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希「支える人。支えられる人」

1: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:13:50.88 ID:hM1EpvND0

ep.1 3年目の記念日


都内某所のとあるマンションの一室



そこにウチは住んでいてな



音ノ木坂に入学してからずっとそこで暮らしてる



ただ、音ノ木坂に通っていたころと違うと言えば


いまはあの子と二人暮らしって事


ラブライブ! パーフェクトビジュアルコレクション ~Dream~

2: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:20:33.06 ID:hM1EpvND0

音ノ木坂を卒業してからもう5年



あの子と同棲してからもう3年



あの頃は家に帰っても誰もいなかったけれど



今は帰りを待っている人がいる


なんだかとっても素敵やね



3: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:24:30.83 ID:hM1EpvND0

あの子が作ってくれた小さな小さな熊のぬいぐるみのストラップ


そこについてる家の鍵を取り出し扉を開ける



ガチャリ


「ただいまー」


「おかえりなさぁーい」



4: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:29:39.47 ID:hM1EpvND0

パタパタと家の奥から足音が聞こえてくる



「希ちゃんお帰りなさい。さっき帰ってきたばっかりだからごはんまだなんだ。ごめんね」


「ううん、大丈夫やで。ウチも手伝うよことりちゃん」


「そんなのいいよー。希ちゃん仕事で疲れてるでしょ?ゆっくりお風呂に浸かってきて」



ことりちゃんの柔らかくて、甘い声が激務に疲れた体を癒してくれる



5: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:34:25.44 ID:hM1EpvND0

ことりちゃんがいるから今日も明日も明後日も頑張っていける


そんな気がする



本当、ことりちゃんと出会ってよかった




ことりちゃんのお言葉に甘えて、ウチは先にお風呂をいただいて



6: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:37:38.54 ID:hM1EpvND0

お風呂から上がってことりちゃんと一緒にお夕飯作り



今日のお夕飯はとっても豪華




そう



今日はことりちゃんと同棲を初めてちょうど3年目の記念日



8: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:44:30.44 ID:hM1EpvND0

当時、大学1年生のことりちゃんが理事長と喧嘩してウチの家に転がり込んだ



「希ちゃん………あのね……」


「しばらく…泊めてくれないかな?」


「お母さんと喧嘩……しちゃったの」






突然やってきたことりちゃんがそう言ってな



すごく驚いた



数日うちに泊まる。そう思っていたら



なし崩し的にウチの家に同棲することになってな



その時くらいからかな?


ことりちゃんとは友達以上の関係になったのは



9: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:49:50.28 ID:hM1EpvND0

理事長とはもう仲直りしたって聞いてる




今は誰にも邪魔されることもなく



ウチとことりちゃん、2人で仲良く暮らしてる


時々エリちや凛ちゃんがお泊りに来るけどな



10: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 22:56:23.75 ID:hM1EpvND0

「それでは――――」


「乾杯♪」



カチンとグラスを鳴らし


今日の為に買ってきた上物の赤ワインを口に含む



お酒は時々ことりちゃんといただくけれど



うん。やっぱりいつものとは全然違うなぁ


思わず笑みがこぼれた



11: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:02:06.89 ID:hM1EpvND0

「はぁい。希ちゃん」


綺麗な包装紙に包まれた箱が目の前に


「プレゼント交換だよー?」



うん。分かってるよ


ウチも用意してる


でもそれはまだちょっとお預け



12: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:06:54.60 ID:hM1EpvND0

ことりちゃんのプレゼントから開けることに



がさがさ――――


「お……これ…」



箱の中には――――ウチ好みな少し時代を感じる木製のオルゴール


「巻いてみていい?」



13: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:10:36.41 ID:hM1EpvND0

うん


柔らかい返事が帰ってきて


ウチはゼンマイを巻いてみた



するとオルゴールからはとても懐かしくて、でも馴染みのある曲が




「これ………」



「うん。真姫ちゃんや皆に手伝ってもらって作ったの」



え?


「これもしかして……ことりちゃんが作ったん?」



ことりちゃんはにっこり笑顔でコクリと頷いた


こんなに手の込んだお手製のプレゼント



14: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:13:32.71 ID:hM1EpvND0

ホント


本当に嬉しくて


なんだか涙が出てきた


ありがとうな、ことりちゃん




さて、今度はウチがプレゼントを渡す番なんやけど



「んと…な」


「ウチからのプレゼントなんやけど、ここにはないんよ」



え、どういう事?


そう言いたげな表情になっていることりちゃん



15: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:17:38.48 ID:hM1EpvND0

「もうすぐ夏休みやん?ウチ、休暇とるから一緒に旅行いこか?」


「ことりちゃん。南がいい?それとも北?」


「貯金もしてるから、海外もオッケーよ?」



旅行計画を続けざまに話しているけど


正直申し訳ない気分



16: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:21:11.07 ID:hM1EpvND0

だって釣り合ってないやん?


ことりちゃんのプレゼント。とっても素敵やん




ウチのなんかと全然違う


それでもにっこり笑顔のことりちゃんは



いつもと同じ柔らかい声で


「うん、嬉しい。ありがとう希ちゃん」


って





本当に申し訳ないなぁ



――――よぅし、4年目のプレゼントは気合の入れた物にしよう


心の中でぐっと強く決心した



17: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:23:27.48 ID:hM1EpvND0

「さぁて、そろそろご飯食べよっか?」


ご飯が冷えちゃう。そう食い意地張ったように言うと、ことりちゃんがフッて噴き出した


「もぅ…希ちゃんでば」


クスクス笑うことりちゃん




クスクス笑うことりちゃんなんだけど


なんだかツボに入ったようで、しばらく笑いこけてたなぁ


つられてウチもクスリと笑った



「あぁ……なんだか幸せだなぁ」


「ウチもやね」





18: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:29:05.97 ID:hM1EpvND0

もう6年になるんやね。ことりちゃんと出会って



「あぁ、そうだ。今日ね、お米が届いたの。花陽ちゃんから」


「おお、花陽ちゃんのお米美味しいからとっても嬉しいなぁ」



花陽ちゃんは今、東京を離れている


もっと美味しいお米を作るんだー!って言って、少し前から親戚の農家の所で頑張っているみたい



時々お米を送ってくれるんやけど、これがまた絶品で



ウチらの間ではひそかにブームになっている



19: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:33:45.06 ID:hM1EpvND0

いいなぁ


みんな夢を持ってて



ことりちゃんは大学で服飾の勉強してるし




ウチはもう夢追いかけるような年齢じゃないし



ことりちゃんを支えることしかできないから


ウチはことりちゃんのお手伝い、やね



20: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:36:11.30 ID:hM1EpvND0

夕食の時の会話は決まってこう



今日一日の出来事をお互い話し合う



当たり前な事やけど



とても重要な事



21: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:40:05.37 ID:hM1EpvND0

今日はこういうの作ったよー。とか、帰りに海未ちゃんにあったよーとか



そういうの聞いてるだけでもとっても楽しくて嬉しい




ひとりやったらどうなってたんやろうね?


そんな事考えるのもめんどくさくなるくらい


今が充実してる



22: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:50:00.39 ID:hM1EpvND0

「うん――――このローストビーフ美味しいなぁ」


「ふふ、一番力入れたから――――ことりの力作だよっ」



「そうなん?でもこのサラダもとっても美味しいよ?」


「それは希ちゃんが作ったやつだよー?」


「ううん、ことりちゃんが切ってくれたトマトがとってーも甘くて美味しいんよ」


「希ちゃんが美味しくなりますよーに。っておまじないしてくれてるからだよ?」


「そんなことないよ。ことりちゃんのおかげだってー」


23: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/04(土) 23:54:19.72 ID:hM1EpvND0

なんて――――


傍から聞いたら恥ずかしいような会話もできたりして



なんだかとっても嬉しい




このような


何も変哲のない毎日が



ずっと、ずうーっと―――――いつまでも続きますように





それが今ウチのたった一つのお願い事です



32: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 22:00:27.99 ID:Pz7VPKrY0

ep.2 ある日の決意


とある夏の日


珍しく仕事も定時に終わり


街を歩いてる夕焼け空




音ノ木坂に通っていた時にエリちや穂乃果ちゃんと歩いた道は今でも歩く



あの時と違うのは、スーツを着てひとりで歩いているって事かな?



33: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 22:06:41.36 ID:Pz7VPKrY0

大学を卒業して、新卒1年目のウチは自宅からでも通える近場の会社に勤めてる


理由?


ことりちゃんの待つあの家を離れたくないから



μ'sの思い出の場でもあるし



どんなことがあっても離れることは……ないかな



34: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 22:11:13.09 ID:Pz7VPKrY0

ふと、横切った音ノ木の制服の子


楽しそうにはしゃいでる


ウチもあんな時があったんやなぁ。としみじみしてると




ぴゅう



この時期には珍しく、ひんやりとした風が吹いた



35: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 22:19:17.79 ID:Pz7VPKrY0

もうすぐ夏が終わる――――



ことりちゃんもあと半年もしないうちに大学を卒業するんやね




ことりちゃん卒業したらどうするんやろ?


ひとり暮らしするんかな?それとも今のままウチと一緒に暮らしてくれるんかな?



家から出てしまうんやったら少し悲しい。いやすごく悲しい



そんな事を考えてしまうと、なんだか少し気分が落ち込み気味



36: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 22:28:22.09 ID:Pz7VPKrY0

「希ちゃーん」


突然、後ろから柔らかい声


振り返るとことりちゃんが小走りで走ってきた



「ことりちゃんやん。もう学校終わったん?」


「うんっ。今日はもう終わりだよ」



「そうなんやね。ウチも珍しく残業なくて今帰ってるんよ」


「一緒に帰ろうか?」




うん。と短い返事を返したことりちゃんと手を繋いで歩き出す



ほんのり温かい手のぬくもりがとても気持ちいい



37: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 22:34:51.16 ID:Pz7VPKrY0

みゃー



どこからか可愛らしい声


ことりちゃんも聞こえたようでウチと目を合わせる



みゃー




また聞こえた


「どこにいるんだろう?」


ウチとことりちゃんとで辺りを見回す



38: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:01:06.33 ID:Pz7VPKrY0

すると電柱の陰からとっても可愛らしい茶トラの子猫が姿を現してな



「わあぁぁ~~っ!かわいい~!」


ウチとことりちゃんが声をそろえて黄色い歓声を上げた



茶トラの子猫は意外と人懐こいみたいで


すりすりとウチの足元にすり寄ってきた



ことりちゃんとウチはしゃがみこみ、喉をスリスリ頭をナデナデ



39: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:09:35.45 ID:Pz7VPKrY0

みゃー



目を細めた茶トラの子猫は喉をゴロゴロ鳴らせてとっても気持ちよさそう



「可愛いなぁー……ノラかなぁ?」


「どうなんやろうね。首輪はないみたいやけど……」



そんな会話をしながら



少しの間茶トラの子猫と戯れていたけど



40: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:15:28.19 ID:Pz7VPKrY0

タタタッ


何かを思い出したようで急に走り去ってしまった




「ああぁぁぁ………」


「可愛かったなぁ……」


ことりちゃんの甘いため息


あんなに可愛い猫ちゃん。ウチも飼いたいけど


ペット禁止だから



41: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:19:05.59 ID:Pz7VPKrY0

ペット禁止なのはことりちゃんも知ってる



動物特集のテレビ番組を見るたびに


飼いたい衝動に駆られるけど



42: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:24:29.06 ID:Pz7VPKrY0

「ことり、やっぱり子猫飼いたいなぁ……」




「よぅし決めた」



何かを決意したようで、立ち上がることりちゃん



「ことり子猫飼う!」


「でもうちペット禁止―――――」

ウチの言葉を遮るように言葉を続けて

「働いて、お金を貯めて、ペット大丈夫な所に一緒に引っ越そう?」



43: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:30:43.45 ID:Pz7VPKrY0

「希ちゃんもペット欲しいって言ってたし」


「希ちゃんの職場の近くで探したら、希ちゃんの通勤時間も減るしいいかなって」



目をキラキラさせて話すことりちゃん


ことりちゃんがこうまで押してくる事はとても珍しくて


どうやら本当に決意したみたい



44: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:35:22.18 ID:Pz7VPKrY0

あかん。ことりちゃんの決意で今までのウチの考えが揺らいでる


んー…………



頭の中で少し考える




μ'sとしての思い出の場所がなくなるのは悲しいけど



ことりちゃんと一緒なら寂しくはないかな



「それじゃあ、まずはことりちゃんの就職が最優先やね」



45: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:42:03.10 ID:Pz7VPKrY0

ウチがそう言うと、少し誇らしげに


「えへへ、実は~………決まりましたー」



ええっ、そんなん初耳!



今までずっと就活の事は話題に上がらなかったから



きっとまだ苦労してるんやな。って思ってたけど




「すごいすごい!ことりちゃんどこ決まったん?」



「ふふ~……希ちゃんの知ってるところ♪」



すごく上機嫌に話すことりちゃん



46: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:49:54.53 ID:Pz7VPKrY0

ウチの知っているところ?


ウチの知っているところで、服飾に関係する所ってどこなんやろ?



少し真剣に考えてみる




うーん………わからない


「ふふっ、実はね。穂むらに決まったの」


「ええっ、穂乃果ちゃんのところ!?」


意外


だって、ことりちゃん大学に服飾の勉強行ってるから


きっと就職もそうなるんやろうな、って



47: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/14(火) 23:55:25.47 ID:Pz7VPKrY0

「穂乃果ちゃん卒業したら和菓子作りの修行で京都に行くんだって」

「でね、その間穂乃果ちゃんの代わりにことりが穂むらで手伝う事になったの」

「もちろん穂乃果ちゃんが帰ってきた後も手伝うから」



嬉しそうに言葉を続けることりちゃん




でも――――


少し、少しだけ、いつもより口調が早い印象があった



まるで何かを隠したいような感じ――――



48: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/15(水) 00:00:21.26 ID:JrjbbxAa0

「ことりちゃん、服飾の方はいいん?せっかく大学でも勉強したんやし」



「うん。勉強もした。μ'sで衣装作りもした。それでことりは満足なの」

「だからね、今度は皆のお手伝いしようかな。って」




やっぱりなんか違和感



でも、今聞いても何も答えてくれないと思う


だからウチは――――



49: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/15(水) 00:07:21.89 ID:JrjbbxAa0

「そうなんかぁ。μ'sで満足したんか」


「とーっても楽しかったし、ことりちゃんがそう言うのも納得やね」




「うんっ。だからね、お昼は穂乃果ちゃんや雪穂ちゃんをお手伝いして」

「夜は希ちゃんの疲れを癒してあげます」



ずっとウチの手を握っていたことりちゃんの手が離れ



ウチの両頬に触れた



「だって――――今この時が一番好きだから」



50: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/15(水) 00:15:29.49 ID:JrjbbxAa0

ことりちゃんって時々過激


思わず頬を赤らめたと思う





うん、いいよ



ことりちゃんがそう決めたのなら



ウチがことりちゃんを支えるよ


きっといつまでも――――



54: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:01:41.60 ID:3wIsEUej0

ep.3 これからはきっと



ずっと



ずっとずっと疑問を抱いている




あの時から



ことりちゃんが穂むらに就職が決まったって話した時から、なんだかことりちゃんの様子がおかしい



55: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:07:14.61 ID:3wIsEUej0

何かを隠しているのか


パタッと学校での出来事を話さなくなった




就職活動で友人皆忙しくて―――って言ってはいたけど



それも必死な言い訳に感じた



56: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:09:13.40 ID:3wIsEUej0

一番気になったのが、ことりちゃんの携帯電話



ことりちゃんがお風呂をいただいている時に、ブゥーンとことりちゃんの携帯がなってな



ふと、画面が目に入った




電話の主は音ノ木坂の理事長。つまりはことりちゃんのお母さんで




その時はなんとも思わなかった



57: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:15:12.92 ID:3wIsEUej0

母親が娘に電話なんて普通な事なんやし



でもな


その後のことりちゃんがおかしかった



戻ってきたことりちゃんに


「ことりちゃん電話なってたよ。ことりちゃんのお母さんっぽかったけど」



58: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:19:32.90 ID:3wIsEUej0

ここまで言って

「ふぇっ!?あ、う、うんっ!希ちゃん出たの!?」


すっごく慌ててん



「ううん。偶然画面に映った文字が見えてな」





なんだ、よかった――――



そう言いたげに、ホッと胸を撫で下ろしていた



59: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:27:21.42 ID:3wIsEUej0

もしかしたら――――


まだ理事長と喧嘩をしているのかも




理事長とは音ノ木坂を卒業して以来あっていなくて


仲直りしたっていうのも、ことりちゃんがそう言ってたから


きっとそうなんやろうなって



60: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:30:55.01 ID:3wIsEUej0

なにか


なにかを隠している





ウチはタロットカードに手を伸ばした




学生を卒業してから、日常の忙しさでなかなか触れなかったけど



「ごめんな。最近全然かまってあげられなくて。久しぶりやけど力かしてな?」


久々に触ったカードにそう謝って、カードをめくった



61: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:37:16.51 ID:3wIsEUej0

――――――――――――――――


日も沈みかけて


窓から差し込んでいた夕焼けもだんだんと黒ずんてきた




コツコツと時計が時を刻む音だけがこの部屋を支配してる



「――――なぁ、ことりちゃん」


不意にウチが口を開ける



62: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:40:49.60 ID:3wIsEUej0

「ことりちゃんのお母さんから聞いたよ。留学勧められたんやろ?」


「ウチが言いたいこと、わかる?」



「………」




俯きながらも


うん、とゆっくり頷くことりちゃん



63: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:47:50.66 ID:3wIsEUej0

「ことりちゃんが本当にやりたいこと、何?」


「………」



俯いたまま



「服飾の仕事すること?それとも穂むらで働いて、穂乃果ちゃんや雪穂ちゃんのお手伝いすること?」


「それともウチと一緒に暮らすこと?」


「ウチな、ことりちゃんがどんな決断をしても責めたりせんよ?」


「ウチが支える。だから―――――」




「わからないよ」


ずっと黙っていたことりちゃんが


「わからないよぉ………自分でも……」



64: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:51:18.28 ID:3wIsEUej0

「希ちゃんと一緒に暮らしたい………穂乃果ちゃんのお手伝いもしたい……」


「でも……」


「夢を………諦めたくないよぉ………」




震えた声、瞳には一杯の涙が溢れて



こんなことりちゃんを見たのは何年ぶりかな?



65: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/19(日) 23:54:16.97 ID:3wIsEUej0

「教えて………希ちゃん…」


「ことり……どうしたらいいのかわからないよぉ……」





手を差し出したかった


ギュって抱きしめてあげたかった 



でも―――――



66: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:12:48.49 ID:qMqgZJ1i0

「それは………ことりちゃんの決めることや」



「ウチは穂乃果ちゃんやない」


「あの時の穂乃果ちゃんみたいに引っ張ったりせんよ。自分で決める時なんよ?」




突き放した


だってそれが――――ことりちゃんの為になると思ったから





ことりちゃんもそろそろ



前を歩くべきなんやと思う





だから――――


「ウチは何も言わないよ」


「何が一番大事で、何をしたいか。自分で決めるんよ」



67: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:16:56.56 ID:qMqgZJ1i0

「――――今日はエリちのとこ、泊まるから」


「ひとりでじっくり考えてな」



「やだ……やだよぉ……教えて…希ちゃぁん……」



すすり泣くことりちゃんに振り返ることなく


バタンと扉を閉めて家を出た



68: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:22:29.33 ID:qMqgZJ1i0

わかってた



ウチが枷になってることくらい



音ノ木坂の時はμ'sがあって夢を追いかけきれんかった




μ'sを、スクールアイドルをやっていたことりちゃんは本当に楽しそうだった



でも、きっと心のどこかで後悔してたんやろうね




大学に行って


本格的に夢を追える。そんな時にウチがことりちゃんの足を引っ張って




だめやね。本当に――――



69: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:26:48.06 ID:qMqgZJ1i0

翌日



家に帰るとことりちゃんはいなかった


最小限の荷物もなくなっていた




これが



ことりちゃんの選択した道なんやね




とても悲しいけど


ことりちゃんの決めた事、ウチが望んだ結末





溢れだした涙で前が見えなくなって


そして――――ポツリ呟いた


「さようなら。ことりちゃん」



70: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:31:02.55 ID:qMqgZJ1i0

翌週


ことりちゃんは日本を発った



海未ちゃんから聞いた情報で




ウチには何も言わないで――――



71: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:36:44.65 ID:qMqgZJ1i0

あの後



ウチは滅多に家に帰らなくなった



ほとんどはエリちの家にお泊りをしていた



μ'sとしての思い出の場所は



すっかりことりちゃんとの二人の思い出の場所に変わっていて



72: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:39:42.69 ID:qMqgZJ1i0

「はぁ………」



エリちの住んでるアパート


そのベランダでひとり夜空を眺めていた




今日は曇り



星は全く見えない



今のウチの心と同じ



73: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:43:07.08 ID:qMqgZJ1i0

ぴたり



首筋に何かひんやりしたものが当たって


脊髄反射でウチは「ひゃあ!?」と素っ頓狂な声をあげた



「いつまで空を眺めているの?」



振り返るとそこにはエリちがいて


かすかに顔が赤い



74: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:50:15.43 ID:qMqgZJ1i0

「ずっと私の家に居候してるんだから、たまには付き合いなさいよ?」


両手には発泡酒。片方はすでに開封済み


さっき首筋に当たったひんやりした物の犯人はこれやったみたい



少しでも


少しだけでも


今の気持ちが忘れられるのなら、と


そう思い、エリちの持っていた発泡酒に手を伸ばした




75: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:54:13.23 ID:qMqgZJ1i0

「それでねぇ………その時の上司がねぇ…」


エリちが愚痴って


「へぇ……そうなんやね」


ウチが聞き入れる



よくある光景



けれどそれが


ことりちゃんと過ごした日々と重なって少し胸が痛い



76: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 00:58:07.00 ID:qMqgZJ1i0

「希はー…どー思ってるのよー?」


唐突に投げかけられた質問


「そうやね……ウチはやっぱりダメだと思う事はダメっていうべき――――」


「違うわよ」



さっきまでのグデグデだったエリちの声は


いつの間にか元の凛とした声に戻っていて



「ことりのこと……もういいの?」



77: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:02:31.54 ID:qMqgZJ1i0

でも、もうことりちゃんは――――


そうウジウジと呟いていると



「ことりは前を歩き出したのに、希はいつまでウジウジしているのかしら」


「そんな希は嫌だなー」



意地悪く、でも的を得ていたそれは心にグサッと来た



クイっと発泡酒を口に含んだエリちは、少しの間を置いて



78: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:06:48.92 ID:qMqgZJ1i0

「希が望んでいるのはなぁに?」


「大好きなあの子と一緒に暮らすこと?」


「それとも元クラスメイトの家に居候して、ウダウダしながら日々を送ること?」




「ことりが望んでいること、希がするべきこと。もう分かっているんじゃない?」



言いたいことを全部言い終えた


そう満足したようなエリちはぐいっと背伸びをして



79: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:10:08.96 ID:qMqgZJ1i0

「明日も仕事だから私はもう寝るわ」


「ひとりでじっくり考えなさい」



少しフラフラになっていたエリちはひとりベランダを後にした



ひとりでじっくり考えなさい



ことりちゃんに言い放った最後の言葉


その言葉はとても重たくて



80: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:15:57.73 ID:qMqgZJ1i0

すごく後悔した



ことりちゃん。寂しかったんやろうなって



「ウチが望んでいる……か」


再び夜空を見上げる



曇っていた空は少しだけ晴れていて、星がちょこっと見えた



「望んでいることなんて決まってるやん」



81: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:24:55.51 ID:qMqgZJ1i0



季節は進んで春



温かいから暑いに変わる境目の今日この頃




ウチはいま、外国にいます



見慣れない風景に見慣れない人たち


くすくす。まさかウチが日本を出るなんてな



82: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:29:00.40 ID:qMqgZJ1i0

ずっと日本にいるって思ってたからなんだか自分でも意外




もうすぐあそこにつく



そこにあの子がいる


ウチが支えてあげないと



83: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:32:25.46 ID:qMqgZJ1i0

マンションの一室


KOTORIと書かれている表札を見つけたウチは



呼鈴を鳴らした



はぁーい♪とかすかに聞こえた柔らかくて甘くて


とても懐かしい声



84: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:34:55.94 ID:qMqgZJ1i0

ガチャリ


「え………のぞみちゃ……!?」


半年ぶりに会ったことりちゃん



なんだか少し大人になって、色気も増したって言えばいいのかな?


少しだけ成長したように感じた



会いに来たよ。ことりちゃん



85: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:38:03.86 ID:qMqgZJ1i0

「ことりちゃん………あんな……」


「しばらく…泊めてくれんかな?」


「エリちと喧嘩……したんよ」




ちょうど4年前


突然やってきたことりちゃんがウチに言った言葉を丸々言い返す



86: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:41:55.21 ID:qMqgZJ1i0

4年前、ことりちゃんがうちに転がり込んだ


今度はウチがことりちゃんの家に転がり込む番やね




驚いた表情だったことりちゃんは


次第に瞳に涙を浮かべて



「うんっ!」


短い返事とともに、ウチの胸へ飛び込んだ



本当、ウチがついとかんとダメなんやから



87: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:44:57.69 ID:qMqgZJ1i0

少しだけ悩んでしまったけど


最初から決まっていたんよ



あの時より



少しだけ前を歩き出したことりちゃんを


後ろからしっかりと支えてあげないと


それがウチの決めた道やから




88: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:47:47.61 ID:qMqgZJ1i0

そう思いながらも



胸の奥に閉まっていた感情が、どばーって飛び出して



ことりちゃんと抱き合って泣いてしまったよ





これからはずっと一緒だから


なにがあっても



ウチはことりちゃんと――――






おしまい


89: ◆UFNnDwMYPk 2014/10/20(月) 01:48:57.19 ID:qMqgZJ1i0

最後まで読んでいただきありがとうございました。
やっぱりこういう路線は少し苦手です。
次回よりほのぼの系に戻ります。



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