』

勇太「そ、そんな!」

『卒論発表を休んだら単位はあげられんよ。特例はない』

勇太「マジですか……」

『気の毒だが。内定先にも連絡をしておきたまえ。あとご両親にもな』

勇太「内定はまだ無いです……」

『なんだ、そうだったのか。ならある意味ちょうどよかったじゃないか、はは』

勇太「笑い事じゃないですよ、本当に何とかならないんですか?
   卒論自体は書いたんですから、お願いします」

『うーん、でも君の卒論、ぶっちゃけあんまり出来良くないからねえ』

勇太「ええ……」

『まあでもあと1年かければそれなりの論文にはなるだろ。
 じゃあ来年度もよろしくやろう。そんじゃ』

勇太「…………」


勇太「留…………年…………?」

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:45:24.60 ID:MVXIXSL90

勇太(留年。この就職活動をもう1年続けなければならない)

勇太(俺はもう、いい会社で働きたいという意欲などとうの昔に失っていた)

勇太(ただこの就活という無限地獄から解放されたいと願っていた)

勇太(就活から解放されるために内定を得たかった)

勇太(そして内定を得られずとも、3月が終われば解放される)

勇太(就活などやめて、適当にフリーター生活でも始めようと思っていた)

勇太(バイトをしながら、既卒向けの正社員求人を探す)

勇太(やることは今と変わりはないが、精神的にはだいぶ楽なように思えた)

勇太(おそらく大学という束縛がなくなり、仮初の状態だが一応社会人になれるからだろう)

勇太(きっと今よりも身軽な状態で過ごせると思っていた)

勇太(しかし今、留年が決定してしまった)

勇太(もう1年。もう1年。これが続く。就職活動が。俺を蝕み、苛み続ける日々が)

勇太(劣等感を背負いながら、それを必死に隠しながら、仮面を被って、嘘をついて)

勇太(俺は他人よりも優れていると装い、媚を売り、自分の価値を偽って)

勇太(それでもなお、お前など不要だという烙印を押され続けるだけの日々が!)

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:49:57.17 ID:MVXIXSL90

勇太「夢ならたくさん見た」

勇太「落ちた企業もまた受けたい」

勇太「君は内々定」

勇太「僕は祈られたね」

勇太「ブラックそうな業種の」

勇太「介護飲食行こうよ」

勇太「筆記もESも面接も」

勇太「すべて人事を軸に回る」

勇太「新しい企業へ」


    お    わ    り


 

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [sage] 2013/02/05 00:50:28.87 ID:Kgh6zxNa0

岡部も田中眼蛇夢も有能なのにこいつときたら

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: [] 2013/02/05 00:50:32.74 ID:7/8JYSHY0

くぅーw



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