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鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [age]:2011/06/03(金) 01:25:01.63 ID:SLXLYoGX0

暑い日の昼下がり、鈴の部屋


鈴「あっづー……」

セシリア「な、何ですのコレは……」

鈴「あ、セシリアー♪ようこそようこそ、あ、冷やし中華食べる?あはは、のびて温くなってるけどね!」

セシリア「冷房はどうなさったの?エアコンがこの部屋にも……」

セシリア「(見間違い、かしら……何かで叩き割ったかのような……)」

鈴「いやー、昨夜いきなり動かなくなっちゃってさー、ちょ~っと修理にエキサイトしちゃって……」テヘペロ

セシリア「……」

鈴「……」

セシリア「部屋に帰らせていただきますわ」

鈴「ちょ、ちょっ、待ちなさいよー。セシリアの部屋ベッドの上でポテチ食べるなとかおかし食べながら本読むなとか厳しいじゃんー」

セシリア「……何ついて来る前提で話してますの?」

鈴「え?」

IS インフィニット・ストラトス セシリア 抱き枕カバー 2wayトリコット


2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 01:30:02.43 ID:SLXLYoGX0

セシリア「……いや、え?じゃありませんわよ」

鈴「ほらほら、アイスならあるからさ?ね?」

セシリア「第一、叩いて治るなんていつの迷信ですの?」

鈴「私んちじゃ現在進行形よ?」

セシリア「……さすが中国ですわね」

鈴「アンタ今バカにしなかった……?」

セシリア「してませんわ」

鈴「何目逸らしてんのよ」

セシリア「だ、大体!アレは叩いてるどころかどう見たって斬ってるじゃありませんの!」

鈴「き、斬ってはいないわよ、ただ届かなかったから届きそうなもので……」

セシリア「その結果世界初のISで家電斬った代表候補生が誕生したというわけですのね」

鈴「うぐ」

セシリア「修理が来てくれるまで、自らの軽率な行いを反省してお過ごしなさい、それでは」

鈴「待って!待ってってば!私にこの灼熱地獄で休日を一人過ごせって言うの!?」

セシリア「廊下で過ごせばいいじゃないですの」

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 01:33:56.50 ID:SLXLYoGX0

鈴「いや、いくらなんでも廊下でゴロ寝は乙女としてきっついわよ」

セシリア「では屋上」

鈴「暑い!」

セシリア「なら教室にでも」

鈴「教室でなんか寛げないわよ!それに千冬さんに捕まったらと思うと」



千冬『ほぅ、休日登校して机で居眠りとは熱心だな、良く眠れるよう私が特別授業でみっちりしごいてやろう』



鈴「ってなりそうで」

セシリア「居眠り前提なんですのね」

鈴「だからさ!お願い!セシリアの」

セシリア「お断りします」

鈴「」

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 01:41:10.21 ID:SLXLYoGX0

セシリア「どの道あなた……ここで寝るしかないのですわよ?」

鈴「うわ……あんた嫌な事思い出させないでよ……」

セシリア「そこ忘れちゃダメだと思いますわ……大体、同室の方はどうしたんですの?お姿が見えませんけど」

鈴「友達の部屋に避難したわよ、とっくに」

セシリア「あら、そ。じゃあ鈴さん、ごきげんよう」

鈴「待てぇ!わたしの避難先!!」

セシリア「ぐえ」

鈴「あ”」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 01:44:33.56 ID:SLXLYoGX0


セシリア「え、襟に飛びつくなんて何考えてますのっ!?」

鈴「今のはちょっとごめん、なんかすっごい声でたねー」

セシリア「誰のせいですの?全く。つまるところ鈴さん?」

鈴「はい」

セシリア「今日私を呼んだのはエアコンが治るまでの間私の部屋に上がりこむ為の交渉だったと、そういうことですのね?」

鈴「はい」

セシリア「大体、真っ先に一夏さんの部屋に突撃しそうなもんでしょうに……どういう心境の変化ですの?」

鈴「……」

セシリア「……どーして目を逸らしますの?」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 01:50:17.98 ID:SLXLYoGX0

鈴「……いやあ、別に」

セシリア「行ったんですのね?」

鈴「……」

セシリア「……もう一度だけ、言葉で聞いて差し上げますわ。――行きましたわね?」

鈴「ちょ、セシリア、顔近い、近いってば……いや、冷房壊れてすぐに、ちょっと」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 01:54:24.84 ID:SLXLYoGX0


セシリア「不覚でしたわ、もし気付いていれば扉を開ける前に狙撃したものを」

鈴「怪我じゃすまないわよ!?」

セシリア「……全く、しかし、事情が事情ですし、仕方が無いですわね……」

鈴「え?よし!一人脱落!!」

セシリア「頭ぶち抜きますわよ?」

鈴「冗談じゃん、冗談。だからティアーズ浮かべるのやめようよ、ここ部屋だよ?」

セシリア「まったく。仕方が無いというのは、こんな時くらい見逃して差し上げるのも、強者の余裕というものという意味ですわ」

鈴「いや、今見逃して無いよね!?」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 02:01:35.27 ID:SLXLYoGX0


セシリア「……誤解でも脱落したなどと言われてはたまったものではありませんわ!」

鈴「いやぁ、だっててっきりさ、あたしと一夏なら許すとかそういう友情かなーなんて……逆だったら、って考えたら」

セシリア「……鈴……さん」

セシリア「(もし私と一夏さんならば許すと、そう仰っているんですの!?)」

セシリア「(こ、こんなにも思ってくれる友に私はなんて事を……っ!自分が恥ずかしいですわ!!)

鈴「逆だったら……ん……逆だったら? セシリアと一夏かぁ……やっぱコロスわね」

セシリア「」

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 02:09:27.34 ID:SLXLYoGX0


セシリア「あ……あなた、タッグ練習までしたパートナーにえっらい言いようですのね」

鈴「コンビネーション練習中真後ろから狙撃するパートナーであたしも本当に嬉しいわよ?」

セシリア「射線に飛び込んで来る事がコンビネーションなんて初耳ですわよ!?」

鈴「一夏はコンビネーションって言ってたのよ!ほら、無人機の時」

セシリア「は?」

鈴「背中から撃てって」

セシリア「マジですの」

鈴「マジよ」

セシリア「……授業の時に使ってみますわ。いい情報をありがとうございます」

鈴「いいってことよ、パートナーでしょ」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 02:21:11.30 ID:SLXLYoGX0


セシリア「……それはそうと、行ったのなら一夏さんのところでいいのではないですか?」

鈴「それがねー」

セシリア「困っている人を見捨てるようなこと、一夏さんがするとは思えませんわ?」

鈴「……いや、あいつ……寝るとき冷房つけないのよ。健康に悪いとか言って」

セシリア「結局暑くて逃げてきたと?」

鈴「や、それくらいで逃げるつもりもなかったんだけれど、ちょっと暑すぎたから、ドア開けたまま一夏起こそうとして……」

セシリア「侵入したのは寝てるような時間でしたのね」

鈴「……」

セシリア「どうぞ?お続けになって?」

鈴「いや、だって、寝てる最中に冷房が壊れたんだから、し、仕方ないじゃない?」

セシリア「ええ、夜這い同然の時間に鈴さんは一夏さんの部屋に忍び込み?起こそうとしてどうしましたの?」

鈴「そ、その言い方やめてよ。なんかイヤ」

セシリア「あら、失礼しました」

鈴「……そしたら丁度……千冬さんが見回りにきて……」

セシリア「夜間は教員が交代で見回っているようですわね、特に一夏さんの部屋周辺は重点的に」

鈴「なんで知ってるのよ!?」

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 02:27:00.69 ID:SLXLYoGX0


セシリア「なるほど、一夏さんの部屋は無理、そこで私の部屋と」

鈴「そーいうこと。ま、助けると思ってさ、ここは一つ」

セシリア「お断りしますわ」

鈴「早ッ!少しは迷おうよ」

セシリア「鈴さん、私の部屋に来て片付けた事が一度も無いですわよね。部屋を荒らされるのはごめんですの」

鈴「う、それは……か、片付けるからさー、ねー、セシリアー」

セシリア「……」

鈴「(迷ってる!ここがチャンスよ!一気に押し切る!)」

鈴「ねっ?いいでしょ?」

セシリア「し、仕方ありませんわね、丁度昨日作ったプリンがありますの、試食を……」


鈴「(ハイあたし死んだーっ!)」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 02:35:38.06 ID:SLXLYoGX0


鈴「あ、もしもし箒?悪いんだけどさ」

セシリア「……」

鈴「え?あー、いや、その、え、ちょっ!箒!?ねぇ!?……切れた」

セシリア「りーんーさーんー」

鈴「ひゃあっ!あ、いやその、やっぱ悪いかなーって。親しき仲にも礼儀ありって言うじゃない?」

セシリア「私のプリンを食べることは礼儀に反するとでも仰いますの!?」

鈴「い、いやぁ、そういうわけじゃないんだけれど……」

鈴「(まずいだけで死にはしない……よね)」

セシリア「……別に、私は一人で部屋に帰っても良いんですのよ?」

鈴「あ!行く!行きます!行かせて!」

セシリア「ふふ、調子がよろしいこと♪」


――

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 19:45:04.33 ID:SLXLYoGX0
――――

セシリア「なんだか、私たちの絡みが少ないという意見が御座いますわね」

鈴「結構なんだかんだと仲良しよね?私達」

セシリア「……やむにやまれず、というやつですわね」

鈴「嫌々!?」

千冬「何故この二人のペアが多いかだが……よーし、一年の専用機持ちで二人一組のペアを組めー」

箒「私の紅椿は白式と対になるISだ、データ収集の為にも白式と組むのが当然になる」

一夏「そうなのか?まぁ、箒なら気が楽だし俺は構わないけど……」

シャル「ラウラ、組もうか。同室同士だしね!」

ラウラ「ああ、よろしく頼むぞシャルロット」

千冬「このように、セッシーはクラス内ではボッチ確定だ」

セシリア「ぼっ……!?」

鈴「やーい、ボッチ」

千冬「鈴は二組だからいない」

鈴「」

千冬「このように学年専用機持ちでペアを組む場合。面識もあるため、鈴とセシリアというペアになる」

鈴「べ、別にそれだけの理由じゃなく、武装の相性も……」

セシリア「二人がかりでコンビネーションが上手く行かずラウラさんにこてんぱんにされましたわね」

鈴「短編では息の合ったコンビネーションを」

セシリア「あなた私を踏み台にしましたわよね……?」

千冬「この他にも、二人で買い物に行ったりと何かと二人で行動していることが多い」

セシリア「まぁ。否定はしませんわね」

鈴「素直じゃないわねー」

千冬「ボッチがつるんで傷の舐めあいをしているというわけだ」

セシ鈴「「えっ!?」」

千冬「まあ、最新刊では第1巻から存在が示唆されていた4組の専用機持ちが登場して、1年の専用機持ちが奇数になったわけで今後どうなるかが愉しみだ」

セシリア「ハイスピードロボットアクションハーレム学園青春ラブコメ インフィニット・ストラトス 既刊7巻好評発売中ですわよ」

鈴「コミックスのほうもヨロシクね!」

千冬「TVアニメのBDとDVDも第2巻が好評発売中だ、手に入れて損は無い」

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 19:47:50.31 ID:SLXLYoGX0


――寮・廊下

鈴「♪~」

セシリア「何を抱えてきたんですの?」

鈴「人生ゲームでしょう?トランプでしょう?それから……」

セシリア「前もちょっと思いましたけれど、鈴さんは本当にそういうボードゲームが好きですのね」

鈴「前に一夏の家でみんなで遊んだ時もやったわよね」

セシリア「私が圧勝したあのゲームとかですわね」

鈴「アレをイギリスと言い張るあんたの目はどうかしてるわ」

セシリア「でもあれは、手がべたべたになってしまうのが難点ですわね」

鈴「あはは、まーねー。何からやる?」

セシリア「何でも結構ですけれど、お部屋を汚さないようにはしてくださいましね?」

鈴「ハイハイ、わかってるって」

鈴「(ボードゲームに気を引いておいて、プリンからセシリアの意識を離れさせる)」

鈴「(コレで私は生き残るッ!!)」


20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 19:48:37.08 ID:SLXLYoGX0


――セシリアの部屋



鈴「おじゃましまーす、って、相変わらずあんたのベッドでかいわね」

セシリア「アジアの寝具が小さすぎるだけですわ。眠るときは大きく手足を広げて尚スペースがあるほうが望ましいですもの」

鈴「とか何とか言っちゃって、普通の大きさのベッドだと落ちるとかじゃないの?」

セシリア「わ、私の寝相が悪いみたいに仰らないでくださいます?」

鈴「あー、すずしー……やっぱ、適温の環境って大事よねぇ。シャワー借りるわね?」

セシリア「は?シャワーなら空調とか関係ないのだからご自分のお部屋で浴びてくれば良いではありませんの」

鈴「シャワーから出て、涼しい空気で湯上りを愉しむ、これって至高のひと時じゃない?そう思わない?」

セシリア「別にシャワー浴びてから帰ってくれば良いじゃありませんの」

鈴「わかってないなー、セシリア」

鈴「私なんていつも湯上り全裸で涼んでるのよ!あの部屋じゃ涼めないわ」

セシリア「別にシャワー浴びてから帰ってくれば良いじゃありませんの、ダッシュで」

鈴「嫌よ!?寮の廊下を全裸でダッシュとか!?」

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 20:32:40.25 ID:SLXLYoGX0


セシリア「大丈夫ですわ、誰も見て見ぬふりをしてくれるはず」

鈴「何でじっと私の胸元を見るの!?何、貧乳disってんの!?」

セシリア「そうですわね、ごめんなさい。鈴さんと比べてはラウラさんに失礼ですものね」

鈴「ラウラよりはあるわよ!?」

セシリア「……鈴さん、今の発言はラウラさんに対する侮辱ですわ」

鈴「ぇぇぇぇ……」

セシリア「兎も角、あんな地獄に呼び出されて私も汗をかいてしまいましたの、どうしてもというなら私が出るまでお待ちくださいな」

鈴「うぐ、わかったわよ、どーぞ先に入って」


22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 20:44:54.42 ID:SLXLYoGX0


鈴「それにしても……」チラ

鈴「(凶悪な体してるわねー相変わらず。白人ぱないわ……)」

セシリア「では、お先に」

鈴「はいはい」


シャワー…


鈴「そーだ……ちょっと悪戯してやろっと、にっひひ」


鈴「あら、一夏ー!どーしたの?セシリアに用?」

ガタンッ

鈴「あ、今セシリアシャワー浴びてるのよ、見てく?」

ガタガタガタン

バン

セシリア「い、一夏さんッ!?見てくなんてそんな、前もっておっしゃってくれれば私はいつでも、むしろお背中を……」

鈴「……」ニヤニヤ

セシリア「……やられましたわ」

鈴「シャワー使い終わった?じゃ交代ね?」

セシリア「まだですわよっ!」

バン

鈴「怒る事無いじゃん……」

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 21:06:04.75 ID:SLXLYoGX0


――セシリアの部屋、ドアの前


一夏「(次のテスト範囲について聞きに着ただけだったんだけど……鈴のやつ、ノックする前に判るのかと思ってびっくりしたじゃないか)」

一夏「(それにしても、千冬ねえが言ってたけれど鈴の部屋は本当にエアコンが壊れたんだな、まあ、セシリアとはなんだか仲がいいみたいだし大丈夫だろう)」

一夏「(セシリア、言ってくれればとか言ってたが……女同士で仲がいいとやっぱり風呂も一緒に入ったりするのか?)」



鈴『セ・シ・リ・ア』

セシリア『きゃあっ!鈴さん!?どうしたんですの?』

鈴『どうせだったら一緒に入ろうかな、なんて思って』

セシリア『もう、仕方ないですわね……でも、二人では狭いですわね』

鈴『洗いっこしようよ……ほら、わ、セシリアの肌ってスベスベ……』

セシリア『あ、ああ、おやめになって……そんな所』

鈴『セシリアの胸、プリンみたい、あむ』

セシリア『ひゃああああああん』



千冬「織斑、貴様女子の部屋のドアの前で何息を荒くしている」

一夏「ハァハァ……ハッ!?」

千冬「ついてこい、実家の天井裏に隠してあったものについてと併せてきっちり説明してもらおうか」

一夏「いいッ!?そ、それは!!違う、それは弾が!弾が!」

一夏「違うんだ!千冬ねえ!違うんだッ!」





25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 21:14:20.21 ID:SLXLYoGX0


鈴「……?  ねーセシリア、今一夏の声が聞こえなかったー?」

セシリア「その手には乗りませんわよッ!ほら、交代ですわ」

鈴「はーい」

セシリア「あんまりシャンプーは使いすぎないようにしてくださいましね、この前買ったばかりなのですから」

鈴「はいはい、神経衰弱でもやって待っててよ」

セシリア「お風呂上りは優雅に@チャンで煽って過ごす事にしていますの」

鈴「……ヒクわー」


26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 21:37:02.11 ID:SLXLYoGX0


――風呂上り


セシリア「ふーんふーん♪」

鈴「へー、あんたの髪型ってそういう風にセットしてるんだ?」

セシリア「ええ、手間ヒマかけて、わたくしをドレスアップしているんですわ」

セシリア「……って、マジで全裸ですのね」

鈴「気持ちいーわよー?あんたもやってみればいいのに」

セシリア「結構ですわ、全裸で@チャンネルとか本格的に終わってますもの。それにしても、そうやって下ろしていると、本当に長くて綺麗な黒髪ですわね」

鈴「いや、煽ることがお風呂上りの習慣になってるのも相当だと思うわよ? ふふーん、まぁね」

セシリア「ちょっと、ちゃんと乾かしてからにしてくださいな?あー、もう、水滴がモニターに」

鈴「あ、ごめんごめん。でもセシリアの髪も綺麗なんだし、真っ直ぐ下ろしても綺麗だと思うわよ」

セシリア「ストレートの人はみんなそう言いますわね」

鈴「あれ、それって当ててるわけじゃないんだ?」

セシリア「ええ、ロールにしている以外は地毛ですの」

鈴「でも可愛いと思うんだけどなー。一度やってみたら?あたしみたいなツインテール」

セシリア「わ、私には似合いませんわよ」

鈴「そんなこと無いって、ほら、やったげるから座ってなさいよ」

セシリア「あ、ちょっと……コームはとらないでくださいましね?」

鈴「任せなさいってば」


27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 21:56:03.37 ID:SLXLYoGX0


鈴「でもさー、セシリアのドリルってもみあげとサイドの4つよね?なんか意味あんの?」

セシリア「ドリルとか言わないでくださる?」

鈴「ドリルでいいじゃん。で、意味は?なんかの願掛け?」

セシリア「……ティ、ティアーズの数と合わせてますの」

鈴「プッ」

セシリア「な!い、今笑いましたわねぇ!?」

鈴「あはは、うん、笑った。セシリアって結構ブルー・ティアーズとは長いの?」

セシリア「……そう、ですわね。BT兵器の実験段階からの付き合いですから」


28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 22:26:21.69 ID:SLXLYoGX0


鈴「うちのクラスでさ、ISはパートナーのようにって話で、誰かがそれって彼氏みたいに?とか言い出したもんだから」

セシリア「ふふ、うちのクラスでもありましたわよ、ソレ」

鈴「やっぱり?もー質問攻めに合って大変だったわよ。私ってさ、帰国してから代表候補になったから……甲龍ともそこまで長くは無いのよね」

セシリア「ええっと、実質一年ちょっと?だったかしら」

鈴「それは日本を離れてからね。甲龍とはもっと短いわ」

セシリア「そうですの……寂しい、ですか?」

鈴「……付き合いの長い子達を見てると、ね」

セシリア「……全く、鈴さんはバカですわね」

鈴「あ、こら、ちょっとまだ片方しか……」

セシリア「付き合いは、長い、深いで表現こそすれ、多ければいいものではございませんわ」ギュ

鈴「セシリア……」

セシリア「ほら、こうして近ければ近いほど、触れることが出来るのでしてよ?」

鈴「うん」キュ

セシリア「あなたと甲龍の関係は、羨むほどですわよ。私とブルー・ティアーズと互角以上に動かせるあなたがそんなに寂しがっては、甲龍に失礼ですわよ?」

鈴「セシリア……アリガト」


29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/03(金) 22:51:20.53 ID:SLXLYoGX0


ガチャ!

一夏「セ、セシリア!すまん!匿ってく――」

セシリア「!?」

鈴「!?!?」

一夏「げっ!!り、鈴!?なんて格好してるんだお前!?!?と、とにかく!」

鈴「出てけー!!!!!!!!」ゲシッ!!

バタン!!

一夏「うわああああ、それがセカンド幼馴染に対する態度かあああっ!?」

箒「そこにいたか一夏ぁぁぁぁ!!!!」


―      ギャー



鈴「はー、はー、はー」

セシリア「さ、災難でしたわね。はい、寝間着」

鈴「しんっじらんない!サイテー!ノックも無しに人の部屋飛び込んでくるなんて!!」

セシリア「私も全裸にしておけばよかったですわ……」シュン

鈴「そういう問題!?

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/04(土) 00:05:48.07 ID:Nri0Qlo90


――


鈴「さー……いくわよ……」

セシリア「自由にすると良いわ?」

パチパチパチパチ・・・

鈴「い!一ィ!?」

セシリア「一夏さんの一ですわね、さぁ、駒をお進めになって?」

鈴「くう……借金が、借金が……!」

パチパチパチパチ・・・

セシリア「順調ですわー!また娘が増えましたわ♪」

鈴「いや、あんたネズミかなんか!?車に乗り切ってないじゃない!」

セシリア「せめてハムスターと言って欲しいですわ。ふふ、私は一夏さんと子沢山、あなたは一夏さんと借金地獄。どっちがいい人生か、火を見るより明らかですわね」

鈴「くっ!やめなさいよ旦那を一夏に例えるのは!」

セシリア「……だって鈴さんは昔からコレを一夏さんとやっていたのでしょう?」

鈴「弾と蘭もいる事が多かったけれどね」

セシリア「じゃあ、いつもあなたの旦那様は一夏さんだったわけですのね?」

鈴「なぁ!そんなこと……あるけど」

セシリア「あーあ、むっかつきますわー」

鈴「何よ、あんたがむかつくことじゃないでしょ」

セシリア「私も、同じ学校に通いたかったですわ」

鈴「『一夏と』でしょ?」

セシリア「否定はしませんわ、でも、鈴さんも」

鈴「照れるじゃない、やめてよ」

セシリア「じゃ、やめますわ」

鈴「……やっぱやめないでいい」


32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/04(土) 23:32:14.67 ID:Nri0Qlo90


セシリア「ほんと、素直じゃありませんわねぇ」

鈴「うっさいわね、あんたは私と幼馴染になってどうするつもりよ」

セシリア「当然、幼いころから差を見せつけて一夏さんを諦めさせますわ」

鈴「えぐっ!……ていうかあんたが幼馴染だったとしたら、絶対喧嘩してたわね」

セシリア「あら、嬉しいですわね」

鈴「はぁ?なんで喧嘩になるのがうれしいのよ、ワケわかんない」

セシリア「争いは同じレベルの者同士でしか発生しない、と言いますわ」

鈴「……あんまいい意味に聞こえないんだけれど」

セシリア「私、イギリスでは同級生と口論になった事さえ殆どありませんでしたの」

セシリア「あっても精々先輩方と、ですわね。 もっとも、負けた記憶はございませんけれど」

鈴「あー、なんか想像できるわ」


33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/04(土) 23:33:43.93 ID:Nri0Qlo90


セシリア「IS学園に来て良かった。私、本当はそんな私を諫めて欲しかったのだと思いますわ」

鈴「うわ!叱って欲しかったって?どんだけよ!?」

セシリア「……お父様が……娘心に情けない殿方だったんですの」

鈴「……優しい人だったんでしょ、いいお父さんじゃない」

セシリア「優しかったんだと……そう思いたいですわ、もう確かめる術はありませんもの」

鈴「……と、とにかくー!あんたが一夏をどんな風に好きかなんか聞きたかないわよ……」

セシリア「家族の為、自身の為……対等な相手として接してくれる一夏さんの姿に運命を感じましたの!」

鈴「無、無視するわけね……はぁ、一夏は誰にでもそうよ、セシリアが特別ってわけじゃないわ」

セシリア「知ってますわ、むしろ、特別扱いしていたら好きにならなかったかもしれませんわね」

鈴「う……いや、そう言い切られちゃうと……でも特別扱いされたいんでしょ?」

セシリア「それは勿論そうですけれど、その特別扱いは男女としての特別扱いであって……」

鈴「ああ、うん。判るわ、確認したかっただけ。」

鈴「はあ、求める未来も似てるのね~、あたし達。」

セシリア「ふふっ 恨みっこ無しですわよ?」

鈴「あら、恨めるの?あんた」

セシリア「まるで鈴さんは恨めないみたいな物言いですわね?」

鈴「…………うっさい」


34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/05(日) 00:05:49.98 ID:N78BU35e0


セシリア「はい、ゴールイン。ですわ」

鈴「くぅ、一発逆転を狙ったのに……資産が……」

セシリア「鈴さんはいきなり大きく得ようとし過ぎですわ。流れを見て、少しづつ積み上げてこそ、ここぞという時に大きく得られますのよ」

鈴「あんたが言う? 第一せこいわよそんなの、あたしの性にあわないわ」

セシリア「全く……」

鈴「そういえばどうなの?偏向射撃だっけ?」

セシリア「ええ、随分使えるようになってまいりましたわ。問題は使いどころと、曲げるタイミングの多様化、火器の同時使用かしら」

鈴「けた筈のレーザーに追いかけられるなんてだけでもぞっとしないわね」

セシリア「ですが、まだそれだけですわ……我が祖国の汚名は、私とブルー・ティアーズが濯ぎます」

鈴「サイレントナントカだっけ?正直むかつくわよね、セシリアがこれまでやって来た事、全部盗んじゃってさ!」

セシリア「サイレント・ゼフィルス、"静寂の小灰蝶"。ブルー・ティアーズの姉妹機ですわ」


35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/05(日) 00:16:03.58 ID:N78BU35e0


セシリア「正直……弱音は吐きたくありませんの。でも……っ」

鈴「いいじゃん、私しかいないんだから……悔しいんでしょ?」

セシリア「悔しいに……決まってますわ。ISの操縦技術でも、BTの扱いでも、私は足元にさえ及ばなかった」

鈴「でも、一矢は報いたんでしょ?」

セシリア「まだまだ、ですわ。イギリスの代表候補生として……ブルー・ティアーズの操縦者として」

セシリア「あの子を、ブルー・ティアーズの妹を取り戻して差し上げなくては」

鈴「何なんだろうね、あの、操縦者の子達って」

鈴「技量もハンパじゃない、一体何処で訓練を受けたのかしら……」

セシリア「IS学園の卒業生、なのでしょうか」

鈴「どうなのかしら、でも、随分幼いように見えたって聞くけど」

セシリア「……見た目で年齢を判断するのは」

鈴「ななな、何よ!何見てんのよ!スレンダーって言って欲しいわね!スレンダーって!」

セシリア「ん~、心地よい遠吠えですこと」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/05(日) 02:55:01.73 ID:N78BU35e0


セシリア「人生ゲームって思いの外時間泥棒ですわね」

鈴「これは朝までコースでしょ、強くてニューゲームで」

セシリア「二組は良いですわね、そんな事したら織斑先生の前で眠ることになりますわ」

鈴「[ピーーー]って事よ、言わせないで」

セシリア「御免被りますわ。それでは鈴さん、私寝ますから」

鈴「うん、わかってるわよ、ちゃんと片付けるって」

セシリア「とっとと帰りやがれですわ」

鈴「ここまで来てふりだしに戻るの!?」

セシリア「なんですの、泊まる気でしたの?」

鈴「いや!寝間着差し出したのセシリアだよねぇ!?」

セシリア「仕方ないですわね、ルームメイトも アナタに気を使っていない 事ですし、其方のベッドへ」

鈴「悪いことしちゃったわよね」

セシリア「ほら、とっととお行きなさい、しっし」

鈴「酷くない!?」

セシリア「私のベッドに寝ていいのは一夏さんだけですのよ」

鈴「あったまきた、セシリア~、一緒に寝ましょ♪」

セシリア「何ですのその理屈!」


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/05(日) 03:01:04.99 ID:N78BU35e0


セシリア「とっととお行きなさい……っ!」グググ

鈴「意地でもこっちで寝るわ……っ」ギギギ


鈴「とりゃー!」

セシリア「ちょっ!何下着に手をかけてますの!?」

鈴「裸の付き合い」

セシリア「ああ、なるほど」

鈴「私も脱ぐからさー」

セシリア「えええええええっ!ちょっと、おやめにな……あンッ!」

鈴「ふっふっふ、よいでわないかー……って……うわぁ、改めて見ると、うわぁ……金髪なんだ」

セシリア「――ッ!!!み、見ないでくださいましっ!!」

鈴「んっふっふ、もう覚悟しなさい、セシリア♪」


40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/05(日) 03:21:38.00 ID:N78BU35e0


―― アンッ ヤメッ   アアア… ヨイデハナイカ グフフフ


コンコン ガチャ


ラウラ「セシリア、いや、セシリア・オルコット上官殿、折り入ってお話があるのだが。明日提出の宿題について――」

セシ鈴「「」」

ラウラ「我が精鋭を以ってして、明日の宿題は些か困難の様相を見せている。フランス側からの援軍も残念ながら見込めない。勝手なことを言っていると思うが、ここは貴女の御知恵をお借りしたい」

セシ鈴「「」」

ラウラ「……お楽しみ中のところ申し訳ないが、可及的事態につき、ご考慮願いたい」

セシリア「こ、このクラスメイトが押し倒されている状況で助けようとは思いませんの!?」

ラウラ「失礼ながら、個人的嗜好には目を瞑るべきである、との認識ゆえ。」

ラウラ「セシリアと鈴に関しては、とっくの昔にそうであると、私の記憶にはある。相変わらず仲が良いな」

鈴「わかったら出て行きなさいよ、箒にでも頼めば良いでしょう?」

ラウラ「む、すまない。箒には既に頼ったのだが、にべもなく断られたのだ。だが、此方もダメなようだな」

セシリア「ちょーっとお待ちなさいですわっ!明日の宿題なら写させてあげますから!鈴さんを!」

ラウラ「流石は裏クラス代表!セシリアの危機には必ずや馳せ参じようぞ……それで、ノートはどこにある?」

セシリア「今が危機なんだからまずはとっとと助けやがれですわ!!」

鈴「ちょっとセシリア、いいじゃないたまには。減るもんじゃなし」

セシリア「精神的に減りますわ!!!」


41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/06/05(日) 03:28:50.68 ID:N78BU35e0

1.ラウラ、鈴を引き剥がす

2.ラウラ。ノートだけ持って撤退

3.一夏さん。出撃します!


安価 >>45

外れたら前後近い順。

続きは夜。




45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 04:01:15.80 ID:M5DV8tkeo

そして気にせず1選らんどく



47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/05(日) 04:15:23.17 ID:N78BU35e0

ありがとう!そしてありがとう!マジで!!読んでくれてマジありがとう。
良かったらたまに目を通しておくれ……しばらくやるつもりだから。
こんな時間になったのは思った以上にバーサーカーメイルが出なかったせいさ……



安価は「1:ラウラ、鈴を引き剥がす」で進めます。


49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/06(月) 00:41:15.05 ID:omdU2jrd0


ラウラ「くっ……ええい、許せよ!鈴音!」

鈴「あっ!どうして邪魔をするのよッ!」

ラウラ「どうしてと言われても……強いて言うなら教官に絞られないためだ、悪く思うな」

セシリア「はぁ、はぁ、助かりましたわ……」

ラウラ「気にするな、さてセシリア、早速なのだが……」

セシリア「判っていますわ、お待ちになって」

鈴「…………」ヒソヒソヒソヒソ

ラウラ「……うん?何だ鈴」

セシリア「はい、どうぞ?丸写しでは織斑先生にバレますわよ。明日授業前には返して下さいましね」

鈴「…………」ヒソヒソヒソヒソ

ラウラ「……」


50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/06(月) 00:42:17.27 ID:omdU2jrd0


セシリア「……な、何をしているんですの……?いやな予感が」

ラウラ「うむ、セシリア、すまないな、恩に着る」

鈴「……」ヒソヒソヒソヒソ

ラウラ「ときにセシリア、中華料理の点心は美味いと思わないか?」

セシリア「……はあ、まぁ……」

ラウラ「そうか、恩を仇で返す事になってすまないと思う、だが……」

ラウラ「お前を拘束させてもらおう」

セシリア「わ、わけがわかりませんわ!?どこからそんな流れに……」

セシリア「はっ!鈴さん!!買収しましたわね!?」

ラウラ「本当にすまないと思っている。案ずるな、無理に解こうとしなければ痛みは無い」

鈴「ふっふっふ、観念しなさい、セシリア」

セシリア「い、いやー!どうしてこうなるんですのー!」


―― ワガドイツノカガクリョクハー! キャー


51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/06(月) 01:25:52.85 ID:omdU2jrd0



――チュンチュン


セシリア「く、屈辱ですわ……私のファースト腕枕で朝チュンが……」

鈴「え?あ、ああ、うん。そう……ね」

セシリア「ちょっと、何悟ったような顔してますの」

鈴「これは強敵だわ……」

セシリア「……シャワー、浴びに行かせて頂きたいのですけれど」

鈴「ああ、うん。シャワーね。先に使うわね」

セシリア「先にほどいて下さってもよろしいのでは無くて!?」


52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/06(月) 01:27:34.15 ID:omdU2jrd0


コンコン


シャル「おはようセシリア、ちょっといいかな?」

ラウラ「シャルロットか?どうした」

カチャ

シャル「ああ、ラウラここにいたんだ。良かった……まさか朝まで帰ってこないなんて思わなかったよ」

ラウラ「そうか、見ろシャルロット、セシリアの協力で宿題は完了だ」

シャル「そっか、良かったねラウラ。一夏の部屋じゃなくてよかった……」

ラウラ「ところで、なぜ後ろ手にコンバットナイフを隠し持っているのだ?」

シャル「やだなぁ、護身用に決まってるじゃないか」

ラウラ「そうか、把握した」

鈴「納得する所じゃないと思うわよ……」

シャル「やあ、鈴もおはよう。あれ?セシリア?どうしたのその格好……」

セシリア「シャルロットさん!丁度良かった、ロープを……」

鈴「ラウラ!お願い」

ラウラ「承知!」

セシリア「むぐー!?むぐぐー!!」サルグツワ

鈴「その体がいけないのよ」

シャル「えっと、よく判らないけれど、遅刻しちゃうよ?それじゃ僕は教室に行くから……」

鈴「げっ……というか、もう時間ギリギリなんだけど!!」

ラウラ「セシリア、宿題の協力感謝する!シャルロット先に行ってくれ、着替えて私も直ぐに追おう!」

セシリア「むぐー!?むぐむぐー!?むむー!!」



一夏「あれ?セシリアは?」

鈴シャルラウラ「「「さあ?」」」

箒「何故ハモるのだ……」


53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/06(月) 01:57:44.05 ID:omdU2jrd0



千冬「……まったく、あいつは……山田君、後は頼むぞ」

山田「は、はい!それでは皆さん、授業を始めます」







千冬「オルコットめ、休み明けだからとたるみおって……」

バン!

千冬「セシリア・オルコット!貴様はIS学園を何だと……なん……だと」

セシリア「むぐむぐむぐぐー!」

千冬「……」



55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/06(月) 02:26:14.31 ID:omdU2jrd0




――グラウンド



鈴「ぐぎぎぎぎぎぎ」

ラウラ「うおおおっ!砲戦パッケージはレールカノンが重くて動けん!というか起き上がれんッ!!!」




千冬「……山田君」

山田「はい?」

千冬「…………私は挫けそうだ」

山田「えええええっ!?」




58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 02:45:42.94 ID:7vF1P9g70



昼休み・IS学園屋上


一夏「二人とも大丈夫か?」

鈴「無理!もー動けない」

ラウラ「砲戦パッケージのままだった事が敗因だ、そうでなければ……」

セシリア「お二人とも反省の色が皆無ではなくて!?」

箒「今回は流石に擁護できん。クラスメイトを縛ったまま放置とは……」

シャル「全く、二人とも……ちゃんと反省してるの?」

鈴「(あれ?なんでこいつナチュラルに部外者面してんの……?)」

ラウラ「(何故だ、シャルロット……)」

一夏「……」

鈴「何急に黙ってんのよあんたは」

一夏「いや、違うぞ?違うからな!?」

箒「何が違うのか、聞かせて貰いたいところだな」

ラウラ「もしやもう一度縛って欲しいのか?」

一夏「ま、まさか。はは……

セシリア「全く、またジャパニーズジョークとやらを考えてましたの?」

一夏「あ、うん、それだ。そうなんだ」

鈴箒「「(絶対違う……)」」


59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 03:04:15.92 ID:7vF1P9g70


一夏「あー、そういえば鈴、エアコンについてはもう申請したのか?」

鈴「あ!忘れてたぁ……!」

一夏「ああ、それなら俺が楯無さんに伝えておくよ。これでも生徒会だしな」

セシリア「あら?でも、この場合は寮長に申請を提出するべきでは……」

一夏「あ、そうか、ドアの修理申請もそうだったし」

鈴「……つまり……千冬さん?」

ラウラ「……ふっ。私の勝ちだな」

鈴「何が!?」

箒「……大丈夫だ、ドアの修繕の申請は事務的に済ませてくれたぞ」

一夏「お前は何もして無かったじゃないか。俺は大変だったんだぞ……」

鈴「ね、ねぇ一夏」

一夏「いいっ!?い、嫌だ!断る!」

鈴「何よ!まだ何にも言ってないじゃない!」

一夏「お前が千冬ねえが苦手なのは判るがどうして俺が!壊したのは鈴だろ!?」

鈴「それくらいいいじゃない!じゃ、じゃあ、せめて一緒に……「私が一緒に行って差し上げますわ」

鈴「はぁっ!?」

セシリア「ですから、私が一緒に謝りに行って差し上げますわ」

一夏「セシリア……ありがとう。流石セシリアだな」

セシリア「当然の事、ですわ♪」

鈴「くっ」

シャル「……出遅れたよ」

箒「……むう」

ラウラ「……?」


60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 03:10:42.86 ID:7vF1P9g70



セシリア「♪~」

鈴「あーあ、怒られるんだろうなぁ……」

セシリア「仕方がありませんわ、寝ぼけてIS起動してエアコンを割ったご自分が悪いのですから」

鈴「でも寝ぼけてたんだからさー……はぁ」

セシリア「こっぴどく叱られるが良いですわ~♪」

鈴「なによ、イヤに上機嫌じゃない」

セシリア「当然ですわ!友情の為に死地に付き合う私の姿に、一夏さんはもうメロメロ!今夜辺り期待しても良いかもしれませんわね!」

鈴「……一夏に夢見すぎよ」


コンコン


セシ鈴「「失礼します」」

千冬「ああ、入れ」

カチャ

鈴「織斑寮長、備品の修理申請をお願いします」

千冬「ああ、この前言っていたエアコンだな。そろそろ来るころだと思っていた。遅いくらいだ」

鈴「は、はい、それでは……「まぁ、待て」

千冬「そう急ぐ事もあるまい?まぁ、座っていけ」

鈴「ち、千冬さん?椅子も座布団も無くてここ……床なんですケド~……」

セシリア「機嫌が悪いですわね」ヒソヒソ

鈴「セシリア、一緒に地獄へ落ちましょう?」ヒソヒソ

千冬「座っていけと言ったんだが……?」

セシリア「……そ、それでは、わたくしh「オルコット」

セシリア「」ガクガクブルブル

千冬「友達の為に一緒に来ると言う気概はよし、そら、お前には座布団を貸してやろう」

千冬「……ん~?凰、何をナチュラルに胡坐で座ろうとしている。当然正座だ、セシリアもな」

セシリア「」

千冬「凰、お前の部屋は既に見せて貰ったが、何だあの壊れ方は……」

鈴「い、いえ、アレは……」

千冬「それに、今朝もだ……」

鈴「」


61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 03:32:35.79 ID:7vF1P9g70



小一時間




千冬「…………以後、気をつけるように」

鈴「はい、すみませんでした」

セシリア「……終わった……です……の……?」

チ冬「いや、ここからは個人的な話だ。そのままで聞け」

セシリア「……!?」

ドサ

チ冬「……落ちたか、つまらん」

鈴「セシリア……安らかに眠りなさい」


スパーン!

鈴「あいた!」

千冬「凰、貴様の為に途中で逃げ出さなかったオルコットに感謝するのだな」

鈴「(逃げたくてももう足が動かなかっただけじゃ……)」

千冬「エアコンが治るまで暫くお前とオルコットは同室だ、仲 良 く やれ」

鈴「は、はい。失礼しま……」

スパーン!

鈴「あいたっ!」

千冬「持って帰れバカ者」

セシリア「キュウ」

鈴「は、はい」


63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 04:03:33.21 ID:7vF1P9g70


ルームメイト「ええと、それじゃセッシー、行ってくるわね」

セシリア「え、ええ……ごめんなさいね、ご迷惑をおかけして」

パタン

鈴「部屋のほとんどを占領してるあんたが既にご迷惑じゃない?」

セシリア「うっさいですわよ。うう……まだ足が動かせませんわ……」

鈴「軟弱ねぇ、ま、一緒に来てくれたのは感謝してるわよ」

セシリア「一夏さんと鈴さんを二人にしない為に名乗り出ただけですわよ」

鈴「……ま、そんなこったろうとは思ってたけどさ」

ギシ

セシリア「鈴さん?どうして私のベッドに座ってるんですの?あなたのベッドは……」

鈴「いーじゃん、セシリアのベッドふかふかで寝易いんだよね~。まだ足痺れてる感じ?」

セシリア「チリチリとした痛みは無いのですけれど、じ~~んとした痺れが」

鈴「そっか!よし!」

ツン

セシリア「ぅわひゃあぁぁッ!?」

鈴「ほれほれ」

ツンツン

セシリア「アヒィィィん!!」


64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 04:15:46.20 ID:7vF1P9g70


廊下


一夏「……こ、これは……」

一夏「(部屋の中でいったい何がッ!?千冬姉ェは一体何をしたんだッッ!!)」

一夏「(冷静に、冷静になれ……俺は今どうすべきだ、白式!応えてくれッ!)」


ホンワホンワホンワ

セシリア『ああ、鈴さん……』

鈴『だめねえセシリア……この雌豚!白豚!二人の時はお姉様でしょう!?』

セシリア『アヒィィ!もっと、お姉様ぁぁぁ』



一夏「くっ、ピュアが暴走する……ッ 千冬姉だ、千冬姉のフルヌードを妄想しろ!死の気配を感じ取れ!!」

千冬「……」肩ポム

一夏「!?」

千冬「……」

一夏「……」

千冬「……判るな?」

一夏「……は……はい」



――     ギャー


71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 23:36:39.81 ID:7vF1P9g70



鈴「あれ?今一夏の声が……」

セシリア「声もしますわよ、同じ寮に住んでるんですから」

鈴「あら、もー平気そうね」

セシリア「……いつかお返しして差し上げますわ……」

鈴「ふふー、がんばんなさい。それにしてもそんなにきついもの?正座」

セシリア「ちょっとした拷問以外の何物でもありませんわ」

鈴「座り方が悪いのよ、何と言ったらいいのか難しいけれど……」

セシリア「足を傷めつけてまで座るなんて、座る意味が無いじゃありませんの」

鈴「あら、でもきっと将来一夏が家を建てるなら絶対に和室は欲しいって言ってたわよ?」

セシリア「!!」

鈴「セシリアは和室で寛いでる一夏には寄り添えないのねー」

セシリア「か、必ず正座をものにして見せますわ!オルコット家の名にかけて!早速練習ですわね」

鈴「(相変わらずちょろいなぁ)」


72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 23:45:59.93 ID:7vF1P9g70


セシリア「何か仰いました?」

鈴「いいえぇ、何でも。ささ、じゃあ早速やってみましょうか」

セシリア「では……」

パシーン!

セシリア「あいたあ!?」

セシリア「な、何をなさるんですの!!」

鈴「ベッドの上で正座ってなめてんの!床!」

セシリア「……ぐっ……わかりましたわ」

鈴「はい、ちゃんとつま先は伸ばすのよ!」

セシリア「くう、なんでこんな痛くなるように……」

鈴「(やっばー、楽しくなってきたぁぁ!)」

セシリア「……」

鈴「どうしたのよ、膝立ちで……さっさとお尻を落としなさいってば」グイ

セシリア「あ、お待ちに、心の準備が……うきッ!?」

鈴「ウキって……ぷーっ!」

セシリア「あ、あなた……私に何の恨みが……」

鈴「この程度で音を上げてたら一夏の和室には入れないわよ!」

セシリア「はっ!そうですわ……この程度……」


74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 23:52:28.93 ID:7vF1P9g70


セシリア「(一夏さんを想えば!かっこいい一夏さん!理想の男性の一夏さん!イケメン一夏さん!ちょっと間抜けな一夏さん!可愛い一夏さん!大好き一夏さん!素敵一夏さん!抱かれたい一夏さん!ちょっぴりエッチな一夏さん!シスコンな一夏さん!一夏さんの為に……!)



――30秒経過



75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/07(火) 23:53:09.68 ID:7vF1P9g70


一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!モッピー!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!




77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/08(水) 00:02:30.56 ID:YARyZA7Y0


セシリア「(一夏さん!)」パシーン!「(一夏さん!)」パシーン!「(一夏さん!)」パシーン!「(一夏さん!)」パシーン!

セシリア「って痛ッ!?お尻が痛いですわッ!?何でお尻を叩いてるんですの!??」

鈴「えっ? ……雑念を払う為よ!これが日本式の修行!」

セシリア「ほ、本当ですの!?やっぱり野蛮な国ですわ……」

鈴「へー……一夏の愛する祖国よ?」

セシリア「素晴らしい習慣ですわね!さ、どんどん参りなさい!」


78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/08(水) 00:11:27.55 ID:YARyZA7Y0


セシリア「(一夏さん!)」パシーン!「(大好きですわ!)」パシーン!「一夏さぁん!」パシーン!「一夏さぁぁん……!」パシーン!「ぁっ……んッ一夏さん……」パシーン!「ひぁっ……一夏さん」パシーン!

鈴「……セシリア、変な顔して一夏の名前呼ぶのやめようよ……い、いかがわしいから」

セシリア「そ、そんな趣味ありませんわ!ただ、一夏さんのことを考えていただけで……けけけ決して一夏さんに叩かれてるみたいとか考えてませんわよ!?」

鈴「わぁ……軽くヒクわぁ」


79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/08(水) 00:16:49.14 ID:YARyZA7Y0


セシリア「そ、それより……続きを」

鈴「えー……なんかやだ。  しっかし、デカイケツねェ」

セシリア「喧嘩売ってますのッ!?」

鈴「うわわっ!そこキレるラインなんだ!?って、そんな急に立ったら……」

セシリア「ぁ、いだーッ!」バタン



81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/08(水) 00:23:06.89 ID:YARyZA7Y0



―― 廊下


一夏「ふう、酷い目にあった……煩悩退散、ボン・ノータイさん……」


  ―― ァイダーッ


一夏「ふむ、アイダと言えば翔子だろ」キリッ

モップ「……」

のほほん「……」

一般生徒ズ「「「「……」」」」

一夏「よう!どうしたんだ? あー、冷静と情熱の。でも良かったかな?」


――ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ

一夏「!?」


――ヒソヒソヒソヒソオッサンヒソヒソ

一夏「!?」


94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 14:46:10.64 ID:k+BHr3sV0



翌朝

鈴「ふぁ~あ、やっぱさー、セシリアのベッドって気持ち良いよねー。」もふもふ

鈴「……ありゃ、まだ寝てンの?」

セシリア「……」スヤスヤ

鈴「……セシリアー……早く起きないと遅刻するわよ?」

セシリア「……うふふ……一夏さぁん……」ムニャムニャ

鈴「……セシリア……」

ラウラ「うむ、よい寝顔だ。あれだ、やはりセシリアは鈴の嫁か?」

鈴「うわあっ!?ラ、ラウラっ!?」

ラウラ「ああ、おはよう鈴」

鈴「おはようじゃなくて!なんであんたが天蓋に張り付いてるのよ!?」

ラウラ「……???」

鈴「いや質問の意味が理解できないって顔されることが理解できないわよ……」


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 14:47:22.25 ID:k+BHr3sV0


ラウラ「いや、シャルロットが……」

回想シャル『ラウラならクラスメイト全員の寝顔を盗撮してくるくらい余裕だよね?』

ラウラ「と」

鈴「それで一体何をするつもりなの!?」

ラウラ「とりあえず、そこを退け。被写体以外は映さないように言われている」

鈴「どかないわよ!?」

セシリア「……ンぅ……何なんですのぉ、朝から騒々しい……」

ラウラ「……ええい、こんなものか……借しておくぞ!鳳 鈴音!」シュッ

鈴「富野節のつもり!?」


96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 14:48:27.85 ID:k+BHr3sV0




セシリア「……ぁふ、今……ラウラさんが居られたような……?」

鈴「……気のせいよ」

バタン

セシリア「……今、ドアが閉まったような??」

鈴「(あのバカァァァァァ!せめて静かに出て行きなさいよ!!)……き、気のせいよ!?」

セシリア「……そうですの?……ああ、朝ですのね……シャワー……」シュル…

鈴「ちょ!脱衣所で脱ぎなさいよ!」

セシリア「散々全裸で人の部屋荒らしてる鈴さんに言われたくありませんわぁ……別に、シャワーまでの間ですもの」ネムネム

鈴「荒らして無いじゃない!まだ」

セシリア「……まだじゃなくて、荒らさないでくださいまし~……?」トコトコ

鈴「ハイハイ」

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 14:52:15.15 ID:k+BHr3sV0




ガチャ

一夏「セシリア。悪い、今日の授業なんだが…………あ」

セシリア「ぁ?」

鈴「はぁッ!?」

一夏「これが……伝説のラッキースケベというやつか……」

セシリア「○×△Эⅷ〃!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ラウラ「一夏!どうした!?」

箒「一夏!![ピーーー]ェェェェ!!!」

鈴「あんたたちどっから湧いてきたの!?」

一夏「ま、まて!俺はまだ肝心の所は見てない!見えなかったんだ!見えなかったんだよ!!」


――  ギャー


98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 14:57:17.44 ID:k+BHr3sV0




千冬「また……お前たちか……」

箒「……くっ、申し訳ありません……」

鈴「千冬さん!でもあれはノックもしないで入ってくる一夏が……」

ラウラ「私は通りがかっただけで……」

千冬「ボーデヴィヒ、貴様にはカメラについて後でゆっくり話を聞かせてもらう」

セシリア「(一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん一夏さん)」

千冬「どの道貴様らにはご褒美だろう?」

モッセシ鈴ラウ「「「「はい」」」」

千冬「よし、各自ISを展開しPICを切ってグラウンド走って来い。午前中ずっとな」


100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 15:03:07.32 ID:k+BHr3sV0


千冬「……」ハァ

山田「あはは、はは、わ、若いですから」

千冬「……山田君」

山田「はい?」

千冬「私は何処で間違った…………っ?」ギリッ

山田「は!?」


101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 15:08:01.42 ID:k+BHr3sV0




―― グラウンド


セシリア「ちょろいですわ!」ザスザスザスザスザス…

鈴「ちょっと!あれってズルじゃない!?」

ラウラ「ビットのバインダーを……脚代わりに……だと!?」

箒「セシリア!卑怯だぞ!?」

セシリア「デザイン性の勝利ですわね!」

 ※ AセシA←Aの部分。ブルーティアーズ(ビット)のバインダーを脚代わりに、地面を刺しながら走って(?)います。


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 15:10:33.09 ID:k+BHr3sV0


山田「あの、織斑先生……」

千冬「あははははははははは」

山田「織斑先生、グラウンドが……耕されてるんですが……」

千冬「あははははははははは……ハァ」

千冬「……任せた」

山田「……え?」

千冬「私は帰る!後は任せた……」ツカツカ

山田「ええっ!?そんな!」


103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 15:36:56.16 ID:k+BHr3sV0


ラウラ「そうか、起き上がる必要など無いのだ!レールカノンの反動で……!!」

鈴「電磁砲に反動があるならね」

箒「いや、その体勢で撃つと地面が爆ぜるからその爆発力で……というやり方でいけるんじゃないだろうか」

鈴「危ないんじゃない?というか、一夏はどうしたのよ、私達だけが走らされてるっておかしくない?」

セシリア「ちょろいですわ!」二週目

箒「あ、ちょっと待てセシリア」

セシリア「あら?なんですの」

ラウラ「一夏がそういえばいないのだがお前は何か知らないか?」

セシリア「私が最後に見たのは……箒さんのサッカーボールキックが一夏さんのお腹にクリーンヒットした所までですわ、その後は……」

箒「ふむ、私もその後すぐに取り押さえられたからな、判らん」

鈴「……ちょっと待って、もう一人いなくない?シャルロットは??」

ラウラ「ああ、シャルロットならさっき教室にいたぞ」

鈴「とことん自分に実害が無い位置をキープしてるわね……」

セシリア「じゃあ、一夏さんは何処へ……?」

ラウラ「そういえば……先程から教官の姿も見えないな」

セシリア「いいいいい、いけませんわ!姉弟でそんな!」

鈴「そこに直結するセシリアも相当よ」


箒「だが……確かめねばなるまい?」


104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/09(木) 16:00:48.19 ID:k+BHr3sV0


―― 平日昼間 街 河川敷


鈴「此方鈴音。予測座標A地点で対象A、千冬さんを発見、どうぞ」

ザザッ

ラウラ通信「了解した、箒とセシリアも各予測座標の確認後A地点に向かい尾行のバックアップに入ってくれ」

ザザッ

セシ箒通信「「了解」」

ラウラ通信「私も部隊との連絡を継続しつつ、残る対象B、一夏の座標を割り出す」

セシ通信「頼みましたわ。それと鈴さんお判りでしょうけれど……」

鈴「わかってるわよ、千冬さんの直感力は昔から異常だったからね……5秒以上は視線を向け続けないようにしてるわ。それよりあんた達も」

箒通信「無論、ISが使えないのは不便だが……何があってもISは使わん」

鈴「私達はここにはいない。もし、お巡りさんに補導されても仲間は決して売らない」

セシ通信「平日の昼間に学校サボっているなんて、新鮮な感じですわ」

ラウラ通信「そうだな、こんな事をするようになるとは私も思っていなかった……クラリッサの話では、これが青春と言う奴なのだろう?」

鈴「ちょっと違う気もするけど」

箒通信「少し違うくらいが、私達らしいのさ。おしゃべりはここまでだ、行くぞ」

「ええ!」「うむ」「はいですわ」



111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:07:09.67 ID:FFwBWkhP0


箒「待たせたな、鈴」

鈴「あれ?セシリアは……?」

箒「何?まだ到着していないのか?」

鈴「それが……さっきから呼びかけているのだけれど反応が無いのよ

箒「妙だな……ラウラ、箒だ。セシリアの現在位置は判るか?」

ラウラ <<うむ……此方からも既に何度か呼びかけているのだ……近くには着ているのだが>>

ラウラ <<いや、待て……動いた……?いや、反応がもう一つ……これは白式か!!>>

鈴「はぁ!?」

箒「それって……どういう事だ?」ワナワナ

ラウラ <<うむ……セシリア・オルコットは、現在織斑一夏と行動を共にしている>>


112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:07:55.45 ID:FFwBWkhP0



鈴「セッスィィィィールゥゥゥゥゥィィアァァァァァァァ!!!」

箒「待てッ鈴!そんな大声を出したら気付かれてしまう!!」

ラウラ <<バカ者!何をやっている!!くっ!気付かれたか!織斑教官が移動を開始した!>>

箒「くそっ!ラウラ、後は頼むぞ!例え捕えられてもお前たちの事は決して話すものか!」

ラウラ <<いや、箒、向かって来てはいない。教官はこの場からの逃亡を試みている!>>

箒「何だと!?――罠か……?」

ラウラ <<ああ、罠の可能性が高い。だが、我々の目的を忘れたか?>>

箒「一夏と織斑先生が姿をくらませた理由の確認」

ラウラ <<そうだ、織斑教官に拘る理由は無い!箒は先行した鈴を追ってくれ。座標を送ろう。私もすぐに向かう!>>


113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:10:51.91 ID:FFwBWkhP0


―― 繁華街の裏路地


鈴「……」ボーゼン

箒「鈴!追いついたぞ……二人は何処だ!?」

鈴「……あの……中に……セシリアがお姫様抱っこされて……」

箒「何を呆けている!? ……あ、あ、あ、あ、あ、あの建物なのか!?」

ラウラ「二人とも、どうした!?まさか見失ったのか?」

鈴「や、見失ったわけでは無いんだけれど……!」

ラウラ「日本にもこんな城があるのだな、どうした、突入するぞ!」

鈴「ちょっと!待って!待ちなさいよ!?」

箒「お、女三人ではいることになるとは……」


114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:12:05.13 ID:FFwBWkhP0


―― 裏路地のお城内部


ラウラ「日本の城とは宿泊施設なのか?それにしてもイヤに薄暗いが」

鈴「それより、何処にいるのか判るの?」

ラウラ「任せろ!クラリッサに追跡データを転送してもらっている!!」

箒「こ……こうなっているのか……なるほど、なるほど……」

鈴「なーに、知らなかったのぉ?」

箒「あ、当たり前だ!このような所……お前は知ってるのか?」

鈴「えっ!?そ、そりゃ知ってるわよ?当たり前じゃない!」

箒「本当か!?誰と……いや!聞かない!聞きたくない!」

箒「……なんということだ……くっ」

鈴「箒って人の事言えない位ちょろいわよね……」

箒「!?」


115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:12:39.69 ID:FFwBWkhP0



鈴「しかも深刻に受け止めすぎよ、来た事あるわけ無いでしょ?」

箒「だ、騙したのか!?」

鈴「騙されると思わなかったわよ、いくらなんでも!」

ラウラ「お前達!遊ぶのは帰ってからにしろ!この部屋だ!」

鈴「……ッ!鍵が」

箒「だと思っていたさ!破るぞ!!」

鈴「ちょっと!流石に授業をサボった上に学園の外でISを使ったのがばれたら!!」

箒「ふん、貴様もちょろいな!体当たりで破るに決まっているだろう!いくぞ、タイミングを合わせろ!!」

鈴「なっ!あんた「3!」

ラウラ「全く……「2!」

箒「1!」

箒鈴ラウ「「「0!!」」」


ドガァッ!!


箒鈴ラウ「「「一夏ーっ!!」」」


116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:13:29.70 ID:FFwBWkhP0




セシリア「むぐー!むぐぐー!!」




117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:14:15.22 ID:FFwBWkhP0



ラウラ「!?」

鈴「セシリア!?あんただけ……!?」

箒「一夏!どこだ!?ラウラ、どうなっている!」

ラウラ「ま、待て、今白式の反応を……」

鈴「あんたホント縛られてばっかりねぇ、好きなの?」ゾクゾク

セシリア「んんむむぐー!むぐぐー!むぐぐー!」

ラウラ「いかん!鈴!!上だ!!!」



118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:15:15.73 ID:FFwBWkhP0



千冬「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



鈴「ギャアアアアアアアアア!?千冬さんどうしてええええええ!?」

千冬「織斑先生と呼べ!!!!」

千冬「授業をサボってェ……遊びまわりィ……挙句ラブホとはァ……」

千冬「覚悟は出来てるな貴様らァァァァ……」カハァァァァァァ


119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:16:05.27 ID:FFwBWkhP0

――

箒「何だ!!どういうことだ!!何なんだアレは!!!」

箒「どうして一夏ではなく先生が!全裸でロープを持ち男物のパンツをかぶってス○イ○ー○ンのように天井から降りてくる!!」

ラウラ「……あれは、白式の腕輪……罠は……此方だったと言うことか!」

箒「どういうことなんだ!言葉にして説明してくれ!!」

ラウラ「我々が河川敷で監視し、逃がした教官こそ……我が嫁・一夏本人!」

箒「……ちょっと待て、私は確かに見たぞ!?あれは、あのスーツは間違いなく……」

ラウラ「ここに白式の腕輪があり、そこに一夏のものと思われる制服もある……では、今一夏は一体何を着ている?」

箒「……まさか、そんな」

ラウラ「そのまさかだ……現在一夏は、教官のスーツを着ている」

箒「……っ!なんということだ」

ラウラ「しかも……あのパンツも恐らく一夏のだろう」

箒「下着までか!!下着までいったのか!!」

ラウラ「認めたくは無い、だが……結果が物語っている」

鈴「あんたら助けなさいよ!!!」

セシリア「むぐー!!むぐむぐむぐー!」


120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:17:23.49 ID:FFwBWkhP0


箒「っと、すまない!今……」

ラウラ「ふはははははは!お前たちは判っていない!織斑千冬という恐怖を!!」

ラウラ「助ける?何をだ?苦しまぬよう一思いに殺せとでも言うのか?」

箒「いや……お、おい?ラウラ?」

ラウラ「いいか、教えてやる!出し惜しむな!IS無しで何とかできると思うな!……いや、ISがあったとて、4人程度では……」

ラウラ「はっはははは!終わりなんだよ!もう!」

箒「……狙われてるぞ」

千冬「私は何だ、女勇次郎か何かか?」ガシ

ラウラ「――ひっ!」


121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:18:24.31 ID:FFwBWkhP0


バンッ!!

シャル「もうやめてください!織斑先生!!」

千冬「ぁあ?」

シャル「僕達は先生が突然お帰りになったと聞いて!!皆で探しに来ていたんです!!!」

千冬「……な……なんだと」

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:19:43.94 ID:FFwBWkhP0


鈴「(なんですってぇぇぇぇぇ!!!!)そ、そうなんです!千冬さん!」

ラウラ「(シャルロット!?)教官がいなくては我々は!!」

箒「(お前教室にいただけじゃないか!?)先生!」

セシリア「もがもがふぐー!!!」

千冬「お前たち……とんでもないダメ人間がまとめてやってきたと思っていた私が間違っていた!!」

千冬「こんなにも生徒たちが思ってくれているのに私は……くっ、私もまだ、未熟だな……」

シャル「……やー、間一髪だったねー」ヒソヒソ

ラウラ「シャルロット……礼を言う、しかし何故ここが」ヒソヒソ

シャル「やだなぁラウラ、僕のカメラ、キミが持ったままじゃないか」ヒソヒソ

ラウラ「む?そうか……いや、そうではなくて、何故」ヒソヒソ

鈴「(発信機ね)」

箒「(発信機だな)」


千冬「すまなかったな、皆。さぁ、帰ろう我らの学園へ!」


シャル「……みんな、これは貸しにしておくよ?」

「……」「……」「……」「……むぐ」



124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/10(金) 01:28:14.04 ID:FFwBWkhP0

          ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ
           {::{/≧===≦V:/
          >:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ、   モッピー知ってるよ
       γ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     _//::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ  
.    | ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i  オリ男出すと荒れるから没ったけどこんなオチ予定してたって知ってるよ。
     、ヾ|:::::::::|:::/`ト-:::::/ _,X:j:::/:::l 
      ヾ:::::::::|≧z !V z≦ /::::/   
       ∧::::ト “        “ ノ:::/!  
       /::::(\   ー'   / ̄)  |
         | ``ー――‐''|  ヽ、.|   
         ゝ ノ     ヽ  ノ |
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

男「いいケツしてんなぁ」

一夏「ひぃっ!ち、違う俺は!」

男「お、俺ッ娘か、いいもん拾いやしたね!お頭!」

男「おう、コイツは縛って群馬まで持ち帰るぞ」


     -──‐  .
   /r‐v‐v‐v‐、  ヽ
  , ' / ̄ ̄ ̄ ̄|   ',
 /  /_____j
 /  /Y^Y^Y^Y^Y}     i 流石にこのオチはないですわ……
 .′ !,メ、_{ l| 厶斗|     |
′ { | ◯ \{'  ◯′/  八
! i  Y “    し “イ  /   、あ、本日はここまでですのよ。
| .| /(\   ー   // ̄) 、 〉
| |   | ``ー――‐''|  ヽ、. |


132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/12(日) 01:41:36.66 ID:O6dJ8d4Z0


鈴「ふー……生き返るわぁ」

セシリア「ああもう、縄の跡がついてしまいましたわ……」

鈴「すぐ消えるわよそんなもん。それより、なんで返事しなかったのよ」

セシリア「……それは、秘密ですわ」

鈴「ふうん……ま、大方一夏を見つけたと思って抜け駆けしようとしたとかそんなモンでしょうけど」

セシリア「……むー……」

鈴「ホントに何かあったんじゃないかと心配したわよ」

セシリア「そんなこと言って、本当は私が白式の反応と一緒と知っておキレになっていたのではなくて?」

鈴「……し、仕方ないじゃない。私らが地獄の一丁目にいるのになにやってんのよって……思うでしょ?」

セシリア「それはそうですけど……」

鈴「誤解されるような事するからよ、せめて千冬さんだって判った時点で報告が欲しかったわ」


133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/12(日) 01:42:25.00 ID:O6dJ8d4Z0


セシリア「……ごめんなさい」

鈴「なんでそこ、そんなに素直に謝るのよ」

セシリア「……鈴さんが責めてるんじゃないですの」

鈴「…………んー」

カチャリ

セシリア「鈴さん?夕食もうすぐですわよ……?」

鈴「や、すぐすむから。でも、誰にも来て欲しく無いし」

セシリア「……」

鈴「セシリア、なんか隠してる?」

セシリア「……何も隠していませんわ」


134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/12(日) 01:43:17.03 ID:O6dJ8d4Z0


鈴「なら、あたしの目を見て言って御覧なさい」

セシリア「…………隠していたから、何だと仰いますの?鈴さんだって隠し事の一つや二つ」

鈴「……わかった、もういいわ。あんたがそういうスタンスなら、私もそういうスタンスでいくから」

セシリア「何ですのそれ、まるで私のせいみたいな言い方」

鈴「隠し事してんじゃん!」

セシリア「あなた、どうして隠しているものを態々追求なさいますの!?」

鈴「はぁ!?何で通信無視しなきゃいけなかった理由が秘密なの?明らかにおかしいじゃない!」

セシリア「それでも、飲み込むべきと判断したからこその隠し事なのではなくって!?」

鈴「それでだんまり決め込んで『ごめんなさーい』って!?」

セシリア「そんな言いかたしてませんわ!!」


135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/12(日) 01:44:50.59 ID:O6dJ8d4Z0


鈴「あーはいはい、ごめんなさ~い」

セシリア「……喧嘩売ってますのっ!?」

鈴「あら、買いたいの?」

コンコン

セシリア「……」

鈴「誰か来たみたいよ?」

セシリア「――ッ!わかってますわよ!!」

カチャリ

セシリア「どちら様ですの?」



139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 02:18:56.98 ID:Xlo3PHxK0



箒「いや、私だが……どうしたのだお前たち、廊下にまで聞こえていたが」

鈴「どーでもいいことよ、あほくさ」

箒「……どうでもいいことなら、その態度はやめろ」

鈴「ごめん、悪かったわ……ああ、もう。 あたし夕食に行くわ、箒、そこどいて」

箒「……ああ」

セシリア「……」

鈴「……セシリアのばか」

スタスタスタスタ

箒「一体何があったというのだ、お前達は……」

セシリア「……なんでもありませんわ」

箒「ならば良いのだがな……」


140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 02:19:35.37 ID:Xlo3PHxK0



箒「……」

箒「ただ……あまり沈まれても困る! お、お前はライバルだが、それ以前にクラスメイトだ」

箒「セシリアがそれでは、クラス全体の空気が悪くなる。」

セシリア「……箒さん……ありがとう。優しいですのね」

箒「わ、私は優しくなど……一夏はクラス委員だが男だからな」

箒「そんな雰囲気のクラスになったら、一番困るのは一夏だからという理由にすぎん」

セシリア「……私に塩を送ったつもりですの?」

箒「茶化すな。 ――だが、茶化す元気があれば十分だ。食堂に行こうか」

セシリア「なんですの、その上から目線……」

箒「そうやって頬を膨れさせる可愛さは私には真似できん。素直にうらやましいよ」

セシリア「……し、知りませんわ!もう」


141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 02:29:38.53 ID:Xlo3PHxK0



――廊下 物陰


鈴「……何よ、セシリアのやつ……あんな顔……」ギリッ

ラウラ「嫉妬か、鈴よ」

鈴「!?」

ラウラ「静かにしろ、気づかれるぞ」

鈴「あんた……何やってるのよ」

ラウラ「何、夕食時を狙ってウォータープルーフカメラの設置をしようとな」

鈴「……一夏の部屋の?」

ラウラ「……ふっ、やらんぞ」ドヤッ

鈴「せんせー、こいつです」


142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 02:30:29.01 ID:Xlo3PHxK0


ラウラ「ま、待て鈴!」

鈴「……取引しましょ?ラウラ」

ラウラ「ならば、協力して貰おう……」

「うふふふ……」「ふふふふ……」




―― 一夏ズルーム

一夏「食ってから……か?」

鈴「そーでしょ普通は」

一夏「いや俺いつも早めに風呂入るからな、夕食は食ってきたばかりだし」

鈴「は、腹ごなしにちょっと運動したほうがいいって」

一夏「食べてすぐはなぁ……そうだ鈴!お前も今夜ははやめに風呂に入ったらどうだ?」

鈴「えっ!そ、それって……一緒に、って事?」

一夏「ああ、お前結構不摂生だからな、良い生活リズムが必要だと思っていたんだ」



143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 02:31:26.59 ID:Xlo3PHxK0


鈴「……ぁ……ぅ……ば、ばか。不摂生なんて」

一夏「お前年中夜更かしして眠いって自分で言ってるじゃないか。今日は早く寝るんだぞ」

ラウラ <<鈴、どうした、早く一夏を食堂へ連れ出せ>>

鈴 <<もう食べてきたって。連れ出せないから作戦中止、今夜は決行しないわよ>>

ラウラ <<なんだと!?食事を取った後だった場合の策があると言ってたじゃ>>ブツッ

鈴「ぅん……その、一夏、私がセシリアと喧嘩して部屋に帰れないって、いつ知ったの?」

一夏「は?……何の話だ?」

鈴「だから、その……泊めてくれるんでしょう?」

一夏「ぃい!?何を言ってるんだお前は!?」

鈴「……は?」

一夏「大体、俺の部屋になんて、誰かに見つかったらどうするつもりだ!?」


144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 03:02:08.45 ID:Xlo3PHxK0


鈴「(…………あー、このパターンかぁ……そんな気はしてたのよね……)」

鈴「でも……あたしはそんなの構わないよ?一夏……」

一夏「り、鈴……いや、お前、どうした、き、今日は変だぞ……?」

鈴「……今日が特別じゃないわよ」

一夏「どーいう意味だよ」

鈴「あんたのせいで、あたしはもう、ずっと……」

一夏「ちょ、ちょっと待て、ヤバイって、鈴!!」

ラウラ「トウッ!!」

ドスッ

鈴「はぐっ!?」




160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 23:19:57.35 ID:Xlo3PHxK0



一夏「り、鈴!?」

ラウラ「我が嫁よ、失礼した。」

ガシッ……ギリギリギリ

鈴「痛い痛い痛い痛いッ!?何これ!何よこれ!!」

一夏「流れるような脚払いからの立ちアキレス腱固め……コマンドサンボか!」

ラウラ「ほう、さすが我が嫁。判るか」

一夏「ああ、よくやったゲームに同じ技があったからな」

鈴「あ、あんた、不意打ちは……「ふんっ」あだー!!」

一夏「鈴、もうタップしろ!完璧に極まってる!」

鈴「ちょっとあんた!助けなさいよ!?」

一夏「サブミッションはタップアウトかロープエスケープ以外で止めちゃいけない!」

鈴「何プロレスごっこルール持ち出してんの!?こんな奇襲で成立すんの!?」

ラウラ「そうだ、タップして楽になれ……全く油断も好きも無い」

鈴「くうううっ!!どうして、ただ部屋の前で話してただけじゃない!」

ラウラ「止めねばならぬ気がした。貴様一夏に何をするつもりだった!」

鈴「はぁっ!?あ、あんたには関係ないでしょう!?」

ラウラ「もはや問答無用!」

鈴「」

ラウラ「そして聞け!!わ「廊下で騒ぐな!」

ゴッ ガッ


161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 23:31:06.93 ID:Xlo3PHxK0


千冬「まったく……貴様らは手間のかかる……ふふっ」

一夏「(千冬姉が笑ったッ!?)」

ラウラ「(何だ、この感覚は!?私がプレッシャーを感じているのか!?)」ブルブル

鈴「(……やだ、何これ恐い)」ガクガク

千冬「どうした、貴様ら。ぼうっとして……」ニコリ

ラウラ「いえ!なんでもありません教官!」

千冬「……貴様はさっさと部屋に入れ!まったく、弟が警察の世話になるとは」

一夏「あれは……千冬姉が無理やり着せたんじゃ……」

千冬「学校では織斑先生と呼べ!口答えをするな!反省文は書けているのか?」

一夏「お、横暴だ……」

千冬「何か文句があるのか?」

一夏「……アリマセン……それじゃ、鈴、ラウラ。またな?」

パタン

鈴「ち、千冬さ……織斑先生……」ガクガク

千冬「ん、どうした?」ニッコリ

ラウラ「……」ブルブル

千冬「おう、そうだお前たち、もう夕食は取ったのか?」

ラウラ「い、いえ!まだであります!」

千冬「よし、では今夜は私が奢ってやろう」

鈴「え、本当ですか!?」

千冬「ああ、本当だ。さ、いくぞ?」

鈴ラウ「は、はい!」「ハッ!」

千冬「やんちゃ者どもめ…………だが、いつまでも大目には見んからな?」ニコニコ

鈴ラウ「「」」ガクガクブルブル


162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 23:33:41.21 ID:Xlo3PHxK0



―― 食堂

箒「セシリア、醤油をとってくれ」

セシリア「はいはい、全く、そんな棒二本だけで食事なんて、よくそんなに扱えますわね」

箒「私からすればナイフとフォークでよくもまぁ食事が進められるものだと思ってしまうのだがな」

セシリア「そういうものですの」

箒「なぁ、セシリア……鈴とは」

セシリア「はぁ……またその話ですの?」

箒「私にとっては鈴もまた、大事な仲間なのだ。それに……お前達は特に仲が良いと思っているからな」

セシリア「……隠さなければならない事があった、それだけですわ」

箒「なるほど……難しい問題だな」


163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 23:38:00.43 ID:Xlo3PHxK0


セシリア「……」

箒「親しいからこそ、背負わせたくない……といったところか」

セシリア「……はい」

箒「ならば、お前が悪い」

セシリア「なっ!どうして」

箒「……隠し通すつもりならば、それを悟らせた時点で隠し通せていないからだ」

セシリア「……」

箒「もし、私が鈴の立場であれば、悟ってしまった時点で、居ても立ってもいられないだろう」

セシリア「でも……」

箒「互いを想うあまりにすれ違う……苦しいものだ、お前も鈴もな」

セシリア「……そう、ですわね」

箒「いや、お前を責めるつもりは無い。そう沈まないで欲しい……ただ、覚えておいてくれないか」

箒「私も一夏も、シャルロットもラウラも、勿論鈴も……お前に相談を持ち掛けられたら断りはしない」


164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/14(火) 00:49:30.85 ID:ArIVmFEA0


セシリア「ありがとう、少し、気が楽になりましたわ」

箒「ふん、お前は我々の中で一番子供だからな」

セシリア「ちょっと、聞き捨てなりませんわね?」

箒「ふふ、すぐそうやってむきになるところだ」

セシリア「全く、すぐにかっとなって手が出る箒さんには言われたくありませんわ」

箒「わ、私は手など……振りかぶったりもするかもしれないが」

セシリア「大して差がありませんわよ」

箒「む、むう……」

セシリア「……箒さんは」

箒「ん?」

セシリア「どうして、そこまでしてくださいますの?」

箒「単純な事だ、私はお前が好きなんだよ」

セシリア「」



170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/15(水) 01:41:07.34 ID:mhVzyhpX0



―― 食堂・入り口

千冬「おや、あれは……」

鈴「セシリア……箒……」

千冬「どうした鳳、何かあったのか?」

鈴「いえ……」

千冬「ふむ、ボーデヴィッヒ」

ラウラ「はっ。どうやら鈴はセシリアと喧嘩をしている模様です」

鈴「ちょっと!?何即答してんのよ!」

千冬「なるほど、何があった?」

鈴「……それって、話せってことですか?」


171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/15(水) 01:41:40.59 ID:mhVzyhpX0


千冬「そうだ、話して解決する保障は出来んが……話せ」

鈴「……横暴」

千冬「横暴で構うものか、誰にも話さずに溜め込んで、どうにもならなくなるよりマシだ」

鈴「そんなの……どうしてそんな風に言い切れるんですか」

千冬「そんなものだ、伊達にお前たちより生きてはいないのだぞ?」

鈴「……ただ、セシリアがなんか、あたしに隠し事していて……」

千冬「隠し事?」

鈴「はい……どうして何も言わなかったのかって」

ラウラ「もしや、嫁……げふん。教官を追跡していた時の話か?」

千冬「…………なるほど」


172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/15(水) 01:42:17.87 ID:mhVzyhpX0


鈴「あの時……白式の反応が一緒って聞いて。本当は千冬さん、織斑先生だったけれど」

鈴「それでも、あいつが何も言わなかった事が、なんだか悔しくて……結局、私達より……」

ラウラ「……難しいな、逆の立場だったら、私達は言えるのだろうか」

鈴「……でも、相手が織斑先生とわかった時点でなら何か連絡入れてもいいんじゃない?」

ラウラ「まあな。そうしようとしたそぶりも無かったというのは確かに引っかかる」

千冬「うーむ、顔を合わせた瞬間には既に鳩尾に私の拳がめり込んでいたからな……一発で意識を刈り取られていたのだろう」

鈴「……」

ラウラ「……鈴、謎が解けてよかったな」

鈴「……え、そんなオチなのっ!?」


173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/15(水) 01:42:44.11 ID:mhVzyhpX0


千冬「あばらの数本持っていく勢いだったが、流石に専用機の絶対防御は素手ではなかなか抜けんものだ」

ラウラ「流石です」

鈴「……じゃあ……セシリアは何もわからなかった、って事……?」

ラウラ「…………うむ、そうなのだろう」

鈴「じゃあ……私は……」

千冬「誤解、というものだろうな」

鈴「あたし、謝ってこないと……!」

タタッ


174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/15(水) 01:46:40.11 ID:mhVzyhpX0


ラウラ「…………教官」

千冬「なんだ、ボーデヴィッヒ」

ラウラ「何も判らなかったのであれば、セシリアはそう言えば良かった筈」

ラウラ「セシリアは、確かに何かを隠している……」

千冬「では、お前は何故それを鳳に話してやらなかった?」

ラウラ「……判りません、ただ……あの二人が仲違いし続けるのは、見たくない」

千冬「それでいい」

ラウラ「しかし、真実は……」

千冬「真実が正しいとは限らんよ、ボーデヴィッヒ……」

ラウラ「……はい」

ラウラ「(……つまり、セシリアが隠しているのは…………)」




ラウラ「(貴女の事なのですね……教官……)」



180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/16(木) 00:31:55.28 ID:o7sAuvZG0


―― 就寝前 セシリアの部屋



セシリア「……とうとう、帰って来ませんでしたわね……」

セシリア「…………鈴さん」

セシリア「……言える訳が、ありませんわ……私は……どうしたら」

コンコン

セシリア「鈴さん……!?」

カチャ

箒「……あ、すまない、鈴ではなくて……」


181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/16(木) 00:32:25.66 ID:o7sAuvZG0

セシリア「箒さん……」

箒「……あー、セシリア。上がっても良いか?」

セシリア「え……?ええ」


―― 廊下・物陰

鈴「」ギリギリギリギリ……

鈴「な、何よ……何よ……何よ……」



―― 回想・食堂

鈴『(ええっと、セシリア、セシリア!どこ!あたし、あんたに……!)」

セシリア『どうして、そこまでしてくださいますの?』

鈴『いた!セシリア♪』

箒『単純な事だ、私はお前が好きなんだよ』

セシリア『』

鈴『  !?  』




186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 02:30:34.24 ID:/mCO8j5M0


鈴「どうして……箒が…………ッ!」ギリギリギリギリ

鈴「どうして、どうしてよ……!」

鈴「モッピーとか最近ちやほやされて調子に乗ってんじゃないの!?」

鈴「……っ、違う」

鈴「今はそんなことを考えてる場合じゃないわ……こうなったら、直接……」



ガチャ



鈴「!!」


箒「では、またな」

セシリア「え、ええ……ごめんなさい」

箒「いや、謝る事では無いだろう?クラスメイトなのだから」

セシリア「……そう、ですわね、ここはありがとうと言うべきでしたわ」

箒「久々に笑ったな、やはりお前はそうしているのがお前らしい」

セシリア「あら、おだてても何も出ませんわよ?ふふっ」

鈴「」ギリギリギリギリギリギリギリギリ


187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 02:42:58.69 ID:/mCO8j5M0



鈴「…………行った、わね……」

鈴「よ、よし、今なら……セシリア……」


ガチャ


鈴「!?(ちょっとおおおおお!?何で出てくんのよ!?)」ササッ!


セシリア「?……鈴さん……? 気のせい、かしら……」キョロキョロ

鈴「(っていうか何で隠れてんのよっ!?)」

セシリア「……ダメですわね、折角励ましてもらいましたのに」トボトボ

鈴「――ッ(セシリア……!い、今よ、今がチャンスなのよ、どうして、足が動かないのよ!あたし!)」

鈴「…………(箒に笑ってたあんな顔……見たこと、ない……から?)」



鈴「……行っちゃった」ズル……ペタン

鈴「……ッ」グスッ



191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 20:40:08.27 ID:/mCO8j5M0


―― 一夏の部屋の前


セシリア「……」スー…ハー

セシリア「……参りますわ」


コンコン


一夏「はいよー、誰だ?」


ガチャ


セシリア「あの、わた、私ですわ」

一夏「セシリア?どうしたんだ?」

セシリア「少し、ご相談がありまして……その」

一夏「ああ、いいぜ。とりあえず上がれよ」

セシリア「は……はい!」


192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 20:41:56.85 ID:/mCO8j5M0


パタン


シャル「ふぅん……それは……困るなぁ」


箒「……シャルロット」

シャル「あ?箒。い、今ね?セシリアが一夏の部屋に……」ウルウル

箒「ああ、知っている」

シャル「どうしよう箒……ぼ、僕行かなきゃ!」

箒「どうもしない、だた」

ザッ

シャル「――ただ?どうしてそこに立つのかなぁ?箒……」

箒「行かせんよ、シャルロット」

シャル「……ふぅん」


193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 21:04:53.52 ID:/mCO8j5M0



―― 一夏の部屋


一夏「パックで悪いな」

セシリア「い、いいえ!一夏さんが淹れてくれた紅茶は……どんな高級茶葉にも勝りますわ」

一夏「っはは、サンキュ。それで、どうしたんだ?相談って」

セシリア「……あ……ええと、こんな時間にごめんなさい……その」

一夏「……」

セシリア「……」

一夏「あー……セシリア……聞く前にこれだけは聞かせてくれ」

一夏「俺でいいんだな?」

セシリア「え?は……はい」

一夏「なら、良かった。誰に相談するかを迷ってるんじゃなく、俺に相談したいってそうセシリアが思ってくれたのなら……」

一夏「俺は、喜んで相談に乗るぜ。クラスメイトってだけじゃない。セシリアは大切な仲間なんだから」

セシリア「……一夏さん…………」

一夏「だから、聞かせてくれないか?セシリアの相談」


194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 21:30:19.00 ID:/mCO8j5M0


セシリア「……」

一夏「そっか……千冬姉が」

セシリア「私……あの方を少し、誤解していましたわ」

セシリア「凛として強く、毅然とあられて……」

一夏「うん、身内としては少し照れる事だけれど、千冬姉はいつだって強くてかっこいい」

セシリア「……ごめんなさい、一夏さん」

一夏「どうして謝るんだ?俺は、嬉しいよ。羨ましい位だ」

セシリア「でも、織斑先生は、一夏さんに知られることが……きっと一番つらいのに」

一夏「まぁ、そうなんだろうな。でも……ずっと前から知ってたよ」

セシリア「えっ」


195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 21:36:14.96 ID:/mCO8j5M0


セシリア「えっ」

一夏「弱音、見せないだけだって。だからこそ、俺は千冬姉も護れる様になるんだ」

セシリア「…………」

一夏「最高の姉さんの、たった一人の弟なんだぜ?そうでなきゃ男が廃る!」

セシリア「……一夏さん」

一夏「まぁ、俺がそんな泣いてる所になんか鉢合わせたら、ちょっと、数か月分の記憶がなくなるくらいボコボコにされそうだけど」

セシリア「そんなことありませんわ、きっと」

一夏「いやいや……でも、それを鈴たちに言わないでくれた事、俺からも感謝するよ」

セシリア「そんな……私、こうして結局一夏さんに頼ってしまって」

一夏「だからセシリア、頼れって言ったろ?一人で背負えないものを背負うから、仲間なんだぜ?」

セシリア「……はい」

一夏「それに、セシリアが知ってくれて良かった。千冬姉も、少しだけ楽になったんじゃないかな」

セシリア「……そうでしたら、嬉しいですわ」

一夏「きっとそうさ」

196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/17(金) 22:02:41.03 ID:/mCO8j5M0



「「…………」」

セシリア「あの…………隣にいっても……よろしいですか?」

一夏「ぃッ!? あ、ああ、別にいいけど」

ポスッ

一夏「でも、そっか、鈴がなあ……(……いい匂いすんなぁ)」

セシリア「……」

一夏「鈴が仲間を大切にする奴だってのも判るし(……髪か?いや、髪とは別の、これってボディソープか?)」

セシリア「……はい」

一夏「セシリアも、鈴の事大切に想ってて……(くっ!鎮まれ俺の白式、いやでもここは肩を抱くくらいはアリじゃないのか?)」

セシリア「鈴さん……」グスッ

ギュ

一夏「セシリア……(フオオオオオオオオオオオッ!!いや!待て!セシリアは落ち込んで、勇気を出して俺に相談に来てるんだ)」

一夏「俺の胸でよきゃ、貸すぜ。今は泣いて、明日になったら……また、笑ってくれよ」

セシリア「ぅ……ぐすっ……鈴さん……鈴さん……!」ボロボロ

一夏「……(……鈴……か……)」




204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 00:24:35.84 ID:Bzjqwj/M0



~これまでのあらすじ~

鈴の部屋のエアコンが壊れた為、鈴はセシリアの部屋に転がり込む事に。
垂れ流される鈴によるセクハラの日々と部屋の前で日々妄想を膨らませる我らが一夏。

しかしそんなダメな日々は続かなくて、織斑姉弟の追跡劇を境に鈴とセシリアの心の歯車がずれてしまう。

特別だから、セシリアの背負うものを共に背負いたい鈴。
特別であっても、織斑姉弟の名誉の為に口を閉ざすセシリア。

すれ違いが二人に距離を生み、そこに箒がセシリアへ急接近してくる。
それを目撃してしまった鈴の心に芽生えるのは嫉妬か、それとも……。昏い廊下に嗚咽が響いた。

一方、千冬の涙を胸に秘めた事で、大切な鈴との仲に亀裂の入った事を一夏に吐露したセシリアは、
比較的残念な感じの一夏の胸へ顔を埋め、鈴を想い涙するのだった……。



205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 00:27:50.16 ID:Bzjqwj/M0



―― 数十分後

セシリア「……ぐす」

一夏「……(これは……思った以上に長いな……ああ、セシリアの髪良い匂いだな……)」

一夏「(ダメだ、思い出せ、千冬姉と家の脱衣所で鉢合わせた時を……修羅を見たあの記憶を!!)」グッ

――

一夏「(――――ぁ、これ、薔薇のシャンプーか……)」クンカクンカスーハースーハー

セシリア「きゃンっ!?……い、一夏さん、何をしましたの!?くすぐったいですわっ」

一夏「泣きながら笑うなんて、セシリアは器用だな (ヤッベェェェ……助かった)」

セシリア「もう……一夏さんがくすぐるからですわ…………」

一夏「ごめんな、セシリア」

セシリア「いいえ、私こそ……一夏さんのおかげでとても、楽になりました」

一夏「やっぱり、セシリアは笑ってる顔が一番似合う。涙よりもな」

スッ

セシリア「!!!!(わ、わた、わたくしの涙を指で掬って……え、口へ!?やばいですわ、激やばいですのよ!キャー!キャー!!)」

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 00:37:09.59 ID:Bzjqwj/M0



一夏「んー……味はあんま俺のと変わんないけど、ちょっと塩っぽいか?――塩分摂り過ぎか?」

セシリア「ちちちちちがいますわ!涙というものはですね!?悲しい時や嬉しい時の涙は、含まれるナトリウムが少なく薄味。量が多く水っぽいサラサラの涙で流れやすいのです。対して悔しい時や怒っている時のような緊張状態で流れる涙は、ナトリウムが多く塩辛いのですわっ!お判りですの!?一夏さんっ!」

一夏「ぉ……おう」

セシリア「そ!それでは私は……し、失礼しますッ!!」

ソソクサ

一夏「ぇっ! あ、ああ。もうこんな時間だものな」

セシリア「で……では………………」

一夏「ああ、またな……」

セシリア「…………」

一夏「…………?」

セシリア「…………ぁの……もし、もしもよろしければ……また……」

一夏「……ん? あぁ!勿論いつでも。男の胸はそのためにあるんだ、って――千冬姉にも言われたしな」

セシリア「――!は、はい!ではおやすみなさいませ、一夏さん♪」

ガチャ パタン

一夏「……おやすみ……セシリア」


207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 00:46:46.88 ID:Bzjqwj/M0



―― 翌日 二組


セシリア「えっ……鈴さんはお休み……ですの?」

二組A「うん、なんか風を引いたって本人から連絡があったらしいんだけれど……」

二組B「あれ?でも今って鈴はオルコットさんの部屋に……」

セシリア「あっ!」

セシリア「え、ええ!私それを伝えに来たのですけれど、もう鈴さんが連絡していましたのね!」

二組A「あはは、入れ違いだったね」

セシリア「ほ、本当ですわ。鈴さんたら、ご自分で連絡できるのでしたらそう仰ってくださればいいものを……全く、と~んだ無駄足でしたわ、それでは、失礼致します」

二組A「はーい、またね!」

二組B「ね、オルコットさんなんか変じゃなかった?」

二組A「そぉ?」



209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 00:53:42.16 ID:Bzjqwj/M0


コツコツコツ


セシリア「(そんな……昨夜は結局帰って来ませんでしたのに………)」

ラウラ「相変わらず浮かぬ顔だな、どうしたブリテン女」

セシリア「……なんですのその呼び方は?ジャーマン女」

ラウラ「何、ただの気分だ。私をジャーマンと呼んだついでに連続ジャーマンなどどうだ?」

セシリア「御免被りますわ!なんですの全く」

ラウラ「ふっ、その元気があれば問題ないだろう」

セシリア「…………ラウラさん」

ラウラ「ふっ、惚れるなよ?私の嫁は一夏と決まっている」

セシリア「決まってませんわよ!?」

ラウラ「そうか?」

セシリア「そうですわ!」

ラウラ「どうだかな」

セシリア「あ、頭痛くなってきましたわ……ッ」ハァ

ラウラ「そうそう、箒を知らんか?まだ来てない様なのだが」

セシリア「箒さんも?……知りませんわ、ああ、そうだラウラさん……」

ラウラ「ああ、判っている」

セシリア「……ぇ?」

ラウラ「そっちは判っている、と言っているのだ」

セシリア「何か御存知ですのッ!?」

ラウラ「シッ…………黙ってついてこい」

セシリア「……」コク


210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 00:54:36.64 ID:Bzjqwj/M0








シャル「………………キシッ」








217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/19(日) 01:39:54.46 ID:Bzjqwj/M0

矢印だとそういや色々バレるので一応ゲージにしてみました。

■一夏orセシリア気持ちゲージ(一人10を振り分け)
    │         ?│一夏  │          │
    │        ■■│ラウラ │■■■■■■■   │
    │     ■■■■■│鈴   │■■■■■     │
セシリア│      ■■■■│箒   │■■■■■■    │一夏
    │          │シャル │ ■■■■■■■■■■
    │          │セシリア│?         │
    │       ■■■│千冬  │■■■■■■■   │

シャルはセシリアにマイナス分一夏に向いてます。





※ただし作者はオルコッ党


221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:00:45.42 ID:DzjRp3Qs0


一夏「えー、前説です。本日の更新から新キャラクターが登場します。が、」

一夏「大幅なネタバレにはならないようにしますが、原作7巻からの登場です」

千冬「そもそも、一応原作7巻以降の時期設定でやっていたのだし今さらな部分もあるが……」

千冬「もしISアニメに二期があったら登場するかもしれんな、何せ……」

一夏「ちょっ!バレ警告用の前説でバレる!」

一夏「えー、適当なクラスメイトでもよかったのかもしれないですが、考えた結果登場になります」

一夏「IS名等の固有名詞は極力避けますが……避けたせいでワケわかんなくなってる所もあり……不満です」

千冬「しかし既に5巻辺りまでしか読んでなくてもピンと来るだろうから既に実際の初登場の時に影響がある」

千冬「よってバレが嫌なら先に原作読んでこい、以上だ」

一夏「ちょっ、その言い方は……」

一夏「……えー、という事で……本日は警告前説を入れましたが、明日以降は多分、細かい事気にしません」

千冬「IS〈インフィニット・ストラトス〉MF文庫Jより既刊7巻絶賛発売中だ、私の水着イラストもあるぞ」

一夏「……ははは」

千冬「……織斑、なんだ?今の笑いは……?」

一夏「い、いやっ!決して変な意味じゃ……」


―― ォゥコラ?ォゥコラ??      ギャー


222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:03:43.85 ID:DzjRp3Qs0


―― 鈴の部屋


鈴「……休んじゃった」

鈴「ふん……セシリアが誰と話そうと関係ないじゃん」

ゴロ

鈴「元々セシリアは、恋敵なんだから。関係ないじゃん……」

ゴロ……ゴロ……

鈴「…………セシリア、きっと、心配してるよね……あいつはそういうやつだもん」

鈴「……あたし、どうしちゃったんだろう……ねえ一夏……どうしよぅ……」


コンコン


鈴「!?」ガバッ

鈴「(だ、誰……?エアコン業者?業者ならここは無人の部屋だと思ってる筈……ノックするわけない)」


コンコンコンコン


鈴「……(こいつ……『あたしがここにいる』って知ってる!?)」


コンコンコンコン……



ドン!

鈴「!?」ビクッ!!

ドンドンドンドン!!!

鈴「……(歓迎できる……感じじゃないわね)」


223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:06:25.62 ID:DzjRp3Qs0



鈴「……(はっ……ッたく暑い部屋ね……汗が出ちゃうわ……どうする、龍咆で扉ごと……?)」

ドンドンドンドン!!!


セシリア『鈴さん!鈴さん!』

鈴「!!!!」

ドンドンドンドンドンドンドンドン!!!

セシリア『鈴さん!鈴さん!』

鈴「………………」

ドンドンドンドンドンドンドンドン!!!

セシリア『鈴さん!鈴さん!』

鈴「……あんた、騙っちゃいけない人間騙ったってわかってる? 珍しく焦ってんの?」

ドンドンド……

セシリア『鈴さん!鈴さ――』プツッ


セシリア『…………』


鈴「…………」


鈴「入ってきなよ、そんな叩かなくても鍵はあいてるからさ。――シャルロット」


ガチャ……


ギィ……







シャル「こんにちは♪鈴。お見舞いに来たよ」





224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:12:19.87 ID:DzjRp3Qs0



―― IS学園敷地内 林間部


セシリア「ええと……ラウラさん?」

ラウラ「黙ってついてこい……」

セシリア「どこへ行こうというのです?こんな……林の中まで……」

ラウラ「…………セシリア」

セシリア「なんですの?」

ラウラ「すまん」

セシリア「ひっ!?ななな、なんですのそのロープは!!!」

ラウラ「なにも言わず大人しく縛られてくれっ!」

セシリア「ちょっ!冗談じゃありませんわっ!」

ラウラ「すまない……本気だ!」

シュウン!

セシリア「これは……AIC!?本当に本気ですのね!?」

ラウラ「さっきからそう言っている!」

セシリア「ISまで出してくるなんて……その意味がお判りになりませんの!?」

ラウラ「……黙れ」

セシリア「問答無用というわけですのね……」

ラウラ「すぐに楽にしてやる!!」

セシリア「部分展開!?――来るッ!ワイヤー! ―― ティアーズ!」

ドシュドシュドシュゥ

ラウラ「くっ!ビットで迎撃されたか……!!」

セシリア「以前は不覚を取りましたが……技量差さえ埋まれば多面攻撃のできる私では相性最悪ですわよ?」

ラウラ「……くっ!やはり腕を上げているか!だが!」

セシリア「それが判っていながら……何故!!」

ラウラ「退けぬのだ!私もまた、友の為ッ!!!」



225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:20:00.75 ID:DzjRp3Qs0



ラウラ「一度ワイヤーを落としたくらいでいい気になるな!」

セシリア「何度でも落としますわ!」

ラウラ「忘れたか!シュヴァルツェア・レーゲンの装甲はそう易々と抜けん!」

セシリア「……両腕を展開……プラズマ刀……ッ」

ラウラ「ブルー・ティアーズなど所詮は五月蠅い羽虫!被弾前提であれば動けぬ女王蜂を潰せば終わりだ!」

ゴウッ

セシリア「……ラウラさんともあろうお方が……冷静じゃありませんのね」ボソ

ラウラ「なにッ!?」

ガゴッ!!

セシリア「ブルーティアーズは4基、ここにあるのは3基」

ラウラ「!!!(後頭部に打撃……!?まさかビットで……殴ってきた……?のか……!?)」

セシリア「いくらなんでも、もう1基が隠れているのは見え見えですのに」

ラウラ「く……そ…………こんな……撃たずに……ぶつけてくるなど」

ガクッ

セシリア「それでは絶対防御が発動して終わりでしょうね、だからぶつけたんですわよ」

ラウラ「………………お前にしては……荒っぽい……な」

セシリア「鈴さんの影響かしら?完全展開されてたら無理の奇策ですわね」

セシリア「もうAICは使えないでしょうけれど……申し訳ないですが、意識を刈らせていただきます」

ラウラ「……ふっ……そう……か……私の負けか」



―― ゴッガッガゴッ……

ドサッ



セシリア「笑いながら倒れられても結構困りますわ……」

セシリア「……全く、仕掛けるならもう少し、保健室の近くにしていただきたかったですわ」

セシリア「よい……しょっと……お、重っ!!??」

ガシャガシャガシャ

セシリア「」




セシリア「こっ……この撮影道具と色々アレな道具は……か、勝てて良かったですわ………」ガクブル






====RESULT====

○セシリア・オルコット [1分3秒 ビット殴り] ×ラウラ・ボーデヴィッヒ





226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:37:11.23 ID:DzjRp3Qs0




―― 保健室


簪「……大丈夫、軽い脳浸透……じきに目を覚ますわ」

セシリア「助かりましたわ、保険の先生がいなくてどうしようかと」

簪「いえ……オルコットさんと……ボーデヴィッヒさん、よね?一組の」

セシリア「……そういえば、あなた確かタッグマッチの時の……」

簪「ええ……更識 簪……」

セシリア「改めてよろしくお願い致しますわ、私はセシリア・オルコット。イギリスが誇るブルー・ティアーズの操縦者。代表候補生ですのよ、そちらはドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

簪「……知ってるわ」

セシリア「あら!そうですわよね!私を知らないなんて。何せ私、エリィートですものね!」

簪「いえ……対戦するかもしれない相手だったから……中止になってしまったけれど」

セシリア「……ああ、そうでしたわね。全く今年の行事は尽く中止続きですわね」

簪「…………あの」

セシリア「なんですの?」

簪「……喧嘩?」

セシリア「ええ、でも、彼女は仲間でもありますの。遺恨は無い……と信じていますわ」




227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 00:38:50.68 ID:DzjRp3Qs0



―― 鈴の部屋


シャル「やだなぁ、鈴……!部屋の中で部分展開なんかして」

鈴「あんただってしてるじゃ……!」

ドンドン!!

ギギン!

シャル「……何言ってるの?……僕は『今』何か持ってるかい?」

コツ…コツ…

鈴「っ! 高速切替……!」

シャル「いいから、さ。いいかげん大人しくついてきてよ。この部屋暑くって……」

鈴「くっ……意味わかんない!あんたどうかしてんじゃないの!?」

シャル「……どうかしてるのは鈴たちじゃないか」

鈴「…………ちょっと、ちょっと待ちなさいよ!たちって……まさかセシリアに!!」

シャル「――ふっ!!」

ダッ!

鈴「――しまっ……甲龍!!」

ドズン!!!

鈴「――ッ!!(盾……殺し……!)」

シャル「恨むならセシリアだよ。個人的な喧嘩に一夏を巻き込んで」


鈴「かはっ……」

ガクッ

シャル「……流石甲龍、ううん、流石は代表候補生、部分展開でも灰色の鱗殻で意識を飛ばさなかったね」

鈴「セシリアに……何を……」

シャル「さぁ?でも安心してね、ちょっと言う事を聞いてくれるようにするだけだから」

鈴「……あんた……あんたはっ!」

シャル「さ、鈴……箒が待ってる」

スッ……


鈴「クッ……セシリア……セシリアァァーーッ!!!」

ドズン!!!

ドズン!!!






ドズン!!!



====RESULT====

○シャルロット・デュノア [12分10秒 灰色の鱗殻] ×凰 鈴音



228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 01:05:01.68 ID:DzjRp3Qs0



―― 保健室


簪「あの……もう一つ……いい?」

セシリア「ええ、何でも答えて差し上げますわ?何せ私、エリィィートですから」

簪「…………織斑君……一夏…くんとは、どういう」

セシリア「は?………………ああ……」ハァ……

簪「ど、どうしたの……?」

セシリア「いいえ……何人目、ですの……?」ハァ……

簪「えっ」

セシリア「頭の痛い話ですわ……」

?? <<ザザッ>>

セシリア「……今のは……?聞こえまして?何かしら」

簪「……オープンチャンネルね、はっきり聞こえた。倉持技研のセンサーは高感度なの」

簪「……あなたの名前を呼んでいるように聞こえました」

セシリア「……まさか、鈴さん!?」

簪「オルコットさん!待って……!場所は判るの?」

セシリア「っ……でも!」

簪「ご一緒します。ただ事では無いようですから」



ラウラ「……」




233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 23:46:11.21 ID:DzjRp3Qs0


―― シャルロットとラウラの部屋



箒「くっ……このロープ……さえ!!」

ガチャ パタン


シャル「やぁ箒、楽しんでるかい?」

箒「貴様、シャルロット……こんな事をして!!」

シャル「ただで済むよ」

箒「なっ……」

シャル「別に箒が何も言わなければいい話さ……違うかい?」

箒「こんな事をされて、私が黙っていると……!」

シャル「鈍いなあ……そんなんだから一夏がいつも怯えるんじゃないか」

箒「い、一夏は関係ないだろう!!」

シャル「関係あるよ、僕の全ては一夏の為、僕は一夏の為なら悪魔にもなれる」


234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 23:57:03.27 ID:DzjRp3Qs0


箒「それと私が話さないことと何の関係が……」

シャル「はぁ……鈍い女、一夏は僕の幼馴染だったらもっと幸せだったのに」

箒「な……な、なな、何だと貴様!!言っていいことと悪いことが」

シャル「はいはい……うるさいなぁ、喚かないでよ……そんなに嬲られたいのかい?キミは三番目だよ」

箒「……一番はセシリアの事か……そういうお前の行動を何と言うかを教えてやろうか?シャルロット」

シャル「嫉妬、とかありきたりな事は言わないでくれるかな?」

箒「そんな高尚な物ではない。ただの、逆恨みというのだ。」

箒「一夏をどれほどの比重で想っていようが、大事なのは想いそのものの大きさだ」

シャル「何が言いたいんだい?僕の想いが小さいとでも?」

箒「ああ、小さく、狭い。私は今のお前には負ける気がしない」

シャル「っはは……灰色の鱗殻一発で意識飛ばした箒が言うとギャグだよ、それ!」

箒「今のお前に振り向く一夏はいないと言った方がいいか」

シャル「箒はちょっと手加減してあげようと思ってたんだよ?」

箒「何が手加減だ」

シャル「君は一夏の幼馴染だから。でも」

シャル「ラウラが戻ってきたら、鈴共々たっぷりと地獄を見て貰うから」

ドサ

鈴「ぐっ!……ううっ……ほう……き?」

箒「鈴!!」




237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:16:54.85 ID:qOrwNusL0

シャル「もう目を覚ましたんだ……呆れるタフさだね、少し炸薬の量が少なすぎたかな」

鈴「箒……あんた、どうして」

箒「私はセシリアが好きだからな、そして鈴、お前も」

鈴「……箒……」

シャル「感動の再会だね。じきにセシリアも来るよ、嬉しいでしょ?」






コンコン


ラウラ「……シャルロット」

シャル「あれ、ラウラ?早かったね」

ガチャ

シャル「!?」


238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:18:09.72 ID:qOrwNusL0



セシリア「……鈴さん!!鈴さん!!」

鈴「ぁ…………セシリア……どうして来てくれたの、私たち……」

セシリア「助けに来るのは当り前ですわ!!大切な仲間、大切な……私の友人を!!」

鈴「せし……セシ……リア」ポロポロ

セシリア「鈴さん……!」ポロポロ

簪「大丈夫……?」

箒「ああ、ありがとう……」

シャル「せ、セシリア……?? ラウラ、まさか……」

ラウラ「すまない、セシリアの成長を「僕を裏切ったのかい!?」

シャル「負けただけじゃなく!セシリア達をここに案内するだなんて!!信じられないよ!!」

箒「……シャルロット」

シャル「あんなに仲良しだったのに!ラウラ!どうして!!」

ラウラ「私は……」

簪「……ボーデヴィッヒさんは……裏切ってない。」

シャル「裏切りじゃないならなんだって言うんだい……っ!僕たちは二人で一夏の為に!」



240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:32:02.28 ID:qOrwNusL0



ラウラ「……ああ、わかっている……すまないシャルロット……私はお前の期待に……」

セシリア「――ッ!! 応える必要なんか、ありませんわ!」

ラウラ「セシリア……」

セシリア「シャルロットさん……あなた……どこまでラウラさんを、私たちを裏切りますのッ!?」

シャル「え?ぼ、僕……僕が?????」

セシリア「……ご自分で……気付いていらっしゃるのでしょう?!」

シャル「な……泣いてるのかい、な、泣きたいのは……」

セシリア「あなたがしている事は、一夏さんの否定ですわ!!」

シャル「……ぇ?」

セシリア「一夏さんの為と言いながら、あなたが傷つけているものは……!」

シャル「……」

セシリア「箒さんも、鈴さんも、ラウラさんも、私も、シャルロットさんも、そこにいる更識さんも……」

セシリア「みんな、一夏さんの大切な仲間ですのよ!!」

シャル「……」

セシリア「傷つける事が一夏さんの為なんて……他ならぬあなたの口からだけは聞きたくありませんわ!」

シャル「セシ……リ……ア……」

箒「立てるか?鈴」

鈴「いたた……ぅん……ありがと」

ラウラ「……シャルロット、私はそれをお前に教わった……私にとって……お前は……」

シャル「ラウ……ラ」

鈴「……ねえシャルロット。あまりさ、失望させないでよ……」

シャル「……り……ん」

箒「皆……お前を信じている。お前も仲間なのだから」

シャル「ほうき…… ――……っ!な、なんだって言うのさ!仲間だったら、見過ごせって言うの!?」

シャル「一夏が取られちゃうんだよ!?みんなそれでいいの!?」


241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:33:36.81 ID:qOrwNusL0


―― パーン!

シャル「ぶべら!?」


242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:34:43.83 ID:qOrwNusL0



セシリア「一夏さんを、見くびらないでくださいましっ!!」


シャル「な、な、な、何を言って……」

セシリア「一夏さんは、私の相談に乗って下さっただけですわ……」

セシリア「私昨夜はキメるつもりでしたのに!!」

箒「な、なんだと!!!……いやまぁ、大体予想はついたが」

鈴「一夏に期待するほうが……無理よ」

ラウラ「キメるとはなんだ?」

鈴「知らなくていいのよ……」

セシリア「コホン……私たち、仲間ですのよ。一緒に戦った、戦友ですのよ?」

セシリア「誰かが苦しいとみんなが苦しい……どうして、そうなる前に相談してくれなかったんですの?」

鈴「いや、相談内容の本人に相談しても……」

セシリア「さ、先程から!み、水を差さないでくださいましっ!」


243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:36:32.20 ID:qOrwNusL0



箒「まあ、正直一夏をセシリアに取られてしまいそうで……怖い気持ちはわかる……」

ラウラ「その矛先をセシリアに向けるのは、やはり違う」

シャル「……でも、そういってるセシリアも鈴も、僕にだけは相談しないじゃないか」

セ鈴「「だって、見返りが怖い」んですもの」

シャル「ひ、ひどいよ!?」

箒「だが、少し前にいつも一夏がセシリアの部屋の前で挙動不審で心配だって言っていたし……」

ラウラ「二人の弱みを握る為に恥ずかしい写真を撮るように言われたな」

シャル「そ、それは……」

箒「そんな事までしてたのか……一夏に関わる事になると本当に見境がなくなるな貴様は」

鈴「あたしらも人の事言えないけどね……」

セシリア「というか部屋の前で挙動不審ってなんですの……?」

シャル「な、なんでもないよ」

箒「……コホン。 とにかく……私たちは仲間だ、そうだろう?」

シャル「……ぅん」

セシリア「それが聞ければ、十分ですわ」

簪「え……十分……なの?」

ラウラ「十分なんだ、私たちはそれだけで。そういうものなのさ」


244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 00:45:54.10 ID:qOrwNusL0


鈴「正直あたしは十発くらいお返ししたいんだけど、シールドがあるったってパイルバンカー食らったのよ!?」

ラウラ「灰色の鱗殻をまともに食らって本来それで済むわけがないだろう?」

セシリア「当然、炸薬の量を調整したのでしょ?」

シャル「うるさいなぁ……突っ込まないでよ、恥ずかしい」

鈴「そんな事言ってラウラ頭に包帯巻いてるんだけど、アンタこそ手加減しなかったんじゃないの?」

セシリア「き、緊急事態ですわ」

シャル「ま、まぁまぁ、冷静に」

セシ鈴「あなたが「アンタが言うな!」ですわ!」

簪「(……いいな。女の友情……私も……)」


245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/21(火) 01:00:21.11 ID:qOrwNusL0

セシリア「大体、あんな道具で一体私を捕まえて何を撮らせようとしていましたの!?」

シャル「それは……」

ラウラ「うむ、エロいやつだ」

シャル「ラ、ラウラッ!?それは!」

箒「ほぅ、地獄を見るとは、ほほう」

鈴「ほほう、そういう事なんだ、ほほほう」

セシリア「シャルロットさん」

ガシャガシャガシャ

簪「ひっ!!」

シャル「せ、セシリア……?そ、それ……持って来て……たの?」

箒「ラウラ、ドアを閉めてくれ」

ラウラ「承知」

バタン

鈴「うっわぁ、どれもえげつないわね……これ、ギャグボールっていうんだっけ」

シャル「ね、ねえ!?今僕たち友情を再確認したばっかりだよねぇ!?」

セシリア「ええ、女の友情をしかと」

箒「カメラはこれでいいのか?」

ラウラ「ちょっと待っていてくれ、電源周りのセッティングをしている」

セシリア「ハードな事は致しませんわ。ソフトな撮影会と参りましょう?」

シャル「ひ、ひいい!!!」

鈴「シャルも結構イイ体してるわよねぇ……」ジュル

箒「縛るくらいはソフトの内に入るか?」

鈴「入る入る、よゆーよゆー」

簪「」ガクガクブルブル

シャル「そ、そこのキミ!た、助けて!」

簪「!?」

ラモセ鈴「「「「!!」」」」ギラ

簪「し、失礼します!!!!!!」

ダダダ バン ダダダダダダダ……

シャル「あっ!!」


箒「ラウラ、ドアを」

ラウラ「承知」




バタン カチャリッ





――   ヒャアアァァァァァァ



252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/22(水) 01:07:42.37 ID:cnFAX4PQ0



――翌日 昼休み


カリカリカリカリ

箒「……セシリアよ」

セシリア「はーい?なんですの~?」モグモグ

箒「英語はわかるか?」

セシリア「バカにしてますの……?母国語ですわよ」ヒクッ

箒「いや!違う!違うんだ……その、明日のテストに向けてな、ここを教えてほしいのだが」

セシリア「」

箒「どうした?セシリア……」


ドアバーン


鈴「せ、せ、せしりあぁぁぁ!!明日テストだって!!」ウルウル

セシリア「忘れてましたわぁぁぁぁぁ!!!!」


253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/22(水) 01:21:18.18 ID:cnFAX4PQ0


シャル「で、何の用だい……?」

鈴「やー、シャルロットならさ?」

セシリア「試験範囲のノートがあるかな、なーんて思いまして」

ガタン

シャル「きっ……きっ……キミたちは……ッ!あんな事をしておいて……ッ!!」

セシリア「あんな事?気持ち良さそうだったじゃありませんの」

シャル「こッ……これだから!!ローストビーフは!!」ガタン

セシリア「何ですの、このフロッガー……!!」ビキ……

鈴「セシリア!」

セシリア「なんですの!?今は……」

鈴「国よりテストよ!!」

セシリア「――マジですの!?」

ラウラ「よく言った!! 鈴、使うがよい」

鈴「ラウラ!」

ラウラ「貴様の言葉は、私の心を震わせた、そう、テストだ!国は明日滅びぬがテストは明日滅ぶ!」

セシリア「……いや、滅んでどうするんですの……」

ラウラ「持って行け……シャルロットのノート、貴様のものだ!」

鈴「ラウラ……」

ラウラ「これは情けなどではない……健闘を祈るぞ!凰 鈴音!!」

鈴「貴女もね!ラウラ。ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

ガシッ!!

シャル「……あれ?えっと……僕の……ノート……」

セシリア「あの、私は日本史のノートが欲しいのですけれど……」

シャル「何!?何なの!?僕はノート業者なの!?」


254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/22(水) 01:34:18.01 ID:cnFAX4PQ0



――四組



簪「……何」

セシリア「……あ、あまり友好的な感じじゃありませんわよっ!?」ヒソヒソ

鈴「……知らないわよ!アンタが心当たりがって言ったんでしょうが!!」ヒソヒソ

簪「……聞こえてるけど」

セシリア「あ、あのですね!」

簪「ノートなら貸してあげるわ」

鈴「やった!!ありがとう簪さん!!」

簪「……名前で呼ばないで」

鈴「ごめんなさい更識さん」ジャンプドゲサ

簪「今20人待ちだから、一人1時間で20時間後ね」

鈴「返して!!私の土下座返してよ!!」

セシリア「無様ね」

鈴「あんた、もし借りれてもあたしの一時間後まで見せないわよ!?」

セシリア「21時間後じゃテスト開始の瞬間ですわよ!?」

簪「大体……どうして私なの?もっと優秀な人は……一組なら」

セシリア「イヤですわ、引っ込み思案なオタ娘が勉強ダメだったらまるっきりマダオコースじゃないですの」ケラケラ

簪「」

鈴「流石の私もそれはひくわ」

セシリア「えっ!?えっ?」

簪「うわぁぁぁん!一夏くううん!!」ダッ

セシリア「あっ!ちょっと!!」

鈴「セシリア、ついてくわよ!!」

セシリア「えっ!?あ、はい!!」




263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/23(木) 02:18:00.85 ID:KasDRRgA0





―― 一組


ダダダダ バン!


のほほん「あれー?かんちゃんだー。やっほーかーんちゃーん。どうしたのー?」

簪「!?……しまった…………本音……」

のほほん「わかったよ~。かんちゃん、おりむーに用があるんだね。うふふふ、いま呼んできてあげるね~」

簪「ちっ……違……ほ、本音に用があったのよ」

のほほん「ほえ?」

簪「ちょっと、ついてきて」

のほほん「はーい。それじゃおりむー。いってくるねぇ~」フリフリ

簪「ちょっと……本音……ッ!?」

一夏「おう。――あれ?簪か、家の用事か?お疲れさん」

簪「……う、う、うん。い、いち……一夏っ……も、また……ね」

トボトボ

一夏「おう」

谷本「あれあれー、織斑くんじゃなくなってるね」ニヤニヤ

夜竹「織斑くん、タッグマッチの時に何かあったの~?」ニヤニヤ

一夏「……えっ?いや……(アニメの事は……伏せたほうがいいか)別に何も、普通だぞ?」

谷本「くうー、天然タラシめ!にくいねこの!」


264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/23(木) 02:23:20.85 ID:KasDRRgA0



バタバタバタバタ ズバーン!!

鈴「まったく!セシリアのせいで見失っちゃったじゃない!」

セシリア「人のせいにしないでくださいます!?」

鈴「なによ!あんたが『なんでわたくし達、追いかけてるのかしら』なんて言うからでしょ!?」

セシリア「考えてみたら追いかけてる場合じゃないと思ったからじゃありませんの!」

鈴「ノートを手に入れなきゃ話にならないでしょーが!!」

セシリア「でーすーかーらー、すぐに追いかけましたわよ!?」

鈴「だったら始めから止めるなって言ってるの!」

一夏「よう、セシリア、鈴。相変わらず仲がいいな。どうしたんだ?」

セ鈴「「一夏」さん」

セシリア「そ、そうですわ!一夏さん!」

鈴「無駄よ」

セシリア「早ッ!聞いてみなければ判らないじゃありませんの!」

一夏「そうだぜ、鈴。何のことかサッパリ判らないんだが」

セシリア「一夏さん!テスト勉強のノート、お持ちではありませんか!?」

一夏「……?」

鈴「だから言ったじゃない」

セシリア「一夏さんッ!?どうしてそこでテストって何のことだ?って顔をしますの!?」

一夏「おお、すごいなセシリア!そこまで判るのか!」

セシリア「そっ……それは……いつも見てますから……」

一夏「人間観察か、やっぱスナイパーの習性ってやつか」

セシリア「そういう意味ではありませんわ!!」

鈴「っていうかさ一夏、アンタ随分落ち着いてるじゃない。テスト……明日よ」

一夏「……マジか?」

谷本「マジマジ」

セシリア「マジですわ」

一夏「マジかーーーーーーっ!!!!」



268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/23(木) 22:39:11.39 ID:KasDRRgA0



―― 放課後・一夏の部屋 改め テスト緊急対策本部

一夏「……それで、成果は」

セシリア「ラウラさんからゲットしましたシャルロットさんの数学のノート、だけですわね」

鈴「あんたたちやる気あんの?赤点取りたいの!?」

セシリア「くっ……借りれなかった以上は何も言い返せませんわ……っ」

鈴「セシリアってさぁ、あんまし友達いないじゃないの?」

セシリア「い、いますわよ!それくらい!!」

鈴「ノートを貸してくれる友達は居なかったわけだ」

セシリア「ぐぬぬ」

鈴「一夏はどうしたのよ、ちょっと廊下で薔薇咥えながら立ってれば頼み放題でしょうが」

一夏「なんだそりゃ……そんなわけないだろ?」

セシリア「そうではなくても、一夏さんに頼まれて断れる子はいないと思うのですけれど」

一夏「またまた……」

鈴「あー、それはいいから、どうして一冊も借りてないのよ?」

一夏「いや……それが……なぜか行く先々で楯無さんに絡まれて……」

セシリア「赤点取らせてそれをネタに何かする気ですわね……」

一夏「勘弁してくれ……」

セシリア「仕方ありませんわ……ノートの無い教科は何とか自力で頑張りましょう」

鈴「え、そんなの赤点確定じゃない!!」

一夏「くっそー……あ、待てよ……いっそ楯無さんに……!」

楯無「はーい、呼んだ?」

セ鈴「」「」

一夏「……」

269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/23(木) 23:04:11.76 ID:KasDRRgA0


楯無「あれ?そこは『楯無さん!いつのまに』って驚くトコじゃない?」

一夏「いや……もう、なんか……驚くのもめんどくさくて……」

楯無「あれあれ、それじゃ、部屋に私がいるのが自然って言ってるみたいじゃない」

セシリア「一夏さん……!」ゴゴゴゴゴ

鈴「一夏……ァ!」ドドドドドド

一夏「いいっ!!ちょ、セシリア!鈴!どうしてそこで俺に向かって怒ってるんだ!?」

楯無「やれやれ、困った子だね」

一夏「でも楯無さん、いつからいたんですか?」

楯無「……それで、成果は?キリッ、の所かな」

鈴「始めからじゃない……」

セシリア「私達が部屋に入ったときには既に居たんですのね……」

一夏「な、なんか、キリっとか付けられるともやもやする……」

楯無「気にしない気にしない」

一夏「……とにかく、それなら……あの、楯無さん」

楯無「お断りします」

一夏「」

270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/23(木) 23:23:12.49 ID:KasDRRgA0

================インフォメーション================

一夏「えーと、修正があります。」

千冬「テスト前のバタバタがやりたくなったというだけで書き始めるからこうなる」

セシリア「ええと、IS学園一年一組の時間割表をBDで確認したところによりますと……」

セシリア「国語、英語、数学、体育、保健、歴史、地理、科学、物理、生物、情報、IS、クラブ、選択、美術、礼法、家庭科」

セシリア「私がシャルロットさんに借りようとした日本史なんて授業は行われておりませんわ」

鈴「考えてみりゃそうよね、各国から生徒が集まってるのに日本史は無いわ」

セシリア「でも英語と国語はありますのね、英語の授業?と違和感を感じて確認したのですけれど」

鈴「ということで、日本史のノートではなく、歴史のノートを借りようとした、ってわけね」

一夏「以上、失礼しました」

==================================================


272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/24(金) 00:20:25.96 ID:CfBFCNUq0



楯無「これに関してはオルコットさんが正しいわね。流石イギリス代表候補生」

セシリア「お、お褒めいただき恐縮ですわ」

楯無「あれ?エリートとしてとーぜんですわ!みたいに言わないの?」ニヤニヤ

セシリア「そっ、それは」

一夏「生徒会長にそれは無理ですよ……楯無さん」

楯無「判ってるわよ、じょーだんよ、じょーだん」ケラケラ

鈴「……ねえ、一夏。生徒会長ってもしかして……」ボソボソ

一夏「言うな、鈴。 多分聞こえてるぞ」

楯無「あーあー、きこえなーい」

鈴「……」

一夏「こういう人なんだ」

楯無「あ、そうそう。副生徒会長が赤点なんて……無しね?」

一夏「」

楯無「それじゃ三人とも、ハバナイスデ~イ」

パタン

セシリア「……あれが……生徒会長、更識 楯無」

鈴「学園最強、学園唯一の国家代表……IS操縦者……」

セシリア「捉え所の無い方ですのね……」

鈴「変人の間違いじゃない?」

楯無「ひっどいなー、凰さん」

一セ鈴「「「うわあああああっ!?」」」

セシリア「えっ!?いま、出て行って!?えっ!?」

楯無「そんな鈴音ちゃんには、く す ぐ り 刑をサービスしちゃうわ」

鈴「ちょっと!?な、なに!あはは!あははははははははははははは」

一夏「鈴……骨は拾ってやるからな」

セシリア「……言葉が見つかりませんわ…………」




275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/24(金) 23:40:29.17 ID:CfBFCNUq0



鈴「あひゃははは!あはは!あはははははははは!!」

一夏「鈴はくすぐりに弱いなぁ」

セシリア「そうですわね。ところで一夏さん。一夏さんはどの教科が弱いんですの?」

一夏「あー……」

一夏「(全部、とか言ったらドン引きされそうだよな……)」

一夏「ええと、英語は特に弱いな」

セシリア「――……きましたわー!!」

一夏「うぉっ!?ど、どうしたんだセシリア」

セシリア「よ、宜しければ!!私が、家庭教師を勤めさせていただきますわ!!何せわたくしッ!!エリートイギリス人ですので!!」

一夏「えっ!?」

セシリア「……えっ???」

一夏「イギリス人と英語に何の関係が……」

セシリア「」

セシリア「一夏さーん。わたくしの祖国は日本語でなんと言いますか?」

一夏「イギリス。……あ、ええと確か、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国だ」

セシリア「……ッ……正解ですわ」

一夏「それくらいなぞなぞ遊びのレベルだろ、何だよ一体」

セシリア「ああ、もう……そうではなく……そう、漢字で」

一夏「漢字?ああ、当て字のやつだよな確か、猊利太尼亜……」

セシリア「わざとやってますわよね!?」

一夏「うおっ!どうして怒るんだよ……あってるだろ?歴史と地理はそんなに苦手じゃないんだ」

セシリア「そんないきなり問題なんか出しませんわよ!!英国!英国ですわ!!」

一夏「ああ!!」

セシリア「……ああ、じゃありませんわよ……まったく」ハァ

一夏「いや、悪い……頼りにしてるよ」

セシリア「……は、はい……い、幾らでも頼ってくださいましね♪」パァァ



276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/24(金) 23:56:14.97 ID:CfBFCNUq0


楯無「そうれ」

鈴「あはははっ!あふっ!あふぁははひゃはひゃひゃははは!!」


一夏「それでセシリアは何が弱いんだ?」

セシリア「……はい、お恥ずかしながら……実は少々歴史、特に古代史が」

一夏「意外だな、伝統とか拘りそうだし、セシリアは得意だと思ってた」

セシリア「……わたくし、幼い頃に父と母を亡くしてから……ずっとオルコットの家を護ってきましたの……」

一夏「ぁ……すまん、思い出させたか?」

セシリア「いいえ、わたくしにとっては誇るところですわ。一夏さんが謝る事なんてありません」」

一夏「さんきゅ」

セシリア「大人達と渡り合う為に猛勉強しましたわ、得意学科は経済学ですのよ?」

一夏「テスト……ないよな?」

セシリア「た、確かに経済学はございませんけれど数学は経済学にも通じますの。」

一夏「ああ、なるほど……あれ?でもそれなら歴史にも結構関係深くないか?」

セシリア「ええ、ですから……近代、現代史ならば全く問題ありませんの」

一夏「……なるほど……ああ、でも数学、英語は問題ないってこと……か?」

セシリア「科学と情報と物理もあまり問題はありませんわね」

一夏「…………苦手って歴史の一部だけか」

セシリア「え、ええ……あと、生物。国語は苦手なのですけれど、普段からやってますので多分何とか……」

一夏「全然平気じゃねーかっ!!」

セシリア「ひっ!?え、えっ!?一夏さん???ど、どうして怒るんですの!?!?!?」

一夏「生物は科学と物理と一つのテストだし、歴史と地理は一つのテストだし、近代と現代史は平気、国語は普通なら、赤点候補が無いじゃないか!?」

セシリア「え?……ええ、別に赤点は……わたくしはテスト前に勉強をしなかったことが問題なのではないかと……思いまして」ビクビク

一夏「セシリア……お前安全圏の人間じゃないか……なんてこった


277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 00:07:50.94 ID:cPuz9R770



セシリア「そ、そんな……!わたくし、一夏さんのためなら赤点圏にだって……!」

一夏「セシリア……」

セシリア「一夏さん……っ!」

鈴「アンタ少しは助けるそぶりを見せなさいよおおおおっ!!!」

ゴッ

セシリア「はぐっ!?」

一夏「おう、鈴。おかえり。楯無さんは?」

鈴「アンタたちがあまりにもスルーしてるから帰っちゃったわよ!死ぬかと思ったわ!」

セシリア「い、良い所でしたのに……」

鈴「なんか言った?」ギロ

セシリア「何でもございませんわ」

鈴「大体あんた、テスト前の徹夜をしなくても赤点にならない可能性のほうが高いなんて……」

鈴「そんなのアタシ達レッドライン上の人間をバカにしてるとしか思えないわ!!」

セシリア「鈴さん中国の代表候補生ですわよね!?その成績に危機感はございませんのッ!?」

鈴「うっさいわね!私は……英語、国語、数学で一気に三つも赤点候補よ!!」

一夏「えっ」

鈴「……えっ?」

一夏「……そ、そうか……鈴、中学の時より……」

鈴「あんた……まさか……」

一夏「ああ……正直に言えば歴史と国語だけだ」

鈴「二教科ッ!?私が一番!?」

一夏「いや、大丈夫なのは。」

鈴「……」

セシリア「……」

一夏「そ、そんな目で見ないでくれ!」


278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 00:27:01.83 ID:cPuz9R770


一夏「まあ大丈夫と言っても結構ギリギリなんだが……」

セシリア「……徹夜、ですわね」

一夏「セ、セシリア!教えてくれるのか」

セシリア「……赤点なんて許しませんわ……未来のオルコット家の主人がそれでは……」ボソボソ

一夏「?」

鈴「ムカッ……ねー一夏!敵の言うことなんて聞くこと無いわよ!こうなったらもう補習受けましょ?」

一夏「いいいっ!?冗談だろ鈴!楯無さんに何されるかわから無いし、何より千冬姉に殺される!!」

鈴「なによ!普段やってないのがいけないんでしょう!?」

一夏「ISの事で覚える事が多すぎてできないんだよ!」

セシリア「ISの実技試験は素晴らしい成長ですものね」

一夏「いや、まだまだだよ」

鈴「余裕ぶっても筆記試験は無くならないわよ……」

一夏「……くうっ」


279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 00:31:34.65 ID:cPuz9R770

ココで久々の選択安価。

1. 一夏「セシリア!教えてくれ」
2. 一夏「セシリア!教えてくれ」鈴「あ、わ、私も!!」
3. 一夏「セシリア!教えてくれ」セシリア「鈴さん、あとはお任せしますわ」

安価>>281


281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 00:35:47.38 ID:l/zgHJQMo

2で

282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 00:41:45.68 ID:cPuz9R770


  |`ヽ.     __      , -‐ ァ 
  .|  ,>: :´: : : ト: : `丶、/   ノ  
__l_/: : /  :: : |: :丶 : : : |   ∠
\  / : : { : : : : : 、: : :\ : |_/ /
   } / : !、ハ: : : : : : 〉: : トゝ|  く本日終了AAで自爆を危惧してたのに安価が付いてる!?
   Yイ: !/`V、 : /}メ._V\:ヽ:ヽ  j でもこれから書くから今日はここまで!
   |从 ┃ `′┃ }: :}-、:/: : :|   
  厶イ “   -‐v、 “/ :リ ノ: イ:| 安価ありがとう。
   ト(\_{     }_ 7:// ̄)/: : ! 
     | ``ー――‐''|  ヽ、: : |   
     ゝ ノ     ヽ  ノ | : |   
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2. 一夏「セシリア!教えてくれ」鈴「あ、わ、私も!!」 で進めます。




290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 23:26:47.21 ID:cPuz9R770


一夏「セシリア!教えてくれ」

セシリア「えぇ!」

一夏「おお!サンキュ!!」

鈴「あ、わ、私も!!」

セシリア「えぇ?」

鈴「何よその差!?」

セシリア「まぁ?エリートであるこの英国国家代表IS操縦者候補生であるこのわたくしに?頼るのも無理はありませんわね!」

鈴「なんっかむかつくわね……」

一夏「耐えろ鈴、背に腹は代えられないと言うだろう?」

セシリア「ふうん……帰って寝ますわよ?」

一鈴「「ごめんなさい」」

セシリア「それでは……鈴さんは英語、国語、数学……一夏さんは全教科ですから、先に英、国、数からやってしまいましょうか」

鈴「セシリア!ありがとう!やっぱりセシリアは私の事……!」

セシリア「とっとと三教科終わらせて一夏さんと徹夜勉強ですわ……」ボソ

鈴「……ぁ?」ビキ

一夏「り、鈴、いいからやろうぜ!俺には時間がないんだ!!」

鈴「くっ……判ったわよッ」

セシリア「フフッ……」



291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 23:34:07.95 ID:cPuz9R770



―――― 21時



ドンッ!!

セシリア「鈴さん!?どうして判らないんですのッ!?」

鈴「ひぃぃ!だ、だってぇ……」

一夏「ははは、鈴はバカだなぁ」

鈴「一夏!あんたも判って無いじゃないのよ!!」

セシリア「まったく……こんなのジュニアスクールのレベルですわよ……」

鈴「だって中学から出来なかったし」

一夏「あ、俺も」

セシリア「開き直らないでくださいまし!!……小学生レベルと言ってますのよ?」

一鈴「」「」

一夏「な、なぁセシリア、小腹もすいたし夕食にしないか?」

鈴「さ!賛成!食堂まだ開いてるかな?」

セシリア「 な め て ま す の !?」

一夏「うわああっ!す、すまん!!」



292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 23:39:27.68 ID:cPuz9R770



―――― 22時



セシリア「そうですわ、うん。順調ですわね」

一夏「なんだ、結構判るな!」

鈴「うん!これならテストもいけるッて気がする!」

セシリア「教える甲斐もあると言うものですわ、わたくしもおさらいになりますし」

一夏「セシリア……ありがとうな」

セシリア「わ、わたくしは……別に」

一夏「いつも、遠回しだけれど、助けてくれるよな、セシリアって」

セシリア「一夏さん……」

鈴「はーい、そこまで、勉強よ、勉強!」

セシリア「……」チッ

鈴「なによ!」

セシリア「なんですの!」

一夏「まぁまぁ」

セ鈴「「誰のせいよ!」ですの!」


293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/25(土) 23:52:19.27 ID:cPuz9R770



―――― 23時



鈴「zzz……」

セシリア「寝るんじゃないですわ」スパーン!

鈴「ふぎゃっ!」

一夏「そうだぞ鈴、まだ三教科目だぞ……?」

鈴「くう……わ、わかってるわよ」

セシリア「これが終わったらとっととお部屋に帰って寝ててもいいですわよ……?」

鈴「絶対 い や ! 」

一夏「にしても、夜更かしばっかりしてるのに今日はダウンが早いな?」

鈴「文字見てると眠くなるのよ……」

セシリア「いつもお読みのラノベだって文字ですわよ……?」

鈴「あれはいいのよ……そうだ!ラノベ風に教えてよ!」

セシリア「……バカにも程がありましてよ」

一夏「そうだぞ、鈴」

鈴「何でそこまで言われなきゃいけないわけ!?バカ一号に!!」

一夏「こら鈴、誰がバカ一号だ!」

ドンッ

セシリア「とっとと続けますわよ……?」

一鈴「「はい」」


294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:01:26.05 ID:YKx4TtOz0



―――― 00時


一夏「…………」

セシリア「……つまり、物質Aとはここでは酸素ということになりますの」

鈴「zzzzzzzzzzzz……」

セシリア「では、酸素との反応とはつまり酸化になりますから、この数式を……」

一夏「……セシリア」

セシリア「なんですの?」

鈴「zzzzzzzzzzzz……ふがっ」

一夏「起こさないのか?」

セシリア「一夏さん?他人の心配をしてる余裕はあなたには在りませんわよ……?もう一息なのですから」

一夏「……ぉ、おう」

鈴「ぐがー……」

セシリア「さ、いいペースなのですから……科学と物理を仕上げましょう」

一夏「あ……ああ」


295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:16:16.31 ID:YKx4TtOz0



―――― 02時


鈴「むにゃ……終わったぁ……?」

一夏「お、おう鈴、起きたか」

セシリア「鈴さん、無理に付き合わなくても結構ですわよ?疲れが取れなかったなんて言い訳はありませんわ」

鈴「んー……う……せしりあー、鍵ー」

セシリア「持ってませんの?全く……」

鈴「今朝出るときあたしが忘れたって言ってるのに閉めたのせしりあじゃん……んむー……」

セシリア「はい、鍵ですわ」

鈴「うん。  ……あんたそこに座ってたっけ??」

セシリア「ねねねね寝ぼけてますの?とっととベッドでちゃんと眠ってくださいな」

鈴「んー……いつもは平気なのに、勉強だとやたら眠いわ……」

一夏「おやすみ、鈴」

鈴「えへへ、うん、一夏。セシリア、おやすみ」

トコトコ パタン

セシリア「さ!あと一息ですわ!」

一夏「おう!」



297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:26:36.48 ID:YKx4TtOz0



―――― 05時







セシリア「あっ!は……ぁン……い、一夏さん……!」

一夏「……ほら、セシリア。力を抜けって」

ギシ

セシリア「……ぁあ……ぁぁぁ……そんな……わたくし……わたくし……」

一夏「そんなに恐がらなくても平気だって……ほら」

セシリア「ああ、一夏さん……は……はい」

一夏「……お、おう……よっ……と。」

ギシ……ギシ……

セシリア「ああ!そんな所……気持ち……よすぎて……ああ!何かが……あーっ!」


ガチャ



ラウラ「おはよう我が嫁よ……ふふ、さぁて今日はどんな……」

セシリア「ああ……もう、わたくし!」

ラウラ「」

一夏「うおおっ!?ラ、ラウラ!?」

セシリア「ぁふ……一夏さぁん……」


ラウラ「な……な、な!なな!!なんだこれはあああああああああああああああああッ!!!」シュウン!



―― どごーん



299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:35:23.07 ID:YKx4TtOz0


バタバタバタ

箒「一夏ッ!こんな時間に何事だいまの音は……?!」

シャル「一夏!大丈夫!?ってラウラ!キミはまた!」

ラウラ「せ、せ、セ、セ、セシリアァァァッ!貴様一体どういう……!」

箒「は?セシリア?ラウラ、お前何を……」

一夏「――ッてて……」

セシリア「な、なんですの……」

箒「」

シャル「……ど、ドウイウコトナノかな?一夏……」シュウン

一夏「……あれ……?シャル……?なんでIS……」

箒「い、い、い、一夏ァァァァァ!!!!!」シュウン

一夏「箒ッ!?ちょっと待て!お前まで」

セシリア「な、な、何ですの一体……!?」

ラウラ「こうなれば、身体に覚えさせるしかあるまい……」ジャキン!

シャル「何処でミスったかなぁ……今生は……一夏、一人にはしないからね」ジャカッ

箒「性根を……叩ッ斬りなおしてくれる!!」チャキッ


鈴「セシリア!一夏ッ!!」


ガギィン!!


300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:49:41.94 ID:YKx4TtOz0


ラシ箒「「「!?」」」

一セ「「鈴!」さん!!」

ラウラ「チィッ!そこをどけ!鈴ッ!!」

鈴「嫌よ!」

シャル「きみはこれでいいっていうのかい!?」

鈴「うっさいわね!」

箒「一夏!一夏!!貴様ぁぁっよくも!!」

鈴「落ち着きなさいよ!!箒!!」

セシリア「え……えっ!?どうして……」

千冬「 鎮 ま れ !! バ カ 者 ど も !!」

千冬「貴様ら!!朝っぱらから寮内で完全展開など、どういうつもりだ!!」

一夏「千冬姉!」

千冬「……!? ほ、ほぅ……」ヒクッ

セシリア「お、織斑先生」

千冬「………………貴様らは……このタイミングで……頭の痛い問題を……」


301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:51:03.57 ID:YKx4TtOz0


千冬「篠ノ之!デュノア!ボーデヴィッヒ!!さっさとISをしまえ!!ここは寮だぞ!!凰!貴様もだ!」

シャル「……っ」シュウン

ラウラ「くっ……教官……」シュウン

箒「………………」シュウン

鈴「……ふう」シュウン

千冬「オルコット!!さっさと部屋にもどれ!!織斑、貴様は私の部屋だ。来い!」

セシリア「はっ!はいッ!」

鈴「……セシリア、大丈夫?もどろ?」

セシリア「え……ええ」

一夏「は、はい……」

千冬「お前らも部屋に帰れ!話は今日のテストの後だ!!解散!!」



一夏「篠ノ之 箒、ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノア vs 織斑 一夏、凰 鈴音、セシリア・オルコット 異例の3on3戦の告知がされたのは、テストを終えた日の放課後だった」



302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:52:13.88 ID:YKx4TtOz0



安価。二択です


1.勝ち抜き式の団体戦

2.6人同時の集団戦


>>303



303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/06/26(日) 00:53:32.66 ID:om5gZ6DUo

描写難しそうだけど連携が見たいので2


304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 00:59:11.77 ID:YKx4TtOz0

     -──‐  .
   /r‐v‐v‐v‐、  ヽ
  , ' / ̄ ̄ ̄ ̄|   ',
 /  /_____j
 /  /Y^Y^Y^Y^Y}     i  今日はここまでですの。
 .′ !,メ、_{ l| 厶斗|     |  尚、今回についての説明は致しませんわ、
′ { | ◯ \{'  ◯′/  八   次回は戦闘の性質上地の文を使うかもしれないですわ
! i  Y “      “イ  /   先に謝って置きますわね。
| .| /(\   ー'   // ̄) 、 〉
| |   | ``ー――‐''|  ヽ、. |
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
安価結果: 6人同時の集団戦



309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 23:38:02.37 ID:YKx4TtOz0


================インフォメーション================

千冬「えー、本日は3on3戦の予定でしたが。都合により番組の予定を変更致します」

千冬「本日は『山田と朝まで無限おかわりテキーラ・ショットガン大会!負けたら脱げ!』をお送りいたしまーす。」
山田「しませんよ!?もしかしなくても強制参加じゃないですか私!絶対嫌ですよ!?」

千冬「……と、いうのは嘘だ。ああ、『山田脱げ!』が嘘だからな」

山田「その略し方おかしくないですか!?」

千冬「これはいわばCAUTIONだと思ってくれ、最近のゲームやら立ち上げると出るあれだ」

山田「このゲームに登場する人物は全て18歳以上で~、ってとかいうやつですね!」

千冬「ほう……」

山田「……はっ!!」

千冬「それは置いておいて、前回で小生意気に『引き』など使いながら『テスト前徹夜編』が終わり、今回からは擬音と声だけでは非常に判りにくい『3on3集団戦編』に入る。」

山田「そこで、今回から試験的に 地の文あり という形に変更します。」

千冬?「黒歴史レベルだなこりゃ、イエス様でも書いたやつに捕鯨槍ブチ込んでモビー・ディックに喰わせるレベルだ。しかもやたら書く時間がかかる上に進行が遅くて今書き上がってる所では未だ戦闘すら始まってないどころか放課後にすらなって無いときた。終わンのかよこれ」

山田「誰ですかッ!?」



千冬はマイク横に置いてあったロックグラスを手に取り、くいと一口大きく呷ると、
深く息を吐いてから、隣の山田真耶の肩を抱き寄せる。

「こういうことだ、嫌悪感があったら元に戻すようレスを残してくれると嬉しい」

「ど、どういうことですか!?って!織斑先生!先輩ッ!お酒!酒臭ッ!!」

―――― ガハハハハ  キャー

==================================================


310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 23:44:46.15 ID:YKx4TtOz0


――――


「織斑」

冷たい声色が、この部屋にいる人間両方の名字を呼ぶ、

「……は、はい」

二人しかいなければ独り言か相手に掛ける言葉しかない。
学内唯一の男子生徒、織斑 一夏は教師、織斑 千冬の前で床に正座をしながら萎縮し、沙汰を待っていた。

「…………確かに、いい加減一人に絞れとは私も言った……言ったが」

すらりとした鼻筋から眉間を指で押さえながら、教師として、保護者として、姉として、
言うべき言葉を考えるほどに、自慢の弟の周囲に群がっていた小娘たちの今朝の姿がフラッシュバックする。
いざそうなった時に、こんな事になるのは判っていた、判ってはいたが……

「テスト前日に寮内でさかるとか貴様達はFランの大学生か?獣か?バカか?死ぬか?」

「いや……だからあれは……」

何度もした抗弁を口にしかけ、言葉を飲み込む。
徹夜のテンションがおかしかった事はあるけれど、正直理性は効いていたのかと問われて答える自信は無い。
手に残る柔肌の感触と、最後に見た酷く寂しそうな表情が忘れられない。

――もしあそこでラウラが入って来ていなかったら?

そう思うと、酷くのどが渇いて、一夏はこくりと喉を鳴らす。


「その代わり、土曜の放課後に関係者での3on3戦を行う事になった」

もしかしたら、弟が弁明する通り、笑ってしまうような事が真実なのかもしれない。
しかし既に真実は乱暴な言い方だがどうでもいい。事実が優先される。

国家代表候補生含む専用機持ち4人がIS学園の寮内でISの完全展開を行い、部屋の中で破壊行為を行った。
最悪、学園そのものの在り方さえ左右するかもしれない問題だ。
幸いにして怪我人は出なかったからいいものの、事が公になれば各国は黙っていまい。
こうして専用機持ち同士のプライドのぶつかり合いであった点を強調するように、専用機同士のエキシビジョンマッチを行う事で、
事が公になった場合の機先を制する。
この3on3にはそんな意味もあった。


311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/26(日) 23:49:43.14 ID:YKx4TtOz0



――――


「織斑」

冷たい声色が、この部屋にいる人間両方の名字を呼ぶ、

「……は、はい」

二人しかいなければ独り言か相手に掛ける言葉しかない。
学内唯一の男子生徒、織斑 一夏は教師、織斑 千冬の前で床に正座をしながら萎縮し、沙汰を待っていた。

「…………確かに、いい加減一人に絞れとは私も言った……言ったが」

すらりとした鼻筋から眉間を指で押さえながら、教師として、保護者として、姉として、
言うべき言葉を考えるほどに、自慢の弟の周囲に群がっていた小娘たちの今朝の姿がフラッシュバックする。
いざそうなった時に、こんな事になるのは判っていた、判ってはいたが……

「テスト前日に寮内でさかるとか貴様達はFランの大学生か?獣か?バカか?死ぬか?」

「いや……だからあれは……」

何度もした抗弁を口にしかけ、言葉を飲み込む。
徹夜のテンションがおかしかった事はあるけれど、正直理性は効いていたのかと問われて答える自信は無い。
手に残る柔肌の感触と、最後に見た酷く寂しそうな表情が忘れられない。

――もしあそこでラウラが入って来ていなかったら?

そう思うと、酷くのどが渇いて、一夏はこくりと喉を鳴らす。


「その代わり、土曜の放課後に関係者での3on3戦を行う事になった」

もしかしたら、弟が弁明する通り、笑ってしまうような事が真実なのかもしれない。
しかし既に真実は乱暴な言い方だがどうでもいい。事実が優先される。

国家代表候補生含む専用機持ち4人がIS学園の寮内でISの完全展開を行い、部屋の中で破壊行為を行った。
最悪、学園そのものの在り方さえ左右するかもしれない問題だ。
幸いにして怪我人は出なかったからいいものの、事が公になれば各国は黙っていまい。
こうして専用機持ち同士のプライドのぶつかり合いであった点を強調するように、専用機同士のエキシビジョンマッチを行う事で、
事が公になった場合の機先を制する。
この3on3にはそんな意味もあった。





317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 00:08:40.96 ID:ozxFYtUC0



それに、姉の勘が告げている、弟の言葉が真実であっても、もしあそこで騒ぎにならなかったのなら、きっと……

「皆には既に連絡をしてある……お前もこの件は決して口外するな」

見栄を切り、虚勢を振り上げ、高飛車な言動の目立つセシリアのそれが、
セシリア・オルコットを飾るドレスに過ぎない事は、少し彼女に触れた者ならばすぐに判る。
おだてに弱く、一度でも心を許した相手には賭け値無しの信頼をぶつけてくる素直さ。
明るい感情を大らかに表情に出し、良く笑い、良く怒る。年相応の、乙女の本質。

その笑顔から「何不自由なく育ったお嬢様」以外の彼女はなかなか想像ができない。
確かに何不自由なく暮らしていたセシリアは、早くに両親を事故で亡くしている。
幼かったセシリアに残されたのは莫大な遺産と貴族の流れを汲む家の名誉。

彼女はこれまで、どれほどの努力をしてきたのだろう。どれほどの大人の汚い部分を見て育ったのだろう。
どんな思いで、オルコットの誇りを維持し、国家の威信を背負い、今あんなに明るく笑えるのだろう。

同じように家族を只管に護り続けた自分はあんな風には笑えていない。
元々の性格の違いも環境の違いもあるにせと、と千冬は口中で小さく自嘲する。

(まぁ、真実如何にせよ良い女をつかまえたじゃないか……勿体無い程にな)


319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 00:19:26.73 ID:ozxFYtUC0



「口外なんて……」

一夏はそこまで言いかけて、感じた違和感に言葉を飲み込む。
早朝の寮内で放たれたシュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンは部屋の内装を破壊し、外壁を見事に貫通した。
時間のせいもあってか、千冬より早く現場にいたのは、いつもの6人だけだったけれど、その破壊の跡は外側からも確認できる程の壮絶さだ。
口外も何もない、今朝一夏の部屋で何かがあり、部屋一つを破壊する火力の何かが使用されたことは明らかなのだ。
当然、そのような火力が使用された原因も公のものとしなければいけない、
それが寮長である姉の仕事ではないか。

「どうした、そんな目で教師を見るな」

「いや……っ!」

「……ふん、まだ全員からの聴取も終わっていないからな。手っ取り早い。
 それに、その方が対外的に都合がよい……まさか国家代表候補生同士が色恋沙汰で暴れたなど、どこに報告しても冷静な返答は帰って来なかろうよ」

千冬の言葉が、一夏自身を含めたその周囲の背負う物を改めて実感させる。

「千冬姉……俺は」

「織斑……いや、一夏…………心配するな。お前は何も間違っていない」

一夏と、そう言葉にする千冬の言葉は、姉として、ただ一人の家族として、
自分と、その抗弁の向こうに抱え、言葉にできなかった『もしも』までも見透かして、その上で、その世界を護ると、そう宣言してくれているようで。
それが一夏はとても嬉しくて、でも、いつまでも、本当の意味で守られてばかりの自身が不甲斐なくて、今はただ拳を握り締めるしかできなかった。



323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 00:29:17.74 ID:ozxFYtUC0



――――――


「3on3……ですの?」

「ええ、第一アリーナ、今週の土曜の放課後よ」

「アタシとアンタと一夏のチームと、シャルロット、ラウラ、箒のチーム」

「……」

「はぁ、予想はしてたって顔ね」

ボスン、と音を立てて、寮の部屋に不釣り合いな天蓋付きのベッドへ、
先程の一件ですっかり気落ちした様子の親友の隣に鈴は腰を下ろす。

試験勉強をしていた筈の年頃の男女は夜明け近くに二人きりでベッドの上にいた、
今は気品を感じさせる制服に身を包んでいる親友は、自分が踏み込んだ時はバスローブを羽織っただけの姿だった。
それが何を意味するかは、いくらなんでも鈴にも理解できた。
本当は、一夏の得意なマッサージをしていただけかもしれない。バスローブ一枚でマッサージという時点で十分いかがわしい事だが、親友は暴走しがちな色仕掛けを行う傾向がある事はよーく判っている。
きっと、今事情を聴けば、親友は洗いざらいを話してくれる。
それが例え、年頃の男女がベッドの上で裸同然で行うものであっても、マッサージであっても。
でも、聞かない。子供っぽい感情ではあったけれど、

「…………聞かないわよ」

「……」

もう何度も告げた言葉。
きっと、親友が自分に何か聞いて欲しい事があるのだと凰 鈴音には判っていたけれど、
とても聞く気にはなれない。
付き合いはまだ短い、親友と思える彼女が片思いの幼馴染と寄り添う姿が浮かんでは消える。

「笑えないわ」

足を組んで、膝に頬杖を突く。
祝福したい気持ちはあっても祝福などできないかもしれない、以前そんな事で心を痛めていた事もあったけれど、いざとなると、それどころではない。
不意に洩れてしまった呟きにぴくりと肩を跳ねさせて、押し黙る横顔を見つめていると、
部屋に踏み込んだあの瞬間、確かに沸き上がった感情が今も鈴自身を苛む。

「――あー!やめやめ!セシリアもいつまでもそんな気分落としてんじゃないわよ!」

「で、ですが」

「やめろって言ってんの!ほら立って!シャワー浴びてガッコ行くわよ!」

はずみをつけてベッドから降りると、ぎゅっと線の細い手を握って立たせようと引く。
生返事のまま、引かれるがままのセシリアをシャワールームに連れて行きながら、

この手はもう幼馴染のものなのかと、そんな風に感じて、鈴は少し泣きたくなって。

二人で一緒に入るシャワーが今はこんなに寂しい事が互いに辛くて、二人はいつの間にか泣いていた。


324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 00:42:32.07 ID:ozxFYtUC0


――――――


テスト終了の鐘が鳴る。実際に鐘を鳴らしているわけではないし、
明らかに合成音声を再生しているだけだが鐘は鐘。
しんと静まり返っていた教室内は、一気に解放感に包まれ、一気に喧騒が戻って来た。
朝からずっと聞きたかったんだと跳ねながらやって来た布仏本音、通称のほほんさんが間延びした声で一夏に質問を投げかけるのを皮切りに、クラスメイトのほぼ全員が一夏に詰め寄って来た。

「おりむー、大丈夫?」

「部屋凄い事になってたね、何があったの?」

「はは……いや、大したことじゃ……」



「……ふん!一夏が悪いのだぞ!」

答えに詰まる一夏の傍に箒がやって来て、一夏を口撃し始める。
はじめ、まさか箒は全て言葉にしてしまうのではないか、そんな不安を感じたけれど……それは杞憂であったと気付くのはすぐだった。

「全く貴様と言う奴は……あれだ!!あれなのだ!!」

この幼馴染は、自分たち二人が争ったのだと、そういう形にしようとしている。

「ほ、箒……だからってお前な!やって言い事と悪い事があるだろう!?」

姉から、どのタイミングで話を聞いているのかは知らないが、
いつもはこの様な口喧嘩をすぐに止めに入るシャルロットも、ラウラも、セシリアも動けない。
代表候補生である自分自身が当事者であってはいけないのだから。

「ええい!うるさい!大体貴様は、いつもいつも誰にでも……だから私は……それなのに」

(あれ……?)

箒の声の様子が変わる。訝しがる一夏の前に、箒を庇うようにラウラが割って入って来たのはその時だった。

「我が嫁一夏よ、今のはお前が全面的に悪い!」

「そうだね、ひどいよ一夏……箒、大丈夫?」

続いて、シャルロットも箒の肩を持つ。絶妙のタイミングでの乱入によってこれで対立構図が生まれた、ここまでの計算なのだろうか、それとも打ち合わせをしたのだろうかと思うと、一夏はぞっとしたものを感じざるを得なかった。

「な、なんだよお前ら、俺の何が悪いって……」

(あれ、でもこのままじゃ……俺が三人にぼこぼこにされる展開じゃないか?)


325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 00:53:40.28 ID:ozxFYtUC0



「お待ちなさい。確かに一夏さんに問題は沢山ありますけれど、箒さんも悪くてよ?」

そんな一夏の不安を和らげる凛とした声が響く。
セシリアが一夏のサイドに着いた……。一瞬、寒気のする気配も周囲に広がる。ラウラとシャルロットからだ。
これが打ち合わせの上のものだとすれば、セシリアもそこに加わっていたというわけだ。
今朝の箒、シャルロット、ラウラの剣幕を知る一夏にとって、それは女の怖さを感じる寒気だった。
けれど、それはドアを勢いよく開けて乱入してきた鈴の声によってかき消される。



「話はきかせて貰ったわ!私は一夏につく!箒!謝んなさいよ!!」



水を打ったように静まり返る教室。
聞かせて貰ったと言い切る鈴は、どう考えても今教室に来たばかりなのだから。

「ぶっふ……」

(おいいいいい!その登場の仕方はどうなんだ!?ラウラとか口元抑えてうずくまってんじゃねーか!?)

「……おりむー、今のはおりむーが悪いよ!」

「織斑君!私は織斑君の味方だよ!」

「篠ノ之さん、元気出して?ね?」

鈴の宣言を合図にしたように、クラスメイトが立ち位置を宣言し始めて二分する。幸いにして普段から一組に出入りしている事が多いせいか、誰も鈴の唐突さと不自然さには気づいてないようだ。

(鈴はこんな事計算してない、絶対)

ガラリと教室の戸をあけて、この三文芝居のトリがやってくる。
千冬は専用機持ち全員に一発づつ拳骨を一周入れてから、トドメとひときわ強い拳骨を一夏に食らわせて、

篠ノ之 箒、ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノア vs 織斑 一夏、凰 鈴音、セシリア・オルコット
異例の3on3戦の告知がされたのは、テストを終えた日の放課後だった。


326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 01:05:17.25 ID:ozxFYtUC0


――――――


篠ノ之箒           織斑 一夏
ラウラ・ボーデヴィッヒ VS 凰 鈴音
シャルロット・デュノア    セシリア・オルコット

三年生の専用機持ちは一人、二年生が二人に対して、一年の専用機持ちは七人いる。
その七名のうち、六名での3on3が行われると聞き、第一アリーナは通路まで満員の観客で埋まっていた。
たった一人の男性IS操縦者織斑 一夏の白式・雪羅は、数多くの謎を秘めたいかなる国家にも属さない機体だ。シールドエネルギーを無効化するワンオフアビリティ零落白夜は全てを切り裂く。

篠ノ之箒が駆る紅椿は、近接戦闘と射撃戦を同時に補う万能機。

第二世代機にして並いる第三世代機達を抑え、一年最強と噂されるフランスの代表候補生シャルロット・デュノアのラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ。

ドイツ軍に籍を置く同国の代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒのシュヴァルツェア・レーゲンには、PICを応用した新機構、AICが積まれ、砲戦機の欠点であった近・中距離においても強さを見せる。

中国の代表候補生凰 鈴音が駆る甲龍は近距離を重視した機体でありながら、射角、射撃姿勢を問わない上に砲弾だけではなく、砲身すら目に見えない龍咆を搭載。設計思想から抜群の継戦能力を持つ。

特殊なレーザー兵装、BT兵器を搭載したイギリス代表候補生セシリア・オルコット専用機はBTそのものの名称、ブルーティアーズを与えられている。

簡単な各機の情報が電光板に掲示されている。
今回の試合は各国からの視察団が訪れるタイミングで開催された為、
念の為、白式・雪羅と紅椿が第四世代機である事や篠ノ之束が手掛けた機体である事は伏せられ、それに伴い、紅椿には絢爛舞踏の使用が禁止されていた。
自分だけでなく仲間のシールドを含めたエネルギーを瞬時に回復させる絢爛舞踏を使用した場合、全く勝負にならない事が明白だからというのも使用禁止の要因だった。


327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 01:17:27.50 ID:ozxFYtUC0


――――――


「絢爛舞踏は無しか……」

「一対一の模擬ならまだしも、集団戦で使われたらたまったもんじゃないわよあんなの」

ISスーツのまま、ドックで最終チェックを行う。
何も聞かず、何も言わず、セカンド幼馴染は一夏を、セシリアの味方でいてくれる。
家庭の事情で中国に帰った時も、そんな様子はとうとう再会するまで一度も見せなかった。

「鈴……ありがとな」

「はあっ!?ば、バカじゃないの!アンタの為じゃないわよ……」

その意思の強さは、真っ直ぐさは、一途さは、不器用な態度の下で、何度も何度も壁にぶつかって、
傷だらけになって何度倒れても、何度でも立ち上がり、またまっすぐに走りだす。
そんな鈴の意思を貫き通す為の力、第三世代IS甲龍を完全展開し、お先に、と言いながらエントリーカタパルトへ鈴が向かっていく。その背中は、一夏にとって、とても頼もしいと憬れさえ感じるものだった。

328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 01:19:18.33 ID:ozxFYtUC0


「…………」

「…………」

残された二人は、無言のまま、互いに顔を合わせずにいた。
あれから、付け焼刃の連携訓練は行っているから、全く言葉を交わさないわけでもない、
クラス内でもいつものようにクラスメイト達と談笑を交わしていた、
しかし、あの一件以来、一人になるとこうして押し黙っている事が増えたし、
それを一夏は知っていた。

「……すまない、セシリア」

「…………謝る事が……ありますの?」

「いや、そういうわけじゃ……謝ってるんじゃなくて……いや、謝っているのか?」

一夏は、もどかしそうに頭を掻く。こうなった原因は何だと、ここ数日はいつも考えているけれど、
どうしてもこれという答えが見出せずにいた。
全く同じ事をセシリアもまた問い続ける、一人になる度に塞いでいるのは、決して沈む気持ちを起因とする訳では無かった。
それを考えた結果、沈んでしまう事が殆どなのだけれど。

(テスト勉強をしていれば?いいえ、それでは誰か他の人が私と同じ道をたどってきっとここにいらっしゃったのでしょうね。一夏さんは……誰にでもお優しいですもの……。わたくしは幸運を享受しただけ……それでも……ラウラさん達の怒りは尤もですわ。……きっと。その上で進む為の何かが必要なのに……わたくしは一夏さんに好印象を持って頂く事ばかり考えて……一夏さんの判断を尊重すべきでしたのに……一夏さんが謝罪すると言う事は、きっと……舞い上がったのは私ですのね)

戦闘前の緊張がそうさせるのか、考えるほどにネガティブな答えが次々生まれる。

(どちらにせよ……私はラウラさん達の怒りを受け入れるべきですわ)

「………一夏さん。有難う、ございました……」

「!?」

鮮やかな蒼の機体、第三世代ISブルー・ティアーズを完全展開したセシリアが一夏に背を向ける
一夏はその背中に手を伸ばす、口を開くが言葉が出ない、何かを思いついてはその言葉が消えていった……。



329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/27(月) 01:21:50.97 ID:ozxFYtUC0



(ございまし……た?)

鮮やかな蒼は空の中にあって映え、すっきりとまとまったデザインは派手すぎず、地味すぎず、それでいて、パイロットのプロポーションによる印象の補助もあるにしても、女性的なシルエットを確りと全体に残している。
初めて戦った時、高慢なこの女を乗せたブルー・ティアーズは、鮮烈なイメージを焼き付けるほどに美しかった。

いつからだった、それを……。

いつからだった、ずっと……。

カタパルトを踏みこみ、真っ青な空へ昇って行く涙。見送ることしかできなかった一夏の耳に、姉の声が響く。



「織斑!おい!織斑!!聞いているのか!!」

「ッは!はい!!」

「……織斑、どうした」

「い、いや、なんでも……」

微かな声の変化に、スピーカーから聞こえる姉の声は、とても優しくなる。他人が聞けば気付かないような変化だけれど、唯一の肉親である弟がわからないのでは情けない。心配をかけまい、ただでさえ今回の件では支えて貰っているのだから。
一夏はISを展開して、カタパルトへの移動を始める。

「もう全員上がっている、お前もさっさと上がれ!」

「はい!」


でも……他人が聞けば気付かないような変化、唯一の肉親である姉もまた、わからない筈が無くて。


「…………何度も言わせるな。お前は間違っていない。」

「!!」

「さあ、話は終わりだ!さっさと行け!……行って、お前の意思を見せて来い」


「千冬姉……。 白式・雪羅、 織斑 一夏! 行きます!」





完全展開された第四世代相当IS、白式・雪羅が、決戦の空へとカタパルトから飛び立っていった。





337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/28(火) 00:04:53.14 ID:XJVUzEZ20


第一アリーナの空に、6機のIS、それも専用機が空に展開している。

燃費こそ悪いが超性能を誇る、あまり公に出来ぬ第四世代
白式・雪羅と紅椿

遠近をカバーし、優れた安定性が磐石の戦果を生む万能機
甲龍とラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ

超射程の主武器と、特異なサブウエポンによるオールレンジを実現したワンオフ機
ブルー・ティアーズとシュヴァルツェア・レーゲン

6機の専用機が決戦の空を翔け、攻防を繰り広げていた。

「っ!!あたしだって……負けらん無いのよ!!!」

「鈴ッ!お前は……許せるのか!?」

紅椿と崩山装備の甲龍が幾度も幾度も交差する。
二刀に分割した双天牙月で鈴が迫れば、
激しい剣戟を縫うように雨月・空裂の刀身から放たれるエネルギー刃を放つ箒。

「そんなのわかんないわよアタシにだって!!……でも……セシリアに……セシリアに!アタシの親友に!!!これ以上寂しそうな顔なんかさせるわけにいかないでしょうが!!!」

鈴が崩山装備の炎を纏った拡散衝撃砲を放つ。砲門が4つに増えた事でその範囲は大きく広がっており、近距離戦の間合いでは文字通り逃げ場は無い。箒は第四世代の機体性能を頼りに被弾しつつも後方に下がり、大きく高度を下げて回避する。

「くっ!思った以上に……!!」

「箒!援護するよ!!」

今回の試合が発表された時、箒は勝利を確信していた。
紅椿のワンオフ・アビリティ絢爛舞踏は自身のだけではなく、他者のチャージも行う事が出来る。
相性問題で白式に使用する事が望ましいけれど、それでも、ただ一人、己の力で勝利を引き寄せられるのは自尊心を満たしてくれる。
しかし、あまりにも強力すぎるその性能は、公開試合となったこの戦闘では使用を禁止されている。
絢爛舞踏がなければ紅椿は持て余すほどの火力、機動力、シールドの全てと引き換えに、
極めて燃費の悪い欠陥機同然だった。

(くそっ……無様だな私は!)


338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/28(火) 00:21:50.36 ID:XJVUzEZ20


シャルロットの両手に握られたアサルトライフルから、3点バーストで交互に弾丸が発射され、鈴に迫る
巧みに間隔と射角を変える射撃は、単純な掃射よりも読みにくく、避け難い。

「鈴!そちらの要は鈴だ、開始早々で悪いけれど落ちてもらうよ!」

「何でもかんでも、そう上手くいくと……!」

致命打こそ避けながらも、このままシャルロットの弾雨に身を置くことは3on3であるこの戦いに於いては不利。
鈴はスラスターを吹かしての離脱を試み、シャルロットは……その離脱をすんなりと許した。

「……しまった!!」

鈴がその意図に気付いた時、地表で射撃姿勢をとった黒の機体が吼える。

「鈴!覚悟ッ!!」

二門のレールカノンが回避運動で大きく動いた鈴に狙いをつける。
大きな動きにはどうしても慣性が発生する為、次の回避運動が遅れがちになる。
始めからそれを狙っての攻撃だったと鈴が気付き、口惜しげな視線をシャルロットに向け、それにシャルロットが笑みで応える。チェックメイトだ。

「うあああああッ!!」

しかし、爆音の中に叫んだのは、硬く目を閉じ衝撃に備えた鈴ではなく、今まさに発車しようとしていたレールカノンの砲身を天から降り注いだ光条に撃ち抜かれ、その誘爆に呑み込まれるラウラだった。
上空から一気にシュヴァルツェア・レーゲンに間合いを詰める蒼い機体。

「ラウラさん……!私をお忘れでなくって?」

「来たか……セシリアァァッ!!!!」



340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/28(火) 00:55:29.20 ID:XJVUzEZ20



砲身を失ったレールカノンをパージしながら、ワイヤーブレードを展開してラウラが降下してくる憎い恋敵を迎撃に飛び立つ。
正直に言えば、あの晩、二人が同じベッドに居る。それだけしか確認できていない。一夏の部屋へ潜入した己の目に飛び込んできた二人の姿と、セシリアの嬌声に逆上したのは、相手がセシリアだからだ。敵と認めうる存在だからこそ、慌てた。この女にアドバンテージを握られては危険、シャルロットの事件の際からそれを強く感じていたから。
ターゲット周囲に展開されたビットなど、機動性を犠牲に装備された物理シールドで凌ぎ切る。わざわざ居場所を知らせた上に、ショートブレード、インターセプターを展開しながら突撃してくる実験型、試作型の狙撃機など、量産化の目処こそついていないとは言え軍用機として正式採用されているシュヴァルツェアシリーズの相手ではない。

(相手ではない……?いや……こいつまさかッ!!)

あまりにも無策、無謀、これが鈴や一夏、シャルロット相手ならば己の不利を覚悟する事だが、相手はセシリアとブルー・ティアーズ。
何よりラウラにその予想を確信させたのは、大型シールドのような肩部にはっきりと4つのビットが着いたままだったからだ。

「この馬鹿者が!!贖罪だとでも言うつもりか!!!」

ワイヤーを鞭のようにしならせて、ラウラはセシリアを迎撃する。
ワイヤーの尖端に取り付けられたブレードが変幻自在の動きで迫る。当たり所が悪ければ遠心力を乗せて打ち込まれるそれは致命的な威力となる。

「良かろう、貴様をココで終わらせてやるよ!」

「さぁせるかあああああ!!!」

ワイヤーが辿り着くよりも早く、セシリアに瞬間加速で体当たりする白の機体があった。
専用機同士の派手な戦闘に沸いていた観客席も、二対一の戦いで鈴を追い詰める箒とシャルロットも、追い詰められる鈴も、目の前でセシリアが轢き飛ばされるのを見ていたラウラも、全員が唖然とした表情を浮かべ、アリーナは一瞬静寂に包まれた。
身体をくの字にして弾き飛ばされたセシリアが壁に叩きつけられた爆音が大きく響き、そのままズルズルと蒼のシルエットが地表に崩れ落ちる。

「…………ぉい」

突然の事態に、ファースト幼馴染の頬が引き攣る。

「……あーあ……」

フランスからやってきた美少女は、溜息をつきながら首を振り

「せっ……セシリア……!?」

裂帛の気合で今まさに貫こうとした相手を襲った衝撃に、怒りも忘れてその様子を目で追い

「なっ!!な、な、ななななな」

味方は二の句が次げずに言葉を震わせ。

「セシリア!大丈夫かッ!!」

「「「「お前が言うな!!」」」」

戦場と観客席に生まれた一体感が、お前が言うなの大合唱を第一アリーナに響かせた。



「…………」

「…………あの、織斑先生?」

「山田君」

「は!はい!」

「酒持って来い……」



348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/28(火) 23:46:34.72 ID:XJVUzEZ20


突然の事態にアリーナに動揺が満ちる。
イギリス代表候補生セシリア・オルコットがドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒと交戦状態に入るや否や、唯一の男性IS操縦者である織斑一夏があろうことか味方であるはずのセシリアを瞬間加速≪イグニッション・ブースト≫からの体当たりで吹き飛ばしたのだ。
予想外からの角度で吹き飛ばされた蒼い機体は憐れ姿勢制御もままならず障壁に叩きつけられ、ずるずると地表へと崩れ落ちていた。
イギリスからの来賓がこの事態に激昂しながら学園関係者に詰め寄っている他は、あまりの展開に茫然としていた。ただ一人、事の張本人である織斑一夏をのぞいて。



「……く……うっ……な、なんですの、一体……」

辛うじて意識は保っていたものの、ブルー・ティアーズのシールド残量は今の一撃で大きく削られてしまった。手にしたスターライトmk-Ⅲを杖代わりに何とか立ちあがり、機能損傷のチェックを行う。スラスター系のいくつかに僅かにエラーとセンサー系に障害が発生しているが、BT管理系は正常を示していた。
ブルー・ティアーズが自動で機能修復を行っている事を示すインジケーターの動きは、障壁に叩きつけられた主人を護り尚、まだ戦えると健気に奮い立つブルー・ティアーズ自身の意思を見た気がして、セシリアは俯く。

「わたくしは……勝利を捨てた戦いをしておりますのよ……」

ISには意思のようなものがあると言われている。
それは人格のようなものとは似ているようでまた違うらしいが、生憎と対話をした事は無い。
以前におかしな夢を見たと織斑一夏が漏らしていた言葉。もしかしたら、それは彼が自らのISと対話したのかもしれない。
ブルー・ティアーズはどんな人格なんだろう、話す事ができたなら、何故負けようとする主人の為にそうまでするのかを聞きたかった。


349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/28(火) 23:58:51.74 ID:XJVUzEZ20



「セシリア!」

「……一夏さん……!?」

機能の自己応急処置を待つセシリアの元に、今しがた自分自身を轢き跳ばした人物が真剣な表情でやってくる。もしかして心配しているのだろうかなんて思ってしまった自分へ否定するように首を左右に振る。
そんなわけがない。彼はごめんと謝った、あの日の事で仲間と戦う事になったセシリアに謝った。

(私が後悔していると思うから?私が勘違いしていると思うから?一夏さんが私に迷惑をかけたと思うから?何が迷惑?私の願いを聞いてくれた事が私に迷惑だったと?)

それとも、試合を投げようとしている事に気づいて、それに怒っているのだろうか。自分から敗北を受け容れるなど最低の行為だ、それは自覚している。
ましてやこれは3on3のチーム戦。己の負けは直接の敗北にこそ繋がらないけれど、一人が落ちた瞬間に。人数差が生まれる。チーム戦とはいえこの小人数ではたった一人の人数差が大きい。

何より、セシリア自身を苛むのは、正直なところセシリアにとってはこんな戦いの勝敗などどうでもいいという事。
それよりも、自分達をかばった為にシャルロット達から敵と誤解されている鈴、自分がした要求によって責められ続ける一夏。二人が、三人と仲直りする事が大事なのだ。
ならば、三人の憤懣は誰かが引き受ければいい。

(一夏さんに謝らせるくらいなら、学園にだって未練はありませんわ)

陰鬱としていた思考の末にセシリアが導き出した回答は、敵にも味方にも失望され、罵倒され、完膚なきまでに自身を破壊して貰う事だった。
幸いというわけではないけれど、もしここでIS学園を追われ祖国に帰ったとしても、祖国は別の代表候補生を送り込むだけだろう。

BT計画二番機であるサイレント・ゼフィルスが奪われ、一番機であるブルー・ティアーズが完敗したとあれば、BT計画は頓挫してしまうかもしれない事は申し訳ないけれど、
優れたエンジニアである彼らはきっとBTに代わる技術を生み出し、それを搭載したISを駆る自分に代わる代表候補生が、一夏達と共にサイレント・ゼフィルスを破壊してくれるはず。

自分自身はどうなるだろうか、ブルー・ティアーズは剥奪され、代表候補生からも外され、またあの汚い大人たちに囲まれた日々が始まる。
以前のようにはいかないかもしれない。国家の名に泥を塗ったオルコット家を援助するような者はいないだろう。やがて、チェルシーたちとも別れ、オルコット家はどこかに呑み込まれ、自身も共に堕ちてゆくのだろう。

(まるで一夏さんの部屋で見つけた本のようですわね『悶絶隷嬢咽び何とか』だったかしら……)

今回の発端となった本の名前をふと思い返す。つまらない事が原因で、沢山のかなしい事があった。一夏は、こんな自分に引導を渡してくれるのだろうか。

彼が何を否定しようとしたのか、現れた彼の顔を見た瞬間から、思考がぐるぐると回る。回り続ける。
相当長く、思案にふけっていたのだろうか何度も名前を呼ばれながら、その手が肩を掴むまで呼ばれた事にもセシリアは全く気が付かなかったようで。
肩を掴まれた感覚にハッと顔を上げたセシリアは、眼の前に彼の顔が現れた事に頬だけでなく耳まで熱を感じていた。


350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/29(水) 00:19:05.91 ID:f0W8eAsi0

「――リア!セシリア!おい!セシリア!!」

「っは!はい!」

「あっ……ああ、良かったぜ、変な所打ったかと……」

(あれ?体当たりしたの一夏さんでしたわよね……?)

「その……あああ!だめだ……何を言えばセシリアが喜ぶかがわかんねえ!」

「……えっ」


「でも、これだけは聞いてくれ……! 千冬姉の受け売りだけれど……セシリアは、セシリアは何も間違っちゃいない!!セシリアが望んだ事も、何一つ間違ってなんかいない!!」


「一夏……さん……」


ISのアームで肩を掴まれると結構痛い。勿論シールドは有効だし、もしも怪我の危険がある力が加えられても別条は無いけれど、とにかく痛い。ISの先端が細い指が、肩に微妙に食い込む。

「だから、セシリア……」

「い、痛いですわ……一夏さん」

痛みを訴えるセシリアの声に、一夏ははっとして両手を離す。

「す、すまん!……あ、いや、すまんっていうのは、思い切り掴んじまった事で……」

出撃前のピットでの事を思い出し、一夏が困り顔で繕うのを見て、セシリアが小さく噴き出す。

「ふ……ふふっ……」

「セシリア……」

陰鬱とした気持ちが、あれほど思いつめた事が、自分でも驚くほどの速さで崩れていく。鈴にこの話をしたらちょろすぎと言われるのだろう。自分でも可笑しいくらいにちょろい。

「一夏さん、一つ伺ってもよろしいですか?」

「お、おう?」

「どうして先程、謝ったんですの?」

「あ、あれは……揉め事になるのは、俺だからで。だから……いつも苦労をかけてすまないなって意味で……セシリアに悪い事をしてるとか!そういう事じゃないんだ!信じてくれ!」

「……良かった。私は迷惑なんて思っていませんのよ?だって、わたくしも一夏さんも……何も間違ってないのですから」

何も間違っていない、一夏が千冬に言われ、一夏がセシリアに言った言葉。自身を苛む全ての全否定。最後に残っていた雲が晴れ、セシリアの心は今日の青空の様に晴れ渡っていた。

「ほんと、いつも苦労をかけられますわ♪」

「う……すまん」

「一夏さん……」

「セシリア……俺は…」

何かを言おうとした一夏の声は、此方に急接近する橙色の機体が空気を切り裂く轟音にかき消された。


360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/29(水) 23:32:30.23 ID:f0W8eAsi0



「――ッ!? シャル!!」

「僕とした事が……戦闘中だっていうのに呆けちゃったよ……もしかしてそれも一夏の作戦?」

肩を竦めて、微笑を見せる。両手にブルパップ式の、銃剣付きアサルトライフルを出し、一方の銃口を一夏に、もう一方を突撃を受けいまだ満足に動けないと見えるセシリアの眉間へ向けながら。

「はい……そこまでだよ?」

朗らかな声で、終演を告げる。こんなものは茶番だ、続ける価値なんてあるわけが無い。

「くっ……!」

セシリアを庇うように立とうとする一夏の腕、それをそっと下ろさせたのは、庇おうとする相手。駆動系にも僅かな違和感がある、ゆっくりと一歩前に出て、セシリアは銃口の前に身を晒した。

「……セシリア、贖罪のつもりなの? 呆れ「いいえ!」

凛とした声が、シャルロットの言葉に食いつく。ぴくりと眉を顰めながら、シャルロットは埃に汚れた金髪を靡かせる、強い意思の篭る蒼い瞳を睨み付けた。
以前から、危険だと薄々感じていた。どんなに尽くし、どんなに行動を起こそうとも、高く聳える幼馴染の壁を何度も感じていた。そしてそれとはまた別に……危険を感じる程ではないと思わせる言動、御気楽にいつも笑っていて、何不自由なく育ってきたお嬢様丸出しのくせに、料理が壊滅的に下手で、造形センスは3歳児なのに、どんなに引き離した筈でも、いつの間にか幾度も攻めた自分と同じ位置にいる女、セシリア。

「キミは……本当に……」

言い終える前に、フルオートで弾丸を発射する。不意を突いた連射は、綻びだらけの蒼い機体に致命傷を負わせる……筈だった。

「……ッ!!」

杖代わりに着いていたライフルを、銃口を地面につけたまま発射する。溢れる大出力のBTエネルギーが行き場をなくし、長大な砲身を内側から炸裂させれば、その勢いで若干のダメージと引き換えにセシリアの身体が跳ぶ。未だに離陸できるほど右足のスラスターは回復していなかったが、一度跳んでしまえばあとは左足だけでも辛うじて滞空は出来る。
まさか自身の主武器を失う事になってでも回避を優先するとは思って居なかったシャルロットの反応が遅れ、その隙にブルー・ティアーズのバインダーからビットが分離される。

「ビットを切り離したからって!!」

舌打ちと共に、飛び立つビットに照準を合わせ、ライフルを撃つ。しかし、緩慢な動きのセシリアと違い次々に放たれる弾丸は機敏な機動を見せるビットにかすることも出来無い。その隙にシャルロットを包囲した4基のビットは、シャルロットから最も反応の遠い位置からだけなく、容易に反応できる位置もあわせ、単純な連射ではなく、一基一基が緩急をつけた射撃を行ってくる。

「なんだって!?こんな……回避しきれない!?」

それは、以前のセシリアには無かった技術。主武器を失った事で増した集中力がそうさせるのか、それとも、単純に枷の無い、背負う気負いがないセシリア・オルコットの本当の実力なのか。

蒼の光条が次々と襲い来る、こう機敏で読みにくい機動をするビットの攻撃を完全に回避しきる事も出来ず、シャルロットは徐々に被弾が増えていく。これではまるで敵がたった一人ではない。小隊を相手にしているかのような感覚。

実際には一夏もいるにはいるが、何を想ってか彼は動かず、セシリアの一歩後方でじっと戦いの行方を見守っている。


361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/29(水) 23:43:33.81 ID:f0W8eAsi0


「付き合ってられないよ!」

堪らず間合いを離すが、ぴたりとその動きを追ってくるビットが相手では安全な距離など何処にもありはしない。シールドエネルギーがゆっくりと、徐々に削られてゆく。

「この……ッ!! うっとおしいよ!!セシリア!!」

苛立ちが頂点に達したシャルロットが高速切替≪ラピッド・スイッチ≫で武装をアサルトライフルから携行手持ち式ミサイルランチャーに切り替え、ビットからの被弾覚悟で滞空しているセシリアを狙う。小型弾頭のミサイルだが、追尾性も高く何より弾速が速いモデルだ。
ビットで迎撃されるならそれはそれも良し、自身から照準を外したビットをやり過ごしてセシリア本体を狙うのみ。
今のブルー・ティアーズならば落とせる筈。肩部のシールドを破壊されながらもロックオンを終え、小型のミサイルが8つばら撒かれた。

「させないよ!!」

シャルロットの背後から声が響くと共に、紅蓮の炎が打ち出されたばかりの弾頭を8発丸ごと巻き込んで、シャルロットの目の前で爆発を起こす。
ハイリスク・ハイリターン。賭け、に近かった攻撃を介入で文字通りの灰燼に帰された。それどころか爆発のせいで更にシールドを削られてしまう。

「鈴……ッ よくも!!」

背後に視線を向けるけれど、黒と赤紫の機体は己を無視して無防備な姿を晒しながら、自分の横を通り過ぎてゆく。
その代りに、少し遅れて紅椿、箒の機体が近付いてくる姿だけが見えた。

「な……完全……無視……?!」


「セシリアッ!!大丈夫!?」

鈴は滞空するセシリアを寄り添うようにして支え、必死の形相で問う。鈴に接近された事で、ビットの攻撃までが止む。シャルロットは安全圏に辿り着いたのだった。

「鈴さん……ごめんなさい、わたくしは……わざと負けようとして……」

寄り添ってくれる友の暖かさに、申し訳なさそうに眉根を寄せて、己の選択に振り回してしまった鈴へ謝罪を告げようとする。けれども鈴はその言葉を聞く前に、力いっぱい首を左右に振って。

「そんな事……そんな事言われなくたってわかってるわよ!わかるに決まってんでしょ!そんなことどうだっていいのよ!勝ち負けなんかどーだって!!バカ!!バカセシリア!バカリア!!」

「ば……ばかりあって……鈴さん……」


「アンタがわざと負けようがどうしようが!あたしはセシリアが決めた事ならいつだって、いつだってずっとそばで……!ずっと、ずっと、ずっと!!ずっと一緒なんだから!!」


気がつけばいつも一緒に居た。一組と二組の合同練習では、大抵ペアを組んでいた。
一夏にご飯を食べさせてあげるときも同じタイミングだったし、買い物を尾行する時も、どちらが言い出したわけでもなく一緒に居た。
IS訓練を放課後にしようと思えば、同じアリーナに同じタイミングで出会って、当人の居ないところで一夏を賭けて何度も戦った。
タッグマッチのときも、一夏をボコれるパートナーと考えれば自然と互いが頭に浮かんでいた。

エアコンが壊れた時だって、本当は一夏の所になんて行っていなかった。いつも、いつでも、いつだって。

いつの間にか、セシリアと一緒にいることが、鈴にとっての大切な時間になっていた。

大粒の涙が、鈴の瞳から溢れ落ちる。


362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/29(水) 23:47:34.22 ID:f0W8eAsi0


「僕を無視して戦闘中にお涙頂戴かい?そのまままとめて仲良く……!!」

シャルロットが連発式のグレネードランチャーを両手で構え、寄り添う二人へと向ける。この武器ならば直撃させなくとも爆風で削ることができる。鈴は助かるかもしれないが、もうセシリアには耐え切る力もない筈だった。
しかし、トリガーを引こうとした瞬間に今度は雪羅を展開した白式が射線に割り込む。誰も彼もが、どうしてこう自分のチャンスを潰すのか、シャルロットは悔しさに唇を噛むしかなかった。

「俺を忘れてないか?シャル!」

「ふ、ふふ、いつもいつも……でも、一夏も忘れてないかい?これは3on3だって! 今だよ!箒!!」


「一夏ーーーッ!!!!」


シャルロットが大きく左に動くと、その背後から、両肩の展開装甲を開いて、全開まで出力をチャージした穿千を構えた箒が現れる。

「っげえっ!!箒!!!」

「貴様、貴様は……セシリアに何をした!この不埒者ォォッ!!!」

あれから箒は、上辺だけで他者と言葉をこそ交わしても、一夏と「言葉を」交わす事だけはなかった。
それは、織斑一夏にまつわる時々の問題のたびにそうであったから、一夏本人もこうして試合が決まった以上それに向けての事だろうと気にすることはなかったし、それはクラスメイト達もそうだった。
誰一人気づかない変化、それが今爆発する。怒りの矛先、一夏に向けて。


363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/29(水) 23:51:30.61 ID:f0W8eAsi0

「う、うおおおおおっ!!!!」

一夏は雪羅からエネルギー爪を発生させる。白式第二形態・雪羅最大の特徴である多機能左腕の能力のひとつであるその爪は、その全てがあらゆるエネルギーを無効化する零落白夜を発動させている特徴を持つ。穿千の最大出力ブラスターもエネルギー兵器、この爪に切り裂けぬ筈は無し。
対する穿千は戦闘経験を積んだ箒に応える様に展開された二門のブラスターライフル。その火力はラウラのレールカノンに匹敵、いや、最大出力ならばそれもゆうに超えてしまうだろう。この火力ならば、エネルギー爪で切り抜けることができる一夏はともかく、その背に守られた鈴とセシリアは無事には済まないだろう。

「頼む!応えてくれ白式!!俺は……護りたいんだ!!」

だから一夏は、更に零落白夜のバリアシールドを傘のように展開させた。

「い、一夏!?そんな事をしたら……!」

鈴が叫ぶが、その瞬間に穿千の砲門からエネルギーの放出が始まった。奔流は一夏の左腕によって何条かに切り裂かれ、逸れたエネルギーもバリアによって無効化される。
自身のエネルギーと引き換えにあらゆるエネルギーを無効化する特徴を持った零落白夜の多重展開。完全に防御しているようにしか見えなくても、一気に白式のシールドエネルギーは減少してゆく。

「判ってる!長くはもたない!! だから……セシリアを頼むぜ!鈴!!」

「一夏さん!鈴さん!箒さんは絢爛舞踏を使えませんわ、穿千を撃てばもうエネルギー切れも同然の筈……ですから……!」

「嫌だね」「嫌よ」

セシリアの言葉を遮り、鈴と一夏の声がハモる。まだ何か言おうとするセシリアを他所に、鈴と一夏は一度視線を合わせ、互いに頷いた、言葉などなくても、思春期を共に過ごした幼馴染同士だから、言いたいことは判っているし、何かあるなら後でいくらでも聞く。

「だから、私の事は構わずにげてくださいましぃー、って?悲劇のヒロインのつもり?バッカじゃないの」

「そ、そんないい方してませんわッ!!」

呆れ口調の鈴が正面からセシリアに抱きつき、そのままセシリアごとその場を離れる。


364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 00:02:11.92 ID:nlPppA320

―――――――


「……さてと、このまま脱落したんじゃ千冬姉に後でシメられそうだ……箒……悪いな、言いたいことがあるなら後でゆっくり聞いてやるよ」

セシリアが一夏を呼ぶ声を尾のように引きながら二人が穿千の射線から離れたのを確認して、バリアの展開を止めると、シールド減少の速度が少しだけ緩やかになる。バリアがなくとも自分だけならば突き出した左腕の爪に切り裂かれ、エネルギーが白式に届くことはない。

「くっ!一夏!私は…私は貴様に怒っているのだぞ!!」

「だから、悪いなって……後で聞くよ!」

その声は、箒の耳には、ずいぶん近くで聞こえた気がして、気付いたときには、エネルギーの奔流を切り裂きながら接近してきた一夏の爪が、眼前にあった。

「これでリタイアだな。箒」

すべきことをした、満ち足りた笑顔でそう言われてしまうと、セシリアにあんな事をしたことが許せない相手であっても、間違いなくこの男が自分の幼馴染で、でも、セシリアの事はとても好ましくて、でも、セシリアは鈴の親友で、鈴もとてもいいやつだけれど二組で。考えるのが苦手な自分にこんなにでもでもと考えさせる一夏にもセシリアにも後で一言言わないと気が済まない気がしてきて……とりあえずは。



「大体が一夏!貴様がセシリアに……――――」



動けなくなった者同士、地上で擱座したまま一言でも二言でも共に擱座している一夏にたっぷりとぶつけるとしようと、箒は思った。







篠ノ之 箒【IS:紅椿】 12分30秒 シールドエネルギー:0 戦闘不能


織斑 一夏【IS:白式・雪羅(正式名称:白式第二形態・雪羅)】 12分31秒 シールドエネルギー:0 戦闘不能





 ×篠ノ之箒           ×織斑一夏
  ラウラ・ボーデヴィッヒ VS  凰鈴音
  シャルロット・デュノア     セシリア・オルコット




365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 00:18:51.24 ID:nlPppA320



≪シャルロット!箒がやられた、大丈夫なのか!?≫

コア・ネットワークを介した通信で、離れた位置に待機しているラウラがシャルロットに問う。アリーナの電光板には箒と一夏の戦闘不能を表示している。

「大丈夫だよ、ラウラ。箒は一夏を落としてくれた。これで2対2、しかもセシリアは殆ど動けない。ラウラは作戦通り待機していて、合図するから」

≪わかった、プランBで行くんだな≫

「プランB?」

≪なんでもない、こっちの話だ≫

ラウラの言葉に首をかしげる。このルームメイトの言う事は時々良く判らない。
それはともかく、ブラスターライフルの火線から逃れた二人を素早く捕捉する、一夏がいないのなら遠慮なんていらない。まずは鈴を落として、じっくりと狙撃銃を失った狙撃手を潰すとしよう。


「鈴さん!一夏さんが!」

「わかってるわよ!箒を落としてってくれたのはラッキーだったわね、絢爛舞踏無しとはいってもいるだけでも面倒だから」

展開していたビットがいつのまにか戻って来ていて、セシリアのバインダーに連結される。
鈴は全ての武装が使用できるがシャルロットと箒の二人を同時に凌いだ損耗は激しい。相方のセシリアに至っては試合的に瀕死レベルのダメージを負っており、更に機動性の大半を失い、主武器である大口径レーザーライフルまで失っている。
残る相手はシャルロットとラウラのコンビ。どちらも無傷ではなく、シャルロットはこちらに来てからの戦闘でシールドバインダーを失うまでダメージを重ね、ラウラは主武器であるレールカノンを失っている。

(あんな離れた所にラウラがいる……でもラウラのレールカノンはさっきセシリアに壊された筈よね……)

鈴は素早く戦場の状況を把握しようと視線を巡らす。
若干こちらが不利か、何しろラウラはほぼ無傷と言って良い。

「セシリア、こうなりゃアンタが頼みなんだからね!」


366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 00:30:38.20 ID:nlPppA320


「無茶言わないでくださいな!まともに動けないのにどうしろと……!?」

「違うわよ」

抗議の声を上げるセシリアに、鈴は額同士をこつんとあわせてにぃと歯を見せる。

「アタシがアンタの足になる」

正面から抱き抱えられたまま伝えられた言葉に、セシリアは目を丸くする。足になる、何を言っているのだ、前々からバカだとは思っていたけれど、本格的におかしくなったのだろうか。

「いいからほら、肩車するから、足パーツしまいなさい」

「か、肩車ぁ!?い、嫌ですわそんな、恥ずかしい!!」

「じゃーこのままでもいいけど、これじゃ相手を見辛いのよ、負けてもいいの?折角一夏がこの状況に切り拓いてくれたんだよ?」

一夏の名前を出されてしまうと弱い、しぶしぶミサイルビットを含めた下半身のパーツを格納するセシリアを鈴は傷つけないように慎重に、自身の肩の上に腕を使って導く。丁度甲龍の両肩の龍咆に左右を挟まれる位置にセシリアがいる。

「……ぅ、髪が当たってくすぐったいですわ……」

情けない声を出すセシリアの太股に噛み付いてやろうかなんて思いながら、脇の下にセシリアの足首を抱え込んで、我慢してしっかり掴まるように言おうと上を見上げ。
セシリアの胸が邪魔で顔が見えない事に人種格差を感じた。きっとやや前かがみの胸を突き出すような態勢にでもなっているのだろうと気を取り直し、茫然とした表情でその様子を見ているシャルロットに顔を向け直す。

「な、な、何を……してるの?」


「はぁ!?見て判んない? 合 体 よ ! 」


戦闘再開から、一夏と箒の同時ノックアウトを見て盛り上がっていた観客達も、まさか肩車で戦うつもりかと俄かに困惑のざわめきが広がってゆく。来賓席ではイギリスからの来賓が今度は中国からの来賓に詰め寄っていた。


367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 00:56:09.11 ID:nlPppA320



「セシリア!しっかり掴まって!あんたが攻撃するんだからね!」

そう言って再度加速を始める。任意の部分解除で、生足とはいえシールドも有効のようで、特に脚に風圧を感じる事もないようだ。ただ頭を動かすたびに、頭上から情けない声は聞こえてくるし、太股に力が入り、首というか頬が圧迫される。
自分より背丈のあるセシリアを肩車する構図というのもシュールだが、そもそもこんなに密着感があるのは……

「ああ……ケツがでかいせいね。」

その呟きは、内股に鈴の髪が当たってくすぐったくて悶えるセシリアに果たして聞こえたかどうか……。
鈴が何もされなかったという事は、聞こえなかったのだろう。
見れば気を取り直したシャルが、サブマシンガンを出現させる所だった。

「そんな遊びで!!」

「セシリア!!お願い!」

「ひぅ……あ、頭……動かないでくださいなァッ!!」

セシリアは腕の格納をしてから、両手で鈴の頭を上から抑え、更に両足をぐっと力を入れて締める。

「ちょっと!なにすんのよ!」

「頭が動かれると困った事になるんですわ!動かないでくださいまし!いきますわよ!ブルー・ティアーズ!」

一見出鱈目な合体だが、鈴は回避に集中していればいいし、セシリアはビットの操作に集中していられる。相対したシャルロットとしてみれば、これは厄介な相手だった。
たまに回避運動が激しすぎてセシリアが振り落とされそうになったり、セシリアがシャルロットの姿を追って身を捻った際に、そのまま鈴の首が極められたりしているが、
二人ともが国家代表候補生。回避に集中した鈴に当てなければいけない上に、射撃に集中したセシリアの攻撃も避けなければならない。

思ったよりもきつい、ならば……

高速切替≪ラピッド・スイッチ≫でハンドグレネードを取り出し、上空に向けて放り投げる。それが合図だった。
シャルロットの行動を不思議そうに見つめるセシリアと鈴、先に気付いたのはセシリアだった。

「鈴さん!回避!対狙撃機動にお切り替えになって……!狙撃が来ますわ!!」

「っは?狙撃?ラウラのレールカノンはセシリアが……」

「シャルロットさんの武器ですわ!!!」

武器の貸し出し、それを行えば狙撃翌用のライフルをラウラに渡す事が可能。確かにシャルロットの所有武装には狙撃にも使えるライフルは含まれている。
小刻みな停止と加速をランダムに繰り返しながら機動するが、こうなると二人分の大きさになった事がマイナスに働く。
ドンという重い音に続き、高速で飛来した弾丸をセシリアが鈴の額に手をかけて思い切りのけぞって避ける、もし当たっていたら確実にシールドエネルギーが全て持っていかれていた。

「ちょっ!セシリア!首痛い!痛い!」

「ご、ごめんなさい!」

不意だったとはいえ、鈴の首に今のは結構な負荷をかけたかもしれない、気遣うように体を起こし、鈴の顔を覗き込もうとして……

「いけない!鈴さん!右ですわ!!」

がっしと、鈴のヘッドアーマー部、鬼の角のような部位をがっしと掴み。

「へっ!?痛い痛い痛い痛い!!!」

ぐいっと右にスロットルレバーのように傾けると、痛みから逃れようと鈴が体ごと右に傾く。すると、先程まで鈴の体があった位置を、ロケットランチャーが通過し、背後でビットを一機巻きこんで爆発する。

「今のを避けるんだ……やるね」

「鈴さん!ナイスですわ!!でも、一基やられてしまいましたわね……」

「セ、セシリア……あんた後でコロスわ……」

狙撃によって生じたセシリアの集中の乱れによるビット攻撃の間隙を狙っての攻撃が失敗に終わり、再びシャルロットはセシリアのビットに追い詰められ始める。しかし、一基減った事により弾幕は薄くなり、シャルロットの回避運動に多少の余裕が見てとれる。
更に離れた位置からはラウラがライフルのリロードを終えた所だった。


368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 00:57:10.98 ID:nlPppA320



このまま同じ行動を続けていても、次の狙撃を避け切れる保証もなければ、またセシリアの集中が乱れればビットは二基になる。そうすればシャルロットの反撃も来るだろう。かなり絶望的だが、シャルロット自身のシールドはもう残り少ない、削りきれば或いは……。

それとも、その残り少ないシールドエネルギーのシャルロットよりも、ほぼ万全のまま間合いを離しているラウラを先に狙うべきだろうか。ラウラの狙撃さえなくなってしまえば、もはやビットを減らされることもないだろう。

いや、ここは合体を解いて、鈴がシャルロットの相手を、セシリアがラウラの相手をするべきだろうか。

合体を解くにしても、動きの鈍いセシリアがこのままシャルロットと戦い、鈴がラウラへと急襲すべきだろうか……。



1.ラウラを無視、シャルロットを確実に沈める。

2.シャルロットを無視、ラウラを先に沈める。

3.ラウラvsセシリア、鈴vsシャルロットに持ち込む。

4.ラウラvs鈴、セシリアvsシャルロットに持ち込む。


369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 00:59:50.64 ID:nlPppA320

本日はここまでです。

3on3戦、次回決着!(予)

安価 選択肢は上の4つです。
>>370



370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 01:27:17.69 ID:Z2B8jKX7P







373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 04:49:15.57 ID:nlPppA320

安価は

3.ラウラvsセシリア、鈴vsシャルロットに持ち込む。

に決定しました。

また見てくれたらうれしいです。

374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/01(金) 00:00:38.20 ID:s4d4tJXG0



「鈴さん!このままでは……」

「わかってる、私に作戦があるわ……セシリア、ちょっとそのまま腰を浮かせて?」

「こんな感じですの?」

言われるがままに、左右の龍咆に手をかけて、ぐっと腰を上げる。鈴が足首をしっかり脇に挟んでくれているからずいぶんと楽なものだ。

「オッケー♪」

「何をするんです……のぉぉぉおぉおお!?」

そのまま、抱えていたセシリアの足首を確りと甲龍の手で掴み、思い切りジャイアントスイングの要領でぶん回す。

「おーーーーりゃあああああああ!!分離!!!!」

ぶん投げられたセシリアがラウラのほうへと飛ばされる、それを追うようにしてブルー・ティアーズ達もシャルロットへの射撃を停止し、主人を追っていく。

「……鈴……まったくキミには結構唖然とさせられるよ、そんな方法でラウラを追わせるなんて考えもしなかった、でもラウラは、逃げることだってできるんだよ?」

シャルロットが飛ばされてゆくセシリアをちらりと見てから、右手にサブマシンガン、左手に連装式のショットガン≪レイン・オブ・サタデイ≫を構える。
対する鈴は、セシリアに締め上げられた首筋をコキコキと鳴らしながら不敵に笑い。連結した双天牙月を右手に出現させた。

「ッハ!冗談、セシリアにとっちゃこのアリーナ全体が射程内よ、ラウラに逃げ場なんかない」

ちらりと投げた方向に鈴が視線をやれば、投げられながら下半身の展開を終え、体勢を整えたセシリアのバインダーに三基のビットが戻ろうとしているところだった。

「今のはアンタから離しただけよ、シャルロット……いつかのリベンジ!させてもらうわ!!」

「余裕だね、鈴」

「アンタ……その状態で言う?」

鈴の行為を余裕と揶揄するシャルロットのシールドエネルギーは残り僅か。
相手を余裕と揶揄する事は、相当の余裕を見せる発言、更に言えば、相対する鈴に対する挑発だった。

(とは言っても、アタシも万全には程遠い……やれるの?いえ……やってみせる!)

双天牙月を両手で旋回させながら、鈴はシャルロットに向けて飛び込んでいった。


375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/01(金) 00:37:50.68 ID:s4d4tJXG0

――――



「っ!何をなさいますの!」

生足で肩車されろと言われたり、突然ISの力でジャイアントスイングされたり、
先ほどはうっかり貰い泣きするほど、熱い言葉をかけてはくれたけれど、やっぱり相当怒っているんじゃないだろうか?
格納していたブルー・ティアーズの下半身パーツを出現させ、足首のスラスターで姿勢制御を行う。やはりまだ片足しか満足に噴かせない、これは試合の後本格的なメンテナンスが必要かもしれない。
姿勢を整えている間に、飛ばされた自分を追ってきたビットを肩のバインダーに連結させる。左右対称、4つある筈のビットは、先ほどシャルロットのロケットランチャーを回避した際に破壊されてしまった。

結構な確率で戦闘するたびビットは破壊されるため、予備のパーツは常に用意されている。用意はされているけれど。

(やはり、いい気分ではありませんわね)

自身の手足、イメージ・インターフェイスにより管理されるブルー・ティアーズ。機体だけでなく、ビットもまた自身の一部、いや、正確に言えばもっと……

「!!」

セシリアの回避行動は早かった、早すぎた、ラウラが何より驚愕したのは銃声の前に回避運動を始めたことだ。狙撃手の直観力、というものだろうか。
狙撃をしようとする瞬間を感じる直感。相手のマニューバを読み取らねば狙撃はうまくいかない。それが染み付いているからこそ、自身の動きにその瞬間を見たときに反射的に反応し、狙撃を感知出来る。

「なん……だと……」

外した、決して苦手ではない狙撃を、トリガーを引く瞬間に対象が動き、狙った弾は空を切る。
スコープ越しに、此方に真っ直ぐと腕を伸ばすセシリアが見えた。先ほど、捨て鉢になっていた人物が、毅然とした視線を投げかけていた。
親友と言うには遠いかもしれない。
初めて出会った時、技術の満たぬ鈴とまとめて嬲った記憶もある。
最悪の出会いだったろう。しかし……銀の福音との戦いを共に乗り越え、自身の成果たるサイレント・ゼフィルスを亡国企業に奪われて尚凛々しく、
遂には、奇襲と言えど嘗て完敗した己を一度は倒した。戦友。

「ふん……一夏のこととなると、一喜一憂の激しい……私もそうだがな」

スコープから目を離せば、3基のビットが迫るのがラウラの目に入った。
あとはワイヤーブレードの届かぬ間合いから、ビットによる弾雨に晒される事になるのだろう。
ならば、策は一つ。念の為にと残しておいた対狙撃翌用物理シールドでビットからの攻撃を耐えつつ、一気に間合いを詰める。
幸いシールドエネルギーも十分、物理シールドが破壊されても十分耐え切れる。

左目を隠す眼帯を外しながら、ラウラは狙撃銃を捨て、弾雨の中へと突撃を開始した。

「セシリア!決着をつけるぞ!!」



378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/01(金) 01:47:49.05 ID:s4d4tJXG0


シャルロットは決して虚勢を張るような女ではない。ありのまま、素直な思考と言葉に作られた己を持っている。
鈴に余裕だといった言葉だって厭味なんかではない、本心からそう思っているのだろう、
それを確かめることは出来ない、厭味だろうと言ったところで、自身に悪意のないシャルロットはそれを否定するだけだし、それが覆ることもないから。

そして実際。

鈴の放つ崩山装備龍咆の拡散衝撃砲は尽くシャルロットにかすりもせず、鈴はサブマシンガンの掃射に削られ、連射式のショットガンによる弾幕に対してまともに近づくことも出来ないのだから。

「このままじゃ……!!」

「鈴、甲龍の開発者の人に言った方がいいよ?武装のバリエーションが少なすぎる。それじゃ格上相手には歯が立たないって……ああ、別に気を悪くしないでね?僕は純粋に鈴の為を思って」

ナチュラルな上から目線。実力に裏打ちされたものとはいえ、鈴はその言い草が気に入らなかった。純粋に相手の為を思っていようがいまいが、此方も国家代表候補生。
そして自分の為のISが甲龍、沸々と怒りが沸いて来る。

(ぶっ[ピーーー])

そうは思うけれど、だからと言って有効な手立てが浮かばない。
シールドが先ほどの戦闘中に破壊されているから、例の必殺パイルバンカーは使えない筈だ。
しかし、シャルロットと近接戦闘というのはなかなかに難しい。
砂漠の逃げ水と名付けられた戦闘機動がまだシャルロットには残されている。
正しくは、シャルロットである限りは存在する。それはパイロットとしての技量だからだ。
伊達に、一年唯一の第二世代専用機で、一年最強と言われているわけではない、もしも紅椿がシャルロットの手に渡っていたなら文字通り無敵だったろう。

欠点が無い事が人間的な欠点、とも言えるかも知れない、欠点が無いゆえに思い通りに行かない事態への対応が弱い。
思い通りに行かない事態などが無いように動くから、欠点が無いのだけれど。

(砂漠の逃げ水……上等じゃない!!)

大きく双天牙月を振りかぶり、鈴はシャルロットへの間合いを狭めてゆく。



380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/01(金) 01:50:47.65 ID:s4d4tJXG0



シャルロットは決して虚勢を張るような女ではない。ありのまま、素直な思考と言葉に作られた己を持っている。
鈴に余裕だといった言葉だって厭味なんかではない、本心からそう思っているのだろう、
それを確かめることは出来ない、厭味だろうと言ったところで、自身に悪意のないシャルロットはそれを否定するだけだし、それが覆ることもないから。

そして実際。

鈴の放つ崩山装備龍咆の拡散衝撃砲は尽くシャルロットにかすりもせず、鈴はサブマシンガンの掃射に削られ、連射式のショットガンによる弾幕に対してまともに近づくことも出来ないのだから。

「このままじゃ……!!」

「鈴、甲龍の開発者の人に言った方がいいよ?武装のバリエーションが少なすぎる。それじゃ格上相手には歯が立たないって……ああ、別に気を悪くしないでね?僕は純粋に鈴の為を思って」

ナチュラルな上から目線。実力に裏打ちされたものとはいえ、鈴はその言い草が気に入らなかった。純粋に相手の為を思っていようがいまいが、此方も国家代表候補生。
そして自分の為のISが甲龍、沸々と怒りが沸いて来る。

(ぶっ殺す)

そうは思うけれど、だからと言って有効な手立てが浮かばない。
シールドが先ほどの戦闘中に破壊されているから、例の必殺パイルバンカーは使えない筈だ。
しかし、シャルロットと近接戦闘というのはなかなかに難しい。
砂漠の逃げ水と名付けられた戦闘機動がまだシャルロットには残されている。
正しくは、シャルロットである限りは存在する。それはパイロットとしての技量だからだ。
伊達に、一年唯一の第二世代専用機で、一年最強と言われているわけではない、もしも紅椿がシャルロットの手に渡っていたなら文字通り無敵だったろう。

欠点が無い事が人間的な欠点、とも言えるかも知れない、欠点が無いゆえに思い通りに行かない事態への対応が弱い。
思い通りに行かない事態などが無いように動くから、欠点が無いのだけれど。

(砂漠の逃げ水……上等じゃない!!)

大きく双天牙月を振りかぶり、鈴はシャルロットへの間合いを狭めてゆく。



381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/01(金) 02:07:29.39 ID:s4d4tJXG0

「来たね、予測通りだよ?」

サブマシンガンを、近接専用のショートブレードに切り替え、双天牙月を受け止める。甲龍の格闘戦性能はかなり高い。それを片手一本で受け止めるあたり、鈴がこの手で来ることを予め予測して準備していたのだろう。
そんな事を考えている場合でもない、もう片方にあったショットガンの銃口を鈴の腹部に向けるのが見えたからだ。

「っこのおおお!!」

鈴が受け止めたブレードを弾き飛ばすべき双天牙月を力いっぱい振り抜く。第三世代格闘機のパワーにブレードはへし曲がり、シャルロットの表情に少し翳りは見えるけれどショットガンの銃口を腰だめに構えたまま少し上に向け、振り抜いたことで続く双天牙月の二枚目の斬撃の腹に散弾を打ち込み、斬撃を逸らせる。

「まだまだっ!!」

連結した剣というものは、実用性は極めて低い。なぜなら単純に重いのが一つの要因。もう一つは、次の攻撃の角度が見えるからだ。片方が上に逸れたなら、次の攻撃は下から来る。

(甲龍は……本当に欠陥機だね、データを取るように言われなかった理由が良くわかるよ)

シャルロットは、顔もろくに知らない実父の命令でIS学園にやってきた。デュノア社の令嬢ではなく、子息として。
織斑一夏のデータを手に入れるために。
当然、一夏だけではない、どうせならば他の専用機のデータも取るに越したことは無い。あくまでついでではあったけれど、そのついでにすら甲龍は入っていなかった。
砲身も弾も不可視の衝撃砲以外には、燃費が良くて安定性が高いという特徴だけ。格闘戦向けの機体で、確かに弱くも無いけれど……。

(武装がまずいよ、火力強化のために衝撃砲の「見えない」特性を殺してしまう必要があるなんて、衝撃砲に調査の価値は無い、そして双天牙月はお話にならないおもちゃだ)

「……かわいそう。」

「はあっ!!」

シャルロットの予測通り、否、物理的に他はありえない。勢いを殺さぬままに下段からの斬撃は来る。憐れなほどに愚直な武器を必殺の武器と信じる鈴を、シャルロットは憐れむ他に無かった。
易々とそれをかわして、曲げられたブレードの代わりに呼び出したハンドガンでその背中を撃ちつつ、離れはじめる。

(終わらせるよ、鈴……キミはそのままのでいてくれるのが一番だから、欠陥には気づかないまま落ちてね)

撃ち終えたハンドガンとショットガンを捨て、フルオートの手持ち式の機関砲を構える。火力は絶大ながら、携行型の為装弾数が少なく、一瞬で弾切れを起こしてしまう。
その為本来は増設マガジンも呼び出して連結してから使用するが、今はこれでも十分。むしろハンドガンのマガジンがもう少し大きかったら今ので終わっていた筈なのだから。

そして反動を吸収する為に背部のスラスターを吹かそうとしたシャルロットは、小さな、ダメージにもならないような爆発を感じながら前に体勢を崩した。

「……えっ」


「アタシの………………勝ちよ!!」


奇跡的な確率なのか、欠陥と笑った武器故の必然だろうか、鈴のセンスが意図的に防御を成したのか。回転していた鈴の背中を狙ったハンドガンの弾丸は双天牙月の、先程ショットガンに逸らされた方の刃に当たり、満足にその体勢を崩すことも出来ず、離れて行こうとするシャルロットにブーメランのように双天牙月が投げつけられる。
その瞬間、シャルロットの背のスラスターは限界を向かえ、後方に離れるべく吹かされていた脚部は自然と後ろに向き、後退ではなく前進してしまう。

投げつけられた双天牙月を何とか機関砲で防ぐものの、砲身が切り裂かれ、その重い刃は残り少ないシールドエネルギーを更に減らす。
体勢を立て直したシャルロットの眼前で、崩山装備の甲龍が、両肩の4門に増強された拡散衝撃砲が火を噴いた。

「……嘘ッ!?こんな!こんな事!!僕が!僕が…………!!」





シャルロット・デュノア【IS:ラファール・リヴァイヴ・カスタムIII】
                  14分08秒 シールドエネルギー:0 戦闘不能




 ×篠ノ之箒           ×織斑一夏
  ラウラ・ボーデヴィッヒ VS  凰鈴音
 ×シャルロット・デュノア     セシリア・オルコット





エネルギーを失い、拡散衝撃砲の炎の残滓を散らしながら地上へ落ちていく橙色の機体を見送りながら鈴は考える。シャルロットは合体モードとの戦闘で背中にダメージを受けすぎていた。むしろ、ビットでもなければ背中への打撃など早々出来るものではない。

「ま、一人で勝てなかったのは少し悔しいけど…………セシリア、アンタと一緒だから……勝てたよ……」


390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/01(金) 23:56:08.83 ID:s4d4tJXG0




「おおおおおおおおッ!!!」

ラウラが吼える、擬似ハイパーセンサー、ヴォーダン・オージェ≪越界の瞳≫を輝かせて、蒼の弾雨を避けながら。
偏差射撃を行ってくるビットの猛攻は、進めど進めど緩まることが無い。
どんなに感度を上げたところで、機体がそれに完全に追いついてくれるわけが無いのだから。

「オールレンジ攻撃とは、よく言ったものだ……!」

どんなに避けようと、移動しようと、常にさらされ続ける弾雨に、既に物理シールドをパージし、更にはシールドエネルギーまで減らされ始めている。
かするような被弾でも、これだけ続くとなかなかに厳しい。蒼の光条の先に緩慢な動きで、必死に間合いを離そうとしているセシリアの姿は見えているのに。
だが、僅かな違和感をラウラは感じていた。

「こんなに間合いを……この……ッ!!」

頭が痛くなるほど意識をビットの操作に集中させる。回避運動をしながらの前進と言うのは結構大変なもので、自身もゆっくりではあったけれど確実に後退している為、いまだに間合いは離れている。
まだまだ自分の間合いだ、しかし彼女が今眼帯をしていない事は判る。
セシリアにはまだ切り札があった、BT偏向制御射撃【フレキシブル】。BT兵器最大稼動時を象徴する、BT兵器の真の姿、射出されるビームそれ自体を精神感応制御によって自在に操ることができる。避けられた筈の攻撃を対象に再び向かわせる、曲げて壁越しに撃つ等、使い道は数知れない。

(ですが……今のラウラさんはそれさえも避けられてしまうのではなくって……もっと、例えば、ワイヤーブレードを使用した瞬間とかを狙って……くっ!迷っている場合ではございませんのに……怖い……もし避けられてしまえば私は負けますわ、折角、一夏さんと鈴さんがここまで頑張ってくださったのに……わたくしのせいで!!)

≪迷っているな!セシリア・オルコット!!確信したぞ!!≫

「!?」

突然個人間秘匿通信【プライベートチャネル】を開いて話しかけてきたのは、あろうことか目の前の敵、ラウラだった。
はじめ、突然の事にぎょっと眼を剥いたセシリアだけれど、まるで心を見透かしたようなその通信に唇を噛む。

≪判っていますわそんな事……迷っているから、何だと仰るのです?≫

≪私の勝ちだ≫

≪ブルー・ティアーズを前にボロボロに削られながら……よくもそんな事がいえますわね!!≫

≪言えるさ≫

もう後僅かの距離まで接近された、セシリアは最後の手段である近接ブレード【インターセプター】を展開して備える。

≪集団戦というものは、チームが一個の戦闘体だ。貴様のブルー・ティアーズにもあるだろう?シールドエネルギーゲージが。三人で一つのそれを共有しているということだ。つまり、敗戦は一人の敗けではない。≫

≪そんな事わかっていますわ!!≫

「いいや!判っていないな!貴様は敗北の責任を背負おうとしている!!一人の腕は三人の腕であり、一人の行動は三人の行動なのだ、信頼を委ねこそすれ、背負うものなど何一つ無い!!シャルロットがじきに到着する、たとえ私がここで落ちようとも、私のすべきは全力で貴様と相対すること、貴様もそうだ!セシリア!」

躊躇が致命的なロスとなった、プライベートチャネルではないラウラの肉声がはっきりと耳に届く。もはや迷っている余裕は無い。ビットに戻る指示を与えながら、ワイヤーブレードと両手のプラズマ刀を展開するラウラを前に、インターセプターを構える。鈴を信じていないとそう言われている気がして、セシリアの心がひどくざわめいていた。


391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 00:14:14.73 ID:kWoxRpHq0


(そんな事……そんな事……)

「落ちろセシリア!私達の勝ちだ!!」

≪くッだら無いこと聞いて動揺してんじゃないわよ!!!≫

オープンチャネルを使用した通信が、二人の動きを一瞬止める。その聞こえた声にざわめいた心が急速に安らぎを取り戻していく。勝利を確信した心が一瞬揺らぐ。
はっとしたラウラが、シャルロットと鈴の戦闘のあった方向へ顔を向けると、橙色の機体が地上に倒れ、赤と黒の機体が満身創痍の体で空にいた。電光板を見ずともわかる、シャルロットが負けたのだ。

≪勝ったわよ!セシリア!!さっさとキメちゃいなさい!≫

どうしてこの声はこんなに安心するのだろう。怒っているんじゃないかと窺う事も、自分が負けたら負けが決まってしまうと迷った事も、全てを馬鹿馬鹿しいと笑って捨てる。迷いを否定されることが、揺れる心にドンと真っ直ぐな杭を打ち込む。いつも一緒だと、ずっと一緒だと言った鈴の言葉が、自然と自身の口から呟かれる。

「ずっと、ずっと一緒ですわ……」

「くだらん!何をぶつぶつと……結局は二人の満身創痍を駆逐するだけだ!我々の勝利は動かん!!」

「――お黙りなさい!!」

「!?」

「ラウラさんの仰っていることは正しいですわ。ですが……背負うからこそ、パートナーですのよ。私の負けは鈴さんの敗北。一夏さんの敗北。わたくしはただ、その背負い方が少しずれていただけ。背負うからこそ……負けられないのですわ!!わたくしは……わたくしは何も間違っておりませんわ!!」

右の手で宙を切る、号令一下三基のビットが切り離された。その雰囲気が今までとは違う、ラウラはその違和感の正体を察して、不敵に笑む。

(ブルー・ティアーズの稼動状態が高まっている……BT偏向制御射撃【フレキシブル】が来る……)

「それだ、それを待っていたぞ、セシリア!貴様が一夏に何をさせようとしたのか、最大稼動状態の貴様を破って吐かせ!今度は私がその位置に立つ番だ!!」

無数の光条は、光の乱舞となってラウラに襲い掛かる。
ビットからいくつも放出された光は意思を持ったように、ラウラをターゲットにした集束を起こす。着弾の瞬間、そのタイミングをヴォーダン・オージェの瞳とシュヴァルツェア・レーゲンのセンサーを併用して、そして、自分自身の経験を回避行動への挙動に生かす。
避けきってみせる。シャルロットは落ちたけれど、まだ敗れてはいない。勝たせて見せる、勝つのだ、シャルロットの為に。セシリアの在り方を否定しておいて、自身もまた背負っている事にラウラは気付いていない。気付かないままで、自然に背負えるラウラと、気付いていてもそうと決めなければ背負う事ができないセシリア。
似て異なる二人の意地が交錯する。

「――ッ!!」

青い光が。ラウラのわき腹を掠めて天に昇ってゆく。


会場が一瞬の静寂に包まれる。

ラウラの回避が成功した。


392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 00:15:14.39 ID:kWoxRpHq0


地上から、一夏は悔しそうに、箒は拳を握り締め、シャルロットは微笑んで、其処から訪れるであろう光景を待つ。
ラウラはワイヤーを一気に伸ばし、セシリアにめがけて伸ばした、箒とシャルロットと、三人で得た勝利。最大稼動のBT偏向制御射撃【フレキシブル】を正面から破った勝利を求めて。

「セシリアアァァァァァーーーッ!!!」

セシリアに迫ったワイヤーブレード、静寂の会場に鈴の叫びが大きく響き……そして、爆発の中にセシリアの姿が消えた。
決着はついた、いつかの森の中の奇襲、今日の3on3の中での邂逅、これで一勝一敗。
残るは鈴、しかし双天牙月さえも失った鈴はもはやとどめを待つばかり。趨勢は決した。ラウラの心残りは、偏向射撃を破ったと言っても、満身創痍のセシリアとしかまともに戦えなかった事。次は……

「……次こそは、互いに万全の状態でやろう……戦友よ」

393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 00:27:16.40 ID:kWoxRpHq0


いまだ晴れぬ爆煙、地上に落ちていく青い機体を見送ろうと、ラウラの目線が下へ向く。
しかし其処に蒼い機体を見つけることは出来なかった。

≪ラウラ!上だよ!!セシリアはまだ落ちていない!!≫

被撃墜状態でのコア・ネットワークの使用は競技のルールに反する、それでも、シャルロットは叫ばずにいられなかった。
そのシャルロットの叫びが終わるよりも早く、煙を貫いて三本の蒼い光が次々とラウラに襲い掛かる。

「ぐっ……あ!」

肩を、腰を、足を、BTエネルギーで貫かれたラウラの眼前で煙が晴れてゆき、その向こう側にあったのは、腰部のミサイル発射型ブルー・ティアーズを射撃姿勢にしたセシリアの姿だった。
ラウラが切り裂いたと思ったのはその弾頭だったということらしい。しかしビットを使用している間の他兵装の使用は、集中力の維持が難しく出来なかった筈。

「貴様……この土壇場でモノにしたというのか……!?」

BT偏向制御射撃【フレキシブル】を習得したときも、セシリアはサイレント・ゼフィルスとの交戦中の、土壇場での逆転劇を演じたと聞いている。
なるほど、本番も本番の、土壇場でこそ能力を最大限に発揮するタイプかと、セシリアを分析しながら、ラウラは再び両手のプラズマ刀とワイヤーブレードを展開する。

「お往きなさい!ティアーズ!!」

対するセシリアは、煤で汚れた髪を靡かせながら、腕を真っ直ぐに前に伸ばし、三つのビットと、ミサイルを放つ。
ISのコアはそれ自身が操縦者の特性を理解してゆき、操縦者がより自身の特性を引き出せるように自己進化するという。
ラウラの眼前で展開される遠隔操作による独立機動兵装と自律誘導のミサイル、そして、射出されるBTエネルギーを精神感応制御によって自在に操るフレキシブル。ラウラの見立てたセシリアの特性は"女王"。光の騎士団を従え、その敵を駆逐する女王。英国の代表候補生としては、これほど相応しい特性も無い。
その特性ゆえに、BT特性が高くブルー・ティアーズの操縦者として選ばれたのなら、それは必然だったのだろう。それはラウラの気のせいかもしれないけれど、それでも。

「よかろう蒼き女王よ!蒼き女王の騎士よ!この黒騎士ラウラ・ボーデヴィッヒが相手だ!!」


(……厨二発言乙ですわ)

「でも……悪い気はしませんわね!!」

ギッと歯を食いしばり、意識をビットの操作、BTの軌道修正、ミサイルのロックオンと射撃にリソースを割り振ってやる。脳の血管が破裂しそうなくらいに痛い、しかしここで手を緩めることは出来ない。ここでラウラとの決着をつける。鈴とともに勝つのだ。青い光の一斉射撃が始まる。今度は、一度にに集束はさせない。一つ一つの光条が、丁寧に、幾重もの孤を描いてラウラに迫り、其れを凌いだラウラに、即座にミサイルが迫る。

「負けはせん!!負けてたまるかぁッ!!!」

気勢を吐くラウラ、ヴォーダン・オージェの連続使用に、金の瞳の縁から赤い涙が流れる。限界は近い。光条を避け、弾頭を破壊し、一歩一歩、蒼い女王の下へと、せめて一太刀浴びせんと、矢の雨を潜り、敵兵を切り伏せながら、真っ直ぐ、真っ直ぐと。避けた筈の光に背中を撃ち抜かれ、ワイヤーブレードの展開すら困難になりながら、そして、セシリアの眼前で大きくプラズマ刀を振りかぶり……

「…………無念だ……」

最後の一撃が、ラウラの胸に直撃して、ゆったりと笑みを浮かべながら、黒騎士は崩れ落ちていった。


394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 00:28:28.81 ID:kWoxRpHq0



ラウラ・ボーデヴィッヒ【IS:シュヴァルツェア・レーゲン】
                  15分12秒 シールドエネルギー:0 戦闘不能




 ×篠ノ之箒           ×織斑一夏
 ×ラウラ・ボーデヴィッヒ VS  凰鈴音
 ×シャルロット・デュノア     セシリア・オルコット




395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 00:38:14.28 ID:kWoxRpHq0



====RESULT====


○織斑 一夏 [12分30秒 雪羅エネルギークロー] ×篠ノ之 箒


  [12分31秒 織斑 一夏 エネルギー切れによりリタイア]


○凰 鈴音 [14分08秒 崩山龍咆] ×シャルロット・デュノア


○セシリア・オルコット [15分12秒 ブルー・ティアーズ(ビット)] ×ラウラ・ボーデヴィッヒ


== 篠ノ之 箒チーム全機戦闘不能 織斑 一夏チーム勝利 ==


397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 01:30:17.49 ID:kWoxRpHq0


激戦に終止符が打たれた、いまだ興奮冷めやらぬ会場の熱気も、試合終了から4時間も経過すればすっかりと落ち着いたもので、各人が、各々の愛機の整備について、整備班や、教員との話し合いを終えて、夕食もとり、女性陣は大浴場での入浴も終え、部屋に帰り疲れた体をゆっくり休めるかとした折、教師山田が各人の部屋を訪ねて回った。

「――――――……でだ」

なぜか、今日激戦を繰り広げた6人は、あちこちに酒瓶の転がる鬼のねぐらで、全員正座させられていた。

「……織斑、なんか言うことはあるか?」

「いや、千冬姉……俺は一応箒を倒してから……」

「織 斑 先 生 だ」

「織斑先生。俺は箒は倒したけれどエネルギーが切れちまっただけで……」

「なっ!一夏!そんな言い訳が通用すると思っているのか!私を倒してすぐエネルギー切れでリタイアしたくせに!!」

「あーいい、もーいい、お前の言い訳はたくさんだ!お姉ちゃんがどんだけ苦労してきたと思ってる、其れを何だ味方に突撃など……このバカ弟!」

どうやら、相当の時間呑んでいる様子で、すっかり口調もおかしい千冬はずいとグラスを突き出す、注げと。それを受けて控えていた山田がビールを注ぐ。

「で、織斑よ……貴様はベッドでほぼ裸のオルコットに何をしていた」

ぴくっと、全員が反応する。特に反応したのはシャルロット、ラウラ、箒の敗戦組だった。本来なら勝利し、絶対的優位から聞き出そうとしたこと。
それが聞けるチャンスとあって、皆が一斉に一夏を見る。約一名、恥ずかしさに耳まで真っ赤にしながらセシリアは一夏を睨んでいた。

「い、いや、その……テスト勉強のお礼にマッサージを…………」

ちら、と一夏は女性陣の視線のほうを見て、余計なことを言ったらぶちのめしますわ、と聞こえてきそうな視線を感じ、慌てて眼をそらす。

「はい!マッサージをしていました!テスト勉強のお礼にと思いマッサージしましたっ!」

「だ、そうだが。小娘」

千冬は第一発見者のラウラに矛先を変えた、蛇に睨まれたカエルのようになってしまうラウラ。
箒と鈴はマッサージときき、どうせそんな事だろうと思っていたと溜息を吐き、シャルロットはそんなことなのかと愕然として、セシリアは恥ずかしそうにうつむいていた。

「は、はい、私は!!」

「喋る時は 頭 と ケ ツ に サ ー を つ け ろ 小娘」

「サー!自分はあんなうつ伏せをいいことにバスローブの裾をコッソリ摘み上げて覗き込もうとしながらするマッサージなど知らないであります!サー!!」

「」「」「」「」「」

ラウラの発言に、箒、鈴、シャルロット、山田、そしてセシリアが言葉を失う。
そんなことかと胸を撫で下ろした二人も、愕然としたシャルも、聞き間違いではないかと目を剥く。

「オルコット、貴様はバスローブ一枚だった、其れは事実だな?」

「はっ!は、はい……そんな……一夏さん仰ってくだされば……わたくしは……いつでも」

片手を沿えて頬を染めるセシリア。ギリギリと歯を食い鳴らす箒と鈴とシャルロット。

「ち、違うんだ!違うんだ!!」

「よぅし、お前ら、各自部屋に戻ってゆっくり休め。今日の試合はなかなか良かったぞ。お前らの成長、教師としてうれしく思う。勝った者も負けた者も、これからも切磋琢磨を怠るなよ!織斑、貴様は今から第三アリーナだ。」

「さ、女の敵と書いて織斑君。第三アリーナまで行きましょう?」

普段やさしい山田先生の声が、僅かに震えていた。マッサージで無防備なのをいいことにバスローブの中をのぞこうとしたのがそんなにいけないのか?
一夏は退室してゆく女性陣からの絶対零度の視線を浴びながら、頭を垂れる。

398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 01:31:15.72 ID:kWoxRpHq0


一夏の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた

外界との連絡を断ち切る契約の印だ。

「千冬姉……、俺、どうして……
 セシリアの尻、覗いちゃったのかな……」

とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
震える彼の掌を濡らした。

「うるさい変態、黙って第三アリーナで私と握手だ」

一夏はこれからの数時間後、自分がどうなっているのかを想像し、心で泣いた。


399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 01:41:48.27 ID:kWoxRpHq0


―― エピローグ


「あれ?セシリア、なにその本」

「えっ!?ななななななんでもありませんわ、ちょっと拾ったんですの」

「へー、ちょっと見せてよ……ってうわ!!これエロ本じゃない!!!」

「ええ、ですからもう処分してこようかと思いまして」

「表紙見て判るでしょそんなの、さっさと捨ててきてよ、中学時代の一夏達じゃあるまいし……早く寝たいんだからさー」

「え、ええ、すぐに戻りますわ」

いそいそとセシリアは焼却炉に向かう。
一夏の部屋であの日見つけたこの本に、

――お嬢様のマッサージの最中、執事が誘惑に負けて……――

なんてシチュエーションがあったことは、誰にも知られてはいけない秘密だから。


3on3編 end



407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 23:39:41.73 ID:kWoxRpHq0

~これから読む人へ、あらすじと現在設定~

鈴の部屋のエアコンが壊れた為、鈴とセシリアは修理が終わるまで同居中。
テスト期間もなんとか凌げるかと思いきや、一夏とほぼ裸のセシリアがベッドの上で……。

火を噴くレールカノン、吹き飛ぶ一夏の部屋。
怒りと疑惑に殺気を孕んだ3on3戦は、セシリアと鈴と一夏が友情を深め、気持ちを深め、勝利する。
ほんの少し、エッチな秘密なんかも生まれながら。


そして今度こそまったりとした週末がやってくる。



■セシリア・オルコット
 このSS主人公。
一夏さん大好き鈴さんも大好きなちょろい子。
原作で負け込んでいる戦闘面でもBT偏向制御射撃【フレキシブル】を使いこなし、
更に原作ではまだなビットと他の兵装の同時使用まで使いこなして現在無敗の女王。
ちょろさを残して主人公らしくするように書いてます。

■凰 鈴音(ファン リンイン)
 このSSのヒロイン。
親友と称して実際はセシリアの体を好き放題にしたがる自覚の無い子。
セシリアも一夏も両方恋のライバルという非常にややこしい状態。
最近完全に セシリア>一夏 になった。

■織斑 一夏
 火種。
基本的にこいつが関わると事件に発展する。
好きなシチュはお嬢様と執事。残念な上にド変態の一面も。
セシリアがかなり気になってるが戦闘中のどさくさにまぎれて告ろうとして失敗した。

■篠ノ之 箒
 モッピー。
一夏は好きだがセシリアも基本的には好き。
鈴にとってはセシリアの親友ポジションのライバル。
3on3編では、事件後敵対してはいたけれど、セシリアではなく一夏に怒りを向けた。
結構熱い性格が目立つように書いてます。

■ラウラ・ボーデヴィッヒ
 基本的にシャルロットが好きで、その為なら盗撮から拉致までこなす。
厨二病を患っている為、時々おかしなことを口走るが、くっ左目が疼く……という時はマジ痛がってるので注意。
セシリアのことは戦友として認めており、気に入っている。

■シャルロット・デュノア
 ヤンデレ気味で、悪気無く一夏以外を見下す驚きの黒さ。黒シャル。
戦闘ではこのSSで最強クラス、計算高く、ほぼ全ての事態に予測通りと言い放つ。
一夏への一途さはISヒロインズでは随一で、一夏が絡まない限りは優しく、朗らか。
セシリアとはローストビーフ、フロッグと言い合う悪友気味な仲。

■織斑 千冬
 セシリアを気に入っている様子。
インフォメーションやオチを担当してくれる優しさに満ちた女神。

■更識 楯無
 生徒会長、IS学園最強の生徒。

■更識 簪
 一夏が好きな、無口ッ子。
ISヒロインズの女の友情にちょっと憧れているボッチ。

■布仏 本音、谷本 癒子、夜竹 さゆか
 一年一組のモブ。
のほほんさんはちょくちょく出す筈。

■山田 真耶
 山田ァ!

408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 23:43:31.48 ID:kWoxRpHq0



―――― 日曜日・朝・セシリアの部屋

「んむ……えへへ……セシリアぁ……」

「ひゃあん、一夏さん……むにゃ」

セシリアの部屋の天蓋付きベッドは大きい。ダブルベッドなんてものじゃない、キング、王の風格のベッドだ。
本来寮の部屋には、互いのベッドを仕切る板があるが、既存のベッドを撤去する際にそこも取り払われている。元々の同部屋の子が使用していたベッドが窮屈そうになっている。
現在そのベッドは鈴のものなのだが、鈴がそこを使うのは寝転がりながらお菓子を食べる時やカードゲームをする時に限定されている。

つまりは二人仲良く一つのベッドで眠っていた。主に鈴がセシリアにひっつき、セシリアが夢の中で幸せそうに頬を緩ませる。

昨日の激戦を勝利で終えた二人だが、共に機体の損傷は激しい。
特にセシリアのブルー・ティアーズの損傷は見た目以上にひどく、暫く安静にしなければ、致命的な欠陥が残ってしまう程の状態だった。

『オルコット、貴様のISだが一度本国で再調整が必要になった。丁度来週からは連休だからな、一度イギリスに帰るといい』

整備の最中、織斑千冬から伝えられた言葉はひどく落胆させるものだったけれど、良い事もあった。

『えっ……セシリア、一度イギリスに帰るのか?そうか、イギリスかぁ……一度行っては見たいな』

昨日その事を3on3を共に戦った二人に伝えた所、一夏がイギリス行きに興味を示したのだ。
何やら中国産の小動物もしきりにイギリス行ってみたい、でもお金が無いと繰り返していたが黙殺しておくとして。
おかげで現在セシリアは夢の中で早速イギリスの自宅で二人きりの甘い夢に浸っている所だった。

「いけませんわっ……そんな、一夏さん!一夏さん!」

「……」

むくりと眠るセシリアの上に鈴が体を起こす。気持ちよく眠っていたのに、耳元で騒がれるとセシリアの声質は存外脳に響く。

「一夏さん!一夏さん!一夏さん!いち「うっさい」ガッ!?」

身悶えしながら一夏の名を呼ぶセシリアの頬を鈴は起きたままのナチュラルなマウントポジションからぱしーんと張る。
頬を張られた事よりもその拍子に舌を思い切り噛んだ。鈴の下で今度は別の意味で身悶えしているセシリア。

「ったく、静かにしてよねー?折角の休みなんだからまだ寝てたいじゃない」

「起こしたのは鈴さんでしゅわよね!?わぷ……」

呂律の回らない涙目のセシリアの頭を胸にきゅっと抱きしめて

「んふふ、あたしの胸で眠りなさい」


「…………………肋骨の間違いでは無くて?」


そして、部屋の外を通りかかった千冬にまで余裕で聞こえる口げんかが始まった。



409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 23:50:02.39 ID:kWoxRpHq0


――――


「鈴さんのせいですわよ……ッ?」

「はーぁ?聞こえなーい。どう考えてもアンタの自爆でしょー?巻き込まれたこっちの身にもなって欲しいわね」

レトロな箒と塵取りでの寮の廊下掃除を二人でやりながら、二人の口論が再発しそうになると、ガゴン!という鈍い音がリアルに聞こえてきそうな拳骨が二人の頭に落ちる。

「真面目にやれ、騒音ペアめ」

「はい……」「はいですわ……」

「全く、折角昨日褒めてやったと言うのに……」

「あの、織斑先生? ところで今日は一夏さんの姿が……」

「ああ、独房だが?」

おずおずと、今朝の食堂で見かけなかった一夏の事を尋ねると、千冬は事もなげにそう答える。セシリアも鈴も、それ以上その件について言葉が継げず、そうですか、等と言うしかなかった。

「独房なんてあったんだ……」

ぼそりと鈴が呟く。

「ああ、正しくは用具入れを鎖で巻いたやつだがな。何ならもう二部屋用意するぞ?」

「い、いいええ!滅相もない!!さ!セシリア!掃除さっさと終わらせちゃうわよ!」

「そ、そうですわね!」

二人の掃除速度が一気に上がった事は言うに及ばず……。


410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/02(土) 23:58:12.56 ID:kWoxRpHq0




―――― 昼前・学生寮裏手、倉庫前




「あれ?鈴、セシリア、どうしたのこんな所で」

掃除も終わり、寮の裏手の倉庫で使用した掃除用具を片付けていると、ジャージ姿のシャルロットが近付いてきた。
寮生活もある程度長くなってくると、入学当初こそ皆部屋着にも気を使っていたが、だんだんとゆるく、正しくは面倒臭くなってくる。その行きつく先がジャージ生活である。

「あら、シャルロットさんおはようございます。寮の掃除をしておりましてよ。今日もとってもジャージがお似合いですわ、いつもその格好でいれば宜しいのに」

「あはは、セシリアもわざわざフリフリのワンピースで掃除だなんて、背伸びした田舎のおばあちゃんみたいで可愛いよ」

「……」

「……」

「うふふふ」

「あははは」

暖かいクラスメイト同士の談笑が進む。

「んで、シャルロットこそこんなとこで何やってんのよアンタ」

若干軋むような空気に耐えかねて、鈴が今度はシャルロットに問う。こんな寮の裏手に一人でいるなんてどうしたんだろうと。

「うん?ああ、散歩だよ、散歩……ところでセシリア、ちらっと聞いたんだけれど、イギリスに帰るんだって?帰ってくるのは何年後かな?もう卒業しちゃってるかな……寂しくなるよ」

「そんなに行きませんわよッ!連休明けには帰ってきますわ!?」

「そっかー、良かったぁ……まだ僕はキミに負けたわけじゃないからね?」

シャルロットはすれ違うように近づいて、セシリアの肩をぽんと叩く。
そして鈴に笑顔を向けて。

「二度は起こらないから奇跡は奇跡なんだよ?次は負けないんだから」

「言うじゃない、それじゃセシリアの前にあたしに勝たないとね?」

「うん」

鈴も片目を閉じて、にっと口端を上げて笑う、
一夏が絡まない事なら、こうして笑い合う事が出来る。穏やかな午前中がこうして終わって行った。


411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 00:13:37.39 ID:32SFaEPm0


―――― 昼過ぎ、セシリアの部屋


「せーしーりーあー、ねえ、せしりあー」

「なんですのー?うっとおしい」

「暇だよ、どっか行こうよ―」

「……その格好でですの?」

向かっていた端末から顔を離し、椅子の背もたれに肘をかけながらベッドの方を振り返ると、仰向けで寝転がる鈴を見てあわてて視線を逸らす。

「いやいや流石に着替えるって……ありゃ、どーしたのよ」

むっくりと上体を起こし、胡坐を組みつつ少し赤くなっているセシリアを見て鈴が問う。

「せ、せめて下着くらいはお着けになったら!?」

「あ、セシリア見たでしょー?エッチ」

「そそそそんなもの見せられる側の気にもなって欲しいですわ!!ほら、さっさと着替えて下さいまし!!」

セシリアはガタンと音をさせて椅子から立ち上がると、つかつかと自身のクローゼットを開く。
勿論、クローゼットも備品では無い、特大サイズのクローゼットがでかでかと置かれているのだけれど。

「セシリアってさ―、結構可愛い服いっぱい持ってるわよね」

「鈴さんが持っていなさすぎるんですわ」

「えー、結構持ってるわよ?」

青白ストライプのスポーティな上下を身に着けながら、肩越しに振り返った鈴が口を尖らせる。
クローゼットの中に並ぶ可愛らしい衣装の数々を見ていると、少し、それで着飾ったら自分も可愛くなれそうな気がしてくるから不思議だ

「そーだ!ねね、今日は服交換しようよ!」

「はぁ!?冗談ですわよね?」

少し光沢のある白地に上品なレースで飾られた上下姿になったセシリアが抗議の声を投げるけれど、思い付いた鈴は止まらない。
それが良いとばかりに強引に自分の服をセシリアに寄越し、自分はセシリアのクローゼットで服を選び始める。

「ちょっと!鈴さん……!」

「一夏も喜ぶかもよー?」

「お借りしますわね♪これにあうように下着も替えなくては♪」


412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 00:37:33.23 ID:32SFaEPm0



―――― 午後 IS学園前の駅



「…………ねえ」

「なんですの?」

「……いや……」

駅でモノレールを待ちながら、鈴はちらりと隣のセシリアを見る。

(あたしのショートパンツ……見せパン履かなきゃならないほどローライズだったっけ……てかあたしのキャミ……あんなピッチリしてたっけ……?)

「…………」

「……何?」

「いいえ……」

駅でモノレールを待ちながら、セシリアはちらりと隣の鈴を見る。

(わたくしのワンピース……あんなに丈が長かったかしら……というか……)

「ぷっ」

「何よ!!」

「いえ、ただ……何も詰め物までなさいませんでも……」

セシリアは同世代に比べて華奢な方だった。
といっても、それは故郷イギリスでの話。
ちなみに下着販売店の販売実績から算出されるイギリス人の平均バストは2000年に差し掛かった頃にはBだったが、2010年には2ランクも上昇してDにサイズアップした。
当然、これはあくまで販売実績全体から平均を算出している為、若い世代だけの統計ならば更にサイズアップするという事になる。
IS学園に来るまで控えめだったと言っても、余裕でDはありそうなそれに押し上げられる鈴のキャミは、何やら胸元にプリントがあったようだが無残に横に伸びてしまっている。

その服を借りた鈴の取った行動は、セシリアのブラを拝借し、そこに詰め物をする事だった。
上品なワンピースを身に付けた鈴の胸元が爆発し、所謂トランジスタグラマーな外見に、鈴を知っている者は結構な確率で吹き出してしまうだろう。

髪はそのままに、可愛らしい麦わら帽をかぶっている。鈴は、そのつばを摘まんで、恥ずかしそうに顔を隠す。

「大体アンタは何なのよそれ、ザ・ビッチって感じ」

「モデルの様と言って欲しいですわね!」

ハイヒールのサンダルを履き、大胆に生足を露出したデニムのショートパンツはサイズの問題でローライズ履きが限界だった。結果、黒の見せパンを履き、ボタンも留めずに露出させた格好となっている。
自前の白いシフォン生地のロングベストで後ろは隠しているが、透けた生地の奥にちらちらと黒いT字型が見えるのだから目の毒としか言いようもない。
髪はドリルを残してサイドテールにまとめ、鈴から借りた大きめのスポーツキャップをかぶっている。
いかにもなギャル系ビッチ系だが、品のある化粧と長い足、白い肌が本当にモデルの様な空気を纏っていた。
教員に見つかったら注意されそうな勢いだし、実際駅に来る途中山田先生に呼び止められたが、私服と言い張る鈴とセシリアに言い包められてすごすごと帰って行った。


413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 00:50:18.24 ID:32SFaEPm0



「それで、鈴さん?どこか行きたい所でもありますの?」

「無いわよそんなもん」

「鈴さんがお出かけしたいって仰ったんですわよ!?」

「ま、行ってから考えりゃいいじゃん」

「全く……」

街に向かうモノレールは、学園の生徒が乗り込んで一気に華やぐ。
運良く窓際の座席を確保できた二人は、走り出したモノレールの窓から流れる景色に互いに目を細めて……笑い合い……。

「……あら?ねえあれ、鈴さん」

セシリアが何かを見つけたようで、窓の外を指さす。
鈴もそれに従い、指さす方向を見つめると……そこには海辺の岩場で、真っ白なジャージの女性が何かをバットでガンガンと叩いてノック練習をしていた。

「……セシリア、確かさっき千冬さん"用具入れに鎖を巻いた独房"って言ってたわよね」

「ええ……仰ってましたわね……」

白ジャージの人物がバットを振り下ろしている用具入れには厳重に鎖が巻かれている。
流石に変形するほどヤワな用具入れではないようだが、中がどうなっているのかはあまり想像したくない状態だった。

「見なかった事に……」

「ええ……」

モノレールはゆっくりと学園を離れてゆく、千冬のような誰かが、人気のない岩場で鎖にぐるぐる巻きにされた用具入れをガンガン金属バットで叩いていたのはきっと見間違いなのだ。



415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 01:38:23.78 ID:32SFaEPm0


――――


日曜日の街は日中から人で賑わっていた。
天下のIS学園最寄りの市街地とあって、ここは日本国内でありながら実に多国籍な近代都市の様相を呈している。

その中でも、セシリアと鈴の二人はどこに行っても注目の的であった。
この界隈で休日の若い女性と言えばほぼ大抵がIS学園の関係者か、それの見物客、来年IS学園に入ろうと考えている受験生達くらいなもの。

「見て見て、あの子……」

「わぁ!可愛い!!凄いスタイル!……高そうなワンピースね、やっぱりIS学園の子かしら」

「隣の子もすごいわよ、外人さんかしら、やっぱり向うはすごいわね!」

「足長ッ!どうなってんのよあれ」

周囲の声が時折聞こえてくると、鈴も鼻が高い。きゅっとセシリアの腕に両手を絡ませながら上機嫌だった。

「にっひひー、聞いた?セシリア。ま、あたしの美貌じゃ仕方ないわよねー」

「あら鈴さん、褒められてるの服とその偽乳だけですわよ?」

「」

にべもなく呆れ顔のセシリアに鼻で笑われ、鈴は言葉もなく頬を膨らませる。

「うっさいわね!いいのよ満足できれば!」

「ま、確かに悪い気は致しませんわね!羨望の眼差しを受けるのも、高貴なるものの務め、こういった格好もノーブル・オブリゲーションと言えなくもありませんわ♪」

「うっわ、むかつく。大体そんなビッチみたいな恰好のどこが高貴よ」

それでもセシリアの腕を離さず、すぐに二人で言い合いをしながら、きゃっきゃうふふと休日の街をゆく。
部屋では散々はしたないだのごねていた気がする鈴としては、こうまで喜んでいるセシリアを見るのは新鮮で、
でも、それはそれとして悔しくて、顔をそむけて小さく呟く。

「残念な中身のくせに……」

顔をそむけた小さな呟きは、顔を背けた事を見て、どうしたのかと覗き込もうとしたセシリアには勿論聞こえてしまう。

「な~んですって?」

「あ!セシリア!クレープ食べようよクレープ!」

ぷりぷりと怒るセシリアの顔を愉しげに見ながら、クレープの露店販売車が止まっているのを見て、セシリアの手を引く。
別に本当に怒るわけが無い、セシリアも直ぐに表情を明るくしていた。

「あら、いいですわね」

「もち、セシリアのおごりよね?」

「はぁ?冗談じゃございませんわ」

「そんな事言っちゃうんだ?持たざる者への義務感、ノブリス・オブリージュってやつはどうしたのよ?」

「それ、フランス語読みだから駄目ですわ」

「えーッ!今の無し!今の無しーッ!の、のーぶる・おぶりーじゅ?」

半眼で、溜息を吐きながら鈴を見ているセシリアだけれど、慌てて英語読みをべたべたの日本語発音する鈴を見て、口元は笑いを堪えていた。

「……ぷっ!ふふっ!仕方ないですわねぇ~」

「いよーし!おっじさん、チョコチップバナナ、アイスクリームも乗っけてね!」

仕方ないという言葉を聞くや否や、鈴は早速トッピングをたっぷりと載せたクレープを注文する、それを聞いてセシリアは一瞬ぎょっとした顔をするけれど、やれやれと肩を竦めてから、鈴に続いて自分もたっぷりと豪華なクレープを注文する。
クレープの域を超えた価格にはなったけれど……そんな事を忘れて、二人で街を歩く。

綺麗な服屋を見つけては二人で入り、CDショップでは互いの音楽の趣味について口論になったり、大道芸を見て二人して驚いたり、
そして二人は映画館の前に通りかかって。


416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:10:32.00 ID:32SFaEPm0

綺麗な服屋を見つけては二人で入り、CDショップでは互いの音楽の趣味について口論になったり、大道芸を見て二人して驚いたり、
そして二人は映画館の前に通りかかって。

「あら!この映画もう始まっていたんですのね」

「え?何々……ステインズゲート劇場版……?」

「ステではなくシュタ、シュタインズですわ。STEINS;GATE。なかなか面白いと評判ですのよ?」

「どこで?」

「@ちゃんで見ましたわ。鈴さん、ご覧になって行かれません?」

「あんた、結構インドア志向というかなんというか……えー、映画かぁ……映画って2時間もじっとしてなきゃいけないじゃん……?寝ちゃっても怒らないでよね」


―――― およそ三時間後


「うぐ、うぐ……」

「もー、まだ泣いてますの?」

「だってさぁ!だってさぁ!……なんであんな……こんなのってないわよ!こんな所で後篇に続くとか!」

「確かに前後編もの最近増えましたわよね……ちゃんと完結までやって欲しかった所ですけれど、尺を考えればこれがベストなのかもしれませんわ」

「……ちょっと待って、セシリア……あんた結末をもしかして」

「ええ、存じ上げておりますわよ?」

「マジで!!教えて!」

「……教えて、いいんですの?」

セシリアの口元がニヤリと愉快そうに笑む、ネタバレしてもいいのか?と、ネタバレの主導権を握った者の笑み。
それを見てしまうと、ネタバレをされる側に浮かぶのは葛藤。

「うぐ!ま、待って、やっぱりちょっと待ってよ……そんな勿体ぶるって事は……なんか『ある』のよね??」

「当り前ですわぁ……何も無かったらそれこそもったいぶらずにバラしてますわよ。あら失礼、何かある事をネタバレしてしまいましたわ?」

「ぐぬぬぬ……」

悔しそうに睨む鈴に涼しい顔で流し目を返し、それから時計を見る。時計の針はもう18時を指していた。日が落ちるのが遅いから気付かなかったが随分と遅くなってしまった。

417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:11:37.94 ID:32SFaEPm0


「あら……もうこんな時間ですのね」

「えー、夜まで遊んで行こうよー」

その様子から、そろそろ帰ろうと言わんとするのを察し、鈴が抗議の声を上げる。

「あのねぇ、鈴さん?私たちはIS学園の学生、国家代表候補生ですのよ……?」

「でも!こんな機会滅多にないじゃん!!」


418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:12:29.07 ID:32SFaEPm0


安価です


1.「それも……そうですわね。イギリスに発つ前に今日くらいは……」

2.「バカ言ってないで帰りますわよ、独房に入れられたくはないでしょう?」


>>420


419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 02:18:23.29 ID:32SFaEPm0

        ___      -‐z _
        ヽ__>ァ'´  /: : : : : :`: .
          f´: : : : : }∠ イ:/: : : : : : : : :\
        __| : : : /⌒Y : :/ : : :/: : / j: : : : :ヽ
        | j: : : :`ヽ / |: :/ : : :/!: :/イ | : : : : : '.
        |/ : : : // ./!/!: : ;厶{_/_ |:リ.: : : : : : ;
      /′: : :f´  厶| :|: :/_,仏、 `lメ!: : : : ; : .:
.       `7: : : : /|  / r | :| {「rヘ圦ヽ! |: : : :/: : :i
       / : : : /: |_,人 l(|八 | ゞソ   ノイメ、: : :!
     / : : : / : :/‐vヘ_| : : |" _   ´ =ミY: : :/:|
   / : : : /: >''⌒ヾト | : : |/`^ヽ、 ' ,.ィ|: :{/ハ!
.  / : : K´ : /,     !ト| : :八  ノ  人 :/V|  }   <そんでもって今日はここまでッ!
  i : : /| `ヾ l      !|l|: ∧ーz:一う´: : :/  ′/    今回は対した修羅場にゃなんないと思うから気軽に安価踏んでねッ☆
  |: :/ ||   ||\  |l|: i }/:/ { {: : : :/
  |:/ /||   || 、 \ | l|: |/l}/}ノ| |: : :/ ⌒☆
  |! /: l|   ||  ヽ ヽ!/|:/ (`Yニヽ/
    i: : lト、   《     Y/ミxイ::`{r─ }
    |: : :ゝ`ヽ リ     〃「`ヾ::ヘl!ノ´ハ





420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/07/03(日) 02:27:32.39 ID:N6XEf2afo


セシリアその恰好で夜遊びとか色んな予感するがww
安価なら↓

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/03(日) 03:04:54.15 ID:rUZoKXuBo

じゃあ1で




423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 03:45:54.98 ID:32SFaEPm0

安価は

1.「それも……そうですわね。イギリスに発つ前に今日くらいは……」

に決定しましたー。



425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/03(日) 03:56:31.53 ID:32SFaEPm0

―――― ED後Cパート

「それも……そうですわね。イギリスに発つ前に今日くらいは……」

連休中はもう鈴と遊びに来ることは出来ない、そう考えると……今ここで帰るのは少し気が引けて。
きっと怒られるだろうけれど、鈴と一緒ならいいかなんて、この屈託の無い笑顔を見ていると思ってしまう。

「やったー、きーまりっ♪いこ!セシリア」

鈴がセシリアの手をとって走り出す、駅とは逆の方角へ……
この手の暖かさが、幸せをくれるから、離さない。












「おい、アレ見ろよ……」
                「おっほ、すげぇな誘ってんのか?」
  「ここは一つ行っちゃいますか?」
              「行っちゃうしかないでしょー、うひゃひゃひゃ」


そして、夜の街が二人を迎える……。



                To Be Continued...


429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 00:51:50.03 ID:gekU2Ofq0



前述の通りこの街はIS学園を中心に動いていると言って過言ではない。
各国から集うこの時代の女性の最先端を行くエリート達の学園。それは代表候補生だけでなく、一般の生徒とて例外ではない。
何しろ、世界唯一のIS専門の教育機関、集う女生徒は選りすぐりの優秀な子女達である。

通常、夜にはIS学園が全寮制の学校だからか、生徒は皆夕刻には帰路につき誰一人として残らない。
学生向けの店舗は閉店が早いし、この町に残るのは、学園に用があった各国の研究者、
女尊男卑の時代にあって、エリートであるIS学園生とお近づきになりたい男達。

そして、近年特に問題となっているのはいつかIS学園に通う事を憧れる少女の中で、街の輝きに迷い込んだ少女達と、
それを狙ういつの時代にもいるハイエナ達。


「いけっ!そこよ!ばっちり!そのまま……そのまま……!!」

鈴と二人で夜の街に繰り出したは良い物の、二人ともこういう事はあまり経験が無い。
とりあえずカラオケに入り二人歌合戦を2時間ほど楽しんだ後、ゲーセンに二人でやって来て先程までぬいぐるみキャッチャーで楽しんでいたのだが、どうしても欲しいと鈴が息巻いたぬいぐるみは、あからさまにアームが弱く、付き添いで見ているセシリアが呆れてしまうほど取れるわけが無いものだった……。

「あーーーっ!!もう!何なのよこれ!!セシリア!弾薬頂戴!」

「いくら使うおつもりですの……?もう大きいのしかありませんわよ」

「んもう!じゃあ両替してきてよ」

「なんでわたくしがそんなパシリみたいな事!ここで見張っておいて上げますから、ご自分で行ってらっしゃいな」

ずいと札を鈴に突き出して先程自販機で買った水を軽く口に含む。

「もー、わかったわよ!」

ぱしとセシリアの手から札を奪い取ると、のしのしと両替機を探して鈴が店内に消えていく。

「まったく…………誰のお金だと思ってますの……?」

深く溜息をついて頭を振る。ぬいぐるみキャッチャーのコンソール部に寄りかかり、腰を下ろすと、機械がローライズの露出した腰に触れて少し冷たくて、小さくひゃっという声を出してしまい、慌てて離れる。

「……お、思ったより出てるんですのね……今度ちゃんとホットパンツも買おうかしら……」

少し顔を赤くして、この姿を見たら一夏は喜んでくれるだろうかなんて考えながら、ぬいぐるみキャッチャーの陳列部の奥の鏡で、前髪をなおしていると、背後に人がやってくるのが見える、もしかして、この台を使いたいのだろうか……でも、ぬいぐるみはもうあと一歩のところまで来ている、ここまで動かしたのは鈴だ、見張ってると言った以上動くわけにはいかない。

「あのーすんませン、オネーサン、どいてもらえねッスかァ?」


430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 00:56:08.16 ID:gekU2Ofq0



「……申し訳ございませんけれど、今友人を待っておりますの。少しお待ちいただいてもよろしくて?」

男がまさか話しかけてくるなんて思っていなかった、それにしても、なんて話し方だ、頬をひきつらせながらセシリアは答えるけれど、それで引き下がってはくれない、更に近づいてくると、顔の高さをこちらに併せて近づけてくる。顔を見たくもないセシリアは視線を逸らして。

「……ッ」

「オネーさーん、ツレ待つんなら別ンとこでも良くね? あんさぁ、そりゃ俺男だけどよ、そのぬいぐるみ取りて―のよ。女だからってそこまでオーボーかましちゃうのってよくなくね?オンナが強いからオトコはゲームもすんなってんですかぁ?」

「近づかないでくださいましっ!……生憎、友人はさっきまでここでぬいぐるみを取ろうとしていましたの。今両替に行っているだけですから、すぐに戻ってきますわ。その後でしたら場所をお譲りしますから……」

「はーあぁ?そりゃないっしょ、ゲームは誰にでも平等だぜェ?オンナってだけでそこまで言っちゃっていいんスカ?え?コラ?おい?」

男の言葉は、弱者である事を前に押し出した言い方で、酷くセシリアの心を逆立てる。一夏の祖国を悪くは言いたくないが、この国はやはり野蛮だ。弱者特権が浸透してきた文化だけはどうにも馴染めない。弱者が弱者である事を安穏と受け入れ、開き直る。

(まったく、一夏さんを見習って欲しいものですわ)

そんな風に考えていたセシリアの耳に、突然大きな音が響く。セシリアの顔の横のアクリル板を男が思い切り叩いたのだ。
驚いてセシリアが男の方を見ると、眉間に皺を寄せ、いかにもな威圧の表情を男が浮かべていた、気づかぬうちに、もう数人、近くに並ぶぬいぐるみキャッチャー筐体の影から現れる。

(――ッ!仲間が!?……鈴さん……何をしていらっしゃいますのッ!)

プライベートチャネルを使えば……そっと手を、左耳のイヤカフスへ触れさせようとして……。そこに今、ブルー・ティアーズが無い事に気づく。


――――

『ではオルコットさん、ブルー・ティアーズは先にイギリスへ送るという形で宜しいですか?』

『……えっ!?』

『愛機と離れるのは寂しいと思いますが、今ブルー・ティアーズは見た目以上に危険な状態です。学園の設備では機密部分の完全メンテナンスはできませんから……丁度オルコットさんも、来週からイギリスとの事ですし……よろしいですか?』

『……ブルー・ティアーズ、そんなになるまで……頑張って下さいましたのね。わかりました、この子の事、どうかよろしくお願い致します』

――――


どの道、ブルーティアーズの事を思えば仕方が無い事だ。
今はこちらから誰かに連絡をとる事も、誰かから連絡を受ける事も出来ない事実だけはどうしようもない。

「――い!ォい!聞いてんのかよ!?オネーさんよォ!」

「なーになーに、ショウちゃーん。おっほ、エロいねぇ!オネーサン」

「おうカズぅ、いや聞いてヨ。この女、男はゲーセンで遊ぶなとか言っちゃってるわけよ、オーボーじゃね?」

「うっはー、何、女尊男卑主義ってやつ?女に盾つく男は生意気だとかチョーシくれちゃってるわけ?」

「おいネーちゃん、あんま男だからってナメんなよ、俺たちゃ……ヤルときゃヤルんだぜ……?」

「ヒュゥ!キメたァ、やっぱキョースケさんカッケェ!」

ゾロゾロと、男の仲間が集まってくる。
この程度の人数、代表候補生であるセシリアにとっては正直ものの数では無い。
しかし、イギリス貴族でもあり、エリート中のエリートを自負するセシリアにとって、一般市民相手に力づくの解決などは愚の骨頂。
ましてや相手は、ここで揉めるのは避けたい。
店員と思しき女性が、威圧感を纏う男達を見て怯えているのも視界の隅に目に入った。

「まぁまぁこんなトコで揉めんのもやめようや?お店に迷惑っしょ」

まるでセシリアの胸中を代弁したような言葉が男達の一人から発せられる。
しかし……その意図は、若干違った。

「場所変えようぜ?"話し合い"の」

あくまで話し合い、と強調されて、寮の門限も破っているのに店内で立ち回りなど演じるわけにもいかない。
セシリアには渋々でも頷くしかなかった。
何人もの男に囲まれながら、見張っていると言った台を離れてゆく。一度振り返ったけれど……鈴はまだ帰ってくる様子が無かった……。


431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:04:28.03 ID:gekU2Ofq0


――――――


今夜は、本当に誤算が続く日だ。
店から一歩でも出て、裏路地にでも連れて行かれるのであれば、あまりエレガントな手段ではないけれどその場で立ち回りを演じてこの場を切りぬけることも可能であったけれど……向かった先は、先程の店内と同じ建物。
店内から一歩も出る事無く、地下に降りるエレベーターに乗っただけで、そこに到着してしまった。

喧しいとしか表現できない下品な音量。目を悪くするとしか思えない暗い店内に色とりどりの光が乱舞している。
今日のセシリアと似たような恰好の女は、見るからに濃いメイクで東洋人の目の小ささを縁取りで誤魔化して、まるでゾンビ映画のメイクのようですらある。

(羨ましい瞳ですのに……)

セシリアの瞳は、若干目尻が下がり気味で、少々幼く見えるのが気になっていた。
もちろん其れも含めてセシリア・オルコット。別に強いて嫌いな場所ではないけれど。

女の癖に男に媚びるその姿は見ていて不快感さえ感じるけれど、ISにより男女のパワーバランスが逆転する以前から、男性より強い女性がいた事は知っているし、その逆に、女性に媚びる男性がいた事も自らの両親と言う形で知っている。
男達は店の一番奥、薄いカーテンで仕切られた大きなソファのあるテーブル。所謂VIP席へセシリアを案内した。

「さぁて、ここなら邪魔は入んねーべ……」

先程話し合いを強調した男がソファに腰を下ろしたセシリアの隣にボスンと勢い良く腰を下ろす。
逆隣りには体格のいい男が座り、そして、正面にローテーブルが運ばれてきた。簡単には逃がす気は無い、その意図が聞かずとも伝わってくる。

「この店さぁ、俺のオカンがオーナーやってんだわ。ま、正確にはビル自体がオカンのものなんだけどさ。なんか飲むかい?おい、俺はいつもの頼む」

「水で結構ですわ」

どうでもいい聞いてもいない事をベラベラとよく喋る、とにかく、さっさと話を終わらせて戻らないと、鈴が心配する。
運ばれてきたグラス、随分と匂いが強いが、酒、それもブランデーだろうか。それをくいと呷りながら男が続ける。
先程の話から考えれば、この男が男達のリーダーなんだろう。

「そうかい?俺らはさ、別にアンタに謝らせようとか、あんたをどうこうしようとは思ってね―わけよ。女尊男卑であろうが男女にゃ譲り合いってのが必要だべ?って言ってるわけでよ……?」

人の熱気か知らないが、ここはひどく暑く、緊張からか喉も渇く。気は進まないが差し出された水のグラスを口に付け、一口。若干のフレーバーが入っているのか、微かな後味がするが、悪い味ではない。

「……然様ですの、確かに仰る通り譲り合いは必要かもしれませんわ、ですが、わたくしはただ、友人を待っているので、せめて少し待って頂けないかと申し上げただけですわ」

「ほう、そりゃあ悪い事をしたねぇ……」

この男は、他の男とは違うのかもしれない、話が通じそうなその態度を見て、少しだけほっと胸をなでおろす。

「ですから、早く……」

戻らないと、そう言おうとしたセシリアの前、カーテンをくぐって男がやってくる。初めにもめた、確か仲間からはショウちゃんと呼ばれていた男だ。
その事はどうでもいい、ただ、その手にあるものにセシリアの視線は釘づけになる。

「いっやぁ、ラッキーラッキー、簡単に取れる位置にあってよ!取って来ちった!ぎゃはは」

「おいショウ、そんなもん俺に言えばオカンに頼んで現金で売ってやるって言ってんだろよ。っくははは」

「あ、あな……あな……あなた……それ」

セシリアが震える声で、震える指を指す。指を差されてショウと呼ばれる男はあからさまに不機嫌そうに眉間にしわを寄せ。

「ぁあん!?なんか文句あんのかゴラァ!」

「大ありですわ!それは……それは鈴さんが……!!」

バンとテーブルを叩いてセシリアが立ち上がる。
それを見て何かにピンと来たのか、先程キョウスケと呼ばれた男がショウと呼ばれた男に話しかける。

「ひょっとしてショウ、鈴ってあの巨乳のガキじゃねーの?こっち見て随分と悔しそうにしていたけどよ」

「はっはーん、だからうろうろ誰か探して慌てて出てったんだな。ぎゃはは!」

「――ッ!……な、なんて事を…………返して下さいまし!それは鈴さんのものですわ!」

激昂して、テーブルの向うのショウとやらに手を伸ばすけれど、ひょいとその手はよけられてしまう。

「おいおい……穏やかじゃねぇなぁ……」

「こいつこの状況わかってねぇんじゃないの?おい?バカか?おバカちゃんでちゅかー?ぷっはははは」

周囲の空気が、一気に不穏になってゆく……。


432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:10:23.46 ID:gekU2Ofq0







「きゃあっ!?」

立ち上がっていたセシリアは突然ぐいっと髪を引っ張られ、よりにもよってそのボス猿の上に引き下ろされてしまう。
男の膝の上に座る等、今だ一夏相手にさえした事が無い事をされ、セシリアの頭に一気に血が上り、咄嗟に肘を背後、ボス猿の鼻頭に打ち込む。

打ち込んだ、筈だった。その肘は先程迄隣にいた大男に両腕を掴まれて男の鼻頭までは届かない。

「ぎゃははは!オネーサン、そんな恰好して、これからどうせイイコトする相手でも探してたんだろ?良かったじゃねぇか、俺らとイイコトしちゃおうぜェ?」

ショウが本当に下卑た、下賤な男の代表のような言葉をセシリアに言い放つ。

「この……下衆ッ!!!わたくしは一夏さんという心に決めたお方がおりますのよ!!!」

体格差に、体勢に思うように動けないセシリアの首筋に、チクリとした痛みが走り、四肢の力が一気に抜ける。

「……な……ッ!!これは……何を………………」

「まぁまぁ、こんなトコで揉めんのもやめようや? ――判ってんだろ?ハラ決めて楽しんでいこうぜ?」

「ぎゃっはははははははは!いちかサァンってか?ゴチんなりまーす!ぎゃはははははは!」

「うっひょー、これってNTRってやつ?へへ!俺得!」

「ばっか、お前@チャンに毒され過ぎだっての」

ボス猿の手には拳銃型の注射器が握られている。思考が混濁し、ゆっくりと意識が離れていく。必死にそれを手繰り寄せるが、意識は煙のように指の間から抜けて行った。

「こんな…………こんな……いや……助け………………て……………………鈴さ……ん……………………一夏さん…………」

がくりと、仰向けに意識を失ったセシリアの頭から、鈴に借りたキャップが床に落ちた。

「何だこの女の力……ジュンさん。ありがとうございました。タダモンじゃないっすよこいつ」

取り押さえていた大男が、ようやく大人しくなったと一息吐く。
ボス猿ことジュンは拳銃型の注射器をテーブルの上に捨て、強く舌打ちをする。

「ふー、ったく手古摺らせやがって。たけー薬の癖に一発で気絶しねぇなんてどうなってんだこいつ。まぁいいや……おい、ショウ。カーテン閉めろ。早速ムイちまおうぜ」


433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:12:36.32 ID:gekU2Ofq0




――――――


鈴は夜の街を走っていた、両替に梃子摺った鈴を待っていた筈のセシリアはいなくて、
ぬいぐるみはいかにも下品な男が耳障りな笑い声を上げながら取って行った。

トイレだろうかとも思ったけれどいない、店内を何度もぐるぐるまわったけれどいない、もしかして怒って帰ってしまったのだろうか、
慌ててプライベートチャネルで通信を開くけれど応答は無い。そう言えば今日はブルー・ティアーズを身につけていなかったと思い出す。
それは今彼女が、一般人よりは多少体術の心得があるにしろ、ただの高校一年生の少女で、最悪の事態の切り札を失っている事を意味する。

困り果てている所で、鈴はゲームセンターの店員の女性から『お連れの女性が、ガラの悪い男達に連れられて行ってしまった』と聞き、居ても立ってもいられずに走りだしていた。

(どこ!?セシリア……!!!!)

しかし、闇雲に走り回った所で、判るわけがない。それらしき男たちの集団も見当たらない。
鈴は後悔していた、セシリアが自分の服を着てくれる事が嬉しくて。それが例え多少目の毒でも許されるのは、学園内だけの話である事を失念していた。
一緒に過ごす時間が楽しくて、もっと長く二人だけでと欲をかいてしまった。

(神様でも仏様でも鬼でも悪魔でも構わないから!お願い!罰はアタシに下さい!セシリアは!セシリアを助けて……!!!)

両目から涙を零しながら、鈴は街を走る、何か、手掛かりは、何か方法は。
縁石に足をとられ、鈴は地面にヘッドスライディングする羽目になってしまう。麦わら帽が飛び、借りた綺麗なワンピースが汚れてしまったのを見て、鈴はへたり込んで泣き出していた。

「セシリアああああぁぁぁぁぁ!!」

「あっれ、鈴……?」

落ちた麦わら帽を拾い、近づいてくるその人に気付かないまま。


434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:17:33.15 ID:gekU2Ofq0



――――――


「おい……こりゃァ……」

ボス猿ことジュンは、意識を失ったまま下着姿にされてソファに横たえたセシリアの下着に手をかけた所で、持ち物をチェックしていたショウに呼ばれてそちらに向かう。ハンドバッグも高級なブランド物だったが、そこから出てきた財布には、繁華街のビルのオーナーの息子である自分でも遠い世界の話である黒いカード、そして中高生の少女が持つには異様な額の金が入っていた。

服装の割におかしな喋り方をする女だと思っていたが、思った以上の収穫かもしれない。あとは脅すでもクスリに漬けるでもして絞り取るだけ絞り取って稼げるだけ稼がせれば、ビル一個では無い莫大な財産を手に入れる事が出来るかもしれない。

「おい!カメラ持ってこい!……こりゃあとんでもねぇ金の卵だぜ、ショウ!でかした、良い女見つけたじゃねぇか……」

「いっひひひ、あざっす!じゃあ、に、二番目俺で良いすか?……あれ?財布からなんか落ちたッスよ」

それは、IS学園のIDカード、つまりは学生証だった。

この街にも、こんな夜の顔にもルールがある。
『IS学園に手を出すな』数年前の事になるか、IS学園の生徒が出演する非合法の映像を裏ルートで販売した組織は完膚無き程に叩き潰され、更には全世界から制裁を受けたという。
ヤクザ、マフィア、裏社会等比では無い。白昼堂々とミサイルさえ撃ち込まれる勢いだったという。

その時、入口の辺りで悲鳴が上がった。


435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:21:19.47 ID:gekU2Ofq0



「セシリア―ッ!!いるなら返事して!!!」

悲鳴の中、喧しい程の音楽をものともしない大きな鈴の声が店内に響く。

「鈴!こっちだ!」

「なんだてめえら!!」

「うるせぇ!どけっ!!」

どうやらここが突き止められたらしい、始めの声は先程言っていたこの女の連れだろう。どうやって?理由は判らないが、やたらと嫌な予感がする。突然の殴り込み?にホールの客達は我先にと非常口に雪崩込み、そのせいで店内のあちこちで悲鳴が聞こえる。

「お、おい!とりあえずその女隠せ!!」

慌てて振り返り、指示をするその背後で、赤い長髪に黒のヘアバンドを巻いた男と、ツインテールに所々汚れたワンピースの女がカーテンを大きく開いて現れた。
その男にボス猿は見覚えがあった、中学生の後輩の喧嘩に呼ばれて行った街で。
中学生の癖に、たった一人で仲間もろとも自分までノックアウトした化け物。
織斑一夏、凰鈴音共通の友人であり、特に一夏とは親友である一般市民、五反田食堂長男、五反田 弾。

「てめェ……弾!!!」

「うっせ、相変わらず下衆な事しやがって……鈴!あの子で間違いはねぇか!?」

「セシリア!!!」

ツインテールの女が、周囲を完全に無視してソファに倒れているセシリアの所へ向かう。
ショウ達手下が動こうとするにも、赤髪の少年から目を逸らせなくて、誰も一歩も動けない。

「ほっほー……こりゃぁ美人だ、眼福眼福」

下着姿の金髪美女が倒れているというのはなかなかに眼福で、鈴をここに案内した男、五反田 弾がシニカルに笑って呟くと、鈴がものすごいおっかない目で睨み返してきた。
思わず弾は眼を逸らし……長い髪で誤魔化しながらチラ見する事にした。特に腰周りがたまらない。

「アンタ達……覚悟はできてるんでしょうね!!アタシのセシリアにこんな事して……絶対に許さない!!!  甲 龍 ! 招 来 !!」

涙を讃えた怒りの瞳で真っ直ぐにボス猿を睨む鈴のブレスレットが光を放つ。
一瞬後には、一機で旧世代一国の軍隊を駆逐する戦力を秘めたパワードスーツ、IS<インフィニット・ストラトス>に身を包んだ鈴が現れる。

「IS!?……こ、こんな事してただで済むと思っているのか!!知ってるんだぞ!てめェらIS学園の生徒だろうが!!いいのか!こんな一般の商店でISで暴れやがって!!!」

自分がしようとした事を考えれば、出る所に出ればより酷い目にあうのは自分たちだ、しかし彼の言う事は尤もではある。
いくらなんでも対人にISは過剰火力も良い所だ。事情は兎も角本当に手を出せばさすがに鈴も処罰を免れない。

「ひっ!ひいい!!」

甲龍の威圧感のあるシルエットを見て、手下の一部がが一目散に逃げようとして。
VIPルームを出た所で、木の葉のように空中に吹き飛ばされた。

「ま、まだなんか来るッスよ!!」

「うるせぇ!ショウ!うろたえんじゃねぇ!!!」


436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:23:00.95 ID:gekU2Ofq0



―― BGM:POISON ~言いたい事も言えないこんな世の中は~ 反町隆史 1998年7月29日



437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:25:29.15 ID:gekU2Ofq0





「……弾君、感謝する。凰だけではこの場所までは見つけられなかっただろう……」


ホールの照明を背に受けて、その人物はゆっくりとVIPルームに現れる。


「いえいえ、可愛い幼馴染が泣いて頼むんじゃしょーがね―ッすよ……来てくれると思ってましたよ……?千冬サン」



現れたその姿に、弾以外の、鈴を含む全員が息を呑む。異常な威圧感を纏い、片手に金属バットを携えて……。

「う、嘘……弾!あんたまさか!!」

「いや、ほんとはアイツにかけたんだけど出なくてな」



「貴様ら……誰の生徒に手を出したか、わかっているのか?」



「な、何だてめぇは!!!」




「何だ?だと……私か?」


震える声で問うボス猿に、ゆっくり下ろした金属バットの先を床で引きずりながら近づき、宣言する。





「Great Teacher Orimura.   一 教 師 だ !!!!!」




438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:26:53.02 ID:gekU2Ofq0






====RESULT====

○織斑 千冬 [00分03秒 粉砕バット20号] ×街のゴロツキ + 甲龍を展開した 凰 鈴音






439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:28:44.13 ID:gekU2Ofq0



――――――



目覚めたセシリアは、自分が暗闇の中にいる事に気がついた。

「わたくし……は……」

寝ている状態のようだけれど、酷く寝心地は悪く、しかも揺れている。手足は縛られているようで、身動きが取れない。
不意に、優しい一夏の笑顔が浮かんだ、あそこで意識を失って、自身に何が起こるのかが判らない程子供では無い。
とめどなく涙が溢れ、仰向けに寝かされたまま耳に向けて流れる。

「ごめんなさい、ごめんなさい一夏さん……」

「泣くなバカ者、貴様は無事だ。鈴と五反田という一夏の友人に感謝しろ」

かけられた声は、酷く頼もしくて、そして優しいものだった。

「織斑……先生……」

もう安心だ、この人がいるということは、この人が無事というという事は、本当に助かったのだ、でも、どうしてこんな鉄の箱に入れられたままなのだろう……?


(……箱?)


「立てるぞ、オルコット」

「――は!はい!!」

寝転がされた状態から、箱が真っ直ぐ立ち、セシリアは冷たい足場に両足で立つ。
どうやら自分は全裸のようだが、特に体に異常は感じない。いや、なんか、スースーする。それ以外はがっちり縛られている以外は健康そのものだ。

「ちょ、ちょっと!何!?何なの!?た、助けて!セシリア!助けて一夏!」

見えないけれど、鈴のくぐもった声が聞こえ、だんだんとそれは近づいてくる。
ゴトンという音がした、鈴も箱に入れられてるようだ。

うっすらとセシリアは、それが用具入れの様な予感がするけれど、まさかという思いもある。

「鈴さん!!」

「セシリア!!セシリア!目を覚ましたのね!良かった……良かったよぉ……!!」

「鈴さん!鈴さんこそ……!無事だったんですのね!!ごめんなさい、わたくし……」

「いいの!セシリアが無事ならいいの!!」

「鈴さん……ッ!!」


440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:29:54.93 ID:gekU2Ofq0


「はーい、感動の再会そこまでー」

パンパンと手を叩く千冬の抑揚の無い声が聞こえる、音の位置関係から、鈴とセシリア、その中央に千冬がいるようだと二人は認識した。
ふと耳に、ざわめきが聞こえる、そのざわめきの中には、聞きなれたクラスメイトのものも聞こえた。

「よーし、貴様ら。寮の門限は知っているな?本日、その門限を破り、夜遊びに精を出していた愚か者が二人出た。知っての通り、一年の寮長はこの私が勤めている。それを承知の上で、門限破りを敢行する勇気は褒めてやろう。だが、門限破りをそれで済ませる程私は甘くない。これを見ても門限を破る度胸があるものは破って見せろ、今回はこの程度で済ませるが、次はもう一つ上の罰を与える」

千冬が何やら口上を述べている。
自分達にこれから何が起こるのか、何と無くわかった。千冬の手がドアにかかる、開けさせたくないけれど、何も抵抗する事が出来ない。

ドアの向こうはミーティングルームで、同じように扉を開け放たれた鈴の姿と全一年生の皆の姿が目に入った。

寮生に晒された二人の姿は、二人とも全裸とブライチで縛られていた。
セシリアのお腹にはでかでかと「不埒者」と書かれ、下を手入れの行きすぎた状態、簡単に言えば剃られている。


「いいやあああ!見、見ないでくださいましぃぃぃぃ!!!!」


だが、セシリアの無毛はまだマシなほうで……鈴はあの日のセシリアのブラだけをつけられて「 偽 乳 」と書かれていた。


「殺して!いっそ殺してぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


鈴の絶叫が、寮内に響いた。

翌朝まで、二人は晒されたままだった。



441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:31:32.05 ID:gekU2Ofq0



―― エピローグ


夜、海辺の岩場は静かだ。打ち寄せる波が、岩に砕ける。
そんな岩場で、鎖に繋がれた用具入れが、ぽつんと波間に吊り下げられていた。

「ぶほっ!!げほっ!!千冬姉!!織斑先生!!潮が!潮が満ちて!!!千冬姉!!姉ちゃん!!セシリア!箒!鈴!ラウラ!シャル!簪!楯無さん!のほほんさん!!げほっ!ぶえふ!」


「……呆れた、随分沢山心当たりがあるのねー」


少し離れた岩場で、助けてあげるのやーめた、と楯無は扇子をパチンと閉じて寮へ帰って行った。
心配しなくてももう満潮。これ以上は水位も上がらないだろう。


「ふうん、セシリア・オルコット……かぁ……………………んふ」


一番初めに一夏が口にした名前、小さく呟く楯無の口元には、笑みが浮かんでいた。





GTO編 end

442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:36:19.03 ID:gekU2Ofq0

                 _ _ _ _,rヘ、_ _ _ _ _
               /::::::::::::{::::::::::::\:::::::::::::::ヽ
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            //|:::l:::l  z==、\| ィ==z ゝ、l:::〉
              l:::l::::! "    l     ゙ ,'::l:::lゞ
              |:/::iゞ、. //  ′  // ノ/ l:/  <今日はここまでだぜ。読んでくれてありがとな!
              !ハ|、 }ゝ  r-‐‐‐-、  /‐r′   GTO好きなんだ。なんかBGM指定とかあったけどスルーでもいいかんな。
                 ¨W\ ',    / /:::::从    あ、俺死んでないぜ?ちゃんと生きてるって!
                 r===l> 、ゝ‐ ´イ==,`
                 |::::::::::|___ ‐ __|::::::::/
           ,--──「 ̄:::::::::::l/ | ∧ |:::::::ト ̄|───-、
          /===|::::::::::::::::::| | | ',l:::::::::::::::::::\===l

443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/04(月) 01:55:43.74 ID:gekU2Ofq0


次回予告


ブルー・ティアーズ修理の為一路イギリスへと向かうセシリア・オルコット
懐かしの本国、懐かしのオルコット邸。つい最近帰ったばかりだけれどそれはそれとして、

今回の帰省にはなぜか、付き添いとして織斑一夏が指名される。(小姑オプションつき)
熱い青春の夜をもたらすのか、それとも地獄の基礎訓練の日々をもたらすのか。


しかし、そこに亡国企業、因縁のサイレント・ゼフィルスが現れる


次回
IS-if Cecilia Alcot 「イギリス旅情編」

英国の空を、駆けろ!白式!





450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 00:37:58.75 ID:ghJ8Yr7J0



飛行機の旅というのは、存外退屈なものだ。
ロンドンまで時計の上では約4時間、日本とイギリスの時差は約9時間。時刻を遡りながらのフライトになるのだろうか。
初めて乗るファーストクラスの座席は存外快適だけれど、今は動けない。窓の外の景色をのんびり眺めることにしよう。そうでなければ……

「……ううん……むにゃ……うふふ、一夏さん…………」

肩に頭を預けて眠るセシリアに変な気を起こしたら、そこのエアロックから放り出されてもおかしくない。
なんだかバラの香りが心地よい。困ったことに。
最近鈴も近付くと同じにおいがするものだから、時々鈴が綺麗に見えるなぁなんて思っていると。

「一夏さん!」

「はいぃ!!」

「うふふ、うふふふふ……すぅ……すぅ」

(何だ……寝言かよ今の……)

絶妙のタイミングでの寝言にほっと一息つきながら、
そして背後の座席で寝ている筈の姉の気配に殺気すら感じながら、一夏は肘掛に頬杖をつく。

事の始まりは、よりにもよって昼間まで放置された独房生活の後だった。


451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 00:54:01.06 ID:ghJ8Yr7J0


――――――――――


部屋、正確には千冬姉、織斑先生の部屋に同居している一夏がシャワーを浴びていると、外から千冬の声がした。


「……聞こえるか?」

「千冬姉?聞こえてるけど……あ、いや、織斑先生」

「いや、いい……今は職務時間外だ」

普段と違う声音に、一夏は疑問を感じる。何かあったのだろうか……
微かな心配と、不安。

「……一夏。お前はアレだ……何だ…………どう思っている」

「……千冬姉……いや……あの……お姉さま?…………何を!?」

「うるさい!」

「ええっ!?」

意味がわからないから問い返したら怒られた、本当にわけがわからない。

(ただなんとなく、何の事を言っているのかは……察しが着く。姉弟だからな)

「…………好きなんじゃないかな?多分」

「多分とは何だ貴様、それでも男か!?」

風呂場のドアを思い切り開けて千冬が怒鳴る。姉とはいえあまりの仕打ちに、大事なところだけは何とか隠す一夏。

「ちょっ!千冬姉!流石にそれはない!ない!!」

「ふん、お前のなんぞ見慣れたものだ。そんな小さな事はどうでもいい」

姉の冷静な言葉が嫌に突き刺さる、そりゃいくらなんでも同年代と比べたことは無いけれど、実姉に小さな事呼ばわりされるのは結構ショックが大きかった。

「……なんだ、気にしていたのか。すまん」

「そこで誤らないで!?リアルに傷つくから!!」

「いや、そんな事無いとは姉の口からは言い難いことを察しろ?」

「しらねぇよ!!いいから閉めてくれよ!!」

「ふむ、良かろう」

パタンとおとなしく戸を閉める千冬。一呼吸置いて、本題を口にしてきた。

「明日からイギリスに行くぞ、ついてこい」

むしろ、今までの話との脈絡も何も無く、決定事項だけを宣告された。


452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 01:06:24.87 ID:ghJ8Yr7J0


――――――――――

「…………やっぱり無茶苦茶だよな」

溜息と共に呟く。どうでもいいのだがファーストクラスというだけあって、客室は広い。
しかも他の客が一人もファーストクラスに乗っていない。

一夏、セシリア、千冬の三人だけだ。
先程から多分寝ているのは間違いないのだけれど、びしびしと威圧感を感じる気配を発している姉など、肘掛を取っ払って三席を丸ごと占領して完全に横になっている。

(俺は知っている。サービスドリンクだからってシャンパンを飲みまくっていたことを……)

おかげで要らぬ殺気をひしひしと感じ、眠ってしまうことも出来ない。
それにしても珍しいなと一夏は思った。いくら何でも、先日の3on3後は原因が自分にあるから別として、厳格なほうで、規律を重んじる姉が、連休の旅行のようなものとはいえ、仮にも生徒の前で酒を飲み、眠るなど普段の千冬から考えればありえないことだ。

ちらりと隣を見れば、他に席は十分にあるのに、わざわざ自分の隣の席へ、肘掛まで取っ払い、二人掛けにして当然のように眠っている同級生、今回の目的地であるイギリスの代表候補生セシリア・オルコットを見る。
改めて言うまでも無いことだけれど、細い眉も、伏せられた睫も、此方の肩に頭を預けているから、片腕が隠れてしまうほど長い髪と同じ当然金色で、肌は比喩抜きに白く。唇だけが仄かに色付いているのが余計に際立つ。一言で言うなら可愛い。美人の部類だ。

あの3on3以来、今までなんと無しに眼が行くと思っていたものが、ひょっとしたらひょっとすると自覚してから、あまり長く見ていられなくなってしまった。
本当は昨日の日曜日あたりにでも、実家に帰り、五反田食堂の悪友に少し相談でもしてみるつもりだったのだが、残念な事に昨日は24時間用具入れの中で過ごした為、相談も出来ないままこうして飛行機に乗っている。
そもそも昨日の事は更に先日、セシリアのお願いを聞いたが為にそうなったわけで、自分に非は無い。いや、頼まれたからって実行したのは自分だけれど。

(やっぱチラ見安定だな)

それが、ムッツリスケベの代表的行動であることに、一夏はまだ気付いていなかった。


453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 01:16:25.47 ID:ghJ8Yr7J0

――――


(一夏さん……見てらっしゃいますの?先程からチラチラと……ま、まるで、いけないものを見られているようですわ……ぁぁ……)

薄目を開け早鐘を打つ鼓動を胸に感じながら、セシリアは眠ったふりをし続ける。
自分のしたお願いで、独房に放り込まれ千冬の地獄の折檻を受けた一夏は、きっと自分に近付くのも怖いに違いない……。
こうして見られるのだって、結局は一夏の中の欲が具現化したものに過ぎないんだ。

見知らぬ男たちにどこまでされたのかは自分にもわからない、無事に助かったのだと、昨夜は喜んだものの、冷静になればなるほど、本当に無事だったのか、疑念が沸き続ける。
少なくとも、膝抱っこバージンは奪われてしまった。これは大変な事だ、淑女として有るまじき事だ。出発前に鈴に泣きながら言ったら物凄い冷めた眼で睨まれてしまったが、きっと重大なことだ。
穢れてしまった、穢されてしまった。

でも、一夏が見てくれる限り、それも浄化されていく気がする。
この人が好きなんだと、改めて自覚する。だから、辛い……。

一瞬、鈴の寂しそうな顔が過ぎる……もっと辛い……。

(……鈴さん…………)

今頃鈴はどうしているのだろう。
時折、熱そうなふりをして胸元のボタンを外してみたりしつつ、チラ見の喜びを噛み締める。
その喜びは淑女として大いに間違っていることを、セシリアはまだ気付いていなかった。



460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 01:09:01.83 ID:kR1NWqSe0


チラ見した時に入ってきたその景色は、息を呑むほど一夏にとっては驚愕の光景だった。
むかしこんな事を聞いて来た友がいる。

『一夏、おまえおっぱいは好きか?』

愚問だ。

『どっちでもいいよ。ただ、原則的におっぱいが嫌いな男子はいないだろ』

嘘だ。本当は大好きだ。風呂上りの箒と遭遇したときはやばかった。アレは本当にやばかった。箒のブラを一本釣りしたときもやばかった。幼馴染の成長に内心大興奮した。
シャルが当ててきたときはそのまま理性の向こう側へ離陸しそうだった。

おっぱい、大好きです。

チラ見どころか、凝視する。ブラウスのボタンを一つ一つ、ゆっくり外していくその指の動きを。

(あ、暑いのか?セシリア……す、すごい寝相だな……ん?)

寝相にしては、ずいぶん正確にボタンを外していないだろうか……心なしか肩にかかる重さも弱くなっている、これは…

「せ、セシリア…………起きてるよな?」

流石にそう露骨に動かれると、起きてる事は嫌でも判るのか、それとも、確認なのか。一夏の声が聞こえて、セシリアはぎくりと体を一瞬強張らせる。
反応する事が実に起きてると回答しているようなものだけれど、さも『今起きましたわ!』と言わんばかりの仕草でもそりと寄りかかった体を離し、ぐっと背筋を伸ばすしぐさで欠伸をかみ殺す演技。

「――――ぁふ、一夏さんはまだ起きていましたの?」

461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 01:10:21.07 ID:kR1NWqSe0

現在時刻は23:15。離陸したのは21時前だったから、もう2時間くらいになる。
尚、この旅客機と座席チケットは英国の政府が用意してくれた。
完全な専用機では無いけれど、英国の政府関係者と、今回はIS学園の関係者や倉持技研の技術者が乗っているらしい。
フランスとドイツ、同じ欧州の強豪国を破っての3on3勝利はイギリスでもちょっとした話題になっているらしく、
ブルー・ティアーズの修理と帰省の日程の中にはあちらで取材を受ける予定も組まれているらしい。
一夏も先日箒と二人でモデルの真似事のようなことはしたし、鈴やセシリアがそういった仕事もしているとは聞いてはいたが、海外でとなると随分一気に話が大きくなった気もする。
とはいってもセシリアにとっては地元での話だから一夏のそれと大して際は無い。むしろ国家代表候補生でもないのにインタビューを受ける一夏と箒の方がよっぽどすごいのだが。

「ああ、あまり時間も掛からないみたいだしな、確か……ロンドン着が01時05分だから半分ってとこか」

一夏がチケットを取り出して着時刻を確認して笑いながらそう答えるが、一夏の言葉を聞いた直後から、セシリアは無表情になって無言で一夏をじっと見つめる。かるく目のハイライトが消えているような、錯覚だろうか?一夏が首を傾げる。

「一夏さん……イギリスと日本の時差はおよそ9時間になりますわ」

「なんだよ?時差くらい知ってるよ。でもそうか、今はサマータイムってやつなのか……じゃあ今は一時間を英語で言うと、ワンサマータイム、俺時間だな」

突然時差の話を始め、眉間に手を添えるセシリアを、一夏は軽く笑いながらそんな風に返す。


(――――……おかしい、今のは爆笑してもいいところなんだぜ!?セシリア!ワン、サマータイム、ワンサマー、ひと夏、一夏、俺。俺時間……完璧すぎる)、


(……どうしたんだ?セシリアが無表情になった、また目のハイライトが消えてる、俺知ってるぜ、それレイプ目って言うんだろ?でもどっちかといえば怖いよな。)


ちょっとしたドヤ顔でセシリアの反応を待つ一夏に、深い深い溜息の後、意を決したようにセシリアは笑いながら、片手を口に添え。やだもう一夏さんったら♪の仕草でゆっくりと、ハッキリと言う。

「…………う、うふふふっ……一夏さんったら♪ロンドンまでの 所 要 時 間 は、およそ 12 時 間 ほどでしてよ♪冗談がお上手ですのね」

「………えッ!?」

『冗談で言ってるんですのよね?』と問う事で『あたりまえじゃないかHAHAHA』と返すチャンスを与え、そんなキャッキャウフフな会話を楽しみたいという願望もあったが、彼のプライドを傷つけまいとしたセシリアの努力は、どう見ても本気で驚いている一夏のリアクションで無駄に終わった。

「……」


「……」


セシリアは笑顔のまま固まり、一夏は驚いた恰好のまま固まっている。
嫌な沈黙だ、ファーストクラスの居心地のいい空間が何とも言えない空間と化していた。



「ははっ、またまたぁ!セシリアは冗談がうまいな、一瞬本気で信じそうになったぜ!」


462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 01:17:15.40 ID:kR1NWqSe0


「この! エ キ サ イ テ ィ ン グ 大 馬 鹿 者 が!!!!」

空気に耐えきれなかったのか、マジで言ってるのか、笑いながらそう答える一夏の頭が、後ろの座席から伸びてきた腕に物凄い力で窓に叩き付けられた。
そのあまりの衝撃に一瞬機体が揺れる程の一撃だった。

「…………織斑ァ……いや、一夏ァ……発着時間の差に時差を足してみろ……」

窓は割れてはいないけれど、叩きつけたまま一夏の頭をがっしりとアイアンクローで掴む千冬の指に力が籠る。この人リンゴどころかヤシの実素手で潰すんだぜ!と言われても信じられそうだった。万力はまだ優しい、対方向からしか力がかからないからだ。
アイアンクローは痛い。辛い。

「GYAAAAAA!!!!」

「答えられないか?ンー?20時55分発01時05分着、およそでみれば25ひく21。で?4だな?それに時差を足したらどうなった?ンン??」

「割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる!!!!」

「13だな?実際の所要時間にだいぶ近くなったな?グリニッジ子午線に向かう時は足せ、逆は引き算だ、正確とは程遠いが大体の所要時間と覚えておけ。また、その誤差は両地点の緯度、経度などから算出される純粋な距離が大きくなるほど大きい。一般常識だ。貴様の馬鹿さ加減に流石の温厚な私も本気で呆れたぞ」

「せ、先生!それ以上は一夏さんが死んでしまいますわ!?」

セシリアが惨劇を止めようと一夏を締めあげている千冬の腕にすがりつく。
…………けれど。

「…………オルコットォ……貴様はなぜそんなに胸元を肌蹴ている?」

「はっ!」

千冬の目がセシリアを見据える。何事かと様子を見に来た乗務員が思わずヒッ!と声を上げてしまう程の鬼気迫る威圧感。

「ほほう、確かに今は非番扱いだ、教師の前で淫行を期待するなと言った言葉は無効かもしれんな……では言いなおそう……姉の目の前で淫行未遂か貴様らァ……ンー?」

「いえっ!こ、これは、眠っていたら暑くて!つい!!」

「…………そうか」

ふっと笑みを浮かべる千冬を見て、セシリアの心が一気に穏やかさを取り戻す、助かった、助かった、生きていられる!

「ところでオルコット」

「はい!」


「どれくらい期待していた?」

「うふふ……ちょっとだけ、ですわ♪ ―――――――― っは!!」


致命的なミスだった。


463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 02:45:58.36 ID:kR1NWqSe0


―――――― 一方その頃、日本


「何だと!?付き添いだと!?」

セシリアのベッドの上でジュースを飲みながらでラウラが教えてくれた内容は、本来なら即刻一夏のところへ殴り込みに行く内容だけれど、付き添いでいないとなれば、今頃は機中だろう。道理で今日の夕方見かけたときにはバタバタと慌しかったわけだ。

「な、なんで、どうして一夏がセシリアの付き添いでイギリスなのに私達は日本で留守番なのだ!?こういうときはセオリーとして私達も着いて行って、セシリアがどーしてこーなりますのーって展開だろう常識的に考えて!!」

「そうは言っても、もう行ってしまった以上は……我々に出来るのは、無事を願うことだけだ……」

「しかし……!」

箒は焦る。セシリアは今回実家にも寄ると言う。
一夏が一緒に行くかは知らなかったが、付き添いということはきっとそうなのだろう。

「これではまるで……まるで……」

「……アンタたちさー……」

ラウラと箒の会話を聞いていた鈴は、頬杖を着いたまま会話に割り込む。

「何がそんなに心配なわけ?」

「お前はどうしてそんなに落ち着いていられるんだ!鈴!」

「落ち着きなさいって、箒……今回の事ってセシリアも当日まで知らなかったのよ?空港まで見送りに行ったらカート引っ張って付き添いって現れたときはアタシもセシリアもそりゃぶったまげたもんよ」

「確かに私だって今ラウラに聞いたばかりだが……セシリアも知らなかったというのか!?」

「そ、セシリアはまったく準備をしていない。それに"あんな状態"で変なこと出来るわけ無いじゃん」

あんな状態とは、つい昨日のお仕置きという名の見せしめにされた事のこと、
あの状態でGOが出せるほどセシリアも暴走はしない筈だ。きっと、たぶん。

「しかし鈴!私は普段からあんな状態だぞ?」

ラウラがさらりと爆弾発言をし、部屋の中に沈黙が走る。
皆のリアクションの不思議そうに首を傾げるラウラは寝間着の着ぐるみをいそいそと脱ぎ始めた。

「見るか?」

「いや!ラウラ!いい、見せんでいいッ!!」

「……と、とにかく……何より、一夏だけじゃなくて……千冬さんも一緒よ?」

「……」

「……」

再び静寂。とっくに豪華なベッドに気持ちよさそうに眠ってしまったシャルの寝息だけが微かに聞こえる。

「なら平気だな」

「教官の姿も見えないと思ったら、そうかそうか」

箒もラウラも途端に穏やかな表情になる。
むしろ今心配なのは、強引な色仕掛けに走ったセシリアが無事かどうかの心配だけだ。



―――― 機中

「GYAAAAAAAAA…………」

「NOOOOOOOOOO……deathわ……」

高校生二人が頭を掴まれて吊り上げられる。

「少しは眼をつぶろうと気を利かせてやれば貴様ら……限度を知れ!限度を!!このまま到着まで仲良く寝ているがいいッ!!」


みしり、嫌な音がして、二人の体がダラリと弛緩した。


――――



468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:25:43.94 ID:J4gNwXVv0


――――



雲海を見下ろして、飛行機はイギリス首都ロンドンの西部、英国空軍のノーソルト空軍基地へと向かう。
あと4時間ほどもすれば目的地だろう。出発してからこれまで、窓の外は常に夜だ。当然といえば当然なのだが、こうも長く日を見ていないと、太陽が恋しくなる。
うすく鏡のように自身の姿を映す窓越しに見える雲の上の空は、何にも遮られない星空を見せてくれる。千冬はこの景色は好きだった。

「初めてISで飛んだときだったか、あれは……」

懐かしさに眼を細め、小さく笑っていると、寝かせて、ブランケットをかけておいた生徒の一人が眼を覚ましたようで、ブランケットがもぞもぞと動き、やがて金色の髪と青い眼をした少女が顔を出す。

「――っぷぁ……し、死ぬかと思いましたわ……」

「殺すか馬鹿者」

「お、織斑先生……!?  ずっと……起きていらしたんですか?」

アレからずっと起きていたのかと眉をハの字にセシリアが問うのを聞いて、千冬は肩を揺らしてクツクツと喉を鳴らした笑いを浮かべ、パチンと指を鳴らして客室乗務員にシャンパンとサイダーを頼む。

「別に畏まらんでいい。どこかの色狂いのおかげでな、おちおち眠れもせんよ」

「……も、申し訳ございません。面目ございませんわ……」

しゅんとなって謝るセシリアを見て、千冬の笑みは更に深くなる。


469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:36:15.04 ID:J4gNwXVv0


「いい、気にするな……まあ、そんなに気になるならオルコット……こっちへ来て酌の相手をしろ」

「は、はい……って、酌!?お、お酒ですの!?」

離陸した後から何か頼んでは飲んでいるのは気付いていたが、まさか酒とは思っていなかったのか、セシリアは大きな驚きの声をあげる。

「静かにしろ、一夏が起きる。それにしても、なんだ?私が酒で驚くか?……っくっくっく、お前も気付いていると思っていたぞ?」

「ぁ……っ」

一夏はまだ寝ているのだから起こしてはいけない、慌てて声を潜め、座席をするりと抜けると、早速とちびちびやっている千冬の隣へ移動する。

「……も、とは、一夏さんは気付いて居られたんですのね。さすが、ご姉弟です」

「単に、生活習慣から行動パターンまでお互いに知っているというだけだ。悪いところもな。ほら、お前も飲むといい」

ずいと千冬は、運ばれてきたグラスの一つをセシリアに差し出す。

「……えっ?い、いえ……その……よろしいのですか?」

「ぁん?別にいけないとは言っていないだろう。飲みたくないのならば無理にとは言わないが」

「いいえ!い、いただきます……って、先生……これ……サイダーではないですわ??」

意を決してぐいとグラスのものを飲んだセシリアは、思っていたものと違うと気付いて、千冬に向けて首を傾げる。

「当たり前だ、未成年に飲ますか馬鹿者……なんだ、酒のほうが飲みたいなどとは言うまいな?」

にやりと笑ったまま、窓から顔を離してセシリアの顔に近付け、からかう様に問う。
別に千冬自身、未成年のうちに酒をちょっと飲んだことくらいはあったし、ましてや相手はイギリス人。

イギリスでは未成年というくくりではなく、18歳になれば堂々と酒を嗜む事が出来る。
それだけでなく、家で食事中に大人と一緒にビール、サイダー、ワインを飲む事は5歳以上であれば良いとされている。
16歳、丁度セシリアの年齢であれば、パブでも大人と一緒に食事中ならビール、サイダー、ワインを嗜むことも出来るようになる歳だ。

ましてや、セシリアは会食の席やパーティへの出席も多い貴族の生まれ、当然のようにアルコールは経験済み。
それを知っている上での、千冬の悪戯だった。

サイダーといえば甘いノンアルコール炭酸飲料を想像しがちだが、イギリスとフランスではサイダーといえばリンゴ酒の名称。フランス語のシードルと言えば響きが違う為日本人でもリンゴ酒であることは判るが、日本では戦後炭酸飲料としてのサイダーが爆発的に普及している為、第二次世界大戦後以降はサイダーといえばそれをさす単語となってしまった。
イギリスでは前述の通り、サイダーは子供でも飲めるお酒として親しまれている。

「サイダー、そ、そっちのサイダーですのね……もう」

「はっはっはっは、怒るな怒るな。なんだ、お前さては結構飲むのか?」

イギリスのサイダーは、発泡性のあるリンゴ酒、実はフランスのシードルは発泡性がないもののほうが多い。
日本ではリンゴ酒は発泡性のものが売れており、ほぼ全てシードルと呼ばれている為、シードル=発泡性のリンゴ酒なんて認識の人もいる。

「そ、それは……私もオルコット家の一人娘として、嗜む程度には」

「嗜む程度だと?ふん、そういう事にしておいてやる」


470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:38:29.68 ID:J4gNwXVv0


そして千冬は、ぱちんと指を鳴らして客室乗務員を呼ぶと、流暢な英語でリンゴ酒のほうのサイダーを注文する。
甘く、発泡性のある飲み物であるサイダーは、セシリアにとって初めて飲んだお酒であり、実は好物でもあった。

「せ、先生……よろしいので……すか?」

「何、今は非番だ、先生はやめろ。もう日本国内ですらない。それに少々嬉しくてな……。ただし!寮では飲むなよ?」

何が嬉しいのか、千冬は問われないように最後に付け足す。
そんな気恥かしい事聞かれてはたまらない、相手は弟と同い年の小娘なのだから。

「の、飲みませんわ!」

実はセシリアは入学前、寮に入っても食堂でなら、先生もいるしいいのではないかと、お気に入りの銘柄のサイダーを持ち込もうとした事があった。
勿論入寮前に全てイギリスに送り返されたが。

千冬はやってきたグラスをセシリアに渡し、シャンパンのグラスを掲げる。

「では、いただきますわ……その……千……千冬……さん」

先生と呼ばなければ何と呼べと言うのか、千冬の意図はわからないけれど、
ぶっちゃけお義姉様と呼びたいくらいだが流石にそれを口走ると危険な気がして、精一杯の願いを込め、
千冬さん、と、呼ぶ。

「ああ……セシリア。乾杯だ」

それを受ける千冬の表情は、一瞬寂しそうなものに見えて、セシリアは戸惑うけれど、
すぐにその表情は満足げな物にかわって、オルコットではなくセシリアと名前を口にし、乾杯と言葉にした時にはとても優しい笑顔だった。


「乾杯。でも何に乾杯しますの?」


「目の前にいる馬鹿な生徒にでもしておくさ」


「では、わたくしも一夏さんの………………お姉様に」


二つのグラスが、小気味のいい音を周囲に響かせた。



471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:51:36.47 ID:J4gNwXVv0


――――――

ノーソルト空軍基地はロンドンの西の端に位置する英国軍の基地で、現在は英国のIS関連の拠点の一つとなっている。
セシリアはIS学園のいつもの制服に着替え、一夏や千冬とは一旦別れ、メディアの前に降りてそのままホテルに向かう段取りになっている。

流石に現在どこの国にも所属していない唯一の男性IS操縦者である一夏を堂々とその付き添いとして出すのは国際問題に発展する。
特に先日の3on3では、国家所属無しの二人が一応のチームリーダーとされていたが、実質英中vs仏独の4国家の戦闘ともいえた。
その結果、コンビネーションと数多くの偶然もあったろうけれど、2対0で英中の勝利となった。

敗北した仏独としては次のモンド・グロッソは勿論のこと、その他の面でも英中二国にはより負けたくない。
その状況でまたイギリスが欧州を刺激するような事があれば……それは戦争にすらなりかねない。

「では一夏さん、千冬さん、また後ほど」

「うむ、セシリア、堂々と胸を張って行って来い」

「はい!」

千冬と一夏に見送られ、セシリアは昇降タラップの方へと移動する。
外でこの深夜と言うのに待機していた報道の焚くフラッシュが大量に瞬いて、その中を美しい金髪をなびかせ、セシリアが悠然と歩く。窓からその光景を見る一夏には、まるでセシリアが別の世界の人間の様な気がして、少しだけ、心がさざめいた。

「立派なものだな、セシリアは……それに比べてお前と着たら……」

隣で千冬が口元に笑みを浮かべてその姿を見ている。
何でか判らないけれど、それもほんの少し一夏に些細な影を落とす。

「……あぁ…………」

「ふん、浮かない顔をしおって……セシリアが他の男に愛想を振りまくのは嫌か?」

「な、違ッ……!第一俺とセシリアはそんなんじゃないし」

千冬の言葉に、一夏は慌てて否定する。その否定が、完全否定で無い事は千冬には手に取るように分かる。
これは行く前と全く同じだ、何も進展していないし、そんなんじゃないと言い切れる踏ん切りもついていない。

「……貴様、さっきまであれだけの時間二人きりにしてやったというのに…………」

「二人っきりッて!?千冬姉ずっといたよね!?むしろ俺はほとんど寝てたんだけど!?」

今回の付き添い、千冬は正式に付き添いとして、学園の仕事があってイギリスに訪れている。
それに一夏が突然連れてこられたのは勿論理由がある。
一つは、千冬が付き添いに行っている間、篠ノ之、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識姉妹、これらの一夏に対する暴走を止めるのが山田だけになってしまう。むしろアレも暴走しかねない。その予防としての教師としての理由。
もう一つは、姉として、現時点で最もオススメ物件であるところのセシリア・オルコットと二人で過ごさせ、仲を進展させたいという理由。なんならキメてしまえるものならそれでも構わない。日本残留組の思惑と違い、今回は千冬が危険な起爆剤と言う状況だった。

そんな好条件の結果としては、初日からいきなりアクセル全開でトバシ過ぎなセシリアといつも以上にいいところでズレる弟に千冬はアイアンクローを決め、セシリアとの仲を進展させたのはむしろ一緒に飲んだ自分という事になってしまった。


472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:57:55.14 ID:J4gNwXVv0


――――――

ノーソルト空軍基地はロンドンの西の端に位置する英国軍の基地で、現在は英国のIS関連の拠点の一つとなっている。
セシリアはIS学園のいつもの制服に着替え、一夏や千冬とは一旦別れ、メディアの前に降りてそのままホテルに向かう段取りになっている。

流石に現在どこの国にも所属していない唯一の男性IS操縦者である一夏を堂々とその付き添いとして出すのは国際問題に発展する。
特に先日の3on3では、国家所属無しの二人が一応のチームリーダーとされていたが、実質英中vs仏独の4国家の戦闘ともいえた。
その結果、コンビネーションと数多くの偶然もあったろうけれど、2対0で英中の勝利となった。

敗北した仏独としては次のモンド・グロッソは勿論のこと、その他の面でも英中二国にはより負けたくない。
その状況でまたイギリスが欧州を刺激するような事があれば……それは戦争にすらなりかねない。

「では一夏さん、千冬さん、また後ほど」

「うむ、セシリア、堂々と胸を張って行って来い」

「はい!」

千冬と一夏に見送られ、セシリアは昇降タラップの方へと移動する。
外でこの深夜と言うのに待機していた報道の焚くフラッシュが大量に瞬いて、その中を美しい金髪をなびかせ、セシリアが悠然と歩く。窓からその光景を見る一夏には、まるでセシリアが別の世界の人間の様な気がして、少しだけ、心がさざめいた。

「立派なものだな、セシリアは……それに比べてお前と着たら……」

隣で千冬が口元に笑みを浮かべてその姿を見ている。
何でか判らないけれど、それもほんの少し一夏に些細な影を落とす。

「……あぁ…………」

「ふん、浮かない顔をしおって……セシリアが他の男に愛想を振りまくのは嫌か?」

「な、違ッ……!第一俺とセシリアはそんなんじゃないし」

千冬の言葉に、一夏は慌てて否定する。その否定が、完全否定で無い事は千冬には手に取るように分かる。
これは行く前と全く同じだ、何も進展していないし、そんなんじゃないと言い切れる踏ん切りもついていない。

「……貴様、さっきまであれだけの時間二人きりにしてやったというのに…………」

「二人っきりッて!?千冬姉ずっといたよね!?むしろ俺はほとんど寝てたんだけど!?」

今回の付き添い、千冬は正式に付き添いとして、学園の仕事があってイギリスに訪れている。
それに一夏が突然連れてこられたのは勿論理由がある。
一つは、千冬が付き添いに行っている間、篠ノ之、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識姉妹、これらの一夏に対する暴走を止めるのが山田だけになってしまう。むしろアレも暴走しかねない。その予防としての教師としての理由。
もう一つは、姉として、現時点で最もオススメ物件であるところのセシリア・オルコットと二人で過ごさせ、仲を進展させたいという理由。なんならキメてしまえるものならそれでも構わない。日本残留組の思惑と違い、今回は千冬が危険な起爆剤と言う状況だった。

そんな好条件の結果としては、初日からいきなりアクセル全開でトバシ過ぎなセシリアといつも以上にいいところでズレる弟に千冬はアイアンクローを決め、セシリアとの仲を進展させたのはむしろ一緒に飲んだ自分という事になってしまった。



475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:14:05.79 ID:J4gNwXVv0



「……ハァ……全くお前達はどうしてこう……では、お前とセシリアはどんなのだというのだ、話してみろ」

「い、いや!そこは、話してみろって言われたって……ただ千冬姉、セシリアの事セシリアって呼ぶようになったんだなって……それが気になって」

千冬が珍しく目を丸くして一夏を見ている。まじまじと、気恥かしそうにそう言う一夏の目を覗き込み、それから声を上げて笑った。

「なんだお前!それで?私がセシリアに取られて寂しいとか、そう言う事か?あははは、ははははは」

こんなに声を上げて笑うのはいつ以来だろう。
弟というものがシスコンになるのは当たり前だと思っているし、実際にうちの弟は重症だ。
小さなころからずっと後ろをついてきたし、自ら姉の為にと料理の腕を磨き、家事もこなす。
自慢の弟だ、どこに出しても恥ずかしくはない、まだまだ出す気もないが。

(私はブラコンでは無い。一夏がシスコンすぎるのだ)

「まったくバカ者め、心配せんでも未来永劫私の弟はお前一人だ。さっさとホテルに行くぞ。たまにはマッサージさせてやろう」

「……は?何言ってるんだよ千冬姉、逆だよ……セシリアも千冬さんとか呼んでるし、俺が寝てる間にセシリアと何があったんだよ……!?」

「…………ほぅ、心配なのはセシリアの方か」」

「…………い、いや……今のは……ちょっとした言葉のあやと言うか、も、もちろん千冬姉の事だって心配してたんだぜ?」

真っ青になって否定する一夏に、千冬は冷たい視線を投げる。

「嘘なら殴る。が、今なら許してやるかもしれ「すいませんでしたッ!!!千冬姉のことは全く心配してませんでしたーッ!」

ゴン、と重い音が響いて、一夏は再び意識を手放した。


476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:15:27.53 ID:J4gNwXVv0

            _
     _     ,'===ヽヽ
  M,'´  ミM,   l从从リリ) <さっきの出番じゃなかったらしいわよ、セシリア。
  Σ& 从ノ、>X  .リ゚д゚ リ (    <さすがですわ、二組。
  ノl|ヾリ゚д゚ノl.l  ξ/>ξ、.リヽ<今日はここまで?
 ノ从 /l-Hiト从_ /  | .|ィ从)   <まだ安価がありますわよ?
   /./ |_|/ ̄ノlヽ ̄ ̄/.|ξξ
___(ニl⊃/  .( ( )  ./m|____
    \/ <`ー'> /

477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:21:16.24 ID:J4gNwXVv0

安価

1.バカップルのターンはまだ終わりじゃないぜ。

2.いつもの急展開希望。

>>478



478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2011/07/07(木) 01:23:52.13 ID:GeQ1smY+o

1



479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:32:27.28 ID:J4gNwXVv0

早いですね。安価は

1.バカップルのターンはまだ終わりじゃないぜ。 に決定しました。

480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:34:15.79 ID:J4gNwXVv0


数十分後、一夏を荷物とまとめてカートで引き摺る千冬が入国手続きを終え、
今夜の宿泊先である外見からして立派なホテルに到着した、千冬の給与はかなり高い、何しろ元世界一だ。
その給与にして丸一月分を一日でとる部屋、いわばスイート。

さらさらと署名して、意識のない一夏をそこに放り込むのは実にイージーなミッションだった。

「あとは、セシリアが帰るのを待つばかりか……ふっふっふ……フゥーハハハハハ!!!」


                      とぅーびーこんてぃにゅーど!



486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 00:58:12.26 ID:zM2r5eXa0


「……ふう、深夜だと言うのに皆様お元気ですこと」


白いリムジンの座席で、歓迎の嵐を抜けて一息吐きつつ呟く。
こういう歓迎ムードは決して嫌いではないけれど、実に12時間ぶりに降りた地上ではやはり疲れもたまる。
出来る事なら、早く実家に帰って寛ぎたい所だが今回はそうもいかない。

ブルー・ティアーズは無事だろうか。
強烈な体当たりを受けてブルーティアーズは見た目以上に深刻なダメージを負っていた。
満足に飛行もできない状態になっていたのに、その状態でシャルロット、ラウラとの激戦を繰り広げたパートナー。
深刻なダメージを負ったまま無理を重ねた事で後遺症のように障害が残ってしまう事もある。
体当たりをしたのが一夏というのも、無理をさせたのも自分の為複雑な気分だが、心配は当然だ。

「お嬢様」

チェルシーの声が目的地への到着を教え、車が停まり、ドアが外からゆっくりと開かれる。
するりと開けられたドアから降車しながら、セシリアは先に下りて控えている専属メイドで幼馴染のチェルシーに笑いかける。

「オルコットの家には明日の夕方ごろに戻ります。迎えはそのようにお願いしますわ」

「かしこまりました……ではお荷物は私どもが織斑千冬様に確認をしてお部屋にお運びいたします。……それと、お嬢様」

「なんですの?」

「流石に黒のシースルーは織斑様もドン引きかと思われます」

「――」

「以前申し上げましたが、派手すぎる下着は却って逆効果です。しかも前回より悪化しておられます。完全に逆効果どころでは済まないかと……。是非織斑様にお会いになられる前にお召し換えを」

「あ、あの、これは――」

「では、これで……」

セシリアが言い訳のように何かを言おうとする前に、チェルシーは恭しく一礼を残して他のメイドと共にホテルへと荷物を運び込んでゆく。
なぜ今着けている物を彼女が把握しているのかは判らないけれど、セシリアは恥ずかしさに顔を真っ赤に染めてホテルの入り口前で震えていた。


488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 03:15:04.07 ID:zM2r5eXa0


――――


「ま、まったく、どうして知ってますの……!?」

使用人たちと別れたセシリアはホテルの廊下を少し早足で歩く。
わざわざ一度着替えた為、思ったよりもアレから時間は経ってしまっている。

化粧室へ駆け込み。勝負も勝負、決戦下着を素早く脱ぎ、着替え自体はさっさと終わったのだが、
一つがそうだと、今度は他のものが気になってくる。具体的には服の乱れや髪の乱れ、化粧が気になる。

入念なチェックをしている最中に、あまりの遅さに心配したチェルシーから電話を受けて、もう午前三時になると聞いて慌てて化粧室を出てきたところだ。

「…………」

どうせ千冬もいるのだし、二人きりというわけには勿論行かない。
それでも、心臓は激しいビートを刻み、一夏との一時間少々ぶりの再会を、体が待ち焦がれている。

目的の部屋、このホテルのスイート・ルームの前にやってくると、心臓は更に鼓動を強くし、手が震えてしまうかのような錯覚さえ覚える。
喉がひどく渇く、サイダーが飲みたい。今すぐ一夏に会いたい、一夏、一夏さん、私は、あなたの事が…………。

扉はスムーズに大した音もなく開き、薄暗い室内が眼に入る。

「……ただいま戻りましたわ?……一夏さん?……千冬さん?」

反応はない、もしかして部屋を間違えたんじゃないかと周囲を見回せば、チェルシーに任せた自分のスーツケースを見つけた。近くには一夏のスーツケースも見える。
ここで部屋は間違いない……しかし、千冬と一夏の姿は見えない。どうしたのだろう、
それとも……二人はもう眠ってしまったのだろうか?

ベッドに近付くにつれ、そこに誰かが横になっているのが眼に入った、ほっとしてセシリアはそこへ近付いていき……

「……」

そこには一夏が無防備な寝姿を晒していた。

「…………一夏さん……」

周囲の様子を伺う、いつものパターンだとこの辺りで千冬がやって来ている筈だ。
そして暴走した自分は鉄拳によって意識を失う、そのパターンの筈だ。
きょろきょろと周囲を見回しながら、そろそろと一夏の体にかかるシーツをめくり、するりと体をそこに滑り込ませ、そろっとめくりあげたシーツを自分と一夏にかける。

(そそそそそそ、添い寝成功ですわァァァァァァァァ!!!!)

心中では一つの山を踏破したかのイメージで雄叫びを上げる。


489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 03:15:46.05 ID:zM2r5eXa0



「う……ん……」

「えっ!ちょっ!?」


一夏が小さく呻きながら寝返りを打ち、シーツを手繰ってゆく。
背中を向けられてしまったセシリアは体の半分がシーツから出てしまった。

「……い、一夏さん……っ!ひ、ひどいですわ」

ぐいぐいとシーツを引っ張るけれど、
一夏は思ったよりも確りとシーツを掴んでしまっており、軽く引いたくらいではびくともしない。

「……はっ!?」

一瞬、セシリアは視線を感じて部屋を見回す。暗い部屋は、しんと静まり返っており、自分たち以外に気配はない。

「…………き、気のせい……ですの? いえ、それよりも……」

この如何ともしがたい現状を打破しないと。
とりあえず……IS学園の制服のままというのは色気がない。

セシリア・オルコットは勝負に出た。
制服を脱ぐ。丁寧に脱いだ制服を畳み、下着姿になって背中を向けている一夏の背中に寄り添おうと再びベッドの上に上がる。

(密着してしまえば……こちらのもの……ッ)

ぎゅっと眼を閉じながら、一夏の背に後ろから体を添える。これは添い寝よりも難易度が高い筈だ。
このまま眠ってしまえば、起きた一夏はこの状況に何を思うだろう。明日自分を起こすのはどんな状況だろう


(し……幸せですわ……)


492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 04:46:25.73 ID:zM2r5eXa0


一夏の背にぴったりと体を沿え、体を覆うべきシーツは無くて、心なしか背中は寒い。
でも、早鐘を打つ心臓のせいでむしろ体感温度は暑い。
自身の心音さえ聞こえてきそうな静寂の中で、早く眠ってしまおうと思っても眠れやしない。
一夏の背中から伝わる彼の呼吸のリズム、響く彼の心音。

(や、やはり地味ではないかしら……笑われないかしら……はしたないと思われる……?でも、でもわたくしは……わたくしは……)

背伸びしたそれから、いつものお気に入りでもある、シルクの白い上下に着替えたセシリアは、不安そうに眉尻を下げる。
もうここまできたら後戻りはできない。
あとは天の采配と一夏の判断に全て委ねる。

(…………鈴さん……祝福してくださるかしら)

自分の心が、セシリアにはわからなかった。
なぜ?ここで?どうして鈴の顔が浮かぶのだろう。同じ男性を好きになった、中国からの(二組への)転入生。
一夏のセカンド幼馴染で、中国の国家代表候補生。
IS学園で出会った、対等な、親友と呼べる少女。


きゅっと一夏の服の背を白い指が掴みながら。涙が、勝手にぽろぽろとこぼれた。

(どうして、わたくし……涙なんか…………)



497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:39:36.82 ID:zM2r5eXa0



「……せ、セシリア…………」

突然かけられた一夏の声に、びくっと全身が震える。
起こしてしまった。
応え様にも、声が擦れてうまく喋れない、本当にもう後戻りはできない。
セシリアだってまったく知識がないわけは勿論ないし、一夏とそうなることは望んでいる。
男の矜持、強い意志、家族の為に、仲間の為に、滾る魂を持ち、どこまでも真剣な。

自分の全てを委ねて甘えることができる男性。


「…………泣いて……るのか?」

「……ま……せんわ」

泣いてませんわ、そう言おうとした唇は、うまく言葉を紡ぐことができなくて。


「…………」


長い沈黙のなか、さめざめと嗚咽を漏らすセシリアの息遣いだけがスイートルームに響く。

「……その……セシリア。泣かないでくれないか」

「泣いて……なんか……ッ……そんな……言い方」

ぼす、と片手を握り、一夏の背中を叩く。
好きで泣いているわけではない、自分でも涙のワケがわからない。

「俺は…………俺は誰にも泣いて欲しくない、誰にも涙なんか似会わない……特に……セシリアには泣いて欲しくない。……言ったろ?セシリアには笑ってる顔が一番似合う。」

一夏の声が、セシリアの耳に届く、でも、涙は止まらず。とめどなく溢れてはシーツを濡らす。
このまま背中に寄り添い、セシリアが涙を流し続けるのが耐え切れず、一夏は無理矢理にセシリアのほうを向こうとするけれど。

「此方を……向かないでくださいまし……っ!」

「うわっ……っと、判ったよ……」

セシリアが、そうさせないよう、背中から一夏の胴に腕を回してしがみつく。
密着した体がセシリアの体の感触を一夏の背に伝えるものだから、一夏はその感触に心臓が飛び出るくらいに驚いて。
以前にシャルロットが湯船の中で体を押し付けてきたこともあったけれど、その時以上に、鼓動は早くなっていた。

「…………で、でもセシリア……」

「泣き顔なんて、もう見られたくありませんの。一夏さんには、わたくしの一番をいつも見ていて欲しいから。だから、このままで」

彼が笑顔を望むなら、涙はもう見せちゃいけない。
彼の包容力が、甘えさせてくれる強さが好きならば、甘えてはいけない。
セシリア・オルコットとして、彼の傍で咲き続けなければ、パートナーとはいえない。
それは、鈴もそう。
思えば、いつも鈴に頼っていた。
辛いときも、何も言わずにただ、欲しい言葉をくれた。ずっと一緒だと、そう言ってくれた、それを失いたくなくて泣いた。
もし、今夜文字通り身も心も一夏のものになったのなら……それを知った鈴が悲しむことを想像して涙を流した。
鈴が自分から離れて行ってしまうかも知れない。


498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:47:15.64 ID:necomimi

でもそれは違う。間違っている。

「わたくし、間違っていましたわ」

まだ、その声は震えている。それを感じて、一夏は体に回されたセシリアの手に自分の手を添えた。

「セシリア……」

「わたくしは……わたくしとして……鈴の傍にも居続けますわ。例え、どんな事があっても……だから……」


何かセシリアが小声で紡いだその先の言葉は、一夏の耳には届いていなかった。
えっ?と間抜けな声で聞き返してしまいそうになるのを必死で抑える。聞き返したいのは聞こえなかった言葉ではない、鈴のことだ。
重ねた白い手は、すべすべで、背中に感じる大きな二つの柔らかさは、眼を向けずとも少なくとも制服は着ていないことは判る。
弾に言ったら確実に首は絞められるであろう状況。数馬に言ったらそれどこのメーカーの新作?と聞かれそうな状況。
16歳の誕生日を過ぎ、10代も半分を過ぎていわゆるハイティーンになった、

自覚は最近までなかったが、セシリアが自分を好きでいてくれていると思っていた。
それが正直嬉しかったし、セシリアの事ははっきり言ってしまえば好きだ。これってひょっとして両思いなんじゃないだろうかなんて思うと、自然と心が弾んだ。ひょっとしたらこの旅行でという淡い期待もあった。




499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:48:01.24 ID:zM2r5eXa0




(……り、鈴……?え?鈴???セシリアが好きなのは…………鈴……!?)

カタカタと奥歯が鳴る、一夏は、自分がとんだ勘違いというやつをしていたのではないか。
そう考えると、心が軋む音を立てる。期待という城に無数の亀裂が走る。

(セシリアは鈴が好きで、流されそうになっていた自分に泣いていたのか!?う、うそだろ……だから、間違ってるって!?だから、こっちを向くなって!?それって……それってつまり……俺は……?)

弾と数馬が二人でプギャーと指を差して笑う姿が脳裏に浮かぶ。
3on3の戦場で言えなかった時は、後から考えればあんなところで言うのもおかしいと思った。
飛行機で起きてるかの確認をしたときには、眠ってるセシリアに向ける独り言ということで言ってしまうべきだったんじゃないかと後悔した。

言っておけばよかった、気持ちを伝えて置けばよかった。
そうしたら、振り向くな何ていわれずに、そのまま大人の階段を駆け上っていたかもしれない。

(な、なんだよ……なんだよ俺……告白もする前に…………ふられたのか……?俺 ……なんだよこれ……こんなに辛いのかよ……!?)

この程度の肩透かし、今まで自分がしてきた事とは知らず、
そして、セシリアの言葉が、鈴の傍に も であったことにも、その意味にも気付かず。


一夏は初めての失恋をした。


504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/09(土) 23:42:21.12 ID:FbjyHVG40



「―――ちかさん?一夏さん……?」


 心配そうなセシリアの声で、現実に引き戻される。

(……やめてくれ)

 セシリアの声は優しくて、とても安らいでしまう。その対象が自分であっても、セシリアの優しさは隔てなく与えられる。それがとても、とても嬉しくて。好きになったのがセシリアで良かった、そう思えた。

 そして、とても惨めで。


 いっそ、欲望の赴くままにセシリアを、その体を自分のものにしてしまおうか。男にはその力と能力がある。男の寝床に滑り込んできたのはセシリアだ、泣いても喚いても……
 セシリアを自分のものにしてしまいたい、自分の女にしてしまいたい。

(たとえ……セシリアの思い人が鈴でも?)

 ぐっと、セシリアの手を握る腕に力が入る。

「い、痛いですわ……一夏さん……?」

 セシリアの声色が体の柔らかさが、脳を痺れさせる。そして何かが、一夏の中で弾けた。

―――― この女が欲しい。

「せ……セシリアッ!!」

 突如、強引にセシリアの抱擁を解いた一夏の顔が眼前に迫る、体勢を入れ替えさせられた。組伏せられて下着姿を晒すことになったセシリアは、真っ赤に頬を染めて、それから。惑う声を上げる。

「……えっ……い、一夏さん……!?」

「セシリア……俺ッ!!俺は!!!」

 セシリアは一夏の眼が、初めて怖いと感じた。覚悟はしていた、けれど、それが真実となるとそれはまた別の話で……一夏の手が下着に伸びる。

 そこに愛情は無い。

「い……いや……一夏……さん」

「セシリア……畜生……ちくしょう……セシリアぁぁああ!!」

「…………ぁ」

 強引に抑えつけられ、下着を引き剥がされんとしている恐怖に体が震える。でも、それでも尚愛しい人。乱暴に、欲望のまま花を摘もうとする一夏の声に、悔しさの色を感じたセシリアは、これが一夏の本意ではない事を悟る。

(一夏さん……苦しいの……ですのね)

 だから……セシリアは受け入れる事にした。そこに愛情が無くても構わない、自分を見ていなくたって構わない。そんな事で揺らぎはしない。一夏が苦しむなんて、その方がよっぽど嫌だ。抵抗の力を弱めたセシリアの腕は、スイートルームの柔らかなベッドの上に抑えつけられ、肩ひもが背中に一瞬食い込んで、ブチっという音と共に解放感が胸元に訪れる。

(お気に入り、でしたのに)



505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:05:27.01 ID:t1RbcGVx0



 視界の隅へ、白いそれが放り捨てられて落ちていく。金具が弾け飛び、ワイヤーもひしゃげていた。スローモーションのようにそんな光景を見てから、もう着れないなんて思いながら、最後に残った恐怖を硬く目を閉じて押し込めると。ゆっくりと目を開き、一夏に微笑みかける。戸惑いの中に獣の本能が覗く一夏の瞳を見つめるセシリアの目の前で、どこに隠れていたのか、突然現れたフリース姿の千冬のストレートが一夏の顔面にめり込んだ。

「ぶふあ!?」

「!?」


「そこまでだこの……大馬鹿者!!!!」


 先程感じた視線の気配は間違いではなかった。吹っ飛んだ一夏に馬乗りになって追い討ちを決めている千冬を見て、シーツで体を隠しながらセシリアはそう実感するのであった。

(あれ?これって……次はわたくしの番ではございませんの?)

 上下フリース姿の鬼神がゆらりと立ちあがる。倒れ伏した一夏はピクリとも動かない。否、恐らくはもう、動けない。千冬は、途中で壊れてしまったブラを拾い上げながらゆっくりと近づいてくる。

 パン、と、渇いた音が室内に響いた。

「――――…………粗末にするな!馬鹿者……ッ」

 顔以外への拳も覚悟していたセシリアには、意外な一撃。頬への掌打、ビンタ一発。そして、体が大人の女性に抱き締められる。7つ以上は年上だ、正確な年齢差は聞いていないが、一夏の持っているアルバムの一番小さい頃の写真では既に中学のものと思われる制服姿の千冬が写っていたと鈴に聞いた事がある。鈴も正確な年齢は確認していないらしい。そりゃ命は惜しい。それはさておき。

「怖かったろうに……お前は……どこまで……どこまで……ッ」

 こんなものは、もう暴行と変わらない。まさか、弟がそんな行動に出るなど俄かには信じられなかった。そして、そんな弟の暴走さえ受け入れてしまうほどセシリアが弟を想っているとは、思っていなかった。自分の判断ミスを千冬は深く悔やんだ、この夜の出来事が、二人の心に深い傷を残してしまうんじゃないかと思うと、情けなくて涙が出そうになる。

「怖くなんて……わたくしは……」

 怖くなんかない、怖くなんかないと言い聞かせた心の蓋から溢れたものが、体を震わせる。それでも、セシリアは決して泣く事は無かった。だから千冬も、泣いてはいけないと、強く唇をかみしめ、セシリアが疲れから眠りにつくまで、ずっと背中を撫で続けるのであった。



506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:12:08.86 ID:t1RbcGVx0



――――――




「い、一夏さん?大丈夫……ですか?」

 翌日、ISの研究施設へ三人で赴いた後、セシリアのブルー・ティアーズは無事、セシリアの元に帰ってきた。青い守護騎士は今はイヤカフスの形態でセシリアの耳元で輝いている。キャノンボール・ファストでの大破からそう日を空けていないうちに、ここまで深刻なダメージを負ったことに、セシリアは結構担当官に絞られたようだが、BT偏向制御射撃【フレキシブル】をフル活用しての実戦データは、セシリア・オルコットにブルー・ティアーズが与えられた事に間違いがなかったことを確信させるに至った。
 フィードバック機であるサイレント・ゼフィルスをテロリストに強奪されるという失態で一時はBT計画が凍結される恐れもあった。しかも現在サイレント・ゼフィルスは各国の研究機関を襲撃し、ISの強奪を次々に行っているという。奇しくも、望まざる状況ではあったにせよ、イギリスのIS開発技術の高さとBT兵器の優秀さを大々的に世界各国へ知らしめる事になっていたが、同時に、サイレント・ゼフィルスが"活躍"すればするほど、本来の成果を生み出せないままのブルー・ティアーズの存在を疑問視する声も多く出始め、BT研究機関の首は絞まってゆく。今回のセシリアの成果は自身の、そしてBT兵器計画の生命線を繋いだと言えた。

 そこで今後、本来ならばサイレント・ゼフィルスで行われる筈だった実験の一部もセシリアとブルー・ティアーズが行うようになる。単純に言えば、ブルー・ティアーズが運用するBT兵器が更に増設されるという。相変わらず実弾兵装は腰部ミサイルしかないが、それも改良された。その吉報を、施設の屋上でようやく見つけた一夏に嬉しそうに話すセシリアだったが……

「……あ、ああ」

 今日の一夏は覇気がない。無理もない、昨夜、よりにもよって一夏はクラスメイトに、想いを寄せる相手に暴行を加える所だったのだから。結局あの後、一夏は強制的にシャットダウンさせられたまま目を覚まさず、セシリアが目を覚ました時には千冬共々既に出発した後だった。
 セシリアにとっても、昨夜は想いを寄せる相手に、その想いを受け止められるのではなく、ただ欲望のままに純潔を散らされる所だった。初めて見る一夏のそんな一面に、恐怖さえ抱いた。もしかしたら、想いが絡み合うかもしれなかった一夜だっただけに今にして思えば残念という感情もある。

(でも……全くの無駄ではございませんでしたわ)

 昨夜の一件は、自身の気持ちを、本当の意味で明確にしてくれた。今なら鈴にだって、本当の意味で堂々と言える、一夏と結ばれたい。一夏を、愛している。その為なら、何も怖くない。

(きっと、一夏さんも……)

「……セシリア……」

 一夏が、重い口を開く。目線はセシリアの瞳を見ようとしては彷徨い、そこには悔恨の色が濃く浮かんでいる事に気付いて、淡い期待をよせていた一夏の心が自分とは違う事を感じ、セシリアの心にもその影が暗くかかる。


507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:23:08.63 ID:t1RbcGVx0

「セシリア……ごめん……な。謝って済むような事じゃないのは、判ってる。だけど……」

「……あ、謝らないで…………くださいまし……」

(そうですわよね、そんな都合のいい事ありませんもの……)


「すまない……一時の感情で……あんな事……」

 想い人に全てを捧げる時を、覚悟を、その行為を。恋人同士が行き着く終着点、Make Love. 愛の交わり。未遂に終わったけれど、確かに一夏との間に生まれたと思っていた絆。それを一夏の口から改めて否定される、謝罪される。

「――――ッ……」

 謝罪するという事は、昨夜の一夏がオスとしての欲望をぶつけようとしただけという事を意味している。セシリアもそれを判っていた。それは告白でも、想いを受け入れてくれた事でもない。だとしても、その欲望さえもセシリアは受け入れようとした。それで一夏が満たされるならそれでも良かった。
 それが、間違いだという事は、セシリア自身がよく判っている。それが"既成事実"という卑怯な方法に繋がる事も自覚している。きっと、あのまま"既成事実"が作られてしまっていたなら、否応なしに形式上の恋人となり、結果として両者の心にどうしようもない程に深い罪悪感を残して想いは受け入れられたのだろう。

 否定よりも、謝罪よりも、一夏の謝罪はその事をセシリアに突き付けている気がして、それがとにかくつらかった。

 今自分はとても醜い顔をしている筈だ、セシリアは一夏にそれを見られたくなくて顔を背ける。考えても見ればそれは昨夜の時点では当然だ、セシリアと一夏はそもそもまだ恋人同士ですらない。セシリアは一夏を愛しているけれど、一夏がどう思っているのかの確認をセシリアはしていない。だからこそ、一夏の中に自分という存在を焼き付けたかった。この期に及んでかもしれないけれど、告白は、最後の意思表示は一夏にして欲しい。一夏がそういうことに鈍感なのも判っているし、あえて無意識に避けようとしているフシさえある事もセシリアは承知している。

 だから最後の決断を一夏がする事に意味があるし、そうであってはじめてこちらの想いを受け入れてくれたという事になる。

(……謝るのは、卑怯なわたくしの方ですのに)

 きっと千冬は、全て判っていたのだろう。だからこそ、二人が罪悪感を抱く事になる結果は、殴ってでも阻止したかった。結果として罪悪感は小さなもので済んだのかもしれない。一夏は、一時の感情に溺れそうになった事。セシリアは、それを利用しようとしてしまった事。

「わかりましたわ、ですから……」

「……すまない、もう……できる限り、近づかないようにした方がいいなら、そうするから……」

「そっ……! それは絶対ダメですわ!?」


508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:36:39.32 ID:t1RbcGVx0



「……え、ダメって……」

(ダメとかそういう事なのか?それ以前に、離れるなって事は……近くで、苦しめって事なのか……?許してもらえるわけ……ないよな……見ちゃったもんな、おっぱい)

 どうしたらいいのか、今日、姉に起こされてから一夏は一夏で本気で考えていた、こんなに異性の事を考えるのは初めてかもしれない。異性という括りを考え、一夏はそれを否定する。異性では無い、セシリアだと。彼女の為に何が最も良いのか。セシリアは鈴が好き、ならば、未練を捨てて二人を応援するべきか。鈴はたぶん弾が好き、ならば弾を誰かとくっつけてしまう手伝いをするべきではないか、姉とか。

 何れにしても、自分はセシリアの傍にいてはいけない、昨夜の事を思い出させてしまう事は、セシリアの笑顔を曇らせてしまう筈だから。好きだから、離れる事が正解なんだ、おっぱいは思い出の中に永遠に。そう思っていた。

「ダメったらダメですわ!! 近付かないなんて絶対に許しませんわ!!」

 結果として、物凄い剣幕で怒られてしまっている。

「……居ても……いいのか……?」

「居なければ……絶対に……許しませんわ……わたくしは……わたくしは……一夏さんを……」

 そう言いながら、セシリアの体が、一夏の胸元にそっと飛び込んでくる。一夏の胸元に手を添え、西日を背に受けたセシリアの金髪が、一夏の目の前にで風に泳ぐ。何も言葉は無く、二人は互いの目を見つめ…………。




「―――― 茶 番 だ ね 。 反 吐 が 出 る 。 」



 スターブレイカー≪星を砕く者≫のレーザーが、二人めがけて上空から降り注いだ。



                To Be Continued...



515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 01:52:03.45 ID:ZBLQCw1f0



 始めに気付いたのは、一夏だった。

「お前は!エム……ッ!!」

 もう白式の展開は間に合いそうもない。このまま生身で、あの高出力BTライフルの直撃を受けたら……。考えるより先に、体が動いた。この場で最優先すべき事は、セシリアを、セシリアだけでも安全な所に……一夏はセシリアの体を抱きしめ、跳ぶ。どこまで避けられるか判らない。でも、セシリアに傷一つ負わせてたまるものか。 すぐ後ろで、施設の屋上に着弾の気配と熱量、そして衝撃がセシリアを庇った体を駆け巡った。


――――


「……っ!何だ、今の衝撃は!」

 千冬は、本来己がそう問う権利はないイギリスのIS機関オペレーターに向かってそう問いかける。緊急事態に国籍など関係ない。オペレーターは手早くキーボードを叩き、襲撃者の特定を急ぐが……その襲撃者は、すぐに特定できた。サイレント・ゼフィルス。

「しゅ……襲撃です!襲撃者は……これは! BT試作二号機! サイレント・ゼフィルスです!!」

「対空監視はなにをやっていた!出せる機体は!?」

 現れたのは過去にIS学園への強襲を敢行した亡国企業に強奪されたイギリスの第三世代ISだった。千冬はギリと歯を食いしばりながら、セシリアの姿を求めて走り出す。このタイミング、胸騒ぎがする。目的は恐らく……。


――――


「へえ、アレを避けるんだ?やるじゃないかついうっかり殺しそうになっちゃったよ……避けてくれて助かった」

 上空に浮いたままの青いISから聞こえる言葉は、嘲笑の気配を含む。蝶を想わせるそのシルエットに一夏は見覚えがあった、いや、忘れるものか。一夏は瓦礫を大量に背中で受けて跪いたまま、亡国企業のエムとその機体を睨む。頭をどこか打ったのだろうか、額に伝う血が鼻元を通って滴っていた。

「っへ、そう簡単に、やられてたまるかよ……っ」

「い、一夏さん!!血が!!血が!!」

 一夏の額を伝う出血は結構多くて、覆い被さられた格好のセシリアの頬に、ぬるりとしたそれが落ち、セシリアはこの世の終わりを見たような、まさに顔面蒼白の様子でヒステリックに叫ぶ。そんな顔、セシリアには似合わない。

(……ま、少しヒステリックに叫んでるのは結構似合うけど……そんな、心配そうな、不安そうな顔……似合ってたまるか)


516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 01:54:11.96 ID:ZBLQCw1f0


「大丈夫だって、こんな怪我、怪我のうちに入らない……から」

 一夏はふらつく足で、そんな様子見せてはいけない人の前だからこそ確りと立ち。上空のサイレント・ゼフィルスを睨み付けながら腕のブレスレットを突き出し、そこにもう片方の手を添え、そしてセシリアにシニカルな笑みを向けた。セシリアはそれを、その表情に一瞬見蕩れたけれど、その覚悟を見れば、それ以上は何も言わない。大丈夫だと彼が言うなら、それは大丈夫。

 真剣な眼をして、そっと一夏に寄り添いながらサイレント・ゼフィルスを睨みつけ、左半身を前に踵をそろえ、俯き気味に左手の親指で頬についた一夏の血をグイと拭ってから、その手をイヤカフスへと添える。


(セシリアに……あんな顔させやがって……!)


(一夏さんに……よくも怪我を!)


「セシリアッ!!」

「承知しましてよ!一夏さん!!」

 二人の待機形態のISが、白と蒼の輝きを其々に放つ。


「―― 来 い ! 白 式 ! ―― 応 え ろ !! 雪 羅 ッ !!」



「―― 共に舞いますわよ! ブ ル ー ・ テ ィ ア ー ズ !!」



 二人の体が光に包まれ、その光が消えた後に、互いに白の機体と青の機体に身を包んだ二人が其処にいた。神々しき白の翼に禍々しさすら宿す第4世代多目的武装腕【雪羅】を装備した、世界で唯一の男性IS操縦者、織斑一夏専用機、白式・雪羅と、実験機故の線の細さ、芸術品のような繊細なデザインと、美しい蒼が映える、イギリス代表候補性、セシリア・オルコット専用機、ブルー・ティアーズ。

しかし……今日のブルー・ティアーズの姿はそれまでとは大きく違っていた。


517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 01:56:07.51 ID:ZBLQCw1f0



「ぃい!? セシリア!?なんだその機体……まさかセカンド・シフト【第二形態移行】したのか!?」

 一夏が、セシリアとその愛機の姿に驚きの声を上げる。特徴のあるシールドバインダーは更に大型化され、装着されたブルー・ティアーズ(ビット)のマウント数がバインダー上下に一基づつ増えている。単純なスタピライザーユニットだったリア・アーマーにもビットのマウントが増設され、一見するとプロペラントにも見える腰のミサイルビットはそのままに、そのさらに外側に大型のスラスターユニットが装備され、いつかのストライク・ガンナーパッケージを連想させるスカート状に増設されたウェストアーマーにも左右一基づつビットが装備されていた。頭部ハイパーセンサーもストライク・ガンナーのブリリアント・クリアランスのバイザーに形状が近くなっており、総合強化が図られているのが一目でわかった。

「残念ながらセカンド・シフト【第二形態移行】ではありませんわ……鈴さんの甲龍に装備された崩山の総合強化パッケージというコンセプトを参考にしたブルー・ティアーズのBT強化パッケージ、クイーンズ・グレイス(Q.G.)と申しますの、いかがですか?一夏さん♪」

 一夏の前でセシリアは、まるで新しい洋服を恋人の前でお披露目するかのようにくるりとステップを踏むように一回転しつつ、腰部の強化スラスターを吹かし、一気に上空へと上がってゆく。腰部のスラスター・ユニットはかなり稼働範囲が広く作られており、フレキシブル・スラスター・ユニット【テンペスト】と名付けられている。ざっと見ただけで四基だったBTビットが一気に十二基に増え、全体重量は見るからに肥大化しているが、その重量を本来のスラスターと、両腰に増設された【テンペスト】により無理矢理相殺している。むしろ上昇速度は、従来のブルー・ティアーズを遥かに凌ぐ出力でその体を空へと舞わせた。

(…………)

 スカート状になった腰アーマーの隙間からISスーツに包まれたセシリアの腰がちらりと見えると、なんだかいつもの状態よりもとても、視線を引き付ける。こんな時に不謹慎かもしれないが、一夏はいつかのテスト勉強のとき、誘惑に負けて覗いた今は青いスーツに包まれる白く形のいいそのヒップラインを思い出していた。一瞬惚けた一夏は、軽く視線を逸らしてから深呼吸をする。もう自分のものにはならないだろうその体。あのときああしていれば、こうしていれば、そんな後悔は浮かぶけれど、酷く気分は晴れ晴れとしていた。

「やっぱり……いい女だよな、セシリアは……。 ……俺みたいな男でも、傍に居てもいいって言うなら……俺は例え一方通行でも構わない。……俺は、俺はセシリアの傍で、セシリアを見つめ続ける……」

 セシリアを見送りながら、自分に暴行しようとしかけた男にさえ傍にいて良いと言ってくれたその言葉を、そう言って寄り添ってきたセシリアの瞳を思い返し。決意を胸に右の手に雪片を出現させながら一夏もまた、セシリアを追って上空へと上がって行った。


518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02:03:00.73 ID:ZBLQCw1f0


 長く伸びたいくつものビットが作り出す末広がりのシルエットは、ゴテゴテの重武装にも拘らず豪奢なドレスのようなデザイン性を保ち、セシリア・オルコットを彩っている。が。明らかに歪な、強引なコンセプトの強化だった。それは、本来搭載される筈の無かった装備を無理矢理調整したという事を如実に表している。

「イギリスの代表候補生……なるほど、その大きすぎるスラスター……。その装備は私の追加パッケージだな……? まさか旧型に装備して持ちだしてくるなんて、いよいよ英国もヤキが回ったか」

 上空で待機したままセシリアを迎えたエムの指摘通り、これはイギリスのIS開発機関の苦肉の策だった。揶揄めいた嘲笑の態を崩さないエムに、バイザー越しの鋭い視線をセシリアは投げ続ける。

「あなた用?世迷言を!……その機体、サイレント・ゼフィルスは我が国イギリスのものですわ!……そして……このクイーンズ・グレイスは私とブルー・ティアーズの為に調整されたオートクチュールでしてよ!」

 セシリアが虚勢を張る。オートクチュール等では無い、実際にエムの言う通りなのだから。しかし、そんなことは関係ない。揺るがぬ誇りと自信が、虚勢を現実にしてくれる。

「フン……何がクイーンだ、全身火器のハリネズミが……」

 大型のシールドバインダーに連結された左右4つづつのビットを切り離しながら、セシリアはさらに上昇する。

「……面白い……抵抗するがいい……抵抗してもしなくても……泣きながら命乞いさせてやる……さぁ、たっぷりともがけ」

 本来、サイレント・ゼフィルスに装備される筈だったBT兵装強化パッケージ。その強奪の為に再びイギリスの空に現れたエムは、バイザー状のヘッドアーマーの隙間からのぞく口元を酷薄な笑みに歪め、手にしたライフルの先端にブレードを展開して瞬時加速【イグニッション・ブースト】を行い、一気にセシリアとの間合いを詰めようとする。

 そこへ、白い影が割り込んできた。銃剣を雪片で受けながら、一夏はエムの突撃を許さない。IS学園で学び、いくつもの戦いの中を進んで来た一夏の経験が、セシリアとブルー・ティアーズ.Q.G.の欠点を理解させる。近付かせちゃいけない。
 Q.G.装備は【テンペスト】による高推力と高機動の両立を成しえている。ともすれれば無敵とも言えるそのコンセプトはそもそも機体重量が重いという欠点を無理矢理解消させる為の副次的要素に過ぎない。確かに推力は高く、そのスラスターをフレキシブルに稼働する事で尋常ではない機動を見せる、しかしその重さ故に生まれる慣性は、逆噴射による静止行動にさえ極めて低い運動性として現れるはずだ。高機動と一口に言っても、それにも種類はある。ここまでくるともはやジェットエンジンを積んだ航空機に近いかもしれない。高速移動しながらの高機動戦闘こそがQ.G.の舞台であり、高機動高運動性を求められる近接格闘戦闘は今まで以上に苦手になったと考えていいはずだ。

―――― だったら、やる事は一つだろう?

「やらせるかよ!俺がいるんだぜ!!」


519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02:07:45.68 ID:ZBLQCw1f0


 白式はほぼ完全に格闘戦に特化されていると言って良い。運動性云々の話だけではなく、武装の面で。雪羅になって荷電粒子砲の使用は可能になったがあんなものは牽制の役にしか立たないと言ってもいい。実際学園で模擬を行う時はあんなもの身内にさえまともに当たった事が無い。だったらいっそ、出力を絞ったシールドといつも通り雪片での近接戦闘のほうがまだマシというだけだが。

「っは!お姫様気取りのハリネズミが調子に乗ってると思ったら、今度は偽者がナイト気取りか……学芸会か?」

 エムが、セシリアを護るように立ちはだかる一夏に嘲笑を浴びせかけながら、ビットを切り離す。数基をセシリアへの攻撃に、数基は自身の周囲に展開する。

 エムは知らなかった事だが、以前セシリアのクラスのライバルは、ブルー・ティアーズを女王の騎士と呼んで、自らとその黒い機体を黒騎士と呼んだ。ならば今日、この戦場において女王の青騎士団よりも傍で女王を護るその勇者は、白い機体になぞらえて"白騎士"とでも呼ぶべきだろうか。奇しくも伝説の名、奇しくもそれは白式の真実の名。

「ナイト気取りでもなんでもいいぜ。白騎士参上、なんつってな!」

 それを聞き、エムの表情から余裕が消える。沸き上がるのは、憎悪、憤怒、嫉妬。殺すなと言われている?構うものか、必ず殺してやる。姉の名はこのようなつまらない女を護る為に立つような男が名乗って良いわけが無い。

「お前……白騎士を……白騎士を名乗っていいのは……ねえさんだけだぞ……? もういい、ここで死ね!!」

 激昂したエムが一旦銃剣を引き、もう片方の手でナイフを出しては、次々と投げつけながらながら後退し、セシリアへと狙いを変える。ナイフは牽制、払い除けていては、セシリアへの攻撃を実行させてしまう。そう判断した一夏は防御もせず、一夏は体でそれを受け、シールドエネルギーが削られるが、そのまま一気に間合いを詰め、エムに斬りかかる。

「なにッ こ……こいつ!?」

「やらせねぇって、言っただろうが!」

 咄嗟に近接ブレードでその剣を受け、凌げば、流れる動きで二撃目、三撃目が迫る。一夏の武器は近接ブレード一つだった、実際に一夏はそれを扱う事の方が得意だったし、千冬も言っていた、一つの事を極めるほうが向いていると。逆に言えば、それならば、どのようなエースにももはや引けは取らない。四合目に鍔競り合いとなり、一夏は額から口元まで流れてきた己の血をぺろりと嘗める。

520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02:14:22.56 ID:ZBLQCw1f0


「一夏さん!!援護いたしますわ!!」

 運動性の低いISは基本存在しない。勿論サイレント・ゼフィルスも高い運動性を備えているのだが、どうしても動いた時に慣性が多少は働く。よってIS同士の射撃戦闘はその慣性制御の瞬間をいかに撃ち抜くかがキモとなり、当然それをさせない為に常に移動を繰り返しての戦闘が基本となる。ただしそれは通常の相手ならばの話。相手は、BT偏向制御射撃【フレキシブル】を使いこなす相手、フレキシブルの真の恐ろしさは、エネルギーの直接制御により、慣性法則を無視した偏向制御を瞬間的に行える事。つまりこの慣性制御の瞬間を確実に撃ち抜く事が出来るという即応性にある。

 先程切り離した八基のビットが其々エムに照準を合わせ、レーザーを放つ。その内のどれがフレキシブル射撃なのか判らない以上確実に防ぐと判断したエムは、シールドビットをばら撒きつつ、四基のレーザービットをフレキシブルで射撃しレーザー同士をぶつける事で相殺し、それで足らない手数は一本に一基のシールドビットを意図的にぶつける事でそれを防ぐ。

 同じ精神制御マニューバー同士であれば、相殺はわけもない。しかしこれではワリにあわない、そもそもまだあのハリネズミは全部のビットを切り離してさえいない。そもそも、まさか八本全てがフレキシブルで射撃されていた事に、エムは驚きを隠せない。

「同時八基の完全精神制御……!? これを才能で片付けろとでも言うのか!化け物め!!」

 たかが候補生という認識をエムは改める。早くその間合いに飛び込み、この化け物を仕留めなければ。レーザービットを飛ばしてセシリアを追わせるが、圧倒的な推力と機動性にビットが間合いを保って牽制を続けることさえままならない。そうこうしているうちに今度は一夏が切りこんできて、制御のままならなくなったレーザービットが撃墜された事を認識する。直撃は受けていないし、シールドの残量は十分にある、しかし、こちらも全く有効打を与えていない……それどころか

(完全に押されている!?こんな、たかが代表候補生と偽者の学生コンビなんかに……!)

 エムの表情からは完全に余裕が消えていた。別に侮ったわけではないつもりだった、常に戦いにおいては冷静、冷徹、確実に作戦をこなす為の一つの機械のように、正確に敵を撃つ。それだけだ。しかし……俄かには信じられない。

(このままでは……私が落とされる……?)

≪撤退しなさい、エム≫

≪なん……だと……私はまだ……≫

≪エム、わかって。 ま だ あなたを失うわけにはいかないの≫

 スコールからの一方的な通信が切れる、撤退だ、悔しいが、仕方が無い。……仕方が無い筈なのに、内心安堵の溜息が出る事が悔しくて唇を噛む。勝てない、このままでは勝ち目はない、それを心が認めていた。


521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02:17:53.52 ID:ZBLQCw1f0


 エムの誤算は二つある。最もエムにとって予想外だったのは、セシリア・オルコットの急成長。その成長の切欠が、自身がイギリスの専用機を奪って使用している事にあるのだから、侮っていたと言えば侮っていたとも言える。セシリア・オルコットの前にこの機体で現れるのならば、覚悟をしておくべきであった。市街地での追撃戦の際に、自機の稼働限界も省みずに追い縋り、機体を破壊されながらもBT偏向制御射撃【フレキシブル】で一矢を報いたのは他ならぬセシリアだったのだから。

 そして二つ目は、相手コンビの本質を見極め損ねた。例えば織斑一夏の変化、初めて、本気で好きになった女性を護る。俺の女に手を出させない。今の一夏は揺るがぬ男の矜持を以って立っている。本人的には自分の女というわけでもでもないかもしれないが、実際の所、二人は完全に両想いであり、やってる事は恋人同士のそれ、しかも姉公認。ただの即席コンビどころか、心から信頼したもの同士だった事。



「くっ……くそ……!! ―― 動くな、動けばあの建物を吹き飛ばす!」


 スターブレイカーを真っ直ぐと先程屋上を破壊した施設に向ける。今度は威嚇などでは無い、最大出力の一撃を撃ち込むとそう宣言した。スコールによってISを使っての殺人だけは禁止されている以上実行はできない、もはや作戦の続行は不可能と判断したエムは撤退の時間稼ぎのために人質をとる戦術をとった。なりふりなど構っていられない。

(屈辱だ…………ッッッッッ!!このような真似をしなければ撤退も見込めないのか私は!!!)

 あの圧倒的な推力を見る限り、ブルー・ティアーズ.Q.G.相手にサイレント・ゼフィルス単機の撤退が成功するとは思えない。むしろ、人質をとったところで逃げ切れる保証さえ無いのだから。エムは内心の焦りを酷薄な笑みを浮かべる事で隠しながら、二人の応答を待つ。


522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02:18:31.61 ID:ZBLQCw1f0


≪……一夏さん≫

≪判ってる……ここは学園じゃない、障壁があるにしたってさっきの様子じゃ施設は……≫

 プライベートチャネルで短く言葉を交わす。セシリアにとってここは自身の未来に等しい施設、一夏にとっても、それは同様だ。セシリアは自力でもオルコットの家を維持し続ける手腕があると千冬がベタ褒めしているのを聞いた事はあったけれど、国家の庇護無しとなればその責務は今の比では無い。

 BTの研究機関であるこの施設を失いブルー・ティアーズがその価値を失ったなら、国家による庇護を失ったセシリアは学校を辞めてしまうだろう。IS学園の特例条項がその身柄を護ってくれるラウラやシャルロットとは違い、セシリアが背負うものは自分自身の事ではない。その肩に掛かっているのはオルコット家全体なのだから。

 そして今この施設には、千冬がいた。あの人を人間扱いすることは間違ってる。日ごろ一夏はそう思っていないわけではない。間違いなく化け物の部類で超人で、鬼で悪魔で神で邪神。素手でIS用の刀を振り回し、金属バット一本で専用機を秒殺する、自称Great Teacher Orimura.

(それでも……たった一人の、俺の肉親)

 それはセシリアも同じ気持ちで。厳しくも優しい人、女性としての憧れの対象。柔らかな笑顔で家族を見守り、無償の愛を捧ぐ人。いつかあんな風に強くなりたい。憧れのお姉様、と言っても少しだけ、クラスメイトのそれとは意味が違う。憧れの……お義姉さま。

(家族を……見放せるわけありませんわ……)

 人質に取られて、敵を逃がしたとあっては千冬は怒るだろうか。ちらりと一夏がセシリアの方を向くと、丁度セシリアも一夏の方を向いている所だった。何も言わなくても、プライベートチャネルを使ったわけでもないのに、不思議とその意思が伝わってくる。


―――― 一緒に怒られよう。


 二人の心は一つだった。



 幾度か前後にスラスターを吹かせながら空中での待機状態を作るセシリアと、エムからいったん離れ、雪片を納める一夏を見て、エムは満足げに唇の端を上げ、そして……欲を出した。




540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/12(火) 02:28:53.18 ID:ZsGqx1fD0


「いい子だ……動くなよ?」

 口の端を大きく歪め、エムは銃口の先を一夏に向ける。それを見て、セシリアが構えるけれど、その機先をエムの言葉が制す。

「動くな、聞こえなかったか化物……ビットもだ、戻せ……」

「……ッ!!!」

 セシリアの顔に悔しさが浮かぶ、それを横目で見ると、エムの心には言いようのない満足感が満ち足りる。ああ、満足だ、とても満足だ。浮遊していた八基のビットがブルー・ティアーズ.Q.G.のシールドバインダーに戻ってゆく。エムには信じられない、こんな甘い小娘が、八基ものビットを同時に操り、その光条さえ支配下に置いたということが、信じられない……冗談にも程がある。

「セシ……なんとかと言ったな……確か……オルコットの当主だったな」

 エムが独白のように呟きを漏らす。それは問いかけのように、セシリアの耳に届いた。しかし、それにセシリアは答えない。そんな事よりも、この状況について考えることが先だ。

 一旦間合いを離した一夏は、剣を収めている。瞬時加速を行えば如何様にも詰められる間合いだけれど、果たして、その隙をエムが与えてくれるかは疑わしいし、武装の再展開が間に合うか……。かといって、ビットは切り離しのタイムラグが生じる。更にセシリアはメイン武器であるQ.G.装備にで採用されたチャージ可能型高出力BTレーザーライフル【スター・ゲイザーVer.1.2】をいまだ展開していなかったのも大きい。流石に普段の近接ブレード展開ほどの時間はかからないにせよ【テンペスト】の大推力任せに重量計算無視に搭載された大型ライフルは若干展開に時間がかかる。

「……答えろ、セシナントカ・オルコット」

「…………セシリア・オルコットですわ……何を答えろと仰いますの?Q.G.パッケージを寄越せとでも仰いますなら差し上げますわ。ですが、先程も申し上げましたがこの装備は既にブルー・ティアーズに最適化、再調整されておりますの……どうしても、と仰るのならば……今は武器を引いていただけるのでしたら……わたくしの、オルコットの名にかけて武装を解除して頂けるならば、をご用意しましてよ」

 名を間違えられた事に現実へと帰ると、セシリアは口惜しげに名乗りを返しながら、エムがそんな交渉を呑む訳が無いだろうし、セシリアもこの装備を譲る気など無かったし、譲りたくも無い。このクイーンズ・グレイスがエムの手に渡れば、恐らくはもはやセシリアには本当の意味で手に負えなくなる……Q.G.パッケージは、イギリスの汚名返上を賭けた装備、それは英国にとっての誇り、自身にとっての誇り。エムは当初、この装備を奪いに来た筈だ。回答を求められた問いは判らないけれど……セシリアの勘が、それを聞くべきではないと告げるから、誇りよりも大事なものが、敵の手中にあるから……誇りさえも、交渉の道具にする。

「ふん、今更そんなビットだらけの欠陥機などいらん……」

 そう、覚悟を一蹴されてセシリアの美しい顔が歪む、それを見ることができただけでもエムはこの卑劣な選択に価値を感じた。実際の話、このような大量に搭載されたビットは過剰としか言いようが無い。現在見た限りではあるけれど、八基ものレーザービットを同時使用することに価値が全く見出せない。それを全てBT偏向制御射撃する等出来て堪るものか。この女はその異常性に気付いているのだろうか、いや、気付いてはいまい。セシリアからは、大嫌いな人種のにおいがする。白人が嫌いなわけでもない、勿論好きでもない。ライミーが嫌いなわけではない、勿論好きでもない。

("持つ"者の臭いだ、恵まれた者、託された者、願われる者、好かれる者、望まれる者、才能ある者、愛される者、富を持つ者、地位ある者、この女は持つ側の人間だ)

 嫉妬、この世の不公平を具現化したような存在を前に、エムの心が逆立つ。そして、寄り添っていた二人の姿を思い出すと、エムの口元は今までにない愉悦に歪んだ。

「なぁに、簡単なことだ……。 織 斑 一 夏 を 、 お 前 が 殺 せ 。 さもなくば……撃つ」

 その言葉に、金髪の少女の顔から血の気が見る見る引いていく、その顔だ、その顔が見たかった。絶望に彩られたその顔が、何よりエムの逆立った心を安らがせていた。



542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/12(火) 05:30:00.49 ID:ZsGqx1fD0


 その言葉が、セシリアの心を抉る様が、一夏の眼にも良く判る。腕部アーマーの内で拳はその動きをトレースした白式の拳の外装に傷がつくほどに強く握り締められていた。一夏はあまり、人を嫌いになる性質ではない。歳相応の粋がった言葉遣いもするし、喧嘩をしないわけでもない。怒る事だってある。それでも、今湧き上がる感情は、それとは比較にならなかった。

「……ってめえ……」

「なんだい?織斑一夏……喜べ、恋人の手で死なせてやると言っているんだ」

 エムが嬉しそうに笑みながら、とんだ勘違いの言葉を吐く。恋人なものか、恋人なんて言うのはセシリアに対する侮辱だ。セシリアには殺されたっておかしくない、しかしそれは、セシリアの意思で行われるならばの話。そしてセシリアはそのような選択をする女ではない。それを深く、深く実感したのはついさっきの事だったけれど……。あんな目に合わせた相手を自然に許せる優しく誇り高い女だ。

 その誇りを踏み躙ろうとしているヤツがいる。

「絶対に……ゆるさねぇ……ッ」

「……フン、お前に何ができる……これから殺される貴様に。 さあ……セシリア?」

「……くっ」

 エムは促すようにセシリアに声をかけながら、スターブレイカーの銃口を建物に向ける。逆らえば撃つ。その意思を受けて、苦渋の表情で一夏を見つめるセシリアが、その右手にチャージ可能型高出力BTレーザーライフル【スター・ゲイザーVer.1.2】を出現させる。それは、もはやレーザーライフルではなかった、一瞬エムも目を見張り、一夏は吹きそうになる。スターライトMk-IIIもかなり大きかったが、円筒型から全体をスマートな直方体型に変更されて更に大型化しているせいか、まるで角材、ライフルというよりはもはやバズーカ、大砲だった。


「一夏さん…………」


 セシリアは今にも泣き出しそうな顔で一夏を見つめながら、その銃口を一夏へと向ける。BT強化パッケージ、やり過ぎだろう。状況は状況だけれど、一夏はそう思わずにはいられなかった。砲身の奥、チャンバー部から先端に伸びるスリットがゆっくりと光を強めてゆく。一瞬で楽になれるだろうか、セシリアの真剣な眼差しを見つめ返しながら、一夏は……


「……あぁ、いいぜ……セシリアがそう決めたんなら」


「……ごめんなさい……ごめんなさい一夏さん……」


「……謝るなよ、セシリア……セシリアは笑ってんのが一番だって」


 二人の会話が、処刑する者とされる者の癖にイラつく甘さで、最高の気分に水を差されたエムは見ちゃいられないと舌を打つ。その瞬間、セシリア手によってトリガーが引かれ、砲身さえ内側から破壊しながら、眩い光が一条、ロンドンの空を真っ直ぐに引き裂いた。



548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02:11:24.20 ID:bCtYOwM/0


 セシリアの放ったレーザーは発射の直前にエムのほうに向けられて放たれた。千冬がいて、自身の生命線でもある施設を無視し、エムが施設への凶行に出る前に決着をつける。放出される膨大な熱量に耐えられずに暴発を起こして手元で爆発する試作ライフルは全くの計算外だった。身内ともいうべき英国のIS研究機関を悪く言いたくはないが、BT兵器オンリーのド実験機兵装で他国の第三世代より良い成績を残せ、実験データを残せと言ってみたり、いつの間にか強化パッケージをサイレント・ゼフィルスの分しか作っていなかったり、いざブルーティアーズにそれを搭載しようとなれば、重さを出力で相殺する突貫工事仕様だったりと本当に常々いい仕事をしてくれる。嫌いではないが、手元で爆発するメインウエポンは流石に無い。半分ほどシールドエネルギーを持っていかれながら、駆動系の異常がないことを確認し、セシリアはQ.G.のテンペストスラスターを全開に開いた。

 エムの敗因は二人に時間を与えたことだ。プライベートチャネルを用いた通信等いらない。この状況ならばどう動くかを想像する。兼ねてより織斑千冬が授業中に幾度も教え子達に言って来た事が、二人のタイミングにラグを発生させなかったセシリアの射撃という名前の自爆とほぼ同時に一夏は雪羅のシールドを発動しながら、エムへと間合いを詰める。

 セシリアの謝罪の意味を、その真剣な視線から理解した一夏は、すぐさまそのタイミングを計算していた。尤もこの状況の場合それは簡単だ、人質を取りながらもセシリアに火器の使用を許可したエムが浅慮か間抜けか余裕なのかは知らない。或いは一夏という存在が彼女に冷静な判断をさせなかったのかもしれない。それはともかく、仕掛けるならば射撃の瞬間しかありえない。セシリアならばどのタイミングでトリガーを引くか、

 そのタイミングはほぼ完璧だったと言えた。爆風に包まれるセシリアは当然心配だったけれど、どう見ても銃の暴発による誘爆だった。ISの武装にはそういった場合の安全装置が通常は搭載されており、まず大事には至らない。筈だ。

「……貴様ら、人質を見殺しにするつもりか!!」

 砲身を破壊しながら伸びる光の渦を小刻みな瞬間加速で回避しながら、エムは残っているビットを全て分離しながら、ライフルの銃口を施設へと向ける。

「撃ってみろよ!そのかわり……撃って逃げられると思うなよ?」

 凄味をきかせた一夏の言葉はゆっくりとしたものだったけれど、その動きは早い。エムのマニューバをサイレント・ゼフィルスのスラスターの明滅から読み取り、迎撃に展開されるビットから放たれるBT偏向制御射撃の雨の中を小刻みな瞬間加速で避けながらぐんぐんと間合いを詰める。避けきれないBTエネルギーは雪羅で展開した対エネルギー兵器最強の盾、零落白夜のバリアシールドで叩き落とす。

「これで……終わりだ!エム!!」

 一夏の全身全霊の怒りを具現化したように雪片弐型が変形し、巨大なビームブレードを形作る。

「――なァめるなァァァッ!!!!」

 エムは常から他者を見下した態度を隠しもせず、敵であれ味方であれ、冷静な、冷酷な戦士としての態度を貫いてきた。シャルロットとも全く違う完全な実力に裏打ちされた上から目線。そのエムが、訪れた危機に絶叫にも似た雄叫びを上げて、スターブレイカーを実弾モードに切り替え、後方への瞬間加速という離れ業をやってのけながら乱射した。


549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02:14:55.68 ID:bCtYOwM/0



 三人の戦いを基地の外、高層ビルの屋上から自身のISのセンサーを使い"視て"いた女性が、小さく笑いその戦いから背中を向ける。

「だから退けって言ったのに……仕方のない子ね」


550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02:15:39.68 ID:bCtYOwM/0



「うおおおおおおおおッ!!」「ッらああああああああああああ!!!!」

 二人の咆哮がイギリスの空へ響く。セシリアを庇った負傷が響き、一夏は精彩を欠く動きを、強引な突貫で補う。零落白夜のシールドはエネルギー武器には無敵の盾だが、実弾兵器には途端に無力となる。雄々しき咆哮を上げながらも、みるみるうちに一夏はシールドを削られて行くが、執念の一撃が、エムの左肩ユニットを真っ二つに切り裂いた。

「ぐっ……ぅ!よくもッ」

 苦渋の表情浮かべつつも、体勢を整えたエムは、シールドビットを一夏にぶつけんばかりの勢いで放出する。破れかぶれにしか見えないが。

「こんなもので!!!」

 一夏の剣がシールドビットを切り裂いた。

「!?」

 次の瞬間一夏の体が至近距離で起こった爆発の衝撃に弾き飛ばされる。口の中を切っただろうか、濃い鉄の味が口内を満たす。失敗した、相手はエムなのだ、一筋縄でいくわけがない。

(ばらまいたシールドは……防御でも苦し紛れでもなくこのためかよ……ッ)

 精神感応機雷とでも言うべきのシールドビットが一夏にトドメを刺すために迫るけれど。その主は次の瞬間そこにはいなかった。サイレント・ゼフィルスが高速接近する敵機への警告を発した次の瞬間。近接センサーが認識できる範囲の外から、推力全開の巡航から瞬間加速を使い一気に飛び込んできたブルーティアーズの巨大な爪に掴まれながらエムは音を遥かに超えた速度域に浚われ、呑み込まれていた。

551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02:17:07.30 ID:bCtYOwM/0

――――


 ブルー・ティアーズ.Q.G.の大型シールドバインダーは、上側に一つ、下側に三つのビットを搭載している。他のビットより若干よく見ると大きい左右八基のビットは実は単純なレーザービットではなかった。BT固定試験型と銘打たれたそれは、レーザーの指向性を操作できる偏向制御を応用し、レーザーを纏うことができるように小型の砲口が複数装備されているタイプで、言うなれば」、レーザーソードビットという装備だった。試験型と武装のインフォメーションに表示されているのを見ると、つい先程の自爆兵器を思い出すが、この装備の原点はセシリアだった。
 以前にセシリアがビットで殴り付けるという戦法をとった情報を聞き、BT兵器新武装開発局の腕っこきエンジニア達が嬉々として即座に制作を始めたという。シールドバインダーに搭載したままブレードを出す事が出来るようにし、ビットマウントに可動域を設定したのも彼らだ。両腕とは別に特大のクローを装備しているかの状態の為、説明を受けてもセシリアはそんなゲテモノのような真似、と使いたくはなかったが。使ってみると思った以上にこのQ.G.装備の加速性にマッチしているのがちょっと癪に障る。

「――っ…………!! き、貴様ァァァァァ!!!」

 レーザーブレードの爪に対し間一髪、ギリギリで銃剣を使い受け、致命傷を避けたエムだったが、の壁に叩きつけられて過剰なGを受け続けるサイレント・ゼフィルスのアーマーが限界を示すように火花を散らし始める。

「贖いなさい!あなたはわたくしの、オルコット家に銃を向けた!!!」

 あっという間にロンドンの街が遠のいてゆく、都市部を離れたテンペストのスラスター口を稼働させ、エムを森林に叩きつけるように放り出しながら、セシリアは全身の十二基の騎士達を解放する。

「お往きなさい!!わたくしセシリア・オルコットの名の許に! ナイツ・オブ・ザ・ラウンド≪円卓の騎士≫!!」

 少し、ラウラの病気が伝染ったかもしれない。しかし、これは高揚した精神には少し気持ちがいい。十二基のビットが空を舞い、十基が発する光条は、すべてが非同期射撃、全てが偏向制御のホーミングレーザー。キンと耳鳴りがするほどに意識を集約させ、追撃のレーザーソードビット二基がエムを切り裂いた。

「この……ば、化け物が!!!うぁぁあああああああああっ!!!!!!」

 地表近くまで音速域から投げ出されたエムは満足な回避運動も取れないままに光の乱舞に全身を撃ち抜き、切り裂かれ、サイレント・ゼフィルスを強制解除させられて意識の紐を断たれた。そのおかげか、音速のまま地上に叩きつけられることは免れ、それでも十分すぎるほどの勢いではあったが、木々の中へPICによる慣性制御の保護を受けながら落ちて行った。



552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02:17:48.23 ID:bCtYOwM/0





====RESULT====

○セシリア・オルコット [35分08秒・円卓の騎士] ×エム





「さあ、回収させてもらいますわ、サイレント・ゼフィルスを……」


559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 21:17:04.56 ID:obN4rc4/0



≪セシリア!セシリア!大丈夫か!?≫

 コア・ネットワークを介して、一夏の声が聞こえる。未だ緊迫している様子をその声色から察すると、戦いを終え戻って来た騎士たちをマウントしながらセシリアは大きく深呼吸をして声を整え、安心させるよう、努めて穏やかな声を返す。

≪大丈夫、終わりましたわ。一夏さんは施設の方にエムさんの収容を準備するよう伝えて頂けますか≫

≪落としたのか……!?やったなセシリア!すげえよ!≫

 弾む一夏の声が嬉しくて、祖国の誇りを自らの手で守った事が嬉しくて、コア・ネットワークなら日本の鈴にも届くだろうかなんて思ってしまって。でも、それは今夜実家に帰ってからゆっくりと部屋の電話からしようと思いなおすと、森へと落ちたエムを回収しようと、スラスターの出力を調整しながらゆっくりと降りて行く。

「なかなか取り回しに難のあるパッケージですけれど……慣れれば低速域での近接戦闘もカバーできそうですわね」

 その使いこなすのがまず難しいのが問題だけれど、と苦笑いを浮かべながら森の上に差し掛かったセシリアの右スラスターが突如飛来した光弾に撃ち抜かれ、機能を停止する。

「……えっ!?」

 エムの落ちた方角とは別の方向。森の中からの狙撃かと身構えようとするが、テンペストの片方だけを失った状態ではバランスの維持さえ容易では無い。このまま足の切れた凧のように回りながら落ちてしまう前に、もう片方の出力も切れば、PICは辛うじて働いているものの重量過多により徐々にではあるけど落下してゆく。

≪頑張った所悪いけれど、エムもサイレント・ゼフィルスも失うわけにはいかないのよ≫

 突如耳に入ったプライベートチャネルにセシリアはぞくりと背筋を震わせた。敵がまだいる。先程の攻撃はその何者かが行ったのであろう事は想像に難くない。ほぼ自然落下状態のセシリアは格好の的の筈だ、センサーの感知範囲を広げると、驚くほどあっさりその存在は感知できた。スーツ姿の女性が悠然と倒れたエムの元に向かっている。ISは展開していないが間違いなくISを所有しているだろう、それも、国家代表クラスの使い手と軍用機の

 即座に十二の騎士を切り離し、その存在を囲むように展開させるが、一定の距離までその人物に近付いた瞬間からビットが次々と落とされてゆく。精神感応兵器である以上、セシリアが認識できない攻撃は回避できない。このままでは全て落とされると判断したセシリアがビットを引き上げる時、残ったビットはたったの二つだった。

≪腕を上げたのね、ふふ、サイレント・ゼフィルスよりも"あなた"を真っ先に奪うべきだったかしら≫

 余裕の言葉が圧倒的な実力差を感じさせて、セシリアは恐怖を感じた。仕留めようとこの女が本気で思えば、その瞬間に命を落とすであろう事をじっとりと纏わりつくような視線から感じる。生殺与奪を握られている。プライベートチャネルで一夏に救いを求める事さえ、この女を刺激するかもしれないと思うと躊躇われた。

≪うふふ、可愛い子……心配しなくても、あなたをどうこうするつもりはないわ。今日のところは≫

≪…………ッ≫



560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 21:18:00.14 ID:obN4rc4/0



≪ねえ、セシリア・オルコット。国も、過去も、背負うものも、全てを捨てて、楽になってみたいと思わない?あなたはしたいように生きる事が出来る、何も強制されず、何の不満も抱かず……あなたは自分でも判っているのでしょう?どうせこのまま候補生をやっていても、BT兵器実用化に向けた実験台として使われ続け、あなたの成果 だ け が、より実戦に即した経験を積んだ国家代表と共に世界の舞台へ羽ばたく……あなたという存在はその為の踏み台って≫

 女の言葉は、まるで、一人枕を濡らした日々を見ていたかのようで。より実戦向きな武装を許されていれば取らなかった不覚の日々。このQ.G.装備さえ、きっと一夏には歯が立たずに敗れるだろう。箒を削り切ることはできないかもしれない。鈴には近づかれてしまえばクイックな挙動に翻弄されるだろう、シャルロットは対策をすぐに立ててくるだろう、ラウラは本来有利なはずの状況でありながら、以前からの通算ではまだ負け越して漸くイーブン程度だろう。簪とはまだ対戦した事はないが、マルチ・ロックオンシステムでビットを狙う事が出来る打鉄弐式の性能はカタログスペックしか知らないが相性は悪そうだ。

 確かに、偏向制御はモノにしたが、ブルー・ティアーズはまだセカンド・シフトできていないし、ワンオフ・アビリティだって発動できていない。じきに二年になり、一般生徒も実力を着けてくる頃だ。場合によっては、武装に極端な偏りがあるブルー・ティアーズは負ける可能性すらある。しかし、それでいいとされる屈辱、セシリアはBT兵器のデータ収集こそがIS学園入学の第一目的であり、本国は勝敗よりもそれを重視する。データを収集して、足らないところを報告したからとブルー・ティアーズにフィードバックされることは殆どなく、その代りに自分以外の誰かのためにサイレント・ゼフィルスが作られた。

 不満を感じないわけがない。


――― でも。


≪……ふふっ。 気に障ったならごめんなさい。もし亡国企業に就職したくなったなら、いらっしゃい。いつでも歓迎するわ……また会いましょう、セシリア・オルコット≫


―――― でも。


「…………ッ」

 重量過多で動けなくなりながら、森の中、セシリアは何の言葉も返せぬまま、抵抗もできないまま、女が立ち去るのを黙って見ているしかできなかった。



 一時間後、一夏から連絡を受けた機関の職員がISを解除してロンドンに向けて一人歩くセシリアを発見してかけた言葉は、彼女への労いの言葉よりもエムとサイレント・ゼフィルスを撃墜しながらまんまと取り返されてしまった事に対する叱責だった。



561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 22:39:44.06 ID:obN4rc4/0

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番外 IS解説

■ブルー・ティアーズ クイーンズ・グレイス [ BT-01.qg ]

 中国の「甲龍」に搭載された機能増幅パッケージ「崩山」のコンセプトを参考に、「サイレント・ゼフィルス」の為に用意されていたBT兵装の機能増強パッケージを「ブルー・ティアーズ」に搭載する為に再調整したパッケージ。
 「女王の寛容」という名に反した超重装パッケージで、豪奢なドレスを思わせる外見と裏腹の、BTビットが十二基に増設されたほぼ全身火器という重火力が特徴。従来の四基から一気に三倍ものBTビットの搭載は、そのマウントユニットを含めた全体的な機体重量の肥大化に繋がり、実弾兵装を積まないが故の軽さというブルー・ティアーズの長所を完全に殺すものだった。そこで打開策として搭載されたのが大推力で重量を強引に相殺する腰部大型フレキシブル・スラスター・ユニット「テンペスト」である。

 武装面では、試作型チャージ式BTレーザーライフル「スター・ゲイザーVer.1.2」を装備しており。出力最重視のチャージレーザーは余りの長大さに保持の為のショルダーアーマーと一体化され、取り回しが極めて悪いと言う欠点を抱えている上に、フルチャージした場合には砲身が一射で融解するという問題点がある。欠陥品?とんでもない、ただの試作型です。

 更に増設されたBTビットのうち、大型化したシールドバインダーに搭載されているビットはBTエネルギーの固定展開が可能なモデルを採用しており、従来のオールレンジでの射撃戦闘は勿論のこと、ソード・ビットとしてのオールレンジ近接戦闘や、直接マウントしたままシールドスパイクのように使用する事も出来る。

 唯一の実弾兵器であるミサイルは弾頭にBTエネルギーを含み、精神感応で手動誘導させるという仕様。

 

 高機動+高火力を実現し、欠点らしい欠点のないように見える同パッケージだが、機体重量は極めて重くなっており、特に慣性制御にモロにその影響が現れており、致命的な迄に繊細な挙動が行い難くなっている。その為、これまで以上に極端に近接戦闘を苦手とする。更に装甲面の強化が薄く、ブルー・ティアーズでの問題点でもあった構造の精密さから来る特有の打たれ弱さはそのままであり、むしろ制御系統の増加によりこれまで以上に総合的な耐久力は減少していると考えられ、前述の突撃攻撃はあまり使用できないと考えていい。特にテンペストへの被弾はそのまま即移動不可能へと繋がる。


武装

 チャージ式レーザーライフル「スター・ゲイザーVer.1.2」 × 1
 ブルー・ティアーズ(BT固定展開可能多機能モデル) × 8
 ブルー・ティアーズ(BT) × 4
 ブルー・ティアーズ(BT弾頭搭載型ミサイル) × 2



一夏「えー、一号機と強奪された二号機の決戦ときたらフルバーニアンだろJK!!」
弾「わーいフルバーニアンだー、っておいいい!一夏ァ!これもうフルバーニアンどころじゃねーぞ!?」
一夏「こまけえこたいいんだよ、決戦仕様なんだから。セシリアがステイメンの代わりにちょこんと載ったデンチョロビウムの予定だったんだからマシになったろ」
弾「マシ……なのか?」


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563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 22:44:44.09 ID:obN4rc4/0


――――――


 オルコット邸へと向かうロールスロイスの車内で、一夏、千冬とセシリア、チェルシーの四人は、横向き向かい合わせの座席で長い無言の気まずい時間を過ごしていた。

「…………」

 見るからに、セシリアはその瞳に涙をいっぱいに溜めており、押し黙っていた。一夏と二人で施設への襲撃を退け、世界中のIS機関が成し得なかった、サイレント・ゼフィルスの撃墜を成しえたセシリアを迎えたのは、Q.G.装備の肝であるテンペストを破壊され、撃墜したにも拘らず逃げられた事と、亡国企業への内通の容疑をかけられるという追求だった。それを聞いた一夏は勿論講義したけれど、いかなる国家にも所属していない一夏に向けられたのは講義への反論でも同意でもなく、英国への帰化の薦めと白式を調査したいという一方的な要求だった。

「……セシリアの国を悪く何か言いたくはねーけど……くそ、なんなんだよ……あいつら……こんなの……こんなのあんまりじゃねぇか」

「…………黙れ、織斑」

「千冬姉!千冬姉はこれが正しいと思うのかよ!……これじゃ……これじゃあ……セシリアは、あんなに何の為に苦しんで、悩んで……泣いてきたんだ……やりきれねぇよ!」

(……?   ………一夏さん……どうして見ていたかのように知っておられるんですの……?)

 ふと、一夏の言葉に違和感は感じるけれど、突っ込む気力は今はなくて、セシリアは少しだけ姉弟に視線は向けるけれど、言葉は発さずに二人の会話を聞く。

「黙れと言っている!…………一夏。お前の言葉が正しかろうと、それが専用機を与えられた者の責務だ……お前はそれを言ってはいけない人間だ。……それ以上、セシリアを責めるな、それを言って苦しいのはお前でもイギリスの機関でもない、セシリアだ」

「お二人とも、お嬢様の為にありがとうございます……」

 千冬が声を荒げて語る言葉は、どうしようもないほど正論で、だからって納得なんかできなくて千冬に抗議をしようとした機先にチェルシーに礼を告げられると、一夏はそれ以上千冬に反論を続けることもできず、丁度正面になるセシリアを、眉尻を下げて見つめる。



565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 23:09:47.19 ID:obN4rc4/0


「…………セシリア」

「…………ごめんなさいチェルシー。一夏さん、千冬さん……仕方ありませんわ!今回はわたくしが失敗してしまったのが原因ですもの……施設の方にも、千冬先生にもお怪我が無くて何よりですわ。それに、わたくしの勝ちは勝ちですもの」

 漸く顔を上げたセシリアの表情は至極穏やかで、目尻に堪った涙を指でそっと拭いながら柔らかく笑う。今回の事件での怪我人は約一名。一夏が、縫うほどではないにせよ頭に怪我をして、今は包帯を巻いている。髪を剃られるのは拒否したせいか、バンダナかヘアバンドのように巻かれた包帯が痛々しいけれど。

「……ぷっ」

「セシリア!?」

「……っくく」

「千冬姉!?」

 セシリアが、一夏を見て小さく噴出し、続けて千冬が喉を鳴らして笑う。痛々しいほどに似合っていない。

「……お前、別に患部周りを少し剃るくらいいいだろう、小さな頃はスポーツ刈りにしてやったこともあったじゃないか」

「あれって千冬姉がバリカンの切れ味を実感したいって無理やりやったように記憶してるんだけど!?いいんだよ、もう血も止まってるし、剃るほどの怪我じゃないから包帯だって念の為巻いてるだけだし」

「んん?聞こえんなァ……またやって欲しいって?」


566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 23:10:55.01 ID:obN4rc4/0



 やがて車が止まり、運転手が外を回り、ドアを開けると、まずはセシリアの専属メイドであるチェルシーがするりと慣れた仕草で社外へと歩み出て、一夏と千冬を促す。彼女に手を借りて車から降りると、すっかり暮れた空の下、まるで博物館か資料館を思わせる佇まいの屋敷を見上げ、一夏は目を見張り、周囲を見回すと玄関らしき大きな扉から車まで、数人の使用人が並び頭を垂れていて、びくりと身じろいだ。

「……ぅぉ……」

「何がうお、だ馬鹿者、しゃんとせんか」

 スパン、と千冬の手が一夏の頭を叩く。傷口に響き、存外の痛さが走って蹲る一夏を、最後にチェルシーの手を借りながら下車したセシリアが見つけ、心配そうな声を上げた。

「い、一夏さん!?大丈夫ですかっ?」

「あ……ああ……」

 一夏とセシリアの時間が始まりそうになったが、それは居並ぶ使用人たちの中で初老の男性が一歩前に出て恭しく頭を垂れる声で中断された。

「お帰りなさいませ、セシリアお嬢様」

「「お帰りなさいませ」」

 男性の挨拶を合図に一糸乱れぬ仕草と揃った声が続き、館の主を迎える。セシリアは蹲った一夏の傍らで名残惜しそうにしながらも先ずは背筋を伸ばし。

「ただいま戻りましたわ。お変わりはなくって?」

 その言葉を合図に、使用人たちが怪我人の手当てと、荷物の運び込みに迅速に動き始める。おそらく、仕事の関係者なのであろうスーツ姿の女性等がセシリアを囲み、手にしている資料を次々とセシリアに差し出す。一夏に肩を貸そうとするメイドの一人を千冬は片手で制し、弟の首根っこを掴んで立たせる。

「ち、千冬姉、俺怪我人なんだけど……」

「一夏さん、千冬さん」

 仕事の関係者を片手で制しながら、セシリアが二人に向けて笑いかけているところだった。恐らくはここで一旦別れて、彼女は溜まっている仕事を片付けにいくのだろう。少しだけ残念そうな顔をしているのが分かって、その残念そうな気持ちが、一夏に少し伝染する。

「わたくしは一旦失礼いたしますわね。お部屋をご用意させていただきました。チェルシー、二人をお通ししなさい。何かございましたら、遠慮なくお申し付けください。ごゆっくり、お寛ぎくださいまし」

 堂に入った仕草でお辞儀をひとつ、一夏に寂しさが伝染したことが嬉しくて、その声は先程まで落ち込んでいたことを感じさせないほどに弾んでいた。



568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/15(金) 00:03:55.60 ID:fLADhKDz0


―――


「それでは織斑様、何かございましたら、お声をおかけください」

 恭しく頭を垂れ、部屋を出て行こうとするチェルシーの肩を、がっしと千冬が掴む。

「待て」

「……は、はあ?如何なさいましたか?」

 部屋は上等の調度品が揃えられ、寮の部屋よりぜんぜん広かった、が、先程一夏が案内された部屋に比べれば随分と質素だ。そもそも先程一夏の部屋は本当に客間なのか、いろいろ聞きたいことはあるが。

「この部屋割りを決めたのは誰だ?」

「出発前にお嬢様から指示をいただきました」

 浮かれきったセシリアの顔が思い浮かぶ、一夏を放り込んだ部屋は恐らくはセシリアの自室。昨日の今日でもう仕掛けるつもりかと痛い頭に軽く手を添え、深く深く溜息を吐く。確かに昨夜の仕掛け人は自分だったがそう連日は過剰だろうとなぜ気付けないのか、これが若さか、単純にセシリアがバカなのか。

「……チェルシー君、と言ったか。キミはこれでいいと思うのかね?」

「……その……寮では別々の部屋でしょうし、たまには急接近などもお嬢様がアドバンテージを握るには必要かと思いまして……織斑様、織斑先生様と致しましては、教職と言う立場を今宵はどうか……」

 申し訳なさそうな顔をしながらも、チェルシーは主人のため、二つ年下の可愛い妹のような、幼馴染のため、元ブリュンヒルデにも一歩も引かずに、今夜は見逃せと、そう告げる。

「……チェルシー君…………昨夜もスイートまでとって二人きりにさせたのだ、暴走しそうだったので、私が止めたがな…………間違いしか起こらん、今のままでは」

「…………」

 無言でチェルシーは千冬に深々と頭を下げ、どこかからか取り出したトランシーバーを使い、他の使用人に連絡しているようだ。 そして、通信を終え……

「織斑様、スイートの料金は、当家がお支払いいたします。それで、一夏様は別の部屋でよろしいでしょうか」

「いや、ここに放り込んでくれ」

「かしこまりました」




 その頃、一刻も早く部屋に戻るために仕事に全力を尽くしているであろうセシリアは、自身の目論見が崩れたことを知らない。『昨夜は清楚系で行ったからいけなかったんですわ!ここはやはり、せくすぃー&エロスで攻めますわ!』なんて妄想を膨らませていた。


573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/16(土) 00:19:52.27 ID:9UgcdOyJ0



 最後の書類にさらさらと署名を書き込むと、ペンを机のホルダーに戻して深く息を吐き、黒革の椅子に深く背を預ける。終わった。財閥というものは巨大な回遊魚のようなもの。動きを止めたら、衰弱し、やがて死んでしまう。動きを止めないために普段学園に持ち込んでいる端末からできる仕事はしているし、国からの支援や、各傘下企業の従業員たちにほぼ任せ切りでも回らないわけではない、しかし、大きな舵を取るその決定と言うものは、自分がとらなければならない。そこには大きな責任があり、きっともっと有能な者もいるだろうけれど、責任を負うことができるのはセシリアだけなのだから。

「おわりましたわー……!」

 満面の笑顔でうんと両腕を高く伸ばす仕草は、未だ恋も未熟、経験も未熟な10代の少女そのもので。まるで、溜まった宿題を片付けて喜んでいるかのような印象さえ受ける。

「お疲れ様でございます、セシリアお嬢様。湯浴みの準備は整っております。手筈どおりに夕食はお嬢様がお部屋に一度お戻りになられた後に」

 控えていた初老の執事が恭しく頭を垂れる。両親を喪った12歳のあの日から、セシリアはオルコット家の当主となった。その華奢にも見える双肩にはオルコットに連なる者全て、その歴史の全てを背負い、更に国家の威信をかけた第三世代IS技術のテストパイロットとしての責務までを背負っている。

 事故の後、これでオルコット家は終わりなどと言う声も聞かれた。敏腕で知られたセシリアの母は、非常に優秀な人であったが、一人娘であるセシリアには非常に甘く、やや過保護な一面もあった為、当初セシリアが当主を引き継ぐことに難色を示すものが大半だった。しかし、セシリアはそれらの声を撥ね退けて、母の跡を継ぎ、オルコット家の当主となった。蝶よ花よと育てられた無垢な思春期の少女は、自分自身を犠牲にしながら、文字通り全てを賭して家の為に尽くした。

 あどけない瞳に精一杯の決意を宿し、未だ可愛らしいという表現の似合う容姿から想像される様々な中傷もものともせず突き進むセシリアを見つめる、オルコット家の使用人たちもまた二つに割れた。今こうしてオルコットに仕え続けている者には一つの共通認識がある。『仕えているのはオルコット家ではない。両親の死を超え、遺された全てを護る決意に進み続けるセシリアに仕えているのだ』と。


574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/16(土) 00:20:35.47 ID:9UgcdOyJ0



「ありがとう。それで部屋割りのほうは……?」

 この笑顔の為ならば、例えこの先セシリアの失策があってオルコットの家が没落したとしても、決して主を違えぬ決意。しかし……内心は至極複雑だ。この老執事にとってセシリアは単に主君というだけではない。まだ言葉も話せぬ頃から知っている少女はまさに孫娘のようにも感じている。いや、使用人全てにとってセシリアは孫娘であり娘であり妹なのだけれど、その時間が長い分その感情の傾きも大きい。

「……は、お嬢様の仰せのままに…………しかし……」

「ありがとう、じいや♪ うふふ……一夏さん……」

 正直、未だ婚約の約定さえ交わしていないどこの馬の骨とも知らない……いや、世界唯一の男性IS操縦者で、元ブリュンヒルデであるチフユ・オリムラの弟君であるという事とイチカ・オリムラという名前であることは良く知っている。それだけだ、女性遍歴は?セシリアを泣かせる男か?16になるとはいえ流石に早いんじゃないか?どうせならもっとこう、婿養子なりなんなり、逃げられなくしてからが良いのではないか。

(そもそも紳士と呼べるのか!?ワシはまだ認めてなどおらぬぞ……ッ!!)

 しかし幸せそうなお嬢様の笑顔を見ていると、それを無碍に否定もできない。せめてチェルシーがこちら側ならいいのだが、チェルシーはどちらかといえばセシリアの味方だった。憎い、イチカ・オリムラが憎い、お嬢様をどうするつもりだ、渾身の右ストレートを叩き込む事にならなければいいが……。スキップしながら執務室を出て行くセシリアを見送りながら、じいやはギリっと拳を握り締めていた。


575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/16(土) 00:27:42.25 ID:9UgcdOyJ0


―――― セシリアは薔薇の花びらいっぱいのお風呂を済ませると、薄手のワンピースに軽くショールを羽織った姿で自室へ足早に戻ってゆく、今にも踊りだしてしまいそうな気分で廊下を歩むセシリアの気分に水を差す使用人は一人もいなくて。

「一夏さん……昨夜はアレでしたけれど、今度こそ、今度こそ……うふふ、うふふふ」


 自室への入室にノックはいらないと思うけれど、今は部屋の中に一夏がいるはずだ。案内された部屋が誰の部屋なのか気付いているだろうか?

「あ、ク、クローゼットやチェストを調べられていたらどうしましょう……いろいろ見られてしまいますわね……困りますわ……んふふふふふ……」

 困ったと言いながら、緩んだ笑みに頬を緩めると、ドアを軽く叩く。 反応はない。

「……一夏さん?」

 もしや、気付いて……出て行ってしまったのだろうか。昨日あんな事があったのだし、何か思うところがあるのかもしれない。

 一抹の寂しさを抱きながらドアを開けて、とぼとぼと室内に入るセシリアは、寮に持ち込んだものより遥かに大きいベッドに向かって。


576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/16(土) 00:38:55.88 ID:9UgcdOyJ0


「……!!!」


 ぱあっと表情が華やぐ。ベッドには誰かが眠っている盛り上がりが一つあった。いてくれた、きっとノックに応えなかったのは本当に眠ってしまっているのだ。弾む気持ちでベッドにゆき、シーツを頭までかぶって、黒髪を覗かせる一夏の傍へ腰を下ろして

「……一夏さん、ご夕食の準備はもうすぐ整いますわよ……一夏さん……起きてくださいまし」

 甘い声色で、一夏に優しく声をかける。『夕食よりも……』なんて展開を期待してしまうのは贅沢でもなんでもないはずだ。それとも、お目覚めのキスが要るだろうか?そもそも一夏はキスしすぎだ、ラウラともそうだし、箒とも未遂。知らないところで他にもあると踏んでいる。

「で、でででで、では……ッ!このわたくし、セシリア・オルコットが目覚めのキスを…………ッ!」

 そっと髪を耳にかけ、一夏の顔まで覆っているシーツをするりと下げて……

 唇を突き出して目を閉じたまま、がっしと顔面をシーツの中から伸びてきた手に掴まれた。

「ちゅ……ぅ……ふぇ?え?えっ!?」

「セシリア……いや、オルコット……二日連続を教師が許すと思ったか?」

 聞こえてきた、一夏だと思っていた人物の声に動きが凍りつく、心臓が止まるんじゃないかなんて錯覚も覚えてということはこの頭をがっしり掴んでいる手は、サザエの壷焼を食べて、中の汁を出す為に殻を素手で割ったという伝説を持つ織斑千冬のアイアンクロー。

「ち、ち、ち、千冬さん……」

「……今は先生だ、オルコットぉ……」



578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/16(土) 01:30:28.17 ID:9UgcdOyJ0



 亡国企業のエムを迎えに来た女と対峙した時よりも、正直怖かった。

「な、なぜ、どうしてここに!?」

 狼狽しながら問うセシリアの眼窩が左右から押し込められてメキメキと音を立てている気がした、やばい、眼球が飛び出てしまう、そんな錯覚さえ覚える。

「何……チェルシー君が『先に』一夏をこの部屋に通したものでな……この部屋はもしや、と思ったわけだ……」

「くっ……!チェルシー……ぬかりましたわね……っ!!」

 口惜しげに呟くセシリアの頭が更に締め付けられる。

「痛いですわ!痛いですわ!痛いですわ!痛いですわ!」

「ですわを付ける余裕はまだあるようだな。チェルシー君は私にも引かず、今日は見逃せと言っていたよ。忠臣だな、オルコットよ」

「ま、まさかそれでは千冬さん……!?チェルシーを!……殺ったんですの!?」

「貴様、教師を何だと思っている」

 指が更に食い込む、しゃれにならない痛みにピンと伸びた手足がびくびくと痙攣する。

「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」

 痛みを訴える声からですわが消えたのを確認して、千冬はセシリアをベッドの上に放り出す。

「全く、本当に油断も隙もないな……いや、油断だらけ隙だらけだが暴走だけは一人前だな」

 油断も隙もない、とは何かが違う気がした千冬はわざわざ言い直しながらベッドを降り、部屋の電気をつける。

「まぁ、セシリア。お前の今日の成果は見事だ、それなのに、随分と責められていたようだな……心中穏やかでなかろう……それも専用機を与えられたものの責任だ、とも言ったが……それを癒されたいと感じることは誰にも責める事はできない」

 千冬が腕を組んで部屋の中を見て回りながら、ベッドの上のセシリアにかける言葉は、年長者として、一夏の姉として、教師として、そして、いつか義妹になるかもしれない少女への優しさに満ちていて、セシリアは傷むこめかみをさすりながら、ベッドの上で上体を起こす。

「織斑先生……千冬さん…………」


579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/16(土) 01:32:38.77 ID:9UgcdOyJ0





「だから、今夜は私が朝まで一緒にいてやろう」





「………………は?」




 セシリアの頬を一筋の汗が伝う。今夜は暑くなりそうだった。




584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/17(日) 00:21:13.83 ID:7Sgz/XQm0



 夕食に並べられた料理は、どれもとても美味しくて、一夏も目を見張るものだった。

「うんセシリア!これ美味いな!」

 はじめ案内された部屋とは別の部屋に移動させられた一夏は、はじめの部屋が誰の部屋なのかも気付いていなかったのか、何の屈託もなく食卓を囲んで、料理に舌鼓を打つ。一夏の隣では無く向かいの席に座らされたセシリアは食事を続け、一夏の隣にいる千冬を警戒していた。

(今夜ずっと一緒って……千冬さん、どういうつもりですの……)

 いくらなんでも昨夜のはサービスが過ぎるというか、一年専用機持ちのグループでは、千冬は最大の障壁の筈だった。それにも関わらず、セシリアは他でもない千冬の手配したホテルで三人で休む筈が実際部屋についたセシリアは一夏と二人きりになり、愛を深める機会を与えられた。

 それが、千冬に認められたのだと認識するのは無理もない事だろうし、誰が同じ立場でもそう思う筈だ。ついに姉公認なのだと。

 ところが結果としては愛を深めるどころか、一夏が暴走してしまった為に水入りとなってしまった。

(わたくしはあのままでもよろしかったのですのに……)

 セシリアは内面こそ初心だが、ハッキリ言ってしまえばムッツリスケベに分類される。興味は人並み以上にあるし、男を誘惑する魔性の女が男性にとっての理想像だと結構本気で思っている。だからこそちょっとエッチな下着で迫ったりもするし、一夏とプールと聞けば水着も布地面積を減らしたビキニを用意したりと、専用機組のエロス担当とか言われる始末である。

 当然そうなって後悔はしたかもしれない、だからこそ千冬も止めたけれど、後悔しなかったかもしれない可能性はある。そんな風に考えられるのは持ち前のポジティブさ、こんな時にそれを発揮するのもセシリアらしいと言えばらしい。プライドを支える自立心の強さ。時に扱いにくいとされるそれは、他の専用機持ちに比べて、自ら甘え難い壁を作ってしまうものではあった。けれどその強さが、とうとうサイレント・ゼフィルスの撃墜を成し得たのだから。

(きっと……はじめは後悔するかもしれませんけれど……何があろうとわたくしは一夏さんを信じていますわ。一夏さんも後悔してしまうのかもしれないけれど……でも、でも……負い目だけで傍にいてくれる人ではない筈。わたくしが好きになった人ですもの、きっと……)

 千冬の心を理解していないというわけではないし、それはそれで凄くうれしい、でもそれはそれとして、一夏に抱かれたっていいじゃないかなんて思ってしまう。食事を続ける一夏を見ていると、いつかこの先、10年後もこうして食卓を囲んでいる夢想がある。一度きりで満足するつもりもないし、10年20年先を見れば、強ち後悔ばかりでもないんじゃないかなんて考えて、僅かに頬を染めながら一夏を見つめてしまう。


585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/17(日) 00:26:43.51 ID:7Sgz/XQm0



「あれ?……セシリア、どうしたんだ?イギリスには不味いものしかないって認識を改めさせてやるみたいな事いつも言ってたじゃんか。この料理本当に美味しいぜ!」

「え、ええ、と、当然ですわ。オルコット家の料理人は超一流ですもの」

 視線に気付いた一夏が、ナイフとフォークを持ったままじっとしているセシリアに笑いかける。どこかドモるように回答するセシリアに一夏は不思議そうに首を傾げるも、そんな不思議そうな一夏に気付いたセシリアがまた柔らかく微笑むから、一夏にはそれがなんだか嬉しくて、安心して食事に再び手をつける。そんなやりとりをしていると、千冬の考え通り、急ぐ必要が本当に無いのかもしれないと思うから、ミルクをたっぷりと入れたノンシュガーの紅茶を軽く啜る。

「ところでセシリア、風呂はどうすればいいんだ?先に入るか?」

「ぶっ!」

 あまりに唐突な大胆発言に咄嗟に横を向いてセシリアは紅茶を盛大に吹いてしまい、丁度隣に控えていたじいやに思い切り吹きかけてしまった。じいや自身は全く動じる様子もなく、何故か拳をプルプルと震わせながら眼鏡の奥で一夏を睨んでいたし、部屋に控えている使用人たちの間に動揺が走る。

「ご、ごめんなさいじいや!チェルシー、お願い」

 慌てて気遣うセシリアの姿を見て、一夏は朗らかに笑い。

「あはは、セシリアどうしたんだよ、そんなに慌てて」

「い、一夏さん。……わたくしは……勿論やぶさかではございませんが……」

 ちらちらと千冬の様子を伺いながら、耳まで赤くなりながらもじもじとするセシリアを見て、当の一夏は不思議そうに目をぱちくりと瞬きさせていた。

「……一夏、うちとは違うのだぞ…………この規模の邸宅に風呂が一つなわけ無かろう。先も後もない」

 見れば千冬も少し恥ずかしそうに頬を染めながら、目頭を押さえて溜息を吐いている。

「あ、そっか、そうだよな、使用人さん達もいるんだもんな」

 一夏の家は、二階建ての一軒家だ。もうずっと千冬と二人で暮らしているその家には風呂場は当然のように一つしかない。故に、その使用時間は厳密に区切られている。といっても千冬は滅多に帰って来ない為基本的に一夏が好きなように使えるのだが、稀に運悪く一夏が少し出かけている時に千冬が帰って来てしまい、一夏が気付かず千冬の入浴中の風呂に入ってしまった事がある。その時は一夏は本気で死を覚悟した。もしも警察が家宅捜査に入る事があったら、風呂場からは所謂ルミノール反応が大量に出た事だろう。単純に一夏はそれを懸念して、自分はいつごろ入るのかを聞いただけなのだが、

 風呂など好きな時に好きな人が入ればいい、と言うより、自分専用のシャワールームが当たり前のようにあるセシリアにとっては、先に入るか?との問いはつまり、『先に入っててくれ、セシリア……すぐに行くから』くらいの意味に聞こえたし、むしろ使用人たちもそっちの意味に取っていたから。

「…………そんな気はしてましたけれど……はぁ」

 肩透かしにセシリアはがっくりと頭を垂れるしかなかった。

「セシリア……?大丈夫か??」


586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/17(日) 00:50:00.51 ID:7Sgz/XQm0



「一夏さん!一夏さんは、いつもいつも……っ!」

 心配するような声をかける一夏に、つい、セシリアは声を荒げてしまう。どうしてこう、わざとやってるようなボケで振り回すのだろう、どうしていつも肩透かしなのだろう、でも好き!大好き!一夏さん大好き!I Love ICHIKA!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!一夏さん!…………充填120%。セシリアはガタンと椅子を蹴って立ちあがり。

「わたくしは、わたくしはこんなにも……!!一夏さんをおした「はいそこまでー」

「」

 千冬に割りこまれ、口をパクパクとさせながらセシリアは二の句が継げず、千冬を唖然と見つめていた。昨夜は二人きりにさせようとしてみたり、一世一代の告白を潰したり、セシリアはこの人が判らなかった。

「織斑。食べ終わったのならさっさと風呂に行ってとっとと寝ろ。明日はもう日本に発つんだぞ……どうせ、お前は酌に付き合わんのだろう?」

 いつか弟と酒を交わしたいなんて思っているけれど、中々適うまい、なにせ一夏ときたら健康オタクというかなんというか、不摂生をとにかく嫌う。姉が酒を飲むのも余りいい顔はしない。

 もっとも、文句を言えば痛い目を見る事が明らかだから文句は言わないけれど、少し千冬には心配だった、なにせ、日本は20歳だが他の国はアルコールの規制が違う。イギリスのように年齢制限の緩い国もあれば、そもそも年齢制限が存在しない国も存在する。酒との付き合い方と言う文化の違いと言えばそれまでだが、残念ながら、惜しむらくは……。

 千冬お気に入りの義妹候補はイギリス人だ。イギリス人だから全員がそうとは言わないが、セシリアは結構飲む。千冬にとっては、将来、家族として酒を酌み交わすのも楽しみではあったけれど、問題は一夏だ。

(今のうちに免疫をつけさせておいて損はあるまい……)

 セシリアの懸念は、杞憂そのもので。千冬は千冬なりに、二人を応援する立場は崩していなかった。何せ、ここしばらくの連続事件で最もセシリアにデレたのは千冬なのだから。千冬にとっては、この名門貴族当主のお嬢様が最終的な国籍をどうするのか、既にそこが問題だった。

「酌って、千冬姉また飲むのかよ……俺は未成年だし、酒なんて健康に悪いだけだって何度も……なあ?セシリア」

「ぇえっ!…………ぇ、ぇぇ……」

 一夏に話を振られ、酒はいけないと言っている一夏の手前、サイダーが大好きですわ!何て言えなくて、セシリアは動揺しつつ、サイダーの瓶を持って控えているチェルシーに目配せする。

「目が泳いでいるぞ、オルコット」

 目配せされて、チェルシーがやれやれと肩を小さく竦めながら一歩前に出て、一夏に微笑みかける。

 同性でも一瞬どきりとする柔らかな空気と、大人を感じさせる色気。セシリアにとっての理想の美女は、姉のように思っているチェルシーの姿で。セシリアも少し、見蕩れてしまいつつ。少し見蕩れてる様子の一夏を見て、ギリギリと悔しそうに奥歯を鳴らすのだった。

「一夏様、イギリスでは…………(以下略)」

「そ、そうなのか……?じゃあもしかして……そんな……まさか……セシリアも……?」

 セシリアを指さす一夏の手が何気に震えている。まさか呑むのか?と言いたげなその仕草に、セシリアは内心汗を流す。まずい、ここは慎重に答えるべきだ。

(……ひょっとして一夏さんは、お酒を飲む女は嫌い……や、やっばいですわ……)

「そそそそっそんな筈がございませんわっ!!わ、私お酒はきらいでしてよ!」

「ではお嬢様、こちらのストロング・ボウは処分いたしますがよろしいですか?」

(チチチチチェルシィィィィ!?ナナナナナナナ何を仰ってますのぉぉぉぉ!?)

 控えていたチェルシーが真っ先に反応するのをキッと泣き出しそうな眼で睨みつける。チェルシーは、泣く位ならさくっと呑むと仰ればいいのです、とアイコンタクトで主人であり幼馴染であり妹のようなセシリアに微笑みかけていた。




592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/18(月) 00:12:48.73 ID:n8jOy/hh0


「ストロング・ボウ?」

 一夏が首を傾げる、ストロング・ボウと言えばイギリスではサイダーの銘柄だが、日本人からしてみればなんかよく判らない名前に過ぎない。しめた、とセシリアは笑みを深める。これならごまかせるかもしれない。

「こちらはサイダーでございます。ストロング・ボウは英国で最も親しまれているサイダーのブランドでございますわ」

(チェェェェェェェルシィィィィィィィィィィィィ!?)

「おや、セシリアはサイダーが好きだと言っていたが?どうした、遠慮しなくていいのだぞ?」

(お義姉さまァァァァァァァ!?)

 微笑みながら一夏にすらすらと説明するチェルシーと、セシリアの嗜好を事もなげにバラす千冬を、セシリアは追い詰められた表情で交互に見る。姉のように慕う幼馴染と、どさくさまぎれに義姉と内心で叫んだ未来の小姑(予)にハメられたと感じたセシリアは本当に泣き出しそうに両目を潤ませていた。

 その表情が、幼馴染の専属メイドと担任教師にはとても嗜虐心を刺激させて、可愛くて仕方が無い反応で、もうちょっと意地悪してやりたくなる悪循環を生んでいる事にセシリアは気付いていなかった。

「なんだ、セシリアはサイダーが好きなのか、隠す事ないじゃないか、結構可愛い所あるんだな」

「…………!!!」

 対面の一夏の言葉にナチュラルに赤面させられてセシリアは俯き加減に膝の上できゅっと手を握る。もう頭の中はお酒がどうこうではなく、可愛いと告げられた事でいっぱいになっていた。

(……ふむ)(……あら)

 面白くないのは、二人の小姑達で。一番可愛い反応を引き出したのが一夏の天然ボケである事が少し気に入らない。そもそも、セシリアが酒を飲むという事を暴露したつもりが、一夏は日本で言うサイダーのイギリス版であると思っているようだ。


593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/18(月) 00:15:37.82 ID:n8jOy/hh0


「ではお嬢様、一夏様もああ仰っておられますし、お注ぎ致しますね」

「チ、チェルシー……!」

 トクトクと炭酸飲料がグラスに注がれて行く。一夏は良く知っている無色透明ではないサイダーに少し驚いたようにマジマジと見ていた。イギリスサイダーの色合いはクリアな琥珀色で、一見すると日本のビールを薄くしたような黄金色をしている。

(……あぁ……そ、そんなに……み、見ないで……くださいまし…………)

 キメの細かな微炭酸の泡がうっすらと表面を飾る様子等から、一夏にそれがお酒だと気付かれてしまうんじゃないかと思い、恥ずかしさにセシリアは顔を赤くして、潤んだ瞳で一夏を見つめる。

「なあセシリア……これって…… ――ど、どうしたんだセシリア?」

 ふと感じた疑問を口にしようとしてセシリアに目を向けた一夏は目を丸くして身じろぐ。一瞬で鼓動が速くなるようなそんな、同級生とは思えない色気をセシリアの仕草から感じた。セシリアは一夏の目から見て美人だったし、とても無防備で可愛い所があるのも判っている。セシリアが鈴の事を好きでも構わない、傍で見守りたい。その心の誓いに嘘はないけれど、そんな顔をされると、また、欲望が頭をもたげてしまう。さすがにここでゴーサインを出せる程理性はぶっ飛んでいないが。

(なんだ、サイダーを注いだくらいで何なのだこいつら……)

 至近距離でそれをあてられる千冬は軽くうんざりとした顔で体を引いていた。どこから見つめ合って雰囲気を作る流れになった、全く理解できない。若いからか?と思いサイダーを注ぎ終えたチェルシーを見れば、やはり二人が見つめ合ってもじもじしている空気にあてられて頬が微かに引き攣っていた。


594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/18(月) 00:24:45.31 ID:n8jOy/hh0



「……で、何か言いかけていたな、一夏?」

「……あ!ああ、そうそう。イギリスのサイダーって黄色いんだな。なんかビールみたいな……」

「そ、そうですのよ、イギリスのサイダーはリンゴの発泡……いえ、リンゴの炭酸飲料なのですわ!!」

 千冬の追撃に話が蒸し返され、危うく発泡酒とぶちまけそうになって慌ててセシリアが言いなおす。小姑ズの舌打ちが聞こえた気がしたがもうそれに構っている場合では無い。一夏は見蕩れていた気恥かしさからそれで納得したようだったけれど、

「よろしければ、一夏様もいかがですか?」

 チェルシーが微笑みながら一夏の方へ回る。千冬としては日本国内の法律的に弟に飲ませるのは抵抗があったが、ここは英国。郷に入らば郷に従えとも言うし、今はプライベートの食卓なのだ、それに、チェルシーが一夏にも薦めに行った時のセシリアの表情は傑作だった。ここは止めはすまい。別の使用人が運んできたパイントグラスのエールをちびりと傾けながら、一夏の様子をにやにやと眺める。

「あわわ……」

 オロオロしているセシリアは酒のつまみには丁度いい。イギリスのビター・エールは冷えていないのが日本人の舌には不味いと思われがちで、イギリス人自身も大抵は不味いと思っている。しかし、だんだんとクセになっていく味わいの深さが特徴とされており、海外生活が長く、渡航経験も非常に多い千冬にとってはイギリスに着たらこれと決めている程お気に入りの酒だった。

「へえ、これがかぁ……ありがとうございます、チェルシーさん。セシリア、いただきます」

 初めて飲むサイダーの匂いを嗅いだりしつつ、一夏は笑みを深める。フルーティなリンゴの甘い香りが鼻腔を擽り、とても美味しそうだ。セシリアに笑いかけてから、ハーフパイント程注がれたそれを一夏はごくごくと飲み始めた。

(お、終わりましたわ…………流石にこれはバレましたわ……ああ、お酒を飲むなんて幻滅されてしまったかもしれませんわ、うう、チェルシーも千冬さんもどうして今日はこんなに意地悪ですの……)

 深々と溜息を吐きながら、セシリアはがっくりと肩を落とす。

「ふふふ、セシリア。別にいいじゃないか。好きなのだろう?好きな物を嫌いと言うような事の方が一夏は嫌がるぞ」

 言葉は優しく、尤もな事を言っているけれど、千冬の口元はニヤニヤと楽しそうな笑みが浮かんでいる。

「そ、それは……そうかもしれませんけれど……っ……ぅぅ、一夏さん、ごめんなさい、わたくしサイダーが好きなんですの……」

 千冬に抗議の声を上げつつも、観念したように一夏に打ち明け、サイダーをくぴりと小さく飲む。


595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/18(月) 00:26:55.45 ID:n8jOy/hh0



「セシリア!これすっごく美味しいな!!チェルシーさん、もう一杯く ら さい」

「「ぶーっ!」」

 聞こえてくる一夏の明るい声に、セシリアは思わず口に含んだサイダーを、千冬は口に含んだエールを二人同時に吹き出してしまう。

(ま、まさか気付いていないのかこの馬鹿者は……ッ!?)

(せ………………セェェェェフ!ですわ!)

 二人して咳き込みながら、一夏という人物の認識を二人して改める。酒を普段口にしない一夏にとって、イギリスサイダーのように甘く、炭酸のすっきりしたリンゴ味の酒等全くの未体験の味。酒と言われていれば、お酒なのかと予備知識から酒っぽい所が判ったかもしれないが、今回の一夏の中の認識はあくまでサイダー。しゅわっとして甘い炭酸飲料。実際しゅわっとして甘いのだから、少し頭がぼうっとする気はするけれどサイダーとしか思えない。

 ちなみに、ストロング・ボウ・サイダーのアルコール度数は5.3%、大体ビールと同じくらい。イギリスでシェアNo1を誇るサイダーで、日本国内でも洋酒を扱う販売店ならば国内でも気軽に買う事が出来る。


596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/18(月) 00:30:34.69 ID:n8jOy/hh0


「かしこまりました、一夏様」

「チェルシーさんって、リアルメイドさんれすよね……いい匂いがする」


――!?


「あら、いやですわ一夏様ったら……ええ、リアルメイドさんですわ、ご・主・人・様♪なんて」

「ぉぉ……り、リアルご主人様……ッ セシリアはいつもチェルシーさんにお世話して貰ってるんですよね?いいなぁ、俺もチェルシーさんみたいなメイろさんが傍にいてくれたら……きっと毎日が幸せなんらろうな……ねえチェルシーさん今夜は……」


――――!?


 超アウトだった。というかアウトであって欲しい。素面でこんな風に口説きまくる一夏など想像したくもない。そもそもサイダー一発で酔っぱらう等セシリアと千冬が思った以上に一夏は酒に弱すぎる。呂律がやや回っていないのできっと酔っているのだろう。口説き上戸とでもいうのだろうか、煩悩のタガが外れているのか、ジゴロ上戸か、兎も角、一夏がチェルシーを突如口説き始めた。

「い、い、い、い、い……一夏さんッ!!な、ななななな何をしていらっしゃいますの!!!!」

 口をパクパクとさせながらわなわなと震える指で一夏を指さすセシリアを見て、その怒りの表情にも一夏は動じずにへらリと笑う。そもそもタレ目なセシリアが怒っても怖いよりもちょっと可愛いと一夏は思う。

「へへへ、なんらよ、妬くなって……心配しなくたって、俺が愛してるのはセシリアだけらぜ……?」

「――――――!!!!!」

 サイダーをくいと煽ってから、ウインクしながら告げる一夏の笑顔は、酔っていると判っていても鈴の拡散衝撃砲より、箒のブラスターライフルより、ラウラのレールカノンより、シャルロットのパイルバンカーより、簪のマルチロックミサイルより、一撃でセシリアのハートをズギューンとブチ抜いた。ボンと言う音が聞こえそうなほど一瞬で真っ赤になって、セシリアは倒れる。





 薄れる意識の中で、千冬がまるで滑るように残像を残しながら一夏に近づいてゆくのが見えた気がした。


「―――― 酔った勢いとかどんだけだ貴様!!」




597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/18(月) 00:31:25.49 ID:n8jOy/hh0





====RESULT====

○織斑 一夏 [41分28秒 甘い言葉] ×セシリア・オルコット


○織斑 千冬 [41分29秒 姉・瞬獄殺] ×織斑 一夏




603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/19(火) 00:36:03.31 ID:OzJ+eqmA0


――――


「う……ん……」

 セシリアは、懐かしい寝心地の中で目を覚ました。毎日丁寧に手入れされたシーツがとても心地よくて、ここが学園では無いと思い出す。

「……!!!!」

 そして、自分が何故ここにいるのかを思い出して、顔を真っ赤にしながらがばと起きて、部屋を見回す。

「……さすがに、そ、そんな甘い事はございませんわよね」

 あのとき一夏が言ったのは、酔った勢いなのだろうけれど、それでも、とてもとても嬉しくて、目が覚めたら隣に一夏がいて二人とも裸でも全然構わない、というかバッチコイ。流石にチェルシーも千冬もいた以上はそれ以上なんかありえないのだけれど。

「もう……こんな時間ですのね」

 ベッドに運ぶ時に、序でにチェルシーが着替えさせてくれたのだろう、シルクの肌触りが心地よいパジャマを着ている。バルコニーに明かりが見えて、のそりとベッドから降りてそちらへ向かう。


「おう……セシリア、目を覚ましたか」

 カラ、とロックグラスを掲げてバルコニーのテーブルで酒を楽しんでいたバスローブ姿の千冬が笑いかける。

「千冬さん……また飲んでいらしたのですか?」

 緩く笑いながら近づいて行き、椅子を引いて隣に腰を下ろす。今夜はこの季節には珍しく雲が遠く、月が美しい。

「……あの、一夏さん……は?」

 あんな所で、愛してるなんて言われてしまって、それを思い出すたびに心臓が軽快なリズムを刻む。少し酔っていたあの声が耳からも離れなくて。もう暫くは何の栄養も無くても平気かも知れない。



605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/19(火) 00:47:18.07 ID:OzJ+eqmA0



「うむ、滅殺した」

「――――はい?」

 たった一言。千冬の言葉が一瞬セシリアには何を言っているのか判らなかったが、ぐっと拳を握る千冬を見ると、要はボコったのだとすぐに理解する。そこまでしなくても、と眉をハの字に苦笑いするセシリアへ、ロックアイスを入れたグラスを用意しながら、千冬は首を振る。

「まったく、あいつはムードと言うものが全く無い!お前もだセシリア。もうすこしこう……年齢相応にだな、青春をしろ!青春を!お弁当を作って食べさせるとか、手を繋いで赤面したりとか、あるだろう普通……そもそも貴様ら告白も済ませていないと聞いているぞ!?」

 やたらと高級そうな酒瓶を開け、用意したグラスに少し注ぐとセシリアの方へ突き出しながら千冬は息を荒げる。あげた例えの中に弟の死亡フラグが混ざっているがそれはさておき。

「そ、そう仰られましても……わたくしには……って、千冬さんっ!?スコッチはマズいですわよ……!?わ、わたくしまだ年齢的に……」

「ん、そうか……」

 しょんぼりとした顔でグラスを手前に引き、千冬はそれをグイと呷る。思わず見えた千冬のちょっと可愛い表情に、セシリアは小さく肩を揺らして笑っているけれど……ふと、セシリアはそのスコッチの瓶に見覚えがあって、じっと見ていた。

「ん?どうした」



「――……いえ、あの、千冬さん、こちらのロイヤル・サルートは…………」


「うむ、お前の部屋のチェストに隠してあったやつだ。下着の奥に隠すとは念入りだな」

「やっぱりいいいい!!」




607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/19(火) 01:14:04.92 ID:OzJ+eqmA0


――

 セシリアとてまだまだ少女と言っていい女の子、隠し酒のスコッチを一人コッソリとチビチビやるのは、実家に帰ってきたときのお楽しみの一つ。あまり女の子は関係ないが。

「なななな、何で勝手に飲んでいるんですのっ!?それはわたくしの……!!」

 ロイヤル・サルートは、名前にロイヤルがつくとおり王室にちなんだ高級酒で、安いもので日本円で一万円くらい、高いものなら世界に250本しか存在しないヴィンテージがあったりする高級ブランド。勿論、今千冬が呑んでいるのは結構高いほうの酒で

「おやぁ……セシリア、おかしいな……?貴様はまだ年齢的にスコッチがいける年では無いと記憶しているのだが……」

 先程断られた事をやや拗ねているのか、随分ともったいぶった口調で千冬が睫を伏せながらそう告げる。セシリアの隠し酒だと判っていて言っている。なにせ、千冬が発見した時点で開封した後があり、中身も減っていたのだから。

「ぅ……っ……わたくしの……わたくしの……わたくしの~~…………18の誕生日に飲もうと、取っておきましたの……」

 一生懸命言い訳を考えて、なんとか取り戻そうと足掻くセシリアが可愛くて、千冬は喉をクツクツと鳴らし、また一口呷る。

「開封済みで結構減っていたが?」

「そそそ、それは~…………ち、チェルシーが~……」


「ほほう……――だ、そうだが?チェルシー君」

「お嬢様ったら、心外です。お疑いになるだなんて。前回の御帰省の際に内密に買ってくるようにと頼まれてお屋敷を抜け出してまで買ってきましたのに」

「」

 言い訳に困り、頼れるチェルシーに内心謝りながらチェルシーのせいにしたところ、既にチェルシーもグルだったようで……ぎぎぎと振り返るセシリアの背後で、ハンカチを目元に添えて、くすくすと笑っているチェルシーがいた。


「ふん!セシリア・オルコットよ、語るに落ちたな? 代表候補生が自室でコソコソこんないい酒などけしからんにも程がある。貴様はサイダーでも飲んでいろ」

 今回の帰省では少しだけ、こっそりと一夏と飲んだりしたらいいことあるかもなんて思っていた品が、世界最強ののんべえに呑まれてしまう。流石に一人で残り全部は飲みすぎというものだから、大丈夫だろうけれど。


 なんて思ったセシリアがチョロかった。

「――チェルシー君、君はいける口かね?」

「はい、お嬢様に付き合っていつも……織斑様、よろしいのですか?今日は飲みたい気分だったんです」

「ちょっ!!ダメに決まってますわ!?」

 セシリアの記憶では、チェルシーはかなり強い。セシリアが飲みたいときには必ずじいやとチェルシーが席を共にしていた。時々飲みすぎてしまうセシリアをいつもベッドに運ぶのはチェルシーの役目。セシリアはチェルシーが潰れた所を見たことがない。飲み方が上手いというのもあるのだろうけれど、何度か潰そうとしたセシリアは三日間は頭ががんがんするような酔い方を経験する羽目になった。


608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/19(火) 02:01:38.75 ID:OzJ+eqmA0



「ふん、貴様が付き合わぬからだ。そら、起きてくると思ってサイダーもあるぞ」

 ドンとテーブルにサイダーを瓶ごと置くと、早速とチェルシーと乾杯を交わす千冬。千冬もたいがい冷たいが、今日のチェルシーは更に冷たい。

「……え?あら?チェルシー……?どうして……注いでくださいませんの?」

 恐る恐る問うセシリアだったけれど、チェルシーはそれを無視してくいっとグラスを傾ける。

「申し訳ありませんお嬢様、本日の営業は終了です」

「……あの、チェルシー……ひょっとして……怒ってませんこと?」

 恐る恐る伺うように言いつつ、注いでもらえなかったサイダーを自分でグラスに注ぐ。

「お嬢様、あちらをご覧ください」

 大きく深呼吸してから、チェルシーが庭の一角を指差す。言われるがままにセシリアは庭の一角に眼をやる。焚き火だろうか?こんな時間に、誰が?イヤカフスにそっと手を沿え、コンソールだけを呼び出してその焚き火を拡大する。

「…………あの、チェルシー……どうして藁人形を火刑に処してますの?」

「おわかりいただけませんか?よーく、藁人形の着ているものをご覧ください」

「……?」

 着ている物といわれると、どうやら、黒いビキニのようなものを着ている。

「って!あれわたくしの……!!」

「お嬢様、何度も何度も何度も何度も言いましたが、黒はやりすぎです」

「うむ、百年早い」

 うんうんと二人が頷きあっているのをセンサーは感知していたけれど、今はそんなものどうでもいい。バチバチと燃える藁人形と勝負下着に、セシリアはガタンと立ち上がってチェルシーに怒りをぶつけようとしたけれど、その機先を目の笑っていないチェルシーの微笑みに制されて、小さくなって椅子に座り込む。

「それではお嬢様、お説教タイムです」

「今日は緊急の三者面談といこうか、オルコット」

 大人二人に挟まれてセシリアはどちらとも目があわせられない。子一時間後、部屋の中から着信を告げる携帯電話の音が鳴り開放されるまで、セシリアはこってりと担任教師と実質保護者に挟まれて絞られることになった。



614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/20(水) 01:01:22.26 ID:1R0JHdC90


――――


「……セシリア、電話が鳴ってるぞ?出なくていいのか?」

「い、いえ!出ます!!」

 部屋の中から、セシリアの携帯がけたたましく洋楽を鳴らしている。部屋の中へパタパタとパジャマのまま駆けて行くセシリアの背を見ながら、千冬は小さく笑みを零す。

「千冬様、いかがなさいましたか?」

 隣にいるチェルシーも、目で追いながらそっと微笑んでいたけれど、千冬の様子に、その答えが判っているのにあえて問いかける。

「ふっ……いいや……ああしていると本当に愛らしいと思ってな……つい口を出してしまう、すまないな」

 担任で、弟の恋人候補だからと少々過保護だったろうかと困り顔でチェルシーに謝罪の言葉を向けるけれど、チェルシーはそれに首を振る。

「いいえ、それだけお嬢様が愛されているのだと感じます。ふふ……自慢の主です、気高く、美しく、そして強い」

「確かにな、強いよ……」

 ギシ、と椅子の背もたれを小さく鳴らしながら寄りかかる。ああして友達と電話している姿を見ると、まるで日本を発ってから今日までが平和な日々だったかのようだ。

「あら、ブリュンヒルデのお墨付きだなんて、光栄です。きっとお嬢様もお喜びになります」

「……そういう意味ではないよ……そちらの強さの話ならまだまだだ、伸び悩んで塞ぎ込んで、一つの壁は越えたようだが……な」

 IS操縦技術についての強さではないと軽く肩を竦めながらチェルシーに返す。確かに強くはなったがまだまだだ、まだ、ブルー・ティアーズを本当の性能で稼働できただけに過ぎない。それで勝てる程世界は甘くない。同時にまだまだ伸びしろがあるという事だが。

「ふふふっ、判っております……ありがとうございます、お嬢様の事、お任せ致します」

「……まったく、キミは人が悪いな……私は担任だぞ?生徒の事は当然見るさ」

 年下のチェルシーにからかわれた気がして、でもそれも悪くは無いと千冬は小さく口の端を上げる。

「………………………………護り切ったものに内通の容疑などかけられて、心中穏やかでないのだろうに……もう今はそんな事があったのかさえあの姿からは見えん、それどころか、とても楽しそうだ……その心の強さだよ。」

 そして、強いと評した内容を、改めて言葉にした。自分には無い強さ。勿論千冬自身弱いつもりなど無い、ただその質が違う。千冬はそれでも、セシリアの強さが羨ましいと感じて目を細める。

「お嬢様には、本当に辛いことは受け容れてしまう……悪癖、がございますから……。もっと甘えてほしい、頼って欲しいと思うこともあります」

「ックク、そこは寛容……と言ってやれ。だがなるほどな、悪癖か。確かに甘え下手だよ……泣いて甘えたがるのであれば私も邪魔をせんつもりだったというのに……平気で浮かれて背伸びパンツときた。前向きもあそこまで行くと確かに悪癖だな」

 呆れたように庭の燃えカスの方を眺める。丁度使用人たちが残骸を片付けている所だった。黒はいい、実際千冬自身も下着にはそれなりに拘る、相手もいないがそこは女のたしなみという奴だろうと。

(いきなりセクシーランジェリーというのは悪癖で片付けるレベルで無い気もするが……な)

「そんなお嬢様だからこそ、私たちはオルコット家に仕え続けているのです」


「なるほど、良い家だここは。また家庭訪問に来るかもしれん……卒業後もな」


「いつでもお越し下さいませ、お待ちしております。千冬様」




616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/20(水) 02:56:11.96 ID:1R0JHdC90


――


 少し時間は遡って、電話を取りに戻ったセシリアの部屋の中では、セシリアのイメージとは少し違う、ロックの着信音が流れていた。イギリスはウェールズ出身のロックバンド、LostprophetsのCan't Catch Tomorrow。この着信音を設定しているのはたった一人、鈴からの着信だと判るから、セシリアはできる限りの早足で、ベッドサイドの携帯電話を取る為にシーツの上にダイブする。

「もしもし、鈴さん!」

 自然と声が弾む、久々に鈴の声が聞こえると嬉しくなってしまう。まだ離れて二日くらいしか発っていないのに、随分長く離れていた気がする。

『あ、出た出た、んじゃそっちからかけ直して』

「鈴さ――は?ちょっと!?鈴さん?……切れてますわ……」

 ツー、ツー、と通話終了を知らせる電話口に深く溜息をついてから、着信履歴を見て最新の着信をコールする。ほぼ呼び出しまでのタイムラグなく、すぐにまた鈴の声が聞こえた。

「もしもし?遅いわよ!かけ直してって言ったでしょ!時差?」

「……はぁ……全く……電話に時差なんかありませんわよ全く。大体何ですの今のは」

『あー、ごめんごめん、ほら、国際電話って高いじゃない?ってか、何やってんのよー、朝からずっと電話待ってたんだから!』

 つまり電話代はセシリアもちにしろとの事、一瞬切ってしまおうかなんて思ったけれど、掛けなおしてくれる保障は無いし、鈴と楽しく話せるのならその程度のことは些細なこと、ベッドにヘッドスライディングした態勢のまま、自然と足をゆらゆらと動かしてしまう。

「ごめんなさい、いろいろあって少し眠っていましたの……」

 謝罪の声も少し弾む。

『ふーん、ま、いっか。一夏は?そこにいんの?』

 鈴の問いは、今が朝の9時である日本にいる鈴から考えれば自然なことなのだけれど、セシリアにしてみれば現在時刻は0時。そんな時間に男女が二人きりなどとんでもない。と、言っても……計画では思い切り今頃は一夏と一緒だった筈なんだけれど。

「お、おりませんわよ……」


617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/20(水) 02:57:04.83 ID:1R0JHdC90



『そっかそっか、良かった良かった。それより聞いたわよ!あんたサイレント・ゼフィルス落としたんだって!?すっごいじゃない!』

 気のせいか、いや、気のせいではないのだろう。鈴の声がとても嬉しそうに弾んでいる。千冬は毎日学園に定期連絡をしている様子だったし、どこからかそれを聞きつけたのだろう。それとは別になんとなく、それにはラウラの諜報能力が一枚噛んでる様な予感がした。

「でも、逃げられてしまいましたわ」

『いいじゃん、また出てきたら倒すんでしょ?』

「…………」

 沈んでいる様子を見せる前に、鈴の明るい声が耳に届く。この親友の明るい声は、どうしてこんなに、胸に届くのだろう。どうしてこんなに、励ますのが上手いのだろう。

『あれ?聞こえなかった?』

「……聞こえませんでしたわ……………………」

 聞こえた言葉を、もう一度聴きたくて、強請るように言ってしまう。

『アンタんち電波弱いんじゃないの? 次出てきたらまた倒すだけでしょ、って言ったの!』

「……うん、うん……聞こえましたわ……。ふふっ!勿論倒しますわ!ですから、その時は鈴さんは先にやられてくださいな?」

 その強請りを鈴は気付いているのだろうか、それは定かではないけれど。からかう様に返す鈴の声に、セシリアもからかうように告げる。こうして二人で話しているととても心が弾んでくる。互いに。

『ちょっと?調子乗ってんじゃないわよ、そんな事言うやつは次にカマセになるフラグよそれ~?』

「そんな法則、わたくしが曲げて差し上げますわ、ふふふっ」

 偏向射撃の使い手だけに、なんて楽しげに言葉を向ける。親友と呼べる存在はこれまでいなかった。強いて言えばチェルシーがそうだけれど、チェルシーは少し違う。仕事に忙しい母、あまり構ってはくれない父に代わり、いつもいつも傍にいてくれて、優しく、姉のような存在。本当に対等な、共に在る事が嬉しい存在。かけがえの無い友。

『なによその笑い方、きっもち悪いわねぇ!』

「うふふふふっ…………ありがとうございます、鈴さん」

 だから、感謝の言葉が、自然に紡がれる。

『……ん』

 だから、電話の向こうの返事も小さく、言葉少ない。


618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/20(水) 03:00:21.76 ID:1R0JHdC90



「そういえばそちらはどうですか?散らかしていませんこと?」


『……………………………………ん』


「…………今のなっがーい間は何ですの……?

 今鈴はセシリアの部屋にいるはずだ、もうすぐエアコンも必要なくなるけれど、鈴の部屋のエアコンが直るまでは鈴はセシリアのルームメイトである。セシリアの心配としては、部屋にある自分のベッドが先ず第一。何せ鈴が着てからというもの大きいベッドは毎日二人で眠っていたわけで、セシリアがいないなら、鈴が一人で使うことになる。

 一つ、ベッドの上で飲食禁止。

 一つ、ベッドの上に上がるときは寝間着が基本。

 一つ、友達と遊ぶときは友達の部屋で。

 イギリスに発つ前に課した制約だけれど、まず守られているとは思っていない。とりあえずはどのくらいやらかしたのかを確認したい。

『……まぁまぁ、そんな事いいじゃん!金持ち喧嘩せずって言うじゃない?』

「喧嘩になるようなことをなさったんですのね……?」

 思った以上に酷かったようだ、どれも守られていない可能性がある、帰る時には一度チェルシーにも着てもらうべきだろうかなんて思いながら、目頭を押さえる。

『なるようなことって言うかなんていうか…………あー、うん。 ごめんね』

 言い訳を続けようとする鈴の声が言いよどむ。返す言葉がなくなったのか、単に面倒くさくなったのかはセシリアには窺い知る事はできなかったけれど、明るい明るい謝罪がセシリアの耳に入る。不思議と謝罪の筈なのに、とてもとてもイラッと来た。



623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/21(木) 00:16:26.89 ID:G45MzjEu0



「ちょっと鈴さんっ……人の部屋に居候の身で何やらかして下さいましたの!?」

 少し怒ったような声、多分実際に怒ってるのだけれど、あまり強い声色では無い。それはセシリア自身がこのやりとりも楽しいと感じているからで、それは、鈴も同じように感じている。

『あはは、いやほら……ちょっとパジャマパーティを』

「どーしてわざわざ人の部屋でやるんですの!?」

 パジャマパーティはちょっと予想外だった、というか……なにそれ、参加したかった。きっといつものメンバーが集まったのだろうとすぐに想像できる。

『えー、いいじゃん。あーあ、アタシも行きたかったな―、イギリス』

「ですから、次の日にでもエコノミーで自力でおいでになれば迎えに行きますと……」

『いや、片道何時間かかると思ってんのよ!?同じ飛行機で行けばいいじゃないの。大体一般じゃ最速でもほぼ日帰りじゃない……明日の朝そっちを発つんでしょ?』

「時差が理解できて他国の代表候補生がどうして政府機に乗れない事が理解できないんですの?ちょっと考えれば当たり前ですわよ。大体今回はブルー・ティアーズのメンテナンスを本国で行うついでなのですから仕方がありませんわ」

 LHRに向ける航空便の出発は大体昼前、到着は大体夕方になる。セシリア達が出発したのが夜間だったから、運良く翌日の昼の便にうまく席が取れたなら、到着は丁度サイレント・ゼフィルスと交戦していた時間帯だから、今頃は鈴も一緒だった筈だ。

 しかも、翌日の便が取れなければ、確実に入れ違いになる。

『まぁいいわ、今度ゆっくり連れて行きなさいよね~。そんで夏はどうなのよ~?』

「な、何もありませんでしたわ!」

『…………ちょっと、何があったのよ?』

 一発で何も無かったというのが嘘だとばれて、鈴が低めの声で問い詰めてくる。鋭い、というかセシリアの嘘が下手すぎた。

「そ、それは秘密ですわ。でも、鈴さんが心配するようなことはございませんわよ。まあ男女二人で旅行したのですから、これはもうわたくしの勝利は確定的かしら。一夏さんとの愛が深まったのを感じますわ!」

『はぁ……あっそ、よかったわね。……アンタの事だから絶対この前買ってたエロ下着で勝負掛けると思ってたけれど……やっぱり千冬さんに邪魔されたんでしょ、あんたも懲りないバカねぇ』

 安堵したような溜息の後、いつもの軽口が帰ってくる。その声色に少し切なそうな色を感じるから、セシリアはそれ以上の自慢はしない。同じ男性を愛した者同士、恋のライバルだけれど、それ以上に鈴は大切な親友なんだから。

「懲りる理由がございませんわ。鈴さん……わたくし、どなたにも負けるつもりはございません。一夏さんを心からお慕いしております」

「はいはい、ごちそーさま……一夏がそれに気付いてるとは思えないけどねー。」

 鈴からも負けるつもりが無い強気な言葉を予想していたセシリアには、鈴の返す声は素っ気無くて、少しセシリアにはそれが寂しい気がした。




630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:17:01.28 ID:GiXgpw5l0



『…………なによ?』

 僅かな言葉の隙間も、この鋭い親友の前では明確な違和感として伝わってしまうよう。それはちょっと嬉しいななんてセシリアは思うけれど、違和感を感じる側としては黙ってもいられないもので。鈴は少しぶっきらぼうな態度で問いを投げる。

「いえ、なんだかこう、張り合いが無いというか……ひょっとして鈴さん、今生死の境をさまよう怪我でもしていらっしゃいます?」

『してないわよ、どういう意味よそれ』

「どうもこうも、そのままですわ?なんだか、一夏さんから身を引いてるような……ま、まさかついにわたくしに負けをお認めになられたんですの!?」

 嬉しい事の筈だ、いつか、一夏の隣で純白のドレスに身を包む時、そこに鈴の姿が無いのはとても寂しい。認めてくれたのなら、それは。そこに鈴がいてくれるということ、の筈なのだから、とても嬉しい事の筈だ。でも、嬉しさの中に違和感がどうしても生じてしまって、セシリアは言葉を泳がせる。

『……』

「鈴さん?……鈴」

『うっさいなぁ…………どうしろってのよ……認めてなんかいないわよ……でも、でも……あんたが嬉しいって事をアタシがどうこう言いたくないだけで……』

「そんな事で……」

『そんな事って何よ!仕方ないじゃない、アタシはそりゃ好きだけど……そりゃ好きなんだけど……でも……』

 鈴は一夏が好きだ、でも、その気持ちは届かなかった。何度も届かせようとしているうちに、一夏の心の向き先を知った。はじめは簡単に負けるつもりなんて無かった。だからこそ、その向き先を良く知る必要があると思った。

『……あたしは……』

 知れば知るほどに、その存在が大きくなっていった。その姿を追っていた筈が、だんだんと目が離せなくなっていた。そして自分の心の向き先を自覚したとき、気持ちが一気に楽になった。

「鈴……さん?」

『……あ、あんたと一夏の事なんか、ぜーったい応援しないんだから!!』


 精一杯の言葉を吐いて、鈴は一方的に電話を切る。応援なんかしたくない、隣にいたいのは自分だ。負けを認めるつもりなんか無い。


 あんな朴念仁、認めるもんか。


 一 夏 に な ん か 負 け る も ん か 。



631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:20:38.36 ID:GiXgpw5l0



――――



632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:26:22.03 ID:GiXgpw5l0



「帰りは政府機じゃないんだな」

 後部のハッチが大きく開いているその飛行機は、所謂大型輸送機というやつ。今回IS学園へ提供されるイギリスのIS機関からの機材の数々と共に帰路に着くことになる。一夏が男子特有の好奇心でそのディテールをまじまじと見ては目を輝かせている。

「織斑、あまり子供のようにはしゃぐな恥ずかしいやつめ。何なら貨物と一緒に乗るか?手配してやるぞ」

「ははっ、何言ってるんだよ千冬姉。貨物と一緒なんてひでぇなあ」

「……手配してやるぞ?」

「ごめんなさい、織斑先生」

 そんな姉弟漫才を、一緒に居るセシリアが見ていて楽しげに笑って……いなかった。正しくは二人のやり取りさえ見ていない。ぼうっとしながら、空を見上げている。セシリアの笑顔を期待して視線を向けていた一夏は姉から離れ、セシリアの傍に行くけれど、セシリアはそれにさえ気付いている様子が無い。

「……セシリア?」

「――……は、はい!?如何なさいましたか?一夏さん」

 すぐ近くからかけられた声に、はっと我に返りながらセシリアは一夏に微笑み返す。その様子から、セシリアが何か物思いに耽っていた事はすぐにわかって、一夏の勘が、セシリアの物思いの原因は祖国を離れることにあると導き出した。


「セシリア……イギリスを離れるのが寂しいのか?大丈夫だって、また来ればいいじゃないか」

「……は、はあ。そうですわね」


633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:28:43.78 ID:GiXgpw5l0


 違ったようだ。セシリアは判り易い苦笑いで相槌を打っている。じゃあ何が原因だ?考え始めた一夏の頭に衝撃が走り、視界がぶれる。

「機微に疎いくせに思ったまますぐに口にするな馬鹿者」

「ってて、千冬姉……いきなり……うお!?ち、血が出て……っ」

「い、一夏さん、大丈夫ですか!?き、傷口が開いたのでは……チェルシー!一夏さんに手当てを」

 昨日の怪我の傷口がまた開いたのか、たらりと額を赤い物が伝う。駆けつけたチェルシーにより一夏は手当てのために一足先に座席の方へと向かった。

――

「大丈夫でしょうか……」

「大丈夫だ、今更このぐらいでどうにかなる頭ではない。そんな事よりセシリア、貴様こそどうかしたのか?浮かない顔だが、また一夏が?」

 一夏を心配するセシリアの肩を軽く叩いてから、教師としてではない顔でセシリアに問う。何か弟がやらかすようなタイミングは無かった筈なのだが、見えないところで何かがあったのだろうか。二人の仲を応援したい身としては、いい加減にしてほしい程の頻度でやらかしてくれる弟には先程の一発は加減したほうだ。

「い、いえ……一夏さんは何も……」

「む……そうか」

「ありがとうございます、大丈夫ですわ。 さ、機材の積み込みも終わったようですし参りましょう?」

 輸送機の後部ハッチが閉まり始めたのを見て、セシリアは千冬の手をとり、乗り込みタラップのほうへと軽く引く。鈴のことは、学園に着いたら直接聞けばいい事なんだから。


 チェルシーやオルコット家の面々に見送られながら、三人を乗せた輸送機がイギリスの空へと飛び立つ。フライト時間は約11時間15分。現在は正午に近い時間だから、到着は日本時間で連休の終わった明け方4時過ぎの予定。機中で眠っておかないと授業中に舟を漕ぐ事になってしまう。三人は行きよりも座り心地の悪い座席でしばしの休息を取る。



 筈だった。



634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:31:36.73 ID:GiXgpw5l0


 事件はあと1時間ほどで到着すると言うときに起きた。けたたましく鳴る警報音が、三人の安眠を妨害する。かけられているブランケットを跳ね除け、千冬は事態を把握しようと操縦席へと向かう。イギリス国籍の軍用機といえども、学園に向かう以上IS学園の有事指令権を持つ千冬がこの機の全権を持っていた。

「織斑教員、IS学園の管制とつながりました!どうぞ」

 輸送機の副操縦士が千冬にヘッドホンを差し出す。頷きながらそれを受け取った千冬の耳に緊迫した山田教員の声が聞こえてきた。

『織斑先生!織斑先生!』

「聞こえている、山田君、その様子ではそちらでも捉えているな?亡国企業か!」

 輸送機に積んでいるレーダーよりも、衛星とのリンクが行える学園の設備のほうが遥かに正確だ。千冬はヘッドホン越しに聞こえる声で、あまり良い自体ではないことを把握する。IS学園関係者とイギリスの軍事関係者両方をまとめて敵に回すなど正常な者なら当然のように避けるものだ。イギリスでも襲撃をしてきた彼らのリベンジだろうかと、確認するべく声を荒げる。

『いえ……敵は無人機!恐らくゴーレムタイプです!!恐らくあと数分で輸送機を捕捉すると思われます』

 千冬は失念していた。最も危険な、最も厄介であろう敵の存在を。山田の言葉に、千冬は額を押さえて天を仰ぐ。

 ゴーレム・タイプが相手となれば、その標的は絞られてくる。自分自身、それか一夏だ。篠ノ之束も恐らく現状を把握している頃、今回の標的は恐らく箒ではない誰かに思いを寄せてしまった一夏に絞られている。当然その対象となったセシリアを狙っている可能性もある。

 戦力的な分析をしてみれば、一夏を迎撃に出して、高高度で輸送機を護衛しながらの戦闘を行うには、白式はエネルギー不足。セシリアが迎撃に最も適している。しかし……一夏と千冬に関してならば、恐らく、比較的過激な事はしてこないだろうけれど。その標的がセシリアだった場合、その目的は恐らく破壊、輸送機ごとでも攻撃してくると見て間違いない。千冬もISがある以上一夏もそれくらいでは簡単に死なない。

 ただし輸送機と言っても、現在機内にはイギリスの軍関係者もIS学園の研究者も同乗している。このまま撃墜されるのを待っていれば彼らの死は確実だ。狙われているかもしれないと判っていながら、それでも出撃させなければいけない状況。今回の目的はほぼ間違いなくセシリアの破壊と見て間違いはないだろう。

(……私達以外の命などお構いなしか)


 千冬は強く舌打ちをしながら、山田に指示を出し、自らもセシリアの下へ早足にむかっていった。


635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:37:36.82 ID:GiXgpw5l0



――――――



≪セシリア、聞こえるか。飛行型の無人機はこちらで補足しているだけで3機いる、そして今回のやつらには自律機動兵装の装備が確認されている≫

 ブルー・ティアーズ.Q.G.は前述の通り巨大な腰部スラスターユニットが搭載され、相当な重量がある。ISを装着した状態でセシリアは輸送機の後部ハッチを背に、スラスターユニットからランディングギアを下ろして、投下待機状態にあった。その手には以前自壊したチャージ式ライフルではなく、使い慣れたスターライトMk-IIIが握られている。

≪自律機動……ビット!?≫

≪そうだ、だが厳密にはやや違う。紅椿のものと近いな。ブルー・ティアーズに搭載されているイメージ・インターフェースのものとは違う。IS自身の遠隔操作によって自律機動を行うという兵装だ≫

≪なるほど、無人機に精神感応ができるわけもなし、廉価版と言うわけですのね≫

 ほっとしたように返すセシリアの声に、千冬は眉尻を下げて唇を僅かに噛む。

 本音を言えば、行かせたくは無い。この高高度で強制解除されたら、間違いなく助からないだろう。それでも狙われている対象を切り離すことで輸送機の安全を確保するのは、作戦上は非常に正しい。それをセシリアは理解していた。


636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/22(金) 23:43:13.30 ID:GiXgpw5l0


 数分前


「―――― と、いうわけだ。セシリア、行けるか?」

「はい!」

「ちょっ……ちょっと待ってくれセシリア!千冬姉!行かせられる訳ねえだろ!!」

 近くで聞いていた一夏が、血相を変えて二人の間に割ってはいる。今千冬は敵の狙いはセシリアだと言った。本当に死んでしまうかもしれないとも言った、それなのに千冬はセシリアに行けと言う。それなのにセシリアは行くと言う。そんな不条理は一夏には理解できないししたくも無かった。

「セシリアが狙うならセシリアを残して俺が全部落とせば良いだけだ!そうだろう!?俺が行く!!」

「……一夏さん、箒さんはいないんですわよ?三機も落とせまして?それに、白式の推力では輸送機自体を狙われたときの対処が難しいですわ」

「だったら、二人で……!」

「お前が落ちても確かに殺されはしないだろうが、忘れていないか?お前は身柄を狙われているという事を」

「一夏さん、敵機は三機、というのも今のところはの数値です。IS学園のレーダー網に一度もかからずに襲撃を行っているゴーレムがこんなに堂々と現れた、伏兵がいると考えるべきですわ……大丈夫、わたくしは落とされるつもりなどありません。ですから、いざという時の為に、一夏さんはここを守っていてください」

 食い下がろうとした一夏も、千冬とセシリアの言葉を覆せる言葉が見つからなくて、唇を噛んで立ち尽くす。その表情を見つめるセシリアの顔に、一抹の不安の色を見た千冬は、「以上だ、速やかに準備するように」と言い残して二人に背を向けて離れていく。


「……一夏さん……」


「…………ん……っ!?セシリア……今の」


「……お、おまじない、ですわ ―― 行って参ります!」


 背後の二人のやり取りが聞こえてきたが、千冬はそこで振り返る野暮ではなかった。惜しむらくは、もっとムードのある場にしてやりたかったとは思ったけれど。



637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/23(土) 00:05:29.15 ID:9nBZY4oZ0


――――


≪侮るなよ、自律機動故に、本体の状態如何に関わらず攻撃が可能だ…………明確にお前を意識した装備ということだ≫

≪了解しましたわ……廉価版のビットなど全て落とします、わたくしを狙っている以上大丈夫かとは思いますが、輸送機には一機も近付かせませんわ!≫


≪……そうだ、奴らの狙いは一夏の身柄の可能性もまだ捨てられない。一夏がここに残る以上即座に輸送機が落とされる事はなかろうが、かといって取り着かれてしまえばその意味も無くなる。現在既に学園から凰、篠ノ之、更識が迎撃に上がっていると連絡が来ている。三人と合流できれば多少は楽になるはずだ、あまり焦らず、防御に徹して時間を稼いでくれても構わん≫

≪…………わかりましたわ! セシリア・オルコット ブルー・ティアーズ クイーンズ・グレイス、参ります!≫

 セシリアの言葉を合図に輸送機の後部ハッチが開く。一気に流れ込んで、吸い出されそうな風の中ゆっくりとPICで浮き上がり、ランディングギアを格納するセシリアの耳に、教師としてではない千冬の言葉が届く。

≪セシリア……死ぬな!≫

 PICによって軽く浮き上がりながら、青いISは背後の開いたハッチへと流れてゆき、まるでぽろりと輸送機から落とされたように宙に投げ出された。輸送機から十分に高度が離れてから、腰部スラスターを前に向けて思い切り一度吹かすと、輸送機との距離が一気に離れた。もはやハイパーセンサーのズームを使わなければハッチ開閉の確認も不可能だ。スラスターの向きを再度変えて逆噴射で距離を保つと、そのまま巡航状態に入りながら後方より接近してくる機体の反応を確認する。

 未だ目視できる距離ではない、だが、恐らくスラスターの光だろう。星とは違う光が三つ、雲海の上に輝いていた。

 夜明けにはもう少し時間がある。地上よりも星に近いせいか、空の月はとても明るく周囲を照らしている。美しい景色。もしかしたら、最後に見ることになる空。弱気になる心を、首を左右に振って否定するとセシリアは左手の装甲を解除して、ゆっくりと自身の唇をなぞる。

 自身の心に、確かな強さが宿っていくのがわかる。これで落ちたら笑い話だ、篠ノ之束が自分の妹と一夏の関係を応援している事は知っているけれど、そんな事セシリアには関係ない。鈴達が来るまでまだ少しかかるだろう。既に捕捉している三機はセシリア自身が落とすくらいのつもりでなければ勝ちは無い。


「さて……はじめましょうか、篠ノ之束博士。箒さんにならともかく、あなたに一夏さんの事に口を出される筋合いはございませんわよ!!」

 稀代の天才科学者、ISの母、篠ノ之束が無人機事件の背後にいる。同級生である篠ノ之箒の実姉で、極度の差別主義者。曰く、織斑千冬、織斑一夏、篠ノ之束、篠ノ之箒以外の人間に存在価値無し。一夏の為に白式をハッキングにより調整し、篠ノ之箒が一夏の傍にいる為に、オーバーテクノロジー甚だしい第四世代IS紅椿を制作し、時折IS学園に無人機を使って干渉する。

 ブルー・ティアーズのセンサーが無人機から複数の反応が切り離されたのを捉えた。その数を数えていたセシリアだったけれど、20を越えたあたりでセシリアは数えるのをやめる。精神感応ではない自律起動である利点が理解できた。

「数あれば良いというものではございませんわよ……!」

 12基のビットを切り離しながら、セシリアは最も近い反応へ向けてスラスターを吹かした。



643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/24(日) 00:43:19.72 ID:6To5FtMx0



 セシリアの視界に黒く無骨なISが映る。幾度となく学園に襲撃をかけた全身装甲型の機体は、本来必須の筈の操縦者が存在していない。

 背中に大きな翼のついたバックパックを搭載し、両腕のレーザーカノンをそのままに、下半身はもはや足ですらない。

「美しくありませんわね」

 先手を取ったのは飛行型ゴーレムのほうだった、巨大な両腕から熱線が照射され、その余波で雲を大きく巻き込みながらセシリアに迫る。対するセシリアはテンペスト・スラスターを巧みに動かして、速度を殺さないままにロール回避、回避からスムーズに射撃体勢へと移行し、構えたスターライトからレーザーを放つ。

 互いに、まるでフェンシングの試合前にフルーレ同士を合わせるかのような挨拶的行動。続けて互いの放出したビットによる光の嵐が夜の空を明るく照らした。

「この程度の動き……!」

 ビット単体としての性能差は歴然だった。篠ノ之束が自ら製造した無人機といえど、その性能に無人機としての限界を彼女自身が感じているように、自律制御で稼働するビットではイメージインターフェイスを介した精神制御の即応性には敵いようもない。

「―― いただきましてよ」

 まして、セシリアの使うBT兵器はその光条そのものが第二のビットであるかのようにセシリアの制御下に入る。瞬く間にいくつもの爆発が起こり、無人機の放出したビットのその過半数が破壊された。

 無人機は自身の制御下から一瞬でビットの大半が失われた事で一旦速度を緩め、両腕のカノンによる射撃戦に切り替えてセシリアに追撃を行う。生き残ったビットも合わさった弾幕は、少し前のセシリアとブルー・ティアーズならば回避できなかったかもしれない。

 弾幕を正面から、かつてのイギリス国家代表とその愛機メイルシュトロームの得意とした渦を描くようなロール機動で回避する。それを可能にしたのはブルー・ティアーズ.Q.G.のテンペストスラスターの存在と、偏向射撃を使いこなすエムとの激戦の経験だった。真っ直ぐと伸びるだけの光条に今更不覚を取るセシリアでは無い。

 残るゴーレムの自律機動ビット6基の迎撃を背部腰部そして左シールドバインダーのBTビット計8基に回し、右シールドバインダーのBTビットをマウントしながら、スターライトMK-IIIから放たれた高出力のレーザーが、ゴーレムの頭部を破壊せんと放たれる。

 発射後の光条が回避運動に併せて小刻みに動く様は、対人でセシリアと初見に対峙した人間ならば恐怖さえ感じる事だろう。しかしそこは無人機、恐怖等は無く、冷静に次の手を用意する。

 本来人間がそこに入る場所にあるマネキンのような人形の腹部が縦に割れて開く。まるで本当に操縦者の体が裂けているかのようにも見えて、セシリアは悪寒を感じてしまい、一瞬スラスターやBTの制御が乱れてしまう。



644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/24(日) 00:46:18.71 ID:6To5FtMx0



 ――いや

 その悪寒は、本能的に危険を察知したものだったのかもしれない。

「――な……ッ!?」

 無人機の頭部を貫く筈の光が、開腹されたマネキンの内側から現れた円盤に当たると、真っ直ぐと跳ね返されて来たのだから。

 スラスターの制御が乱れていなければ逆に直撃だった。

「対BT用リフレクター……!? ば、バカじゃありませんの!そんな装備……!!」

 精神制御による偏向射撃もビットも万能ではない。あくまで精神制御である為、セシリアが認識できない攻撃をビットは回避する事が出来ないのと同様に、セシリア本人が認識できない状態になれば制御を離れてしまう。まさか跳ね返されるなんて思っていなければ跳ね返った時点から、跳ね返った光条を再びセシリアが支配下に置くまでは完全に制御不能となる。非常に対BT兵器には有効な手段であり、イギリスの研究機関でもBT試作3号機への搭載に向けた研究が進められていたという。

 ただ、その開発計画は現在順延されている。

 実現可能か不可能かのレベルでは無く、あまりにも意味が無い。なにせ BT兵装搭載機は現時点でイギリスにしか存在していないからだ。今後EUにおける第三世代開発のトライアルでBT兵装が採用された際には、このリフレクター技術を持つイギリスが圧倒的なアドバンテージを持つ事になる。加盟国の間でBT兵装の採用が慎重視される最大の問題はBT兵装にはIS適正と別にBT適性を必要とするという敷居の高さだが、これも各国が慎重な姿勢を見せている要因の一つになっている。

 少なくとも、現時点でそれを装備しているという事はブルー・ティアーズかサイレント・ゼフィルスの二機との戦闘だけを焦点に据えているという事に他ならない。

 無人機の向こう側に、クラスメイトの実姉であり、無人機を製造して学園に干渉していると目される篠ノ之束の姿とその意思を見た気がして、セシリアは緊張感に唾を飲み込む

「そうまでしてわたくしを落としたいのですね…………ですが、その兵装の弱点も承知しておりましてよ!」

 リフレクターに関してセシリアは一度稼働試験に参加した事がある。BT兵器は光学兵装の為、弾体に質量が存在せず、熱量にさえ耐えられれば鏡で反射する。ただし光でありながら曲がる特性を持つ為、単純な鏡面では反射させるどころか乱反射を鏡面で起こす可能性があった。そこでBTを反射する為には反射に指向性を持たせる為ミリ単位の角度調節をリアルタイムで行う必要がある。

 イギリスで実験したものとゴーレムが搭載しているものはほぼ同じ構造と考えて良い筈。ならば、その欠点として反射の持続時間が短く、再反射までに一瞬の隙がある。もっとも、それもコンマミリ秒程度であり、ただの乱射程度ならば十分なのだが、持続的な照射には耐えられない。



645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/24(日) 00:49:17.11 ID:6To5FtMx0



 そしてセシリアのQ.G.には、それを破る為に最適な兵装が存在している。自爆ライフルとオルコット邸に向かう車の中で一夏が命名していたスター・ゲイザーVer1.2はチャージ時には照射型となる為にリフレクターを破壊できるが今日はあの不良品は装備していない。それ以外。断続的にレーザーを照射し続け、敵を切り裂く為の刃を偏向制御の応用で作り出す、BT固定展開可能多機能モデルのビットならば、リフレクターごと切り裂ける。

「参りますわよ!!」

 残る自律機動ビットを破壊し終えた女王の騎士が戻ってくると、先に戻っていた右肩のユニットからBT固定展開可能多機能モデルのビットを切り離し。意識をレーザーソードビットモードに切り替えると、4基のビットがレーザーブレードを展開しながらセシリアを中心としたフォーメーションを取る。エムとの戦闘では、シールドバインダーにマウントしたまま三本を文字通りクローのように使ったが、本来はこの使い方が正しい。

 そしてセシリアがスラスターを全て後方に向けて、ゴーレムめがけて正面から全力で突撃する軌道に入る。待ちうけるゴーレムもまた右腕の砲口からブレードを出現させ、セシリアの機動と交差するように加速。

 セシリアが加速したままスター・ライトMK-IIIを構え、BTエネルギーの光条を放った。当然のように、セシリアの主武器である偏向射撃ライフルをこの高速域で回避するのに最も適した装備であるリフレクターが展開され、セシリアは反射されて来たレーザーを、レーザーブレードビットを3基残して左にロールしてかわす。

 そして二機はスラスターの炎を弱める事無く高速で交差した。


――――


 ゴーレムのブレードを弾いてセシリアを守ったブレードビットが、まずシールドバインダーの上側にマウントされ、続けて残りの三つが下側に戻る。セシリアは振り返りもせず、Q.G.のバイザーを起こし、片目を閉じる。


「……―― ちょろいですわね」


 セシリアの背後で、腕を、胴からスラスターを、展開したリフレクターごと頭部を其々切り裂かれたゴーレムが力を失い、加速による慣性とGをまともに受けて空中分解しながら、いくつもの光球となって爆発していった。

 一機目を撃破し、次の無人機を捉えようと逆噴射をかけて輸送機の方向へ向かい、再び間合いを離そうとする。一機づつをヒット&アウェイで撃破し続ける事で数的優位を持たせないつもりだったが……流石にそれは甘かったようだ。

「――ッ!!!」

 まさか輸送機側にもう入られているとは思わなかったセシリアの眼前に無人機二機分の無数のビットが迫る。一機目を一瞬で撃墜されたからか、元々そのつもりだったのかは判らないが、これで輸送機は伏兵のいない限り無事が確認された。

 ホッとしている暇も無く、慌てて左右のテンペスト・スラスターを前後に向けて一度吹かし、クイックにロールを入れてから一気に片側に揃えて吹かし、ほぼ直角に進行方向を変える。凄まじい圧に機体各所への警告が次々と表示されるが、直撃されるよりはましだ。なんとか態勢を整えながら、無数の自律機動兵器が此方の未来位置を予測して射撃してくる弾幕を、その予測よりも速く動く事で避ける。

 レッドアウトやブラックアウトこそISでは起こりようもないことだけれど、過負荷による機体への損傷は免れない。苦し紛れに近くても、セシリアにはビットを出して自律機動型ビットを少しでも多く減らす必要があった。




652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/25(月) 00:01:59.38 ID:epDWrxqo0




――――




 夜明け前の空、雲を超えた満天の星空の世界を三機のISが駆ける。

「鈴、待て!先行し過ぎだ」

「あんた達もっと飛ばしなさいよ!チンタラやってられる状況じゃないのよ!!」

「……凰さん、心配なのは判るけれど……あなたが一人で先行しても意味が無いわ」

 先頭は中国代表候補生 凰 鈴音 の甲龍・高速機動パッケージ「風」装備。最後尾は日本代表候補生 更識 簪 の打鉄弐式。そして二機の間をもつように、一般生徒 篠ノ之 箒 の紅椿が、織斑姉弟とイギリス代表候補生 セシリア・オルコットが乗る輸送機が無人機の襲撃を受けた報せを聞いて対空迎撃に空へと上がっていた。

 第二世代ゆえの明確な出力不足が否めないフランス代表候補生 シャルロット・デュノア のラファール・リヴァイヴ・カスタムIIは学園に残り、上級生と共にもしもの時の最終防衛ラインとして待機している。

≪鈴、箒、更識、こちらラウラだ。まもなく私も上がれそうだ。……今の所此方からは伏兵の存在は確認できていない、だが、上空に上がるまでは各自警戒は怠らないでくれ≫

 そして、ドイツの代表候補生 ラウラ・ボーデヴィッヒ のシュヴァルツェア・レーゲンは、ラウラが軍属である事から用意されていた指揮官機用パッケージ、[梟王]オイレ・ケーニッヒ(E.K.)を装備する為、現在、学内の専用機を担当している整備課生徒総動員で換装をすすめている所だった。

 大型のレドームユニットを背面に搭載し、目元を完全に隠すように下ろされたバイザー、機体各部の攻撃武装がオミットされ、全体が特徴的なステルス装甲に覆われている。機能面では旧世代のAWACS機としての機能を有し、登録したIS同士を自機を仲介にデータリンクさせる事が可能であり、高性能レーダーの搭載による策敵能力の他、データリンクシステムとの同時使用は不可能ながら、強力なECM兵器の使用も可能な電子戦特化型兵装となる。

 ここまで明確に軍隊としての運用を前提としたパッケージを開発していた事は、以前VTシステムによる不祥事を起こしておきながら大胆としか言いようがない、学園での使用はこれまで禁止されていたが、今回の有事に際し千冬の鶴の一声で急遽使用許可が下りた形になる。

「教官、あなたの期待に私は必ず応えます……」

 遅れての出撃となるが、オイレ・ケーニッヒの哨戒能力ならば、伏兵の存在を事前に察知して対処ができる。束にしては判りやすい襲撃を行ってきた所から、高確率で罠があると千冬はきっと読んでいる。今はその情報に確証が欲しい筈だ。

(ならば、私がその手助けをする!)

 ラウラは、整備室のモニターに映し出される広域レーダーの光点を見つめながら、ぐっと拳を握った。真っ先に飛び出したかった気持ちを抑え、前衛を預けた先行の三人の光点は既に学園から遠く離れている。

「それまで……頼むぞ」


653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/25(月) 00:14:09.03 ID:epDWrxqo0



――――


「……もうすぐ輸送機が見えてくる頃…………」

 他の二機よりも、兵装の性質上センサー類の強い簪が、手元に出現させたパネルを片手で操作しながら二人に告げる。今日の空は厚い雲に覆われていて、眼下には雲海がどこまでも広がっていた。

「伏兵がいるなら……仕掛けてくるのはそろそろか」

 箒は両手に二本の刀を呼び出しながら、慎重に周囲を見回す。その様子に、前方の鈴が呆れたような声を投げる。

「あんたねぇ、センサーの広角視野は何のためにあんのよ……それにあんたは戦っちゃだめよ?」

「な、何故だ!」

「……篠ノ之さん、織斑先生の話を聞いていなかったの?」

「あんたは輸送機に到着次第一夏とセシリアのサポートに入るんでしょうが、いくら絢爛舞踏が使い放題だからってその前に落とされたらどーするつもり!」

 簪も鈴も、出撃前の簡易ブリーフィングでも言っていたし、一番元気にハイと返事していたのが箒だっただけに、少し呆れたような色が声に滲む。箒のそういう所は嫌いでは無かったが。


「し……しかし!………………お前達だけでは……」


「――」「…………」


 自分だけ第四世代だからと最近このモップ調子に乗ってないかと、鈴も簪も今のは結構カチンときた。


「……今なんか言った?あはは、良く聞こえなかったんだけれど」


「……篠ノ之さん、私あなたとはまだ戦ってない」


 鈴が天牙双月を呼び出しながら苦笑いしつつ振り返り、箒の背後からはロックオンアラートが大量にディスプレイに表示される。

「ま、まてお前達!私は別にそんなつもりで言ったのでは……!!」

「素で言ってんのが尚悪いのよ!」

 緊急事態であってもこうやって騒いでしまうのは、女子高校生、所謂JKの特権なのだろうか。ふと箒は背後からのロックオン警告が一気に消えた事に気付き、簪の方を振り返る。

「凰さん!正面に……ッ!!」

 簪のそんな声を聞いたのは初めてで、でもだからこそ、それほどの事だと判断できる。

 前を向いた鈴の視界には、ISの一部分、どこかのパーツのようなものがいくつも浮いていた。どこか見慣れているようで、それとは全く感じが異なるもの。


(……あれ?そういえば今回のゴーレムは確か……何か、装備がって山田先生が……)



「―― 鈴!避けろ!!ビットだ!!」



 正面、そして雲海の中から、光の乱舞が三人全員に襲いかかった。







「きゃあああああっ!」



654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/25(月) 00:47:27.70 ID:epDWrxqo0


――――


 最初の被弾は簪だった。最も実戦慣れしていない専用機持ちだけに多少の被弾は仕方が無い。強制解除になる前に彼女を逃がさなければ。箒がそう思っていると、爆炎が晴れて見れば簪は物理シールドを即座に呼び出して辛うじて防御している。初陣の相手がゴーレムタイプだった簪はある意味で純粋な実戦だけの経験を積んでいるとも言えるか。

「驚かせるな、動けるか?」

「――ッ! と、当然でしょ……」

 一方、正面と下方の二面攻撃をまともに受ける事になった鈴は被弾こそしたが被害を最小限に留めていた。

「……くっ、こんなモンに当てられるなんて、セシリアに合わす顔が無いわね……!」

 損傷が軽微である事を確認しつつ、鈴は加速しつつ衝撃砲を雲の中に向かってばら撒く、元々キャノンボール・ファスト用に調整された風はやはり高機動時にこそその真価を発揮する。

≪こちらラウラ、換装は終わった!私もすぐに上がる。敵か?全員落ちるなよ!≫

≪こちら箒!伏兵と思われるゴーレムと遭遇、交戦状態に入った。敵は雲海に潜っており数は不明!≫

 箒も紅椿のビットを切り離しながら、ラウラからのオープンチャンネル通信に回答する。ラウラが所定の高度に達すれば、敵の位置は全て見えたも同然になる。せめてそれまでの間だけでも、誰一人欠ける事無く切り抜けなければならない。自律機動兵器、所謂ビットのスペシャリストは身近にいるし、自身にもその兵装は搭載されている。だが、狙撃手である彼女との模擬はいつも開始位置から、限られた互いを常に視認できるフィールド内での戦いだった。これで模擬最弱と言われても確かに不満も漏らしたくなるかもしれない。

「なるほど、これが真骨頂とすれば、確かにこれは想像以上に厄介だ!」

 雲海の中は激しい気流と水蒸気、そして大量の静電気のせいでセンサーがほぼ役に立たない。見えない敵、見えないビット。これほどに厄介な事も無い。もし模擬戦の戦場が隠れる場所があったなら……いや、セシリアはなんとなく隠れない気がした。

「更識!雲の中の敵をロックオンできないか!?」

「無茶を言わないで……すぐは無理。30秒だけ時間を頂戴……」

 無茶を承知で口にした箒の言葉を、事もなげに30秒で実現すると返す、日本の代表候補生の言葉に、嬉しさを感じるのは自分があくまで日本人だからだろうか。自分の祖国を代表するかもしれない少女はやはり本物だ。

「よし、簪!私がそれまでお前を護る!頼むぞ!!」

「……!」

 簪に背中を向けて刀を構える箒の背中を見て、簪は、簪と呼ばれた事に目を丸くする。本当は一夏だけにそう呼んで欲しかったけれど、悪い気はしない。そういえば、他の専用機持ちは皆ファーストネームで呼び合っていたと思い出し、なんだか、頬が緩んでしまう。クールなキャラでいたかったのに。


「…………任せて、箒……」


 簪が両手で空中に浮かんだ二つの仮想キーボードを叩く。ピアニストの演奏のように十本の指が、雲の密度や現在の気温、時刻、気圧、その他諸々の情報を演算し、知るべき解を求める。数式の向こうに、雲海に隠れたターゲットの姿を捉える為に。



655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/25(月) 00:49:40.71 ID:epDWrxqo0



――――



「――っこのォ!!」

 風の衝撃砲はどうしても出力が機動に支障が生じ無い程度に抑えられている代わり、これまで以上の指向性と連射が可能になっている、空間を圧縮する兵器という特性上、衝撃砲は雲海に着弾すれば大きく雲を巻き上げ、水蒸気の絨毯を次々に抉り取って行く。

 鈴には紅椿のような火力も無いし、打鉄弐式のような高感度のセンサーも、簪のようにその場で兵装のプログラムを調整書き換えする技術も無い。天性の勘と、こと戦いにおける冷徹さ、あくまで冷静に、その瞬間における最善手を引き出す。それは才能と言えるのかもしれない。あの窮地において一年最強のシャルロットを撃墜した事でついた自身が、鈴自身の戦闘における勘の働きを進化させていた。

 めちゃくちゃな砲撃のようにも見える衝撃砲の連射は、確実に無人機の放つビットの数を減らしていく。ビットの動きが、センサーに頼らなくても今の鈴には視えている。それは、ビットのスペシャリストであるセシリアとの生活が長い事にも起因しているのかもしれない。本当にそうかは判らないけれど、鈴の感情はその理由に昂っていた。

「ブルー・ティアーズ相手に比べればこんなもん……ちょろいってのよ!」

 にぃっと口端を上げて健康的な笑顔を見せると、糸切り歯が特徴的な歯がちらりと見えた。

「―― !」

 その時、雲の奥から、大きな熱量が周囲の水蒸気を更に蒸発させる光線が放たれて来た。すんでの所で鈴は回避したが、これはとてもではないがビットの火力では無い。つまり……。

「ビンゴ……ビットに高出力のレーザー……まるでセシリアもどきじゃない!そーいうの気に入らないよ!」

 ぐっと足に力を込めるように前のめりになりながら、その射線から逃れるように鈴は雲の中へと飛びこんでゆく。視界の悪さなんか吹き飛ばせばいい。相手は無人機、親友を真似た代償は高くつく。遠慮なくやらせてもらうまでだ。




666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 00:31:22.55 ID:GFBiLOqo0

久々に更新いたします。

普通に忙しいままなんで長く空けた割にあんま書けてませんがお付き合いいただければ幸いです。


~~これまでの あらすじ~~

 イギリスで新型パッケージ、クイーンズグレイスを受領したセシリア、一夏、千冬を乗せた輸送機が日本へと向かう中、突如現れた飛行型ゴーレムの襲撃を受ける。

 孤軍奮闘を続けるセシリア。援護のためにスクランブルした鈴たちの前に、伏兵が立ちはだかる。

 夜明けを迎える雲海を部隊に、実戦環境での集団戦が始まっていた・・・。
 
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/07/31(日) 00:33:02.80 ID:GFBiLOqo0

>  夜明けを迎える雲海を部隊に、実戦環境での集団戦が始まっていた・・・。

夜明けを迎える雲海を 舞 台 

いきなりやってしまった。

以下更新です

668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 00:33:54.05 ID:GFBiLOqo0



 セシリアを真似たような武装なだけあって、無人機は鈴の甲龍との近接戦闘は不利と判断したのか、鈴との距離を保つため背中を向けて逃げ始めた、当然格闘戦に持ち込む為に鈴が追い、無人機と鈴のチェイスが始まった。

「鈴!あまり追い過ぎるな!鈴ッ!」

 後方で簪に迫るビットに対処しながら、箒が叫ぶ。敵機を逃がすわけにはいかないのは判るのだが、明らかに自律機動ビットの数が多すぎる。コントロールしているゴーレムが逃げに入っても簪への攻撃の手を緩めないのは、それが自律機動型だからというだけの事なのかもしれないけれど、最低でももう一機伏兵がいると考えておく方が無難。

 歯がゆい思いで鈴が飛び込んでいった辺りの雲を見下ろす。巻き起こった風圧にちぎれた雲が靄のように揺らめく其処へ今飛び込めば間に合うのだろうか、手にした二刀でビットを斬り落としながら悩む箒の耳に、雲の中の反応を拾えるようにその場でセンサーのシステムを修正していた簪の声が聞こえる

「……箒!いけるわ、離れて!」

「わかった!」

 紅椿が離れると同時、打鉄弐式のミサイルポッドのカバーが開き、雲の中まで含めたマルチロックオンが完了する。以前のタッグマッチの際には未完成だったマルチロックオン機能は、和解した姉の楯無や布仏姉妹、黛先輩らの協力を得て遂に完成した。ポッドから次々とミサイルが発射され、雲の中の対象を追ってゆく。

 そして、まるで雷鳴のような音を響かせて、いくつもの弾頭が次々と炸裂する。爆風によって荒れた雲海の奥から、右腕の大口径ビームの砲門からレーザーソードを発生させて無人機が飛び出してきた。鈴の追う相手とは逆に、簪と間合いを離す事が不利と判断したのだろう。

「やらせるかっ!」

 飛び込んでくるゴーレムに対し、簪を守る為に立ちはだかる箒が刀を交差させて両手でゴーレムの攻撃を受ける。刀身の帯びているエネルギーフィールドとレーザーが激しく火花を散らした。

「箒っ!もう一回、今度は集中させて行くわ、離れて……!」

「くっ……難しいことを言ってくれる……な、簪」

「……ぁ、ご、ごめんなさい……つい」

 やっぱり少し馴れ馴れしかっただろうか、不安げに簪の顔が曇る。

「ふっ……何を謝る!守ると言ったろう? やれるさ!私と、この紅椿なら!!頼むぞ!簪!」

 箒の力強い言葉が、簪の不安を晴らしてくれる。仲間の背中、長いポニーテールの揺れるその背中が簪から離れてゆく。ただ離れるだけなら誰にでもできる。だがただ離れれば簪を敵の眼前に晒すことになる。簪はそれでも切り抜けて再びマルチロックオンミサイルの弾雨を降らすつもりであった。



669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 00:40:51.33 ID:GFBiLOqo0




「うおおぉぉぉおおおっ!」

 箒は裂帛の気合を吐き、紅椿の肩付近のアーマーをスラスターへと変形させ、鍔迫り合いのまま無人機を一気に押し出して、簪から一定の距離を取る。

 距離を確認し、思い切りゴーレムを今度は蹴り飛ばす。堪らず仰け反りながら離れる無人機に対し、紅椿のビットが左右からの追撃を入れ、更にゴーレムの動きを止めた。簪が言った「離れて」とは違う状況ではあったが、その位置取りならば、マルチロックオンミサイルの弾道上に箒も無く、ましてロック中に迫撃される心配も無い。

 完璧すぎる箒の仕事、ここで自分が失敗するわけには行かない簪は一つ大きく息を吸ってから、先程のセンサーによるエイミングから、イメージインターフェイス操作による視線を注ぐだけでできるマニュアルロックオンに切り替え、動きの止まったゴーレムに対し全弾のロックオンを集中させる。

「……これで、決める……っ!」

 ミサイルポッドから放出される無数のミサイルが一度大きく花の様に広がり、煙を引きながらゴーレムに向け集約してゆく。一発一発の火力はそうあるわけではないけれど、幾度も連続して起こる爆発の回数は確実に着弾数を上回った。


「簪!」


「……うん!」


 四散して雲海へと落ちてゆくゴーレムの残骸を見てから、ぐっと片手で拳を握り、軽く掲げる箒の姿は、丁度空けはじめた日を背にしていたから眩しくて、簪は眩しそうに目を細めて箒と同じ仕草をした。



670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 00:57:19.93 ID:GFBiLOqo0



――――



≪こちら織斑、凰か?そちらの状況はどうなっている!?≫

 雲の外の様子はわからないけれど、千冬からオープンチャネルでの通信がダイレクトに入った。鈴は追跡しながら中距離レーダーを開き、思った以上に輸送機の近くまで来ていたことに小さく舌を打つ。逃げに入っているとはいえ相手はIS。輸送機ともし接触したならば、一瞬で航空機など破壊してしまう。それをさせない為、輸送機を危険から遠のける為に迎撃に出ていて敵を輸送機に辿り着かせたのでは、何の為に上がったのか判らない。

≪こちら鈴音!ゴーレムがちょこまかと……!雲の中をそちらに向かって追撃中!――ます!≫

 話し口調で返してしまった言葉を、無理やり語尾だけ整えて千冬に返す。

≪やはり伏兵がいたか……!≫

≪鈴!大丈夫か!? 千冬姉!ハッチを開けてくれ!俺も出る!!≫

 オープンチャネルに一夏の声が飛び込んでくる。久しぶりに聞く幼馴染の声は、とても、とても切羽詰まったもので。それが少し嬉しいと感じてしまうのは、別に親友への裏切りではない筈だ。だって一夏が幼馴染で、優しくて、ちょっと優柔不断だったり、凄く鈍感で、わざとやってんのかってくらい天然ジゴロで、一番好きな異性である事には変わりはないのだから。単純に性別問わずなら……

≪一夏!セシリアは無事なんでしょうね!?≫

 何かあったらぶっ飛ばす。それは言葉にして言われなくても一夏に伝わった。

≪無事……だと思う≫

≪はぁ!? だ と 思 う !? 一夏あんた男でしょ!ねェ!?≫

≪う、うるせぇな……俺だって心配なんだよ!≫

≪いい加減にしろ貴様ら、今は戦闘中だぞ。オルコットは先行して現れた無人機三機の迎撃に出た。今二機目の敵機反応が消えた所だ≫

 千冬のドスの効いた声が二人の言い合いを中断させる。そして告げられた内容に鈴はぎょっとした。サイレント・ゼフィルスを撃墜したと聞いた時は、純粋に凄いと思えたが、箒と簪が二人がかり、自分は仕留めきれずにチェイス中のゴーレム三機と戦って二機を既に撃墜している。異常だ、セシリアに何があったのか、心配にすらなってくる。


671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 01:02:35.79 ID:GFBiLOqo0



≪良かった……セシリア、流石だな≫

 鈴の耳に聞こえた一夏の声が嫌に優しい。昨日、セシリアには昨夜のことだが、鈴には昨日の話。電話口で聞くセシリアの声はとてもとても弾んでいて、嬉しそうに一夏の事を話していた。まぁどうせいつもの事かとタカをくくっていたが、まさか

≪ちょっと一夏……セシリアとなんかあった?なんかいつもと違うじゃない≫

≪ぃいッ!?≫

 明らかに動揺した声が返って来た。という事はつまり、一夏の方から見ても動揺するような何かがあったという事。以前の一夏なら「久々に故郷に帰ったからじゃないか?」くらいしれっと言いそうなもの。誤魔化しているのではなく、結構本気で。全く鈍感極まりないこの一夏にそこまでの反応をさせる何かをセシリアはしたのだろう。

 一夏にしてみれば、セシリアが出撃する直前のあの出来事が脳裏に浮かぶ。ふわりと薫るバラの匂い、唇に触れる感触。姉の目の前ではあったけれど、何故鈴がそれを知っているんだという気持ちになる。姉か?この非常事態に姉がばらしたのか?尤も、それが無くても何かあったのかと聞かれれば色々あったわけで同じような反応を返したろうし、ばらされていなくても一夏の言葉も鈴の反応もきっと変わらなかったろう。

「ったく……かんっぺきに先を越されてるじゃない」

 一夏側の気持ちさえ動かしたのかと理解した以上、もう一夏に聞くことはない。一方的に通信を終えて追撃を再開する。一夏はそのまま輸送機のハッチ内で待機していればいい。その為にも、このゴーレムは何が何でも落とさなければいけない。ぎり、と奥歯を噛みしめ、更に加速しつつ、衝撃砲の出力を落として左右二点射でばら撒く。一発目はゴーレムを真っ直ぐ狙い、二発目はゴーレムが雲海の奥へ逃げようとするであろう位置を予測して撃つ。偏差射撃なんて、特筆することも無い基本技能だけれど、これは二点射であることに意味がある。

 無人機の挙動は即ち、自律機動。搭載されたコアが即応性によって回避を行う。視覚できない筈の衝撃砲を避ける程となれば相当のもの。しかし、避けられることを前提にした射撃ならば――。

「やっぱりね」

 ゴーレムは人間には不可能な回避を行う。なにしろ人間のような脆い内臓や稼動域の限られた関節などなんか無いのだから。必ずその攻撃に対する最善を選択して回避する事ができる。しかし、それ故に……対人ならば発射間隔の短い偏差射撃は初動前に発射されている為容易に読まれてしまうものだが、はじめの攻撃に対して、無人機としての最善である雲海の奥に向かう回避先に置かれた射撃が、吸い込まれるようにゴーレムに命中する。


672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 01:14:08.70 ID:GFBiLOqo0



「正確過ぎるなんて、やりすぎじゃない?」

 予想通りの結果に笑みを深くすると、鈴は追撃の為に同じ二点射を連続で発射する。しかし、一度直撃したことで学習したゴーレムは、二射目からの回避方向を、二発目に反応し、一発目を二発目の置かれた方向と反対側へと回避する。一度通用した手は二度は通用しないと言うことだろう。厄介な相手だ。


―― でも


「最も反応の遠い位置、最も安全なポイントを選択する。ほんと……セシリアそっくり……回避方向の誘導がしやすいのよアンタ達って!」

 乱れた雲海の表面より少し深い位置で戦っていたゴーレムが、東から昇る太陽の光に薄く照らされた雲の上へ飛び出る。姿が見えてしまえばこちらのもの。輸送機のビーコンが西の空に目視できる。身を隠すものが無くなって、ゴーレムが再び雲海へと飛び込もうとするが、そこへ最大加速の鈴が突っ込んだ。「風」パッケージの特徴として、胴体部分に鋭角的な機首状のパーツが取り付けられている点がある。勿論そんな使い方は想定されていないが、鈴はその機首をゴーレムにめり込ませるように突撃した。

 メキメキと互いの装甲が悲鳴を上げる。不自然な体勢のまま甲龍の最大加速に浚われながらも、ゴーレムはブレードを展開して足掻くように鈴への攻撃をしようとするが、それも、鈴には計算のうちだった。「風」パッケージの緊急パージ。増設されたパーツを残し、鈴の体が離れてゆく。虚しくブレードが宙を切ったと同時、脱出した通常パッケージ状態に戻った甲龍の両肩、そして両腕から衝撃砲が連続して放たれ、パージしたパーツごとゴーレムの各部位を打ち砕く。

「次はアタシを真似た方が良いんじゃない?セシリアはセシリアだから強いのよ」


673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 01:32:02.84 ID:GFBiLOqo0



≪こちら織斑、よくやったな、凰。しかし大丈夫なのか?パッケージのパージを行ったようだが≫

≪大丈夫です!セシリアは!?≫

≪まあ待て、もっと頼りに奴が来た……≫

 鈴のせっつくような言葉の勢いに、千冬は耳に添えていたヘッドホンを離しながら返す。もっとも、コアネットワークを介しての通信である以上そんなものは無意味で、鈴の声は千冬の鼓膜に突き刺さったけれど。……鈴が戦闘中に教え子からまもなく所定の高度に到着すると連絡があった。恐らくそろそろ……


―― イメージBGM Ace Combat 6 Misson12 -Fires of Liberation-


≪こちらシュヴァルツィア・レーゲン.E.K. ラウラ・ボーデヴィッヒだ。レーダーの感度良好。 各機データリンク開始。鈴、箒、更識。待たせたな……と、言っても、もう二機とも落としたのか……一夏も聞こえるか?そういうわけだ、バックアップに入らせて貰う。此方から情報を送るので情報の更新をしてくれ……隠れている伏兵は全て焙り出す。各機奮戦せよ≫

≪ラウラ!遅かったわね、奮戦……?殲滅戦の間違いでしょう?≫

≪ふっ……何機来ようと私と簪ならば落としてやるさ、一夏も聞こえているな?お前は今回は出番がなさそうだぞ!≫

≪……えっ?えっ!?な、何ですの?どうして急にラウラさんからの通信が……えっ!?鈴さん?箒さんに、更識さんまで??わ、わたくしまさか、ゴーレムに誘導されて輸送機の空域まで……っ!?≫

 急に賑やかになる通信にセシリアのうろたえる声が聞こえる。通常の通信と違う、まるでプライベートチャネルでの通信のように聞こえる沢山の仲間の声。輸送機から敵を引き離しながら戦っていた筈のセシリアにとっては、それはまるで自分のミスに感じられているかもしれない。そう思うと、非公式な私闘含めてとはいえ二連敗しているラウラにとっては少しばかりいたずら心を擽られるけれど。今はそれはいい。自分の声がセシリアにも届いているのだ、それはつまり、このオイレンケーニヒの性能を保証するものであり、そして、セシリアが落とされる前に間に合ったということ。

≪セシリア、借りを返しに来たぞ?≫

≪ラウラ……さん……≫

 本来の意味でのこの「借り」は別の意味だけれど、ラウラにとっては同じ意味で、セシリアも同じ意味を共有しているのか、驚きつつも、少しばかりの嬉しさが声音に滲む。

 そうなると、鈴としては若干面白くない。

≪ずるいわよラウラ!!セシリア、すぐにそっちに合流するから!アンタは何もしなくてももう大丈夫よ!≫

≪……落ちついて、凰さん……何もしなかったら落ちちゃう……≫

≪みんなッ!セシリア!無事なんだな!?よかったぜ≫

 一夏は、通信のおかしさに気付いていないのか、それとも気付いていて仲間を鼓舞する為に言っているのか、単純に皆が近付いていることに喜んだのか。明るい声を戦場に出た全員の耳に届ける。それは、誰もが聞きたかった声音で。全員が意図していたのならきっと優れた指揮官になれるのだろう、

≪……こほん、一夏よ。それにセシリアも、よくレーダーを見て欲しい……≫

≪……全員いるよな?≫

≪え?ええ……あ、あの、わたくしまだ戦闘中なのですけれど……≫

≪理解できたか?このレーダー情報は私のシュヴァルツィア・レーゲンに搭載された指揮官仕様パッケージ『オイレンケーニヒ』のものとリンクしている広域レーダーなのだ。範囲内にいる限り私の目から逃れられるものはいない。そら、セシリア。右から来るぞ≫

 冷静に戦況を把握しているラウラの声が、皆の耳に状況をいち早く知らせ、レーダーにその情報を正確に映し出す。もはや負ける気はしない、新たに伏兵や敵増援の機影を発見したが、それももはや脅威にはならない。これでもし負けるのならば……きっと、どんな援軍でも負けただろう。

≪オイレンケーニヒ……ケーニヒはドイツ語で王様、だよな……オイレン…………油の王?≫

≪……一夏さん、オイレはドイツ語でフクロウ、梟の王ですわ……≫



676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 23:39:51.25 ID:GFBiLOqo0


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番外 IS設定

■シュヴァルツィア・レーゲン オイレン・ケーニヒ

 旧世代の戦争において勝敗を分けたのは火力でも装甲でもなく、情報能力である。世界からは抑止力たるISの登場により「戦争」は消え、世界大会「モンド・グロッソ」こそが世界のパワーバランスを明示化させる戦いの舞台であった。故に、本来IS同士の集団戦闘を前提としたパッケージには必要性が存在しない。

 「梟の王」と名付けられたこのパッケージは、本来必要とされるはずの無い……いや、必要とされてはいけないIS用の早期警戒管制パッケージで、旧世代のあらゆるAWACS機を凌駕しているどころか、イージス艦に匹敵する管制システムを搭載していた。VTシステム搭載事件以降にリリースされたこのパッケージは欧州のみならず、世界中にその存在を危険視され、完成されつつも日の目を見ることが無かったが、織斑姉弟および英国代表候補生を乗せた輸送機が急襲を受けた際に、IS学園緊急時統括指揮権を持つ織斑千冬により換装許可を与えられ、出撃する運びとなった。

 武装面では、レールカノン、ブラズマ手刀をオミットしており、辛うじて腰アーマーに内蔵されたワイヤーブレードのみが使用可能と貧弱極まりないが、全身にステルス装甲が使用されており、最大稼動時には光学迷彩さえ使用可能になる設計となっている。背面の大型のレドームの索敵範囲は極めて広く、更にドイツの軍事衛星とのリアルタイムリンクにより広域のカバーリングが可能。

 両腕には強力なECMジャミングユニットを搭載しており、王の名に相応しい、本来存在する筈の無い電子戦機最高位の機体である。

 欠点としては、ジャミングとレーダーの同時使用時に若干の電障が発生してしまう為、近距離に死角が発生してしまう事と、貧弱な武装がある。

武装

 ワイヤーブレード × 2

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677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 23:40:42.33 ID:GFBiLOqo0


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番外 IS設定

■シュヴァルツィア・レーゲン オイレン・ケーニヒ

 旧世代の戦争において勝敗を分けたのは火力でも装甲でもなく、情報能力である。世界からは抑止力たるISの登場により「戦争」は消え、世界大会「モンド・グロッソ」こそが世界のパワーバランスを明示化させる戦いの舞台であった。故に、本来IS同士の集団戦闘を前提としたパッケージには必要性が存在しない。

 「梟の王」と名付けられたこのパッケージは、本来必要とされるはずの無い……いや、必要とされてはいけないIS用の早期警戒管制パッケージで、旧世代のあらゆるAWACS機を凌駕しているどころか、イージス艦に匹敵する管制システムを搭載していた。VTシステム搭載事件以降にリリースされたこのパッケージは欧州のみならず、世界中にその存在を危険視され、完成されつつも日の目を見ることが無かったが、織斑姉弟および英国代表候補生を乗せた輸送機が急襲を受けた際に、IS学園緊急時統括指揮権を持つ織斑千冬により換装許可を与えられ、出撃する運びとなった。

 武装面では、レールカノン、ブラズマ手刀をオミットしており、辛うじて腰アーマーに内蔵されたワイヤーブレードのみが使用可能と貧弱極まりないが、全身にステルス装甲が使用されており、最大稼動時には光学迷彩さえ使用可能になる設計となっている。背面の大型のレドームの索敵範囲は極めて広く、更にドイツの軍事衛星とのリアルタイムリンクにより広域のカバーリングが可能。

 両腕には強力なECMジャミングユニットを搭載しており、王の名に相応しい、本来存在する筈の無い電子戦機最高位の機体である。

 欠点としては、ジャミングとレーダーの同時使用時に若干の電障が発生してしまう為、近距離に死角が発生してしまう事と、貧弱な武装がある。

武装

 ワイヤーブレード × 2

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679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 23:51:28.36 ID:GFBiLOqo0




 学園に併設された滑走路に着陸した輸送機から機材が運び出されている。すっかり昇った日は厚い雲の上から淡く地上を照らしていた。

「やれやれ、ひと雨きそうだな……」

 管制室で山田と合流し、ヘッドセットを装着した千冬が、窓からどんよりと曇った空を見上げる。夜明け前に始まった雲海の上での戦闘は、ラウラの駆る電子戦機の登場により三重、四重の伏兵はあったものの、結果としては一年専用機部隊の圧勝に終わった。

「この程度で諦めはせんのだろうな……束」

 幼馴染の顔を思い浮かべて、千冬は苦笑いを漏らす。

(約束を違える事になった私を束は恨んでいるのだろうか…… いや、私を恨んでくれた方がマシか)

 どうやら親友とは家族にはなれないようだ。千冬自身が気に入ってしまったし、弟の望む相手なのだから、そもそもそれに口は出せない。今回の襲撃は来るべくして来たものだった。尤も、まさか移動中の他国領空内で仕掛けてくるとは思わなかった。撃墜したゴーレムの残骸は幸いにして都市部に落ちる事は無く、二次災害は軽微だったという。現在学園の研究班が回収に向かっているが……おそらく束の事だ、既に対策はとっていて、回収班は無駄足を踏む事になるのだろう。

 今回の襲撃は一夏とセシリアのどちらがターゲットだったのか、結局輸送機に無人機は一機たりと近づく事は無かったけれど、優先的にセシリアを攻撃していたように見えたという事はやはりセシリアの撃墜が目的だったのだろう。

「……そんな事をしてもあいつは喜ばんぞ、バカ者が」

 束は妹と一夏、そして千冬の事になると少々走り過ぎるきらいがある。あれはあれで、けして悪いやつでは無い。天才科学者等ともてはやされようが、無人機を操って攻撃を仕掛けてこようが、千冬には束を敵と断定する事はできなかった。

≪コントロール、こちらラウラ。周囲に追撃の敵影は確認できません≫

 輸送機の着陸後、念の為と哨戒を行う生徒達の実質的な現場司令官であるラウラから通信が入る。もっとも学園にまで追撃をしかけた所でメリットは無く、例えセシリアを撃墜した所で学園の医療設備ならば命までは落とすまい。あくまでも警戒の為だったが、杞憂で済んでくれたようで、千冬の顔から険しさが消える。

「うむ、ご苦労だった。全機哨戒を解除、学園に帰投するように」

≪はっ!≫

 遠くから、ISが空気を割く音が近づいてきている気がする。帰って来たのだ、日本に。IS学園に。


682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 23:59:13.17 ID:GFBiLOqo0


「……ふぁ…………」

「あら、織斑先生。寝不足ですか?少し休んでいらっしゃっても構いませんよ。いいなあイギリス、私も行ってみたかったです♪」

 漸く落ちついた千冬がつい漏らした欠伸に、即座に飛びつき、からかおうとする山田。心なしか目がきらきらと輝いている。

「……そうだな、昨夜は語り明かしたものだから眠っていない」

「え、ええぇぇええっ!?せ、先生!昨夜はオルコットさんの家にって……!」

 顔を真っ赤にして狼狽する山田を見て内心でほくそ笑む。やはり山田は打たれてこそ輝く。

「ああ、オルコットの使用人と打ち解けてな」

「そ、そんな、織斑先生!み、乱れています!!あ!どこに行くんですか!?」

「君が休んで良いと言ったのだろう?少し仮眠をとってくる。全員の帰投が済んだらブリーフィングを行って解散しておいてくれ」

「え、ええっ!?先生!先生ーっ!」

 背に受ける山田の救いを求める声は心地よい、堪能したと上機嫌に笑むと、襟を正して久々の自室へと向かう。軽く休むだけで、ブリーフィングには遅れて向かうつもりだ、帰りのHRのノリでもたもたとうろたえる山田がきっとそこにはあるだろうから。


683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/01(月) 00:04:17.27 ID:EV57Pla20



――――



「おっかえりーぃ、かーんちゃーん」

 着陸後、ピットに戻った簪を迎えたのは幼馴染であり、自身の傍役である布仏本音の緊張感の無い声だった。

「……本音、だからその呼び方は…………」

 ピットには早朝から実戦に出撃した一年生の為に、整備科の生徒達が詰めている。早朝の出撃時は一部の人間だけだったが、ISによる集団戦、しかも実戦とあって、朝食前に作業服に着替えてピットに集まってしまうのは整備科の性か。

 整備科には基本的に2年生以上しかいない為、簪にとっては全員が上級生。本音も当然一年生だから本来は整備科ではないのだけれど、そこにいるのが当然のように整備科の作業着に身を包んでいた。

 丈の合っていない袖を軽快に振り回しながら、日本代表候補生である幼馴染をサポートする関係は、縁の下の力持ちを自任する整備科生徒から見ればとても微笑ましくて。そんな風に微笑ましそうに見られる事が簪には気恥かしかった。

「お帰りなさい、簪。いいえ、か~んちゃん♪」

 ウインナーの絵の描かれた扇子で口元を隠した簪の二年生の姉、IS学園生徒会長更識楯無が近づいてくる。口元は隠れているけれど、確実に笑っているのが感じられるのは、姉妹だからだけではないと簪は思った。

「……お、お姉ちゃんまで……やめて……」

「照れちゃって、簪ったらかーわいい。か~んちゃん♪」

「かーんちゃーん♪」

「……も、もう……お願いだから……」



692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:02:20.14 ID:MfeqTh3C0



――

「箒、お疲れ様!」

 簪から暫く遅れて、二機目、赤いISが帰投してきた。長いポニーテールを軽く振りながら、駐機状態にしてISを降りる箒に、一足先に制服に着替えていたクラスメイトからタオルが手渡される。

「シャルロット、ありがとう。すまないな、お前の出番を奪ってしまったよ」

「箒、ダメだよそんな事言っちゃ……僕の出番があるって事はそれだけみんなが危険な状況って事でしょ」

 窘める様に言いながら、スポーツドリンクのボトルを手渡すシャルロットに、すまないと苦笑いを零してから箒はピット内を見回す。

「む、簪はいないのか?

「簪……?ああ、四組の更識さんならシャワーに行ったよ、箒もブリーフィングの前にちょっと汗を流すと良いんじゃないかな?」

 なるほど確かに打鉄弐式の所ではクラスメイトの本音が上級生に混ざって整備を始めている、箒もシャワーに向かいたいのは山々ではあったけれど、第四世代という特異性から、紅椿のメンテナンスには教職員が中心となった三年の整備班で行われる。担当の教師の姿を探していると、ピットの外からどよめきが起こった。

「あ、この音は一夏が帰ってきたみたいだね♪それじゃ箒、僕は行くね」

「――――あっ!シャルロット……待て!」

 はっとしてシャルロットを引き留めようとする箒の手は、あと一歩届かなかった。


693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:03:15.57 ID:MfeqTh3C0



―― 数分前、IS学園上空



「セシリア?」

 学園に戻る途中、青い機体がスラスターを吹かして近付いてくるのが見える。大方、パッケージをパージして戦っていた自分が無事なのか、落ちついたから見に来たのだろう。それは嬉しい、それは嬉しいのだけれど……。

「…………」

 そのさらに後ろから、白い機体も近付いてきている。一夏だ、セシリアと旅行中に何かやらかしたと思われる一夏が近づいてきている。

「ったく、空気読みなさいよあのバカ……」

 そうこうしているうちにセシリアがその表情が見えるくらいの距離に近付いてきて、スラスターを一度逆に入れて速度をあわせて鈴に併走する。

「大丈夫ですの?鈴」

「何がよ、あんたこそ大丈夫なのその機体。制動がまともにバランス取れてないじゃない」

「わたくしの操縦技術をもってすればこんなのちょろいですわ♪」

「あーはいはい」

「……なんですの?」

「……何よ?」

 口を尖らせたセシリアと、じっと睨みあいながら無言の時間が過ぎる。先にこの睨めっこに白旗を上げたのは鈴の方だった。けらけらと笑いだしながらセシリアに腕を伸ばす。二人とも主武器は既に格納していた。

「……お帰り、セシリア」

「ただいま帰りましたわ……鈴……」

 ISを装備したまま、手を取り合い、二人とも表情を和らげて笑う。土曜日の3on3からまだ一週間も経っていないというのに、ここの所続いたトラブルは、なんとなくだけれど今日の戦いが最後のような気がする。

 まだ聞いただけだけれど、サイレント・ゼフィルスは強制解除まで追い込まれたと聞くからおそらくダメージレベルはC相当まで達している事だろう。ましてや亡国企業にはサイレント・ゼフィルスがあってもイギリスの運用データそのものは存在していない筈。そうなると再出撃まではそれ相応の期間を要する。暫くの間亡国企業絡みの事件は起こらない可能性がある。

 そして、無人機とはいえ、一国の保有数を遥かに超えるISを製造、投入し、全てを撃墜されたとあっては、無人機による襲撃も少しの間は無いと考えていいかもしれない。


694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:26:54.51 ID:MfeqTh3C0



「はー、大丈夫とは言ったものの、こりゃ怒られるでしょうねぇ」

「当り前ですわ、パッケージを強制パージしてぶつけるなんて正気の沙汰ではございませんわよ?あの高度でPICにエラーが発生したらどうするつもりでしたの?」

「いや、すぐ近くに一夏もいたし何となるかなって思ってさ……っ」

 鈴は、真面目に心配している様子のセシリアに、にぃと笑ってみせると、手をつないだまま甲龍の装着を解除する。当然のようにPICが慣性を殺し、セシリアに引っ張られる形で鈴はぶら下がる格好になり。

「ちょっと!ななな何をなさってますの!?」

 一瞬真っ青になりながらセシリアは慌てて鈴を追うように素早くターンし両手で抱きとめる格好になりながら、空中で何度も逆噴射をいれて制動をとる。

「ほら、やっぱり制動バランスとれてない」

「い、いきなりだったからですわ。それに装備が重いんですから仕方が無いでしょう?」

 抱きあう格好でにへらと笑いながらそんな風に言う鈴に、むすっと口元をへの字に結んでセシリアは睨みつけていた。

「あ、そーだ。だったら戦闘終わったんだししまえばいいじゃん、重いのってその肩の盾でしょ??」

「…………」

 ぽかん、とセシリアが口を半開きで鈴の言葉を聞いている。鈴としては冗談のつもり。急に重量負荷が消えたらどうなるのかなんて、普段のセシリアなら失念する筈も無いのだけれど、連日の戦闘やら一夏さんフィーバーナイトやら強制家庭訪問やら高高度戦闘やらでちょっぴりハイなセシリアには難しい話だったのかもしれない。

(…………そ、そう言われてみればそうでしたわ……)

「な、なによ、アンタまさか……」

「そ、そんな事ありませんわよ!?」

 言うが早いか、セシリアは両肩のシールドバインダーを粒子化する。今までより一回り大きくなった上に、四基のビットはソードビットとしても使える大型のモデル。その重量が無くなった途端、当然のごとく重量を相殺していた分が速度にグンと上乗せされる。

「――――ちょっ……やっぱそんな事あんじゃん!!!」

「――えっ!?どういう……ひゃああああぁぁぁぁぁあああ!?」

 急な加速に二人して悲鳴を上げ、なんとか制動を取ろうとセシリアが逆噴射を入れるけれど、軽くなった機体での逆噴射は単純にすっ飛ぶ方向が逆方向へ変わるばかりで、行ったり来たりを繰り返すばかり。完全にパニックに陥ったセシリア、ぎゅっとしがみつかれている為下手に動けず、しっかりとセシリアに捉り返すしかない鈴。このままいったら学園沖に代表候補生二人墜落なんてニュースに顔写真つきで載ってしまう。

「せ、せしりああぁぁぁぁ!!」「り、りんんんん!!」



695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:37:58.89 ID:MfeqTh3C0



 互いの名前を叫び、強く抱き合う二人の視界に、血相を変え、全速力でこちらに向かってくる一夏の姿が見えた。

「セェシリアァァァァアッ!!」

 その声から、一夏が本当に必死なんだと伝わって来て、鈴は、少しだけ、セシリアを抱く手に力を込める。

「い、一夏さん!一夏さん!!」

「落ちつけセシリア!今すぐISを解除しろ!!」

「ちょっと一夏!そんな事したら……!!」

「いいから!! 心配するな鈴、二人とも俺が受け止める!!」

 毅然と言い放つ一夏に、鈴の鼓動が一瞬で早くなる。

(ああ、ずるいなー……昔からそう、いつも、いつも、ド天然のくせにこういう時は…………これじゃ、かなわないじゃない……)

「わかりましたわ!」

 セシリアが頷きながらブルー・ティアーズを粒子化する。つい先程までパニックに陥っていたのが嘘のように、笑みさえ見える。ISスーツだけの姿で、セシリアと抱き合ったまま空中に投げ出されつつ、どうしてセシリアはそんなに無条件に信じられるのだろうと鈴は思うけれど、そう言えば自分もこんな時の一夏は信用してるとついさっき思ったことを思い返し、少し不満げに口を尖らせていた。



701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 00:50:24.75 ID:thp7Lc8H0


――


 セシリアの背中側から一夏が二人を抱きとめる。ふわりとした浮遊感が、とても心地いい。

「二人とも大丈夫か?まったく……何やってんだよ」

 少し呆れたような一夏の声に、肩越しに振り返りながらごめんなさいと少し気恥ずかしそうにセシリアが返す。背中から抱き締められてそんな風に振り返ったら、顔同士があんなに近づいてしまっていて。鈴からしてみれば少し照れたように頬に朱が差す一夏を見ていると無性に殴りたくなる。

「ふん、別にあんたに助けて貰わなくたって自力で何とかできたわよ」

「お前なぁ、どうしてありがとうの一言が言えないんだ全く…」

 つんけんとする鈴をよそに、このままではずっと抱きしめていなければいけない為、二人をそれぞれ両腕に抱え直す。丁度IS装甲に覆われた前腕に腰かけ、手が膝を抱える形だ、セシリアと鈴が其々一夏の肩を掴む体勢が一番安定するとなるまで、結構な時間を要した。


702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 00:52:59.72 ID:thp7Lc8H0


――


「ちょっと一夏、変なとこ触るんじゃないわよ?」

「さわらねーよ……全く。セシリアは大丈夫か? ……セシリア?」

 二人を抱えてゆっくりと学園へと戻る。時々鈴がこうやって文句を言ってくるほかは静かな物だ。ふと、先程から静かなセシリアに話を振った一夏だったが、セシリアからは反応がない。どうしたのだろうと一夏が横目にちらりと視線をやると、そこには顔を上気させ、潤んだ瞳で見つめているセシリアの表情があった。急な様子の変化に一夏はドキリとして咄嗟に顔の向きを鈴の方へと向けてしまう。

「……ぁ」

 一夏の背後から少ししゅんとしたセシリアの声が聞こえた。眉をハの字に切なそうにしている表情まで妙にリアルに想像できる。一夏は、そんなつもりでは無いと弁解したくなったけれど……。

「なぁによ」

 眉を逆ハの字にして睨む鈴の顔が目の前にある。

「……いや、なんでもね……(……参ったなぁ)」

 上を見上げ、軽く溜息を吐くと、黒い機体が上空から高度を下げてくるのが見えた。

「何をしているんだお前達、さっさと帰投しろ――――……って、な、なんだこれはーっ!」

 高度を合わせ、目元を完全に覆っているバイザーを粒子化しつつラウラが話しかけてくるが、改めて肉眼で三人の状態を見ると、素っ頓狂な声を上げて一気に詰め寄ってくる。

「先程から何をしているかと思えば貴様ら!なんだその格好は!破廉恥な!!」

「は~ぁ?何が破廉恥よ!アンタに言われたくないわよ白のISスーツなんて着ちゃって!」

 ISスーツはその性質は兎も角、言ってしまえばスク水+ニーハイみたいなものだ。見た目的に。水着じゃないから恥ずかしくないもんとかそういう問題なのかもしれないが。入学当初はそりゃクラスメイトのISスーツ姿に一夏は何度賢者タイムを迎えたくなったか判らない。

 特にラウラと箒のスーツは白い。驚きの白さだ。白水着一つで膨大な画像ファイルを持っている中学時代の悪友に言わせれば「白水着はエルドラド」だそうだ、一夏もその考えは嫌いでは無い。

「色は関係ないだろう色は!いいから降りろ!」

 しかし、ひと山越えて見れば賢者どころか日常になってしまうのだから慣れは怖い。おかしな格好をされない限り今更一夏も前屈みになってしまう事も無ければ赤面する事も無い。元々エロに淡泊な一夏だから、慣れるのも結構早かった。


703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 01:09:45.62 ID:thp7Lc8H0




「落下中にIS展開なんて失敗したらどうすんのよ!?」

「その時は私がワイヤーで受け止めてやる!」


「でしたら、ラウラさんもISを解除すればよろしいのではなくて?」」


 それまで、二人のやりとりもうろたえる一夏の様子もどこ吹く風と、一夏の首に手をまわしてぴったり寄り添っていたセシリアからの発言に鈴も一夏も、言われたラウラまでが唖然とする。今までだったら「お二人はどうぞお降りになってくださいな!今日の撃墜数はわたくしがトップなのですから当然の権利ですわ」くらい言いそうなものなのに。

「…………」「…………」

 鈴もラウラも、訝しげなジト目でセシリアに顔を近づける。

(なんだ、この……これは『余裕』とでも言うのか……!?)

 セシリアの態度に違和感を感じる。とはいえ、あまりここで時間を食うわけにもいかない、元々ラウラは一番最後に着陸する予定ではあったが帰投命令が出てからもう結構経ってしまっているし、先程一番学園から遠い位置にいた箒が着陸しているのを確認している。本来とっくに着陸していなければいけない筈のこの三人がおかしいのだ。

「意外な所から意外な提案だったので少々面食らったが、そうだな、ここはあまり時間をかけて学園から迎えが上がって来る前にお言葉に甘えるとしよう。うむ。」

 セシリアの策は判らなかったが、良いというのなら甘えるとしよう。ラウラはそう決めると、一夏の前でISを粒子化させる。

「っとと……」

 一夏がそっとラウラが落ち始める前に下側に入り、ラウラの華奢な体が、同じく華奢な鈴の隣に抱きかかえられる。



704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 01:17:58.78 ID:thp7Lc8H0




「――……ん?」


「ちょっと、あんまり詰めないでよ、狭いじゃない!」

「さ、一夏さん。戻りましょう?」

 ISを装備すると、普通の人体骨格よりも前腕部が長い状態になるのは御存知の通り。鈴とラウラが並んで抱えられるくらいの幅は確かにある。

「ちょっと待て、おい、何故こうなる?」

「何故って、スペース的に仕方がありませんわ?」

 そして確かにセシリアが抱えられている左腕側は確かに狭い。セシリアが余裕のある座り方をしているせいもあるのだろうが……。

「ちょっとラウラ……っちゃんと掴まりなさいよ危ないでしょ!」

 鈴は、セシリアが一夏の首に手をまわしている為二の腕にしがみついている。ラウラの位置的に捉まるのは鈴の体になるわけで……

「――不公平だ!謀ったなセシリア!」

「ラウラさんったら、人聞きが悪いですわ、仕方ないじゃないですの」

 ラウラは見た、してやったりと口端を上げて笑うセシリアの姿を。鈴は鈴で複雑な表情でじっと一夏の腕にしがみついて頬を寄せている。

「くっ!一夏!やり直しを要求する!」

「む、無茶言ってんじゃないわよ!こんなトコでどうやって位置の入れ替えすんのよ!!」

「ええい鈴!お前すこしくっつきすぎじゃないのか!?大体何だセシリア!貴様、その体勢はなんだその体勢は!」

 左腕で抱きかかえられ、首に手をまわしているなんて特等席も良い所じゃないか、

「――……っと、とにかく戻るぞ……っ」

「ぅっ一夏、急にそんな!?」

 一夏が白式のスラスターを吹かす。急に勢いが加わったものだから、ラウラは危うくバランスを崩しかけ、慌てて一夏の胸に顔を埋めるように抱きつく形になってしまう。

「ああっ!ら、ラウラさん!一夏さんッ!ずるいですわッ!!」

「ぇ、ぇぇえ、俺かよ……」

 狼狽するセシリアの声に、ラウラは一矢報いた気がして、一夏の胸に頬をすりよせたままセシリアの方を向く。口を尖らせているセシリアと目があって、この現状でもやはりセシリアの位置は羨ましい。向うにしてみればこちらも羨ましいのかもしれないが……とりあえず今回は引き分けには持ち込めたか、ラウラはふっと小さく笑った。

「ふふん、詰めが甘いなセシリア?」

「ふん、何の事ですの?」

 そう返すセシリアも、少し口を尖らせつつも目元は笑んでいる。

「あんたイギリス帰ってちょっと白々しくなったんじゃないの?」

 其処に鈴も絡んできて、着陸までの短い間だったけれど、一夏を余所に女三人は姦しく話し続けていた。一夏はと言えば、首筋に触れる手の感触に気が行っててそれどころでは無くて無言を貫いていた。もっとも、口が挟める状態だったとしても、口を出したら出すだけ話がこじれただろうから、結果的にはこれでベストだったのかもしれない。




719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:30:24.81 ID:tJ/GqQkH0


――――――


720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:31:29.53 ID:tJ/GqQkH0



「待て……シャルロット!!」

 箒の伸ばした手は、外から聞こえたどよめきに声を阻まれて届かなかった。ピットの入り口をふさぐように集まっている人混みの中へ身軽に身を滑り込ませていくその髪を追って箒も人混みの中へと追いすがる。

 箒はそこにある光景は知らない。しかし、大体予想はつく……ずっと一夏を見ていたから、分かってしまう。一夏は『特別』を見つけた、そういう顔をしていた。その特別になりたかった。けれど……もうそれは不可能なのかもしれない。そもそもこのタイミングで見つけたということは相手はセシリア以外にはありえない。

「―― 一夏ァ!?お姫様抱っこしながら帰還するなどいくらなんでも……!!」

 人混みから一歩飛び出した箒の目に飛び込んできたのは、一夏に三人の女子が抱き着いていて、それをシャルロットが呆然と見ているという光景だった。もはやそこまで覚悟していても、言葉にしないといられない。そんな光景がそこにあった。

「な、なんだこれはぁあぁぁぁぁぁああ!?」

 セシリアをお姫様抱っこで帰ってくるくらいは予想したが流石に三人とか訳が分からない。箒は、シャルロットを止めに来たことも一瞬で忘れて思い切り叫んでしまった。呆然としていたシャルロットがそんな箒の叫びではっと我に返る。

「あれ、箒?シャルロットも、もしかして出迎えてくれたのか?」

 この期に及んでこの一夏と言う名前の大ボケ男はわざとやっているのだろうか。シャルロットも箒も一夏の表情から一夏が本気で言ってるのだとはわかるけれど……本気で言っているからこそたちが悪い。そんな状況で降りてきてどう思われるか全くわかっていない。シャルロットはプルプルと肩を震わせている。

「い、い、一夏……どういうつもり、だい?」

 漸く、絞り出すようにシャルロットが口を開く。その端正な顔立ちの眉間には深く皺が刻まれ、少女の一夏への想い、というよりも、この場にいる大多数の生徒が似たような思いを抱いていて、クラスメイトである彼女はその思いが特に強い部類ということ。思いの強さで言えば、いま、一夏の腕に抱かれている三人もまた其々がそれぞれの想いであることはまた別。

 するりと、三人の中でラウラが抱擁から逃れるように飛び降りる。特にシャルロットと仲がよく、ルームメイトでもあるラウラにとって、親友であるシャルロットの機微は大きな意味を持つ。鈴も鈴でいちいちここで揉める必要は無いと一夏の腕から飛び降りた。

「――セシリア?お前も……」

 着地したラウラが、セシリアがまだ降りていないことに眉を顰めて振り返ると、そこには降りようとして狼狽えるセシリアと、セシリアを抱いた腕を引き寄せている一夏がいた。




721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:40:58.15 ID:tJ/GqQkH0



「何もねーよ、箒。シャル。俺がセシリアをこうしてることに、何もおかしなことなんかねぇんだ」

「え、ちょっと……い、一夏さん!?」「一夏……」「い、いち……か……」「……ふぅ」「ちょ、アンタまさか……」

 一夏の言葉にセシリアは一夏が何を言い出すのかと狼狽えつつも、僅かな期待を持ってその横顔を見つめる。その表情を見て、各人の顔色が変わる。或いは諦めにも似た色を見せるラウラ。普段の素直さ、穏やかさにはない、絶望にも似た色を見せるシャルロット。睫を伏せ、全てを受け止めようとする箒、呆れたように半笑いを浮かべる鈴。



「――俺は、織斑一夏は、セシリア・オルコットが好きだ。愛してる!!  ――……個人として、男として、心から、そう思ってる」



 既に朝のエマージェンシーにコールのかからなかった生徒達も寮から登校し始めているのだろう、そんな朝の学園の話し声さえ遠くに聞こえる程、うみねこが鳴く声さえ聞こえる程に、周囲が静まり返った。

 一夏は白式を解除し、顔を真っ赤に染め上げ瞬きする事さえ忘れたセシリアに一度視線をやると、僅かに頬を朱に染めてセシリアを抱えたままピット内へ向け歩き出す。入り口をふさいでいた整備科生徒達の人の群れが二人の進む先だけ綺麗に割れた。



722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:42:09.82 ID:tJ/GqQkH0


――


「……はぁ、ったく……アンタってほんっと、相変わらず空気読めないわよね!」

 鈴が呆れ顔で深々と溜息をつきながらその背に続く。一夏の告白がショックじゃないわけではない。少なくとも一番好ましいと感じている異性は一夏であることは変わりはない。だからと言って今回の一夏の判断に異議を唱えるつもりもない。セシリアが一夏を慕っていることは前から知っていたし、最近は殊更セシリアからも主張されている。セシリアにとって望む結果になったということはとても嬉しい。幸せそうなセシリアを見るのは実にいい気分だ。なにより鈴は「セシリアを選んだ」その一夏の判断に心から同意ができた。

(まだゲームセットじゃないし、だってアタシは軸が違うもの)

 だって、セシリアを一番理解してるのは自分なのだから。「一番好きなのはアタシだ」そこにブレがないからこそ、少しそれは人間として軸がずれてるかもしれないと思ったが、IS学園ではそう珍しくもないはずと思えば気は楽だった。


723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:48:25.00 ID:tJ/GqQkH0


――


「…………そうか」

 大きく深呼吸してから、晴れ晴れとした表情で箒がそれに続く。箒はすぐ手が出るし一夏のことになると冷静になれないという面があったけれど、それと同時にクラスメイトを大切に思っていたい。IS学園に来るまでは、篠ノ之束の実妹であることが様々な重荷だった。IS学園でも時折それは重荷だった、誰も彼もが腫物を触るように接する。それがたまらなく嫌で、そんな中でそうではない、ISが開発される以前の幸せだった時期の思い出に、幼馴染に縋る気持ちは間違いなくあった。

(……私は、一夏の優しさに甘えていただけなのかもしれん。)

 今、箒の周りには沢山の仲間がいる。誰の妹であることを前提としない友人たち。一夏の幼馴染としての自分を、箒を箒として、同じ男に惚れた恋のライバル達。特に、実質的なクラス代表ともいえるセシリアは孤立しがちな箒にとっては、特に……そんな自分を対等に見てくれる仲間に恋で敗れたのなら、それは、どんな感情を起こすのだろう、ずっと疑問だった。

「なんだ、思ったよりも……嬉しいものなのだな……」

 もし一夏がセシリアを泣かすことがあったら一夏を殴ろう。セシリアが一夏を裏切ることがあっても一夏を殴ろう。自分はどこまでも自分で、それ以外ではないし、それ以外になる必要なんかないのだから。


724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:52:59.79 ID:tJ/GqQkH0


――


「……嘘だ……嘘だよね、一夏……」

 去ってゆく一夏の背を見つめながら、うわ言のように呼びかけるシャルロットの声に応える者はいなかった。

 その問いに対する正確な回答ができる人間は織斑一夏を措いては他にいなかったし、その一夏がこのような嘘を言う人間ではないことは何よりシャルロット自身もよくわかっていたし、膝から崩れ落ちるシャルロットの傍らにいるラウラにだってわかっている。

 織斑一夏の心はセシリア・オルコットに向いている。それは抗いようのない事実としてこの場に存在していた。

「僕は、これからどうすれば……」

 シャルロットにしてみれば、突然はしごを外されたようなものだった。父親の命令でIS学園に男子生徒として入学したシャルロットは、一夏に接して彼に恋をして、自身をまっすぐ見つめてくれる彼の為に、女であることを偽らず、堂々と彼の前に在る事を決めた。一夏の為ならそれこそなんだってできる覚悟はあったし、なんだってするつもりだった、一夏とは自分を殺してでも公私共にベストなパートナーであるために努力した、尽くした。

 それが、彼の傍にありたいと願い、自己に縁って自身を輝かせてきたセシリアとの最大の違いだった事は、もうシャルロット自身が分かっていた。

(ずるいよ、セシリア……キミを憎むのは筋が違うってわかっているけど……)


725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:59:15.20 ID:tJ/GqQkH0


――


「……シャルロット、大丈夫か?」

 ラウラは、思った以上に冷静にこの状況を観察していた。

(むぅ……これで三連敗か)

 セシリアにしてやられるのはこれで三度目だ。しかも連続。別に一夏がセシリアが好きだろうと、あれは自分の嫁であることには変わりはないし、正直何が変わるのかイマイチ理解できない。セシリアは尊敬できる級友の一人だし、やられっぱなしでは堪らないとは思うのだが、少なくとも現時点では自分よりも強い。

(何、優秀な遺伝子はたくさん残すに越したことはない。)

 セシリアの才能と一夏の学習能力の速さと特異性を持った遺伝子、実に興味深い。本人に言ったらどう思われるかは別としてそんな風に思う。

「行こう、シャルロット……そうして俯く者を誰が尊敬する?」

 尽くしたいという健気な感情は美しい、故にシャルロットは美しい。だが、ただそれだけではないのだ、優しく、一途で、愛らしい、そんなものは全員がそうだ。尊敬される要素がほんの少しセシリアには強くて、一夏にとってその要素が好ましいもので、一夏がそれを知りそれに触れる機会が多かった。ただそれだけなのだ。悔しいならば、尊敬される自身になればいい。

「……ラウラ……うん」

 眦にいっぱい涙をためたシャルロットがラウラの手を借りて立ち上がる。周囲の整備科の先輩たちは、ピット内に戻ったセシリア、鈴のISのメンテナンスを開始すべく、ピット内に向けて歩き始めていた。



726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:02:38.08 ID:Zxz67M/S0


――


「あ、あの……一夏さん?」

 セシリアをいわゆるお姫様抱っこした体勢のまま、白式のメンテナンスを行う整備科の面々の前でじっと立っている一夏に、整備科の面々もどうしたものかと顔を見合わせている。その中にはイギリスからの留学生の姿も見え、ブルー・ティアーズ担当の先輩方もいることに気付いたセシリアが、少し名残惜しさを感じながらも、公衆の面前での大告白をやってのけた、想い人……今となっては、想い人というよりは「彼氏」の顔を覗き込みつつ声をかける。とりあえず降ろしてもらって愛機を預けなければブリーフィングに向かうこともできない。

「ああ、大丈夫だ」

 少し離れたところでは、中国語の怒号が飛び交っていた。キャノンボール・ファスト専用パッケージともいえる「風」パッケージを強制パージなんかしたのだから、鈴がきっと上級生に大層怒られているのだろう。

「……え、あの、一夏さん?」

「大丈夫だ、誰が何と言おうと、俺はセシリアを……」

 ぐっとセシリアの背を支える腕に力がこもる。僅かに頬を染めた一夏の顔が近づき、少し熱っぽいような眼差しで瞳を見つめられると、セシリアも一瞬呆けたようにじっと見つめ返してしまう。

「ん”っん-!」

 イギリスの整備科上級生の咳払いではっとセシリアは持ち直したけれど、一夏は未だに二人の世界から帰ってきていない。そもそも今まで一夏は想われる側にずっといた。しかも自覚症状がない状態でだ。それが、惹かれつつあった状態からイギリスでの短くも濃密なハプニングの連続で、一気に気持ちが高まった状態となり、帰りの機中で、死地に飛び立つセシリアから受けた「おまじない」が先程の一夏の行動に結びついたわけで。

「いえ、そーではなくて……っ!?」

 告白するというのは。膨大なエネルギーを生む。好きという気持ちを抱え込むことは言ってしまえばだれにでもできる。それを相手一人に伝えるだけでも結構大変な労力を必要とする。傷つけてしまうかもしれない、自分が傷つくかもしれない、それでも想いを伝える、言葉にする。ただでさえそんな経験がなかった一夏にそこまでさせたエネルギーはすさまじく、そんな簡単に覚めるわけがない。

「セシリア……好きだ……」

「え、ええっ!?ちょっと、い、一夏さん!?そんな場合では……お、およしに……」

 ぐぐとセシリアをさらに引き寄せ、唇を交わそうとする。セシリアも抵抗を試みるように手で一夏の胸元を押して、顔を近づけさせまいとするけれど、ISスーツ越しの一夏の胸板に触れているという感触に自然と力が緩んでしまい、そして二人の顔と顔が近づいて……


727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:05:24.43 ID:Zxz67M/S0



――パシーン

 高らかに竹刀の音がピットに響いた。

「いい加減にせんか!この……バ、バ、バ、バカップルが!」

 一夏の顔面を払い胴気味に撃ち抜いた箒が、両手を腰に見下ろす。セシリアはといえば、打たれながらも落とさないようにとゆっくり抱擁を解く一夏の腕の中からするりと降りて、顔面を抑える一夏に心配そうに寄り添っていた。

「い、一夏さんっ、大丈夫ですの!?  箒さん!……助かりましたケド……いきなり顔を狙うなんてあんまりですわ!」

「セシリア、いまのうちにブルー・ティアーズを預けたほうがいいのではないか?」

 いつの間にか、いや、多分箒と一緒にいたのであろうラウラが肩を竦めながらちらと整備科の上級生のほうを見る。

「まったく、やっぱりセシリアじゃ……って思っちゃうよ」

 その傍らには、未だに不服そうにしているシャルロットもいた。

「ちょーっと、アンタ達まだぐだぐだやってるわけ?さっさとしなさいよね、ほらセシリア、IS出して」

 甲龍を預け終えた鈴も輪に戻ってきて、一夏をいたわるように寄り添っているセシリアの腕をつかみ、強引に引きはがす。セシリア自身もいいかげん機体を預けなければブリーフィングどころか一限目に遅刻してしまうことは分かっていたから、口では抵抗しつつも素直に従って。

「ぁっ、ひ、引っ張らないでくださいまし……まったく、もぅ……」

「そら!一夏もいつまで鼻を抑えてうずくまってるつもりだ!全くお前たちときたら……」

 箒が一夏の腕を掴んで立たせたところで。

「…………みんな……山田先生が困ってる……」

「あらあら……ふうん、へぇ」

 制服に着替え終えた簪が姉の楯無と共に輪に戻ってきて未だ機体を預け終えてもいない二人と、それを取り巻く一年専用機持ち達を見回す。一夏とセシリアを取り巻く状況は、大きく変わっていたけれど、やっぱりというか、結局というか。


「相変わらず世話が焼ける」


 結局は。その一言に尽きた。



728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:10:37.22 ID:Zxz67M/S0


――――


「はー、やっと部屋でゆっくりできますわ……」

「ま、念願かなったんだしいいじゃないの。まさか一夏があんなに積極的になるなんて、イギリスで何があったのよ?」

 ブリーフィングもその日の授業も無事終えて、寮の廊下を鈴と二人で部屋に向かう。休み時間のたびにクラスメイトや他クラスの生徒にまで押しかけられて質問攻めにあったセシリアはぐったりと肩を落として疲れ切った表情だったけれど、それでもどこか嬉しそうにしている横顔を見ながら、鈴はニヤニヤと笑っていた。

「も、質問は明日にしてくださいな……」

「いいわよ別に、話してくれる時に話してくれれば ――――あ、そうだ……」

「なんですの?」

「――おめでと、セシリア」

 ドアのロックを解除しながら笑いかける鈴の表情は、本当にうれしそうで、本当に祝福してくれていることが伝わってきて、セシリアは思わず目を丸くして鈴が先に部屋に入っていくのを見送った。勿論、誰に祝福されなくても構わない、セシリアが一夏を好きだという気持ちは何者にも揺るがすことはできないし、ゆらぐつもりだってない。ただ、クラスメイト達はともかく鈴をはじめとした、一夏を想っていた仲間たちは特にそんな簡単に祝福してくれるようになると思っていなくて、ずっと心残りだったから、本当にうれしくて。

「――……っ!」

 感極まって、というのはこういうものなのだろう。引いていたキャリーバックから手を放して、両手で顔を覆う。涙があとからあとからあふれるけれど、悲しくなんてない。嬉しい、嬉しくて涙が止まらない。キャリーバックを廊下に置いたまま、居ても立っても居られないセシリアは涙も拭わないで鈴を、親友を追って部屋の中に駆け込んだ。


「――鈴っ!!」

「――なぁによ、気持ち悪いわね、泣くことないじゃない……」

 床に転がるコンビニ袋を蹴飛ばして鈴にひしと抱き着くセシリア、それを抱き返しながら、瞼を閉じてセシリアの背をなでる鈴。

「わたくし、わたしくは……最高の友人を持ちました…………わ………………ところで今何か蹴ったような……ぇ?」

「何よ今更、じゃ、親友。一緒に部屋を片付けよっか?」

 二人が抱き合う周囲に散らばるコンビニ袋、お菓子の袋、空のペットボトル、出しっぱなしのゲーム機、ボードゲーム、ぐちゃぐちゃのシーツ、起き抜けのままと思われるベッド。惨憺たる状況の部屋に今更気づいたセシリアが幸せな嬉し泣きの表情から一変、あんぐりと口を大きく上げて息を呑む。




「……な、な、何ですのこれはぁぁぁあああ!?」



IS-ifストーリー Cecilia Alcot「イギリス旅情編」

      -fin-

第一部『鈴「あっづー」セシリア「な、何ですのコレは……」』 一旦 完



734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/23(火) 01:00:27.19 ID:VgP8bmRI0

乙ありです。

今夜はエピローグの投下と、
>>1でネタバレの注意や地の文ありであることを告知するアナウンスを書き足して、
第二部のスレ立てします。

735 :IS ifストーリー Cecilia Alcot  ◆l5R7650ANI [sage saga]:2011/08/23(火) 01:05:51.57 ID:VgP8bmRI0



― エピローグ ―


「おい、愚弟よ」

「……いや、千冬姉、さすがにその呼び方はないんじゃ……」

 帰ってきた日の夜、セシリアと鈴が騒ぎながら部屋を片付けている頃、織斑姉弟の部屋。

「お前、セシリアに告白をしたらしいなぁ?しかも帰投直後の他の生徒もいる目の前で」

「な、なんだよ、千冬姉は……文句あるのかよ」

「いいや、無い。ふふっ、お前にしては実に情熱的でいい告白じゃないか、それで?どうしてオルコット、いや、セシリアを選んだ?」

 上機嫌にタンクトップに短パン姿で缶ビールを美味そうに飲みながら、千冬が告白の結果ではなく告白の理由を問う。結果は聞くまでもない、暴行未遂を赦す程にあの少女が弟を心底想っているのは知っていたし、例え答えをセシリアが保留していたとしたって、それは時間の問題だろう。

「……どうしてって、セシリアが好きなんだよ」

「また下半身で考えてるんじゃないのか?このケダモノめ」

「ちげーよ……ったく。……いや、あんな事しちまった俺には、本当はこんな告白なんて許される立場じゃないのかもしれないけど……そんな俺でも、赦してくれてるんだ、そんな俺を、セシリアは好きでい続けてくれるんだって……それで、学園に帰ってきたらみんながいて、また、前みたいに着かず離れずになるのかと思ったら、居ても立ってもいられなくて」

 一夏の回答に千冬は驚いて目を丸くする。

「……お前……まさかあいつらに想われてることはひょっとして気づいていたのか?」

「……どうして俺なんか、とは思ってたけれど、流石に今回の旅行でセシリアはそれなりに俺を想ってくれてるって自覚はあったよそりゃ……ただ……って、なんだよ千冬姉、その顔は……」

「…………いや、我が弟ながら、とんだクソ野郎だと思ってな。まあ、いい、私から見てもよくわかるほどだったがな」

 セシリアにしか思われていないと思っていたと真顔で言う弟に軽い眩暈さえ覚えながら、結局収まった所がセシリアで良かったと深く溜息を吐く。

「な、なんだよ……」

「お前が思っている以上に、セシリアの想いは深いぞ?」

「……わかってるよ、でも、愛したいんだ、セシリアを」



「…………ふん、上出来だ」



千冬の声はいつになく優しいものだった。



                     END

736 :IS ifストーリー Cecilia Alcot  ◆l5R7650ANI [sage saga]:2011/08/23(火) 01:10:41.08 ID:VgP8bmRI0

立て直しスレ

→セシリア「わたくしが主役でしてよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314029281/

ここはHTML依頼します。

737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/08/23(火) 21:00:54.83 ID:rwduu9lD0

完結おめでとうございます。

738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/24(水) 23:25:46.93 ID:C3JsZH3Mo

乙!
次も楽しみにしてるよ



インフィニット・ストラトス ぷちっ娘 セシリア・オルコット (ノンスケール PVC塗装済み完成品)
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