FC2ブログ


ココア「シャロちゃん。10万円あげるから指の骨へし折らせて?」

1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:38:55.03 ID:eV68xmrW0.net

~ラビットハウス~

シャロ「な、何言ってるのよ。ココア……」

ココア「千夜ちゃんから聞いたんだけど、今月厳しいんでしょ? お金」

シャロ「確かに厳しいけど」

ココア「別にただでお金あげてもいいんだけど、
   でも、それだとシャロちゃんもいい気がしないと思うの。
   だから、その見返りとして。……指の骨へし折らせて?」

シャロ「なんなのよ。その発想は」

ご注文はうさぎですか? リゼ スムース抱き枕カバー

3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:40:04.73 ID:eV68xmrW0.net

ココア「もちろん見返りの10万円とは別に、
   怪我の治療費とか、その間にできないバイトのお給料も払うよ」

シャロ「……」

ココア「どの指を折るのかもシャロちゃんに選ばせてあげるから。
    ……ね? いいでしょ?」

シャロ「……ココア」

ココア「何? どの指にするか決まった?」


5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:41:34.13 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「見損なったわ。ココアのこと」

ココア「え……」

シャロ「そうやって、平気で人を傷つけられる人だとは思わなかったわ」

ココア「ちょ、ちょっと待ってよ……。シャロちゃん」

シャロ「最低よ。あなた」


7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:44:24.97 ID:eV68xmrW0.net

ココア「ち、違うよ! 私、シャロちゃんのことを助けたくて……。
   指の骨へし折られて、痛みに耐えてるシャロちゃんの表情とか。
   普段の生活で不便を感じて、
   困ってるシャロちゃんを助けてあげて感謝されたりとか。
   臨時収入が入って、いつもより豪華な食事食べて喜んでるシャロちゃんとか。
   そういうのを、私見たかっただけなの……」

シャロ「やっぱりココアは分かってないみたいね。
   私が言ってるのはそういうことじゃないの。
   体に関してもそうだけど、ココアは人の心を平気で傷つけてるのよ。
   ……お金のために、私が喜んで身体を差し出すと思っているわけでしょ。
   そこが気に入らないの。私、お金は無くても、プライドくらいは持ってるわ」


9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:46:03.73 ID:eV68xmrW0.net

ココア「ま、待って……。行かないで……」

シャロ「じゃあ、私は帰るから。一人でちゃんと考えることね」

ココア「待ってよぉ! 置いてかないでぇ……!
   私のこと、キライになったら嫌だよぉ……!」

シャロ「……泣いたって無駄よ。じゃあね」

カランコロン。
シャロがラビットハウスのドアに手をかけた。


13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:47:56.12 ID:eV68xmrW0.net

ココア「うああああああああああっ!!!!!!!」

ポキン。
ココアの絶叫が響いた後に、小枝の折れるような音がした。
シャロが振り向くと、左手を右手で抱えたココアが、
机に突っ伏して小刻みに震えているのが目に入る。

シャロ「ココア……? ココア! あんた、何してんのよ!」

ココアの左手の小指は、あらぬ方向へと曲がっていた。


15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:49:51.26 ID:eV68xmrW0.net

ココア「ごっ……! ごべんねぇ……っ! シャロちゃあああん……!」

シャロ「ココア……!」

シャロが慌てて駆け寄ると、
どうやら、自身の左手小指の骨を、自らへし折ったであろうココアは、
大粒の涙を流しながら謝罪の言葉を繰り返していた。
苦痛に歪めた顔を、時折しゃくりあげるようにして震わせている。

シャロ「な、なんでこんなこと……」

ココア「だってぇ……! シャロ……っ、ちゃんがぁ……っ」


17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:51:48.82 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「私も謝るから……。だから、落ち着いて。話を聞かせてよ。
   ……なんで、こんなことをしたの?」

ココア「う……、ひぐう……っ。うん……っ」

泣きじゃくるココアをなんとかなだめながら、
シャロは根気よく理由を聞き出そうとする。
それでもなんの拍子か錯乱したココアが、自身の薬指も折ろうとするので、
そのたびに、シャロは必死にそれを止めた。


20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:53:43.37 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「ココア……。あなた……」

頭おかしいんじゃないの。
喉まで出かかった言葉を、シャロは慌てて飲み込んだ。

『最初は許しを請うために、自ら小指の骨を折ったが、
 慌てて駆け寄ってきたシャロの表情がとても美しかったので、
 薬指も折ってやろうと思った。
 全部の指を折れば、シャロがもっと優しくしてくれるから』

未だすすり上げるように泣いているココアの言い分は、
要約するとこういうことだった。


21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:55:29.84 ID:eV68xmrW0.net

ココア「ごめん……! シャロちゃん、本当にごめんねぇ……っ!
   わたっ……、私、もっといい子にするから……。
   なんなら、シャロちゃんの気が済むまで痛めつけていいから……、
   だから、嫌いにならないで……。お願い……」

シャロに縋るように懇願していたココアだったが、
徐々に勢いを失い、最後は呟くように言葉を漏らすと、
床にへたり込んでしまった。

ココア「お願い……。お願いします……」


22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:57:44.59 ID:eV68xmrW0.net

ココア「全治1か月だって! 良かったねぇ!」

病院からの帰り道。
シャロと手をつないだココアが、
満面の笑みを浮かべながらスキップをしていた。
ブラブラと揺れている左手を、固定している真っ白なギプスが、
なんとも痛々しい。

シャロ「何が良かったのよ……」

呆れたようにシャロが呟くと、瞬間ココアの笑顔が曇った。


24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 21:59:34.44 ID:eV68xmrW0.net

ココア「シャロちゃん。ご、ごめんね……?
   私、また変なこと、言ったかなぁ……?」

不安げな表情でココアが足を止めると、
窺うようにしてシャロの顔を覗き込んだ。

ココア「わ、悪いこと言ったりしたら、容赦なくぶったり、つねったり。
   蹴ったり、殴ったり、潰したり、折ったりしていいからね?
   シャロちゃんの好きなように、私に罰を与えていいんだよ。
   だから。お願いだから、私のこと嫌いにならないで……」


28: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:02:15.23 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「ココアのことは、き、嫌いにならないから。
   それに私は、殴ったりとか、
   そんなひどいこと、しないし……」

それを聞いたココアの表情が、再びぱあっと明るくなった。

ココア「うんっ! 優しいもんね、シャロちゃんは!」

満面の笑みを浮かべてスキップをするココアの横を、
並んで歩きながら、シャロは考えていた。

『全治1か月だって! 良かったねぇ!』

この言葉の意味を。
シャロがふと横を見ると、
目の合ったココアが優しく笑いかけてくる。
その笑顔から、シャロは何も読み取れなかった。


29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:04:17.06 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「はぁ……」

ぼすん。
シャロは自室の、安物のベットに身を投げた。
自然と出てしまったため息に、思わず苦笑する。

シャロ「ココア……。なんなのよ、あの子は……」

今日はひどく疲れてしまった。
結局、ココアの奇行の意味も、意図も分からずじまいだ。

シャロ「はぁ……」

再度ため息を吐くと、ごろんと寝返りを打つ。
シャロは考えを巡らせていたが、いつの間にか眠っていた。


33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:06:55.36 ID:eV68xmrW0.net

「シャロさーん」

フィルターを通したようなくぐもった声と、
何かを叩く音でシャロは目を覚ました。

シャロ「はーい。……あら、チノちゃんじゃない。
   どうしたの、こんな朝早くに」

眠い目をこすりながらシャロが玄関の扉を開けると、
チノの薄青色で艶のある髪が目に入った。

チノ「シャロさん!」

先程よりクリアになった声が、
未だ夢の世界に半分いるシャロの頭の中に響いた。


35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:09:23.40 ID:eV68xmrW0.net

チノ「ちょっと、ココアさんの件でお話がありまして」

お互いに簡単なあいさつを済ませると、チノがそう切り出してきたので、
話が長くなりそうだと思ったシャロは、チノを家の中へと招き入れた。

シャロ「それで。話って言うのは、なぁに?」

テーブルの向かい側にチノを座らせると、
なるべく平静を装おうとしてシャロはそう尋ねたが、
その声は明らかに震えていた。


38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:11:41.08 ID:eV68xmrW0.net

チノ「昨日、ココアさんがギプスを巻いて帰ってきたんですよ。
  それで尋ねたら、どうやら指の骨を折ったみたいで」

シャロ「……うん」

チノ「どこで怪我したのか、理由を聞いても答えてくれなくて。
   シャロさんは、そのことで何か知りませんか?」

シャロ「し、知らないわ。ココアの怪我の事なんて」

正直に話しても良かったが、
うわずった声で、咄嗟に嘘をついてしまった。
シャロの頬を、冷汗が一筋つたう。
カチコチと鳴る時計の音が、狭い部屋にうるさいくらいに響く。
チノがため息を吐いた。

チノ「シャロさん。それ、嘘ですよね」


41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:14:33.14 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「な、なんのことかしら。チノちゃん」

明らかに自身が動揺しているであろうことは、
目の前にいるチノにもばれているだろう。
シャロはそう思ったが、最初に嘘をついてしまった手前、
とぼけるより他、無かった。

チノ「シャロさんが知らないなんて。そんなの嘘ですよ。
  だって昨日、私はずうっと部屋にいたんです。
  二人の言い争うような声。
  ココアさんの絶叫。
  全部聞いています」


44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:16:45.97 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「それは……」

口を開いたが、シャロは二の句が継げなかった。
壁越しに声だけを聴いていたのなら、そう誤解されても仕方がない。
さすがにチノは話の内容まで、
はっきりと聞き取れていたわけではないだろうから。
シャロは無言のまま、ばつが悪そうにうつむいてしまった。
額のあたりに、チノの視線を痛いほど感じる。

チノ「ココアさんの指。折ったのって、シャロさんですよね」


50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:19:04.86 ID:eV68xmrW0.net

シャロが顔を上げると、怒っているのであろうか、
全くの無表情でこちらを見据えるチノと目が合った。
たまらずシャロは立ち上がり、自己弁護に走る。

シャロ「ち、違うのよ! あれは、ココアが……!」

チノ「言い訳はいいんです。
  私は、そんな話をしに来たんじゃありませんから」

半ば叫ぶようにして言うシャロを、チノが右手を上げて制した。
チノは相変わらずの無表情だった。


54: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:21:20.48 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「違う……。違うのよ……」

シャロは俯き、ブツブツとなにやら呟いて、
力なく椅子に腰を降ろした。

チノ「シャロさんは、ココアさんの指を折った。
  これで、間違いないですね?」

シャロ「……」

自分が何を言っても、チノは聞く耳を持たないだろう。
シャロは半ば諦めたように、俯いたまま黙っている。


57: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:24:06.08 ID:eV68xmrW0.net

チノ「どうやって脅したのか知りませんが、
  ココアさんはうまく口止めできたみたいですね。
  でも、私はベラベラしゃべりますよ。
  リゼさんにも、千夜さんにも」

シャロは大きく目を見開き、弾かれたように顔を上げた。
実際に自分がやったわけではないが、
そんな噂を広められたくはない。

チノ「そこで、取引をしましょう。
  このことを黙っている代わりに、
  シャロさんには、私のお願いを聞いてもらいます」


59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:26:37.82 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「……お願いって、何よ」

真っ白な顔で、シャロは口を開いた。

シャロ「私も同じ目に合うとか、痛いのは無理よ。
   あと。お金関係、とか」

それだけ言うと、観念したように黙って俯いていたが、
チノからの反応が無かったので、
不思議に思ったシャロは顔を上げる。
頬を紅潮させたチノが、そこにいた。

チノ「……シャロさん。私の指も、折ってくれませんか」


63: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:29:10.86 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「こ、これでいいの……? チノちゃん……」

チノ「は、はい……。大丈夫です……」

床に膝立ちになったチノの右手はテーブルの上に乗せられていて、
その後ろから、シャロがチノを抱きしめるようにしている。
シャロの右手が、チノの右腕の上を滑るように移動していき、
それはやがてチノの右手と重なった。


68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:34:15.29 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「本当に折るよ……。チノちゃんの指、折るからね……?」

シャロの呼吸は、相当に荒いものとなっていた。
取り返しのつかない怪我をさせるという恐怖と、罪悪感。
シャロの心は、この二つの感情によって支配されている。

チノ「ん……っ! お、お願いします……っ」

その湿り気を帯びた吐息と、ややかすれた声を耳元に感じるチノの呼吸も、
全く別の理由で、少しずつにではあるが荒くなっていく。

チノ「あ……っ! あああ……っ!」

自身の小指にかけられている、
シャロの右手に込められた力が徐々に強まっていくと、
チノはやや苦痛に歪めた顔で、恍惚の声を漏らした。


70: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:36:18.72 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「い、痛いわよね? ごめんね、チノちゃん……」

未だ幼さの残る体の小刻みな震えを全身で感じ、
シャロは囁くように謝罪の言葉を述べる。
それでも、右手にかける力は一向に弱めなかった。
この時には既に、心の隅にあるシャロの微かな嗜虐心に、
弱々しい炎が灯り始めていたのかもしれない。

チノ「だ、大丈夫……っ、です……っ! んんいうう……っ!
  はぁ……っ! ああああ……っ! あううううううっ!!!!」

痛みに耐えるチノがテーブルを揺らすと、
端に置いてあったマグカップが落ち、床で音を立てる。
底に少し残っていた濃い目に淹れたコーヒーが、
マグカップの転がった先で、小さな染みを作っていた。


74: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:38:42.73 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「ごめん! ホントにごめんね!
   一気に! 一気にやるから!」

チノ「うああああ……っ!!!!!」

シャロの目は狂気に染まり、爛々と輝いていた。
右手はチノの中指を握りしめていて、
その隣には、異様な方向に曲がり、赤紫色に変色した薬指と小指が並んでいる。

シャロ「いくよ! チノちゃん! いくからねぇっ!」

チノ「ああああああああああああっ!!!!!!!」

シャロの右手に骨の軋む感触がつたわるのとほぼ同時に、
チノのつんざく様な悲鳴が室内に響き渡った。


78: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:41:35.69 ID:eV68xmrW0.net

シャロがチノの右手に最初に触れてから、およそ2時間後。
二人は寄り添うようにして、地べたに座りこんでいた。

チノ「ああ……っ。あああ……っ」

シャロの胸に顔をうずめ、チノが涙を流している。
チノの右手の指は全ておかしな方向へと曲がり、
全体が、濃紫を超えて、やや黒ずんでしまっていた。
シャロはそんなチノの頭を、
愛おしそうに、優しく、撫でつける。

シャロ「ごめん。ごめんね、チノちゃん」


81: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:43:39.62 ID:eV68xmrW0.net

昨日とは違う、チノを連れた、病院からの帰り道。
ココアよりも大きなギプスを右手に嵌めたチノは、
シャロと手をつなぎ歩きながら、どことなく嬉しそうにしている。

チノ「私の怪我、全治3か月みたいです」

シャロには、その声がやや弾んでいるように聞こえた。

チノ「良かったです」

シャロの足が止まる。
そして、昨日のココアと同じことを言ったチノを、
怪訝な顔で見つめていた。


91: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:47:37.96 ID:eV68xmrW0.net

チノ「……?」

そこから一歩踏み出して、チノも足を止めた。
そして振り返り、尋ねる。

チノ「どうかしましたか? シャロさん」

シャロ「あ。……えー、と」

しばし考え込んでしまった。
シャロは迷ったが、思い切って聞いてみることにする。

シャロ「『良かった』って。何が?」

チノが首を傾げた。

チノ「何が、と言うのは分かりませんが、良かったですよ。
  嬉しくてたまりません。
  だって。これで3か月の間は、
  シャロさんが優しくお世話してくれますから」

小さな悪魔は目を輝かせて、優しい少女の心に付け込んでいた。


95: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:50:46.72 ID:eV68xmrW0.net

チノ「あーん……。んんーーー!」

シャロがスプーンに掬ったスープを一口飲むと、
チノは満足げな声を上げた。
頬に左手を当て、満面の笑みを浮かべている。

チノ「シャロさん。次もお願いします」

シャロ「あ……、うん」

数秒後。再びチノの心底満たされたような声が響く。
チノの食事の世話をしながらも、シャロは横目でチラチラと、
こちらを悔しげに睨み付けるココアの様子を窺っていた。


99: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:53:04.86 ID:eV68xmrW0.net

ココア「ちょっと! チノちゃんだけ、ずるくない!?」

その声に、チノ、シャロの二人は顔を正面に向けた。
やや潤んだ瞳で、ココアがこちらを睨み付けている。

チノ「だって、私は右手の指が全部折れてるんですよ?
  ココアさんは左手の小指だけでしょう。
  洗い物と、お風呂の世話。それだけしてもらえれば十分じゃないですか」


101: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:55:07.13 ID:eV68xmrW0.net

ココア「……」

しばしの間、恨めしげにチノを睨み付けていたココアだったが、
その大きな瞳から涙をいつくか零すと立ち上がり、
ドアからけたたましい音を立てさせて、部屋を出て行ってしまった。

チノ「あ……っ、ココアさん……」

たまらず立ち上がり、追いかけようとしたチノだったが、
横にいるシャロと、ドアを交互に見比べて、
やや迷ったのちに、すとんと椅子に腰を降ろした。


103: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 22:57:48.61 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「……」

疲れ切った顔で自室へと戻ると、
シャロは安物のベッドに身を投げた。
いつものように「ぎい」と軋む音に、少しだけ心が安堵する。
もう口を開くのも億劫で、
ここ数日、まともにしゃべっていないような気がした。

シャロ「……」

世話を始めた頃は、チノとココア、
二人の仲を取り持とうとしていたシャロだったが、
自分が口を開くと状況が悪化するので、
最近はなるべく沈黙を守ることにしていたのだった。


107: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:00:06.04 ID:eV68xmrW0.net

チノが自身の指を折れと迫ってきたとき、
最初、シャロは当然断った。
しかし。チノの剣幕と、誤解を広められたくないという気持ちに負け、
結局言いなりになることを選んだ。
思えばそれが間違いだったのだと、シャロは今にして思う。

シャロ「はぁ……」

狭い部屋を、ため息が支配していた。


108: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:02:13.46 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「ココア!? 何してるの!?」

翌日。ラビットハウスのドアを開けたシャロは、
異様な光景を視界に捉え、叫んだ。
久々に大きな声を出したため、
シャロは喉の奥に震えと痛みを覚えたが、それを振り切り、
今しがた開けたドアからラビットハウスの中へと飛び込む。
部屋の中心部には、血の赤に染まったココアが地べたに座り込んでいた。

ココア「ぁ……。シャロ……ちゃん」

シャロの姿を認め、ココアは弱々しい微笑みを浮かべた。
そして、大きく体を震わせながら、右腕を顔の横に掲げる。

ココア「ぇへへ……。私の右手……、無くなっちゃったよぉ……」

シャロ「ココア……!? いったい、何したのよ……!」

ココアの手首からは真っ赤な鮮血が滴り落ち、
白い骨と、きれいなピンク色の肉をその隙間から覗かせていた。


115: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:06:03.83 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「……」

ココアが、ギプスをとったばかりの手はまだ痛むというので、
シャロはココアの左の手首を握っていた。
数週間振りの、病院からの帰り道。
楽しげに笑う声。

ココア「全治”死ぬまで”、だねぇ!
   入院の最初の方は、シャロちゃんに会えなくて寂しかったけど……」

手首から先の無い右手を、大きく振りながらココアは歩く。
包帯の巻かれたそれを、時たまうれしそうに眺めていた。

ココア「”これからも”よろしくね! シャロちゃん!」

シャロは、その太陽のような笑顔を見て、意識が遠のくのを感じた。


120: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:08:48.52 ID:eV68xmrW0.net

二人の世話……、いや。介護は、来る日も来る日も続いた。
シャロはほとんど喋らなくなり、日に日に痩せ衰えていった。

ココア「シャロちゃん、過度なダイエットは体に毒だよ?
   ちゃんと食べないとね!」

シャロは無言のまま、コクリと頷く。
口を半開きにしたココアが、顔を近づけてきた。

ココア「ひゃんとてゃべないほねぇ」

――ちゃんと食べないとねぇ。
――ちょっとココア。そんなことしなくても、左手があるでしょ?

つい先日、そう答えたシャロは、包丁を持ち出したココアに殺されかけた。
表情を失った顔で、シャロはココアが顔を近づけてくるのを待ち。
そして。口移しで食事を受け取るのだった。


124: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:11:08.53 ID:eV68xmrW0.net

ようやく。ようやく、この日が来た。
シャロの虚ろな瞳にも、やや光が戻ったように思う。

『チノの骨折が完治する日』

この日を、シャロはどれだけ待ちわびたことか。
少なくとも、負担はこれで半分になるのだ。
自由になった右手を忌々しげに眺めるチノを尻目に、
ウキウキとした気分でシャロは家路につくのだった。


128: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:14:41.33 ID:eV68xmrW0.net

朝7時から夜22時まで。
これがシャロの”介護”の時間だった。
起床、着替え、朝食、身支度に始まり、
掃除、洗濯、昼食、ラビットハウスの仕事、
夕食、お風呂、トイレ、そして夜の世話……。
これを二人分。
休む時間も無いほどなので、当然学校とバイトはやめた。
どこから湧いて出てくるのか、
チノとココアから受け取る金は結構なもので、
金銭面で困ることは無かったが。
ともかく。
この仕事量が半分になると言うことは、
今までにほとんど無かった、自由な時間が与えられると言うことだ。
シャロは、明日から空いた時間は何をしようかと、
そればかりを考えながら眠った。


130: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:17:38.56 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「おっはよぉー!」

ラビットハウスの扉を開け放ち、シャロは声を張り上げる。
朝の挨拶なんて、もう何年もしていないような気がした。
シャロにとってのこの3か月は、それほどまでに長く感じられていたのだ。
今朝は祝杯代わりに、コーヒーをマグカップ半分だけ口にしていたことも、
彼女が上機嫌なことの一因になっているかもしれない。

シャロ「……あれ。二人とも、いないじゃない」

いつもなら少なくとも、起こす前にチノだけはいるはずなのに。
怪我が治ってしまって拗ねているのだろうか。
シャロは不思議に思いながらも、チノの部屋へと向かった。


134: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:20:07.83 ID:eV68xmrW0.net

怪我が治ったチノのことは、もう世話をする必要なんてないのに。
シャロはそのことにすら気付かず、
いつものように長い廊下を歩く。

シャロ「チノちゃーん。おはよー」

ガチャリ。
扉を少し開け、シャロは中の様子を窺うように見回す。
チノの部屋は、カーテンを閉め切っているのか、真っ暗だった。
手探りでスイッチを探し、電気をつけると、
こんもりと膨らんだベッドがシャロの目に入った。

シャロ「寝坊なんて、珍しいわね」

ベッドへと歩みより、シャロは無造作に布団を剥ぐ。


141: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:23:55.21 ID:eV68xmrW0.net

ブチブチブチ。

何か湿り気のあるものが千切れる感触を、
シャロは布団を鷲掴みにした手に抱いた。

ブチブチブチブチ。

そして、シャロの目が驚愕に見開かれる。
手に嫌な感触を残した”物”は、真っ赤な糸を引いて、
布団と、ベッドに横たわるチノを繋いでいるのだった。

チノ「あは……、あっはははは……」

仰向けに寝ているチノが、
焦点の合わない目を剥いて、口元に笑みを貼り付けている。
そして。ゆっくりと両腕を上げた。
左右の手首が、きれいな断面を覗かせていた。


143: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:27:28.60 ID:eV68xmrW0.net

シャロ「きゃあああああああっ!!!!!!」

叫び、シャロは手に持った布団を放り投げる。
作り物のような土色をした二つの手が、ゴロゴロと床を転がっていった。

シャロ「あ……。あああ……」

首をゆっくりと横に振り、荒い呼吸を吐きながら、
シャロは震える足を引きずるようにして後ずさる。
壁にぶつかり、そのまま体を滑らすように、
ぺたりと地面に尻餅をついた。

チノ「あはははははははははは…………」


146: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:30:22.05 ID:eV68xmrW0.net

目の前のベッドの上では、チノが狂ったように笑い続けている。
シャロはまるで悪夢の中にいるかのような気分で、
それをただ茫然と眺めていた。
やがて。
ぴたりと笑い声が止むと。
低く。けれど、うわずった声が、室内に響く。

チノ「シャロさーん……。私の両手、無くなっちゃいましたー……」

再び、狂気を含んだけたたましい笑い声が、二人の居る空間を占めた。
シャロは力なく、首を左右に振り続けている。

シャロ「いや……。いやぁああ……」

荒い呼吸を続けるシャロのその動きは徐々に激しくなり、
やがて、頭を抱えて床に突っ伏した。

シャロ「いやあああああああああああっ!!!!!!!!!」

彼女の”介護”は、まだ終わらない。

終わり


147: 以下、VIPがお送りします 2014/11/06(木) 23:39:31.06 ID:FBzjyhbv4

久しぶりに鳥肌立った



ご注文はうさぎですか? ORIGINAL SOUNDTRACK
ご注文はうさぎですか? ORIGINAL SOUNDTRACK
関連記事

Powered By 画RSS

コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

FC2カウンター
プロフィール

necomimi

Author:necomimi
ネコミミss速報へようこそ!
TOP画像、相互リンクと相互RSS絶賛募集中ですー
詳しくはこちらまで

  • ブログについて
  • カテゴリーメニュー 改
    検索フォーム
    フリーエリア
    ラブライブ!スクールアイドルコレクション パーフェクトビジュアルブック ラブライブ!スクールアイドルコレクション パーフェクトビジュアルブック 君の名は。 Another Side:Earthbound<君の名は。 Another Side:Earthbound> (角川スニーカー文庫) 君の名は。 Another Side:Earthbound<君の名は。 Another Side:Earthbound> (角川スニーカー文庫) 『ラブライブ!サンシャイン!!』ユニットシングル(1)「元気全開!DAY!DAY!DAY!」 『ラブライブ!サンシャイン!!』ユニットシングル(1)「元気全開!DAY!DAY!DAY!」 テイルズ オブ ゼスティリア 導きの刻 4巻 (ZERO-SUMコミックス) テイルズ オブ ゼスティリア 導きの刻 4巻 (ZERO-SUMコミックス)
    Powered by amaprop.net
    過去ログ +

    2019年 08月 【1件】
    2019年 07月 【3件】
    2019年 05月 【1件】
    2019年 02月 【3件】
    2019年 01月 【2件】
    2018年 12月 【1件】
    2018年 11月 【2件】
    2018年 10月 【6件】
    2018年 09月 【2件】
    2018年 08月 【4件】
    2018年 07月 【3件】
    2018年 06月 【7件】
    2018年 05月 【18件】
    2018年 04月 【34件】
    2018年 03月 【51件】
    2018年 02月 【60件】
    2018年 01月 【97件】
    2017年 12月 【113件】
    2017年 11月 【209件】
    2017年 10月 【217件】
    2017年 09月 【210件】
    2017年 08月 【216件】
    2017年 07月 【218件】
    2017年 06月 【209件】
    2017年 05月 【218件】
    2017年 04月 【208件】
    2017年 03月 【216件】
    2017年 02月 【197件】
    2017年 01月 【211件】
    2016年 12月 【218件】
    2016年 11月 【211件】
    2016年 10月 【216件】
    2016年 09月 【211件】
    2016年 08月 【217件】
    2016年 07月 【217件】
    2016年 06月 【210件】
    2016年 05月 【219件】
    2016年 04月 【210件】
    2016年 03月 【218件】
    2016年 02月 【203件】
    2016年 01月 【217件】
    2015年 12月 【217件】
    2015年 11月 【209件】
    2015年 10月 【222件】
    2015年 09月 【225件】
    2015年 08月 【245件】
    2015年 07月 【249件】
    2015年 06月 【242件】
    2015年 05月 【252件】
    2015年 04月 【245件】
    2015年 03月 【248件】
    2015年 02月 【225件】
    2015年 01月 【252件】
    2014年 12月 【250件】
    2014年 11月 【252件】
    2014年 10月 【254件】
    2014年 09月 【241件】
    2014年 08月 【260件】
    2014年 07月 【275件】
    2014年 06月 【262件】
    2014年 05月 【422件】
    2014年 04月 【401件】
    2014年 03月 【421件】
    2014年 02月 【425件】
    2014年 01月 【487件】
    2013年 12月 【537件】
    2013年 11月 【575件】
    2013年 10月 【599件】
    2013年 09月 【523件】
    2013年 08月 【511件】
    2013年 07月 【510件】
    2013年 05月 【1件】

    全記事表示リンク
    リンク
    ブロとも申請フォーム
    フリーエリア
    Powered by amaprop.net Fate/ EXTRA CCC OP Animation PRODUCTION NOTE Labyrinth BOX Fate/ EXTRA CCC OP Animation PRODUCTION NOTE Labyrinth BOX 化物語 KEY ANIMATION NOTE 上巻 化物語 KEY ANIMATION NOTE 上巻 艦これ白書 -艦隊これくしょん オフィシャルブック- 艦これ白書 -艦隊これくしょん オフィシャルブック- 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語 公式ガイドブック with you. (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語 公式ガイドブック with you. (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) めだかボックス ジュブナイル 小説版 (JUMP j BOOKS) めだかボックス ジュブナイル 小説版 (JUMP j BOOKS) めだかブックス めだかボックス コンプリートガイドブック (ジャンプコミックス) めだかブックス めだかボックス コンプリートガイドブック (ジャンプコミックス)
    劇場版 とある魔術の禁書目録 電撃劇場文庫 劇場版 とある魔術の禁書目録 電撃劇場文庫 進撃の巨人 Before the fall(1) (シリウスコミックス) 進撃の巨人 Before the fall(1) (シリウスコミックス) ダンガンロンパ1・2 Reload 超高校級の公式設定資料集 -再装填- (ファミ通の攻略本) ダンガンロンパ1・2 Reload 超高校級の公式設定資料集 -再装填- (ファミ通の攻略本)
    メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文: